説明

半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法

【課題】微細な粒子形状を有し、容易に安定して回収することができる、水酸基含有単量体単位を多く含む高極性の半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法を提供する。
【解決手段】水酸基含有単量体単位(A)を45質量%以上含み、必要に応じてラクトン骨格含有単量体単位(B)、吸光性基含有単量体単位(C)、酸脱離基含有単量体単位(D)及び環状エーテル構造含有単量体単位(E)から選択される少なくとも1種の単量体単位を含む半導体フォトリソグラフィ用重合体を溶媒に溶解した重合体溶液を20℃以下のエーテル系溶媒中に添加して再沈殿させる半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイス製造工程において、半導体フォトリソグラフィによる微細加工が用いられている。半導体フォトリソグラフィによる微細加工方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
まず、シリコンウエハ等の半導体基板上にフォトレジストや反射防止膜等の半導体フォトリソグラフィ用重合体を含有する組成物の薄膜を形成する。次いで、半導体デバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線等の活性光線を照射した後に現像して得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に前記パターンに対応する微細凹凸を形成する。
上記の半導体フォトリソグラフィ用重合体の組成としては、水酸基含有単量体単位(A)、ラクトン骨格含有単量体単位(B)、吸光性基含有単量体単位(C)、酸脱離基含有単量体単位(D)、環状エーテル構造含有単量体単位(E)等の単量体単位を有する重合体が使用されているが、リソグラフィー溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したり、硬化剤と反応して架橋構造を形成したりする架橋性等の性能が特に要求される用途においては水酸基含有単量体単位(A)を多く含む高極性重合体が使用される場合がある。
【0003】
半導体フォトリソグラフィ用重合体の製造方法としては、例えば、予め単量体及び重合開始剤を有機溶剤に溶解させた単量体溶液を特定の温度に保持した有機溶剤中に滴下して溶液重合を行う、滴下溶液重合法が知られている。また、滴下重合法等によって得られる重合体溶液については、貧溶媒中に添加して重合体を析出させることが行われている。この工程は一般的に再沈殿と呼ばれ、重合体溶液中に残存する未反応の単量体や重合開始剤等の不純分を除去するために有効である。
これらの不純分が重合体中に残存しているとレジスト性能や反射防止能等の半導体フォトリソグラフィの性能に悪影響を及ぼす可能性があるので、可能な限り不純分を除去することが好ましい。
【0004】
例えば、半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法として、特許文献1には、水酸基含有単量体単位を含む重合体溶液をジエチルエーテル中に投入して再沈殿させる方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1には、再沈殿させる際の再沈溶媒の温度について何ら記載がされておらず、室温にて処理されている蓋然性が高いが、このような従来の精製方法では、水酸基含有単量体単位(A)を多く含む高極性重合体を精製する際に、微細な粒子形状を有し、容易に安定して回収する方法としては不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/017,002号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、微細な粒子形状を有し、容易に安定して回収することができる、水酸基含有単量体単位を多く含む高極性の半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水酸基含有単量体単位(A)を30質量%以上含む半導体フォトリソグラフィ用重合体(以下、「本重合体」という)を溶媒に溶解した重合体溶液を、20℃以下のエーテル系溶媒中に添加して再沈殿させる半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、不純分の少ない水酸基含有単量体単位(A)を含む重合体を得ることができることから、種々の半導体リソグラフィ用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<水酸基含有単量体単位(A)>
水酸基含有単量体単位(A)は後述する本重合体の構成成分であり、本重合体中に30質量%以上、好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上含有される。
水酸基含有単量体単位(A)が本重合体中に、30質量%以上又は40質量%以上又は45質量%以上含有されることにより本重合体を含有する組成物から得られる膜と接触する基板又は他の膜との密着性を良好とすることができ、溶媒若しくは現像液との溶解性の制御又は硬化剤と本重合体とを反応させて架橋構造を形成させる場合の架橋性能が良好となる。
【0010】
水酸基含有単量体単位(A)中の水酸基としては、例えば、ハロゲンが置換しても良い、直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基が挙げられる。
水酸基含有単量体単位(A)中の水酸基の具体例としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基及びフルオロアルコール性水酸基が挙げられる。
水酸基含有単量体単位(A)を形成するための原料である水酸基含有単量体(A’)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びp−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
