説明

半導体単結晶製造装置及び半導体単結晶の製造方法

【課題】 副誘導加熱コイルの絶縁部材が主誘導加熱コイルの溝に入り込み、両コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなり火花放電の発生、また副誘導加熱コイルとの接触における誘導加熱コイルの電流回路の異常による誘導加熱コイルと浮遊帯域への火花放電が発生するという問題が生じた。
【解決手段】 半導体棒の浮遊帯域周辺を囲繞するように配置され、コイル1巻きごとの間に溝を有する主誘導加熱コイルと、浮遊帯域を囲繞する内径空間を跨ぐように弧状部位を形成した副誘導加熱コイルとを有し、両コイルが内径空間の中心に向かって相対的に前後動することにより、浮遊帯域の内径空間が可変するように構成された半導体単結晶製造装置において、両コイルの間に絶縁部材が設けられ、該絶縁部材は板状であるかまたは2以上具備されることによって、常に全ての絶縁部材が溝の位置に同時にくることが無いように設けられたものであることを特徴とする半導体単結晶製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊帯域溶融法(以下FZ法という)による半導体単結晶の製造装置に係り、特に半導体棒の浮遊帯域周囲を取り囲んでいる主誘導加熱コイル上下面の、少なくともどちらか一方の側に副誘導加熱コイルを設け、両コイル間の相対移動により前記浮遊帯域を取り囲んでいる空間を可変するように構成した半導体単結晶製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5はFZ法による従来の単結晶製造装置を模式的に示した図である。この単結晶製造装置130を用いて、単結晶を製造する方法について説明する。
まず、原料結晶棒101を、チャンバー112内に設置された上軸103の上部保持治具104に保持する。一方、種結晶108を、原料結晶棒101の下方に位置する下軸105の下部保持治具106に保持する。次に、図8のように主誘導加熱コイル107´と、浮遊帯域110を囲繞する主誘導加熱コイルの内径空間116を跨ぐように弧状部位115を形成した副誘導加熱コイル111を相対移動させ、見かけ上のコイルの内径を小さくした状態で原料結晶棒101を溶融して、種結晶108に融着させる(特許文献1)。
【0003】
その後、種絞りにより絞り部109を形成して無転位化する。そして、上軸103と下軸105を回転させながら原料結晶棒101と単結晶棒102を下降させることで浮遊帯域110を原料結晶棒101と単結晶棒102の間に形成し、前記浮遊帯域110を原料結晶棒101の上端まで移動させてゾーニングし、単結晶棒102を成長させる。単結晶棒成長に伴い、図9のように主誘導加熱コイル107´と副誘導加熱コイル111を相対移動させ、見かけ上のコイル内径を大きくしていき、最終的には副誘導加熱コイル111は主誘導加熱コイル107´から抜き去る。図8、図9は、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルが相対移動をする一例を示した図である。
【0004】
なお、この単結晶成長は、不活性ガス雰囲気中で行われ、また、n型FZ単結晶またはp型FZ単結晶を製造するために、ドープノズル120により、製造する導電型、抵抗率に応じた量のドープガスを流す。
【0005】
前記主誘導加熱コイルとしては、図7に示すような冷却用の水を流通させた複巻の誘導加熱コイル107または図6に示すような電気誘導体からなる単巻の誘導加熱コイル107´が用いられている。前記副誘導加熱コイルとしては、電気誘導体からなり、冷却用の水を流通させているものが用いられている。図6は従来の単巻の主誘導加熱コイルを示した図、図7は従来の複巻の主誘導加熱コイルを示した図である。
【0006】
単結晶の大口径化が進む中、単結晶の芯側と周縁側の温度変化を小さくするために単巻の誘導加熱コイル107´(図6)から特許文献2に示されるような複巻の誘導加熱コイル107の使用が主力となっている(図7)。
しかし、主誘導加熱コイルが単巻から複巻になったときに、副誘導加熱コイルが主誘導加熱コイルの内側コイルから外側コイルにかけて移動する際に、副誘導加熱コイルの絶縁部材113が主誘導加熱コイルの内側コイルと外側コイルの溝114に入り込み、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなり、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に火花放電の発生、また副誘導加熱コイルとの接触における誘導加熱コイルの電流回路の異常による誘導加熱コイルと浮遊帯域110への火花放電が発生するという問題が生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−291888号公報
