説明

半導体レーザ装置およびその製造方法

【課題】偏光角を小さくできると共に、偏光比を大きくすることができて、製造の自由度が高い半導体レーザ装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上には、半導体層で構成されて赤外発振波長を有する第1半導体レーザ構造3と、半導体層で構成されて赤色振波長を有する第2半導体レーザ構造とを成長させている。この第1,第2半導体レーザ構造3,4は、活性層6,11と、この活性層6,11を下地結晶として活性層6,11上に成長させたクラッド層7,12とを有している。この活性層6,11とクラッド層7,12との格子不整合度が0.01119〜0.02611の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光点を有する半導体レーザ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の半導体レーザ装置においては、良好なレーザ発振を実現させるため、エピタキシャル層に異なる格子定数を有する半導体結晶を数層から数十層にわたって積層する。このため、上記半導体結晶で形成する活性層には必ず半導体結晶の格子定数差による歪が加わって、偏光角が大きくなり、偏光比(TM(Transverse Magnetic)モードとTE(Transverse Electric)モードの強度比)が小さくなってしまう。その結果、直線偏光特性(TEモード単一)を理想とする半導体レーザ装置としての特性を悪化させていた。
【0003】
また、上記活性層には、半導体結晶の格子定数差による歪だけでなく、半導体レーザ装置自体の反り、半導体レーザ装置をサブマウントにはんだ接着する際の、半導体レーザ装置とサブマウトとの熱膨張係数差による圧縮歪または引っ張り歪が加わる。
【0004】
また、半導体レーザ装置には、発光点が2つの2波長半導体レーザ装置がある。上記各発光点を有するリッジ部は2波長半導体レーザ装置の中心から離れているため、発光点が1つの単一波長半導体レーザ装置に比べて、2波長半導体レーザ装置の活性層は外部からの圧縮歪、引っ張り歪の影響を受けやすい。すなわち、上記2波長半導体レーザ装置は、単一波長半導体レーザ装置よりも、簡単に、偏光角が大きくなり、偏光比が小さくなってしまう。
【0005】
また、上記2波長半導体レーザ装置には、赤色レーザ光を出射する第1構造と、赤外レーザ光を出射する第2構造とを、同一基板上に形成するものがある。この場合、上記第1構造の活性層は第2構造の活性層の構成とは異なる。このため、上記第1,第2構造は同時に形成することができず、必ず、第1,第2構造の一方を形成した後、第1,第2構造の他方を形成する。したがって、上記第1,第2構造の他方を形成する製造プロセスは、第1,第2構造の一方に悪影響を与えないことが要求される。
【0006】
従来、半導体レーザ装置としては、特開2010−272721号公報(特許文献1)や特開2008−140887号公報(特許文献2)に開示されたものがある。
【0007】
特開2010−272721号公報の半導体レーザ装置では、同一基板上に、赤色レーザ光を出射する赤色半導体レーザ構造と、赤外レーザ光を出射する赤外半導体レーザ構造とを形成している。この赤色半導体レーザ構造の共振方向に垂直な方向の幅は、赤外半導体レーザ構造の共振方向に垂直な方向の幅よりも大きくしている。そして、上記赤色半導体レーザ構造よりも赤外半導体レーザ構造に圧縮歪みを大きく加えることにより、実装歪みによる悪影響の低減を図っている。
【0008】
特開2008−140887号公報の半導体レーザ装置では、7°以上のGaAsオフ基板上に、下クラッド層、活性層および上クラッド層を順次形成している。この上クラッド層および下p−クラッド層の組成比を調整して、上クラッド層および下p−クラッド層に対する活性層の格子不整合度をほぼゼロに近づけることにより、活性層に加わる歪の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−272721号公報
【特許文献2】特開2008−140887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開2010−272721号公報の半導体レーザ装置では、赤色半導体レーザ構造の共振方向に垂直な方向の幅を、赤外半導体レーザ構造の共振方向に垂直な方向の幅よりも大きくすることを前提とするため、赤色半導体レーザ構造と赤外半導体レーザ構造との間で大小関係が制約され、製造の自由度が小さくなってしまうという問題がある。
【0011】
