半導体装置およびその製造方法
【課題】パッド上に形成したバンプにワイヤループの途中部分を接続することで、安定した接続を行いながらループを低くして半導体装置の薄型化を図る。
【解決手段】外部に露出する端子部をもつベース部33と、前記ベース部33に固着されるチップ32と、前記チップ32のパッド40上に形成されるバンプ41と、前記ベース部33と前記チップ32のパッド40との間を接続するワイヤ38と、全体を覆う封止樹脂39とを備えた半導体装置であって、ワイヤ38の1本以上がパッド40からベース部33に至る途中でバンプ41に接続される構成とすることで、ループ高さを低くすることが可能となり、半導体装置の薄型化を実現する。
【解決手段】外部に露出する端子部をもつベース部33と、前記ベース部33に固着されるチップ32と、前記チップ32のパッド40上に形成されるバンプ41と、前記ベース部33と前記チップ32のパッド40との間を接続するワイヤ38と、全体を覆う封止樹脂39とを備えた半導体装置であって、ワイヤ38の1本以上がパッド40からベース部33に至る途中でバンプ41に接続される構成とすることで、ループ高さを低くすることが可能となり、半導体装置の薄型化を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法、特に、バンプ上にワイヤループの途中を接続した構造の半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下図面を参照しながら従来のこの種の半導体装置の構成について説明する。
【0003】
図13は従来の半導体装置のリードフレームの平面図、図14は従来の半導体装置の断面図、図15は従来の半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図、図16は図15に示す半導体装置におけるループ形成動作途中の状態を示す斜視図、図17は図15に示す半導体装置におけるワイヤのリードフレーム側の接合が終了した直後の状態を示す説明図である。
【0004】
図13において、11はリードフレーム、12は半導体装置でそれぞれの全体像を指すものとする。リードフレーム11は封止の単位であるブロック4個から構成され、各ブロックには半導体装置12となる部分が縦横に隣接配置されている。
【0005】
次に、図14において13はこの半導体装置12に搭載されたチップであり、リードフレーム11は外部端子として露出する内側ランド14、外側ランド15、チップ13を載せるためのダイパッド16等で構成されている。ダイパッド16は、中央部が上方にプレスされてチップ13を載せる支持部となっている。17はチップ13をパッド16の支持部に固着させるためのダイボンド剤、18はチップ13と内側ランド14または外側ランド15とを接続するワイヤ、19は内部保護のために半導体装置12を全体的に覆う封止樹脂である。
【0006】
この従来の半導体装置が樹脂封止される前の状態を図15に示してある。図中20はチップ13に設けられたパッドであり、ここでは長方形である。パッド20のうちチップ13の中心に近い側はダイボンド工程以前のプローブ検査において良否を判定するため、針を押し当てる領域として使用される。なお、この図15には針を押し当てたあとにできる痕跡21も描いている。また、パッド20のうちチップ13の外周に近い側はワイヤ18の一端を接続する領域として使用される。このようにパッド20をプローブ検査で使用する領域とワイヤ18の接続に使用する領域に分けているのは、痕跡21上でワイヤ18の接続を行なうと十分な接合が行われない場合があるためである。
【0007】
さらに、この従来の半導体装置におけるワイヤの接続は図16、図17に示すようになっている。前述のように図16はループ形成動作の途中の状態を示しており、図17はワイヤについてリードフレーム側の接合が終了した直後の状態を示している。図17にはキャピラリ22の動作経路も矢印で描いており、キャピラリ22は中空になっていて、その中にワイヤ18が通されている。
【0008】
まず、ファーストボンド側ではキャピラリ22の先端に形成したイニシャルボールをパッド20に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ18の一端を接合する。これにより、ワイヤ18の端部はボール圧着部23となる。次に、キャピラリ22はワイヤ18を繰り出しながら上昇し、その高さのままで接続方向であるリードフレーム11側とは逆の方向へ移動する。これにより、ボール圧着部23からキャピラリ22に至るワイヤ18は傾斜し、キャピラリ22内の方向である垂直方向とは角度差ができるため、ワイヤ18に第1の曲げ癖が付くことになる。
【0009】
次に、キャピラリ22はワイヤ18を繰り出しながら上昇し、その高さのまま、また、ワイヤ18の接続方向とは逆の方向へ移動する。このときも、キャピラリ内外のワイヤ18に角度差ができるため、ワイヤ18に第2の曲げ癖が付く。次に、キャピラリ22はワイヤ18を繰り出しながら上昇し、ループ形成に必要な長さのワイヤ18の繰り出しを終了した最上位置24から、ワイヤ18の他端の接続先である内側ランド14または外側ランド15へ向けて円弧状の動作を行った後、ワイヤ18を内側ランド14または外側ランド15に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これにより、パッド20から内側ランド14または外側ランド15に至るループ25が形成される。このときキャピラリ22がどのような移動軌跡を採るかは、それに関する設定値によるが、最上位置24が低い等の理由により、キャピラリ22が内側ランド14または外側ランド15に移動するときにワイヤ18が無理に引っ張られると、ボール圧着部23から上方へつながるループ25の立ち上がり部分に影響が生じる。引っ張り過ぎの場合は、ループ25の立ち上がり部分で断線、そこまで至らずともクラックが入った状態となってしまう。これを防ぐため、キャピラリ22の最初の上昇位置26はある程度高くしなければならず、これにより第1の曲げ癖までの距離が長くなり、ループ25を低くすることができなかった。
