説明

半導体ナノクリスタルを含む発光デバイス

発光デバイスが、エレクトロルミネッセンス材料と半導体ナノクリスタルとを含む。半導体ナノクリスタルは、エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取り、光を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2007年5月18日出願の米国出願第11/750,824号、及び2006年5月21日出願の米国仮出願第60/747,806号に対する優先権を主張するものである。各仮特許出願の全体を引用により取り込む。
【0002】
(技術分野)
本発明は、半導体ナノクリスタルを含む発光デバイスに関するものである。
(連邦政府による資金提供を受けた開発研究)
米国政府は、PECASEからのGrant No. 6896872及びCMSE: IRG-3からのGrant No. 6984037に従って、本発明において特定の権利を有することがある。
【背景技術】
【0003】
(背景)
発光デバイスは、例えば、ディスプレイ(例えば、フラットパネルディスプレイ)、スクリーン(例えば、コンピュータスクリーン)、及び照明を必要とする他の物品で使用され得る。したがって、発光デバイスの輝度は、デバイスの重要な特徴である。また、低い動作電圧及び高い効率が、発光デバイスを製造する実現性を改善することができる。多くの用途で、長いデバイス寿命が望まれる。
【0004】
発光デバイスは、デバイスの活性成分の励起に応答して光子を放出することができる。デバイスの活性成分(例えば、エレクトロルミネッセンス成分)に電圧を印加することによって、発光を刺激誘導することができる。エレクトロルミネッセンス成分は、共役有機高分子や、エレクトロルミネッセンス成分又は有機分子層を含むポリマーなどのポリマーであってもよい。通常、デバイスの層間の励起された電荷の放射再結合によって、発光を引き起こすことができる。放射光は、輝度(カンデラ/平方メートル(cd/m2)又は電力束(W/m2))で測定される最大発光波長及び発光強度を含む発光プロファイルを有する。デバイスの発光プロファイル及び他の物理的な特性は、物質の電子構造(例えば、エネルギーギャップ)によって変更されることがある。例えば、発光デバイスの輝度、色の範囲、効率、動作電圧、及び動作半減期は、デバイスの構造に基づいて変えることができる。
【発明の概要】
【0005】
(要旨)
一般に、発光デバイスは、複数の半導体ナノクリスタルを含むことができる。半導体ナノクリスタルは、任意選択で有機配位子で修飾された、例えば直径1〜15nmの無機半導体粒子であってよい。ナノクリスタルは、強い量子閉じ込め効果を示すことがあり、この効果は、ナノクリスタルのサイズ及び組成で調整可能な電子的及び光学的特性を有する複合ヘテロ構造を作り出すボトムアップ化学的手法を設計する際に利用され得る。
【0006】
半導体ナノクリスタルは、発光デバイス内の発光材料として使用することができる。半導体ナノクリスタルは、狭い発光線幅を有することができ、フォトルミネッセンス効率を良くでき、発光波長の調節が可能であるので、望ましい発光材料となることがある。半導体ナノクリスタルは、液体中に分散させることができ、したがってスピンキャスティング、ドロップキャスティング、及び浸漬コーティングなどの薄膜堆積技法に適合する。
【0007】
半導体ナノクリスタルは、マイクロコンタクト印刷を使用して基板上に堆積され得る。有利には、マイクロコンタクト印刷は、表面上へのフィーチャのミクロンスケール又はナノスケール(例えば1mm未満、500μm未満、200μm未満、100μm未満、25μm未満、又は1μm未満)パターニングを可能にする。特に、半導体ナノクリスタルの単層を、マイクロコンタクト印刷によって堆積することができる。他の例では、半導体ナノクリスタルの多層を、インクジェット印刷、スピンコーティング、浸漬コーティング、マイクロコンタクト印刷、又は他の方法によって表面上に堆積することができる。多層は、3ミクロン未満の厚さ、2ミクロン未満の厚さ、又は1ミクロン未満の厚さであってよい。この手法は、基板上へのパターン半導体ナノクリスタル被膜の実質的に乾燥(即ち、実質的に無溶媒)の塗布を可能にすることができる。したがって、基板の選択が、可溶性及び表面化学要件によって課せられる制約を受けないでよいので、より多様な基板を使用することができる。
【0008】
電圧駆動エレクトロルミネッセンスデバイスは、第一電極と、第一絶縁体層と、広バンドギャップ材料(エレクトロルミネッセンス発光層として働く)と、第二絶縁体層と、第二電極層とが絶縁基板上に積層されたサンドイッチ構造を有することができる。様々な色の光を放射するために、広バンドギャップ材料は、ドーパントでドープされて、活性色中心を形成しなければならない。この構造に関連付けられる一つの欠点は、赤色、緑色、及び青色光を並べて放射するために、ドーパント種類及び濃度を含めた層組成を設計することが難しいことである。
【0009】
半導体ナノクリスタルが電圧駆動発光デバイス内に含まれるとき、デバイスは、所望の一つ以上の色の光を生成することができる。デバイス製造で使用される材料処理条件にほとんど又はまったく変更を加えずに、様々な色の光を放射する複数のデバイスを簡単に並べて形成することができる。
【0010】
一態様では、発光デバイスは、第一電極と、第二電極と、エレクトロルミネッセンス材料と、エレクトロルミネッセンス材料と少なくとも一つの電極との間に配設された誘電体材料と、エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るように配置された複数の半導体ナノクリスタルとを含む。
【0011】
別の態様では、デバイスを製造する方法は、第一電極の上に誘電体材料を堆積すること、第一電極の上にエレクトロルミネッセンス材料を堆積すること、エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るような構成で複数の半導体ナノクリスタルを堆積すること、及び第一電極と、誘電体材料と、エレクトロルミネッセンス材料と、複数の半導体ナノクリスタルとの上に第二電極を配置することとを含む。誘電体材料は、エレクトロルミネッセンス材料と少なくとも一つの電極との間に配設される。
【0012】
エレクトロルミネッセンス材料中に複数の半導体ナノクリスタルを分散することは、複数の半導体ナノクリスタルとエレクトロルミネッセンス材料とを溶媒中に溶解することを含むことができる。エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るような構成で複数の半導体ナノクリスタルを堆積することは、第一電極の上にナノクリスタルを堆積することを含むことができる。
【0013】
