説明

半導体のパッケージ

【課題】金属と一体成形され場合においても反りなどによる不良を抑制できる半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物、それを用いて成形された半導体のパッケージ、およびそれを用いて製造された半導体部品を提供すること。
【解決手段】金属と一体成形された半導体のパッケージを成形するための硬化性樹脂組成物であって、硬化収縮が0.5%以下であり、かつ硬化後の硬度がHDD80以上であることを特徴とする半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体のパッケージ用樹脂組成物に関するものであり、更に詳しくは金属と一体成形され場合においても反りなどによる不良を抑制できる半導体のパッケージ用樹脂組成物、それを用いて成形された半導体のパッケージ、およびそれを用いて製造された半導体部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体には種々の形状の硬化性樹脂を用いたパッケージが適用されている。こうしたパッケージには半導体とパッケージ外部との電気的な接続のため、パッケージの強度保持のため、あるいは半導体から発生する熱をパッケージ外部へ伝えるなどのために、州の金属材料が用いられ、硬化性樹脂と一体成形される場合が多い。しかし、樹脂は一般に線膨張係数が大きく、一般に小さな線膨張係数を有する金属材料と線膨張係数が整合しにくいことから、加熱成形時、後硬化時、あるいは半導体部品として使用中における種々の加熱−冷却を伴う工程において反り、剥離、割れ、半導体へのダメージなどといった問題を生ずる場合がある。
【0003】
特に線膨張の不整合に伴う反りに関しては、金属の両面に均等になるように硬化性樹脂を成形することにより反りの低減をはかる方法もある。しかし、近年半導体から発生する熱量の増大により放熱性の高い設計が求められるようになっており、熱をパッケージの外へ有効に導くために、半導体素子を接着する金属がパッケージの底面を形成するようなパッケージ設計がなされるようになってきている(特許文献1、2)。その場合、上記のような反りの低減化をとることができず、反りの問題が重要となってくる。
【0004】
これまで樹脂による反りの低減に関しては、樹脂の線膨張を低減させて一体成形する金属の線膨張に近づけること、樹脂を低弾性率化することなどにより対策がとられてきた。しかし、線膨張を低減させるために無機フィラーを大量に充填すると樹脂の成形時の流動性が低下して成型加工性を損なうため限界があり、また低弾性化すると樹脂の強度が低下して半導体素子を保護するというパッケージとしての主要機能を損なうことにもなる。以上のことから、半導体のパッケージにおいて反りを低減化できる硬化性樹脂が求められている。
【0005】
一方、半導体から発生する熱(半導体が発光ダイオードの場合はさらに光)が増大してきており、半導体のパッケージ用樹脂の耐熱性(耐光性)がよりいっそう求めれるようになってきている。これらの要求に対して、耐熱性が高い、ヒドロシリル化反応によって硬化する樹脂が半導体のパッケージ用樹脂として適用されてきている(特許文献1、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−62272号公報
【特許文献2】特開2009−302241号公報
【特許文献1】特開2005−146191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、金属と一体成形され場合においても反りなどによる不良を抑制できる半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物、それを用いて成形された半導体のパッケージ、およびそれを用いて製造された半導体部品に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、硬化収縮が0.5%以下であり、かつ成形後の硬度がHDD80以上となる硬化性樹脂組成物を用いて、金属と一体成形された半導体のパッケージを成形とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
金属と一体成形された半導体のパッケージを成形するための硬化性樹脂組成物であって、硬化収縮が0.5%以下であり、かつ硬化後の硬度がHDD80以上であることを特徴とする半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物(請求項1)であり、
さらに、前記硬化性樹脂を硬化した樹脂と一体成形される金属との23℃から硬化性樹脂の硬化温度までにおける線膨張の差が0.5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物(請求項2)であり、
前記硬化性樹脂がヒドロシリル化反応により硬化する樹脂であることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の硬化性樹脂組成物(請求項3)であり、
前記硬化性樹脂における硬化性成分の1分子あたり平均の硬化性官能基の数が2.0を超え4.5以下の範囲の数であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性組成物(請求項4)であり、
前記硬化性樹脂が有機骨格を有する硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化性組成物(請求項5)であり、
前記半導体のパッケージが実質的に金属の片面に樹脂が成形されてなるパッケージであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物(請求項6)であり、
前記半導体が発光ダイオードであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物(請求項7)であり、
金属と一体成形された半導体のパッケージであって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする半導体のパッケージ(請求項8)であり、
前記半導体のパッケージが実質的に金属リードフレームの片面に樹脂が成形されてなるパッケージであることを特徴とする、請求項8に記載の半導体のパッケージ(請求項9)であり、
前記半導体が発光ダイオードであることを特徴とする、請求項8あるいは9に記載の半導体のパッケージ(請求項10)であり、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の半導体のパッケージを用いて製造された半導体部品(請求項11)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いれば、金属と一体成形され場合においても半導体のパッケージの反りなどによる不良を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(金属)
本発明において硬化性樹脂と一体成形される金属については種々のものがあるが、リードフレーム、電極用の金属端子、サブマウント基板、半導体素子から発生する熱を外部へ伝えるための金属、ヒートシンクなどをあげることができる。
【0013】
半導体のパッケージにおける金属の位置などについても特に定めないが、金属がパッケージの側面、上面、あるいは底面の一部あるいは全部を形成している場合において特に本発明の効果が得られやすい。尚、このような設計は、半導体のパッケージの外部との電気接続、あるいは/および半導体から生じる熱を外部に伝えることの有効性を高めるために、なされる場合がある。
【0014】
金属の材質についても特定はされないが、鉄、銅、アルミニウム、金、銀あるいは/およびそれらを含む合金があげられる。42アロイなどもその例である。金属としては均一の素材である場合もあるがめっきなどにより表面が異種金属などで処理されている場合もある。表面が銀めっきされた銅合金などもその例である。金属としては線膨張係数が小さい、具体的には20ppm/K以下である場合において本発明の効果は顕著である。
【0015】
金属の形状についても特定はされないが、使用される面積が多い場合に本発明の効果が得られやすい。具体的には半導体のパッケージの任意の平面断面において、金属の面積が50%以上となる場合、さらには70%以上となる場合、特には90%以上となる場合において本発明の効果が顕著となりやすい。
【0016】
(半導体のパッケージ)
本発明で言う半導体のパッケージとは、半導体素子あるいは/および外部取出し電極等を支持固定あるいは/および保護するために設けられた部材である。半導体素子を直接被覆せず、外部取り出し電極等を支持固定するものや発光ダイオードのリフレクターのような半導体素子の周囲や底面を形成するものであってもよい。
【0017】
この場合の半導体素子としては各種のものが挙げられる。例えばIC、LSI等の集積回路、トランジスター、ダイオード、発光ダイオード等の素子の他、CCD等の受光素子等を挙げることができる。