特開2008−140887号公報の半導体レーザ装置でも、上クラッド層および下p−クラッド層に対する活性層の格子不整合度をほぼゼロに近づけるため、製造の自由度が小さくなってしまうという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の課題は、偏光角を小さくできると共に、偏光比を大きくすることができて、製造の自由度が高い半導体レーザ装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の半導体レーザ装置は、
基板と、
上記基板上に成長させた半導体層で構成され、第1発振波長を有する第1半導体レーザ構造と、
上記基板上に成長させた半導体層で構成され、上記第1発振波長とは異なる第2発振波長を有する第2半導体レーザ構造と
を備え、
上記第1,第2半導体レーザ構造は、活性層と、この活性層を下地結晶として上記活性層上に成長させたクラッド層とを備え、
上記活性層と上記クラッド層との格子不整合度が0.01119〜0.02611の範囲内であることを特徴としている。
【0014】
ここで、上記格子不整合度とは、下記式で求められる値の絶対値である。
【0015】
(a−a)/a
:活性層のクラッド層側の表面の格子定数
a:クラッド層の活性層側の表面の格子定数
上記構成によれば、上記活性層とクラッド層との格子不整合度を0.01119〜0.02611の範囲内にしているので、活性層に加わる歪みを低減できる。したがって、上記第1,第2半導体レーザ構造が出射するレーザ光の偏光角を小さくすることができると共に、そのレーザ光の偏光比を大きくすることができる。
【0016】
また、上記第1,第2半導体レーザ構造の大きさを特開2010−272721号公報のように制限しなくてもよく、格子不整合度を特開2008−140887号公報のようにほぼゼロに近づけなくもてよいので、製造の自由度を高くすることができる。
【0017】
また、例えば、上記基板上に第1半導体レーザ構造を形成した後、第2半導体レーザ構造を形成する場合、第2半導体レーザ構造を得るための積層構造の一部が第1半導体レーザ構造上に形成されたとしても、その積層構造において、活性層にすべき層とクラッド層にすべき層との格子不整合度が、0.01119〜0.02611の範囲内であるので、第1半導体レーザ構造に悪影響を及ぶのを防ぐことができる。
【0018】
一実施形態の半導体レーザ装置では、
上記活性層は量子井戸を有する。
【0019】
上記実施形態によれば、上記活性層とクラッド層との格子不整合度を0.01119〜0.02611の範囲内であるので、量子井戸は、実用上問題なく、歪量子井戸の量子効果を奏することができる。
【0020】
一実施形態の半導体レーザ装置では、
上記第1発振波長は赤外波長である。
【0021】
上記実施形態によれば、上記第1発振波長は赤外波長であるので、赤外レーザ光の偏光角を小さくすることができると共に、赤外レーザ光の偏光比を大きくすることができる。
【0022】
一実施形態の半導体レーザ装置では、
上記第2発振波長は赤色波長である。
【0023】
上記実施形態によれば、上記第2発振波長は赤色波長であるので、赤色レーザ光の偏光角を小さくすることができると共に、赤色レーザ光の偏光比を大きくすることができる。
【0024】
一実施形態の半導体レーザ装置では、
上記第1半導体レーザ構造が有する上記クラッド層はAlGaInPで形成されている。
【0025】
上記実施形態によれば、上記第1半導体レーザ構造が有するクラッド層はAlGaInPで形成されているので、このクラッド層のInの比率を適正化することにより、第1半導体レーザ構造が有する活性層と上記クラッド層との格子不整合度を調整できる。
【0026】
一実施形態の半導体レーザ装置では、
上記第2半導体レーザ構造が有する上記クラッド層はAlGaInPで形成されている。
【0027】
上記実施形態によれば、上記第2半導体レーザ構造が有するクラッド層はAlGaInPで形成されているので、このクラッド層のInの比率を適正化することにより、第2半導体レーザ構造が有する活性層と上記クラッド層との格子不整合度を調整できる。
【0028】
本発明の半導体レーザ装置の製造方法は、
本発明の半導体レーザ装置を製造する半導体レーザ装置の製造方法であって、
上記第1半導体レーザ構造が有する上記クラッド層の組成うち、上記クラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、上記クラッド層を形成することを特徴としている。
【0029】
上記構成によれば、上記第1半導体レーザ構造が有するクラッド層の組成うち、このクラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、クラッド層を形成するので、活性層に加わる格子歪を容易かつ確実に小さくすることができる。
【0030】
一実施形態の半導体レーザ装置の製造方法は、
上記第2半導体レーザ構造が有する上記クラッド層の組成うち、上記クラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、上記クラッド層を形成することを特徴としている。
