説明

医薬組成物

【課題】優れた便秘改善効果、抗肥満効果、肝機能向上効果を有する医薬組成物を提供する
【解決手段】防風通聖散と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテイン及びパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風通聖散による副作用の少ない医薬組成物、特に便秘改善作用、抗肥満作用、肝機能向上作用を有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、食生活の変化やストレス等が原因で排便回数の低下や排便困難等の症状を伴う便秘症や、脂肪の過剰な蓄積により糖尿病、高脂血症、動脈硬化等の生活習慣病になる人が増加しており、これまで様々な便秘改善や肥満改善のための医薬組成物が開発されてきた。
【0003】
従来、漢方薬である防風通聖散は排便促進作用を有しており、便秘に対して有効であることが知られている。このような効果は、防風通聖散に含有されるダイオウの成分、センノシドによるものと考えられている。センノシドは、アントラキノン系化合物の一種であり、小腸より吸収され血行性に大腸の粘膜を刺激することにより排便を促すとされている。しかしながら、センノシドは排便促進作用が強すぎて腹痛が生じやすいこと、高濃度を長期に使用し続けると効果が減弱してしまうことなどが大きな問題となっていた(特許文献1、非特許文献1を参照)。
【0004】
また、防風通聖散は、抗肥満、特に内蔵脂肪の減少に効果があることが知られているが(例えば、非特許文献2および3を参照)、肝機能障害を引き起こすおそれのあるオウゴンが含まれており、肝機能が低下している傾向にある肥満者に防風通聖散を使用する場合、注意を要していた。
【0005】
このように防風通聖散は、種々の効果を有する一方で、副作用を免れることはできなかった。
【0006】
パンテチンは腸管の蠕動運動促進効果が知られており(非特許文献4)、副交感神経系に作用して腸の蠕動運動を促進させるため腹痛を引き起こしにくいものの、十分な効果が得られないという難点があった。
【0007】
また、パンテチンはコレステロール減少効果、中性脂肪減少効果等の脂質代謝を促進する効果があることが知られているが(例えば非特許文献5および6を参照)、その効果は緩慢であり、十分ではなかった。
【0008】
さらに、パンテチンには、内臓脂肪の減少に効果があることが知られているが(非特許文献7を参照)、皮下脂肪までを減少させることは知られていなかった。
【0009】
このようにパンテチンには、蠕動運動促進効果や脂質代謝促進効果があることは知られていたが、十分な効果を得ることができなかった。
【0010】
すなわち、従来は、排便促進や抗肥満の効果を確保しようとすると副作用を免れなかった。この様な背景から、副作用が少なく、便秘改善効果、抗肥満効果、肝機能向上作用に優れる医薬組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−310960号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】プルゼニド(登録商標)錠(ノバルティスファーマ株式会社製)添付文書
【非特許文献2】平成14年度 科学技術総合研究委託費 地域先導研究 研究成果報告書
【非特許文献3】日本薬学会年会講演要旨集(2003年3月5日発行)
【非特許文献4】診療と新薬(医事出版社)13 (2) 247 (1976)
【非特許文献5】老年医学 18 (9) 1275 (1980)
【非特許文献6】老年医学 18 (7) 967 (1980)
【非特許文献7】Journal of Atherosclerosis and Thrombosis, 2000 vol.7 55-58頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、副作用が少なく、便秘改善効果、抗肥満効果などに優れる、防風通聖散含有医薬組成物を提供することを主な目的とする。また、本発明は、防風通聖散の服用によって生じる副作用の軽減方法の提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、防風通聖散と、パンテチン類とを組み合わせて用いることによって、優れた排便促進効果、すなわち便秘改善効果が得られること、また、一般的に排便促進作用が増強されることによって生じやすい腹痛が低減されることを見出した。
【0015】
また、本発明者は、防風通聖散とパンテチン類とを組み合わせることで、優れた抗肥満効果、体重増加抑制効果、遊離脂肪酸や血清中トリグリセリドの増加抑制効果、肝機能向上効果などを発揮することを見出した。
【0016】
さらには、本発明者は、防風通聖散の服用によって、酸性血症(ケトアシドーシス)につながる恐れのある、血清中のケトン体量が増加することを見出すとともに、防風通聖散とパンテチン類とを組み合わせることでそれを効果的に抑制できることを見出した。
【0017】
本発明はこのような知見に基づいてさらに研究を重ねた結果完成されたものである。
【0018】
本発明は以下の医薬組成物及び防風通聖散の副作用の軽減方法を提供するものである。項1.(A)成分:防風通聖散と、
(B)成分:パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテイ
ン及びパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を含む医薬組成物。
項2.(A)成分中のセンノシド1重量部に対する(B)成分の配合比率が2〜800重量部である項1に記載の医薬組成物。
項3.便秘改善用である項1又は2に記載の医薬組成物。
項4.抗肥満用である項1又は2に記載の医薬組成物。
項5.肝機能向上用である項1又は2に記載の医薬組成物。
項6.防風通聖散と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテイン及びパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用することを特徴とする、防風通聖散の副作用の軽減方法。
項7.防風通聖散の副作用が、腹痛及び/又は血清中のケトン体の増加である項6に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の医薬組成物は、副作用が少ないにもかかわらず、優れた排便促進作用(すなわち、便秘改善作用)などを発揮し得るものである。
【0020】
本発明の(A)成分:防風通聖散は、排便を促すために多量に使用すると腹痛が生じ、ま
た、継続的に使用するとその効果が減弱するため、その結果、習慣的な使用が必要となるという悪循環が問題となっていた。しかしながら、本発明の医薬組成物によれば、(B)成
分:パンテチン類を併用することによって優れた排便促進効果を実現することができ、しかも腹痛を伴うこともないため、特に便秘症の患者にとって好適である。さらに、パンテチン類は、副交感神経に働きかけて自然な排便を促すため、本発明の医薬組成物によれば、習慣性の懸念が低く、安全性にも優れている。また、防風通聖散とパンテチンを併用した場合、排便促進作用は便秘傾向者・便秘症患者により強く発揮されるため、便秘改善薬として有効である。
【0021】
また、本発明の医薬組成物は、脂質の過剰摂取による体重の増加を有意に抑制する。加えて、本発明の医薬組成物は、遊離脂肪酸や血清中のトリグリセリドの増加抑制効果にも優れることから、抗肥満用医薬組成物としても有用である。
【0022】
肥満の場合、脂肪肝になるなどして肝臓の機能が落ちやすくなる。また、防風通聖散には、肝機能障害を引き起こすおそれのあるオウゴンが含まれており、肝機能が低下している傾向にある肥満者に防風通聖散を使用する場合、注意を要する。しかしながら、本発明によれば、防風通聖散とパンテチン類を組み合わせて用いることによって優れた肝機能向上効果を発揮し得ることから、肝機能が低下傾向にある肥満者に対しても安心して使用できる。
【0023】
このように、本発明は、上記便通改善や抗肥満などの効果に加え、防風通聖散を服用することによって生じる副作用や問題点を効果的に改善することができる極めて優れた医薬組成物である。特に、防風通聖散の服用によって引き起こされる腹痛、血清中のケトン体増加などの副作用に対しては軽減効果に優れている。すなわち、便秘改善などの用途に限られることなく、防風通聖散を含有する全ての医薬組成物において副作用軽減の優れた効果を奏するものである。
【0024】
また、本発明は、防風通聖散とパンテチン類とを併用することによる防風通聖散の副作用の軽減方法をも提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】試験例6におけるラットの体重変化を表すグラフである。
【図2】試験例6における、ラット血清中の中性脂肪、遊離脂肪酸、ケトン体の測定値の結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の医薬組成物は、(A)成分:防風通聖散と(B)成分:パンテチン類を含有することを主な特徴とする。以下、本発明の構成について説明する。
【0027】
(A)防風通聖散
本発明の(A)成分は防風通聖散である。本発明の医薬組成物に使用される防風通聖散は
、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ボウショウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ及びカッセキの混合物の抽出物である。
【0028】
本発明の(A)成分である防風通聖散の調製は、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬
務局監修、日薬連漢方専門委員会編集、薬業時報社発行)に準じて行い得る。また、防風通聖散に使用し得る植物原料は、日本薬局方に使用部位が規定されており、これに従って使用部位を適宜選択することができる。
【0029】
また、本発明の(A)成分である防風通聖散は、漢方生薬調査会により定められた「漢方
製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている漢方処方(生薬配合物)やこれらの漢方処方から得られるエキスが包含される。
【0030】
本発明の(A)成分としては、防風通聖散のエキス製剤を用いることができる。エキス製
剤の製法としては、前述の方法によって得られた抽出液を減圧下で濃縮し、スプレードライ法により乾燥エキスとするか、或いはエキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法などが挙げられる。
【0031】