【0018】
形状についても特定されないが、半導体のパッケージが実質的に金属の片面に樹脂が成形されている形状を有する場合(MAPタイプ)において特に本発明の効果が得られやすい。
【0019】
尚、上記のように本発明の半導体のパッケージが半導体素子を直接被覆しないような場合などにおいては、さらに封止剤を用いて封しすることもでき、例えば従来用いられるエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ユリア樹脂、イミド樹脂等の封止樹脂を用いることができる。また、特開2002−80733、特開2002−88244で提案されているような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する脂肪族系有機化合物、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物、およびヒドロシリル化触媒を含有する硬化性組成物からなる封止剤を用いてもよく、この封止剤を用いる方が、パッケージ樹脂との接着性が高いという点、および透明性が高く本発明のパッケージの耐光性が高いという効果が顕著であるという点において、好ましい。 一方、樹脂封止を用いず、ガラス等でカバーしてハーメチック封止により封止することも可能である。
【0020】
また発光ダイオードや受光素子の場合などにおいてはさらにレンズを適用することも可能であり、封止剤をレンズ形状に成形してレンズ機能を持たせることも可能である。
【0021】
(成形方法)
本発明で言う半導体パッケージの成形方法としては各種の方法が用いられる。例えば、射出成形、トランスファー成形、RIM成形、キャスティング成形、プレス成形、コンプレッション成形等、熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂に一般に用いられる各種成形方法が用いられる。これらの内、成形サイクルが短く成形性が良好であるという点においてはトランスファー成形が好ましい。成形条件も任意に設定可能であり、例えば成形温度についても任意であるが、硬化が速く成形サイクルが短く成形性が良好になりやすいという点においては100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上の温度が好ましい。上記のような各種方法によって成形した後、必要に応じて後硬化(アフターキュア)することも任意である。後硬化した方が耐熱性が高くなり易い。
【0022】
成形は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。また、一定温度で行う方が成形サイクルを短くできるという点において好ましい。
【0023】
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。逆に、高温短時間で反応させる方が成形サイクルを短くできるという点において好ましい。
【0024】
反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で成形することもできる。ボイドの発生を抑制したり充填性をよくしたり場合によって発生する揮発分を除きやすいという点においては、減圧状態で硬化させることが好ましい。成形体へのクラックを防止できるという点においては、加圧状態で硬化させることが好ましい。
【0025】
(硬化収縮)
本発明で言う硬化収縮とは、本発明の硬化性樹脂組成物を硬化成形する場合における樹脂の寸法の収縮のことを言い、以下のような方法で測定することができる。
【0026】
内寸法が長辺80mmx短辺50mmであり厚み0.5mmのステンレス鋼(SUS304)製の長方形型枠を用いて、実施例の硬化性樹脂組成物を所定の温度(A℃)でプレス成形する。作成した長方形板状のプレス成形体を必要に応じて所定の条件で後硬化させる。得られた硬化物について23℃にて短片の寸法(Bmm)を測定する。また、23℃における型枠の短辺の内寸法(Cmm)を測定する。一方で得られた硬化物について23℃からX℃までの線膨張(Dppm)を熱機械分析(TMA)により測定する。この場合のTMAの測定は、窒素気流下、5℃/分昇温の条件で実施する。以上の結果より下記式に従って硬化収縮を計算する。
(1−((Bx(1+Dx10-6))/(Cx(1+17.3x10-6x(A−23)))))x100=硬化収縮(%)
【0027】
(硬度)
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化後の硬度がHDD80以上であり、より好ましくはHDD90以上である。この場合硬度はJISK7215に従って測定することができる。
【0028】
(線膨張)
硬化性樹脂を所定の条件で硬化したものを用いてTMAによって測定できる。TMAの測定条件は上記と同じである。また金属材料などの線膨張は文献等による既知の値を用いることができる
本発明において反りなどの問題をさらに抑制できるという点においては、前記硬化性樹脂を硬化した樹脂と一体成形される金属との23℃から硬化性樹脂の硬化温度までにおける線膨張の差が0.5%以下であることが好ましく、0.3%以下であることがより好ましい。一方で、線膨張の差があっても反りが低減できるという点においては、線膨張の差は0.1%以上、さらには0.2%以上、特には0.3%以上の場合に本発明の硬化が顕著に得られやすい。
【0029】
(硬化性樹脂)
本発明の硬化性樹脂としては種々の硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シリコーン樹脂(エラストマーおよびレジン)等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらの熱硬化性樹脂は単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0030】
耐熱性が高く耐光性も高くなりやすいという点では、ヒドロシリル化反応により硬化する樹脂であることが好ましい。
【0031】
接着性が高くなりやすく、また樹脂強度が高いものが得られるという点においては、有機骨格を有する硬化性樹脂であることが好ましい。
【0032】
これらの熱硬化性樹脂は単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0033】
また、より硬化収縮を低減しやすいという点において、硬化性樹脂組成物における硬化性成分(硬化反応に寄与する官能基を有する成分)の1分子あたり平均の硬化性官能基(硬化反応に寄与する官能基)の数が4.5以下であることが好ましく、4.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。一方、1分子あたり平均の硬化性官能基の数が少ないと、硬化性が低下したり、硬化物の強度が低下しやすいため、1分子あたり平均の硬化性官能基は2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。
【0034】
(特定の硬化性樹脂)
本発明の硬化性樹脂組成物としては、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する脂肪族系有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物、および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する硬化性組成物であってもよく、この場合には得られる硬化物の耐熱耐光性が高くなりやすい。以下、この特定の硬化性樹脂について説明する。
【0035】
((A)成分)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。
【0036】
((A)成分の骨格)
有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S及びハロゲン以外の元素を含まない化合物がより好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、半導体のパッケージとリードフレームや封止樹脂との接着性が低くなりやすいという問題がある。
【0037】
(A)成分の有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類できる。
【0038】
((A)成分が重合体の場合の例)
有機重合体系の(A)成分としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の骨格を有するものを挙げることができる。
【0039】
これらのうち、ポリエーテル系重合体としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。さらに具体的な例を示すと、
【0040】
【化1】

