説明

半導体スイッチング装置

【課題】本発明は、ノイズの発生を抑えつつ、ダイオードの逆回復電流を抑制できる半導体スイッチング装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本願の発明にかかる半導体スイッチング装置は、誘導負荷への電流の供給を制御するスイッチング素子と、該誘導負荷の還流電流が流れるように該誘導負荷に接続されたダイオードと、該ダイオードの逆回復電流が流れる配線と、該配線の少なくとも一部を覆うように形成された磁界吸収体と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイオードを備えた半導体スイッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スイッチング素子及び当該スイッチング素子と逆並列に接続された還流ダイオードを備えたパワースイッチング回路が開示されている。このパワースイッチング回路では、還流ダイオードの逆回復電流が流れる配線に対してインダクタンスが直列に接続されている。このインダクタンスにより逆回復電流が低減されるため、スイッチング素子のスイッチングに伴う損失を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−195054号公報
【特許文献2】特開2007−252029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、インダクタンスにより逆回復電流を低減すると、インダクタンスにエネルギーが蓄えられる。そして、インダクタンスに蓄えられたエネルギーがパワースイッチング回路に放出されることでノイズの原因となることがあった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ノイズの発生を抑えつつ、ダイオードの逆回復電流を抑制できる半導体スイッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の発明にかかる半導体スイッチング装置は、誘導負荷への電流の供給を制御するスイッチング素子と、該誘導負荷の還流電流が流れるように該誘導負荷に接続されたダイオードと、該ダイオードの逆回復電流が流れる配線と、該配線の少なくとも一部を覆うように形成された磁界吸収体と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本願の第2の発明にかかる半導体スイッチング装置は、整流ダイオードを有するコンバータ回路と、該整流ダイオードの逆回復電流が流れる配線と、該配線の少なくとも一部を覆うように形成された磁界吸収体と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノイズの発生を抑えつつ、ダイオードの逆回復電流を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置を示す回路図である。
【図2】フェライトコアの拡大図である。
【図3】図1のインバータ回路のU相、スナバ回路のダイオード、及びフェライトコアを取り出した回路図である。
【図4】半導体スイッチング装置からスナバ回路を外した場合の逆回復電圧及び逆回復電流の波形を示す図である。
【図5】半導体スイッチング装置を用いた場合の逆回復電圧及び逆回復電流の波形を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る半導体スイッチング装置を用いた場合の、逆回復電圧及び逆回復電流の波形を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図9】本発明の実施の形態4に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図10】本発明の実施の形態5に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図11】本発明の実施の形態6に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図12】本発明の実施の形態7に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図13】配線をフェライトコアに複数周巻きつけたことを示す図である。
【図14】本発明の実施の形態8に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図15】本発明の実施の形態9に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【図16】本発明の実施の形態10に係る半導体スイッチング装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置を示す回路図である。なお、図面全体を通して同一又は対応する構成要素には同一の符号を付して説明の繰り返しを省略する。
【0011】