水酸基含有単量体(A’)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」又は「メタクリレート」を示し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は「アクリロイルオキシ」又は「メタクリロイルオキシ」を示す。
【0011】
<ラクトン骨格含有単量体単位(B)>
ラクトン骨格含有単量体単位(B)は必要に応じて本重合体の構成成分とすることができるものである。
本重合体がラクトン骨格含有単量体単位(B)を含む場合の本重合体中のラクトン骨格含有単量体単位(B)の含有量としては、本重合体を含有する組成物の基板等への密着性の点で、20質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましい。また、本重合体を含有する組成物から得られる膜を現像する際の感度及び解像度の点で、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0012】
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。
ラクトン骨格の構造としては、例えば、ラクトン環のみの単環のもの及びラクトン環に脂肪族又は芳香族の炭素環又は複素環が縮合しているものが挙げられる。
ラクトン骨格含有単量体単位(B)を形成するための原料であるラクトン骨格含有単量体(B’)としては、本重合体の基板等への密着性の点で、置換又は無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリレート及び置換又は無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリレートが好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0013】
ラクトン骨格含有単量体(B’)の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン及びメタクリロイルオキシこはく酸無水物が挙げられる。
これらの中で、本重合体の基板や下地膜への密着性に優れる点で、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オンが好ましい。
ラクトン骨格含有単量体(B’)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
<吸光性基含有単量体単位(C)>
吸光性基含有単量体単位(C)は必要に応じて本重合体の構成成分とすることができるものである。
吸光性基含有単量体単位(C)中の吸収性基は本重合体を含有する組成物中の感光成分が感光性を示す波長領域の光に対して高い吸収能を有する。
吸光性基としては、例えば、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造を有する基が挙げられ、任意の置換基を有していても良い
【0015】
置換基としては、例えば、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基及びアミド基が挙げられる。
半導体フォトリソグラフィに用いられる光としてKrFレーザ光が用いられる場合にはアントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合にはベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
吸光性基含有単量体単位(C)を形成するための原料である吸光性基含有単量体(C’)の具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、9−アントリルメチル(メタ)アクリレート及び6−ヒドロキシナフタレン−2,2−イルメチルメタクリレートが挙げられる。
吸光性基含有単量体(C’)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本重合体が吸光性基含有単量体単位(C)を含む場合の本重合体中の吸光性基含有単量体単位(C)の含有量としては、反射防止作用の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましい。また、70質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましい。
【0016】
<酸脱離基含有単量体単位(D)>
酸脱離基含有単量体単位(D)は必要に応じて本重合体の構成成分とすることができるものである。
酸脱離基含有単量体単位(D)は本重合体を含有する組成物から得られる感光膜のアルカリ現像液に対する溶解性を変化させる機能を有する。
酸脱離性基は酸により開裂する結合部を有する基であり、本重合体中の結合の開裂により酸脱離性基の一部又は全部が本重合体の側鎖から脱離する。
例えば、酸脱離性基含有単量体単位を有する本重合体を使用したレジスト用組成物を感光させると感光後の膜中の本重合体は酸成分と反応してアルカリ性溶液に可溶となり、レジストパターン形成が可能となる。
本重合体が酸脱離基含有単量体単位(D)を含む場合の本重合体中の酸脱離基含有単量体単位(D)の含有量としては、本重合体を含有する組成物から得られる膜を現像する際の感度及び解像度の点で、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。また、本重合体を含有する組成物の基板等への密着性の点で、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0017】
酸脱離基含有単量体単位(D)を形成するための原料である酸脱離基含有単量体(D’)としては、例えば、酸脱離性基及び重合性多重結合を有する単量体が挙げられる。
重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する結合であり、例えば、エチレン性二重結合が挙げられる。