【0010】
ここで説明している半導体装置12は、リードフレーム11をベースとしたLGA(Land Grid Array)タイプのものであり、高密度実装に対応するためランド(端子)を外周のみならず、その内側にも設けて2列周状配置とし、単位面積当りのランド数を増やしたものである。
【0011】
ここでは、チップ側にファーストボンド、リードフレーム側にセカンドボンドを行う正ボンド方式で形成されるループについて説明を行ったが、これとは別に、チップ側にバンプ形成後、リードフレーム側にファーストボンド、ループ形成動作をしてバンプ上にセカンドボンドを行う逆ボンドと呼ばれる方式がある。この逆ボンド方式ではチップ側でのループの垂直方向の立ち上がりがないためループは低くできるものの工法の安定性に課題があり、このため近年では正ボンド方式でありながらループを低くする方式が検討されていて、その一例が特許文献1に開示されている。その内容について簡単に説明すると、チップのパッドにボール圧着部を形成後、キャピラリは一旦上昇、微少動作をした後、ボール圧着部の上部を潰すためにボール圧着部上へ下降、その後、ループ形成動作をしてリードフレーム側にワイヤを押し付けて接合を行うというものである。
【特許文献1】特開2004−172477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の半導体装置での正ボンドループではワイヤが引っ張られたときに断線したり、クラックが入ったりすることがないようにパッド直上部のループの立ち上がりを一定以上の高さとする必要があるため、半導体装置の薄型化を図れないという第1の重要な問題点があった。
【0013】
また、逆ボンド方式について言えば、ワイヤの引きちぎりが、バンプ形成後とバンプ上へのワイヤ接続後の2回行われ、これによりパッドとバンプの界面に剥がす力をかけるため、接合力が弱いとバンプを剥がしてしまうという問題があった。1回目の引きちぎりであるバンプ形成後の引きちぎりでは、バンプに直接つながる部分を引きちぎるため、形状変化の影響は少なく、発生する力の大きさもその変化量も比較的小さくてすむが、2回目の引きちぎりであるバンプ上へのワイヤ接続後の引きちぎりでは、バンプに接続したワイヤを引きちぎるため、バンプ形状に加え、ワイヤの接続位置やつぶれ方の変化の影響が加わるため、発生する力の変化も大きくなってバンプを剥がしやすい。
【0014】
また、正ボンド方式でありながらループを低くする方式について言えば、ワイヤが急激に曲げられたり、潰されたりすることで、ワイヤにダメージが入る可能性があるという問題、ワイヤを繰り出したと同じボール圧着部へキャピラリが下降するため、繰り出した部分の形状やボール圧着部への下降位置が限られて、形状についての自由度が少なく、キャピラリがボール圧着部へ下降して行われる接合の強度が必ずしも十分ではないという問題があった。
【0015】
また、従来の半導体装置での低ループを実現する方式では、ループの高さがボール圧着部の高さで決まってしまい、高さの調整ができず、隣接ワイヤやチップエッジと接触する危険が生じるという第2の重要な問題点があった。
【0016】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであり、パッド上に形成したバンプにワイヤループの途中部分を接続することで、安定した接続を行いながらループを低くして半導体装置の薄型化を図ることを第1の目的とし、また、ワイヤループの途中部分を接続するバンプを複数段とすることで、ループ高さをバンプの段数に応じて調整可能として、ワイヤ間の接触やワイヤとチップエッジとの接触を防止することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記第1の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成されるバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中でバンプに接続されている構成としたものである。
【0018】
これにより、パッド上のループ高さをバンプに接する高さにすることができ、ループの低い薄型の半導体装置を提供することができる。
【0019】
また、前記第1の目的を達成するために本発明に係る半導体装置の製造方法は、外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分をバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続するようにしたものである。
【0020】
これにより、パッド上のループ高さをバンプに接する高さとすることができる。
【0021】
次に、前記第2の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成される2段以上に積み重ねたバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中で2段以上に積み重ねたバンプに接続されている構成としたものである。
【0022】
これにより、パッド上のループ高さがバンプの段数に応じた高さにでき、複数のループ高さ設定が可能でワイヤ間の接触防止やワイヤとチップエッジとの接触防止が図れる半導体装置を提供することができる。
【0023】
また、前記第2の目的を達成するために本発明に係る半導体装置の製造方法は、外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成し、さらにそのバンプに重なるようバンプを1回以上形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分を最上部のバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続するようにしたものである。