別の態様では、光を発生する方法は、第一電極と、第二電極と、エレクトロルミネッセンス材料と、エレクトロルミネッセンス材料と少なくとも一つの電極との間に配設された誘電体材料と、エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るように配置された複数の半導体ナノクリスタルとを含むデバイスを提供すること、及び第一電極と第二電極との間に光発生電位を印加することとを含む。
【0014】
複数の半導体ナノクリスタルを、第一電極と第二電極との間に配設することができる。
エレクトロルミネッセンス材料を層として配置することができる。誘電体材料を、エレクトロルミネッセンス材料に隣接する少なくとも一つの層として配置することができる。複数の半導体ナノクリスタルを層として配置することができ、これは、任意選択で、エレクトロルミネッセンス材料に隣接していてよい。複数の半導体ナノクリスタルは、エレクトロルミネッセンス材料中に分散することもできる。
【0015】
単色の光を放射するように、又は2以上の異なる色の光を放射するように複数の半導体ナノクリスタルを選択することができる。白色光を放射するように複数の半導体ナノクリスタルを選択することができる。可視光又は赤外光を放射するように複数の半導体ナノクリスタルを選択することができる。
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面から、且つ特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】発光デバイスを示す概略図である。
【図2】発光デバイスを形成する方法を示す図である。
【図3A】発光デバイスを示す概略図である。
【図3B】発光デバイスを示す概略図である。
【図3C】発光デバイスを示す概略図である。
【図4】発光デバイスからの発光を示すカラー写真である。
【図5A】オフ状態での発光デバイスのカラー写真である。
【図5B】オン状態での発光デバイスのカラー写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な説明)
発光デバイスは、デバイスの二つの電極を分離する二つ以上の層を含むことができる。層は、電極と発光層との間に挿間された誘電体層を含むことができる。電圧が電極間に印加されるとき、励起子がエレクトロルミネッセンス材料上に生成され得る。次いで、励起子が再結合して、光を放射する。エレクトロルミネッセンス材料は、発光波長又は線幅など、その発光特性に関して選択することができる。エレクトロルミネッセンス材料は、広バンドギャップ材料であってよい。
【0018】
発光デバイスは、図1に示されるような構造を有することができ、第一電極2と、電極2に接触する第一層3と、層3に接触する第二層4と、第二層4に接触する第二電極5とを有することができる。第一層3と第二層4とはそれぞれ、絶縁誘電体であってよい。この構造の電極の一つは、基板1に接触している。該構造にわたって電圧を提供するために、各電極を電源に接触させることができる。適切な極性の電圧がヘテロ構造にわたって印加されるとき、ヘテロ構造の発光層によってエレクトロルミネッセンスを生じさせることができる。別個の発光層(図1には図示せず)を、デバイス内に、例えば第一層3と第二層4との間に含むことができる。別個の発光層は、広バンドギャップ材料を含むことができる。
【0019】
基板は、不透明又は透明にすることができる。透明LEDの製造には透明基板を使用することができる。例えば、Bulovic, V.らの論文(Nature 1996, 380, 29)及びGu, G.らの論文(Appl. Phys. Lett. 1996, 68, 2606-2608)を参照のこと(各文献の全体を引用により取り込む)。透明LEDは、ヘッドアップディスプレイ、ヘルメットバイザ、又は車両フロントガラスなどの用途で使用することができる。基板を、剛性又は可撓性にすることができる。基板を、プラスチック、金属、又はガラスとすることができる。第一電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)層など、高い仕事関数の正孔注入導体とすることができる。他の第一電極物質には、ガリウムインジウムスズオキシド(gallium indium tin oxide)、亜鉛インジウムスズオキシド(zinc indium tin oxide)、窒化チタン、又はポリアニリンを含むことができる。第二電極は、例えば、Al、Ba、Yb、Ca、リチウムアルミニウム合金(Li:Al)、又はマグネシウム銀合金(Mg:Ag)など、低い仕事関数(例えば4.0eV未満)の電子注入金属とすることができる。Mg:Agなどの第二電極は、不透明保護金属層、例えば大気の酸化から陰極層を保護するためのAgの層で、又は実質的に透明なITOの比較的薄い層で被覆することができる。第一電極は、約500オングストロームから4000オングストロームの厚さを有することができる。第一層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの厚さを有することができる。第二層は、約50オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの厚さを有することができる。第二電極は、約50オングストロームから約1000オングストロームよりも大きい厚さを有することができる。
【0020】
誘電体層は、絶縁性と、デバイス製造手順への適合性とに関して選択された材料を含むことができる。いくつかの例示的な誘電体材料として、限定せずに、金属酸化物(例えば酸化珪素)及び広バンドギャップポリマー(例えばポリメチルメタクリレート)が挙げられる。発光層は、発光材料、好ましくは広バンドギャップを有する発光材料を含む。例えば、硫化亜鉛が適切な材料である。
【0021】
いくつかの実施態様では、誘電体材料と発光材料とが、単一材料に組み合わされる。例えば、硫化亜鉛の結晶を、ポリマーなど誘電体材料で被覆する又は誘電体材料内にカプセル化することができる。これらのポリマー被覆結晶は、単一材料で誘電体材料と発光材料との両方として働くことができる。
【0022】
層は、スピンコーティング、浸漬コーティング、蒸着、スパッタリング、又は他の薄膜堆積方法によって、一つの電極の表面上に堆積させることができる。第二電極は、間に挟む、スパッターさせる、又は固体層の曝露表面上に蒸着させることができる。電極の一方又は両方をパターニングすることができる。デバイスの電極は、導電路によって電圧源に接続することができる。電圧を印加すると、光がデバイスから発生する。
【0023】
有利には、無機半導体は、例えばスパッタリングによって低温で基板上に堆積することができる。スパッタリングは、高エネルギー状態で電子及びガスイオンのプラズマを生成するために低圧ガス(例えばアルゴン)にわたって高電圧を印加することによって行われる。励起されたプラズマイオンが、所望のコーティング材料のターゲットに当たり、そのターゲットからの原子を、基板に達して基板と結合するのに十分なエネルギーで放出させる。
【0024】