半導体スイッチング装置10はインバータ回路12とスナバ回路14を備えている。インバータ回路12は電源16から供給された電流をスイッチングしてモータ18を制御するものである。スナバ回路14はスイッチング素子などにサージ電圧が印加されることを抑制する回路である。最初にインバータ回路12について説明し、その後、スナバ回路14について説明する。
【0012】
インバータ回路12はU相、V相、及びW相の3相を有する3相交流インバータ回路である。インバータ回路12はスイッチング素子20S及び22Sを備えている。スイッチング素子20Sの一端(コレクタ)は電源16の高電圧側に接続され、他端(エミッタ)はスイッチング素子22Sを介して電源16の低電圧側に接続されている。スイッチング素子20Sにはダイオード20Dが接続されている。具体的には、ダイオード20Dのカソードはスイッチング素子20Sの一端に接続され、アノードはスイッチング素子20Sの他端に接続されている。つまり、ダイオード20Dはスイッチング素子20Sに逆並列に接続されている。また、スイッチング素子22Sにも、ダイオード22Dが逆並列に接続されている。
【0013】
上述したスイッチング素子20S及び22S、並びにダイオード20D及び22Dはインバータ回路のU相を形成するものである。U相とモータ18は、スイッチング素子20Sのエミッタとスイッチング素子22Sのコレクタを結ぶ点(以後、U相の中点という、他の相も同様である)とモータ18とを接続する配線21によって接続されている。この配線21を介してU相の入出力が行われる。
【0014】
V相はスイッチング素子24S及び26S、並びにダイオード24D及び26Dにより構成されている。V相の中点とモータ18は配線25によって接続されている。W相はスイッチング素子28S及び30S、並びにダイオード28D及び30Dにより構成されている。W相の中点とモータ18は配線29によって接続されている。なお、V相及びW相は前述のU相と同様の構成である。
【0015】
スナバ回路14は、ダイオード32及び34を備えている。ダイオード32のカソードはスイッチング素子20Sの一端に接続され、アノードは配線21に接続されている。一方、ダイオード34のカソードは配線21に接続され、アノードはスイッチング素子22Sの他端に接続されている。配線21のうちダイオード32のアノード及びダイオード34のカソードが接続される場所は接続点P1とする。
【0016】
配線21にはフェライトコア44が取り付けられている。具体的には、配線21のうちU相の中点と接続点P1を結ぶ部分に、その部分を覆うようにフェライトコア44が取り付けられている。図2はフェライトコア44の拡大図である。フェライトコア44は環状であり、当該環に配線21が通されている。
【0017】
図1のスナバ回路14の説明に戻る。スナバ回路14は、ダイオード36及び38を備えている。ダイオード36のアノードとダイオード38のカソードは配線25に接続されている。配線25のうちダイオード36のアノード及びダイオード38のカソードが接続される場所は接続点P2とする。
【0018】
配線25にはフェライトコア46が取り付けられている。具体的には、配線25のうちV相の中点と接続点P2を結ぶ部分に、その部分を覆うようにフェライトコア46が取り付けられている。フェライトコア46はフェライトコア44と同じ形状である。
【0019】
さらに、スナバ回路14は、ダイオード40及び42を備えている。ダイオード40のアノードとダイオード42のカソードは配線29に接続されている。配線29のうちダイオード40のアノード及びダイオード42のカソードが接続される場所は接続点P3とする。
【0020】
配線29にはフェライトコア48が取り付けられている。具体的には、配線29のうちW相の中点と接続点P3を結ぶ部分に、その部分を覆うようにフェライトコア48が取り付けられている。フェライトコア48はフェライトコア44と同じ形状である。このように構成された半導体スイッチング装置は、各スイッチング素子をスイッチングし、モータ18へ供給する電流を制御する。
【0021】
次に、図3を参照して半導体スイッチング装置10の動作例を説明する。図3は図1のインバータ回路12のU相(U相50と称する)、スナバ回路14のダイオード32及び34(スナバ回路52と称する)、並びにフェライトコア44を取り出した回路である。まず、スイッチング素子20Sはオフ状態を維持し、スイッチング素子22Sをオン状態とする。そうすると、電源16の高電圧側からモータ18、接続点P1、U相50の中点、スイッチング素子22Sを通り、電源16の低電圧側に電流が流れる。
【0022】
続いてスイッチング素子20Sのオフ状態を維持し、スイッチング素子22Sをオフ状態とする。そうすると、モータ18に蓄えられたエネルギーは、還流電流として放出される。還流電流は、ダイオード20Dとダイオード32を経由して放出される。
【0023】
続いてスイッチング素子20Sのオフ状態を維持し、スイッチング素子22Sを再びオン状態とする。そうすると、還流電流が流れていたダイオード20Dとダイオード32が逆回復する。このとき、ダイオード32の逆回復電流はフェライトコア44により抑制され、かつ遅延される。具体的には、逆回復電流が流れる配線において発生する磁界が、一定の透磁率を有するフェライトコア44に吸収され、熱変換されて消費される。ここでは、U相50の動作について説明したが、V相及びW相についても同様である。