具体的には、例えば、乾燥重量に換算してトウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2〜3、カッセキ3〜5とされており、原則として、これを、その20倍重量(従って560〜620重量部)の湯で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたもの(エキス)を、防風通聖散エキスとして用いることができる。
【0032】
ここで、書簡によっては、上記成分中、ビャクジュツを含まないもの(例えば「経験漢方処方分量集」、大塚敬節・矢数道明監集、医道の日本社発行)、オウゴンを含まないもの(例えば「続漢方あれこれ」大阪読売新聞社編、浪速社発行)、上記分量中、1.2重量部をすべて1.5重量部としているもの(例えば「明解漢方処方」、西岡一夫、高橋真太郎共著、浪速社発行)など、成分や成分比が多少異なるものもある。
【0033】
また、防風通聖散のエキスの製造方法についても、ボウショウ以外の上記各成分に水400重量部を加え、200重量部まで煎じて、カスを除き、次いでボウショウを加えるとしているもの(例えば「和漢薬ハンドブック」、久保道徳、森山健三共著、保育社発行)のように、作り方が上記と多少異なるものもある。
【0034】
本発明においては、これらの差異は特に制限されず、いずれも防風通聖散として包含される。
【0035】
防風通聖散のエキス製剤としては、例えば、防風通聖散乾燥エキスA、防風通聖散乾燥エキスAM、防風通聖散乾燥エキスEおよび防風通聖散乾燥エキスEM(いずれも日本粉末株式会社製)ならびに防風通聖散料乾燥エキス−Cおよび防風通聖散料乾燥エキス−F(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。
【0036】
防風通聖散の調製に用いられるダイオウには、腹痛の原因となるセンノシドが含有される。センノシドには、加水分解されやすいセンノシドAと加水分解されにくいセンノシドB(いずれも配糖体であり、大腸内の細菌によって活性化される)が知られている。
【0037】
本発明の医薬組成物中の上記(A)成分の配合割合は、本発明の効果を奏する限り特に限
定されないが、(A)成分が、医薬組成物中に、センノシド量換算で、通常0.0001〜
20重量%程度、好ましくは0.001〜20重量%程度、より好ましくは0.001〜15重量%程度である。
【0038】
本発明の医薬組成物において、(A)成分の配合割合は、前記センノシドに換算された配
合割合を参考に適宜設定され得るが、例えば防風通聖散のエキスの乾燥重量に換算して、医薬組成物中に通常0.01〜95重量%程度、好ましくは1〜90重量%程度、より好ましくは5〜90重量%程度、さらに好ましくは10〜90重量%程度、とくに好ましくは30〜80重量%程度、とくに好ましくは50〜65重量%程度である。
【0039】
なお、本発明の医薬組成物中のセンノシドの含有量については、当業者に公知の定量法に従って測定することができる。
【0040】
(B)パンテチン類
本発明の医薬組成物の(B)成分としては、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸
、パントテン酸の塩、パンテテイン及びパンテノールからなる群から選択される少なくとも1種のパンテチン類が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、好ましくはパンテチンである。
【0041】
パンテチン(Pantethine)は、ビス(2−{3−[(2R)−2,4−ジヒドロキシ−
3,3−ジメチルブタノイルアミノ]プロパノイルアミノ}エチル)ジスルフィドとして
表され、パントテン酸(ビタミンB5)誘導体又は活性型ビタミンB5とも呼ばれる。
【0042】
また、(B)成分として薬学的に許容されるパンテチンまたはパントテン酸の塩を用いる
ことができ、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の鉱酸塩;酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩を挙げることができる。
【0043】
上記(B)成分はいずれも公知の化合物であり、従来公知の方法に従って合成することも
できるが、例えば、パンテチンA(第一三共プロファーマ株式会社製)等の商品も知られ
ており、商業的に入手することもできる。パンテチン以外の(B)成分として使用される化
合物についても公知であり、従来の方法に従って得ることができる。
【0044】
本発明の医薬組成物において(B)成分の配合割合は、本発明の効果を奏する限り特に限
定されないが、通常、パンテチン量換算で0.0001〜95重量%程度、好ましくは0.001〜80重量%程度、より好ましくは0.01〜60重量%程度、さらに好ましくは0.1〜45重量%程度、とくに好ましくは0.1〜15重量%程度である。
【0045】
なお、本発明の医薬組成物中のパンテチンの含有量については、日本薬局方医薬品各条・化学医薬品「パンテチン」に記載の定量法に従って測定することができる。
【0046】
本発明の医薬組成物における上記(A)成分と(B)成分の配合比率は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、例えば、排便促進と副作用の軽減を効果的に得る場合、原因成分である、(A)成分中のセンノシド1重量部に対して(B)成分(パンテチン量換算で)2〜800重量部程度、好ましくは10〜700重量部程度、より好ましくは10〜600重量部程度、さらに好ましくは20〜500重量部程度である。(A)成分が防風通聖散エ
