説明

半導体素子の配線形成方法

【課題】 残留物除去時に別途の設備、追加処理が不要で、配線のパターン形状も良好に維持でき、工程時間も短縮できる半導体素子の配線形成方法を提供すること。
【解決手段】 絶縁層21上に形成された障壁層22、アルミニウム又はアルミニウム合金層23および反射防止膜24をパターニングし、さらにクリーニングした後、クリーニング時に発生した残留物25aをフッ素を含有するガスと酸素とが混合されたプラズマを用いて除去する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体素子の配線形成方法に係り、特にクリーニング工程で発生した残留物を除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、配線をアルミニウムで形成する場合には、アルミニウムを蒸着し食刻した後、アルミニウムの腐食を防止するための後処理工程が必要である。この後処置工程としては、塩素プラズマでアルミニウムを食刻した後、直ちに純粋な水(D.I Water)に浸けて残留の塩素を除去することにより腐食を防止している。腐食を防止するための他の一方法としては、その場でH2 Oベーパープラズマを用いて残留の塩素を除去している。
【0003】ところで、大部分のアルミニウム食刻装置は食刻チャンバとH2 Oベーパークリーニング/灰化チャンバとで構成される。よって、食刻後に真空破壊せずH2Oベーパープラズマを形成して腐食を防止できる。しかし、H2 Oベーパープラズマクリーニング時に、H、O、OHイオンにより、食刻マスクとしての感光膜が除去される問題が発生する。また、感光膜の物質変化が発生して、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる配線上にひどいポリマー性残留物が発生するようになる。この残留物はO2 灰化処理をしても除去されない。よって、前記残留物は、アミン(amine)基を含む溶液(例えば、ACT、EKC等)又は強酸性溶液で湿式処理を行って除去した。
【0004】以上のような従来の半導体素子の配線形成方法を添付図面に基づき説明する。図3および図4は、従来の半導体素子の配線形成方法を示す工程断面図である。従来の方法では、まず図3(a)に示すように、絶縁層11上に障壁層12を形成する。さらに、障壁層12上に配線形成のためのアルミニウム又はアルミニウム合金層(以下アルミニウム層と言う)13を形成する。さらに、アルミニウム層13上に反射防止膜14を形成する。次いで、反射防止膜14上の全面にフォトレジスト15を塗布した後、露光、現像工程でフォトレジスト15をパターニングする。
【0005】次に、図3(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト15をマスクとして用いて塩素を含むプラズマで反射防止膜14、アルミニウム層13および障壁層12を食刻する。そして、その場でH2 Oベーパープラズマクリーニング及びO2 灰化を実施する。このとき、露出された絶縁層11が図3(b)に示すように所定の深さに除去される。さらに、図4(a)に示すように、フォトレジスト15が除去されるとともに、反射防止膜14上に残留物15aが生成される。
【0006】次いで、残留物15aを図4(b)に示すように除去するために、硫酸、硝酸などを含む強酸性溶液又はアミン(amine)基を含む化学溶液を使用して湿式処理を行う。しかし、このような化学処理を行うと、残留物15aは除去されるが、反射防止膜14とその下部のアルミニウム層13との食刻速度が互いに相違し、アルミニウム層13が過度食刻される。また、アルミニウム層13の下部の障壁層12も過度食刻されて、全体的にパターン形状が不良となる。また、化学処理の後には、純粋な水(D.I Water)による洗浄工程、スピンドライ工程及びN2 ブローイング工程を必要とする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、上記のような従来の半導体素子の配線形成方法では、以下のような問題点があった。第1に、残留物の除去のために化学溶液を使用するため、処理槽など別途の設備が必要であり、洗浄などの追加処理も必要となる。第2に、化学溶液を用いた湿式処理では配線の過度食刻がひどくなり、工程時間も長くなる。本発明は上記の点に鑑みなされたもので、別途の設備、追加の処理を必要とせず、工程時間を短縮し、配線のパターン形状を良好に維持できる半導体素子の配線形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上述の課題を解決するために、次のような半導体素子の配線形成方法とする。まず、下地上に障壁層、配線層、反射防止膜を順次に形成する。次に、前記反射防止膜、配線層および障壁層をパターニングし、さらにクリーニングする。その後、前記クリーニング工程時に発生した残留物をフッ素を含有するガスと酸素とが混合されたプラズマを用いて除去する。
【0009】
【発明の実施の形態】次に添付図面を参照して本発明による半導体素子の配線形成方法の実施の形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の半導体素子の配線形成方法の実施の形態を示す工程断面図である。本発明の実施の形態では、まず、図1(a)に示すように、絶縁層(下地層)21上に障壁層22を形成する。ここで、障壁層22の物質としては、Ti、TiN、Ti/TiN、TiW等を使用する。次に、障壁層22上に配線層としてのアルミニウム又はアルミニウム合金層(以下アルミニウム層と言う)23を形成し、さらにアルミニウム層23上に反射防止膜24を形成する。このとき、反射防止膜24としてはTiNを使用する。その後、反射防止膜24上にフォトレジスト25を塗布した後、露光及び現像工程を実施してフォトレジスト25をパターニングする。
【0010】次いで、パターニングされたフォトレジスト25をマスクとして図1(b)に示すように反射防止膜24、アルミニウム層23および障壁層22を順次に食刻しパターニングする。この際、食刻工程は塩素プラズマ状態で実施し、食刻装置は、RIE(Reactive Ion Etching)型、ICP(Inductive Coupled Plasma)型、ヘリコン(helicon)型の食刻装置うち1つを選択して使用する。このような塩素プラズマ状態で食刻工程が進むと、図1(b)に示すように、障壁層22の周囲の絶縁層21も所定の深さに食刻される。このとき、障壁層22下部の絶縁層21非食刻部分は、障壁層22の幅より広く台形状に残るが、障壁層22との幅の差は、両側にそれぞれ約300〜400Å程度である。
【0011】次いで、塩素プラズマ状態で食刻したその場でH2 Oベーパープラズマクリーニングを実施する。このとき、図2(a)に示すように、フォトレジスト25が除去される。さらに、反射防止膜24上にカーボン、酸素、アルミニウム、微量のシリコンで構成されて硬化した残留物25aが形成される。
【0012】次に、フッ素を含むガス(例えば、CF4 又はCHF3 )と酸素( O2 )とが混合されたプラズマを使用して図2(b)に示すように残留物25aを除去する。このとき、残留物25aは、ヘリコン型の高密度食刻装置を使用して除去し、そのときの工程条件は次の通りとする。残留物25aを除去するための食刻時間は60秒以内とし、チャンバの圧力は6〜10mTの範囲にする。また、O2 と、フッ素(F)を含むガスとの流量比は8:1〜10:1の範囲とする。さらに、ソースパワーは2300〜2800Wの範囲にし、バイアスパワーは350〜450Wの範囲にする。