【0024】
本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置10によれば、ノイズの発生を抑えつつ、ダイオードの逆回復電流を抑制できる。すなわち、スナバ回路14のダイオードが逆回復する場合の逆回復電流は、フェライトコア44、46、又は48が取り付けられた配線を通るので、抑制される。つまり、図3を参照して説明した例ではダイオード20Dとダイオード32が逆回復する。そして、ダイオード32の逆回復電流はフェライトコア44によって抑制され、かつ遅延される。その結果、ダイオード20Dの逆回復電流とダイオード32の逆回復電流の和である合成電流のdi/dtも抑制されるため、サージ電圧を抑えることができる。なお、インダクタンスを用いて逆回復電流を抑制した場合には、インダクタンスに蓄えられたエネルギーによりノイズが生じるが、フェライトコアでは原理的にそのようなノイズは生じない。
【0025】
ここで、本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置10による逆回復電圧及び逆回復電流の抑制効果について説明する。図4は、半導体スイッチング装置10からスナバ回路14を外した場合の逆回復電圧及び逆回復電流の波形を示す図である。図5は、半導体スイッチング装置10を用いた場合の逆回復電圧及び逆回復電流の波形を示す図である。図4と図5の波形を比較すると、スナバ回路14を有する半導体スイッチング装置10の方が逆回復電圧及び逆回復電流のdi/dtの抑制に有効であることが分かる。従ってフェライトコアが逆回復電圧及び逆回復電流の抑制に有効であることが分かる。
【0026】
本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置では、フェライトコアを用いて逆回復電流を抑制したが本発明はこれに限定されない。本発明は、逆回復電流が流れる配線において発生する磁界が、一定の透磁率を有するフェライトコアに吸収され、熱変換されて消費されるものである。従って、フェライトコアは「磁界吸収体」であれば特に限定されない。そして、磁界吸収体は、フェライトコアだけでなく、例えばアモルファス素材で形成することができる。また、磁界吸収体は環状に形成される場合に限定されない。例えば、磁界吸収体としてテープ又は配線の一部に形成された薄膜を用いても良い。
【0027】
本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置では、フェライトコアをU相(あるいはV相、W相)の中点と接続点P1(あるいはP2、P3)を結ぶ配線に取り付けたが本発明はこれに限定されない。フェライトコアは「逆回復電流が流れる配線の一部を覆う」限りにおいてどこに取り付けされても良い。
【0028】
本発明の実施の形態1に係るモータ18は、他の誘導負荷に置き換えることができる。すなわち、誘導性の負荷であれば、還流電流が生じるので本発明の効果を得ることができる。従ってモータ18は他の誘導負荷であってもよい。
【0029】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2に係る半導体スイッチング装置の回路図である。図6は図3と同様に、半導体スイッチング装置の回路図の一部を取り出した図である。具体的には、U相50とU相50の中点と接続されたスナバ回路80を取り出した図である。なお、後述の図8、9、10、11、及び12についても、U相の中点とU相の中点と接続されたスナバ回路を取り出した図である。
【0030】
本発明の実施の形態2に係る半導体スイッチング装置は、コンデンサが接続されたスナバ回路80を有する点において実施の形態1に係る半導体スイッチング装置と相違する。スナバ回路80は、一端がダイオード32のカソードに接続され他端がダイオード32のアノードに接続されたコンデンサ82を備えている。また、一端がダイオード34のカソードに接続され他端がダイオード34のアノードに接続されたコンデンサ84も備えている。コンデンサ82はダイオード32の逆回復電流を遅延させる。コンデンサ84はダイオード34の逆回復電流を遅延させる。従ってノイズの発生を抑えつつ、ダイオードの逆回復電流のdi/dtを抑制する効果を高めることができる。
【0031】
図7は、本発明の実施の形態2に係る半導体スイッチング装置を用いた場合の、逆回復電圧及び逆回復電流の波形を示す図である。この図を実施の形態1の場合の波形を示す図5と比較すると、本発明の実施の形態に係る半導体スイッチング装置の方が逆回復電流のdi/dtを抑制できていることが分かる。
【0032】
本発明の実施の形態2に係る半導体スイッチング装置では、ダイオードにコンデンサを並列に接続したが、コンデンサに代えてコンデンサと抵抗を直列接続したものをダイオードに取り付けても良い。
【0033】
実施の形態3.
