説明

半導体基板用ストッカ

【課題】設備の規模を抑えつつ基板等が載置された棚間に均一に気流を誘導することが可能である。
【解決手段】ストッカ100内の空間は側板104、105、天井板103及び床202によって画定されている。ストッカ100内には、基板の容器120が載置される複数の棚111を有する棚装置110が設置されている。側板104には、棚装置110に対向するように送風装置102が固定されている。側板104と棚装置110との間には気流を妨げる部材等が配置されておらず、送風装置102から棚111同士に挟まれた空間の開口110aまで直線経路に沿った気体の流路が確保されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等を載置する棚が設けられた半導体基板用ストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板が製造される工場などにおいて、基板や基板が収納された容器を保管するための複数の棚を有するストッカが用いられることがある。このような工場においては、製造ラインがクリーンルーム内に構築されるなど、清浄な雰囲気で製造工程が実施される場合が多い。ストッカに保管された基板等を清浄に保つため、例えばストッカ内の棚間に送風することによって基板等に堆積した塵などを吹き飛ばす設備が設けられる。特許文献1は、下方へとクリーンエアを吹き付けることで、棚に保管されたレチクルを清浄に保つものである。
【0003】
しかし、特許文献1のように上方から送風される場合には、ストッカ内の棚間にまで気流が到達しにくい。
【0004】
そこで、図2のようにダクト920及び風量調整シャッタ921を介して、上方からの気流をストッカ900内の棚装置910に誘導することが考えられる。風量調整シャッタ921は、棚装置910内の棚911同士の間に送られる風量を均一に保つためのものである。これらの構成によって、上方からの気流が棚911同士の間に均一に到達する場合もある。
【0005】
【特許文献1】特開2006−41027(図15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図2の構成によると、ダクト及び風量調整シャッタなどの追加の工事が必要となり、設備が過大な規模になるおそれがある。また、鉛直方向に配列された棚911の数が増えると、風量調整シャッタ921のみでは、天井201から床202までの全領域に亘って風量を均一にすることは困難である。
【0007】
本発明の目的は、設備の規模を抑えつつ棚間に均一に気流を誘導することが可能な半導体基板用ストッカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導体基板用ストッカは、天井板と、前記天井板の下方に内包空間を前記天井板と共に画定するように、前記内包空間の周囲に配置された側板と、鉛直方向に関して配列された複数の棚を有する前記内包空間内に配置された棚装置と、水平方向に関して前記棚装置に対向するように前記側板に固定されており、前記側板から前記棚装置へと向かう気流を前記内包空間内に発生させる第1の気流発生手段とを備えており、前記棚装置に、前記側板との間の空間と前記棚同士に挟まれた空間とを連通させる1又は複数の開口が形成されており、前記内包空間内において前記第1の気流発生手段から前記開口までを結ぶ直線経路に沿った気体の流路が、全ての前記開口に関して確保されている。
【0009】
本発明の半導体基板用ストッカによると、気流発生手段が棚装置に対向するように側板に固定されており、ダクトや風量調整シャッタを介さず棚装置の開口に直接気流発生手段からの気流が到達する。したがって、ダクトや風量調整シャッタなどの追加の工事を必要とせず、設備全体の規模を抑えつつ、均一に気流が誘導される。なお、上記の構成において気流発生手段から各開口までを結ぶ直線経路に沿った気体の流路が確保されているということは、気流発生手段から各開口までの間に気流の通過を妨げるような部材等が設置されていないことを示している。したがって、気流発生手段からの気流が滞りなく開口まで到達し、棚上に載置された基板等への送風が確保される。
【0010】
また、本発明においては、下方に向かう気流を前記内包空間内に発生させる第2の気流発生手段が前記天井板に固定されていることが好ましい。この構成によると、棚間への送風によって吹き飛ばされた塵等が、下方に向かう気流によって運び去られる。したがって、一旦吹き飛ばされた塵等が棚上の基板等に戻ることが抑制され、基板等が清浄に保たれる。
【0011】
また、本発明においては、前記側板に、鉛直方向に関する位置が互いに異なる複数の前記第1の気流発生手段が固定されていることが好ましい。この構成によると、棚が増えても複数の気流発生手段が配置されるため、より均一に気流が棚間に誘導される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、一実施形態であるストッカ100を示している。図1(a)及び図1(b)は、ストッカ100の内部の構成を示しており、一部ストッカ100の断面を含んでいる。図1(b)の断面は、図1(a)のB−B線に沿った断面である。
【0013】
ストッカ100は、半導体製造ラインが構築されたクリーンルーム内に設置されている。かかる製造ラインには、例えば半導体基板に各種の製造処理を施す装置や、これらの装置間で基板を搬送する装置が設置されている。基板は各種の容器に収容された状態で搬送される。ストッカ100は、かかる製造ラインにおいて基板を収容する容器120を一時的に保管するためのものである。
【0014】
