説明

半導体レーザモジュール,およびこれを備えたラマン増幅器

【目的】駆動電流の大きさにかかわらず,活性層温度をほぼ一定に保つことができるようにする。
【構成】半導体ゲインチップ11に駆動電流が供給されると,半導体ゲインチップ11の前方端面から光が出射する。半導体ゲインチップ11の後方端面および光ファイバ4中のFBG4aによって光反射が繰返されてレーザ発振が生じる。さらに,半導体ゲインチップ11の後方端面から出射される光が当たる位置に,温度を測定するサーミスタ13が設けられている。半導体ゲインチップ11およびサーミスタ13はいずれもTEC15上に載置され,TEC15はサーミスタ13の温度が所定温度に保たれるように制御される。半導体ゲインチップ11の後方端面から出射される光によってサーミスタ13が加熱されるので,半導体ゲインチップ11とサーミスタ13の温度の乖離幅が小さくなる。このため,サーミスタ13を所定温度に保つと,半導体ゲインチップ11の温度も所定温度に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,半導体レーザモジュール,および半導体レーザモジュールを備えたラマン増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザまたは半導体ゲインチップ(以下,LDと呼ぶ)は活性層を含み,活性層に電流を供給することによってレーザ光(光)を発生する。活性層に電流を供給すると活性層の温度が上昇する。活性層の温度変動はLDから出射されるレーザ光(光)の波長に影響を及ぼすので,LDが格納されるモジュール内部には一般にLDを冷却するための熱電クーラ(ThermoElectric Cooler :TEC)が設けられ,このTEC上にLDが搭載される。TEC上には温度を測定するためのサーミスタも搭載される。サーミスタによって測定される温度が所定温度(たとえば,25℃)となるようにTECは制御される。
【0003】
TECはLDの活性層温度を所定温度に維持することを目的としてモジュール内部に設けられるものであるが,上述のように,TECは,活性層温度ではなくサーミスタ温度を所定温度に維持するように動作する。すなわち,TECによる温度制御(冷却)によってサーミスタ温度を所定温度に維持することはできるが,それがLDの活性層温度を一定にすることには必ずしもつながらない。
【0004】
図5(A),(B)は,LDに供給する駆動電流を変化させたときの,活性層およびサーミスタの温度変化(実線が活性層温度,破線がサーミスタ温度)を示している。図5(A)はTECによる温度制御を行っていないとき(TEC制御無し)のグラフであり,図5(B)はTECを用いた温度制御を行ったとき(TEC制御時)のグラフである。図5(C)は,TECを用いた温度制御を行っている状態において,比較的小さい駆動電流をLDに供給したとき(実線)および比較的大きい駆動電流をLDに供給したとき(一点鎖線)の,LDから出射されるレーザ光(光)の波長と出力(パワー)との関係を示すグラフである。
【0005】
図5(A)に示すように,TECによる温度制御を行っていない場合,活性層温度およびサーミスタ温度は,いずれも駆動電流を大きくするにしたがって上昇する。特に,活性層温度は急激に上昇する。駆動電流を大きくするにしたがって活性層温度とサーミスタ温度の乖離が大きくなる。
【0006】
図5(B)を参照して,TECを用いた温度制御を行うと,上述したように,サーミスタ温度が所定温度に保たれる。しかしながら,駆動電流を大きくするにしたがって活性層温度は上昇し,サーミスタ温度との乖離は大きくなる。駆動電流を大きくすると活性層温度が上昇するので,出射されるレーザ光(光)の波長は長波長側にずれてしまう(図5(C))。光ファイバ中に形成された回折格子(FBG:Fiber Bragg Grating )を外部反射器とする外部共振器型半導体レーザモジュールでは,特に,FBGが持つ反射波長と半導体ゲインチップの持つ光学利得波長とが大きくずれてしまうと,引込み範囲から外れ,FBGによる発振が得られなくなる。
【0007】