図8は本発明の実施の形態3に係る半導体スイッチング装置の回路図である。この半導体スイッチング装置は、抵抗が接続されたスナバ回路90を有する点において実施の形態1に係る半導体スイッチング装置と相違する。スナバ回路90は、U相50の中点と接続点P1を結ぶ配線に直列に接続された抵抗92を備えている。抵抗92はダイオード32の逆回復電流を抑制するため、ノイズの発生を抑えつつ、ダイオードの逆回復電流を抑制する効果を高めることができる。また、抵抗92によりダイオード20Dの順方向に流れる電流も抑制することができる。
【0034】
実施の形態4.
図9は本発明の実施の形態4に係る半導体スイッチング装置の回路図である。この半導体スイッチング装置は、スナバ回路のダイオードを一部抵抗に置き換えた点において本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置と相違する。スナバ回路100は、一端が接続点P1と接続され、他端がスイッチング素子22Sのエミッタと接続された抵抗102を備えている。
【0035】
半導体スイッチング装置のインバータ回路の動作上、スイッチング素子と逆並列に接続されたダイオードのうち、特定のダイオードは逆回復しなかったり、逆回復したとしても逆回復電流が動作上問題とならないほど軽微であったりする場合がある。そのような場合にはスナバ回路にダイオードを設ける必要がない。本発明の実施の形態4に係る半導体スイッチング装置では、そのような特定のダイオードとして、ダイオード22Dを想定している。そして、ダイオード22Dとともに還流電流を流すように形成されていたダイオードを抵抗102に置き換えることで、安価な半導体スイッチング装置を提供できる。
【0036】
本発明の実施の形態4に係る半導体スイッチング装置は、スナバ回路のダイオードを抵抗に置き換えたことが特徴である。そのため、あるスイッチング素子と、それとともにインバータの1つの相を形成するように接続された別のスイッチング素子を有する場合において、あるスイッチング素子又は別のスイッチング素子に並列に抵抗を備える限り、半導体スイッチング装置の低価格化ができる。
【0037】
実施の形態5.
図10は本発明の実施の形態5に係る半導体スイッチング装置の回路図である。この半導体スイッチング装置は、スナバ回路のダイオードの数を増加させた点において本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置と相違する。スナバ回路110は、ダイオード112のカソードがダイオード20Dのカソードに接続され、ダイオード112のアノードとダイオード114のカソードが接続され、ダイオード114のアノードが配線21に接続されている。さらに、ダイオード116及び118が、ダイオード112及び114に並列に接続されている。また、ダイオード120、及び122、並びにダイオード124、及び126もそれぞれ、ダイオード22Dに対し並列に接続されている。
【0038】
本発明の実施の形態5に係る半導体スイッチング装置によれば、スナバ回路110のダイオードの耐圧及び電流容量を高めることができる。ここで、耐圧を高めたいときには、逆回復電流の流れる経路に直列にダイオードを接続し、電流容量を高めたいときには、逆回復電流の流れる経路に並列にダイオードを接続すれば良い。
【0039】
実施の形態6.
図11は本発明の実施の形態6に係る半導体スイッチング装置の回路図である。この半導体スイッチング装置は、スナバ回路にショットキーダイオードを用いた点において本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置と相違する。スナバ回路130はダイオード32と直列に接続されたショットキーダイオード132を備えている。また、ダイオード34と直列に接続されたショットキーダイオード134を備えている。ショットキーダイオード132及び134を用いることにより、逆回復電流を抑制することができる。
【0040】
実施の形態7.