マイクロコンタクト印刷が、基板上の事前定義された領域に物質を塗布する方法を提供する。事前定義領域は、物質が選択的に塗布される基板上の領域である。物質及び基板は、物質が事前定義域内部に実質的に完全に残るように選択され得る。パターンを成す事前定義領域を選択することによって、物質がパターンを成すように、物質を基板に塗布することができる。パターンは、規則パターン(アレイや一連のラインなど)、又は不規則パターンにすることができる。物質のパターンが基板上に形成されると、基板は、物質を含む領域(事前定義領域)と、物質を実質的に含まない領域とを有することができる。いくつかの状況では、物質は、基板上に単層を形成する。事前定義領域は、不連続領域とすることができる。即ち、物質が基板の事前定義領域に塗布されるとき、物質を含む位置を、物質を実質的に含まない他の位置によって分離することができる。他の実施例では、半導体ナノクリスタルの多層を、インクジェット印刷、スピンコーティング、浸漬コーティング、マイクロコンタクト印刷、又は他の方法によって表面上に堆積することができる。多層は、3ミクロン未満の厚さ、2ミクロン未満の厚さ、又は1ミクロン未満の厚さであってよい。
【0025】
一般に、マイクロコンタクト印刷は、パターンモールドを形成することから始まる。モールドは、隆起部と窪み部のパターンを有する表面を有する。例えば、パターンモールド表面に接触しながら硬化される液体ポリマー前駆体で、モールドのパターン表面を被覆することによって、隆起部と窪み部の相補パターンを有するスタンプが形成される。次いで、スタンプにインク付けすることができる。即ち、スタンプが、基板上に堆積されるべき物質に接触される。物質は、スタンプに可逆に接着される。次いで、インク付きスタンプが、基板に接触される。スタンプの隆起領域は、基板に接触することができ、スタンプの窪み領域は、基板から離すことができる。インク付きスタンプが基板に接触するとき、インク物質(又は少なくともその一部)が、スタンプから基板に転写される。このようにして、隆起部と窪み部のパターンが、基板上で物質を含む領域と物質を含まない領域として、スタンプから基板に転写される。マイクロコンタクト印刷及び関連の技法は、例えば米国特許第5,512,131号、第6,180,239号、第6,518,168号に記載されており、各特許文献の全体を引用により取り込む。いくつかの状況では、スタンプは、あるパターンのインクを有するフィーチャレススタンプであってよく、インクがスタンプに塗布されるときにパターンが形成される。2005年10月21日出願の米国特許出願第11/253,612号を参照のこと(この特許文献の全体を引用により取り込む)。
【0026】
図2に、マイクロコンタクト印刷プロセスにおける基本ステップを概説する流れ図を示す。まず、シリコン表面上にパターン、例えば隆起部と窪み部のパターンを画定する標準的な半導体処理技法を使用して、シリコンマスタが作成される(別法として、無パターン堆積の場合には、ブランクSiマスタを使用することができる)。次いで、ポリジメチルシロキサン(PDMS、例えばSylgard 184)前駆体が混合され、脱気され、マスタ上に注ぎ込まれ、再び脱気され、且つ室温(又は、より速い硬化時間のために、室温よりも高い温度)で硬化される(ステップ1)。次いで、シリコンマスタのパターンを含む表面を有するPDMSスタンプが、マスタから外され、所望の形状及びサイズに切断される。次いで、このスタンプを、表面化学層を用いて被覆し、これは、必要に応じてインクを容易に接着及び解除できるように選択される。例えば、表面化学層は、化学蒸着されたパリレンC層とすることができる。表面化学層は、例えば、複写されるべきパターンに応じて、0.1〜2μmの厚さにすることができる(ステップ2)。次いで、このスタンプは、例えば、半導体ナノクリスタルの溶液のスピンキャスティング、シリンジポンプ吐出、又はインクジェット印刷によってインク付けされる(ステップ3)。溶液は、例えば、クロロホルム中で1〜10mg/mLの濃度を有することができる。濃度は、所望の結果に応じて変えることができる。次いで、インク付きスタンプを基板に接触させることができ、穏やかな圧力を例えば30秒間印加して、新たな基板にインク(即ち、半導体ナノクリスタル単層)を完全に転写する(ステップ4)。図2A及び2Bに、ITO被覆ガラス基板の準備を示す。第一誘電体層などの第一層が、ITO基板上に堆積される。パターン半導体ナノクリスタル単層が、この層に転写され、次いで、デバイスの残りの部分を追加することができる(ステップ5)。例えば、共に2005年10月21日出願の米国特許出願第11/253,595号、第11/253,612号、及び2005年1月11日出願の第11/032,163号を参照のこと(各特許文献の全体を引用により取り込む)。
【0027】
広バンドギャップ発光材料上で励起子が実質的に生成されるデバイスを作製するために、デバイス構造と組み合わせて、デバイス材料の電気的性質(バンドギャップ及びバンドオフセットなど)を選択することができる。発光材料は、デバイスから光が放射される前に、放射変更材料にエネルギーを移動することができる。エネルギー移動は、発光材料からの光の放射、及び放射変更材料による再吸収によって行うことができる。別法として、エネルギー移動は、光放射及び再吸収を伴うエネルギーの移動(Forsterエネルギー移動など)であってよい。いずれの場合にも、放射変更材料は、励起状態になると、光を放射することができる。いくつかの状況では、放射及び再吸収が、エネルギー移動の主要な方法であり得る。これが当てはまるとき、放射変更材料は、発光材料に隣接する必要がない。ただし、Foersterエネルギー移動の効率は、エネルギー移動パートナー間の距離に依存し、より小さな距離が、より高い効率のエネルギー移動をもたらす。
【0028】
有利には、半導体ナノクリスタルを放射変更材料として使用することができる。半導体ナノクリスタルは、高強度の狭いバンドの放射を用いて広い吸収バンドを有することができる。放射のピーク波長は、ナノクリスタルのサイズ、形状、組成、及び構造上の構成に応じて、可視及び赤外領域全体から調整することができる。ナノクリスタルは、所望の化学的特性(所望の可溶性など)を有する外面を有するように調製することができる。ナノクリスタルによる発光は、長期にわたって安定であることがある。
【0029】
ナノクリスタルが励起状態を実現する(又は、言い換えると、励起子がナノクリスタル上に位置される)とき、発光波長で放射が生じ得る。発光は、量子閉じ込め半導体物質のバンドギャップに対応する周波数を有する。バンドギャップは、ナノクリスタルのサイズに依存する。小さな直径を有するナノクリスタルは、分子とバルク形態の物質との中間の性質を有することができる。例えば、小さな直径を有する半導体物質に基づくナノクリスタルは、3次元すべてにおいて電子と正孔との両方の量子閉じ込めを示すことができ、結晶サイズの減少に伴い、物質の有効なバンドギャップを増加させる。それゆえ、結晶のサイズが小さくなるにつれて、ナノクリスタルの吸光と発光との両方が、青色へ、又はより高いエネルギーへシフトする。
【0030】