キスである場合の(A)成分と(B)成分の配合比率は、前記センノシドに換算された配合割合を参考に適宜設定され得るが、例えば(A)成分(乾燥エキス総量)100重量部に対して(B)成分(パンテチン量換算で)0.1〜30重量部程度、好ましくは0.1〜25重量部重量部、より好ましくは0.2〜25重量部程度である。この配合比率によれば、防風通聖散を使用しても、排便促進と副作用の軽減を効果的に得ることができるうえに、抗肥満効果および肝機能向上作用に特に優れる医薬組成物とすることができる。
【0047】
(C)その他の成分
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、担体等と共に、従来公知の方法に従って、例えば、液剤(シロップ等を含む)等の液状製剤(懸濁剤含む)や、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)等の固形製剤形態の経口製剤が挙げられる。本発明の組成物としては、フィルムコート錠、糖衣錠、甘味剤コート錠、舌下錠等の錠剤又はカプセル剤の形態が好ましい。
【0048】
本発明の組成物が液状製剤である場合は、凍結保存することもでき、また凍結乾燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製剤やドライシロップ等は、使用時に滅菌
水等を加え、再度溶解して使用される。
【0049】
固形製剤として本発明の組成物を調製する場合、例えば、錠剤の場合であれば、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用することができる。このような担体としては、例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、ケイ酸等の賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、アルギン酸ナトリウム等の結合剤;乾燥デンプン、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、クロスポビドン、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等の崩壊剤;ステアリン、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤;グリセリン等保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。さらに錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。また、前記有効成分を含有する組成物を、ゼラチン、プルラン、デンプン、アラビアガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等を原料とする従来公知のカプセルに充填して、カプセル剤とすることができる。
【0050】
また、丸剤の形態に調製する場合は、担体としてこの分野で従来公知のものを広く使用できる。その例としては、例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0051】
上記以外に、添加剤として、例えば、界面活性剤、吸収促進剤、吸着剤、充填剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩を、得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択し使用することができる。
【0052】
また、アミノ酸、ビタミン類、有機酸塩類等の他の活性成分を含有させても良い。他の活性成分としては、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、シスチン、チロシン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシリジン、アルギニン、オルニチン、ヒスチジン等のアミノ酸;ビタミンA1、ビタミンA2、カロチン、リコピン(プロビタミンA)、ビタミンB6、ビタミンB1、ビタミンB2、アスコルビン酸、ニコチン酸アミド、ビオチン等のビタミン類;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の有機酸塩類が挙げられる。
【0053】
本発明の医薬組成物は、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤などの形態に調製することができる。これらの形態には、当該分野における通常の方法を用いて調製でき、例えば、錠剤は、(A)成分、(B)成分及びその他錠剤を得るために必要な賦形剤等を適宜添加し、よく混合分散させたのち打錠して得ることができる。また、散剤は、(A)成分と(B)成分及びその他散剤を得る為に必要な賦形剤等を適宜添加し、好適な方法にて粉体化して得ることができる。
【0054】
本発明の医薬組成物を各種製剤に調製した場合の1日摂取量は、患者の状態や症状の程度によって適宜変更され得るが、大人一人(体重60kg)に対する1日あたりの投与量は、(A)成分のセンノシド量として通常0.01〜50mg程度、好ましくは0.1〜4