図12は本発明の実施の形態7に係る半導体スイッチング装置の回路図である。この半導体スイッチング装置はフェライトコアの数を増加させた点において本発明の実施の形態1に係る半導体スイッチング装置と相違する。本発明の実施の形態7に係る半導体スイッチング装置は、配線21のうち、U相50の中点と接続点P1を結ぶ部分にフェライトコア44及び142が取り付けられている。逆回復電流の流れる配線の複数個所にフェライトコアを取り付けることで、逆回復電流の抑制効果を高めることができる。なお、フェライトコアの数を増加させるだけでなく、透磁率の高いフェライトコアを用いても同様の効果を得ることができる。
【0041】
図13は配線21をフェライトコアに複数周巻きつけたことを示す図である。具体的には、フェライトコア150は配線21に3周巻きつけられている。このように配線の巻き数を増加させると、透磁率を増加させることができるので、フェライトコアの数を増やさずに逆回復電流の抑制効果を高めることができる。
【0042】
実施の形態8.
図14は本発明の実施の形態8に係る半導体スイッチング装置の回路図である。半導体スイッチング装置は、整流ダイオードが並列接続されたコンバータ回路160を備えている。コンバータ回路160は、整流ダイオード162、164、166、168、170、及び172を備えている。整流ダイオード162及び164は直列に接続され、その中点(第1中点C1)はモータ18に接続されている。整流ダイオード166及び168は直列に接続され、その中点(第2中点C2)はモータ18に接続されている。整流ダイオード170及び172は直列に接続され、その中点(第3中点C3)はモータ18に接続されている。整流ダイオード162及び164の両端、整流ダイオード166及び168の両端、並びに整流ダイオード170及び172の両端はそれぞれ平滑コンデンサ174に接続されている。
【0043】
上述の構成のコンバータ回路160にはスナバ回路14が接続されている。ここで、フェライトコア44は、接続点P1と第1中点C1を結ぶ配線に取り付けられている。フェライトコア46は、接続点P2と第2中点C2を結ぶ配線に取り付けられている。フェライトコア48は、接続点P3と第3中点C3を結ぶ配線に取り付けられている。このように、各フェライトコアは、コンバータ回路160の備える整流ダイオード162、164、166、168、170、及び172の逆回復電流が流れる配線に取り付けられているため、逆回復電流を抑制できる。
【0044】
実施の形態9.
図15は本発明の実施の形態9に係る半導体スイッチング装置の回路図である。本発明の実施の形態9に係る半導体スイッチング装置は、Hブリッジ回路によりモータ18を制御するものである。
【0045】
本発明の実施の形態9に係る半導体スイッチング装置は、降圧回路200及び204と昇圧回路202及び206を備えている。降圧回路200と昇圧回路202の出力は出力線230により伝送される。出力線230はモータ18の一端と接続されている。モータ18の他端には、降圧回路204と昇圧回路206の出力線232が接続されている。出力線230のうち、降圧回路200の中点と昇圧回路202の中点をつなぐ部分にはフェライトコア234が取り付けられている。また、出力線232のうち、降圧回路204の中点と昇圧回路206の中点をつなぐ部分にはフェライトコア236が取り付けられている。
【0046】
例えば、降圧回路200のスイッチング素子200Sと昇圧回路206のスイッチング素子206Sをオン状態としてモータ18に通電しているとする。この状態でスイッチング素子206Sをオフ状態とすると、モータ18のエネルギーは降圧回路204のダイオード204Dと昇圧回路206のダイオード206Dを経由して放出される。その後、スイッチング素子206Sが再びオン状態となると、ダイオード204D及び206Dが逆回復する。そして、逆回復電流が流れる配線にはフェライトコア236が取り付けられているのでこの逆回復電流を抑制することができる。
【0047】
実施の形態10.