ナノクリスタルからの発光は、狭いガウス発光バンド(Gaussian emission band)とすることができ、ナノクリスタルのサイズ、ナノクリスタルの組成、又はその両方を変化させることによって、紫外領域、可視領域、又は赤外領域のスペクトルの全波長範囲にわたって調整することができる。例えば、CdSeは、可視領域において調整することができ、InAsは、赤外領域において調整することができる。ナノクリスタルの集団の狭いサイズ分布は、狭いスペクトル範囲での発光を生じさせることができる。集団は、単分散にすることができ、ナノクリスタルの直径について15%rms未満の偏差、好ましくは10%未満の偏差、より好ましくは5%未満の偏差を示すことができる。可視域で放射するナノクリスタルに関して、約75nm以下、好ましくは60nm、より好ましくは40nm、最も好ましくは30nmの半値全幅(FWHM)の狭い範囲内でのスペクトル放射が観察され得る。IR放射ナノクリスタルは、150nm以下、又は100nm以下のFWHMを有することができる。放射のエネルギーに関して表すと、放射は、0.05eV以下、又は0.03eV以下のFWHMを有することができる。発光の幅は、ナノクリスタル直径の分散性が減少するにつれて縮小する。半導体ナノクリスタルは、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%よりも大きい、高い発光量子効率を有することができる。
【0031】
ナノクリスタルを形成する半導体は、II-VI族化合物、II-V族化合物、III-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、I-III-VI族化合物、II-IV-VI族化合物、又はII-IV-V族化合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はそれらの混合物を含むことができる。
【0032】
単分散半導体ナノクリスタルの調製方法は、高温の配位溶媒に注入されるジメチルカドミウムなど有機金属試薬の熱分解を含む。これは、離散的な核形成を可能にし、巨視量のナノクリスタルの制御された成長をもたらす。ナノクリスタルの調製及び操作は、例えば米国特許第6,322,901号及び第6,576,291号、並びに米国特許出願第60/550,314号に記載されており、各特許文献の全体を引用により取り込む。ナノクリスタルの製造方法は、コロイド成長プロセスである。コロイド成長は、Mドナー及びXドナーを高温配位溶媒に急速に注入することによって生じる。この注入は、核を生成し、核は、ナノクリスタルを形成するために、制御された様式で成長させることができる。反応混合物は、ナノクリスタルを成長させ、且つアニールするために、穏やかに加熱することができる。サンプル中のナノクリスタルの平均サイズとサイズ分布との両方が、成長温度に依存する。安定した成長を維持するために必要な成長温度は、平均結晶サイズの増加に伴って増加する。ナノクリスタルは、ナノクリスタルの集団のメンバーである。離散的な核形成及び制御された成長の結果、得られるナノクリスタルの集団は、狭い単分散の直径分布を有する。単分散の直径分布は、サイズと呼ぶこともできる。核形成に続く、配位溶媒中でのナノクリスタルの制御された成長及びアニーリングのプロセスは、一様な表面誘導体化及び規則的なコア構造を生じさせることもできる。サイズ分布が鋭くなるにつれて、安定した成長を維持するために、温度を上昇させることができる。より多くのMドナー又はXドナーを添加することによって、成長期間を短縮することができる。
【0033】
Mドナーは、無機化合物、有機金属化合物、又は元素金属とすることができる。Mは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はタリウムである。Xドナーは、Mドナーと反応して一般式MXを有する物質を生成することができる化合物である。通常、Xドナーは、カルコゲニドドナー又はプニクタイドドナー、例えば、ホスフィンカルコゲニド、ビス(シリル)カルコゲニド、二酸素、アンモニウム塩、又はトリス(シリル)プニクタイドである。適切なXドナーは、二酸素、ビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)2Se)、トリアルキルホスフィンセレニド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)セレニド(TOPSe)又は(トリ-n-ブチルホスフィン)セレニド(TBPSe)など)、トリアルキルホスフィンテルリド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)テルリド(TOPTe)又はヘキサプロピルホスホラストリアミドテルリド(HPPTTe)など)、ビス(トリメチルシリル)テルリド((TMS)2Te)、ビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)2S)、トリアルキルホスフィンスルフィド(例えば(トリ-n-オクチルホスフィン)スルフィド(TOPS)など)、アンモニウム塩(例えばハロゲン化アンモニウム(例えばNH4Cl)など)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィド((TMS)3P)、トリス(トリメチルシリル)アルセニド((TMS)3As)、又はトリス(トリメチルシリル)アンチモニド((TMS)3Sb)を含む。特定の実施態様では、Mドナー及びXドナーは、同一分子内の成分とすることができる。
【0034】
配位溶媒は、ナノクリスタルの成長の制御に役立たせることができる。配位溶媒は、ドナー孤立電子対を有する化合物であり、例えば、成長するナノクリスタルの表面に配位するのに利用できる孤立電子対を有する。溶媒配位は、成長するナノクリスタルを安定化させることができる。代表的な配位溶媒としては、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸があるが、ピリジン、フラン、及びアミンなどの他の配位溶媒も、ナノクリスタルの生成に適していることがある。適切な配位溶媒の例としては、ピリジン、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)、及びトリス-ヒドロキシルプロピルホスフィン(tHPP)がある。工業用のTOPOを使用することができる。
【0035】
反応の成長段階中のサイズ分布は、粒子の吸収線幅をモニタリングすることによって評価することができる。粒子の吸収スペクトルの変化に応じた反応温度の修正により、成長中、鋭い粒子サイズ分布の維持が可能になる。より大きな結晶を成長させるために、結晶成長中に、核形成溶液に反応物を添加することができる。特定のナノクリスタル平均直径で成長を停止させ、半導体物質の適切な組成を選択することによって、ナノクリスタルの発光スペクトルは、300nm〜5ミクロンの波長範囲にわたって、又はCdSe及びCdTeについては400nm〜800nmにわたって連続的に調整することができる。ナノクリスタルは、150Å未満の直径を有する。ナノクリスタルの集団は、15Å〜125Åの範囲の平均直径を有する。