【0031】
上記実施形態によれば、上記第2半導体レーザ構造が有するクラッド層の組成うち、このクラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、クラッド層を形成するので、活性層に加わる格子歪を容易かつ確実に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の半導体レーザ装置によれば、第1,第2半導体レーザ構造は、量子井戸を有する活性層と、この活性層を下地結晶として上記活性層上に成長させたクラッド層とを備え、活性層とクラッド層との格子不整合度を0.01119〜0.02611の範囲内にしているので、活性層に加わる歪みを低減できる。したがって、上記第1,第2半導体レーザ構造が出射するレーザ光の偏光角を小さくすることができると共に、そのレーザ光の偏光比を大きくすることができる。
【0033】
また、上記活性層とクラッド層との格子不整合度を0.01119〜0.02611の範囲内にすることによって、第1,第2半導体レーザ構造が出射するレーザ光の偏光角を小さくすると共に、そのレーザ光の偏光比を大きくするので、製造の自由度が低くなるのを防ぐことができる。
【0034】
また、上記活性層とクラッド層との格子不整合度を0.01119〜0.02611の範囲内にするので、第1,第2半導体レーザ構造の一方の製造が第1,第2半導体レーザ構造の他方の製造に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0035】
本発明の半導体レーザ装置の製造方法は、第1半導体レーザ構造が有するクラッド層の組成うち、このクラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、クラッド層を形成するので、活性層に加わる格子歪を容易かつ確実に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は本発明の一実施形態の2波長半導体レーザ装置の模式断面図である。
【図2】図2は格子不整合度を説明するための模式図である。
【図3】図3は偏光角と格子不整合度との関係を示すグラフである。
【図4】図4は偏光比と格子不整合度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の半導体レーザ装置を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態の2波長半導体レーザ装置を共振器方向に垂直な面で切った断面の模式図である。
【0039】
上記2波長半導体レーザ装置は、n型GaAs基板1と、この基板1上に形成されたn型GaInPエッチングストップ層2と、このn型GaInPエッチングストップ層2の一方の側部上に形成された断面略台形状の第1半導体レーザ構造3と、n型GaInPエッチングストップ層2の他方の側部上に形成された断面略台形状の第2半導体レーザ構造4とを備えている。なお、上記基板1は基板の一例である。
【0040】
上記第1半導体レーザ構造3は、n型GaInPエッチングストップ層2側から順にエピタキシャル成長させたn型AlGaInPクラッド層5、ノンドープAlGaAs系活性層6、p型AlGaInPクラッド層7、p型GaInP中間層8およびp型GaAsコンタクト層9を有している。この第1半導体レーザ構造3の発振波長は赤外波長(770nm〜790nm)の範囲内である。また、上記活性層6とクラッド層7との間の格子不整合度Δa/aを最適化することで、活性層6に加わる歪を軽減させて、第1半導体レーザ構造3による赤外レーザ光に関して、偏光角を小さく、偏光比を大きくしている。ここで、上記Δaはクラッド層7の活性層6側の表面の格子定数から活性層6のクラッド層7側の表面の格子定数を引いた値であり、aは活性層6のクラッド層7側の表面の格子定数である。なお、上記活性層6は活性層の一例で、クラッド層7の一例である。
【0041】
より詳しくは、上記格子不整合度Δa/aの調整には、クラッド層7の材料である(AlGa1−x)In1−yPの組成のうち格子定数に影響の大きい組成yを調整する手法をとる。そして、上記格子不整合度Δa/aの値は0.01119、0.01865、0.02611のいずれかとする。
【0042】
上記活性層6は、3層のノンドープAlGaAs障壁層と2層のノンドープGaAs井戸層とによる多重量子井戸構造を有している。
【0043】