【0041】
(式中、R1、R2は構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
【0042】
その他の重合体としては、例えばアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体、エチレン−プロピレン系共重合体、ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体、ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソプレンあるいはブタジエンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル系共重合体、前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体、ポリサルファイド系重合体、ε−アミノカプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、ε−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ε−アミノラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体、例えばビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカルボネート系重合体、ジアリルフタレート系重合体、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)骨格としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0043】
これらの重合体骨格に、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基を導入して(A)成分とすることができる。
【0044】
この場合、炭素−炭素二重結合を有するアルケニル基は分子内のどこに存在してもよいが、反応性の点から側鎖または末端に存在する方が好ましい。
【0045】
アルケニル基を前記重合体骨格に導入する方法については、種々提案されているものを用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。
【0046】
重合後にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、末端、主鎖あるいは側鎖に水酸基、アルコキシド基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基を有する有機重合体に、その官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物を反応させることによりアルケニル基を末端、主鎖あるいは側鎖に導入することができる。上記官能基に対して反応性を示す活性基とアルケニル基の両方を有する有機化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド等のC3−C20の不飽和脂肪酸、酸ハライド、酸無水物等やアリルクロロホルメート(CH2=CHCH2OCOCl)、アリルブロモホルメート(CH2=CHCH2OCOBr)等のC3〜C20の不飽和脂肪族アルコール置換炭酸ハライド、アリルクロライド、アリルブロマイド、ビニル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)ベンゼン、アリル(ブロモメチル)ベンゼン、アリル(クロロメチル)エーテル、アリル(クロロメトキシ)ベンゼン、1−ブテニル(クロロメチル)エーテル、1−ヘキセニル(クロロメトキシ)ベンゼン、アリルオキシ(クロロメチル)ベンゼン、アリルイソシアネート等が挙げられる。
【0047】
また、エステル交換法を用いてアルケニル基を導入する方法がある。この方法はポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基をエステル交換触媒を用いてアルケニル基含有アルコール又はアルケニル基含有フェノール誘導体とエステル交換する方法である。アルコール残基との交換に用いるアルケニル基含有アルコール及びアルケニル基含有フェノール誘導体は、少なくとも1個のアルケニル基を有し少なくとも1個の水酸基を有するアルコール又はフェノール誘導体であれば良いが、水酸基を1個有する方が好ましい。触媒は使用してもしなくても良いが、チタン系および錫系の触媒が良い。
【0048】
上記化合物の例としては、ビニルアルコール、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、ネオペンチルグリコールモノアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールエタントリアリルエーテル、ペンタエリストールテトラアリルエーテル、1,2,6−ヘキサントリオールトリアリルエーテル、ソルビタントリアリルエーテル、
【0049】
【化2】

【0050】
などが挙げあれる。この中でも、入手の容易さから、アリルアルコール、ビニルアルコール、3−ブテン−1−オール、2−(アリルオキシ)エタノール、および
【0051】
【化3】

【0052】
が好ましい。
【0053】
さらに、上記アルコール又はフェノール誘導体の酢酸エステル等のエステル化物とポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分をエステル交換触媒を用いてエステル交換しながら、生成するポリエステル樹脂やアクリル樹脂のエステル部分のアルコール残基の酢酸エステル等の低分子量エステル化物を減圧脱揮等で系外に留去する方法でアルケニル基を導入する方法もある。
【0054】
また、リビング重合によりメチル(メタ)アクリレート等の重合を行った後、リビング末端をアルケニル基を有する化合物によって停止させる方法により末端にアルケニル基を導入することもできる。
【0055】
重合中にアルケニル基を導入する方法としては、例えば、ラジカル重合法で本発明に用いる(A)成分の有機重合体骨格を製造する場合に、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等の分子中にラジカル反応性の低いアルケニル基を有するビニルモノマーや、アリルメルカプタン等のラジカル反応性の低いアルケニル基を有するラジカル連鎖移動剤を用いることにより、有機重合体骨格の側鎖や末端にアルケニル基を導入することができる。
【0056】
(A)成分としては、分子量は特に制約はないが、100〜100,000の任意のものが好適に使用でき、アルケニル基含有有機重合体であれば500〜20,000のものが特に好ましい。分子量が500以下では可とう性の付与等の有機重合体の利用による特徴が発現し難く、分子量が100、000以上ではアルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
【0057】
((A)成分が単量体の場合の例)
有機単量体系の(A)成分としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0058】
((A)成分の炭素−炭素二重結合)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0059】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(I)
【0060】
【化4】

【0061】
(式中R1は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0062】
【化5】

【0063】
示される基がが特に好ましい。
【0064】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)
【0065】
【化6】

【0066】
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0067】
【化7】

【0068】
示される脂環式の基が特に好ましい。
【0069】
((A)成分の炭素−炭素二重結合と骨格の結合基)
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲン以外の元素を含まないものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0070】
【化8】

【0071】
【化9】

【0072】
が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0073】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0074】
【化10】