酸脱離基含有単量体(D’)の具体例としては炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、且つ酸脱離性基を有している(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記の脂環式炭化水素基は(メタ)アクリレートのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
酸脱離基含有単量体(D’)の具体例としては上記の(メタ)アクリレート以外に、(メタ)アクリレートのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリレート及び炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、且つこの脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基又はオキセパニル基を表す。)が直接又は連結基を介して結合している(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0018】
波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、本重合体を得るために使用される酸脱離基含有単量体(D’)の具体例としては、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、イソプロピルアダマンチル(メタ)アクリレート及び1−エチルシクロオクチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中で、1−エチルシクロヘキシルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、1−エチルシクロペンチルメタクリレート及びイソプロピルアダマンチルメタクリレートを用いる場合には、リソグラフィー前後でのアルカリ現像液に対する溶解性の差が大きく、微細なパターンが得られるため好ましい。
酸脱離基含有単量体(D’)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
<環状エーテル構造含有単量体単位(E)>
環状エーテル構造含有単量体単位(E)は必要に応じて本重合体の構成成分とすることができるものである。
環状エーテル構造含有単量体単位(E)は本重合体を含有する組成物の基板や下地膜への密着性を高めたり、本重合体を含有する組成物の、半導体フォトリソグラフィに使用される溶媒やアルカリ現像液への溶解性を制御したり、本重合体を含有する組成物を硬化剤と反応させて硬化膜中に架橋構造を形成させる機能を有する。
環状エーテル構造含有単量体単位(E)を形成するための原料である環状エーテル構造含有単量体(E’)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
環状エーテル構造含有単量体(E’)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
<本重合体>
本重合体は水酸基含有単量体単位(A)を30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上含み、必要に応じてラクトン骨格含有単量体単位(B)、吸光性基含有単量体単位(C)、酸脱離基含有単量体単位(D)及び環状エーテル構造含有単量体単位(E)から選択される少なくとも1種の単量体単位を更に含む。
本重合体は水酸基含有単量体単位(A)の含有量が30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上であれば、レジスト膜との界面においてミキシング等のない高架橋な反射防止膜を得ることが可能である。
本重合体中の、ラクトン骨格含有単量体単位(B)、吸光性基含有単量体単位(C)、酸脱離基含有単量体単位(D)及び環状エーテル構造含有単量体単位(E)から選択される少なくとも1種の単量体単位の含有の有無は半導体フォトリソグラフィに使用する薄膜の用途に応じて選択することができる。
【0021】
また、本発明においては、必要に応じて本重合体中に他の単量体単位を含むことができる。
他の単量体単位を形成するための原料である他の単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びビニルベンゼンが挙げられる。

半導体フォトリソグラフィに使用する薄膜としては、例えば、レジスト膜、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、レジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)、ギャップフィル膜及びトップコート膜が挙げられる。
【0022】
本重合体をレジスト用に使用する場合には、本重合体は少なくとも水酸基含有単量体単位(A)及び酸脱離基含有単量体単位(D)を有することが好ましい。
また、本重合体をレジスト用に使用する場合には、本重合体の質量平均分子量(Mw)としては1,000〜100,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましい。本重合体の分子量分布(Mw/Mn)としては1.0〜3.0が好ましく、1.1〜2.5がより好ましい。
【0023】
本重合体を反射防止膜用に使用する場合には、本重合体中には吸光性基含有単量体単位(C)を有すると共に、本重合体を含有する組成物から得られる感光膜とレジスト膜との界面の平滑性を良好とするために、本重合体を含有する組成物と硬化剤とを反応させることができるアミノ基、アミド基、エポキシ基等の反応性官能基を有する単量体単位を含有させることが好ましい。
また、本重合体を反射防止膜用に使用する場合には、本重合体を含有する組成物から得られる感光膜の反射防止能等の点で、水酸基含有単量体単位(A)として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有する単量体単位を有することが好ましい。上記単量体単位を有する場合、架橋剤との架橋性能が良好であり、反射防止能等に優れるため好ましい。