【特許文献2】特開昭63−291887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、こういった問題を解消するため主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁方法を変更することで、複巻主誘導加熱コイルにおいても絶縁を確実に行うことができ、副誘導加熱コイルと主誘導加熱コイルでの火花放電の発生、または主誘導加熱コイルと溶融帯域での火花放電の発生を無くし、安定した単結晶成長を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、半導体棒の浮遊帯域周辺を囲繞するように配置され、コイル1巻きごとの間に溝を有する2回巻き以上の主誘導加熱コイルと、該主誘導加熱コイルの上下面の少なくともいずれか一方の面に対向して配置され、前記主誘導加熱コイルの前記浮遊帯域を囲繞する内径空間を跨ぐように弧状部位を形成した副誘導加熱コイルとを有し、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルが前記内径空間の中心に向かって相対的に前後動することにより、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルとで囲繞する浮遊帯域の内径空間が可変するように構成された半導体単結晶製造装置において、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間に両コイルと接触する絶縁部材が設けられ、該絶縁部材は板状であるかまたは2以上具備されることによって、常に全ての絶縁部材が前記溝の位置にくることが無いように設けられたものであることを特徴とする半導体単結晶製造装置を提供する。
【0010】
このように、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に両コイルと接触する絶縁部材が設けられ、該絶縁部材が板状であるかまたは2以上具備されることによって、常に全ての絶縁部材が溝の位置にくることが無いように設けられたものであれば、副誘導加熱コイルが主誘導加熱コイルの内側から外側にかけて移動する際に、絶縁部材が主誘導加熱コイルの1巻きごとの間の溝に入り込み、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなることによって、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に火花放電が発生することを防止することができ、単結晶製造を安全かつ効率的に行うことができる。
【0011】
またこのとき、前記絶縁部材が板状であって、前記副誘導加熱コイルと相似形状であることが好ましい。
【0012】
このような、前記絶縁部材の形状であれば、副誘導加熱コイルの、主誘導加熱コイルと向かい合う側の表面の大部分が絶縁部材によって覆われるため、より確実に主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルを絶縁することができる。
【0013】
またこのとき、前記絶縁部材が、前記主誘導加熱コイルまたは前記副誘導加熱コイルに接着されたものであることが好ましい。
【0014】
このように、絶縁部材はどちらの誘導加熱コイルに接着するか状況に応じて選択することができ、より効率的に単結晶を製造することができる。
【0015】
またこのとき、前記絶縁部材の抵抗率が1×10Ωcm以上であることが好ましい。
【0016】
また、前記絶縁部材が窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素のいずれか一種の材料からなるものであることが好ましい。
【0017】
このようなものであれば、より確実に主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルを絶縁することができる。
【0018】
またこのとき、前記絶縁材料で隔たれている前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間隔が、0.2mm〜5mmであることが好ましい。
【0019】
このような間隔であれば、両コイルの間隔が狭すぎて火花放電が発生してしまうことや、両コイルの間隔が広すぎて結晶の溶融に支障をきたし、絞り部を形成することが困難になってしまうことが起こらないため、より安全かつ効率的に単結晶製造を行うことができる。
【0020】
また、原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、該浮遊帯域を下方から上方に移動する事で単結晶棒を育成するフローティングゾーン法による半導体単結晶の製造方法であって、前記本発明に記載の半導体単結晶製造装置を用いて半導体単結晶を製造することを特徴とする半導体単結晶の製造方法を提供する。
【0021】