【0075】
が挙げられる。
【0076】
((A)成分の具体例)
有機重合体系の(A)成分の具体的な例としては、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0077】
【化11】

【0078】
(式中、R1はHまたはCH3、R2、R3は構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲン以外の元素を含まない炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0079】
【化12】

【0080】
(式中、R1はHまたはCH3、R4、R5は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0081】
【化13】

【0082】
(式中、R1はHまたはCH3、R6、R7は炭素数1〜20の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0083】
【化14】

【0084】
(式中、R1はHまたはCH3、R8、R9は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、lは1〜300の数を表す。)
【0085】
【化15】

【0086】
(式中、R1はHまたはCH3、R10、R11、R12は炭素数1〜6の2価の有機基、X、Yは炭素数0〜10の2価の置換基、n、m、l、pは1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
【0087】
有機単量体系の(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、
【0088】
【化16】

【0089】
【化17】

【0090】
の他、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0091】
(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0092】
((A)成分の好ましい要件)
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0093】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0094】
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0095】
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性が良好であるという観点からは、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0096】
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において1000ポイズ未満のものが好ましく、300ポイズ未満のものがより好ましく、30ポイズ未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0097】
(A)成分としては、耐光性がより高いという観点から、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0098】
また、特に耐光性が良好であるという観点からは、芳香環の(A)成分中の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0099】
得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0100】
((A)成分の好ましい構造1)
(A)成分としては、耐熱性および耐光性が特に高いという観点からは、下記一般式(III)
【0101】
【化18】

【0102】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0103】
上記一般式(III)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0104】
【化19】

【0105】
等が挙げられる。
【0106】
上記一般式(III)のR1としては、パッケージとリードフレームあるいは封止剤との接着性が良好になりうる、あるいは得られるパッケージの力学強度が高くなり得るという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0107】
【化20】

【0108】
で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましいR1の例としては、グリシジル基、
【0109】
【化21】

【0110】
等が挙げられる。
【0111】
上記一般式(III)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性が良好になりうるという観点からは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜50の一価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0112】
【化22】

【0113】
等が挙げられる。
【0114】
上記一般式(III)のR1としては、反応性が良好になるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つが
【0115】
【化23】

【0116】
で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(IV)
【0117】
【化24】

【0118】
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、
3つのR1のうち少なくとも2つが下記一般式(V)
【0119】
【化25】

【0120】
(式中R3は直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、R4は水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される有機化合物(複数のR3およびR4はそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0121】
上記一般式(V)のR3は、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られるパッケージの耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基であることがより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR3の例としては、
【0122】
【化26】

【0123】
等が挙げられる。
【0124】
上記一般式(V)のR3としては、得られるパッケージの耐熱性が良好になりうるという観点からは、直接結合あるいは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいR3の例としては、
【0125】
【化27】

【0126】
が挙げられる。
【0127】
上記一般式(V)のR4は、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0128】
ただし、上記のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0129】
以上のような一般式(III)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0130】
【化28】

【0131】
等が挙げられる。
【0132】
((A)成分の好ましい構造2)
また、(B)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(A)成分の揮発性が低くなり、得られるパッケージからのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(A)成分の例として上記したような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物から選ばれた1種以上の化合物と、SiH基を有する化合物(β)との反応物も好ましい。
【0133】
((β)成分)
(β)成分は、SiH基を有する化合物であり、SiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンもその例である。
【0134】
具体的には、例えば
【0135】
【化29】

【0136】
【化30】

【0137】
が挙げられる。
【0138】
ここで、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(VI)
【0139】
【化31】

【0140】
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0141】
一般式(VI)で表される化合物中の置換基R1は、C、H、O以外の構成元素を含まないものが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0142】
入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0143】
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物をあげることができる。
【0144】
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0145】
(SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分の反応)
次に、本発明の(A)成分として、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0146】
尚、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(A)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(A)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性組成物を作成することもできる。
【0147】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、反応中のゲル化が抑制できるという点においては、一般に、混合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、X/Y≧2であることが好ましく、X/Y≧3であることがより好ましい。また(A)成分の(B)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧X/Yであることが好ましく、5≧X/Yであることがより好ましい。
【0148】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0149】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0150】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0151】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0152】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0153】
反応させる場合のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(β)成分、触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物に触媒を混合したものを、(β)成分にを混合する方法が好ましい。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(β)成分の混合物に触媒を混合する方法だと反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものにSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0154】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0155】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0156】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0157】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0158】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分を反応させた後に、溶媒あるいは/および未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物あるいは/および(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(A)成分が揮発分を有さないため(B)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0159】
以上のような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分の反応物である(A)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物等を挙げることができる。
【0160】
((A)成分のその他の反応性基)
(A)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0161】
((A)成分の混合)
(A)成分は、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
(B成分)
(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である。
【0162】
(B)成分については1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限がなく、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0163】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、(A)成分との相溶性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(VI)
【0164】
【化32】

【0165】
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0166】
一般式(VI)で表される化合物中の置換基R1は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0167】
一般式(VI)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0168】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは1,000、さらに好ましくは700である。
【0169】
(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0170】
((B)成分の好ましい構造)
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
【0171】
((α)成分)
ここで(α)成分は上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と同じもの(α1)も用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり力学強度が高い硬化物となりやすい。
【0172】
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすい。
【0173】
((α2)成分)
(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなるという点においては、化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものであることが好ましい。
【0174】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0175】
(α2)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系化合物に分類できる。
【0176】
重合体系化合物としては例えば、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0177】
また単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物、シリコン系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0178】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(I)
【0179】
【化33】

【0180】
(式中R1は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0181】
【化34】

【0182】
示される基が特に好ましい。
【0183】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(II)
【0184】
【化35】

【0185】
(式中R2は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0186】
【化36】

【0187】
示される脂環式の基が特に好ましい。
【0188】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(α2)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなりやすいという点においては、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0189】
【化37】

【0190】
【化38】

【0191】
が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0192】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0193】
【化39】