【0013】このような本発明の配線形成方法に従うと、フッ素を含むガスとO2 とが混合されたプラズマを使用して残留物25aを除去したので、従来技術のようにアルミニウム層23及び障壁層22が過度食刻される現象は表れない。これは、アルミニウム層23がフッ素を含むガス等により食刻されないからである。そして、アルミニウム層23及び障壁層22が過度食刻されないため、パターン形状を良好に維持し得る。また、障壁層22の下部の絶縁層21の損失も最小化することができる。さらに、プラズマ処理によれば、パターニング時の食刻装置などを利用でき、別途の設備が不要となり、さらに洗浄などの追加処理も不要になる。
【0014】なお、フッ素を含むガス(例えば、CF4 又はCHF3 )とO2 とが混合されたプラズマを使用して残留物25aを除去するとき、障壁層22の下部の、障壁層22より幅広な台形状の絶縁層21非食刻部分の両端部は直角となる。また、アルミニウム層23および障壁層22を食刻するとき、食刻条件を適切に調節することにより、絶縁層21が除去される量を調節することができる。
【0015】なお、このような本発明の方法に関連する技術として特開昭63−246824号公報がある。しかし、この公報技術は、WNx膜を加工してゲート電極を形成するためにCF4 とO2 ガスを使用する方法であり、本発明のようにアルミニウム配線形成時の残留物除去にフッ素を含むガスとO2 とが混合されたプラズマを使用する方法とは技術的に異なる。また、公報技術には、本発明で得られるような効果も記載されていない。
【0016】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の半導体素子の配線形成方法によれば、以下のような効果が得られる。第1に、残留物を除去するための別途の設備を必要とせず、かつ追加処理も不要で、経済的である。第2に、化学溶液を使用しないため配線が過度食刻されず、良好なパターンを維持することができ、しかも工程時間を短縮できる。第3に、絶縁層などの下地層の損失を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による半導体素子の配線形成方法の実施の形態を示す工程断面図。
【図2】同本発明の実施の形態を示し、図1に続く工程を示す工程断面図。
【図3】従来の半導体素子の配線形成方法を示す工程断面図。
【図4】同従来の方法を示す工程断面図。
【符号の説明】
21 絶縁層
22 障壁層
23 アルミニウム層
24 反射防止膜
25 フォトレジスト
25a 残留物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下地上に障壁層、配線層、反射防止膜を順次に形成する工程と、前記反射防止膜、配線層および障壁層をパターニングし、さらにクリーニングする工程と、前記クリーニング工程時に発生した残留物をフッ素を含有するガスと酸素とが混合されたプラズマを用いて除去する工程とを備えることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項2】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記障壁層は、Ti、TiN、Ti/TiN、TiWのうち1つを選択して使用することを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項3】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記配線層は、アルミニウム(Al)層、アルミニウム合金層のうち1つを選択して使用することを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項4】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記反射防止膜は、TiNで形成することを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項5】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記パターニング工程は、塩素(Cl)を含むガスで食刻することを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項6】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記クリーニング工程は、、H2 Oベーパープラズマクリーニングを実施することを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項7】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記フッ素を含むガスは、CF4 又はCHF3 であることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項8】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記酸素と、前記フッ素を含むガスとの流量比は、8:1〜10:1の範囲にすることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項9】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記フッ素を含むガスと酸素とを混合したプラズマの使用時に、ソースパワーは2300〜2800Wの範囲にすることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項10】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記フッ素を含むガスと酸素とを混合したプラズマの使用時に、バイアスパワーは350〜450Wの範囲にすることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項11】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記フッ素を含むガスと酸素とを混合したプラズマの使用時に、チャンバの圧力は6〜10mTの範囲にすることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項12】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記フッ素を含むガスと酸素とを混合したプラズマの使用時に、残留物を除去するための食刻時間は60秒以内にすることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項13】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記パターニング工程は、RIE(Reactive Ion Etching)型、ICP(Inductive Coupled Plasma)型、ヘリコン(helicon)型の食刻装置のうち1つを選択して実施されることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。
【請求項14】 請求項1記載の半導体素子の配線形成方法において、前記残留物の除去は、ヘリコン型の高密度食刻装置を使用して行われることを特徴とする半導体素子の配線形成方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開平10−199889
【公開日】平成10年(1998)7月31日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−169961
【出願日】平成9年(1997)6月26日
【出願人】(595084025)エルジイ・セミコン・カンパニイ・リミテッド (4)