上記第2半導体レーザ構造4は、n型GaInPエッチングストップ層2側から順にエピタキシャル成長させたn型AlGaInPクラッド層10、ノンドープAlGaInP系活性層11、p型AlGaInPクラッド層12、p型GaInP中間層13およびp型GaAsコンタクト層14を有している。この第2半導体レーザ構造4の発振波長は赤色波長(640nm〜660nm)の範囲内である。また、上記活性層11とクラッド層12との間の格子不整合度Δa/aを最適化することで、活性層11に加わる歪を軽減させて、第2半導体レーザ構造4による赤色レーザ光に関して、偏光角を小さく、偏光比を大きくしている。ここで、上記Δaはクラッド層12の活性層11側の表面の格子定数から活性層11のクラッド層12側の表面の格子定数を引いた値であり、aは活性層11のクラッド層7側の表面の格子定数である。なお、上記活性層11は活性層の一例で、クラッド層12の一例である。
【0044】
より詳しくは、上記格子不整合度Δa/aの調整には、クラッド層12の材料である(AlGa1−x)In1−yPの組成のうち格子定数に影響の大きい組成yを調整する手法をとる。そして、上記格子不整合度Δa/aの値は0.01119、0.01865、0.02611のいずれかとする。
【0045】
上記活性層11は、3層のノンドープAlGaInP障壁層と2層のノンドープGaInP井戸層とによる多重量子井戸構造を有している。
【0046】
また、図示しないが、基板1下、第1半導体レーザ構造3上、第2半導体レーザ構造4上には、電極を形成している。なお、上記第1,第2半導体レーザ構造3,4の側面は絶縁膜で覆ってもよい。
【0047】
上記構成の2波長半導体レーザ装置によれば、活性層6,11とクラッド層7,12との格子不整合度を0.01119、0.01865、0.02611のいずれかとしているので、活性層6,11に加わる歪みを低減できる。したがって、上記第1,第2半導体レーザ構造3,4が出射する赤外レーザ光,赤色レーザ光の偏光角を小さくすることができると共に、その赤外レーザ光,赤色レーザ光の偏光比を大きくすることができる。
【0048】
また、上記第1,第2半導体レーザ構造3,4の大きさを特開2010−272721号公報のように制限しなくてもよく、上記格子不整合度を特開2008−140887号公報のようにほぼゼロに近づけなくもてよいので、製造の自由度を高くすることができる。
【0049】
また、例えば、上記基板1上に第1半導体レーザ構造3を形成した後、第2半導体レーザ構造4を形成する場合、第2半導体レーザ構造4を得るための積層構造の一部が第1半導体レーザ構造3上に形成されたとしても、その積層構造において、活性層11にすべき層とクラッド層12にすべき層との格子不整合度が0.01119、0.01865、0.02611のいずれかであるので、第1半導体レーザ構造3に悪影響を及ぶのを防ぐことができる。
【0050】
図2は、格子不整合度を説明するための模式図である。
【0051】
一般的に、格子定数がaである下地結晶上に、格子定数がaである成長結晶を成長させる場合、成長結晶は格子定数がaからaに近づくように成長する。このとき、上記成長結晶の格子定数aから下地結晶の格子定数aを引いた値をΔaに応じた歪みが、成長結晶および下地結晶のそれぞれに加わっており、例えばΔaが正ならば下地結晶には圧縮歪が加わることになる。ここで、上記Δaをaで割った値が格子不整合度となる。すなわち、上記格子不整合度はΔa/aで求めることができる。
【0052】
図3は、上記偏光角と格子不整合度Δa/aとの関係を示すグラフである。なお、図3において、赤外レーザとは第1半導体レーザ構造3を指し、赤色レーザとは第2半導体レーザ構造4を指している。
【0053】
図3から、赤外レーザ、赤色レーザともに格子不整合度Δa/aが0.01119〜0.0261の範囲で小さくするほど偏光角も0°に近づいていることが判る。これは、上記活性層6,11を下地結晶として成長するクラッド層7,12の格子定数を活性層6,11の格子定数に近づけることにより、活性層6,11に加わる引っ張り歪が低減される結果、偏光角の回転が抑制できるためである。
【0054】
図4は、上記偏光比と格子不整合度Δa/aとの関係を示すグラフである。なお、図4においても、赤外レーザとは第1半導体レーザ構造3を指し、赤色レーザとは第2半導体レーザ構造4を指している。
【0055】
図4から赤外レーザ、赤色レーザともに格子不整合度Δa/aが0.01119〜0.02611の範囲で小さくするほど偏光比が大きくなっていることがわかる。これは、上記活性層6,11を下地結晶として成長するクラッド層7,12の格子定数を活性層6,11の格子定数に近づけることにより、活性層6,11に加わる引っ張り歪が低減された結果、TMモードが小さくなり、TEモードが占有的になったためである。
【0056】
しかしながら、上記格子不整合度Δa/aをゼロにすることは好ましくない。なぜならば、半導体結晶製造中の温度では熱膨張係数の違いにより、格子不整合度Δa/aが0.0373のとき、クラッド層7,12と活性層6,11の格子不整合度はゼロに近い。通常のエピタキシャル成長では製造中の温度で格子整合するような組成比で製造させることにより結晶欠陥の少ない良質な結晶を得ようとする。したがって、上記格子不整合度Δa/aをゼロに近づけることは半導体結晶製造中では格子不整合を伴う結晶成長になるため、結晶欠陥が生まれやすい。