【0194】
が挙げられる。
【0195】
(α2)成分の具体的な例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン等のような芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン等の脂肪族系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール等の芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン等のシリコン化合物等が挙げられる。さらに、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、等の片末端にビニル基を有するポリマーあるいはオリゴマー類等も挙げることができる。
【0196】
(α2)成分の構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを用いることができる。分子量分布も特に制限ないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0197】
(α2)成分のガラス転位温度が存在する場合はこれについても特に限定はなく種々のものが用いられるが、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、ガラス点移転温度は100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。好ましい樹脂の例としてはポリブチルアクリレート樹脂等が挙げられる。逆に得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、ガラス転位温度は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが最も好ましい。ガラス転位温度は動的粘弾性測定においてtanδが極大を示す温度として求めることができる。
【0198】
(α2)成分としては、得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、炭化水素化合物であることが好ましい。この場合好ましい炭素数の下限は7であり、好ましい炭素数の上限は10である。
【0199】
(α2)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0200】
上記のような(α1)成分あるいは/および(α2)成分としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0201】
((β)成分)
(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する化合物であり、鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンもその例である。
【0202】
具体的には、例えば
【0203】
【化40】

【0204】
【化41】

【0205】
が挙げられる。
【0206】
ここで、(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(V)
【0207】
【化42】

【0208】
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0209】
一般式(V)で表される化合物中の置換基R1は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0210】
入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0211】
(β)成分のその他の例として、ビスジメチルシリルベンゼンなどのSiH基を有する化合物をあげることができる。
【0212】
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((α)成分と(β)成分の反応)
次に、本発明の(B)成分として、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0213】
尚、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(B)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性組成物を作成することもできる。
【0214】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による硬化物の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に混合する(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(B)成分の(A)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
【0215】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0216】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0217】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0218】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0219】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0220】
反応させる場合の(α)成分、(β)成分、触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合したものを、(β)成分にを混合する方法が好ましい。(α)成分、(β)成分の混合物に触媒を混合する方法だと反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものに(α)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0221】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0222】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0223】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0224】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0225】
(α)成分と(β)成分を反応させた後に、溶媒あるいは/および未反応の(α)成分あるいは/および(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため(A)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0226】
以上のような、(α)成分と(β)成分の反応物である(B)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルノルボルネンとビスジメチルシリルベンゼンとの反応物等を挙げることができる。
【0227】
((A)成分と(B)成分の混合)
(A)成分と(B)成分の組合せについては(A)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(B)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。
【0228】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比において、好ましい範囲の下限はY/X≧0.3、より好ましくはY/X≧0.5、さらに好ましくはY/X≧0.7であり、好ましい範囲の上限は3≧Y/X、より好ましくは2≧Y/X、さらに好ましくは1.5≧Y/Xである。好ましい範囲からはずれた場合には十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
【0229】
((C)成分)
(C)成分はヒドロシリル化触媒である。
【0230】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0231】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0232】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0233】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(B)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0234】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0235】
(添加剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には種々の添加剤を添加することができる。
【0236】
(無機フィラー)
添加剤(充填材)として無機フィラーを用いることもできる。無機フィラーを添加すると強度や硬度を高くしたり、線膨張率を低減化したりするのに有効である。
【0237】
無機フィラーとしては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミ、炭化ケイ素、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、無機バルーン、銀粉等の無機フィラーをはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用あるいは/および提案されている無機フィラー等を挙げることができる。 無機フィラーとしては、半導体素子へダメージを与え難いという観点からは、低放射線性であることが好ましい。
【0238】
無機フィラーは適宜表面処理してもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。
【0239】
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0240】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0241】
その他にも無機フィラーを添加する方法が挙げられる。例えばアルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマーあるいはオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物等を、本発明の組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法も挙げることができる。
【0242】
以上のような無機フィラーのうち硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きく、リードフレームとの接着性が高くなりやすいという観点からは、シリカ系無機フィラーが好ましい。さらに、成形性、電気特性等の物性バランスがよいという点において溶融シリカが好ましく、パッケージの熱伝導性が高くなり易く放熱性の高いパッケージ設計が可能になるという点においては結晶性シリカが好ましい。より放熱性が高くなり易いという点ではアルミナが好ましい。また、パッケージ樹脂の光の反射率が高く、得られる発光ダイオードの光取りだし効率が高くなりやすいという点においては、酸化チタンが好ましい。その他、補強効果が高くパッケージの強度が高くなり易いという点においてはガラス繊維、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウムが好ましい。
【0243】
無機フィラーの平均粒径や粒径分布としては、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、特に限定なく各種のものが用いられるが、通常用いられる平均粒径の下限は0.1μm、流動性が良好になりやすいという点から好ましくは0.5μmであり、通常用いられる平均粒径の上限は120μm、流動性が良好になりやすいという点から好ましくは60μm、より好ましくは15μmである。
【0244】
無機フィラーの比表面積についても、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、各種設定できる。
【0245】
無機フィラーの形状としては、破砕状、片状、球状、棒状等、各種のものが用いられる。アスペクト比も種々のものが用いられる。得られる硬化物の強度が高くなりやすいという点においてはアスペクト比が10以上のものが好ましい。また、樹脂の等方性収縮の点からは繊維状よりは粉末状が好ましい。あるいは、高充填時にも成形時の流れ性がよくなり易いという点においては球状のものが好ましい。
【0246】
これら無機フィラーは単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0247】
無機フィラーの添加量は特に限定されないが、線膨張係数の低減化効果が高く、かつ成形時の組成物の流動性が良好であるという観点からは、好ましい添加量の下限は全組成物中の30重量%、より好ましくは50重量%であり、さらに好ましくは75重量%であり、好ましい添加量の上限は全組成物中の95重量%、より好ましくは85重量%である。
【0248】
無機フィラーの混合の順序としては、各種方法をとることができるが、組成物の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(A)成分に(C)成分および無機フィラーを混合したものと、(B)成分を混合する方法が好ましい。(B)成分に(C)成分あるいは/および無機フィラーを混合したものに(A)成分を混合する方法をとる場合は、(C)成分存在下あるいは/および非存在下において(B)成分が環境中の水分あるいは/および無機フィラーとの反応性を有するため、貯蔵中等に変質することもある。また、反応成分である(A)成分、(B)成分、(C)成分がよく混合され安定した成形物が得られやすいという点においては、(A)成分、(B)成分、(C)成分を混合したものに無機フィラーを混合することが好ましい。
【0249】
これら無機フィラーを混合する手段としては、従来エポキシ樹脂等に用いられあるいは/および提案されている種々の手段を用いることができる。例えば、2本ロールあるいは3本ロール、遊星式撹拌脱泡装置、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリーミキサー等の撹拌機、プラストミル等の溶融混練機等が挙げあられる。これらのうち、高充填であっても無機フィラーの十分な分散性が得られやすいという点においては、3本ロール、溶融混練機が好ましい。無機フィラーの混合は、常温で行ってもよいし加熱して行ってもよい。また、常圧下に行ってもよいし減圧状態で行ってもよい。高充填であっても無機フィラーの十分な分散性が得られやすいという点においては、加熱状態で混合することが好ましく、無機フィラー表面の塗れ性を向上し十分な分散性が得られやすいという点においては減圧状態で混合することが好ましい。
【0250】
(硬化遅延剤)
本発明の硬化性樹脂組成物がヒドロシリル化反応によって硬化する硬化性樹脂組成物の場合にはの保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。
【0251】
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、3−ヒドロキシ−3−フェニル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のプロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、ジメチルマレート等のマレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
【0252】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
【0253】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10-1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は103モル、より好ましくは50モルである。
【0254】
また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0255】
(接着性改良剤)
本発明の組成物には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0256】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。
【0257】
シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基あるいは/および加水分解性のケイ素基を少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基、ウレイド基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0258】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するシラン類、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するシラン類、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基を有するシラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のシラン類等が挙げられる。
【0259】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
【0260】
カップリング剤の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0261】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0262】
エポキシ化合物の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は1重量部、より好ましくは3重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0263】
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0264】
また、本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、ほう素系化合物あるいは/およびアルミニウム系化合物あるいは/およびチタン系化合物が好ましい。シラノール縮合触媒となるアルミニウム系化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソフロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類:、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート類等が例示でき、取扱い性の点からアルミニウムキレート類がより好ましい。シラノール縮合触媒となるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類:チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類:オキシ酢酸やエチレングリコール等の残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が例示できる。
【0265】
シラノール縮合触媒となるほう素系化合物としては、ほう酸エステルが挙げられる。ほう酸エステルとしては下記一般式(VII)、(VIII)で示されるものを好適に用いることが出来る。
【0266】
【化43】