【0024】
これにより、パッド上のループ高さがバンプの段数に応じた高さとなる複数のループ高さ設定が可能で、ワイヤ間の接触防止やワイヤとチップエッジとの接触防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パッド上のループ高さをバンプに接する高さにできるのでループを低くすることができ、半導体装置の薄型化を図ることができる。また、チップの中心付近に設けたパッドに形成したボール圧着部から、チップの外周側に設けたパッドに形成したバンプを経由してリードフレーム側へつなぐようにすれば、チップの中央にパッドを設けても、低ループでありながらチップエッジと接触することなく接続ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明における各実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態は本発明の前記第1の目的に対応するものであり、図1は本発明半導体装置の実施の形態1における構成を示す断面図、図2は図1に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図、図3は図1に示す半導体装置のバンプ形状についての説明図、図4は図1に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図、図5は図1に示す半導体装置のチップの中心に近いパッドからワイヤを引き出す場合の説明図である。
【0028】
図1において、30は半導体装置全体を示し、32はこの半導体装置30に搭載されたチップである。33はこの半導体装置30のベース部であるリードフレーム全体を示し、このリードフレーム33は外部端子として露出する内側ランド34、外側ランド35、チップ32を載せるためのダイパッド36等で構成されている。ダイパッド36は中央部が上方にプレスされてチップ32を載せる支持部となっている。37はチップ32をダイパッド36の支持部に固着させるためのダイボンド剤、38はチップ32と内側ランド34または外側ランド35とを接続するワイヤ、39は内部保護のために半導体装置30を全体的に覆う封止樹脂である。
【0029】
また、図2においてチップ32の上面には、長方形のパッド40が設けられており、このパッド40のうちチップ32の外周に近い側にはバンプ41が形成され、チップ32の中心に近い側にはイニシャルボールが潰されてボール圧着部42が形成されており、ボール圧着部42から出たワイヤ38がバンプ41上を経由している。ワイヤ38によるチップ32と内側ランド34または外側ランド35との接続においては、ファーストボンド側をチップ32のパッド40、セカンドボンド側を内側ランド34または外側ランド35としている。なお、背景技術においては、パッドを二つの領域に分け、一方を針を押し当てる領域、他方をワイヤを接続する領域として使用すると説明したが、このように同一パッドにバンプとボール圧着部を形成する場合は長方形の中央をねらって針を押し当てるのが望ましい。それにより、痕跡の影響がバンプとボール圧着部の両方に同程度に及ぶか、あるいは大きさの関係によってはどちらへも及ばずに済むためである。
【0030】
また、43はチップ32の中心付近に設けられた内側パッドであり、44はチップ32の外周側に設けられた外側パッドである。外側パッド44にはバンプ41が形成され、内側パッド43にはボール圧着部42が形成されて、ボール圧着部42から出たワイヤ38がバンプ41上に接続されている。この箇所では、バンプ41とボール圧着部42を同一パッドに設けるのではなく、違うパッドに設けているのが他と異なる。
【0031】
次に、この半導体装置の製造方法について説明する。製造工程としてはダイボンド工程、ワイヤボンド工程、封止工程、個片化工程がある。まず、図1および図2に示すように、エッチングやプレスの加工により2列周状となった内側ランド34、外側ランド35や面高さが部分的に異なるダイパッド36が形成されたリードフレーム33を作製する。このリードフレーム33に対し、ダイボンド工程では、まずダイパッド36の支持部にダイボンド剤37を塗り、そこにダイシングされてテープに貼り付いた状態のチップ32をピックアップして載置した後、加熱して固着させる。ワイヤボンド工程では金属のワイヤ38を使用し、熱と超音波の作用により、パッド40と内側ランド34または外側ランド35とを接続している。
【0032】
このワイヤボンド工程については、図3乃至図5を用いて詳細に説明する。これら各図にはワイヤボンドの工程で用いるキャピラリ45とその動作経路も描いている。
【0033】
まず、図3を用いてバンプ41の形成について説明する。キャピラリ45を下降させることでワイヤ38の先端に形成したイニシャルボールをパッド40へ圧着し、次にキャピラリ45に上昇と斜め下方への微少動作をさせることで上面形状を整えた後、キャピラリ45を上昇させるが、上昇の途中からはキャピラリ45側でワイヤ38をつかむことで、ワイヤ38を引きちぎり、バンプ41を形成する。引きちぎったワイヤ38に対しては放電により先端にイニシャルボールを形成する。
【0034】
次に、図4を用いてパッドと内側ランドとの接続について説明する。キャピラリ45をバンプ41の隣でチップ32の中心に近い側に下降させることでワイヤ38の先端に形成したイニシャルボールを潰してボール圧着部42を形成する。次にキャピラリ45はワイヤ38を繰り出しながら上昇し、その位置からバンプ41に向けて円弧状に動いてバンプ41上に一旦下降、ワイヤ38の下面をバンプ41の上面に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これによりチップ32側でのループ高さは、バンプ41に向かうワイヤ38の曲げ高さ(図4のH1)とすることができる。なお、図4ではバンプ41のつば高さとボール圧着部42のつば高さを同じに描いているが、イニシャルボールを大きくする等により、バンプ41の方を高くすることもできるため、ループ高さがワイヤ38の曲げ高さではなく、バンプ41にワイヤ38の径を加えた高さ(図4のH2)となることもある。次に、キャピラリ45はワイヤ38を繰り出しながら上昇し、その高さのままでワイヤ38の接続方向とは逆の方向へ移動する。これにより、キャピラリ内外のワイヤ38に角度差ができるため、ワイヤ38に曲げ癖が付く。
