説明

医薬組成物

【課題】 優れた抗血栓作用や血管内膜肥厚抑制作用などの薬理作用を有する(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物であって、上記有効成分の溶出性に優れた医薬組成物を提供する。
【解決手段】 (-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物であって、粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物から調製された造粒物を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含み、該有効成分の溶出性に優れた医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンは優れた抗血栓作用や血管内膜肥厚抑制作用を有し、血栓性疾患や動脈硬化性疾患の治療や予防に有用であることが知られている(特許2964029号公報)。この物質は経口投与用の医薬として、例えば錠剤の形態の医薬として開発が行なわれているが、本発明者らの研究によれば、上記物質は極めて水に溶け難く、錠剤などの固形製剤の形態として調製された医薬組成物からの溶出性が悪いために充分な薬効が得られないという問題があることが判明した。
【0003】
難溶性薬物を有効成分として含む医薬組成物から該有効成分の溶出性を改善する手段としては、一般に有効成分である物質を微細化する方法や易溶性の誘導体に変換する方法が知られている。しかし、上記の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンの場合には微細化しても溶出性が改善されず、また誘導体に化学変換すると薬効が変化して好ましくないことが本発明者らの研究により判明した。
【0004】
特許2964029号公報には、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンなどのカルボスチリル誘導体を通常使用される結合剤などを用いて医薬製剤の形態として使用できること(上記公報43欄[0160]段落)、及び結合剤としてメチルセルロースなどを使用できることが記載されている(同段落15行)。同公報には製剤例1として錠剤が開示されているが、この錠剤に配合されているメチルセルロースは、同公報45欄4〜5行目に「メチルセルローズの5%水溶液で顆粒化し」と記載されているように溶液として用いられており、しかも配合量が錠剤全重量の1重量%程度であることから、上記の一般的説明にあるように造粒の際の結合剤として用いられているものと理解できる。
【特許文献1】特許2964029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物であって、上記有効成分の溶出性に優れた医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと上記(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物から調製される造粒物を含む医薬組成物では、上記有効成分の溶出が顕著に向上しており、経口投与用の医薬組成物として極めて望ましい性質を有していることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明により、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物であって、粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物から調製された造粒物を含む医薬組成物が提供される。
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、上記造粒物が湿式造粒により調製された造粒物である上記医薬組成物;上記湿式造粒を精製水を用いて行なう上記医薬組成物が提供される。また、溶出補助剤である粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースを造粒物中に含む上記医薬組成物が本発明により提供される。
【0009】
また、別の観点からは、本発明により、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物の製造方法であって、下記の工程:
(1)粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物を調製する工程;及び
(2)上記混合物を造粒して造粒物を調製する工程
を含む方法が提供される。
【0010】
さらに別の観点からは、本発明により、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物のための溶出補助剤であって、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースからなる溶出補助剤が提供される。この発明の好ましい態様によれば、粉末形態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースからなり、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを含む造粒物中に配合するための上記溶出補助剤が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の医薬組成物は、水難溶性の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンの溶出性が顕著に改善されており、有効成分を速やかに血中に移行させることができるので、上記有効成分の所望の薬効を十分に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の医薬組成物の有効成分である(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンは特許2964029号公報に記載された公知の物質であり、当業者は容易に入手することが可能である。本発明の医薬の有効成分としては、上記物質の任意の水和物又は溶媒和物を用いてもよい。本発明の医薬組成物に含まれる上記有効成分の含有量は特に限定されないが、医薬組成物の全質量に対して1〜99質量%程度であり、好ましくは5〜99質量%程度である。
【0013】
