説明

半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法

【課題】半導体ウエハの面粗化処理と反り矯正処理との両立を、ショットブラスト加工により達成する。
【解決手段】半導体ウエハ1の面粗化および形状矯正の加工方法であって、半導体ウエハ1の少なくとも一面に、表面粗さ調整用の投射材として反り矯正用の投射材よりも相対的に硬度が高く粒径が小さい粒子を用いてショットブラスト処理を行うことにより半導体ウエハ1の表面粗さを調整するとともに、反り矯正用の投射材として表面粗さ調整用の投射材よりも相対的に硬度が低く粒径が大きい粒子を用いて部分的にショットブラスト処理を行うことにより半導体ウエハ1の反りを矯正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板として用いられる半導体ウエハの加工方法であって、特に、ショットブラストを利用した半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板として用いられる半導体ウエハ、特に、弾性表面波用基板において、バルク波を除去する目的などで半導体ウエハの裏面を面粗化することが行われている。その面粗化方法は、旧来はエッチングや遊離砥粒によるラッピング加工であったが、均一な品質の加工が可能であること、および生産性の向上といった効果が得られることから、近年はショットブラストが採用されてきた。特許文献1には、それにかかる従来技術が開示されている。
【0003】
面粗化の対象となる半導体基板は、難加工物質であり、チョクラルスキー法等で育成されたインゴットをワイヤーソーなどでスライスして、半導体ウエハとして形成するが、切断後に、直径6インチ、厚さ1350μmの半導体ウエハで、40〜120μm程度の反りが生じる。この反りを矯正するために、面粗化加工前に、熱処理や、面研削加工の加工量を増やし、形状の修正を行うなど工程が必要であった。しかし、熱処理では、処理に長い時間が掛かり、生産性が低下し、また、面研削加工で加工量を増やす対策では、収量を低下させるといった問題があり、処理の簡素化や加工能率の改善が求められていた。
【0004】
本発明者は、半導体ウエハの面粗化に使用するショットブラストを半導体ウエハの反り矯正に使用できないかと考えた。反りなどの形状矯正にショットブラストが用いられる従来技術としては、特許文献2に記載の技術が挙げられる。しかし、特許文献2の技術では、面粗化と形状矯正とを同一条件のショットブラスト加工で処理しようとしており、当該技術を半導体ウエハの反り矯正に適用するに際し、形状矯正能力が不足し、これを補うために、処理時間を長くすると、面粗化状態が悪化するといった問題が生じた。
【0005】
さらに、特許文献3では、反りおよび厚みのばらつきの抑制された半導体ウエハを得るために、半導体ウエハの面内で厚み分布を計測して、厚みの大きい位置を数値制御加工法によりブラスト加工し、半導体ウエハの厚みを均一化させる加工法が開示されている。しかし、その技術では、半導体ウエハの反りの矯正技術については得るものがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−345276号公報
【0007】
【特許文献2】特開2007−94057号公報
【0008】
【特許文献3】特開2010−207935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の前記の問題点を解消し、半導体ウエハの面粗化処理と反り矯正処理との両立を、ショットブラスト加工により達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題のもとに、本発明は、半導体ウエハの面粗化処理および反り矯正処理を行うに際に、各処理毎に異なる投射材(噴射粉末)を使い分けることにより、各処理を合理的で最適な状態として達成している。
【0011】