【0036】
ナノクリスタルは、狭いサイズ分布を有するナノクリスタルの集団のメンバーであってよい。ナノクリスタルは、球形、棒状、円盤状、又は他の形状であってよい。ナノクリスタルは、半導体物質のコアを含むことができる。ナノクリスタルは、式MXを有するコアを含むことができ、ここでMは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、又はそれらの混合物であり、Xは、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、又はそれらの混合物である。
【0037】
コアは、該コアの表面上にオーバーコーティングを有することができる。オーバーコーティングは、コアの組成物とは異なる組成物を有する半導体物質であってもよい。ナノクリスタルの表面上の半導体物質のオーバーコートは、II-VI族化合物、II-V族化合物、III-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、I-III-VI族化合物、II-IV-VI族化合物、又はII-IV-V族化合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又はそれらの混合物を含むことができる。例えば、ZnS、ZnSe、又はCdSオーバーコーティングを、CdSe又はCdTeナノクリスタル上に成長させることができる。オーバーコーティングプロセスは、例えば米国特許第6,322,901号に記載されている。オーバーコーティング中に反応混合物の温度を調節し、コアの吸収スペクトルをモニタリングすることによって、高い発光量子効率と狭いサイズ分布とを有するオーバーコート物質を得ることができる。オーバーコーティングは、1〜10層の単層の厚さとすることができる。
【0038】
粒子サイズ分布は、米国特許第6,322,901号に記載されている、メタノール/ブタノールなどナノクリスタルに対する貧溶媒を用いるサイズ選択的沈殿法によって、さらに精製することができる。例えば、ナノクリスタルは、10%ブタノールのヘキサン溶液中に分散させることができる。メタノールは、乳光が持続するまで、攪拌溶液に滴下して加えることができる。遠心分離による上清と凝集物との分離により、サンプル中の最大結晶に富んだ沈殿物が生成される。この手順を、吸光スペクトルのさらなる鋭利化が認められなくなるまで繰り返すことができる。サイズ選択的沈殿法は、ピリジン/ヘキサン及びクロロホルム/メタノールを含めた種々の溶媒/非溶媒のペアで実施することができる。サイズ選択されたナノクリスタル集団は、平均直径から15%rms以下の偏差、好ましくは10%rms以下の偏差、より好ましくは5%rms以下の偏差を有することができる。
【0039】
ナノクリスタルの外部表面は、成長プロセス中に使用された配位溶媒から誘導される化合物を含むことができる。過剰な競合配位基へ繰り返し曝露することによって表面を改質することができる。例えば、覆われたナノクリスタルの分散は、ピリジンなどの配位性有機化合物を用いて処理することができ、ピリジン、メタノール、及び芳香族中では容易に分散し、しかし脂肪族溶媒中ではもはや分散しない結晶を生成する。そのような表面交換プロセスは、例えばホスフィン、チオール、アミン、及びリン酸塩を含めた、ナノクリスタルの外部表面と配位、又は結合できる任意の化合物を用いて実施することができる。ナノクリスタルは、表面に対して親和性を示し、且つ懸濁液又は分散媒体に対して親和性を有する成分で終わる短鎖ポリマーに曝露させることができる。そのような親和性は、懸濁液の安定性を改善し、ナノクリスタルの凝集を妨げる。ナノクリスタル配位化合物は、例えば、米国特許第6,251,303号に記載されている(この特許文献の全体を引用により取り込む)。
【0040】
より具体的には、配位子が、次式を有することができる。
【化1】

式中、kは、2、3、又は5であり、nは、k-nが0未満にならないような1、2、3、4、又は5であり;Xは、O、S、S=O、SO2、Se、Se=O、N、N=O、P、P=O、As、又はAs=Oであり;Y及びLはそれぞれ、独立して、アリール、ヘテロアリール、或いは少なくとも一つの二重結合、少なくとも一つの三重結合、又は少なくとも一つの二重結合及び一つの三重結合を任意に含む直鎖状の、又は分岐したC2-12炭化水素鎖である。炭化水素鎖は、一種以上のC1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、C3-5シクロアルキル、3〜5員環ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-4アルキルカルボニルオキシ、C1-4アルキルオキシカルボニル、C1-4アルキルカルボニル、又はホルミルによって任意に置換することができる。また、炭化水素鎖は、-O-、-S-、-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(Ra)-、-N(Ra)-C(O)-N(Rb)-、-O-C(O)-O-、-P(Ra)-、又は-P(O)(Ra)-によって任意に中断することができる。Ra及びRbはそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0041】
アリール基は、置換又は非置換の環状芳香族基である。例としては、フェニル、ベンジル、ナフチル、トリル、アントラシル、ニトロフェニル、又はハロフェニルがある。ヘテロアリール基は、環の中に一つ以上のヘテロ原子を有するアリール基であり、例えばフリル、ピリジル、ピロリル、又はフェナントリルである。
【0042】
適切な配位子を、商業的に購入することができ、又は、例えば「高度有機化学(Advanced Organic Chemistry)」, J. March(その全体を引用により取り込む)に記載されている通常の合成有機技法によって調製することができる。
【0043】
透過型電子顕微鏡(TEM)が、ナノクリスタル集団のサイズ、形状、及び分布に関する情報を提供することができる。粉末X線回折(XRD)パターンが、ナノクリスタルの結晶構造のタイプ及び質に関する最も完全な情報を提供することができる。また、粒子径は、X線コヒーレンス長を介してピーク幅に反比例するので、サイズの評価も可能である。例えば、ナノクリスタルの直径は、透過型電子顕微鏡によって直接測定することができ、又は、例えばシェラーの式を使用してX線回折データから評価することができる。また、UV/Vis吸収スペクトルから評価することもできる。
【0044】