サーミスタを極力LDに近づけて配置することによってサーミスタ温度と活性層温度の乖離はある程度は改善され,レーザ光の波長ずれはある程度改善する(たとえば,特許文献1)。しかしながら,根本的な改善をもたらすものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−141599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は,駆動電流の大きさにかかわらず,活性層温度をほぼ一定に保つことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による半導体レーザモジュールは,半導体基板上に,活性層を含む光導波路が形成され,両端に前方端面および後方端面を有し,駆動電流が供給されることによって前記活性層において発生する光を前記前方端面および前記後方端面から出射する半導体ゲインチップ,ならびに所定波長の光を反射する回折格子が内部に形成されている,前記半導体ゲインチップの前方端面から出射する光が入射する光ファイバを備え,前記半導体ゲインチップの後方端面および前記光ファイバ中の回折格子によって光共振器が構成されている外部共振器型半導体レーザ,温度変化を抵抗値の変化として出力するサーミスタ,ならびに前記半導体ゲインチップおよび前記サーミスタが搭載され,前記サーミスタによる抵抗値が所定値になるように制御される熱電クーラを備え,前記サーミスタが,前記半導体ゲインチップの後方端面から出射される光が当たる位置に配置されていることを特徴とする。熱電クーラは,半導体レーザモジュールの外部に設けられる制御回路(クーラ制御回路)によって制御される。サーミスタからの測定温度を表わすデータに基づいて,クーラ制御回路は,サーミスタが所定温度を維持するように,熱電クーラを制御する。
【0011】
半導体ゲインチップに含まれる活性層に駆動電流を供給すると,活性層において光が発生する。半導体ゲインチップの前方端面から出射された光は,レンズを介して回折格子(FBG)が一部に形成されている光ファイバに入射する。半導体ゲインチップの後方端面と回折格子との間で光反射が繰返されることによってレーザ発振が生じる。得られたレーザ光が光ファイバ中を伝播する。
【0012】
半導体ゲインチップの後方端面は光反射器として機能するので,高い反射率で光を反射する必要がある。また,FBGによる外部共振モードをより安定に得るために,半導体ゲインチップの前方端面は光反射率を低くする必要がある。一実施態様では,前記半導体ゲインチップの前方端面に反射防止膜が,後方端面に反射膜がそれぞれ設けられる。たとえば,前記後方端面に設けられる反射膜には,光反射率が90%以上のものが用いられる。半導体ゲインチップの後方端面において,ほとんどの光は反射されるが,外部に出射する光も存在する。
【0013】
この発明によると,半導体ゲインチップの後方端面から出射される光が当たる位置に,温度を測定するためのサーミスタが配置されているので,半導体ゲインチップの後方端面から出射される光によってサーミスタが加熱される(温められる)。半導体ゲインチップの後方端面から出射される光は半導体ゲインチップに供給される駆動電流の大きさに応じた出力(パワー)を持つので,駆動電流が大きいほどサーミスタの加熱量も大きくなる。
【0014】
この発明によると,駆動電流の大きさに応じた半導体ゲインチップの後方端面からの光によってサーミスタの温度上昇が補償される。これにより活性層の温度とサーミスタの温度との間の乖離を少なくすることができる。したがって,サーミスタによる測定温度が所定温度になるように熱電クーラを制御すると,活性層もほぼ所定温度に維持される。駆動電流の大きさに関わらずに活性層が所定温度に維持されるので,発振波長の安定化が図られる。
【0015】
半導体レーザモジュールは,前記半導体ゲインチップの後方端面から出射される光を受けるフォトダイオードをさらに備えてもよい。前記後方端面から前記フォトダイオードに向かって出射される光の一部が,前記サーミスタに当たる。
【0016】
一実施態様では,前記後方端面から出射される光が当たるサーミスタの表面に,光吸収膜が形成される。半導体ゲインチップの後方端面からの光によるサーミスタの加熱量を,大きくすることができる。
【0017】
この発明による半導体レーザモジュールは,広い電流範囲にわたって安定してFBG発振したレーザ光を出射することができるので,ラマン増幅器における励起光源として用いるのに適している。この発明は,上述した半導体レーザモジュール,および前記半導体レーザモジュールからのレーザ光が励起光として入射し,誘導ラマン増幅を生じさせる光ファイバを備えたラマン増幅器も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は半導体レーザモジュールの内部構造を示す平面図を,(B)は半導体レーザモジュールの内部構造を示す側断面図を,それぞれ示す。
【図2】半導体レーザモジュールを含むレーザユニットの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】(A)はTECによる温度制御を行わないときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(B)はTECによる温度制御を行っているときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(C)はTECによる温度制御を行っているときの,レーザ光の波長および出力の関係を示すグラフを,それぞれ示す。