【0035】
次に、キャピラリ45はワイヤ38を繰り出しながら上昇し、ループ形成に必要な分のワイヤ38の繰り出しを終了した最上位置から、ワイヤ38の他端の接続先である内側ランド34へ向けて円弧状の動作を行った後、ワイヤ38の下部を内側ランド34に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これにより、パッド40から内側ランド34に至るループ46が形成される。次にキャピラリ45は上昇し、上昇の途中からはキャピラリ45側でワイヤ38をつかむことで、ワイヤ38を引きちぎり、その先端にイニシャルボールを形成して1サイクル分の動作が終了する。
【0036】
このような、ワイヤ38の途中部分をバンプ41に接続することを少なくとも1本のワイヤ38について行う。ここでは、リードフレーム33側の接続先を内側ランド34としたが、外側ランド35としても、ワイヤ38が長くなるだけで同様である。
【0037】
次に図5を用いてチップの中心付近に設けたパッドからワイヤを引き出す場合について説明する。内側パッド43と外側パッド44とが距離をおいて存在する場合は、ボール圧着部42を形成した後のキャピラリ45の上昇位置が高くなり、バンプ41に向けての円弧状動作の径が大きくなることが異なるものの、それ以外は同じである。このように、パッドをチップ32の中心付近に設けた場合でも、外周側に設けたバンプ41を中継することで、低いループで内側ランド34または外側ランド35までを結ぶことができる。また、パッドをチップ32の中心付近に設けることで、従来のループであれば危険が生じるワイヤ38とチップエッジ47との接触についても、バンプ41を中継しているため発生することはない。
【0038】
封止工程では、リードフレーム33を片側が凹形状になった金型ではさみ、凹形状の部分に加熱、溶融した封止樹脂39を流し込み硬化させる。個片化工程では、パッケージダイシングにより半導体装置30をリードフレーム33全体から切り離すことで、個片にして取り出す。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれは、パッド40上に形成したバンプ41にループ46の途中部分を接続することで、チップ32側のループ高さをバンプ41に向かうワイヤ38の曲げ高さ、あるいはバンプ41にワイヤ38の径を加えた高さとすることができ、この高さは従来に比べて低いため半導体装置の薄型化が図れる。
【0040】
なお、本実施の形態によれば、パッケージをリードフレームベースのLGAとしたが、チップとベース間の接続をワイヤで行うものなら別のパッケージとしてもよく、また、パッケージ内のチップ数を1としたが、2以上の複数として積層したり並置してもよい。また、チップのパッドとリードフレーム側のランドとの接続関係や、バンプを形成してその上にワイヤループの途中部分を接続する箇所や数は、例示したものに限らず種々変形可能である。また、バンプ形成時に台座上部に所定の形状を形成するためのキャピラリの動作のさせ方、引きちぎるときのキャピラリの動作のさせ方は種々変更可能であり、さらに言えば、バンプはどのような形成手法によるもの、どのような形状のものでもよい。また、パッドは長方形としたが、バンプとボール圧着部の形成が行われるとすれば、正方形や円といった形状でもよいし、楕円や円を2個つないだ形状といったようにどのような形状でもよく、バンプとボール圧着部の形成箇所が分離したものでもよい。
【0041】
本実施の形態における発明の要旨は、問題を生じることなく低ループ化を図るためにボール圧着部から出たループの途中の一部をバンプに接続する点にその骨子がある。
【0042】
(実施の形態2)
本実施の形態は本発明の前記第2の目的に対応するものであり、前記実施の形態1に対してバンプを複数段としている点に特徴があるのでこれに関する説明を重点的に行うものとする。
【0043】
図6は本発明半導体装置の実施の形態2における構成を示す断面図、図7は図6に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図、図8は図6に示す半導体装置の1段目のバンプ形成についての説明図、図9は図6に示す半導体装置の2段目のバンプ形成についての説明図、図10は図6に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図、図11は図6に示す半導体装置の下側チップのワイヤを考慮する必要のない場合のパッドからランドへの接続についての説明図、図12は図6に示す半導体装置においてバンプが1段でその高さを高くする場合の説明図である。
【0044】
図6において、50は半導体装置全体を示し、52はこの半導体装置50に搭載された上側チップ、53は下側チップである。54は、この半導体装置50のベース部であるリードフレーム全体を示し、このリードフレーム54は外部端子として露出する内側ランド55、外側ランド56、チップを載せるためのダイパッド57等で構成されている。58は下側チップ53をダイパッド57の支持部に固着させるためのダイボンド剤である。また、59は上側チップ52を下側チップ53に固着させるためのダイボンドテープである。60は上側チップ52または下側チップ53と内側ランド55または外側ランド56とを接続するワイヤである。61は、内部保護のために半導体装置50を全体的に覆う封止樹脂である。
【0045】