ディスプレイを形成するために、個々のデバイスを、単一基板上の複数の位置に形成することができる。ディスプレイは、様々な波長で放射するデバイスを含むことができる。様々な色の発光材料のアレイを基板にパターニングすることにより、様々な色の画素を含むディスプレイを形成することができる。いくつかの適用例では、基板は、バックプレーンを含むことができる。バックプレーンは、個々の画素への電力を制御する、又は切り換えるための能動又は受動電子回路を含む。バックプレーンを含むことは、ディスプレイ、センサ、又は撮像装置などの用途で有用になることがある。特に、バックプレーンは、アクティブマトリックス、パッシブマトリックス、固定フォーマット、ダイレクトドライブ(directly drive)、又はハイブリッドとして構成することができる。ディスプレイは、静止画像用、動画用、又は照明用に構成することができる。照明ディスプレイは、白色光、単色光、又は色調整可能な光を提供することができる。例えば、2005年10月21日出願の米国特許出願第11/253,612号を参照のこと(この特許文献の全体を引用により取り込む)。
【0045】
デバイスは、製造プロセス中のルミネッセンス効率の低下を防止する、制御された(酸素を含まず、且つ水分を含まない)環境内で製造することができる。デバイス性能を改善するために、他の多層構造を使用することもできる(例えば、
【0046】
発光デバイスの性能は、それらの効率を高めること、それらの放射スペクトルを狭める、又は広げること、或いはそれらの発光を偏光させることによって改善することができる。例えば、Bulovicらの論文Semiconductors and Semimetals 64, 255 (2000)、Adachiらの論文Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Yamasakiらの論文Appl. Phys. Lett. 76, 1243 (2000)、Dirrらの論文Jpn. J. Appl. Phys. 37, 1457 (1998)、及びD'Andradeらの論文MRS Fall Meeting, BB6.2 (2001)を参照のこと(各文献の全体を引用により取り込む)。ナノクリスタルは、効率の良いハイブリッド有機/無機発光デバイス内に含めることができる。
【0047】
ナノクリスタルの狭いFWHMは、飽和色の発光を生じることができる。これは、ナノクリスタル発光デバイスにおいて赤外及びUV発光へ光子が損失されないので、可視スペクトルの赤色及び青色部分でさえ効率の良いナノクリスタル発光デバイスをもたらすことができる。単一物質システムの可視スペクトル全体にわたる、広く調整可能な飽和色発光は、どのような種類の有機発色団とも一致しない(例えば、Dabbousiらの論文J. Phys. Chem. 101, 9463 (1997)参照、その全体を引用により取り込む)。ナノクリスタルの単分散集団は、狭い波長範囲にわたる光を放射する。2以上のサイズのナノクリスタルを含むデバイスは、2以上の狭い波長範囲の光を放射することができる。観察者によって知覚される発光色は、デバイスにおけるナノクリスタルサイズと物質との適切な組合せを選択することによって制御することができる。ナノクリスタルのバンド端のエネルギー準位の縮退は、直接電荷注入によって生成されるにせよ、エネルギー移動によって生成されるにせよ、又は光の吸収によって生成されるにせよ、すべての生じ得る励起子の捕捉及び放射再結合を容易にする。
【0048】
可視光又は赤外光を放射するデバイスを準備することができる。半導体ナノクリスタルのサイズ及び材料は、選択された波長の可視光又は赤外光をナノクリスタルが放射するように選択することができる。波長は、300〜2500nm以上の間、例えば300〜400nmの間、400〜700nmの間、700〜1100nmの間、1100〜2500nmの間、又は2500nmよりも大きくすることができる。
【0049】
ディスプレイを形成するために、個々のデバイスを、単一基板上の複数の位置に形成することができる。ディスプレイは、異なる波長で放射するデバイスを含むことができる。様々な色の発光半導体ナノクリスタルのアレイを基板にパターニングすることにより、様々な色の画素を含むディスプレイを形成することができる。
【0050】
図3Aは、電圧駆動エレクトロルミネッセンスデバイスの断面図を例示する。このデバイスでは、基板007上で、半導体ナノクリスタル層003(この層は、半導体ナノクリスタルの部分単層、単層、又は多層であってよい)と広バンドギャップ材料層004とが、二つの絶縁層002、005及び二つの導電電極001、006の間に積層される。保護層000と、導電層001と、絶縁層002とは、透明であり、広バンドギャップ材料層004及び半導体ナノクリスタル層003で発生された光がデバイスから出ることができるようにする。別法として、底部電極と基板とが透明であるという条件で、光は基板側から出ることができる。
【0051】
この構成によれば、電圧駆動ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスデバイスは、二つの絶縁層及び導電電極の間にナノクリスタルと広バンドギャップ材料(硫化亜鉛など)とを含む発光層を含む。広バンドギャップ材料を電気的に励振及び励起するために、二つの導電電極間に電圧が印加される。励起エネルギーは、光子を放射することによって、又はナノクリスタル層にエネルギーを移動することによって放出される。したがって、ナノクリスタル層は、エネルギー変換層として働き、電気エネルギーを光子エネルギーに直接又は間接的に変換する。ナノクリスタルのエネルギー構造に関連付けられる光が、ナノクリスタル層内部でのエネルギー変換によって放射される。したがって、赤色、緑色、又は青色、或いは色の組合せの発光を実現し、それでも広バンドギャップ材料の化学的組成を維持するように、ナノクリスタルサイズ又は組成を設計することができる。
【0052】
図3Bは、電圧駆動ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスデバイスの代替構成を示す。ここでは、基板107上で、半導体ナノクリスタル103が、二つの絶縁層102、105及び二つの導電電極101、106の間で、広バンドギャップ材料104のマトリックス内に分散される。一体化されたナノクリスタル層と広バンドギャップ材料層とからの光が、上部側及び/又は底部側から抽出される。
【0053】
図3Cは、電圧駆動ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスデバイスの代替構成を示す。ここでは、半導体ナノクリスタル201は、上部電極202、誘電体203、広バンドギャップ材料204、誘電体205、電極206、及び基板207よりも外側の領域内に位置される。ナノクリスタル201は、任意選択で、カバー200(必ずあるわけではない)によって保護することができる。広バンドギャップ材料層からの光が、エネルギー移動又は再吸収によってナノクリスタルを励起することができる。
【0054】