すなわち、本発明は、半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法であって、半導体ウエハの少なくとも一面に、表面粗さ調整用の投射材として反り矯正用の投射材よりも相対的に硬度が高く粒径が小さい粒子を用いてショットブラスト処理を行うことにより半導体ウエハの表面粗さを調整するとともに、反り矯正用の投射材として表面粗さ調整用の投射材よりも相対的に硬度が低く粒径が大きい粒子を用いて部分的にショットブラスト処理を行うことにより半導体ウエハの反りを矯正することを特徴とする(請求項1)。表面粗さの調整、反りの矯正の処理は、上記の記載順に限定されず、記載順と逆に、反りの矯正、表面粗さの調整の順序であってもよい。
【0012】
また、本発明は、上記半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法において、半導体ウエハとしてのサファイアウェハの面粗化および形状矯正の加工にあたり、表面粗さ調整用の投射材として#150〜#400のSiC(炭化シリコン)粉末を用い、反り矯正用の投射材として#200〜#400のAl(酸化アルミニウム)もしくはそれより軟質の粉末を用いることを特徴とする(請求項2)。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ショットブラスト処理によって面粗化処理および反り矯正処理が連続して行えるため、加工前の焼き鈍しなどの別工程を用意する必要がなく、加工処理が低コストとなること、また、面粗化処理の条件と反り矯正処理との条件が独立して合理的で最適な状態として設定できるため、各処理について優れた処理品質が得られること、これらの結果、難加工物質としての半導体ウエハの表面または裏面の面粗さを任意の粗さに作り込め、しかも、半導体ウエハの形状を目標の形状に矯正できること、などの特有の効果が得られる(請求項1)。
【0014】
本発明の半導体ウエハの面粗化加工および形状矯正加工と従来のラップ加工とを比較すると、本発明の方法では、生産性が向上し、しかも、半導体ウエハの面内での平面のばらつきが小さくできるから、従来のラップ加工よりも製品の品質が向上する(請求項1)。
【0015】
このように、本発明では、半導体ウエハの面粗化工程が従来と比較し大きく簡便化し、生産性を上げ、コストを下げることができ、また、形状矯正工程により半導体ウエハの形状を自由にコントロールすることが可能となり、これによって半導体ウエハの平面形状の均一性が向上し、歩留まりの向上が期待できる(請求項1)。
【0016】
また、半導体ウエハとしてのサファイアウェハの面粗化加工および形状矯正加工にあたって、表面粗さ調整用の投射材として#150〜#400のSiC(炭化シリコン)粉末を用い、反り矯正用の投射材として#200〜#400のAl(酸化アルミニウム)もしくはそれより軟質の粉末を用いると、サファイアウェハに対して面粗化処理および反り矯正処理が合理的で最適な状態として実現でき、各処理の品質が向上し、しかも、各処理が他の処理に影響しなくなり、有利となる(請求項2)。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半導体ウエハの製造工程フロー図であり、図中の(1)は従来例、(2)は本発明の例を示す。
【図2】本発明の半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法を実施するときのブラスト加工装置の平面図である。
【図3】半導体ウエハの一般的な反り形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1中の(1)の従来例に示すように、半導体ウエハの製造工程は、チョクラルスキー法などにより育成された単結晶インゴットの結晶育成、インゴット打ち抜き、インゴットの端面研削加工、インゴットの円筒研削加工(円周面研削加工)、結晶方位確認用のオリエンテーションフラット加工もしくはノッチ加工、ワイヤーソーなどによるスライシングによる切断加工の工程を経て多数の薄いウエハを形成し、つぎに形状矯正のための熱処理、固定平面研削加工、ウエハ外周研削加工、熱処理、表面研磨加工および洗浄の一連の工程を経て半導体ウエハとなる。