【0057】
上記結晶欠陥は非発光再結合中心となり、非発光再結合が増加することによって直接的には半導体レーザ装置の出力、効率等の半導体レーザ装置の出力特性を低下させ、間接的には非発光再結合過程における過度な温度上昇により、さらに結晶欠陥が増大し半導体レーザ装置の信頼性を低下させてしまう負のループに入りやすい。
【0058】
以上の観点から実験的には、格子不整合度Δa/aは0.01119以上の値を有するほうが好ましい。
【0059】
上記実施形態において、活性層6,11とクラッド層7,12との格子不整合度を0.01119、0.01865、0.02611のいずれかとしていたが、その格子不整合度は0.01119、0.01865、0.02611に限定されない。すなわち、上記活性層6,11とクラッド層7,12との格子不整合度は、0.01119〜0.02611の範囲内の値であれば、どのような値にしてもよい。
【0060】
本発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、本発明の一実施形態においては、量子井戸構造を有さない活性層、単一量子井戸構造を有する活性層、多重量子井戸構造を有する活性層、半導体基板、または、絶縁基板を用いてもよい。また、本発明の一実施形態の半導体レーザ装置は、赤外レーザ光、赤色レーザ光、青色レーザ光、緑色レーザ光等のうちの少なくとも2つを出射するものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…n型GaAs基板
2…n型GaInPエッチングストップ層
3‥第1半導体レーザ構造
4…第2半導体レーザ構造
5,10…n型AlGaInPクラッド層
6…ノンドープAlGaAs系活性層
7,13…p型AlGaInPクラッド層
8,13…p型GaInP中間層
9,14…p型GaAsコンタクト層
11…ノンドープAlGaInP系活性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板上に成長させた半導体層で構成され、第1発振波長を有する第1半導体レーザ構造と、
上記基板上に成長させた半導体層で構成され、上記第1発振波長とは異なる第2発振波長を有する第2半導体レーザ構造と
を備え、
上記第1,第2半導体レーザ構造は、活性層と、この活性層を下地結晶として上記活性層上に成長させたクラッド層とを備え、
上記活性層と上記クラッド層との格子不整合度が0.01119〜0.02611の範囲内であることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体レーザ装置において、
上記活性層は量子井戸を有することを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体レーザ装置において、
上記第1発振波長は赤外波長であることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の半導体レーザ装置において、
上記第2発振波長は赤色波長であることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一項に記載の半導体レーザ装置において、
上記第1半導体レーザ構造が有する上記クラッド層はAlGaInPで形成されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の半導体レーザ装置において、
上記第2半導体レーザ構造が有する上記クラッド層はAlGaInPで形成されていることを特徴とする半導体レーザ装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の半導体レーザ装置を製造する半導体レーザ装置の製造方法であって、
上記第1半導体レーザ構造が有する上記クラッド層の組成うち、上記クラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、上記クラッド層を形成することを特徴とする半導体レーザ装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体レーザ装置の製造方法において、
上記第2半導体レーザ構造が有する上記クラッド層の組成うち、上記クラッド層の格子定数への影響が比較的大きい組成を調整して、上記クラッド層を形成することを特徴とする半導体レーザ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105899(P2013−105899A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248832(P2011−248832)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】