0mg程度、より好ましくは0.1〜30mg程度、さらに好ましくは0.1〜15mg程度、とくに好ましくは0.1〜10mg程度、もっとも好ましくは0.1〜8mg程度である。本発明の医薬組成物によれば、強い腹痛などの副作用を有するセンノシドの服用量を少なくすることもでき、それにもかかわらず、十分な排便促進作用、便秘改善作用、抗肥満作用を発揮することができる。(A)成分として防風通聖散エキスを用いる場合は、
乾燥エキスとして通常0.1〜10g程度、好ましくは1〜8g程度、より好ましくは1.5〜6g程度である。また、本発明の医薬組成物は、通常一日1〜3回に分けて経口投与の形態で用いられる。服用時刻は、特に限定されないが、食前、食間または就寝前が好ましい。本発明の医薬組成物によれば、強い腹痛、血清中のケトン体量の上昇などの副作用を抑えることができるとともに、十分な排便促進作用、便秘改善作用、抗肥満作用を発揮することができる。
【0055】
本発明の医薬組成物は、排便促進用に用いることができ、特に便秘症の予防、症状の改善、治療に有用である。ここで、便秘症とは、日本内科学会の定義によると、「3日以上排便がない、または毎日排便があっても残便感がなくならない状態」をいい、多くの場合、便回数の低下、硬い便の他に残便感、腹痛、腹部膨満、嘔吐、食欲不振等の症状を伴う。
【0056】
また、本発明の医薬組成物は、脂質の過剰摂取による体重増加、遊離脂肪酸や血清中のトリグリセリドの増加抑制効果にも優れることから、抗肥満用医薬組成物としても有用である。
【0057】
さらに、本発明の医薬組成物は、肝機能向上作用をも有するものである。防風通聖散には肝機能障害を引き起こす可能性があるオウゴンが配合されていることから、肝機能が低下傾向にある肥満者に防風通聖散を服用させるのは望ましくない。しかしながら、本発明の医薬組成物は、このような肥満者に対しても安心して使用できる。
【0058】
防風通聖散は、単独で服用した場合に、腹痛、血清中のケトン体上昇等の副作用を有するが、本発明の医薬組成物によれば、防風通聖散によるこれらの副作用を軽減及び/又は防止することが可能である。従って、本発明は、防風通聖散の副作用軽減及び/又は防止用医薬組成物をも提供するものである。防風通聖散の副作用軽減方法において使用される各成分及びその配合量等については、上述の通りである。
【実施例】
【0059】
以下に試験例、処方例等を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0060】
試験例1.ラットにおける便秘改善効果
[被験動物]
SDラット(4週齢)雄を普通飼料「CE−2」(日本クレア株式会社製)で1週間馴化した(馴化時平均体重:180g)。
【0061】
馴化後のラットを、表2に記載の被験薬投与成分別に7群((i)ノーマル群、(ii)
コントロール群、(iii)パンテチン群、(iv)センノシド群、(v)センノシド・パンテチン群、(vi)防風通聖散群、(vii)防風通聖散・パンテチン群)(9匹/群)に分け、それぞれの群について、表1に示す配合割合の普通飼料または高脂肪・低食物繊維飼料にて85日間飼育した(飼育期間中、ラットにはエサおよび水を自由に摂取させた)。また各群について、一日1回、表2に示す被験物質(パンテチン、センノシド、防風通聖散)を経口投与した。コントロール群には、蒸留水を投与した。
【0062】
普通飼料は「CE−2」(日本クレア株式会社製)、パンテチンは80重量%パンテチン水溶液である「パンテチンA」(第一ファインケミカル株式会社製)、ラードおよびコーンスターチは日本クレア株式会社製のものをそれぞれ使用した。表中のパンテチン量は、パンテチンAのパンテチン含有率(80重量%)から算出した値である。
【0063】
本試験例において防風通聖散は、乾燥重量に換算して、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0およびカッセキ3.0を、水20倍重量(560重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライを用いて乾燥した「防風通聖散エキス」(スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った)を用いた。
【0064】
さらに、センノシドはノバルティスファーマ製「プルゼニド(登録商標)錠」(センノシドとして12mg)を用い、乳鉢にて粉砕したのち、表2に従い経口投与した。
【0065】
高脂肪飼料での飼育開始から21日目と42日目に、1日分の便を回収して重さを量り、体重あたりの糞重量を算出した。結果を下記表3に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
表3に示されるように、繊維摂取量の低下により、ノーマル群と比べてコントロール群に排便量の減少が見られ、便秘症状を確認できた。パンテチン群においては、その便秘症状に大きな改善は見られなかったが、センノシド群、センノシド・パンテチン群、防風通聖散群および防風通聖散・パンテチン群において排便量減少に改善が見られた。
【0070】
また、その改善をコントロール群の排便量に対する比で評価したところ、センノシド群、センノシド・パンテチン群および防風通聖散群では、42日間の長期服用において、その便秘改善度の低下が見られたが、防風通聖散・パンテチン群には、試験期間中の便秘改善効果の持続および向上の傾向が見られた。