【0267】
【化44】

【0268】
(式中R1は炭素数1〜48の有機基を表す。)
ほう酸エステルの具体例として、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリメチル、ほう素メトキシエトキサイドを好適に用いることができる。
【0269】
これらほう酸エステルは1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。混合は事前に行なっても良く、また硬化物作成時に混合しても良い。
【0270】
これらほう酸エステルのうち、容易に入手でき工業的実用性が高いという点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリノルマルブチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
【0271】
硬化時の揮発性を抑制できるという点からは、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが好ましく、なかでもほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリフェニル、ほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
【0272】
揮発性の抑制、および作業性がよいという点からは、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピルが好ましく、なかでもほう酸トリノルマルブチルがより好ましい。
【0273】
高温下での着色性が低いという点からは、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチルが好ましく、なかでもほう酸トリメチルがより好ましい。
【0274】
シラノール縮合触媒を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0275】
また、これらのシラノール縮合触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0276】
また、本発明においては接着性改良効果をさらに高めるために、さらにシラノール源化合物を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール源としては、例えばトリフェニルシラノール、ジフェニルジヒドロキシシラン等のシラノール化合物、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等を挙げることができる。
【0277】
シラノール源化合物を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0278】
また、これらのシラノール源化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0279】
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類あるいは/および酸無水物類を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、
【0280】
【化45】

【0281】
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0282】
これらのカルボン酸類あるいは/および酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましいカルボン酸類あるいは/および酸無水物類としては、例えば、
【0283】
【化46】