ストッカ100は、天井板103、2枚の側板104及び2枚の側板105を有している。2枚の側板104は、図1(a)においてストッカ100の左右に互いに対向するように配置されており、2枚の側板105は、図1(b)においてストッカ100の左右に互いに対向するように配置されている。側板104は、クリーンルーム内の天井201から床202まで鉛直方向に沿って延在している。側板105は、天井板103から床202まで延在している。天井板103、側板104及び105は、ストッカ100の内面109に囲まれた内包空間を確定している。また、天井板103と天井201との間には空間が形成されている。かかる空間には、床面から排出された循環エアが充填されている。床202には、ストッカ100内の気体をクリーンルーム外へと排出する排気口(不図示)が設置されている。なお、図1(a)において側板104及び105は、クリーンルームの外壁であってもよい。つまり、例えば図1(a)の右側の側板104より右方は、クリーンルームの外部であってもよい。
【0015】
ストッカ100の内部には2つの棚装置110が設置されている。これらの棚装置110は水平方向に関して互いに対向するように配置されている。棚装置110は、鉛直方向に関して配列された複数の棚111を有している。各棚111上には複数の容器120が載置される。棚装置110の図1(a)において左右方向に関する両端には開口110aが形成されている。棚111同士に挟まれた空間は、これら両端の開口110aを通じてストッカ100内の空間に連通している。図1(a)において左側の棚装置110の左端に位置する開口110aは左側の側板104と対向し、右側の棚装置110の右端に位置する開口110aは右側の側板104と対向している。
【0016】
なお、ストッカ100には入出庫ポート(不図示)が形成されており、ストッカ100内には容器120を搬入したり搬出したりする搬送装置(不図示)が設置されている。かかる搬送装置は、上記の入出庫ポートを通じてストッカ100内に容器120を搬入して棚111上に載置すると共に、棚111上の容器120を入出庫ポートを通じてストッカ100外に搬出する。入出庫ポートには、ストッカ100外の別の搬送装置から容器120が載置されたり運び出されたりする。
【0017】
側板104には複数の送風装置102(第1の気流発生手段)が固定されている。側板104には、鉛直方向に沿って2つの送風装置102が配列されている。送風装置102は内部にファンとフィルタと(何れも不図示)を有している。送風装置102の送風口は棚装置110に面して形成されており、吸気口はストッカ100内に開口している。送風装置102は水平方向(図1(a)の左右方向)に関して棚装置110と対向する位置に配置されている。送風装置102と棚装置110との間は所定の距離d1だけ離隔している。側板104と棚装置110との間には、送風装置102から棚装置110までの直線経路に沿った気流の通過を妨げるような部材等が設置されていない。送風装置102の送風口には、送風装置102内のファンからの気流を鉛直方向に拡散させるような送風ガイド(不図示)が設置されている。
【0018】
送風装置102のファンが回転すると、吸気口からの気体がフィルタを介して送風口から棚装置110へと向かって吹き出される。この気流は、送風装置102の送風口に設置された送風ガイドによって鉛直方向に拡散され、棚装置110の各開口110aへと到達する。
【0019】
天井板103には複数の送風装置101(第2の気流発生手段)が設置されている。送風装置101は内部にファンとフィルタと(何れも不図示)を有している。送風装置101の吸気口は天井201と天井板103との間の空間に開口しており、送風口はストッカ100内の空間に開口している。送風装置101はファンを回転させることにより、天井板103と天井201との間の空間から循環エアを吸入すると共に、フィルタを介して下方へと排出する。これによって、下方に向かう気流を発生させる。送風装置101からの気流は、棚装置110同士の間の空間を下方へと向かい、床202に到達する。そして、床202に設置された排気口からクリーンルーム外へと排出され、再度循環エアとなって天井より供給される。
【0020】
以上の構成により、棚111上の容器120には送風装置102から均一に気流が誘導される。送風装置102が作動すると、各送風装置102から棚装置110の各開口110aへと向かう気流が発生する。ここで、送風装置102の送風口から開口110aまでの直線経路には気流の通過を妨げるものがないため、各開口110aには送風装置102からの気流が滞りなく到達する(図1(a)の黒矢印)。
【0021】
開口110aに到達した気流は、棚111同士の間を他方の開口110aへと向かう気流となる(図1(a)の白抜き点線矢印)。かかる気流によって棚111上に載置された容器120に付着した塵等が除去される。他方の開口110aに到達した気流は、送風装置101から下方へと向かう気流(図1(a)の白抜き実線矢印)と合流する。これによって、容器120から除去された塵等は棚111に戻ることなく下方へと運び去られる。そして、床202に設置された排気口を介して、塵等がクリーンルーム外へと排出される。
【0022】
以下、従来構成について図2を参照しつつ説明する。図2において白抜き矢印は気流の方向を示している。従来構成の一例であるストッカ900においては、天井板903に送風装置901が設置されている。一方で、側板904には送風装置が設置されていない。したがって、ストッカ900内には下方に向かう気流が発生するが、かかる気流は棚装置910内の棚911間には到達しにくい。
【0023】
そこで、ストッカ900には、ダクト920及び風量調整シャッタ921が設けられている。ダクト920は、棚装置910と側板904との間に鉛直方向に沿って設置されている。ダクト920の上端からは送風装置901から気流が流入する。ダクト920において棚装置910に面した表面には複数の開口が形成されている。各開口には風量調整シャッタ921が設けられている。風量調整シャッタ921は、各開口の開口面積等を変更できるように構成されている。