【0071】
通常便秘薬の使用においては、長期の使用において薬剤に対する耐性や慣れが生じ、薬剤の効果が発揮されにくくなり、結果便秘改善効果が減衰されることが知られている。しかし、このような結果より、防風通聖散とパンテチンを併用することによって、このような便秘改善効果の減衰が見られないことが示された。
【0072】
試験例2.ヒトにおける便秘改善効果(I)
あらかじめ、排便状況についてのアンケートにて便秘症でない男性50名(平均年齢:31.8歳)について、その排便回数、排便量などが、均等に分散するよう5群((i)パ
ンテチンを服用するパンテチン群、(ii)防風通聖散を服用する防風通聖散群、(iii)防風
通聖散とパンテチンを服用する防風通聖散・パンテチン群、(iv)センノシドを服用するセンノシド群、(v)センノシドとパンテチンを服用するセンノシド・パンテチン群)にわけ
た。
【0073】
それぞれの群に、5日間、排便回数、便意回数および排便量について記録させた。排便量についてはゴルフボール何個分かを記録させた。
【0074】
その後5日間、1日3回、食間または食前に、それぞれ被験薬を服用させ、排便に関して同様に観察記録をつけさせた。また、観察期間中、腹痛について毎日観察させた。
【0075】
本試験例において使用された防風通聖散およびセンノシドは、いずれも前記試験例1と同じものである。パンテチンは第一三共製「パントシン錠100」(パンテチンとして10
0mg)を用い、1回あたりの服用量は1錠とした。各被験群に服用させた被験薬及び服用量を表4にまとめる。結果を下記表5および6に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
表5から明らかなように、パンテチン群においては排便回数および排便量についてパンテチン投与前と投与後に有意な変化が認められなかったが、そのパンテチンをセンノシドまたは防風通聖散を併用することで、排便回数および排便量が、パンテチン併用前に比べて有意に増加した。このように、センノシドまたは防風通聖散とパンテチンとを併用することで排便促進効果が向上したことが認められたが、その効果は、センノシド・パンテチン群に比べて、防風通聖散・パンテチン群の方がより一層高かった。
【0080】
また、表6から明らかなように、センノシドまたは防風通聖散のみを服用した場合、そ
れぞれ90%、70%もの被験者に副作用である腹痛がみられたが、パンテチンを併用することで、それぞれ40%、20%にまで低下させることができた。ここで、その腹痛減少率は、センノシドとパンテチンを併用した場合には2.25(=センノシド群/センノ
シド・パンテチン群)であったのに対して、防風通聖散とパンテチンを併用することで3.50(=防風通聖散群/防風通聖散・パンテチン群)にまで高めることができ、パンテチンを防風通聖散と組み合わせることが、腹痛減少により効果的であった。また、腹痛の程度(腹痛の重篤度)についても、センノシド・パンテチン群よりも防風通聖散・パンテチン群の方が軽かった。
【0081】
また、センノシド・パンテチン群において、センノシドの服用量(1日量)を、0.5mg(センノシド:パンテチン=1:600)、0.6mg(センノシド:パンテチン=1:500)、1mg(センノシド:パンテチン=1:300)、3mg(センノシド:パンテチン=1:100)、5mg(センノシド:パンテチン=1:60)、10mg(センノシド:パンテチン=1:30)、15mg(センノシド:パンテチン=1:20)、20mg(センノシド:パンテチン=1:15)および30mg(センノシド:パンテチン=1:10)とした場合、また、防風通聖散・パンテチン群において、防風通聖散の服用量(1日量)を、1000mg(防風通聖散:パンテチン=100:30)、1200mg(防風通聖散:パンテチン=100:25)および3000mg(防風通聖散:パンテチン=100:10)とした場合であっても、試験例2と同様にパンテチンを併用したことによる排便促進効果が顕著に向上し、また、センノシド・パンテチン群に比べて、防風通聖散・パンテチン群の方が、排便促進効果および腹痛軽減効果に優れていた。
【0082】
副作用(腹痛)については、センノシドの服用量が15mg(センノシド:パンテチン=1:20)以上から強くなる傾向があったが、センノシド単独で15mg服用する場合に比べるとその程度は低かった。すなわち、排便促進効果と副作用の軽減効果が得られるセンノシドとパンテチンの好ましい配合比率は、センノシド1重量部に対してパンテチン10〜600重量部程度、より好ましくは20〜500重量部程度であった。
【0083】
ここで、パンテチンに代えてパントテン酸カルシウムを用いた場合でも同様の傾向がみられた。
【0084】
試験例3.ヒトにおける便秘改善効果(II)
あらかじめ、排便状況についてのアンケートにて便秘症の男性30名(平均年齢:32.3歳)について、その排便回数、排便量などが、均等に分散するよう5群((i)パンテ
チンを服用するパンテチン群、(ii)防風通聖散を服用する防風通聖散群、(iii)防風通聖
散とパンテチンを服用する防風通聖散・パンテチン群、(iv)センノシドを服用するセンノシド群、(v)センノシドとパンテチンを服用するセンノシド・パンテチン群)にわけた。
【0085】
それぞれの群について、試験例2と同様に観察を行った。結果を下記表7に示す。
【0086】
【表7】