本重合体を反射防止膜用に使用する場合の本重合体のMwとしては1,000〜100,000が好ましく、3,000〜30,000がより好ましく、5,000〜15,000が更に好ましい。本重合体のMw/Mnとしては1.0〜3.0が好ましく、1.1〜2.5がより好ましい。本重合体のMwやMw/Mnの制御により、反射防止膜用重合体を含有する組成物の塗付工程において、マイクロゲル等のディフェクトを低減させることができ、反射防止膜用重合体を含有する組成物と基板との密着性を向上させることができる。
【0024】
本重合体をギャップフィル用に使用する場合の本重合体としては、狭いギャップに流し込むための適度な粘度を有すると共に、本重合体を含有する組成物から得られる感光膜とレジスト膜との界面の平滑性を良好とするために、本重合体を含有する組成物と硬化剤とを反応させることができるアミノ基、アミド基、エポキシ基等の反応性官能基を有する単量体単位を含有させることが好ましい。
ギャップフィル用に使用する場合の本重合体としては、例えば、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体(A’)と、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート等の他の単量体との共重合体が挙げられる。
【0025】
本重合体を液浸フォトリソグラフィ用に使用する場合の本重合体としては、例えば、カルボキシ基含有単量体単位を含む重合体又は水酸基が置換したフッ素含有単量体単位を含む重合体が挙げられる。
【0026】
本重合体を得るための重合に使用される重合開始剤としては、例えば、2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及びジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601)が挙げられる。
重合開始剤の使用量としては、本重合体の収率の点で、本重合体を得るために使用される全単量体100モル部に対して0.3モル部以上が好ましく、1モル部以上がより好まし。また、重合開始剤の使用量としては、本重合体のMw/Mnを狭くする点で、本重合を得るために使用する全単量体100モル部に対して30モル部以下が好ましい。
【0027】
<溶媒>
溶媒は本重合体を溶解して重合体溶液を得るために使用される。
溶媒としては本重合体を溶解できるものであれば特に限定されないが、本重合体を形成するための原料である単量体及び重合開始剤を溶解できるものが好ましい。
溶媒の具体例としては、1,4−ジオキサン、イソプロピルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルが挙げられる。
【0028】
<重合体溶液>
重合体溶液は本重合体を溶媒に溶解したもので、重合体溶液を、20℃以下のエーテル系溶媒に滴下して再沈殿させることにより本重合体を精製することができる。
重合体溶液を得る方法としては、例えば、本重合体を溶媒に溶解させる方法及び本重合体を形成するための原料である単量体を上記の溶媒を使用した溶液重合法で重合させる方法が挙げられる。
【0029】
本重合体を得るための重合方法としては、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等の公知の重合方法が挙げられるが、重合反応終了後に残存する単量体や重合開始剤を除去する点や本重合体の分子量を比較的低くできる点で、溶液重合法が好ましい。
【0030】
溶液重合法において、本重合体の製造ロットの違いによるMw、Mw/Mn等のばらつきが小さく、再現性のある重合体を得る点で、単量体を反応器中に滴下する滴下重合法が好ましい。
滴下する単量体は前記溶媒に溶解させた溶液として使用することができる。
滴下重合法においては、例えば、仕込み溶媒として溶媒を予め反応器に仕込み、所定の重合温度まで加熱した後に単量体及び重合開始剤をそれぞれ別々に滴下する方法並びに単量体及び重合開始剤を溶媒に溶解させた滴下溶液を滴下する方法が挙げられる。
重合開始剤は仕込み溶媒中に予め溶解しておくこともできる。
単量体と重合開始剤は、それぞれ独立した貯槽から所定の重合温度まで加熱された反応器内の仕込み溶媒中に直接滴下してもよいし、それぞれ独立した貯槽から送液されたものを所定の重合温度まで加熱された反応器内の仕込み溶媒中に滴下する直前で混合した後に反応器内の仕込み溶媒中に滴下してもよい。
単量体及び重合開始剤を反応器内の仕込み溶媒中に滴下するタイミングとしては、単量体を先に滴下した後に重合開始剤を滴下する場合、重合開始剤を先に滴下した後に単量体を滴下する場合及び単量体と重合開始剤を同じタイミングで滴下する場合のいずれでもよい。
単量体や重合開始剤の滴下速度は滴下終了まで一定の速度であってもよいし、単量体や重合開始剤の消費速度に応じて多段階に速度を変化させてもよいし、間欠的に滴下を休止してもよい。
滴下重合法における重合温度は通常50〜150℃である。
滴下重合法における滴下終了時の溶媒の量としては、例えば、本重合体を得るために使用される全単量体100質量部に対して30〜70質量部である。
【0031】
重合体溶液は必要に応じて濃度調整用溶媒を添加して濃度調整することができる。
濃度調整用溶媒としては、前述の溶媒と同様のものが挙げられる。
濃度調整用溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
濃度調整用溶媒は前述の溶媒と同一でも異なっていてもよい。
【0032】
<エーテル系溶媒>
エーテル系溶媒は本重合体を精製するための再沈殿用溶媒として使用される。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブトキシエーテル、イソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ノルマルプロピルエーテル、イソアミルエーテル、ブチルエーテル及びジヘキシルエーテルが挙げられる。これらの中で、本重合体溶液を製造する際の安定性や安全性の点で、イソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ノルマルプロピルエーテル及びメチル−tert−ブトキシエーテルが好ましい。
エーテル系溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エーテル系溶媒には、必要に応じてアルコール等の非エーテル系溶媒を含有することができる。