【0019】
上記の従来例に対して、本発明の半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法は、図1中の(2)に示すように、ブラスト加工の工程において、半導体ウエハの少なくとも一面、例えば裏面に、表面粗さ調整用の投射材として反り矯正用の投射材よりも相対的に硬度が高く粒径が小さい粒子を用いてショットブラスト処理を行うことによって半導体ウエハの表面粗さを目標の粗さに作り込むとともに、反り矯正用の投射材として表面粗さ調整用の投射材よりも相対的に硬度が低く粒径が大きい粒子を用いて部分的にショットブラスト処理を行うことによって半導体ウエハの反りを矯正する。
【0020】
ブラスト加工(ショットブラスト処理)は、半導体ウエハの面粗化および反り矯正のための工程であるから、最も適切な工程位置、例えばウエハ外周研削加工とこれに続く次の熱処理との間に設けられる。ショットブラスト処理は、半導体ウエハの反りを矯正することから、従来例での矯正用の最初の熱処理は、不要となる。このように、本発明の半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法は、従来例に対して、最初の熱処理の工程を省略し、一例としてウエハ外周研削加工とこれに続く次の熱処理との間にブラスト加工の工程を入れたものとなっている。
【0021】
ショットブラスト処理の条件は、面粗化の目的、反り矯正の目的ごとに設定される。面粗化は、投射材の噴射運動によって、半導体ウエハの表面を削り、面を粗く作り込む加工であるから、その作用効果を有効に発揮させるために、反り矯正用の投射材よりも相対的に高硬度で、粒径の小さい粒子の投射材を用いる。これに対し、反り矯正は、投射材の噴射運動によって、半導体ウエハの表面層に歪みを与え、この歪みによって反りを矯正する加工であるから、その作用効果を有効に発揮させるために、表面粗さ調整用の投射材よりも相対的に低い硬度すなわち軟質で大径の粒子の投射材を用いる。各処理の条件および作用効果は、互いに独立するように設定するとよい。すなわち、面粗化処理では、半導体ウエハの反りに影響がなく、反りの矯正処理では、半導体ウエハの裏面の面粗度に影響がない方が加工制御が容易である。
【0022】
図2は、本発明の半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法にもとづいて、加工対象の半導体ウエハ1にショットブラスト加工により面粗化処理および反り矯正処理を実施するためのブラスト加工装置2の一例を示している。
【0023】
固定平面研削、ウエハ外周研削の加工された例えば20枚の半導体ウエハ1は、ウエハinの位置において、反時計方向に回転する回転ステージ3の外周位置で、同一円周上のウェハステージ6に等間隔で位置決め状態でセットされ、面粗化処理、反り矯正処理の後にウエハoutの位置において回転ステージ3のウェハステージ6から取り外されるようになっている。
【0024】
面粗化処理は、回転ステージ3の周囲に配置した面粗化用の例えば6本の噴射ガン5により行われ、反り矯正処理は、形状矯正用の例えば2本の噴射ガン4により行われる。
【0025】
面粗化用の6本の噴射ガン5は、回転テージ3の外周において、3箇所の処理位置毎に2個対として回転テージ3の直径方向に整列状態となって、対応の半導体ウエハ1の裏面に向き合っており、図示しない移動支持手段によって、回転テージ3の直径方向に対して平行に揺動自在または直線往復移動自在に支持されている。
【0026】
図2において、右側の2本の噴射ガン5は、対応の半導体ウエハ1の中心より右の半円部分の面に向き合い、左側の2本の噴射ガン5は、対応の半導体ウエハ1の中心より左の半円部分の面に向き合い、さらに、中間位置の2本の噴射ガン5は、対応の半導体ウエハ1の直径部分の面に向き合っている。このようにして、6本の噴射ガン5は、全体として半導体ウエハ1のすべての裏面に向き合っている。
【0027】