【図4】ラマン増幅器のブロック図を示す。
【図5】従来技術を示すものであり,(A)はTECによる温度制御を行わないときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(B)はTECによる温度制御を行っているときの駆動電流と活性層およびサーミスタの温度変化の関係を示すグラフを,(C)はTECによる温度制御を行っているときの,レーザ光の波長および出力の関係を示すグラフを,それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(A)は半導体レーザモジュールの内部構造を平面図によって,図1(B)は半導体レーザモジュールの内部構造を側断面図によって,それぞれ示している。図1(A),(B)において,ワイヤ(導線)の図示は省略されている。
【0020】
図1(A),(B)を参照して,半導体レーザモジュール1は,内部が中空の直方体状のパッケージ(筐体)2を備え,パッケージ2の内部に,光を出射する半導体ゲインチップ11,半導体ゲインチップ11から出射される光を集光するレンズ12,温度を測定する(温度変化を抵抗値の変化として出力する)ためのサーミスタ13,および半導体ゲインチップ11の後方端面から出射する光を受光して半導体ゲインチップ11の出力をモニタするためのフォトダイオード14が格納されている。半導体ゲインチップ11はサブマウント21上に載置され,レンズ12はレンズホルダ22に保持され,サーミスタ13はサーミスタサブマウント23上に載置され,フォトダイオード14はPDサブマウント24の壁面に固定されている。サブマウント21,レンズホルダ22,サーミスタサブマウント23およびPDサブマウント24は,いずれも基板25上に固定されている。
【0021】
詳細な図示は省略するが,半導体ゲインチップ11は,半導体基板上に,活性層を含む組成,不純物の種類と量等の異なる複数の半導体層が積層されて構成されている。活性層は光の導波方向にストライプ状に形成されている。そして,活性層において生じる光が活性層の上下に形成された複数の半導体層に閉込められ,活性層を含む複数層で光導波路が構成されている。
【0022】
パッケージ内部の底面に熱電クーラ(ThermoElectric Cooler )(たとえば,ペルチェ素子)(以下,TECと呼ぶ)15が固定されている。このTEC15上に,上述した半導体ゲインチップ11,レンズ12,サーミスタ13およびフォトダイオード14が搭載された基板25が固定されている。
【0023】
パッケージ2の左右壁面のそれぞれから,複数のリード端子26が外方に突き出している。パッケージ2の内部において,リード端子26の端部と上述した半導体ゲインチップ11,サーミスタ13,フォトダイオード14およびTEC15が,ワイヤ(図示略)によって電気的に接続されている。
【0024】
パッケージ2の前壁面に,光ファイバ4が中心に配置された円筒状のフェルール3が固定されている。
【0025】
半導体ゲインチップ11に駆動電流を順方向に供給すると,活性層において光が発生する。活性層において発生した光は半導体ゲインチップ11の前方端面(出射端面)から出射してレンズ12に入射する。レンズ12において集光された光が光ファイバ4に入射する。
【0026】
光ファイバ4中に,回折格子(FBG)4a(以下,FBG4aと言う)が形成されている。半導体ゲインチップ11の前方端面から出射した光のうち,FBG4aのブラッグ波長およびその近傍の波長を持つ光がFBG4aにおいて反射される。FBG4aにおいて反射された光は,光ファイバ4,レンズ12を介して再び半導体ゲインチップ11に戻り,活性層で光学利得を受けて増幅され,半導体ゲインチップ11の後方端面において反射される。半導体ゲインチップ11の後方端面とFBG4aとの間で光反射が繰返されることによってレーザ発振が生じ,レーザ光が光ファイバ4に入射する。このように,光を発生し,かつ後方端面において光を反射する半導体ゲインチップ11と,外部共振器として機能するFBG4aとによって,外部共振器型半導体レーザが構成されている。なお,FBG4aにおいて反射された光を半導体ゲインチップ11に戻す必要があるので,パッケージ2中にアイソレータは設けられていない。半導体ゲインチップ11の前方端面には反射防止膜を,後方端面には反射膜を,それぞれ設けてもよい。後方端面に設けられる反射膜には,たとえば,光反射率を90%とするものが用いられる。
【0027】