このように、本発明の半導体単結晶製造装置を用いた半導体単結晶の製造方法によれば、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイル間の絶縁が単結晶の製造中に弱くなるか又は無くなることがないため、火花放電の発生を防止して単結晶製造における有転位化の発生率をより低下させながら単結晶製造を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に両コイルと接触する絶縁部材を設け、該絶縁部材を板状とするかまたは2以上具備することによって、常に全ての絶縁部材が溝の位置にくることが無いように設けることとすれば、全ての絶縁部材が同時に主誘導加熱コイルの1巻きごとの間の溝に入り込み、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなることによって、両コイルの間に火花放電が発生することを防止することができ、単結晶製造を安全かつ効率的に行うことができる。
また、本発明の半導体単結晶製造装置を用いた半導体単結晶の製造方法によれば、溝を有する主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイル間の絶縁が単結晶の製造中に弱くなるか又は無くなることがないため、火花放電の発生を防止して単結晶製造における歩留まり、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】FZ法により単結晶を製造する際に、本発明の半導体単結晶製造装置を用いた場合の断面構成例を模式的に示した図である。
【図2】本発明の半導体単結晶製造装置において、絶縁部材を配置する一例として、絶縁部材を副誘導加熱コイルの3点に配置したものの下面図及び断面図の模式図である。
【図3】本発明の半導体単結晶製造装置において、絶縁部材を配置する一例として、板状であって副誘導加熱コイルと相似形状である絶縁部材を副誘導加熱コイルに接着したものの下面図及び断面図の模式図である。
【図4】本発明の半導体単結晶製造装置において、絶縁部材を配置する一例として、板状の絶縁部材を主誘導加熱コイルに配置したものの下面図及び断面図の模式図である。
【図5】FZ法により単結晶を製造する際に、従来の単結晶製造装置を用いた場合の断面構成例を模式的に示した図である。
【図6】従来の単巻きの主誘導加熱コイルを模式的に示した図である。
【図7】従来の複巻きの主誘導加熱コイルを模式的に示した図である。
【図8】主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの、主誘導加熱コイルの内径空間の中心に向かう相互移動を示した図である。
【図9】主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの、主誘導加熱コイルの内径空間の中心から遠ざかる相互移動を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、従来、主誘導加熱コイルが単巻から複巻になったときに、副誘導加熱コイルが主誘導加熱コイルの内側コイルから外側コイルにかけて移動する際に、副誘導加熱コイルの絶縁部材が主誘導加熱コイル1巻きごとの間にある溝に入り込み、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなり、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に火花放電の発生、また副誘導加熱コイルとの接触における誘導加熱コイルの電流回路の異常による誘導加熱コイルと浮遊帯域への火花放電が発生するという問題があった。
【0025】
本発明者らが鋭意検討した結果、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に両コイルと接触する絶縁部材を設け、該絶縁部材を板状とするかまたは2以上具備することによって、常に全ての絶縁部材が同時に溝の位置にくることが無いように設けることとすれば、全ての絶縁部材が主誘導加熱コイルの1巻きごとの間の溝に同時に入り込み、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなることによって、両コイルの間に火花放電が発生することを防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0026】
即ち、本発明は、半導体棒の浮遊帯域周辺を囲繞するように配置され、コイル1巻きごとの間に溝を有する2回巻き以上の主誘導加熱コイルと、該主誘導加熱コイルの上下面の少なくともいずれか一方の面に対向して配置され、前記主誘導加熱コイルの前記浮遊帯域を囲繞する内径空間を跨ぐように弧状部位を形成した副誘導加熱コイルとを有し、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルが前記内径空間の中心に向かって相対的に前後動することにより、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルとで囲繞する浮遊帯域の内径空間が可変するように構成された半導体単結晶製造装置において、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間に両コイルと接触する絶縁部材が設けられ、該絶縁部材は板状であるかまたは2以上具備されることによって、常に全ての絶縁部材が前記溝の位置にくることが無いように設けられたものであることを特徴とする半導体単結晶製造装置である。