また、形状矯正用の2本の噴射ガン4は、噴射ガン5と同様に、回転テージ3の外周において、対応の半導体ウエハ1の裏面に向き合い、図示しない移動支持手段により、回転テージ3の直径方向に対して平行に揺動自在または直線往復移動自在に支持されている。
【0028】
面粗化のためのショットブラスト処理は、次のように行われる。図示しない回転駆動装置によって、半導体ウエハ1がセットされた回転ステージ3を一例として反時計方向に40rpm程度で回転させる。面粗化のための各処理位置において、噴射ガン5を揺動させ、噴射ガン5からの投射材を半導体ウエハ1の対向面に噴射し、その面を目的の粗さに合わせて粗さの作り込み加工をする。この時、それぞれの噴射ガン5は、外周から回転ステージ3の中心へ向かうにしたがって、往復移動のスピードを変化させることにより、半導体ウエハ1の面に対し噴射時間を均一となるように調整する。また、投射材の噴射圧力は、0.12〜0.6MPaの範囲で目的の粗さに合わせ変化させ、投射材の噴射時間(噴射量)も目的の粗さに合わせて経験的または実験結果にもとづいて調整する。
【0029】
また、回転ステージ3の外周から中心への噴射ガン5の移動、回転ステージ3の中心から外周への噴射ガン5の移動の往復動作を吹き付け回数1回とし、固定平面研削加工された半導体ウエハ1の面の状態に合わせ、吹き付け回数を1〜30回の範囲で変化させて面粗化加工を行う。この時、半導体ウエハ1に対する投射材の面圧力の調整は、半導体ウエハ1と噴射ガン5との距離の調節、噴射ガン5の噴射圧力の加減により行うが、必要に応じて、半導体ウエハ1の面に対して噴射ガン5の噴射角度を1°<噴射角度≦90°の範囲で変化させることにより変化させることも可能である。
【0030】
次に、反り矯正のためのショットブラスト処理は、つぎのように行われる。図2のように回転ステージ3のウエハステージ6に半導体ウエハ1をセットし、図示しない回転駆動割り出し装置によって回転ステージ3を回して、反り矯正の必要な半導体ウエハ1を形状矯正用の2本の噴射ガン4の位置に移動させる。次に、噴射ガン4を中心方向に揺動移動または往復移動させながら半導体ウエハ1の裏面に投射材の噴射を行い、半導体ウエハ1の指定部分に反り矯正方向の歪みを導入する加工を施し、このときの歪みの発生によって半導体ウエハ1の反り矯正を行い、矯正後の半導体ウエハ1をウエハoutの位置において回転ステージ3のウェハステージから取り外す。
【0031】
半導体ウエハ1の指定部分すなわち歪み導入位置は、半導体ウエハ1の反り面を予め測定し、特定される。この測定後に、半導体ウエハ1は、2本の噴射ガン4によって矯正可能な状態として回転ステージ3のウェハステージ6に位置決めされる。
【0032】
加工後、回転ステージ3を回転し、次の半導体ウエハ1を形状矯正用の噴射ガン4の位置へ移動させる。この操作を繰り返し、全てもしくは一部の半導体ウエハ1に対して同様の形状矯正加工を行う。
【0033】
反り矯正のために回転ステージ3のウェハステージ6にセットする半導体ウエハ1は、固定平面研削加工の工程により加工された均一な厚さ(1〜2μm程度の厚さのばらつき)に修正された物で、平面研削工程によって発生した均一な歪が半導体ウエハ1の全面に反りとして存在している。また、半導体ウエハ1の形状は、通常、切断加工の工程で発生した形状を維持している。
【0034】
そこで、半導体ウエハ1について、前記のように、反り矯正のためのショットブラスト処理の加工前に、反り形状の測定が行われ、この形状測定によって、平面からの浮き上がり部分が反り矯正用の加工域として確認され、反り矯正処理の加工域が指定位置すなわち歪み導入位置として特定される。
【0035】
図3は、半導体ウエハ1の最も一般的な反り形状を示している。半導体ウエハ1の反りが図3のように円柱面のような単純な形状のとき、半導体ウエハ1は、ウェハステージ6の底平面に対して、半導体ウエハ1の中心を通る円柱面の母線部分で接触しており、ウェハステージ6の底平面からの浮き上がりは、半導体ウエハ1の中心を通る上記母線から離れるしたがって大きく現れ、両端位置で最大となる。
【0036】