また、図7において、上側チップ52、下側チップ53の上面にはそれぞれ長方形のパッド62,63が設けられている。上側チップ52の一部のパッド62については、外周に近い側に複数段からなるバンプ64が形成され、中心に近い側にはイニシャルボールが潰されてボール圧着部65が形成されており、ボール圧着部65から出たワイヤ60がバンプ64上を経由している。ワイヤ60による上側チップ52と内側ランド55または外側ランド56との接続においては、ファーストボンド側を上側チップ52のパッド62、セカンドボンド側を内側ランド55または外側ランド56としている。
【0046】
次に、この半導体装置の製造方法について述べる。製造工程としては前記実施の形態1と同様、ダイボンド工程、ワイヤボンド工程、封止工程、個片化工程がある。まず、図6および図7に示すように、エッチングやプレスの加工により2列周状となった内側ランド55、外側ランド56やダイパッド57が形成されたリードフレーム54を作製する。このリードフレーム54に対し、ダイボンド工程では、まずダイパッド57の支持部にダイボンド剤58を塗り、そこにダイシングされてテープに貼り付いた状態の下側チップ53をピックアップして載置した後、加熱し固着させる。その後、基材と接着剤の2層構造のダイシングテープに貼り付いた状態の上側チップ52をピックアップして、下側チップ53の上に載置した後、加熱して固着させる。このピックアップ時に上側チップ52の裏面側に付いてくるダイシングテープの接着剤(ダイボンドテープ59)の作用により、上下チップ間の結合が行われる。ワイヤボンド工程では、金属のワイヤ60を使用し、熱と超音波の作用により、パッド62,63と内側ランド55または外側ランド56とを接続している。
【0047】
このワイヤボンド工程については図8乃至図10を用いて詳細に説明する。まず、図8を用いて1段目のバンプ形成について説明するに、このとき既に下側チップ53には正ボンド方式でワイヤ60が接続されているとする。キャピラリ66を下降させることでワイヤ60の先端に形成したイニシャルボールを上側チップ52のパッド62へ圧着し、次にキャピラリ66を上昇させるが、上昇の途中からはキャピラリ66側でワイヤ60をつかむことで、ワイヤ60を引きちぎり、対称的な形状の1段目のバンプ67を形成する。ここでは、単にワイヤ60を引きちぎっただけで、1段目のバンプ67が中央で上方にワイヤ60が突出した形状となっているが、この形状でもこの上に別のバンプを積むことに問題は生じない。引きちぎったワイヤ60に対しては放電により先端にイニシャルボールを形成する。
【0048】
次に、図9を用いて2段目のバンプ形成について説明する。キャピラリ66を1段目のバンプ67へ下降させることで、イニシャルボールを1段目のバンプ67上へ圧着し、次にキャピラリ66に上昇と斜め下方への微少動作させることで上面形状を整えた後、キャピラリ66を上昇させてワイヤ60を引きちぎり、2段に形成されたバンプ64を形成する。引きちぎったワイヤ60に対しては、放電により先端にイニシャルボールを形成する。
【0049】
次に、図10を用いてパッドからランドへの接続について説明する。キャピラリ66を2段バンプ64の隣で上側チップ52の中心に近い側に下降させることでワイヤ60の先端に形成したイニシャルボールを潰してボール圧着部65を形成する。次にキャピラリ66はワイヤ60を繰り出しながら上昇し、その位置から2段バンプ64に向けて円弧状に動作して2段バンプ64上に一旦下降、ワイヤ60の下面を2段バンプ64上面に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これにより、チップエッジ68でのループ高さを2段バンプ64にワイヤ60の径を加えた高さとすることができる。
【0050】
次に、キャピラリ66はワイヤ60を繰り出しながら上昇し、その高さのままでワイヤ60の接続方向とは逆の方向へ移動する。これにより、キャピラリ内外のワイヤ60に角度差ができるため、ワイヤ60に曲げ癖が付く。次に、キャピラリ66はワイヤ60を繰り出しながら上昇し、ループ形成に必要な分のワイヤ60の繰り出しを終了した最上位置からワイヤ60の他端の接続先であるランドへ向けて円弧状の動作を行った後、ワイヤ60とランドとの接合を行う。このように、パッド62上に形成した2段バンプ64にループの途中部分を接続することで低いループ高さを実現しながらも、その高さをバンプの段数に応じて調整でき、下側チップ53に接続したワイヤ60との間隔の確保が図れる。
【0051】
ここで、図11を用いて下側チップ53のワイヤを考慮する必要がない場合についても説明を行う。この場合は2段バンプ64と内側ランド55または外側ランド56との間をより少ないワイヤ量で結ぶことができ、封止でのワイヤ位置の変化を少なくできる。しかし、このときのループ70の傾斜度合によっては、チップエッジ68,69との隙間(図11のC1やC2)が小さくなり、接触の危険が生じるが、複数段バンプ64にループの途中部分を接続することにより、ワイヤ60とチップエッジ68,69との接触防止を図ることができる。このようなワイヤ60の途中部分を複数段バンプ64に接続する動作を少なくとも1本のワイヤ60について行う。
【0052】
ここでループ高さの調整を、1段のバンプの高さを変化させて行う場合と複数段のバンプを積み上げて行う場合を比較するため、図12を用いてバンプが1段でその高さを高くする場合について説明する。バンプの径は、パッドに入る大きさであるとしても、イニシャルボールを大きく、また潰し方を弱くすることで、背の高いバンプ71を形成できる。このとき、バンプ71の側面は、パッド62の面になだらかに接する曲面となるが、曲面半径(図12のR)が大きくなることで、接触面積が小さくなり十分な接合強度を得にくくなる。また接合時にキャピラリ66と接触するバンプ71の上面と接合が行なわれるパッド62の面との距離が遠いことで超音波が有効に作用しなくなり、これも十分な接合強度を得にくくなることにつながる。これに対して複数段のバンプを積み上げて行う場合は、パッド上への1段目のバンプ形成ではバンプの側面径は小さく、またバンプ上面とパッド面との距離を近くできるため、バンプとパッド間で十分な接合強度を得ることができる。また、2段目以降のバンプの形成では、バンプ間は同種類の金属同士の接合となるため容易に十分な接合強度を容易に得ることができる。このような違いがあるため、ループ高さの調整は、1段のバンプの高さを変化させて行うのではなく、複数段のバンプで段数を変化させて行うのが望ましい。