図16は本発明の実施の形態10に係る半導体スイッチング装置の回路図である。本発明の実施の形態10に係る半導体スイッチング装置は、3相インバータ回路の降圧回路と昇圧回路をそれぞれモジュール化したものである。
【0048】
本発明の実施の形態10に係る半導体スイッチング装置は、降圧回路240と昇圧回路242を備える。降圧回路240及び昇圧回路242はそれぞれモジュール化されている。降圧回路240は、U相、V相、及びW相の端子として240U、240V、及び240Wを備えている。また、昇圧回路242はU相、V相、及びW相の端子として端子242U、242V、及び242Wを備えている。
【0049】
そして、端子240Uと242Uは配線で接続されている。当該配線にはフェライトコア250が取り付けられている。また、端子240Vと242Vは配線で接続されている。当該配線にはフェライトコア252が取り付けられている。さらに、端子240Wと242Wは配線で接続されている。当該配線にはフェライトコア254が取り付けられている。ダイオードが逆回復する際にはフェライトコア250、252、又は254が逆回復電流を抑制するので本発明の効果を得ることができる。また、降圧回路240と昇圧回路242をそれぞれモジュール化したため、組み立てが容易となり、省スペース化もできる。
【0050】
本発明の実施の形態10に係る半導体スイッチング装置では、降圧回路と昇圧回路をそれぞれモジュール化したが、降圧回路と昇圧回路の混在した回路をモジュール化しても良い。すなわち、スイッチング素子と他のスイッチング素子とをモジュール化すれば本発明の実施の形態10に係る半導体スイッチング装置の効果を得ることができる。
【0051】
上述した各実施の形態に係る半導体スイッチング装置の特徴は、他の実施の形態の特徴と組み合わせることが可能である。また、実施の形態2乃至10に係る半導体スイッチング装置は少なくとも実施の形態1の半導体スイッチング装置と同程度の変形が可能である。
【0052】
本発明の全ての実施の形態においてスイッチング素子は特に限定されないが、例えばIGBTやMOSFETを用いることができる。また、本発明の全ての実施の形態ではスイッチング素子は主に珪素で形成されても良いが、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体で形成することが好ましい。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドを用いることができる。ワイドバンドギャップ半導体は珪素に比べて耐熱性が高く冷却フィンの小型化が可能であるので、半導体スイッチング装置の一層の小型化が可能である。またワイドバンドギャップ半導体は耐圧及び許容電流密度が高いため、スイッチング素子も小型化できる。
【符号の説明】
【0053】
10 半導体スイッチング装置、 12 インバータ回路、 14 スナバ回路、 16 電源、 18 モータ、 44,46,48 フェライトコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導負荷への電流の供給を制御するスイッチング素子と、
前記誘導負荷の還流電流が流れるように前記誘導負荷に接続されたダイオードと、
前記ダイオードの逆回復電流が流れる配線と、
前記配線の少なくとも一部を覆うように形成された磁界吸収体と、を備えたことを特徴とする半導体スイッチング装置。
【請求項2】
前記ダイオードは前記スイッチング素子のサージ電圧を抑制するスナバ回路に形成され、
前記配線は前記スイッチング素子と前記ダイオードを結ぶものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項3】
前記磁界吸収体は、フェライトコアであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項4】
前記磁界吸収体は、アモルファス素材で形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項5】
前記磁界吸収体はテープ又は前記配線の一部に形成された薄膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項6】
一端が前記ダイオードのカソードに接続され、他端が前記ダイオードのアノードに接続されたコンデンサを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項7】
前記配線に直列に接続された抵抗を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項8】
前記スイッチング素子とともにインバータの1つの相を形成する別のスイッチング素子と、
一端が前記別のスイッチング素子の一端と接続され、他端が前記別のスイッチング素子の他端と接続された抵抗と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項9】
前記ダイオードに直列に又は並列に接続された別のダイオードを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項10】
前記別のダイオードはショットキーダイオードであることを特徴とする請求項9に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項11】
前記磁界吸収体を複数個所に形成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項12】
前記配線は前記フェライトコアに複数周巻きつけられたことを特徴とする請求項3に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項13】
前記スイッチング素子は他のスイッチング素子とモジュール化されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体スイッチング装置。
【請求項14】
整流ダイオードを有するコンバータ回路と、
前記整流ダイオードの逆回復電流が流れる配線と、
前記配線の少なくとも一部を覆うように形成された磁界吸収体と、を備えたことを特徴とする半導体スイッチング装置。
【請求項15】
前記スイッチング素子はワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記ワイドバンドギャップ半導体は炭化珪素、窒化ガリウム系材料、又はダイヤモンドで構成されていることを特徴とする請求項15に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−55101(P2012−55101A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196430(P2010−196430)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】