説明

半導体回路及び半導体装置

【課題】電流変動によるバッテリー電圧の変動に依らず、信号の通信を正常に行うことができる、半導体回路及び半導体装置を提供する。
【解決手段】上位の半導体回路20のVDD出力に接続される端子VCC2と、電源線13に直接接続される端子VCC1と、を備えており、高電位側のIO回路32には、端子VCC2から電源電圧VCC2が供給されると共に、端子VCC1から基準電圧VCC1が供給される。また、RCフィルタ19を介して電源線13に接続される端子VCCを備えており、端子VCCから、ロジック回路24、A/D変換回路26、セル選択回路28、レベルシフト回路30、及び電圧調整回路34に電源電圧VCCを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体回路及び半導体装置、特に電池監視用の半導体回路及び半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータ駆動等に用いられる大容量で高出力なバッテリーとして、複数の電池(電池セル)が直列に接続されたバッテリー(具体的一例としては、リチウムイオンバッテリー等が挙げられる)が用いられている。当該バッテリーの電池の電圧を監視・制御するための電池監視システムが知られている。当該電池監視システムは、電池の電圧を監視・制御するための測定用半導体回路及び制御用半導体回路を備えて構成されており、電池の電圧を監視・制御する場合、制御用半導体回路と測定用半導体回路と間で各種制御信号(命令信号)やデータ信号が授受される。そのため、命令信号やデータ信号に対するノイズ等の外乱による影響を低減させるための技術として、例えば特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【0003】
このような電池監視システムの一例を図5に示す。図5に示した従来の電池監視システムは、複数の電池セル群115を含むバッテリー114と、バッテリー114の電池セル117の電圧を測定・制御する半導体装置110と、を備えて構成されている。
【0004】
当該電池監視システムでは、制御用半導体回路112から測定用の半導体回路120に命令(信号)を送り、半導体回路120から得られた各電池セル117の電圧情報を元に、バッテリー114のセル電圧均等化(各電池セル117の電圧値を均等にする)処理や充放電制御(各電池セル117の充放電の制御)処理等を行う。半導体回路120は、電池セル群115毎に設けられている。なお、以下では、半導体回路120等個々を区別する場合は、数字の後に個々を示す数字を付し、総称する場合は、個々を示す数字を省略して記載する。
【0005】
半導体回路120は、命令信号や測定結果等のデータ信号を半導体回路120同士の間で、電源分離素子を介在させないで授受するため、低電位側のGND−VDDレベルで動作するIO回路122及び高電位側のVCC−VCC2レベルで動作するIO回路132を備えている。また、ロジック回路124、A/D変換回路126、セル選択回路128、レベルシフト回路130、及び電圧調整回路134を備えて構成されている。
【0006】
さらに、バッテリー114の電源線113に接続され、セル選択回路128、レベルシフト回路130、及び電圧調整回路134を駆動するための電源電圧と、IO回路132の基準電圧と、を供給するためのVCC端子、電圧調整回路134の出力電圧VDDを外部に出力するためのVDD端子、上位の半導体回路120の電圧調整回路134から出力された出力電圧VDDが入力されるよう上位の半導体回路120に接続され、IO回路132の電源電圧を供給するためのVCC2端子、及び各電池セル117の正極側と負極側とを接続するVn端子(n=0〜nの整数)を備えている。電源電圧を安定化するために、電源線113との間に、VCC端子にはRCフィルタ119が接続されており、Vn端子にはLPF118が接続されている。一方、GND端子は電源線113に直接接続されている。
【0007】
当該電池監視システムでは、電池セル117の電圧を測定する場合、制御用半導体回路112から、電圧を測定する命令信号が出力される。
【0008】
通信用端子135を介して半導体回路120のIO回路122に命令信号が入力されると、ロジック回路124では、命令信号が自半導体回路120に接続されている電池セル117の電圧を測定する命令信号であるか判断し、異なる場合は命令信号をそのままレベルシフト回路130に出力する。レベルシフト回路130は、GND−VDDレベルで入力された命令信号をVCC−VCC2レベルにレベルシフトして、通信用端子136を介して、上位の半導体回路120に出力する。
【0009】