【0024】
以上の構成により、ストッカ900においては、天井板903に設置された送風装置901からダクト920を介して気流が棚装置910へと誘導される。棚装置910の棚911間には、風量調整シャッタ921により、ダクト920からの気流が均一に到達する。
【0025】
しかし、かかる従来構成によると、上記の実施形態と異なりダクト920や風量調整シャッタ921を要するため設備の規模が過大なものとなり、コストも増大する。一方で、上記の実施形態によると、かかる従来構成と比べて小さい規模で、棚111間の空間に均一に送風可能な構成が実現する。例えば、棚装置から側板までの距離で比較すると、図1(a)においてはd1であるのに対して、図2においてはd1より大きいd2である。ダクト920と風量調整シャッタ921とが存在することにより、ある構成例においてd2=500mmとなるのに対してd1=100mmとなることが、本発明の発明者によって確認されている。これは、ダクト920を設置するスペースとして、棚装置910と側板904との間に400mm程度の余計なスペースを要することに由来している。
【0026】
また、従来構成においてはいくら風量調整シャッタ921があっても、棚数が増えると、下方の棚911まで均一に送風することは困難になる。これに対して上記の実施形態によると、鉛直方向に沿って配列された2つの送風装置102によって、棚111間の各空間に均一に送風される。
【0027】
さらに、従来構成においては上方に設置された送風装置901から下方の棚911までの距離が大きいため、全ての棚911に均一に送風するためには多くの送風装置901を要する。これに対して、上記の実施形態においては、棚装置110の側面の開口110aに真横から直接送風するため、比較的少数の送風装置102を側板104に固定することで全ての棚111に均一に送風することが可能である。ある従来構成において7つの送風装置を要するのに対して、上記の実施形態のように側板に送風装置を固定した場合には、天井板に1つ、2枚の側板に1つずつの合計で5つの送風装置を設けることで全ての棚に均一に送風され得ることが、本発明の発明者によって確認されている。
【0028】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施の形態についての説明であるが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された内容の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0029】
例えば、上述の実施形態において側板104と棚装置110との間には、送風装置102から棚装置110までの直線経路に沿った気流の通過を妨げるような部材等が設置されていない。しかし、送風装置102から棚装置110までの直線経路に沿って気流をガイドするようなガイド部材が設置されていてもよい。
【0030】
また、上述の実施形態においては、ストッカ100内の底面はクリーンルームの床202の床面である。しかし、ストッカ100の下方に半導体製造装置などの別の装置が設置されており、ストッカ100内の底面がかかる装置の上面であったり、ストッカ100と下方の装置とを仕切る床板が別途配置されていたりしてもよい。
【0031】
また、上述の実施形態においては、天井板103及び側板104、105等がストッカ100の内包空間を確定している。しかし、クリーンルームを構成する天井201や外壁によってストッカ100の内包空間が確定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係るストッカの内部構成を示す一部断面を含む図である。
【図2】従来のストッカの内部構成を示す一部断面を含む図である。
【符号の説明】
【0033】
100 ストッカ
101,102 送風装置
103 天井板
104,105 側板
110 棚装置
110a 開口
111 棚
900 ストッカ
901 送風装置
903 天井板
904 側板
910 棚装置
911 棚
920 ダクト
921 風量調整シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井板と、
前記天井板の下方に内包空間を前記天井板と共に画定するように、前記内包空間の周囲に配置された側板と、
鉛直方向に関して配列された複数の棚を有する前記内包空間内に配置された棚装置と、
水平方向に関して前記棚装置に対向するように前記側板に固定されており、前記側板から前記棚装置へと向かう気流を前記内包空間内に発生させる第1の気流発生手段とを備えており、
前記棚装置に、前記側板との間の空間と前記棚同士に挟まれた空間とを連通させる1又は複数の開口が形成されており、
前記内包空間内において前記第1の気流発生手段から前記開口までを結ぶ直線経路に沿った気体の流路が、全ての前記開口に関して確保されていることを特徴とする半導体基板用ストッカ。
【請求項2】
下方に向かう気流を前記内包空間内に発生させる第2の気流発生手段が前記天井板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板用ストッカ。
【請求項3】
前記側板に、鉛直方向に関する位置が互いに異なる複数の前記第1の気流発生手段が固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板用ストッカ。

【図1】
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【図2】
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