図2は,上述した半導体レーザモジュール1を含むレーザユニットの電気的構成を示すブロック図である。上述した半導体レーザモジュール1と,半導体レーザモジュール1の外部に設けられる駆動電源31,自動出力制御回路(APC:Auto Power Control回路)32,およびTECコントローラ33とによって,レーザユニットは構成される。
【0028】
駆動電源31から半導体ゲインチップ11に駆動電流が供給される。駆動電源31からの駆動電流は,APC回路32から与えられる制御信号に基づいて制御される。
【0029】
APC回路32は,フォトダイオード14からの出力電流が所定値になるように駆動電源31を制御する。フォトダイオード14は半導体ゲインチップ11の後方に配置されており,後方端面から出射される光を受光して,これに応じた電流を出力する。半導体ゲインチップ11の後方端面から出射される光の出力は前方端面から出射される光の出力と比例するので,フォトダイオード14からの出力電流が所定値となるように駆動電源31を制御することによって,半導体ゲインチップ11の前方端面から出射される光出力(パワー)が所定値に維持される。
【0030】
APC回路32の設定に基づいて半導体ゲインチップ11に供給される駆動電流が決定され,かつ半導体ゲインチップ11から出射される光のパワー(レーザ発振後のレーザ光のパワー)が決定される。求められる出力特性に応じて,様々なパワーの光を半導体レーザモジュール1から出射させることができる。
【0031】
駆動電源31からの駆動電流が半導体ゲインチップ11に供給されると,半導体ゲインチップ11の活性層が発熱する。半導体ゲインチップ11は,TECコントローラ33から与えられる制御信号にしたがって動作するTEC15によって冷却される。
【0032】
TECコントローラ33は,サーミスタ13による測定温度が所定温度(たとえば,25℃)になるように,TEC15を制御する。すなわち,TECコントローラ33はサーミスタ13の抵抗値を読み取り,この抵抗値が所定値に維持されるように,TEC15を制御する。これによりサーミスタ13の測定温度が所定温度(たとえば,25℃)に維持される。
【0033】
上述したように,駆動電流が供給されると半導体ゲインチップ11の活性層が発熱する。半導体ゲインチップ11からの熱(サブマウント21,基板25およびサブマウント23を経由して伝わる熱)によって,サーミスタ13の温度も上昇する。この場合,TECコントローラ33は上昇したサーミスタ13の温度を下げるようにTEC15を制御する。
【0034】
ここで,サーミスタ13は,半導体ゲインチップ11の後方端面から出射される光が当たる位置に設けられている。このため,半導体ゲインチップ11に駆動電流が供給されることによって半導体ゲインチップ11から光が出射されると,後方端面からの光(以下,後方出射光と言う)によってサーミスタ13は加熱される(温められる)。すなわち,サーミスタ13は,半導体ゲインチップ11からの基板,サブマウントを経由した熱伝導によって加熱されるとともに,半導体ゲインチップ11からの後方出射光によっても加熱される。
【0035】
半導体ゲインチップ11における発熱を半導体ゲインチップ11からの熱伝導のみでサーミスタ13に伝達させるとすると,サーミスタ13の温度は半導体ゲインチップ11の活性層の温度と一致しなくなる。特に半導体ゲインチップ11に供給される駆動電流が大きい場合,サーミスタ13の温度と半導体ゲインチップ11の活性層の温度との間には大きな乖離が生じる。その結果,サーミスタ13は所定温度に維持されるが,活性層は所定温度に維持されずに上昇する。レーザ光の発振波長が長波長側に変動してしまう(図5(A)〜(C)参照)。
【0036】
しかしながら,サーミスタ13は,上述したように,半導体ゲインチップ11からの熱伝導のみならず,半導体ゲインチップ11からの後方出射光によっても加熱される。後方出射光は駆動電流の大きさに応じた出力(パワー)を持つので,駆動電流が大きいほど後方出射光によるサーミスタ13の加熱量が大きくなる。したがって,サーミスタ13による測定温度は,駆動電流が大きくされたことによる半導体ゲインチップ11の活性層の温度上昇を反映したものとなる。
【0037】
図3(A)〜(C)は,図5(A)〜(C)に対応するもので,半導体ゲインチップ11からの後方出射光が当たる位置にサーミスタ13を設けた場合のグラフを示している。
【0038】
図3(A)を参照して,半導体ゲインチップ11からの後方出射光によってサーミスタ13を加熱することによって,活性層温度とサーミスタ温度の乖離幅を小さくすることができる。図3(B)を参照して,活性層温度とサーミスタ温度の乖離幅が小さくされた結果,TECコントローラ33およびTEC15によってサーミスタ13が所定温度に維持されると,活性層温度もほぼ所定温度に近い温度に維持される。このため,駆動電流を大きくしても,出射光の波長のずれはほとんど生じない(図3(C))。半導体レーザモジュール1を,様々なパワーを持つレーザ光を得るための光源として用いても(駆動電流を変動させても),安定した波長のレーザ光を得ることができる。