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の半導体単結晶製造装置を模式的に示した図である。この半導体単結晶製造装置30は、チャンバー12内に設置され、原料結晶棒1を保持する上部保持治具4と、種結晶8を保持する下部保持治具6と、1巻きごとの間に溝14を有する主誘導加熱コイル7と、図2のように浮遊帯域10を囲繞する主誘導加熱コイルの内径空間16を跨ぐように弧状部位15を形成した副誘導加熱コイル11と、主誘導加熱コイル7または副誘導加熱コイル11に接着され、板状であるか2以上具備されることによって、常に全てが溝14の位置にくることが無いように設けられた絶縁部材13を有する。
【0028】
前記絶縁部材13は、抵抗率が1×10Ωcm以上のものが好ましく、例えば窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素のいずれかの材料からなるものとすることができる。このような絶縁部材であれば、より確実に主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルとを絶縁することができる。
また、主誘導加熱コイル7と副誘導加熱コイル11との間隔が0.2〜5mmとなるように、前記絶縁部材13を直径0.2〜5mmの球状か、厚さが0.2〜5mmの板状とすることができる。主誘導加熱コイル7と副誘導加熱コイル11の間隔が0.2mmより少ない場合は、火花放電を起こす可能性が高くなり、また、5mmを超える場合は結晶の溶融がうまくいかず単結晶の有転位化が発生し易くなるという問題があるが、このような絶縁部材であれば、上記問題を発生させずにより確実に主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルとを絶縁することができる。
【0029】
前記絶縁部材13の配置方法としては、図2に示すように、副誘導加熱コイル11の弧状部位15の両先端部に2つと、弧状部位中心部近傍1つ、計3つの絶縁部材13を接着し、配置することができる。具体的には、例えば弧状部位中心部近傍の絶縁部材13が主誘導加熱コイルの溝14の位置にあるときは、弧状部位15の両先端部の絶縁部材13が主誘導加熱コイルの溝14の内側にあるように配置され、3つの絶縁部材13が同時に溝14の位置にくることが無いように配置されている。尚、図2は絶縁部材を配置する一例として、絶縁部材を副誘導加熱コイルの3点に配置したものの下面図及び断面図の模式図である。
配置された絶縁部材全てが同時に溝の位置にくることが無いように配置されていれば、上記形態に限らず、例えば絶縁部材を2つ、あるいは4つ以上配置しても良いし、3つの絶縁体が三角形の各頂点の位置に来るように配置しても良い。
【0030】
また、図3に示すように、副誘導加熱コイル11に厚さ0.2〜5mmの板状絶縁部材13´を接着することができる。この板状絶縁部材13´は、例えば図3のように副誘導加熱コイル11と相似形状とすれば、副誘導加熱コイルの、主誘導加熱コイルと向かい合う側の表面の大部分が絶縁部材によって覆われることにより、より確実に主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルを絶縁することができるために好ましいが、形状はこれに限らず、相対移動方向の幅が主誘導加熱コイルの溝14の幅よりも大きければ良い。尚、図3は絶縁部材を配置する一例として、板状であって副誘導加熱コイルと相似形状である絶縁部材を副誘導加熱コイルに接着したものの下面図及び断面図の模式図である。
【0031】
また、図4に示すように、主誘導加熱コイル7に厚さ0.2〜5mmの板状絶縁部材13″を接着することができる。この板状絶縁部材13″は、例えば図4のように主誘導加熱コイル7の溝14の内側に2枚、外側に2枚接着すれば、より確実に主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルを絶縁することができるために好ましいが、形状はこれに限らず、主誘導加熱コイル7の径方向に1枚ずつ接着するようにしても良いし、主誘導加熱コイル7と相似形状としても良い。尚、図4は絶縁部材を配置する一例として、板状の絶縁部材を主誘導加熱コイルに配置したものの下面図及び断面図の模式図である。
このような構造の副誘導加熱コイルであれば、副誘導加熱コイルを移動させる間、主誘導加熱コイルの溝の位置に全ての絶縁部材がくることは無いため、絶縁が弱くなるか又は無くなることなく火花放電を防止することができる。
尚、上記では副誘導加熱コイルを主誘導加熱コイルの下面側に設けた例を挙げて説明したが、副誘導加熱コイルを上面側に配置しても良い。
【0032】
次にこれらの半導体単結晶製造装置を用いて半導体単結晶を製造する方法を以下に説明する。
まず、原料結晶棒1の溶融を開始する部分をコーン形状に加工し、加工歪みを除去するために表面のエッチングを行う。その後、図1に示すFZ法による単結晶製造装置30のチャンバー12内に原料結晶棒1を収容し、チャンバー12内に設置された上軸3の上部保持治具4にネジ等で固定する。一方、下軸5の下部保持治具6には種結晶8を取り付ける。