したがって、回転テージ3のウェハステージ6に半導体ウエハ1をセットするとき、半導体ウエハ1の中心を通る円柱面の母線を回転ステージ3の半径方向に一致させれば、浮きの大きな両端位置は、反り矯正のための指定位置となり、それぞれ噴射ガン4に向き合うことになる。このようにして、2本の噴射ガン4の移動方向に対して、半導体ウエハ1の指定位置すなわち歪み導入位置が平行となるようにセットされる。
【0037】
反り矯正のためのショットブラスト処理のときに、次の事項が重要となる。すなわち、反り矯正用の投射材は、半導体ウエハ1の素材を面粗化しない硬度の材質を選択するものとし、また、加工圧力は、半導体ウエハ1の裏面を面粗化しない程度に調整する。加工圧力の調整は、噴射ガン4の噴射圧力、半導体ウエハ1と噴射ガン4との距離によって調節するか、あるいは場合によっては、半導体ウエハ1の面に対する噴射ガン4の噴射角度を変えることによっても加減できる。反り矯正用の投射材の上記の条件を半導体ウエハ1の反りの程度や材質に応じて調整し、調整後の投射材を半導体ウエハ1の特定の矯正部分(浮き上がり部分)へと投射し、矯正部分に他の部分より大きな圧縮応力を与えることによって、半導体ウエハ1の形状を矯正する。
【0038】
図2の例は、一例として面粗化処理の後に、反り矯正処理を行っている。しかし、それらの2つの処理の順序は、前後しても問題はない。面粗化処理が反り矯正後の平坦な面に行われるならば、粗さの作り込みは平坦な面に均一に行える可能性がある。この観点からすれば、反り矯正処理、面粗化処理の順序が好ましいといえる。
【0039】
また、図2の例では、面粗化処理と反り矯正処理とは、異なる位置で行われているが、両者の処理は、同じ位置において、同一の噴射ガンを面粗化用の噴射ガン5、形状矯正用の噴射ガン4として異なる時間に使い分けて行うこともできる。さらに、図3は、半導体ウエハ1の凹面を処理面として両端部を噴射ガン4に向き合わせているが、半導体ウエハ1の処理面は、半導体ウエハ1の置き方を上下逆にすれば、半導体ウエハ1の凸面とすることもでき、この場合、凸面頂部が噴射ガン4に向き合うことになる。
【実施例1】
【0040】
実施例1は、図2のブラスト加工装置2を用いて、半導体ウエハ1としてのサファイアウェハについてショットブラスト処理を行う具体的な例である。実施例1では、反り矯正用の投射材として、Al(酸化アルミニウム)粉末を採用し、また、表面粗さ調整用の投射材として、SiC(炭化シリコン)粉末を採用している。
【0041】
図2に示すように、ブラスト加工装置2の前面より加工対象の20枚の半導体ウエハ1をローディングし、半導体ウエハ1を回転ステージ3のウエハステージ6へとセットする。この時、事前にレーザ干渉計などによる測定で、確認されたウエハ形状から回転ステージ3に対し反りの方向が一定になるようにセットしておく。
【0042】
次に、表面粗さ調整用の投射材としてSiC(炭化シリコン)粉末の#220番手を使用し、加工圧力0.2MPa、吹き付け回数23回、回転ステージ3の回転数40rpmの条件にて面粗さ(算術平均あらさRa)0.7〜0.8μm、面内の粗さばらつき0.15μm程度の粗さを作り込む処理を行う。以上の加工を半導体ウエハ1の面粗化加工とする。
【0043】
反り矯正加工は、図2のブラスト加工装置2おいて、形状矯正用の噴射ガン4の位置に半導体ウエハ1を移動させ、反り矯正用の投射材としてAl(酸化アルミニウム)粉末の#200番手を使用し、圧力を0.3MPa、吹き付け回数を5回の条件にて形状矯正加工を行った。
【0044】
加工後は、回転ステージ3の回転により、次の半導体ウエハ1を形状矯正用の噴射ガン4の位置へと移動させ、次の半導体ウエハ1について形状矯正加工を行う。この操作を繰り返し、全ての半導体ウエハ1もしくは指定した半導体ウエハ1の反り矯正加工を行う。
【0045】
以上の2つの加工の終了後に、半導体ウエハ1は、ブラスト加工装置2の前面より収納用のカセットへアンロードされる。このように、面粗化および反り矯正の2つの加工を1台のブラスト加工装置2によって行うことで、生産性の向上を図っている。
【0046】
半導体ウェハ1がサファイアウェハの場合、投射材(粉末)の粗さは、実験結果に基づいて以下のようにして決定される。