【0053】
封止工程では、リードフレーム54を片側が凹形状になった金型ではさみ、凹形状の部分に加熱、溶融した封止樹脂61を流し込み硬化させる。個片化工程では、パッケージダイシングにより半導体装置50をリードフレーム54の全体から切り離すことで、個片にして取り出す。
【0054】
以上のように、本実施の形態によれば、パッド62上に形成した複数段のバンプ64にループの途中部分を接続することで、低いループ高さを実現しながら、その高さを調整できるので、上側チップ52のループ高さを下側チップ53に接続しているワイヤ60との間隔をとるよう調整できるため、両者のショートを防止できる。また、ループの傾斜度合いが大きいときでも、チップエッジ68,69との隙間が小さくなることはなく、ワイヤ60とチップエッジ68,69との接触を防止できる。また、同一チップに接続しているワイヤ同士でも、隣接間で高さを変えれば、ループの途中で平面的には近づけるあるいは交差させるといった3次元配置が可能となる。
【0055】
なお、本実施の形態では、パッケージをリードフレームベースのLGAとしたが、チップとベース間の接続をワイヤで行うものなら別のパッケージとしてもよい。また、チップの積層数は2としたが、単数としてもよいし、3以上の複数としてもよい。また、チップのパッドとリードフレーム側のランドとの接続方法は例示したものに限らず種々変形が可能である。また、バンプを2段に形成するとしたが、3段以上の複数としてもよく、また、バンプの形状を1段目を対称的、上段を非対称的としたが、上下で形状を入れ替えてもよいし、上下ともどちらか一方の形状としてもよく、説明した以外の形状としてもよい。また、バンプの形成方式も限定されるものではない。
【0056】
本実施の形態における発明の要旨は、ループの高さを調節するために、ボール圧着部から出たループの途中の一部を接続するバンプを複数段にする点にその骨子がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、パッド上のループ高さを低くして薄型化できるものであり、また、チップの中央にパッドを設けても、低ループでありながら、チップエッジと接触することなく接続できるという効果を奏し、バンプ上にワイヤループの途中を接続した半導体装置およびその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明半導体装置の実施の形態1における構成を示す断面図
【図2】図1に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図
【図3】図1に示す半導体装置のバンプ形状についての説明図
【図4】図1に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図
【図5】図1に示す半導体装置のチップの中心に近いパッドからワイヤを引き出す場合の説明図
【図6】本発明半導体装置の実施の形態2における構成を示す断面図
【図7】図6に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図
【図8】図6に示す半導体装置の1段目のバンプ形成についての説明図
【図9】図6に示す半導体装置の2段目のバンプ形成についての説明図
【図10】図6に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図
【図11】図6に示す半導体装置の下側チップのワイヤを考慮する必要のない場合のパッドからランドへの接続についての説明図
【図12】図6に示す半導体装置においてバンプが1段でその高さを高くする場合の説明図
【図13】従来の半導体装置のリードフレームの平面図
【図14】従来の半導体装置の断面図
【図15】従来の半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図
【図16】図15に示す半導体装置のループ形成動作途中の状態を示す斜視図
【図17】図15に示す半導体装置のワイヤのリードフレーム側の接合が終了した直後の状態を示す説明図
【符号の説明】
【0059】
30 半導体装置
32 チップ
33 リードフレーム
38 ワイヤ
40 パッド
41 バンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置およびその製造方法、特に、バンプ上にワイヤループの途中を接続した構造の半導体装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下図面を参照しながら従来のこの種の半導体装置の構成について説明する。
【0003】
図13は従来の半導体装置のリードフレームの平面図、図14は従来の半導体装置の断面図、図15は従来の半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図、図16は図15に示す半導体装置におけるループ形成動作途中の状態を示す斜視図、図17は図15に示す半導体装置におけるワイヤのリードフレーム側の接合が終了した直後の状態を示す説明図である。
【0004】
図13において、11はリードフレーム、12は半導体装置でそれぞれの全体像を指すものとする。リードフレーム11は封止の単位であるブロック4個から構成され、各ブロックには半導体装置12となる部分が縦横に隣接配置されている。
【0005】