ロジック回路124で、自半導体回路120に接続されている電池セル117の電圧を測定する命令信号であると判断した場合は、セル選択回路128により測定を命令された電池セル117を選択し、当該電池セル117の電圧値を表すデータ信号を、命令信号が伝送された経路を戻るようにして、制御用半導体回路112に出力する。
【0010】
従来の半導体装置110では、通信用端子135、136を介して命令信号や電圧測定結果(電池セル117の電圧値)を表すデータ信号の授受がこのようにして行われる。
【0011】
ここで、GNDの電位をRCフィルタ119と同程度のRCフィルタを用いて変動させないようにするために、GND端子がRCフィルタ119と同程度のRCフィルタを介して電源線113に接続されている場合には、電池セル117の充電時等の場合ではGND端子に供給される電圧は変動しにくいものとなる。しかしながら、モータ駆動時や電池セル117の充電時等に電池セル117の各々の電圧が急激に変動した場合には、端子V0〜Vnに入力される電圧(以下、V0〜Vnレベルという)が急激に変動し、GNDレベルとV0〜Vnレベルとの電位差がずれてしまい、またはGNDレベルがV0〜Vnレベルを上回ってしまうため、半導体回路120が誤動作を起こす恐れがある。
【0012】
これに対して本発明者は、GND端子が電源線113に直接接続されている、図5に示した半導体回路120を生み出した。このようにすることにより、モータ駆動時や電池セル117の充電時等に電池セル117の各々の電圧が急激に変動した場合であっても、V0〜Vnレベルの変動に伴い、半導体回路120のGND端子に供給される電圧も変動させることが可能となるため、V0〜VnレベルがGNDレベルに相当する電位を下回らないようにすることが可能となり、半導体回路120の誤動作を防止することが可能となる。なお、図5では、このようにGND端子が電源線113に直接接続されている場合を示したが、これに限らず、特性があまり高くないレベル(RCフィルタ119よりも低いレベル)のRCフィルタを介して接続される構成であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−27916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図5に示した半導体回路120では、以下のようなノイズによる影響を低減させることができずに、問題が生じる場合がある。
【0015】
ハイブリッド自動車や電気自動車等のシステムでは、モータを駆動する際に発生する負荷電流や、ブレーキをかけたときにモータを発電機として利用し、発生した電力を再利用するためのいわゆる、回生ブレーキ時の充電電流等により、バッテリー電圧が急峻に変化し、当該変化がノイズとして影響を与える場合がある。
【0016】
図5に示した従来の電池監視システムでは、図6に示すように、電圧変動により、通信信号の論理レベルが反転し、誤動作を起す場合がある。
【0017】
具体的には、図5に示した従来の電池監視システムにおいて電池セル群115で負荷電流等が発生した場合、電池セル117の内部抵抗分だけ、バッテリー電圧が下がるため、電圧V70(半導体回路120のGNDレベル(GND))も同様に変動し、電圧が下がる。
【0018】
本発明者は上述したように、モータ駆動時や電池セル117の充電時等に電池セル117の各々の電圧が急激に変動した場合にV0〜Vnレベルが急激に変動し、GNDレベルとV0〜Vnレベルとの電位差がずれてしまい、またはGNDレベルがV0〜Vnレベルを上回ってしまうため、半導体回路120が誤動作を起こす恐れがあるのを防止するために、GND端子を電源線113に直接接続させた。このように、GND端子を電源線113に直接接続させたことにより、V0〜Vnレベルの変動に伴って半導体回路120のGND端子に供給される電圧が変動するため、電圧V70(半導体回路120のGNDレベル(GND))も同様に変動してしまう。
【0019】
半導体回路120のGNDレベル(GND)が変動することに伴い、半導体回路120のVCC2端子に入力される電圧VCC2(半導体回路120のGNDレベル(GND))も同様に変動する。
【0020】
一方、半導体回路120のVCC端子には、RCフィルタ119が接続されているため、フィルタ効果により、高周波成分がカットされるので、電圧VCCでは急峻な電圧変動は発生しない。
【0021】
従って、電圧VCC2は変動し、電圧VCCは変動しないため、変動による電圧値が閾値を越えると、通信用端子136を介してIO回路132に入力される信号の論理レベルが反転し、誤動作を起してしまうという問題がある。
【0022】