本発明の医薬組成物に用いられるヒドロキシプロピルメチルセルロースの種類は特に限定されないが、例えば、ヒドロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、又はヒドロキシプロピルメチルセルロース1828などを挙げることができ、より具体的には、メトローズSM、メトローズ90SH、メトローズ65SH、メトローズ60SH、メトローズTC-5E、メトローズTC-5R、メトローズTC-5S(以上、信越化学工業製)、メトセルK100KLVP、メトセルK4MP、メトセルK15MP、メトセルK100MP、メトセルF、メトセルE4MP、メトセルE10MP CR、(以上、ダウ・ケミカル製)、及びマーポローズ(松本油脂製薬製)などが市販されている。本発明の医薬組成物の製造に用いられる造粒物中に含まれるヒドロキシプロピルメチルセルロースの量は特に限定されないが、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノン1重量部に対して、例えば0.001〜1重量部程度であり、好ましくは0.01〜0.2重量部程度である。
【0014】
本発明の医薬組成物に用いられるヒドロキシプロピルセルロースの種類は特に限定されないが、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-H、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-M、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-L、ヒドロキシプロピルセルロースHPC-SL、又はヒドロキシプロピルセルロースHPC-SSL(以上、信越化学工業製)などが市販されている。本発明の医薬組成物の製造に用いられる造粒物中に含まれるヒドロキシプロピルセルロースの量は特に限定されないが、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノン1重量部に対し、例えば0.001〜1重量部程度であり、好ましくは0.01〜0.2重量部程度である。
【0015】
本発明の医薬組成物の調製にあたってはヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを任意の割合で組み合わせて用いてもよい。その場合、両者の合計量は、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノン1重量部に対して、例えば0.001〜1重量部程度であり、好ましくは0.01〜0.2重量部程度である。
【0016】
本発明の医薬組成物は、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物であって、粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物を用いて調製された造粒物を含むことを特徴としている。該造粒物中に含まれる粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースは医薬組成物から有効成分である(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンが速やかに溶出するための溶出補助剤として作用する。
【0017】
本発明の医薬組成物の調製方法は、上記の造粒物を調製することができるものであれば特に限定されないが、例えば、下記の工程:
(1)粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物を調製する工程;及び
(2)上記混合物を造粒して造粒物を調製しする工程
を含むことが好ましい。得られた造粒物を用いて、通常の方法に従って適宜の形態の医薬組成物を調製することができる。
【0018】
上記の混合物は粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを当業者に利用可能な適宜の手段により混合することにより調製できる。また、上記造粒物の調製は、乾式又は湿式のいずれの方法で行なってもよいが、湿式造粒を行なうことが好ましい。湿式造粒においては、特に結合剤を使用する必要はなく、水、好ましくは精製水のみを用いて簡便に造粒を行なうことができる。湿式造粒にあたっては、上記混合物中に含まれるヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースの溶解ができる限り生じないように攪拌や水の添加などの条件を選択することが望ましい。得られた上記の造粒物中には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースの少なくとも一部、好ましくは実質上全部が粉末状態のまま残存している必要がある。造粒物は必要に応じて整粒して医薬組成物の調製に用いることができる。造粒物の粒径は特に限定されないが、通常は0.5〜5 mm程度であり、好ましくは1 mm程度である。
【0019】
本発明の医薬組成物の形態は特に限定されないが、経口投与に適する固形の医薬組成物として調製することが望ましく、例えば、錠剤、顆粒剤、又はカプセル剤などの形態の医薬組成物として調製することが好ましい。錠剤としては、素錠、チュアブル錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、有核錠、又は多層錠などを挙げることができ、顆粒剤としては、散剤又は細粒剤などを挙げることができ、カプセル剤としては、硬カプセル剤又は軟カプセル剤などを挙げることができる。顆粒剤としては、上記の造粒物を整粒して得られた顆粒をそのまま用いてもよい。
【0020】
本発明の医薬組成物の調製にあたっては、当業界で医薬組成物の調製に通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、又は滑沢剤等の製剤用添加物を1種又は2種以上用いてもよい。例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、又はケイ酸等の賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、又はリン酸カリウム等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、又は乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第四級アンモニウム塩基、又はラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン又はデンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、又はコロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、又はポリエチレングリコール等の滑沢剤等を用いることができる。例えば、医薬組成物の全重量に対して、賦形剤は0〜99質量%、結合剤は0〜40質量%、崩壊剤は0〜20質量%、崩壊抑制剤は0〜10質量%、吸収促進剤は0〜10質量%、保湿剤は0〜50質量%、吸着剤は0〜10質量%、滑沢剤は0〜5質量%程度の割合で用いることができるが、これらの配合量に限定されることはない。
【0021】