【0039】
なお,後方端面から出射される光が当たるサーミスタの表面に,当てられた光を吸収して熱に変化させる特性を持つ近赤外線光吸収膜を形成するようにしてもよい。近赤外線光吸収膜の材質としては,例えばNiP(ニッケル−リン)等を用いることができる。この吸収膜を形成することで,サーミスタの加熱量がさらに大きくなり,活性層温度との乖離幅をより小さくすることが可能である。
【0040】
さらに,以上の説明においては,フォトダイオードに向かう後方端面出射光の一部をサーミスタに当てる構成としてきたが,これに限定されるものではない。例えば,フォトダイオードを有さない半導体レーザモジュールの場合にあっては,後方端面出射光が最も良く当たる位置である後方端面の正面に,サーミスタを配置してもよい。
【0041】
図4は,上述した半導体レーザモジュール1(レーザユニット)を励起光用光源として用いたラマン増幅器のブロック図を示している。
【0042】
ラマン増幅器40では,半導体レーザモジュール1から出射されたレーザ光が励起光としてカプラ41を通じて増幅用光ファイバ42に入力する。増幅用光ファイバ42において誘導ラマン散乱が生じ,レーザ光の波長(励起光波長)から約100nm程度長波長側に利得が生じる。増幅用光ファイバ42に信号光が入射すると,増幅用光ファイバ42中に生じた利得によって信号光が増幅される(ラマン増幅)。半導体レーザモジュール1は,比較的パワーの大きいレーザ光を出射することができるので,信号光を長距離にわたって伝送することができる。また,半導体レーザモジュール1は駆動電流を大きくしても波長ずれを生じることなく安定してレーザ発振するので,ラマン利得を安定して得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 半導体レーザモジュール
4 光ファイバ
4a 回折格子(FBG)
11 半導体ゲインチップ
13 サーミスタ
14 フォトダイオード
15 熱電クーラ(TEC)
33 TECコントローラ
40 ラマン増幅器
42 増幅用光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に,活性層を含む光導波路が形成され,両端に前方端面および後方端面を有し,駆動電流が供給されることによって前記活性層において発生する光を前記前方端面および前記後方端面から出射する半導体ゲインチップ,ならびに所定波長の光を反射する回折格子が内部に形成されている,前記半導体ゲインチップの前方端面から出射する光が入射する光ファイバを備え,前記半導体ゲインチップの後方端面および前記光ファイバ中の回折格子によって光共振器が構成されている外部共振器型半導体レーザ,
温度変化を抵抗値の変化として出力するサーミスタ,ならびに
前記半導体ゲインチップおよび前記サーミスタが搭載され,前記サーミスタによる抵抗値が所定値になるように制御される熱電クーラを備え,
前記サーミスタが,前記半導体ゲインチップの後方端面から出射される光が当たる位置に配置されている,
半導体レーザモジュール。
【請求項2】
前記半導体ゲインチップの後方端面から出射される光を受けるフォトダイオードをさらに備え,
前記後方端面から前記フォトダイオードに向かって出射される光の一部が,前記サーミスタに当たる,請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
前記後方端面から出射される光が当たるサーミスタの表面に,光吸収膜が形成されている,請求項1または2に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項4】
前記半導体ゲインチップの前記前方端面に反射防止膜が,前記後方端面に反射膜が,それぞれ設けられている,請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体レーザモジュール,および
前記半導体レーザモジュールからのレーザ光が励起光として入射し,誘導ラマン増幅を生じさせる光ファイバ,
を備えたラマン増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−245209(P2010−245209A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90752(P2009−90752)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】