不図示の高周波発振機に、コイル1巻きごとの間に溝14を有する複巻の主誘導加熱コイル7を固定し、その直下に、弧状部位15を有する副誘導加熱コイル11を設置する。ここでは、本発明の図2〜図4に示す様に絶縁部材13を配置したコイルを使用する。
【0033】
次に原料結晶棒1のコーン部分の下端を不図示のカーボンリングで予備加熱する。その後、チャンバー12の下部から不活性ガスを供給し、チャンバー上部より排気する。この不活性ガスは、これに限定されるわけではないが、例えばArまたはN、0.1MPa〜0.2MPa、流量20〜50L/minとすることができる。
【0034】
そして、主誘導加熱コイル7と副誘導加熱コイル11を、内径空間16の中心に向かって相対移動させ、見かけ上のコイルの内径を小さくした状態で原料結晶棒1を溶融して、種結晶8に融着させる。その後、種絞りにより絞り部9を形成して無転位化し、上軸3と下軸5を回転させながら原料結晶棒1と育成単結晶棒2を、これに限定されるわけではないが、例えば1〜5mm/minの速度で下降させることで浮遊帯域10を原料結晶棒1上端まで移動させてゾーニングし、単結晶棒2を成長させる。
この時、単結晶育成中にある程度単結晶径が大きくなるまで主誘導加熱コイル7と副誘導加熱コイル11を、内径空間16の中心から遠ざかるように相対移動させる。
【0035】
また、n型FZ単結晶またはp型FZ単結晶を製造するために、ドープノズル20により、製造する導電型、抵抗率に応じた量のドープガスを、これに限定されるわけではないが、例えばAr、NベースのPH又はBを流す。
このとき、育成する際に原料結晶棒1の回転中心となる上軸3と、単結晶化の際に育成単結晶棒2の回転中心となる下軸5を偏芯させて単結晶を育成することができる。このように両中心軸をずらすことにより、単結晶化の際に溶融部を撹拌させ、製造する単結晶の品質を均一化させることができる。尚、偏芯量は単結晶の直径に応じて設定すればよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
抵抗率1000Ωcm以上の直径150mmのCZシリコン単結晶を原料結晶棒として、FZ法によりゾーニングを行い、直径205mmのシリコン単結晶を製造した。
このシリコン単結晶の製造の際には図1に示す本発明の単結晶製造装置を用いた。誘導加熱コイルは内側の第一加熱コイルの外径を160mm、外側の第二加熱コイルの外径を280mmのパラレルコイルを主誘導加熱コイルとし、図2に示すような弧状部位の両先端と弧状部位中心付近に、材料を窒化珪素とした直径1mm、抵抗率1×10Ωcmの球状の絶縁部材を3つ接着した、冷却用の水を流通させている本発明の副誘導加熱コイルを使用した。絶縁材料で隔たれている主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間隔を0.5mmとした。チャンバー内圧を0.19MPa、不活性ガスをArとして流量50L/min、成長速度を2.0mm/min、偏芯量を12mmとした。また、ドープは行わず、ノンドープシリコン単結晶の製造を行った。
以上の条件でシリコン単結晶の引上げを39回行ったときの火花放電の発生は0回であった。このときの結果を下記表1に示す。
【0037】
(実施例2)
図3に示すような、副誘導加熱コイルと相似形状であって、材料を窒化珪素とした厚さ1mm、抵抗率1×10Ωcmの板状絶縁部材を接着した副誘導加熱コイルを装着した半導体単結晶製造装置を用いて、その他は実施例1と同じ条件でノンドープシリコン単結晶の製造を行った。
以上の条件でシリコン単結晶の引上げを40回行ったときの火花放電の発生は0回であった。このときの結果を下記表1に示す。
【0038】
(実施例3)
図4に示すような、材料を窒化珪素とした幅5mmで厚さ1mm、抵抗率1×10Ωcmの板状絶縁部材を、溝の内側と外側に2枚ずつ接着した主誘導加熱コイルを装着した半導体単結晶製造装置を用いて、その他は実施例1と同じ条件でノンドープシリコン単結晶の製造を行った。
以上の条件でシリコン単結晶の引上げを40回行ったときの火花放電の発生は0回であった。このときの結果を下記表1に示す。
【0039】
(比較例)
抵抗率1000Ωcm以上の直径150mmのCZシリコン単結晶を原料結晶棒として、FZ法によりゾーニングを行い、直径205mmのシリコン単結晶を製造した。
このシリコン単結晶の製造の際には、図5に示す従来の単結晶製造装置を用いた。誘導加熱コイルは内側の第一加熱コイルの外径を160mm、外側の第二加熱コイルの外径を280mmのパラレルコイルを主誘導加熱コイルとし、図7に示すような弧状部位の一の自由端側に、直径1.0mm、抵抗率1×10Ωcm球状の絶縁部材1つを介した状態の冷却用の水を流通させている副誘導加熱コイルを使用した。炉内圧を0.19MPa、不活性ガスをArとして流量50L/min、成長速度を2.0mm/min、偏芯量を12mmとした。また、ドープは行わず、ノンドープシリコン単結晶の製造を行った。