本発明は、上述した問題を解決するために提案されたものであり、電流変動によるバッテリー電圧の変動に依らず、信号の通信を正常に行うことができる、半導体回路及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の半導体回路は、電池を含む複数の電源供給部が直列に接続された電源線に直接接続された第1の端子から供給される第1基準電圧と第1電源電圧とに応じて、下位の半導体回路と信号の通信を行う第1通信回路と、供給された前記第1基準電圧よりも高い第2基準電圧と第1電源電圧よりも高い第2電源電圧とに応じて、上位の半導体回路と信号の通信を行うための第2通信回路と、前記第1通信回路に前記下位の半導体回路から信号が入力された場合は、入力された信号を前記第2通信回路の前記第2基準電圧と前記第2電源電圧とに応じたレベルにレベルシフトし、かつ前記第2通信回路に前記上位の半導体回路から信号が入力された場合は、入力された信号を前記第1通信回路の前記第1基準電圧と前記第1電源電圧とに応じたレベルにレベルシフトするレベルシフト回路と、前記第1通信回路に前記第1電源電圧を供給すると共に、外部に前記第1電源電圧出力する電源電圧出力回路と、前記電源線に第1のフィルタを介して接続され、前記選択回路、前記レベルシフト回路、及び前記電源電圧出力回路に第3電源電圧を供給するための第2の端子と、前記電源線に直接接続され、前記第2通信回路に前記第2基準電圧を供給するための第3の端子と、前記上位の半導体回路に接続され、前記上位の半導体回路に含まれる前記電源電圧出力回路から出力された前記上位の半導体回路の前記第1電源電圧を前記第2電源電圧として前記第2通信回路に供給するための第4の端子と、を備える。
【0024】
請求項2に記載の半導体回路は、請求項1に記載の半導体回路において、前記第1通信回路に供給される前記第1基準電圧及び前記第1電源電圧の電位差と、前記第2通信回路に供給される前記第2基準電圧及び前記第2電源電圧の電位差が同じである。
【0025】
請求項3に記載の半導体回路は、請求項1または請求項2に記載の半導体回路において、前記第1通信回路及び前記第2通信回路は、差動信号に基づいて通信を行う通信回路である。
【0026】
請求項4に記載の半導体回路は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体回路において、前記電源供給部に含まれる複数の電池の各々が第2のフィルタを介して接続されていると共に、当該電源供給部に含まれる複数の電池のいずれか1つを選択する選択回路を備えた。
【0027】
請求項5に記載の半導体装置は、前記電源供給部毎に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体回路が備えられたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電流変動によるバッテリー電圧の変動に依らず、信号の通信を正常に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施の形態に係る電池監視システムの概略構成の一例を示す回路図である。
【図2】セル選択スイッチの概略構成の具体的一例を示す回路図である。
【図3】第1の実施の形態に係る電池監視システムにおいて誤動作が発生しないことを説明するための説明図である。
【図4】第2の実施の形態に係る電池監視システムの概略構成の一例を示す回路図である。
【図5】従来の電池監視システムの概略構成の一例を示す回路図である。
【図6】従来の電池監視システムにおいて発生する誤動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施の形態]
【0031】
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態の電池監視システムについて詳細に説明する。
【0032】
本実施の形態の電池監視システムの概略構成の一例を図1に示す。図1に示した本実施の形態の電池監視システムは、複数の電池セル群15を含むバッテリー14と、バッテリー14の電池セル17の電圧を測定・制御する半導体装置10と、を備えて構成されている。
【0033】
本実施の形態の電池監視システムでは、制御用半導体回路12から測定用の半導体回路20に命令(信号)を送り、半導体回路20から得られた各電池セル17の電圧情報を元に、バッテリー14のセル電圧均等化(各電池セル17の電圧値を均等にする)処理や充放電制御(各電池セル17の充放電の制御)処理等を行う。本実施の形態の半導体装置10では、半導体回路20は、電池セル群15毎に設けられている。なお、以下では、半導体回路20等個々を区別する場合は、数字の後に個々を示す数字を付し、総称する場合は、個々を示す数字を省略して記載する。
【0034】
本実施の形態の半導体回路20は、命令信号や測定結果等のデータ信号を半導体回路20同士の間で、電源分離素子を介在させないで授受するため、基準電圧GND及び電源電圧VDDが供給されて低電位側のGND−VDDレベルで動作するIO回路22、及び基準電圧VCC1及び電源電圧VCC2が供給されて高電位側のVCC1−VCC2レベルで動作するIO回路32を備えている。