電圧駆動ナノクリスタルエレクトロルミネッセンスデバイスでは、シリコン表面を熱酸化することによって、酸化珪素などの絶縁層が基板(例えばシリコン基板)上に形成される。広バンドギャップ材料、例えば硫化亜鉛を、絶縁層の上にキャスティング又はスパッタリングすることができる。次いで、ナノクリスタル溶液を、(例えばスピンキャスティング、インクジェット印刷、マイクロコンタクト印刷、又はドロップキャスティングによって)硫化亜鉛層の上に堆積することができる。別法として、広バンドギャップ材料(ポリマーなど)とナノクリスタルとを、溶媒中に共に溶解することができる。例えば、2003年3月28日出願の米国特許出願第10/400,907号を参照のこと(この特許の全体を引用により取り込む)。適切な溶媒の例として、クロロホルム及びTHFが挙げられる。次いで、広バンドギャップ材料及びナノクリスタルの溶液を堆積することができる。ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)の層を、ナノクリスタル層の上の第二絶縁材料として使用することができる。上部電極と保護層とは、インジウムスズ酸化物(ITO)被覆ガラススライドによって提供することができる。
【0055】
デバイスを形成するために、透明電極(ITOなど)を透明基板上に配置することができる。次いで、半導体ナノクリスタルが、マイクロコンタクト印刷又はラングミュア-ブロジェット(LB)技法など大面積適合型の単一単層堆積技法を使用して堆積される。その後、この層の上に、例えばスパッタリングによってn型半導体(例えば、ZnO又はTiO2)が塗布される。その上に金属電極を熱蒸着して、デバイスを完成させることができる。より複雑なデバイス構造も可能である。例えば、わずかにドープされた層を、ナノクリスタル層の近位に含むことができ、輸送層内の自由電荷キャリアによる励起子クエンチングにより非放射損失を最小限にすることができる。
【0056】
デバイスは、二つの輸送層を別個に成長させ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのエラストマーを使用して電気コンタクトを物理的に塗布することによって組み立てることができる。これは、ナノクリスタル層上への材料の直接堆積の必要性を回避する。
【0057】
デバイスは、すべての輸送層の塗布後に熱処理することができる。熱処理は、ナノクリスタル内への電荷の注入をさらに向上させることができ、且つナノクリスタル上の有機キャッピング基を除去することができる。キャッピング基の不安定性が、デバイス不安定性に寄与することがある。
【0058】
光発生のために使用される印加電圧は、AC電圧であってもDC電圧であってもよい。DC電圧は、例えば電池、コンデンサ、又は整流されたAC電圧を含めたDC電圧発生器によって供給することができる。AC電圧は、例えば正方波などの電圧波形を生成するAC電圧発生器によって供給することができる。波形は、10Hz〜1MHz、250Hz〜100kHz、又は500Hz〜10kHzの間の周波数を有することができる。平均電圧は、2〜10ボルト、又は3〜8ボルトの間であってよい。使用されるデューティサイクルのパーセンテージが、平均電圧を最大電圧で割った値に100をかけた値として計算される。デューティサイクルのパーセンテージは、オン/オフサイクルにおいて電圧がオンである相対時間(%)である。デバイスからの光出力及び安定性を最適化するように、周波数と、デューティサイクルと、ピーク電圧とを調節することができる。デューティサイクルのいくつかの適用が、例えば、G. Yuらの論文Applied Physics Letters 73: 111-113 (1998)に記載されている(この文献の全体を引用により取り込む)。例えば、AC電圧波形は、5V及び1kHzで50%のデューティサイクルであることがあり、これは、5ボルトの最大電圧、1kHzの周波数、2.5ボルトの平均電圧を有する。このようにして、低い平均動作電圧が、デバイスの動作半減期を改善することができる。
【0059】
二つの絶縁層及び導電層の間にナノクリスタル層と広バンドギャップ材料とを含む層を備えるそのようなエレクトロルミネッセンスデバイスを使用してディスプレイユニットを製造することができ、ここで、所望のエネルギー構造及び組成のナノクリスタル層を選択してパターニングすることによって、様々な色の光を発生する発光層が形成される。したがって、多色ディスプレイを実現することができる。
【0060】
図4は、エレクトロルミネッセンスデバイスからの放射を示すカラー写真である。ZnSエレクトロルミネッセンス材料からの青色発光と、半導体ナノクリスタルからの赤色発光との両方が観察された。
【0061】
図5A及び5Bは、それぞれオフ及びオン状態(即ち、印加電圧なし及び印加電圧あり)でのエレクトロルミネッセンスデバイスを示すカラー写真である。デバイスは、一辺1mmの正方形を有する「チェスボード」パターンで堆積されたZnSエレクトロルミネッセンス材料と赤色発光半導体ナノクリスタルとを含んでいた。交流電圧が印加されたとき、ZnS材料からの青色発光と、半導体ナノクリスタルから生じる赤色発光とが観察された。
他の実施態様は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極と;
第二電極と;
エレクトロルミネッセンス材料と;
前記エレクトロルミネッセンス材料と少なくとも一つの電極との間に配設された誘電体材料と;
前記エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るように配置された複数の半導体ナノクリスタルと
を備える、発光デバイス。
【請求項2】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、前記第一電極と前記第二電極との間に配設される、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、層として配置される、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記誘電体材料が、前記エレクトロルミネッセンス材料に隣接する少なくとも一つの層として配置される、請求項3記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、層として配置される、請求項4記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、前記エレクトロルミネッセンス材料に隣接する層として配置される、請求項4記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、前記エレクトロルミネッセンス材料中に分散される、請求項4記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、単色の光を放射するように選択される、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項9】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、複数の異なる色の光を放射するように選択される、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、白色光を放射するように選択される、請求項9記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、可視光を放射するように選択される、請求項1記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、赤外光を放射するように選択される、請求項13記載の発光デバイス。