【0284】
テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0285】
カルボン酸類あるいは/および酸無水物類を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0286】
また、これらのカルボン酸類あるいは/および酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0287】
本発明の組成物には、上記のシラン化合物を使用することができる。シラン化合物は、リードとの密着性向上に寄与し、パッケージとリードの界面からの水分の浸入の防止に効果的である。これを例示すると、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等が挙げられ、中でも特にジメチルジメトキシシランが好ましい。
【0288】
(熱硬化性樹脂の硬化物)
熱硬化樹脂は樹脂を硬化させたものを、粉砕して粒子状態で混合してもよい。熱硬化性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0289】
(熱可塑性樹脂)
本発明の組成物には特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0290】
熱可塑性樹脂としては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0291】
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0292】
熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、(A)成分や(B)成分との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0293】
熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は硬化性組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は硬化性組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなりやすいし、多いと耐熱性(高温での弾性率)が低くなりやすい。
【0294】
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0295】
熱可塑性樹脂は(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)成分あるいは/および(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態あるいは/および混合状態としてもよい。
【0296】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
【0297】
(老化防止剤)
本発明の組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
【0298】
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
【0299】
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0300】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0301】
(ラジカル禁止剤)
本発明の組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0302】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0303】
(紫外線吸収剤)
本発明の組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0304】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0305】
(その他添加剤)
本発明の組成物には、その他、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
【0306】
(溶剤)
本発明の組成物は溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0307】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。
【0308】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0309】
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0310】
(発光ダイオードのための添加剤)
さらに、本発明の組成物には必要に応じて、種々の発光ダイオード特性改善のための添加剤を添加してもよい。添加剤としては例えば、発光素子からの光を吸収してより長波長の蛍光を出す、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体等の蛍光体や、特定の波長を吸収するブルーイング剤等の着色剤、光を拡散させるための酸化チタン、酸化アルミニウム、メラミン樹脂、CTUグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のような拡散材、アルミノシリケート等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物等の熱伝導性フィラー等を挙げることができる。
【0311】
発光ダイオード特性改善のための添加剤は均一に含有させても良いし、含有量に傾斜を付けて含有させてもよい。
【0312】
(離型剤)
本発明の組成物には成形時の離型性を改良するために種々の離型剤を添加してもよい。
【0313】
離型剤としては、従来使用されている各種のものが用いられる。例えば、金属石鹸、ワックス類等が挙げられる。ここでいう金属石鹸とは、一般に長鎖脂肪酸と金属イオンが結合したものであり、脂肪酸に基づく無極性あるいは低極性の部分と、金属との結合部分に基づく極性の部分を一分子中に合わせて持っていれば使用できる。長鎖脂肪酸としては、例えば炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中では、入手性が容易であり工業的実現性が高いという点からは炭素数1〜18の飽和脂肪酸が好ましく、さらに、離型性の効果が高いという点からは炭素数6〜18の飽和脂肪酸がより好ましい。金属イオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の他に亜鉛、コバルト、アルミニウム、ストロンチウム等が挙げられる。金属石鹸をより具体的に例示すれば、ステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、ラウリン酸リチウム、オレイン酸リチウム、2−エチルヘキサン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸マンガン、リシノール酸バリウム、などが例示される。これらの金属石鹸の中では、入手性が容易であり、安全性が高く工業的実現性が高いという点からステアリン酸金属塩類が好ましく、特に経済性の点から、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛からなる群から選択される1つ以上のものが最も好ましい。
【0314】
この金属石鹸の添加量としては特に制限はないが、好ましい量の下限は組成物全体100重量部に対して0.025、より好ましくは0.05重量部であり、好ましい量の上限は組成物全体100重量部に対して5重量部、より好ましくは4重量部である。添加量多すぎる場合は硬化物の物性の低下をきたし、少なすぎると金型離型性が得られないことがある。
【0315】
ワックス類としては、天然ワックス、合成ワックス、酸化または非酸化のポリオレフィン、ポリエチレンワックス等が例示できる。
【0316】
尚、離型剤を添加しなくても十分な離型性が得られる場合には離型剤は用いない方がよい。
【0317】
(Bステージ化)
本発明の組成物は、各成分および添加剤等の配合物をそのまま用いてもよいし、加熱等により部分的に反応(Bステージ化)させてから使用してもよい。Bステージ化することにより粘度調整が可能であり、トランスファー成形性を調整することもできる。また、硬化収縮をより抑制する効果もある。
【0318】
(組成物性状)
本発明の組成物としては上記したように各種組み合わせのものが使用できるが、トランスファー成形などによる成形性が良好であるという点においては、組成物としては150℃以下の温度で流動性を有するものが好ましい。
【0319】
組成物の硬化性については、任意に設定できるが、成形サイクルが短くできるという点においては120℃におけるゲル化時間が120秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがより好ましい。また、150℃におけるゲル化時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。また、100℃におけるゲル化時間が180秒以内であることが好ましく、120秒以内であることがより好ましい。
【0320】
この場合のゲル化時間は、以下のようにして調べられる。設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に組成物100mgを置いてゲル化するまでの時間を測定してゲル化時間とする。
【0321】
組成物が使用される製造工程において、組成物中へのボイドの発生および組成物からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点においては、硬化中の重量減少が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0322】
硬化中の重量減少は以下のように調べられる。熱重量分析装置を用いて封止剤10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めることができる。
【0323】
また、電子材料等として用いた場合にシリコーン汚染の問題を起こし難いという点においては、この場合の揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であることが好ましい。
【0324】
(硬化物性状)
耐熱性が良好であるという観点からは、組成物を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃以上となるものが好ましく、150℃以上となるものがより好ましい。
【0325】
この場合、Tgは以下のようにして調べられる。3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度をTgとする。
【0326】
また、リードフレーム等にイオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、硬化物からの抽出イオン含有量が10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましく、1ppm未満であることがさらに好ましい。
【0327】
この場合、抽出イオン含有量は以下のようにして調べられる。裁断した硬化物1gを超純水50mlとともにテフロン製容器(テフロンは登録商標)に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。一方同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
【0328】
硬化物の色としては、各種のものが用いられるが、発光ダイオードの光取り出し効率が高くなりやすいという点においては白色が好ましく、発光ダイオードをディスプレイ装置に用いた場合にコントラストが高くなりやすいという点においては黒色が好ましい。
【0329】
硬化物の線膨張係数としては、特に制約はないが、リードフレーム等の金属やセラミック等との接着性が良好になりやすいという点においては、線膨張係数は100℃において50ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましい。また、封止樹脂等の有機材料との接着性が良好になりやすいという点においては、線膨張係数は100℃において70ppm以上であることが好ましく、100ppm以上であることがより好ましい。また、硬化時、硬化後、熱試験時にパッケージと封止剤との間に応力が発生しにくく信頼性が高くなりやすいという点においては、封止剤と近い線膨張係数および線膨張係数の温度依存性を有することが好ましい。
【0330】
(発光ダイオードの用途)
本発明の半導体は従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、ロジック、メモリーなどのLSI、各種センサー、受発光デバイスなどをあげることができる。また、半導体が発光ダイオードの場合も従来公知の各種の用途に用いることができる。具体的には、例えば液晶表示装置等のバックライト、照明、センサー光源、車両用計器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライト等を挙げることができる。
【実施例】
【0331】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
【0332】
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H−NMRの測定によりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応した以下の構造を有するものであることがわかった。
【0333】
【化47】