【0035】
なお、本実施の形態の半導体装置10では、半導体回路20のGNDレベル(GND)は、電圧値=0Vとは限らず、特に限定されていない。また、上位の半導体回路20(本実施の形態では、IO回路32と接続される半導体回路20を上位といい、IO回路22と接続される半導体回路20を下位という)になるほど、GNDレベルが高く(電圧値が高く)なるように構成されている。
【0036】
また、本実施の形態の電池監視システムでは、ロジック回路24、A/D変換回路26、セル選択回路28、レベルシフト回路30、及び電圧調整回路34を備えて構成されている。ロジック回路24は、入力された命令信号等をデコードする機能を有する回路であり、本実施の形態では、入力された命令信号をデコードして自半導体回路20での電圧測定が指定されているか否かを判断する機能を有している。A/D変換回路26は、入力された信号をA/D(アナログ/デジタル)変換する機能を有する回路である。セル選択回路28は命令信号に基づき、測定を命令された電池セル17を選択し、選択した電池セル17の電圧値を出力する機能を有する回路である(詳細後述)。レベルシフト回路30は、信号のレベルを低電位側のGND−VDDレベルと、高電位側のVCC1−VCC2レベルと、でレベルシフトする機能を有する回路である。電圧調整回路34は、IO回路22の電源電圧となるVDD電圧を出力する機能を有する回路である。
【0037】
さらに、本実施の形態の電池監視システムは、VCC端子、VCC1端子、VCC2端子、VDD端子、及びVn端子(n=0〜nの整数)を備えている。
【0038】
VCC端子は、電源線13に、電源電圧を安定化するためのRCフィルタ19を介して接続され、バッテリー14の電源線13に接続され、ロジック回路24、A/D変換回路26、セル選択回路28、レベルシフト回路30、及び電圧調整回路34に電源電圧VCCを供給するための端子である。VDD端子は、電圧調整回路34の出力電圧VDDを外部に出力するための端子である。VCC1端子は、電源線13に直接接続され、IO回路32の基準電圧VCC1を供給するための端子である。VCC2端子は、上位の半導体回路20の電圧調整回路34から出力された出力電圧VDDが入力されるように上位の半導体回路20に接続され、IO回路32に電源電圧を供給するための端子である。Vn端子は、各電池セル17の正極側と負極側とを接続する端子であり、電源電圧を安定化するために、電源線13との間にLPF(ローパスフィルタ)18が接続されている。
【0039】
本実施の形態の電池監視システムにおける電池セル17の電圧測定について詳細に説明する。ここでは、電池セル群15のいずれかの電池セル17(1712〜17n2)の何れかの電池電圧を測定する場合について説明する。
【0040】
まず、制御用半導体回路12から、電圧を測定する命令信号が出力される。なお、命令信号には、いずれの電池セル17を測定するかを指示する情報が含まれている。
【0041】
通信用端子35を介して半導体回路20のIO回路22に命令信号が入力されると、ロジック回路24では、命令信号をデコードして、自半導体回路20での電池電圧測定が指定されているか否かを判断する。指定されていない場合は命令信号をそのままレベルシフト回路30に出力する。レベルシフト回路30は、上位の半導体回路20に命令信号を通信するために、GND−VDDレベルで入力された命令信号をVCC1−VCC2レベルにレベルシフトして、通信用端子36を介して、上位の半導体回路20に出力する。
【0042】
半導体回路20では、通信用端子35を介してIO回路22に命令信号が入力される。ロジック回路24では、命令信号をデコードして、自半導体回路20での電池電圧測定が指定されているか否かを判断する。ここでは、自半導体回路20での電池電圧測定が指定されているため、A/D変換回路26及びセル選択回路28に制御信号を出力する。
【0043】
セル選択回路28では、制御信号に基づいて、内部SW(スイッチを切り替えて)指定された電池セル17(1712〜17n2)を選択して、電圧値をA/D変換回路26に出力する。
【0044】
セル選択回路28の具体的一例の回路図を図2に示す。
【0045】
図2に示すように本実施の形態のセル選択回路28は、アナログレベルシフタ40及びセル選択SW42を含んで構成されている。セル選択回路28は、電池セル17の正極側の電源線13に接続されており、電源線13から電源電圧VCCが供給される。電池17の両端電圧は、各々のLPF18を介して、セル選択回路28のセル選択SW42の入力に接続されている。セル選択SW42の出力はアナログレベルシフタ40に接続されている。なお、アナログレベルシフタ40は、検出抵抗、アンプ44、常時オン状態のダミースイッチを備えて構成されている。