【0047】
粗さ調整用の投射材(粉末)については、サファイアウェハの一般的な裏面粗さのより望ましい範囲の面粗さ(算術平均あらさRa)0.05〜1.0μmの範囲内を達成するために、上下限が規定される。実験によれば、#150よりも粗い(#数字の小さい)SiC(炭化シリコン)粉末を使用したときは、裏面粗さ(算術平均あらさRa)が1.0μmを超え、#400よりも細かい(#数字の大きい)SiC(炭化シリコン)粉末を使用したときは、裏面粗さ(算術平均あらさRa)が0.05μmを下回る。したがって、サファイアウェハの表面粗さ調整用の投射材としては、#150〜#400のSiC(炭化シリコン)粉末を採用しない場合、裏面粗さのより望ましい範囲を満たす他の加工条件を探さなければならない。
【0048】
反り矯正用の投射材(粉末)に関しても、サファイアウェハに十分な歪みを加え、かつウェハ割れが発生しづらい領域ということから、上下限が規定される。#200よりも粗い(#数字の小さい)Al(酸化アルミニウム)粉末を使用したときは、ウェハ割れが発生し易くなり、#400よりも細かい(#数字の大きい)粉末を使用したときは、サファイアウェハに十分な歪みを与えられづらいので、所要の矯正効果が得られない場合、他の加工条件の調整が必要となる。したがって、サファイアウェハの反り矯正用の投射材としては、#200〜#400のAl(酸化アルミニウム)もしくはそれより軟質の粉末を採用することがより望ましい。
【0049】
サファイアウェハ以外の材料の半導体ウェハ1の場合に、粗さ調整用の投射材(噴射粉末)や反り矯正用の投射材(噴射粉末)のあらさは、半導体ウェハ1の材料に応じて上記の観点から決定される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の方法は、半導体ウエハ1の円柱の周面、楕円柱の周面や円錐の円錐面のような単純な反りを想定している。しかし、形状矯正用の噴射ガン4の移動経路が数値制御により任意に設定すれば、半導体ウエハ1の反り形状を自由に矯正できるため、本発明の方法は、従来の加工方法では矯正が困難な波状の形状、球面状の形状あるいは上記の面のねじれ面など複雑な反り形状を意図的に安定的に矯正するときにも利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 半導体ウエハ
2 ブラスト加工装置
3 回転ステージ
4 形状矯正用の噴射ガン
5 面粗化用の噴射ガン
6 ウエハステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハの加工方法であって、半導体ウエハの少なくとも一面に、表面粗さ調整用の投射材として反り矯正用の投射材よりも相対的に硬度が高く粒径が小さい粒子を用いてショットブラスト処理を行うことにより半導体ウエハの表面粗さを調整するとともに、反り矯正用の投射材として表面粗さ調整用の投射材よりも相対的に硬度が低く粒径が大きい粒子を用いて部分的にショットブラスト処理を行うことにより半導体ウエハの反りを矯正することを特徴とする半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法。
【請求項2】
半導体ウエハとしてのサファイアウェハの面粗化および形状矯正の加工にあたり、表面粗さ調整用の投射材として#150〜#400のSiC(炭化シリコン)粉末を用い、反り矯正用の投射材として#200〜#400のAl(酸化アルミニウム)もしくはそれより軟質の粉末を用いることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハの面粗化および形状矯正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4561(P2013−4561A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131022(P2011−131022)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】