【0033】
<再沈殿>
本重合体溶液の再沈殿は20℃以下のエーテル系溶媒中に本重合体溶液を添加することにより行なわれる。
エーテル系溶媒の温度を20℃以下とすることにより再沈殿時の分散性が向上し、微細な粒子形状を有する重合体を容易に回収することができる。
再沈殿により精製された本重合体は、必要に応じて溶媒に再溶解させた後に再度、上記の再沈殿の操作を実施することができる。
また、本発明においては、必要に応じて再沈殿後の本重合体を溶媒に再溶解させた重合体溶液から低沸点溶剤を除去するための蒸発工程を経て重合体溶液を濃縮することができる。
【0034】
重合体溶液の再沈殿の方法としては、例えば、20℃以下に冷却した重合体溶液と20℃以下のエーテル系溶媒又はそれらの混合溶媒とを混合する方法及び20℃以下のエーテル系溶媒中に重合体溶液を滴下する方法が挙げられるが、20℃以下のエーテル系溶媒中に重合体溶液を滴下する方法が好ましい。
重合体溶液又はエーテル系溶媒の冷却方法としては、潜熱(気化)冷却方法及び顕熱(冷水)冷却方法が挙げられるが、外的要因の影響を受けにくく、安定的に温度制御可能な点で、潜熱(気化)冷却方法が好ましい。
再沈殿におけるエーテル系溶媒の温度としては、本重合体中の不純分の除去性及びエーテル系溶媒の温度制御の点で、0〜20℃が好ましく、10〜20℃がより好ましく、13℃〜17℃が更に好ましい。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明を実施例により説明する。尚、以下において、「部」及び「%」は夫々「質量部」及び「質量%」を示す。また、重合体溶液を再沈殿した後の重合体の状態について以下の方法により評価した。
【0036】
(1)重合体の状態
重合体溶液を再沈殿した後の液を撹拌しながら溶媒中での重合体の形状を目視で確認し、以下の基準で重合体の状態を判断した。
○:重合体の粒子径は小さく、溶媒中での重合体の粒子の拡散性も良好。
△:重合体の粒子径が大きい。
×:重合体は粒子を形成せず、モチ状物を形成。
【0037】
[合成例1]水酸基含有単量体単位を含む重合体(1)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液の製造
冷却器、撹拌器及び滴下装置を備えた0.5リットルの反応容器に溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル62.8gを投入した。
次いで、反応容器内の温度を80℃に維持しながらベンジルメタクリレート20.7g(全単量体中の27.5%)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート33.9g(全単量体中の45.0%)、γ−ブチロラクトンメタクリレート20.7g(全単量体中の27.5%)及び2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)4.105g(全単量体中の2.5mmol)をプロピレングリコールモノメチルエーテル113.0gに溶解した単量体含有溶液を6時間で滴下し、その後80℃で1時間保持して水酸基含有単量体単位を含む重合体(1)の30%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を得た。水酸基含有単量体単位を含む重合体(1)の30%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液の組成を表1に示す。
【0038】
【表1】

表中の略号は以下の化合物を示す。
AIBN:2’−アゾビスイソブチロニトリル
【0039】
[合成例2及び3]水酸基含有単量体単位を含む重合体(2)及び(3)のプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液の製造
単量体含有溶液の組成を表1に示す組成とし、その他は合成例1と同様にして水酸基含有単量体単位を含む重合体(2)及び(3)の30%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を製造した。
【0040】
[実施例1]
水酸基含有単量体単位を含む重合体(1)の30%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液4gを20℃のイソプロピルエーテル32g中に滴下して再沈殿による精製を実施し、水酸基含有単量体単位を含む重合体(1)を得た。重合体の状態についての評価結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
[実施例2〜10及び比較例1〜2]
表2に示す水酸基含有単量体単位を含む重合体を使用し、表2に示す温度の再沈殿溶媒を使用して実施例1と同様にして表2に示す精製された水酸基含有単量体単位を含む重合体(1)〜(3)を得た。重合体の状態についての評価結果を表2に示す。
表2から明らかなように、水酸基含有単量体単位を重合体中に30%以上含有する重合体を再沈殿精製する際には20℃以下のエーテル系溶媒に滴下することにより良好な重合体の状態のものが得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有単量体単位(A)を30質量%以上含む半導体フォトリソグラフィ用重合体を溶媒に溶解した重合体溶液を、20℃以下のエーテル系溶媒中に添加して再沈殿させる半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法。
【請求項2】
半導体フォトリソグラフィ用重合体が水酸基含有単量体単位(A)を30質量%以上含み、且つラクトン骨格含有単量体単位(B)及び吸光性基含有単量体単位(C)を含む請求項1に記載の半導体フォトリソグラフィ用重合体の精製方法。

【公開番号】特開2011−252074(P2011−252074A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126569(P2010−126569)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】