【0087】
表7から明らかなように、便秘傾向者に対して、センノシドまたは防風通聖散とパンテチンを併用することで試験例2と同様に排便回数および排便量がパンテチン併用前に比べて有意に増加した。また、排便率(排便回数/便意回数)についてもパンテチンを併用することで有意に増加した。つまり、センノシドまたは防風通聖散とパンテチンを併用することで便秘症を改善できることが認められた。
【0088】
便秘傾向者に対しても、センノシドとパンテチンを併用すると、排便回数および排便量ならびに副作用の低減において優れていたが、とくに防風通聖散とパンテチンを併用した方がさらにその効果が優れていた。
【0089】
また、腹痛の発生率とその程度は試験例2と同様であった。
【0090】
さらに、センノシド・パンテチン群において、センノシドの服用量(1日量)を、0.5mg(センノシド:パンテチン=1:600)、0.6mg(センノシド:パンテチン=1:500)、1mg(センノシド:パンテチン=1:300)、3mg(センノシド:パンテチン=1:100)、5mg(センノシド:パンテチン=1:60)、10mg(センノシド:パンテチン=1:30)、15mg(センノシド:パンテチン=1:20)、20mg(センノシド:パンテチン=1:15)および30mg(センノシド:パンテチン=1:10)とした場合、また、防風通聖散・パンテチン群において、防風通聖散の服用量(1日量)を、1000mg(防風通聖散:パンテチン=100:30)、1200mg(防風通聖散:パンテチン=100:25)および3000mg(防風通聖散:パンテチン=100:10)とした場合であっても、試験例3と同様にパンテチンを併用したことによる排便促進効果が顕著に向上し、また、センノシド・パンテチン群に比べて、防風通聖散・パンテチン群の方が、排便促進効果および腹痛軽減効果に優れていた。
【0091】
副作用(腹痛)については、センノシドの服用量が15mg(センノシド:パンテチン=1:20)以上から強くなる傾向があったが、センノシド単独で15mg服用する場合に比べるとその程度は低かった。すなわち、排便促進効果と副作用の軽減効果が得られるセンノシドとパンテチンの好ましい配合比率は、センノシド1重量部に対してパンテチン10〜600重量部程度、より好ましくは20〜500重量部程度であった。
【0092】
ここで、パンテチンに代えてパントテン酸カルシウムを用いた場合でも同様の傾向がみられた。
【0093】
本発明によれば、防風通聖散の投与量を増加させなくとも、排便促進作用を向上させることが可能となった。また、パンテチンに防風通聖散の副作用(腹痛)を低減させる効果を確認できた。すなわち、本発明の医薬組成物によれば、所望の排便を実現でき、かつ防風通聖散の副作用(腹痛)を低減させることが可能であることが示された。
【0094】
上記試験例2及び3で得られた結果より、1日あたりの排便回数、1日あたりの排便量について、各群の便秘者に対する効果上昇率を算出した。結果を下記表8に示す。
【0095】
【表8】

【0096】
表8に示される結果より、排便回数については、パンテチン群は便秘者に対してのみ改善されたが、センノシド群、センノシド・パンテチン群、防風通聖散群および防風通聖散・パンテチン群においては、便秘者・非便秘者の双方において改善された。なかでも、防風通聖散・パンテチン群は便秘者に対して、服用前後で3.33倍、非便秘者の1.89倍の改善効果がみられ、便秘者に対して特に優れた効果を発揮した。
【0097】
排便量については、パンテチン群以外の群において便秘者・非便秘者の双方において相乗効果を示したが、なかでも、防風通聖散・パンテチン群は、便秘者に対して、服用前後で2.22倍、非便秘者の1.22倍の改善効果がみられ、便秘者に優れた効果を発揮した。
【0098】
試験例4.ヒトにおける腹痛抑制効果
あらかじめ、排便状況についてのアンケートにて便秘症でない男性50名(平均年齢:31.4歳)について5群((i)酸化マグネシウムを服用する酸化マグネシウム群、(ii)
パンテチンを服用するパンテチン群、(iii)防風通聖散を服用する防風通聖散群、(iv)防
風通聖散と酸化マグネシウムを服用する防風通聖散・酸化マグネシウム群、(v)防風通聖
散とパンテチンを服用する防風通聖散・パンテチン群)にわけた。各群における1回あたりの服用量を下記表9に示す。それぞれの群に、5日間、1日3回、食間または食前に、それぞれ表7の被験薬を服用させ、腹痛の有無を答えさせた。
【0099】
本試験において使用された防風通聖散およびパンテチンはいずれも試験例2と同じものであり、酸化マグネシウムはスリーエーカルシウム株式会社製「3Aマグネシア」を用いた。結果を表10に示す。
【0100】
【表9】

【0101】
【表10】

【0102】
表10に示される結果より、便秘に対する効能が知られている酸化マグネシウムを防風通聖散と併用したところ、防風通聖散による腹痛を効果的に軽減することはできなかった。これに対して、パンテチンを防風通聖散と組み合わせたところ、腹痛を軽減することができた。すなわち、防風通聖散の腹痛を軽減するためには、酸化マグネシウムの併用では不十分であり、パンテチン類が有用であることが分かった。
【0103】
試験例5.ラットにおける肝機能上昇効果
試験例1の終了後、同じ試験条件にて85日間の長期投与試験を行った。85日目に採血と解剖を実施し、血清中のAST値の測定と、剖検による肝臓の肉眼観察を行った。結果
を下記表11及び12に示す。