以上の条件でシリコン単結晶の引上げを235回行ったときの火花放電の発生は23回であった。このときの結果を下記表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
このように、従来技術では主誘導加熱コイルが複巻であるときは、絶縁部材が主誘導加熱コイルの溝に入り込み、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの絶縁が弱くなるか又は無くなり、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間に火花放電の発生、また副誘導加熱コイルとの接触における誘導加熱コイルの電流回路の異常による誘導加熱コイルと浮遊帯域への火花放電が発生する可能性があるが、本発明の半導体単結晶成長装置であれば、火花放電を発生させることなく半導体単結晶の製造を行うことができることがわかる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載した技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0043】
1、101…原料結晶棒、 2、102…単結晶棒、 3、103…上軸、
4、104…上部保持治具、 5、105…下軸、 6、106…下部保持治具、
7、107…主誘導加熱コイル(複巻)、 107´…主誘導加熱コイル(単巻)、
8、108…種結晶、 9、109…絞り部、 10、110…浮遊帯域、
11、111…副誘導加熱コイル、 12、112…チャンバー、
13、113…絶縁部材(球状)、 13´、13″…絶縁部材(板状)、
14、114…溝、 15、115…弧状部位、 16、116…内径空間、
20、120…ドープノズル、 30、130…半導体単結晶製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体棒の浮遊帯域周辺を囲繞するように配置され、コイル1巻きごとの間に溝を有する2回巻き以上の主誘導加熱コイルと、該主誘導加熱コイルの上下面の少なくともいずれか一方の面に対向して配置され、前記主誘導加熱コイルの前記浮遊帯域を囲繞する内径空間を跨ぐように弧状部位を形成した副誘導加熱コイルとを有し、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルが前記内径空間の中心に向かって相対的に前後動することにより、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルとで囲繞する浮遊帯域の内径空間が可変するように構成された半導体単結晶製造装置において、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間に両コイルと接触する絶縁部材が設けられ、該絶縁部材は板状であるかまたは2以上具備されることによって、常に全ての絶縁部材が前記溝の位置にくることが無いように設けられたものであることを特徴とする半導体単結晶製造装置。
【請求項2】
前記絶縁部材が板状であって、前記副誘導加熱コイルと相似形状であることを特徴とする請求項1に記載の半導体単結晶製造装置。
【請求項3】
前記絶縁部材が、前記主誘導加熱コイルまたは前記副誘導加熱コイルに接着されたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体単結晶製造装置。
【請求項4】
前記絶縁部材の抵抗率が1×10Ωcm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体単結晶製造装置。
【請求項5】
前記絶縁部材が窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化珪素のいずれか一種の材料からなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の半導体単結晶製造装置。
【請求項6】
前記絶縁材料で隔たれている前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間隔が、0.2mm〜5mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の半導体単結晶製造装置。
【請求項7】
原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、該浮遊帯域を下方から上方に移動する事で単結晶棒を育成するフローティングゾーン法による半導体単結晶の製造方法であって、前記請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の半導体単結晶製造装置を用いて半導体単結晶を製造することを特徴とする半導体単結晶の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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