【請求項13】
デバイスを製造する方法であって、
第一電極の上に誘電体材料を堆積すること;
前記第一電極の上にエレクトロルミネッセンス材料を堆積すること;
前記エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るような構成で複数の半導体ナノクリスタルを堆積すること;及び
前記第一電極と、前記誘電体材料と、前記エレクトロルミネッセンス材料と、前記複数の半導体ナノクリスタルとの上に第二電極を配置すること
を含み、
前記誘電体材料が、前記エレクトロルミネッセンス材料と少なくとも一つの電極との間に配設される、前記方法。
【請求項14】
前記エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るような構成で複数の半導体ナノクリスタルを堆積することが、前記第一電極の上に前記ナノクリスタルを堆積することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記エレクトロルミネッセンス材料を堆積することが、層を形成することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記誘電体材料が、前記エレクトロルミネッセンス材料に隣接する少なくとも一つの層として配置される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記複数の半導体ナノクリスタルを堆積することが、層を形成することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記複数の半導体ナノクリスタルを堆積することが、前記エレクトロルミネッセンス材料に隣接する層を形成することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記複数の半導体ナノクリスタルを堆積することが、前記エレクトロルミネッセンス材料中に前記複数の半導体ナノクリスタルを分散することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記エレクトロルミネッセンス材料中に前記複数の半導体ナノクリスタルを分散することが、前記複数の半導体ナノクリスタルと前記エレクトロルミネッセンス材料とを溶媒中に溶解することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、単色の光を放射するように選択される、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、複数の異なる色の光を放射するように選択される、請求項13記載の方法。
【請求項23】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、白色光を放射するように選択される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
光を発生する方法であって、
第一電極と; 第二電極と; エレクトロルミネッセンス材料と; 前記エレクトロルミネッセンス材料と少なくとも一つの電極との間に配設された誘電体材料と; 前記エレクトロルミネッセンス材料からエネルギーを受け取るように配置された複数の半導体ナノクリスタルとを含むデバイスを提供すること;及び
前記第一電極と前記第二電極との間に光発生電位を印加すること
を含む、前記方法。
【請求項25】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、前記第一電極と前記第二電極との間に配設される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、層として配置される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記誘電体材料が、前記エレクトロルミネッセンス材料に隣接する少なくとも一つの層として配置される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、層として配置される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、前記エレクトロルミネッセンス材料に隣接する層として配置される、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、前記エレクトロルミネッセンス材料中に分散される、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、単色の光を放射するように選択される、請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、単色の光を放射するように選択される、請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、複数の異なる色の光を放射するように選択される、請求項24記載の方法。
【請求項34】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、白色光を放射するように選択される、請求項24記載の方法。
【請求項35】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、可視光を放射するように選択される、請求項24記載の方法。
【請求項36】
前記複数の半導体ナノクリスタルが、赤外光を放射するように選択される、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−537965(P2009−537965A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512073(P2009−512073)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/012041
【国際公開番号】WO2008/088367
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(591091892)マサチューセッツ・インスティテュート・オブ・テクノロジー (16)
【Fターム(参考)】