【0104】
なお、血清中のAST値は、肝細胞の破壊(障害)が進むと血液中の値が異常に上昇して
くるため、肝機能の評価因子として用いることができ、この値に必要下限値はなく、値は小さいほど肝障害のリスクが低くなる。また、肉眼観察においては、肝臓の退色により脂肪肝、肝障害の進行を推測できる。
【0105】
【表11】

【0106】
【表12】

【0107】
表11にあるように、コントロール群は、高脂肪低食物繊維の飼料を与えたことにより、ノーマル群と比べてAST値の上昇が見られた。パンテチン群においては、そのAST値に変化は見られず、防風通聖散群においては、若干の減少傾向が見られた。さらに、防風通聖散・パンテチン群では、大きく値を減少させた。この値を、コントロール群を1として比較すると、防風通聖散・パンテチン群においては大きなAST値の減少が見られ、防風通聖
散とパンテチンの併用によって肝機能が向上していると考えられる。
【0108】
また、表12のように、肝臓の肉眼観察においても、ノーマル群と比べコントロール群に肝臓の退色がみられているが、防風通聖散・パンテチン群においては、その退色が抑えられている。肝臓の性状からも、防風通聖散とパンテチンの併用効果が確認できた。
【0109】
試験例6.ラットにおける抗肥満効果
SDラット(6ヶ月齢)雄を普通飼料「CE−2」(日本クレア株式会社製)で1週間
馴化した(馴化時平均体重:563g)。
【0110】
馴化後のラットを、表13に記載の飼料別に5群((i)ノーマル群、(ii)コントロ
ール群、(iii)防風通聖散群、(iv)パンテチン群、(v)防風通聖散・パンテチン群)(8匹/群)に分け、それぞれの群について、表13に示す配合割合の高脂肪飼料にて40日間飼育した(飼育期間中、ラットにはエサおよび水を自由に摂取させた)。
【0111】
飼育開始から32日目に採血を行い、血清中の中性脂肪、遊離脂肪酸およびケトン体の量について、それぞれ酵素法に従って測定した。また、高脂肪飼料での飼育開始から40日目にCT装置LaThetaLCT−100(アロカ株式会社製)を用いて、内臓脂肪率と体脂肪率を測定した。
【0112】
ここで、表中、防風通聖散エキスは、試験例1と同じものである。
【0113】
普通飼料は「CE−2」(日本クレア株式会社製)、パンテチンは80重量%パンテチン水溶液である「パンテチンA」(第一ファインケミカル株式会社製)、ラードおよびコーンスターチは日本クレア株式会社製のものをそれぞれ使用した。表中のパンテチン量は、パンテチンAのパンテチン含有率(80重量%)から算出した値である。
【0114】
結果を下記表13に示す。また、各群の体重変化を表14及び図1、血清中の中性脂肪、遊離脂肪酸、ケトン体の測定結果を表15及び図2にそれぞれ示す。
【0115】
【表13】

【0116】
【表14】

【0117】
【表15】

【0118】
表14及び15より、防風通聖散とパンテチンを組み合わせることにより、体重、中性脂肪、遊離脂肪酸、内臓脂肪率および皮下脂肪率に、相乗的な増加抑制効果が見られた。これらの効果は、防風通聖散、パンテチンそれぞれを単独で使用した場合と比べ、飛躍的に効果が上昇している。
【0119】
また、防風通聖散単独の使用で見られる、血清中のケトン体量の上昇が、パンテチンを併用することによって効果的に抑えられた。
【0120】
ケトン体量の上昇は、体内で脂質から作られたケトン体がうまくエネルギーとして使用されていないことを示しており、また、ケトン体量の上昇が続くと、酸性血症(ケトアシドーシス)へとつながることから、このケトン体量の上昇の抑制は、効率的な脂質代謝および酸性血症の予防として大変好ましい。
【0121】
<処方例>
以下に処方例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0122】
処方例1〜14に記載の処方に従って、常法により錠剤を製した。
【0123】
【表16】

【0124】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:防風通聖散と、
(B)成分:パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテイ
ン及びパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類を含む医薬組成物。
【請求項2】
便秘改善用である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
防風通聖散と、パンテチン、パンテチンの塩、パントテン酸、パントテン酸の塩、パンテテイン及びパンテノールから選択される少なくとも1種のパンテチン類とを併用することを特徴とする、防風通聖散の副作用の軽減方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−196996(P2009−196996A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62394(P2009−62394)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【分割の表示】特願2008−215640(P2008−215640)の分割
【原出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】