【0046】
ここで電池セル17の電圧値を測定する場合、セル選択SW42のスイッチング素子SWn、SWn−1_1がオン状態になり、その他のスイッチング素子がオフ状態になる。電池セル17の電圧値=Vn−Vn−1はアナログレベルシフタ40によって電圧変換され、Vout=電池セル17の電圧値になり、GND基準の電圧に変換されて、A/D変換回路26に出力される。
【0047】
なお、他の電池セル17の電圧を測定する場合は、上記と同様に測定する電池セル17の正極側に接続されるスイッチング素子SWと負極側にスイッチング素子SWをオン状態にして、その他のスイッチング素子SWをオフ状態にすればよい。
【0048】
このようにしてセル選択回路28から選択された電池セル17の電圧値がA/D変換回路26に出力されると、A/D変換回路26では、入力された電圧値をデジタル値に変換したデータ信号をロジック回路24に出力する。さらに、当該データ信号は、命令信号が伝送された経路を戻るようにして、制御用半導体回路12に出力される。
【0049】
次に、本実施の形態の電池監視システムにおいて、上述したように、負荷電流や、回生ブレーキ時の充電電流等により、バッテリー電圧が急峻に変化するノイズが生じた場合の動作について図3を参照して説明する。
【0050】
急峻な電流変化により、バッテリー電圧が下がるため、電圧V70(半導体回路20のGNDレベル(GND))も同様に変動し、電圧が下がる。半導体回路20のGNDレベル(GND)が変動することに伴い、半導体回路20のVCC2端子に入力される電圧VCC2(半導体回路20のGNDレベル(GND))も同様に変動する。
【0051】
また、本実施の形態の半導体回路20のVCC1端子は、直接電源線13に接続されているため、ノイズがカットされることなく、急峻な電圧変動が同様に発生する。
【0052】
従って、電圧VCC2は変動し、同様に、電圧VCC1も変動するため、電圧VCC2と電圧VCC1との電位差は、電圧の変動にかかわらず、一定になる。
【0053】
従って、IO回路32に入力される通信信号そのものには、電圧の変化が生じず、論理反転が起きないため、誤動作することがない。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態の電池監視システムにおける半導体装置10は、上位の半導体回路20のVDD出力に接続される端子VCC2と、電源線13に直接接続される端子VCC1と、を備えており、高電位側のIO回路32には、端子VCC2から電源電圧VCC2が供給されると共に、端子VCC1から基準電圧VCC1が供給される。また、RCフィルタ19を介して電源線13に接続される端子VCCを備えており、端子VCCから、ロジック回路24、A/D変換回路26、セル選択回路28、レベルシフト回路30、及び電圧調整回路34に電源電圧VCCを供給する。
【0055】
一般に、電源電圧を安定させるためには、電源線13から電源電圧を供給するための端子は、RCフィルタ19などの高周波成分をカットするためのLPFを介して電源線13に接続されている。本実施の形態においても、ロジック回路24、A/D変換回路26、セル選択回路28、レベルシフト回路30、及び電圧調整回路34に電源電圧VCCを供給する端子VCCも電源電圧を安定化させるためにRCフィルタ19を介して電源線13に接続されている。これにより、ジック回路24、A/D変換回路26、セル選択回路28、レベルシフト回路30、及び電圧調整回路34は、安定して動作する。
【0056】
このように、回路動作を安定させるためには、電源電圧及び基準電圧共に安定して供給されることが望まれるため、一般には、図5に示したようにIO回路132に電源電圧を供給するための端子も、RCフィルタ119を介して電源線113に接続されている。
【0057】
しかしながら、本実施の形態では、上述のように、電源線13に直接接続された端子VCC1からIO回路32に基準電圧VCC1を供給する。これにより、基準電圧VCC1は負荷電流等によるバッテリー電圧の変動の影響を受けて変動するが、IO回路32に上位の半導体回路20から端子VCC2を介して供給される電源電圧VCC2も同様に変動するため、電源電圧VCC2と基準電圧VCC1との電位差が一定になる。
【0058】
従って、通信信号には影響が生じないため、誤動作が生じることがなく、電流変動によるバッテリー電圧の変動に依らず、信号の通信を正常に行うことができる。
【0059】
なお、上記では、端子VCC1が電源線13に直接接続されている場合について詳細に説明したが、例えば、電源線の引き回し等により遅延が生じ、電源電圧VCC2を伝送する信号と基準電圧VCC1を伝送する信号とにずれ、(電圧変動のずれ)が生じる場合は、当該ずれを低減させる程度のLPF等のフィルタを設けるようにしてもよい。この場合、電源電圧VCC2の電圧変動値と基準電圧VCC1の電圧変動値とが同じにならず、電位差が多少生じたとしても、生じた電位差が論理レベルが反転する閾値電圧を越えていなければ、問題は生じず、本発明の効果が得られる。