次に、図14において13はこの半導体装置12に搭載されたチップであり、リードフレーム11は外部端子として露出する内側ランド14、外側ランド15、チップ13を載せるためのダイパッド16等で構成されている。ダイパッド16は、中央部が上方にプレスされてチップ13を載せる支持部となっている。17はチップ13をパッド16の支持部に固着させるためのダイボンド剤、18はチップ13と内側ランド14または外側ランド15とを接続するワイヤ、19は内部保護のために半導体装置12を全体的に覆う封止樹脂である。
【0006】
この従来の半導体装置が樹脂封止される前の状態を図15に示してある。図中20はチップ13に設けられたパッドであり、ここでは長方形である。パッド20のうちチップ13の中心に近い側はダイボンド工程以前のプローブ検査において良否を判定するため、針を押し当てる領域として使用される。なお、この図15には針を押し当てたあとにできる痕跡21も描いている。また、パッド20のうちチップ13の外周に近い側はワイヤ18の一端を接続する領域として使用される。このようにパッド20をプローブ検査で使用する領域とワイヤ18の接続に使用する領域に分けているのは、痕跡21上でワイヤ18の接続を行なうと十分な接合が行われない場合があるためである。
【0007】
さらに、この従来の半導体装置におけるワイヤの接続は図16、図17に示すようになっている。前述のように図16はループ形成動作の途中の状態を示しており、図17はワイヤについてリードフレーム側の接合が終了した直後の状態を示している。図17にはキャピラリ22の動作経路も矢印で描いており、キャピラリ22は中空になっていて、その中にワイヤ18が通されている。
【0008】
まず、ファーストボンド側ではキャピラリ22の先端に形成したイニシャルボールをパッド20に押し付け、熱と超音波の作用でワイヤ18の一端を接合する。これにより、ワイヤ18の端部はボール圧着部23となる。次に、キャピラリ22はワイヤ18を繰り出しながら上昇し、その高さのままで接続方向であるリードフレーム11側とは逆の方向へ移動する。これにより、ボール圧着部23からキャピラリ22に至るワイヤ18は傾斜し、キャピラリ22内の方向である垂直方向とは角度差ができるため、ワイヤ18に第1の曲げ癖が付くことになる。
【0009】
次に、キャピラリ22はワイヤ18を繰り出しながら上昇し、その高さのまま、また、ワイヤ18の接続方向とは逆の方向へ移動する。このときも、キャピラリ内外のワイヤ18に角度差ができるため、ワイヤ18に第2の曲げ癖が付く。次に、キャピラリ22はワイヤ18を繰り出しながら上昇し、ループ形成に必要な長さのワイヤ18の繰り出しを終了した最上位置24から、ワイヤ18の他端の接続先である内側ランド14または外側ランド15へ向けて円弧状の動作を行った後、ワイヤ18を内側ランド14または外側ランド15に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これにより、パッド20から内側ランド14または外側ランド15に至るループ25が形成される。このときキャピラリ22がどのような移動軌跡を採るかは、それに関する設定値によるが、最上位置24が低い等の理由により、キャピラリ22が内側ランド14または外側ランド15に移動するときにワイヤ18が無理に引っ張られると、ボール圧着部23から上方へつながるループ25の立ち上がり部分に影響が生じる。引っ張り過ぎの場合は、ループ25の立ち上がり部分で断線、そこまで至らずともクラックが入った状態となってしまう。これを防ぐため、キャピラリ22の最初の上昇位置26はある程度高くしなければならず、これにより第1の曲げ癖までの距離が長くなり、ループ25を低くすることができなかった。
【0010】
ここで説明している半導体装置12は、リードフレーム11をベースとしたLGA(Land Grid Array)タイプのものであり、高密度実装に対応するためランド(端子)を外周のみならず、その内側にも設けて2列周状配置とし、単位面積当りのランド数を増やしたものである。
【0011】
ここでは、チップ側にファーストボンド、リードフレーム側にセカンドボンドを行う正ボンド方式で形成されるループについて説明を行ったが、これとは別に、チップ側にバンプ形成後、リードフレーム側にファーストボンド、ループ形成動作をしてバンプ上にセカンドボンドを行う逆ボンドと呼ばれる方式がある。この逆ボンド方式ではチップ側でのループの垂直方向の立ち上がりがないためループは低くできるものの工法の安定性に課題があり、このため近年では正ボンド方式でありながらループを低くする方式が検討されていて、その一例が特許文献1に開示されている。その内容について簡単に説明すると、チップのパッドにボール圧着部を形成後、キャピラリは一旦上昇、微少動作をした後、ボール圧着部の上部を潰すためにボール圧着部上へ下降、その後、ループ形成動作をしてリードフレーム側にワイヤを押し付けて接合を行うというものである。
【特許文献1】特開2004−172477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の半導体装置での正ボンドループではワイヤが引っ張られたときに断線したり、クラックが入ったりすることがないようにパッド直上部のループの立ち上がりを一定以上の高さとする必要があるため、半導体装置の薄型化を図れないという第1の重要な問題点があった。
【0013】
また、逆ボンド方式について言えば、ワイヤの引きちぎりが、バンプ形成後とバンプ上へのワイヤ接続後の2回行われ、これによりパッドとバンプの界面に剥がす力をかけるため、接合力が弱いとバンプを剥がしてしまうという問題があった。1回目の引きちぎりであるバンプ形成後の引きちぎりでは、バンプに直接つながる部分を引きちぎるため、形状変化の影響は少なく、発生する力の大きさもその変化量も比較的小さくてすむが、2回目の引きちぎりであるバンプ上へのワイヤ接続後の引きちぎりでは、バンプに接続したワイヤを引きちぎるため、バンプ形状に加え、ワイヤの接続位置やつぶれ方の変化の影響が加わるため、発生する力の変化も大きくなってバンプを剥がしやすい。
【0014】