【0334】
(合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン720g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン240gを入れ、気相部を窒素で置換した後、ジャケット温50℃で加熱、攪拌した。アリルグリシジルエーテル171g、トルエン171g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.049gの混合液を90分かけて滴下した。滴下終了後にジャケット温を60℃に上げて40分反応、1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認した。トリアリルイソシアヌレート17g、トルエン17gの混合液を滴下した後、ジャケット温を105℃に上げて、トリアリルイソシアヌレート66g、トルエン66g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.033gの混合液を30分かけて滴下した。滴下終了から4時間後に1H−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの未反応率は0.8%だった。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンとトルエンとアリルグリシジルエーテルの副生物(アリルグリシジルエーテルのビニル基の内転移物(シス体およびトランス体))が合計5,000ppm以下となるまで減圧留去し、無色透明の液体を得た。1H−NMRの測定によりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテル及びトリアリルイソシアヌレートと反応したものであり平均的に以下の構造を有するものであることがわかった。
【0335】
【化48】

【0336】
(a+b=3、c+d=3、e+f=3、a+c+e=3.5、b+d+f=5.5)
【0337】
(実施例1)
トリアリルイソシアヌレート2.9g、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート28.1g、合成例2で得た生成物69.0g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.018g、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.1gを混合して液状硬化性樹脂組成物を得た。この液状組成物100重量部に、球状シリカ(株式会社龍森製、MSR−3500)550重量部、酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR820)250重量部を混合し、本発明の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物とした。
【0338】
本組成物中の硬化性成分(トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、合成例2で得た生成物)の1分子あたり平均の硬化性官能基の数は3.1と計算される。
【0339】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同じ液状組成物100重量部に、球状シリカ(株式会社龍森製、MSR−3500)710重量部、酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークPC−3)300重量部を混合し、本発明の半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物とした。
【0340】
本組成物中の硬化性成分は実施例1と同じであるので、1分子あたり平均の硬化性官能基の数も同じである。
【0341】
(比較例1)
トリアリルイソシアヌレート40.2g、合成例1で得た生成物59.8g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.3gを混合して液状硬化性樹脂組成物を得た。この液状組成物100重量部に、球状シリカ(株式会社龍森製、MSR−3500)550重量部、酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR820)250重量部を混合し、半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物とした。
【0342】
本組成物中の硬化性成分(トリアリルイソシアヌレート、合成例1で得た生成物)の1分子あたり平均の硬化性官能基の数は4.7と計算される。
【0343】
(測定例1)硬化収縮の測定
内寸法が23℃において長辺80mmx短辺50mmであり厚み0.5mmのステンレス鋼(SUS304)製の長方形型枠を用いて、実施例の硬化性樹脂組成物を150℃/5分の条件でプレス成形した。作成した長方形板状のプレス成形体をオーブン中で150℃/1時間、180℃/0.5時間の条件で後硬化させた。得られた硬化物について23℃にて寸法を測定したところ、その短辺はLmmであった。また、型枠の23℃における短辺の内寸法を測定すると50.07mmであった。一方得られた硬化物の23℃から150℃の線膨張(ppm)を熱機械分析(TMA)により測定した。TMAの測定は、窒素気流下、5℃/分昇温の条件で実施した。以上の結果より下記式に従って硬化収縮を計算した。
(1−(Lx(1+線膨張x10-6)/50.07x(1+17.3x10-6x(150−23))))x100(%)
【0344】
(測定例2)硬度
得られた硬化物について、JISK7215に従って硬度を測定した。
【0345】
(測定例3)反り
測定例1で用いたものと同じ型枠を用いて、長辺90mmx短辺60mmで厚み0.15mmの長方形の銅板上に、150℃/5分の条件で実施例及び比較例の樹脂を一体成形した。得られた銅板/硬化性樹脂の一体成形物をオーブン中で150℃/1時間、180℃/0.5時間の条件で後硬化させた。成形物を23℃まで冷却後、平板上に上に凸となるように静置し、成形物の平板上から最も高い場所の高さを測定した。
【0346】
以上の測定の結果を表1に示した。
【0347】
【表1】

【0348】
表に示されるとおり、本発明の硬化性組成物を用いれば、硬化収縮が小さいため金属と一体成形した場合においても反りが少なく、かつ硬度が高く半導体のパッケージとして十分な強度を有している。
【0349】
(比較例2)
ヒドロシリル化反応で硬化する硬化性シリコーン樹脂組成物であるJCR6140AおよびB(東レダウコーニング性)を1/1の重量比で混合して液状硬化性樹脂組成物を得た。この液状組成物100重量部に、球状シリカ(株式会社龍森製、MSR−3500)550重量部、酸化チタン(石原産業株式会社製、タイペークR820)250重量部を混合し、半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物とした。
【0350】
このものを上記測定例3の方法に従って反りを測定したところ1mm以下であった。しかし、硬度はHDD0と低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属と一体成形された半導体のパッケージを成形するための硬化性樹脂組成物であって、硬化収縮が0.5%以下であり、かつ硬化後の硬度がHDD80以上であることを特徴とする半導体のパッケージ用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、前記硬化性樹脂を硬化した樹脂と一体成形される金属との23℃から硬化性樹脂の硬化温度までにおける線膨張の差が0.5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂がヒドロシリル化反応により硬化する樹脂であることを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性樹脂における硬化性成分の1分子あたり平均の硬化性官能基の数が2.0を超え4.5以下の範囲の数であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記硬化性樹脂が有機骨格を有する硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記半導体のパッケージが実質的に金属の片面に樹脂が成形されてなるパッケージであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記半導体が発光ダイオードであることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
金属と一体成形された半導体のパッケージであって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を用いて成形したことを特徴とする半導体のパッケージ。
【請求項9】
前記半導体のパッケージが実質的に金属リードフレームの片面に樹脂が成形されてなるパッケージであることを特徴とする、請求項8に記載の半導体のパッケージ。
【請求項10】
前記半導体が発光ダイオードであることを特徴とする、請求項8あるいは9に記載の半導体のパッケージ。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載の半導体のパッケージを用いて製造された半導体部品。

【公開番号】特開2011−213961(P2011−213961A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85899(P2010−85899)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】