本発明の医薬組成物は、有効成分である(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンの優れた抗血栓作用や血管内膜肥厚抑制作用などの薬理作用に基づいて、血栓性疾患や動脈硬化性疾患の治療及び/又は予防に使用することができる。本発明の医薬の投与量は特に限定されず、疾患の種類、患者の体重、年齢、及び症状、医薬組成物の形態などの条件に応じて適宜選択できるが、一般的には、有効成分の質量として体重1 kgあたり1日量として約0.1〜10 mg程度である。錠剤やカプセル剤などの単位投与形態中に有効成分を1〜200 mg程度含有するように医薬組成物を調製することが望ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例により限定されることはない。
実施例1
(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノン 500g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、信越化学工業製) 100gをV型混合機(入江製作所製)に投入して10分間混合した。得られた混合末を乾式造粒機(ターボ社製)により乾式造粒し、得られたフレーク状の造粒物をスピードミル(岡田精工製)を用いて粉砕し、粒子径が1 mmの顆粒を得た。
実施例2〜4
ヒドロキシプロピルセルロースを50g、30g、又は10gとして、実施例1と同様に顆粒を調製した。
【0023】
実施例5
ヒドロキシプロピルセルロースをヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC-5R、信越化学工業製)として、実施例1と同様に顆粒を調製した。
実施例6〜8
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを50g、30g、又は10gとして実施例1と同様に顆粒を調製した。
比較例1〜5
ヒドロキシプロピルセルロースをヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業製)として、実施例1と同様に顆粒を調製して比較例1とし、ヒドロキシエチルセルロースを50g、30g、又は10gとして実施例1と同様に顆粒を調製して、それぞれ比較例2〜4とした。また、ヒドロキシプロピルセルロースを含まない顆粒を実施例1と同様に調製して比較例5とした。
【0024】
試験例1:溶出試験
日本薬局方一般試験法の溶出試験法第2法(パドル法)に従って、上記の実施例1〜8及び比較例1〜5の顆粒の溶出試験を行なった。各顆粒((-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンが50 mgを含有する量)を精製水900 mL中に投入して試験を開始し、温度37±1℃、パドル回転数100 rpmの条件で試験開始直後から試験開始後5分、15分、30分、60分、90分、120分まで溶出試験を行なった。各時間に採取した試料溶液は細孔径0.45μmのPTFEフィルター(東洋濾紙製DISMIC-25cs)にて濾過し、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンの溶出率は逆相系カラム(東ソー社製:TSKgel ODS-80Ts 4.6×150 mm)を用いた高性能液体クロマトグラフ法により測定し、理論含量を100%としたときの溶出率を算出した。結果を図1、図2、及び図3に示す。
【0025】
実施例9
(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R, 2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノン 500 g、乳糖500 g、ヒドロキシプロピルセルロース (HPC-L) 70 g、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース (TC-5R) 30 gを攪拌造粒機(パウレック社製)で混合し、この混合物に精製水 150 mLを添加して造粒物を得た。得られた造粒物を流動層造粒コーティング機(フロイント産業社製)を用いて乾燥し、乾燥物を粉砕機(ダルトン社製)を用いて整粒して粒子径が1 mmの顆粒を得た。得られた顆粒をステアリン酸マグネシウム9 gと混合した後、打錠して錠剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の医薬組成物(実施例1〜4)の溶出試験の結果を示した図である。
【図2】本発明の医薬組成物(実施例5〜8)の溶出試験の結果を示した図である。
【図3】比較例の医薬組成物(比較例1〜5)の溶出試験の結果を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物であって、粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物から調製された造粒物を含む医薬組成物。
【請求項2】
上記造粒物が湿式造粒により得られた造粒物である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
上記湿式造粒を精製水を用いて行なう請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の医薬組成物の製造方法であって、下記の工程:
(1)粉末状態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースと粉末状態の(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンとを含む混合物を調製する工程;及び
(2)上記混合物を造粒して造粒物を調製する工程
を含む方法。
【請求項5】
造粒を湿式造粒により行なう請求項4に記載の方法。
【請求項6】
湿式造粒を精製水を用いて行なう請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを有効成分として含む経口投与用の医薬組成物のための溶出補助剤であって、粉末形態のヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルセルロースからなり、(-)-6-[3-[3-シクロプロピル-3-[(1R,2R)-2-ヒドロキシシクロヘキシル]ウレイド]-プロポキシ]-2-(1H)-キノリノンを含む造粒物中に配合するための溶出補助剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−230967(P2008−230967A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182750(P2005−182750)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】