【0060】
[第2の実施の形態]
【0061】
以下、図面を参照して本発明の第2の実施の形態の半導体装置である電池監視システムについて詳細に説明する。図4に、本実施の形態の電池監視システムの概略構成の一例を示す。本実施の形態の電池監視システムは第1の実施の形態の電池監視システムと略同一の構成であるため、同一部分には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
本実施の形態の電池監視システムの半導体回路60は、第1の実施の形態のシングルエンド型のIO回路22及びIO回路32に変り、差動型のIO回路62及びIO回路64が備えられている。
【0063】
即ち、第1の実施の形態では、1本の信号線で信号の送受信を行っていたものを、本実施の形態では、2本の信号線を用いて信号の送受信を行うようにした。
【0064】
半導体回路20同士の間で、2本の信号線を用い、差動信号でデータ転送が行われるため、基板配線間のクロストークや、放射ノイズ等の上述のバッテリー電圧の変動による電圧変動以外のノイズの抑制も行うことができ、より正常にデータ通信を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0065】
10、50 半導体装置
14 バッテリー
18 LPF
19 RCフィルタ
20、60 半導体回路
22、62 IO回路
24 ロジック回路
28 セル選択回路
30 レベルシフト回路
34 電圧調整回路
32、64 IO回路
VCC、VCC1、VCC2、Vn 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を含む複数の電源供給部が直列に接続された電源線に直接接続された第1の端子から供給される第1基準電圧と第1電源電圧とに応じて、下位の半導体回路と信号の通信を行う第1通信回路と、
供給された前記第1基準電圧よりも高い第2基準電圧と第1電源電圧よりも高い第2電源電圧とに応じて、上位の半導体回路と信号の通信を行うための第2通信回路と、
前記第1通信回路に前記下位の半導体回路から信号が入力された場合は、入力された信号を前記第2通信回路の前記第2基準電圧と前記第2電源電圧とに応じたレベルにレベルシフトし、かつ前記第2通信回路に前記上位の半導体回路から信号が入力された場合は、入力された信号を前記第1通信回路の前記第1基準電圧と前記第1電源電圧とに応じたレベルにレベルシフトするレベルシフト回路と、
前記第1通信回路に前記第1電源電圧を供給すると共に、外部に前記第1電源電圧を出力する電源電圧出力回路と、
前記電源線に第1のフィルタを介して接続され、前記レベルシフト回路、及び前記電源電圧出力回路に第3電源電圧を供給するための第2の端子と、
前記電源線に直接接続され、前記第2通信回路に前記第2基準電圧を供給するための第3の端子と、
前記上位の半導体回路に接続され、前記上位の半導体回路に含まれる前記電源電圧出力回路から出力された前記上位の半導体回路の前記第1電源電圧を前記第2電源電圧として前記第2通信回路に供給するための第4の端子と、
を備えた半導体回路。
【請求項2】
前記第1通信回路に供給される前記第1基準電圧及び前記第1電源電圧の電位差と、前記第2通信回路に供給される前記第2基準電圧及び前記第2電源電圧の電位差が同じである、請求項1に記載の半導体回路。
【請求項3】
前記第1通信回路及び前記第2通信回路は、差動信号に基づいて通信を行う通信回路である、請求項1または請求項2に記載の半導体回路。
【請求項4】
前記電源供給部に含まれる複数の電池の各々が第2のフィルタを介して接続されていると共に、当該電源供給部に含まれる複数の電池のいずれか1つを選択する選択回路を備えた、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体回路。
【請求項5】
前記電源供給部毎に、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体回路が備えられた、
半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−44768(P2012−44768A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183292(P2010−183292)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(308033711)ラピスセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】