また、正ボンド方式でありながらループを低くする方式について言えば、ワイヤが急激に曲げられたり、潰されたりすることで、ワイヤにダメージが入る可能性があるという問題、ワイヤを繰り出したと同じボール圧着部へキャピラリが下降するため、繰り出した部分の形状やボール圧着部への下降位置が限られて、形状についての自由度が少なく、キャピラリがボール圧着部へ下降して行われる接合の強度が必ずしも十分ではないという問題があった。
【0015】
また、従来の半導体装置での低ループを実現する方式では、ループの高さがボール圧着部の高さで決まってしまい、高さの調整ができず、隣接ワイヤやチップエッジと接触する危険が生じるという第2の重要な問題点があった。
【0016】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであり、パッド上に形成したバンプにワイヤループの途中部分を接続することで、安定した接続を行いながらループを低くして半導体装置の薄型化を図ることを第1の目的とし、また、ワイヤループの途中部分を接続するバンプを複数段とすることで、ループ高さをバンプの段数に応じて調整可能として、ワイヤ間の接触やワイヤとチップエッジとの接触を防止することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記第1の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成されるバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中でバンプに接続されている構成としたものである。
【0018】
これにより、パッド上のループ高さをバンプに接する高さにすることができ、ループの低い薄型の半導体装置を提供することができる。
【0019】
また、前記第1の目的を達成するために本発明に係る半導体装置の製造方法は、外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分をバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続するようにしたものである。
【0020】
これにより、パッド上のループ高さをバンプに接する高さとすることができる。
【0021】
次に、前記第2の目的を達成するために本発明に係る半導体装置は、外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成される2段以上に積み重ねたバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中で2段以上に積み重ねたバンプに接続されている構成としたものである。
【0022】
これにより、パッド上のループ高さがバンプの段数に応じた高さにでき、複数のループ高さ設定が可能でワイヤ間の接触防止やワイヤとチップエッジとの接触防止が図れる半導体装置を提供することができる。
【0023】
また、前記第2の目的を達成するために本発明に係る半導体装置の製造方法は、外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成し、さらにそのバンプに重なるようバンプを1回以上形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分を最上部のバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続するようにしたものである。
【0024】
これにより、パッド上のループ高さがバンプの段数に応じた高さとなる複数のループ高さ設定が可能で、ワイヤ間の接触防止やワイヤとチップエッジとの接触防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、パッド上のループ高さをバンプに接する高さにできるのでループを低くすることができ、半導体装置の薄型化を図ることができる。また、チップの中心付近に設けたパッドに形成したボール圧着部から、チップの外周側に設けたパッドに形成したバンプを経由してリードフレーム側へつなぐようにすれば、チップの中央にパッドを設けても、低ループでありながらチップエッジと接触することなく接続ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明における各実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態は本発明の前記第1の目的に対応するものであり、図1は本発明半導体装置の実施の形態1における構成を示す断面図、図2は図1に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図、図3は図1に示す半導体装置のバンプ形状についての説明図、図4は図1に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図、図5は図1に示す半導体装置のチップの中心に近いパッドからワイヤを引き出す場合の説明図である。
【0028】
図1において、30は半導体装置全体を示し、32はこの半導体装置30に搭載されたチップである。33はこの半導体装置30のベース部であるリードフレーム全体を示し、このリードフレーム33は外部端子として露出する内側ランド34、外側ランド35、チップ32を載せるためのダイパッド36等で構成されている。ダイパッド36は中央部が上方にプレスされてチップ32を載せる支持部となっている。37はチップ32をダイパッド36の支持部に固着させるためのダイボンド剤、38はチップ32と内側ランド34または外側ランド35とを接続するワイヤ、39は内部保護のために半導体装置30を全体的に覆う封止樹脂である。
【0029】
また、図2においてチップ32の上面には、長方形のパッド40が設けられており、このパッド40のうちチップ32の外周に近い側にはバンプ41が形成され、チップ32の中心に近い側にはイニシャルボールが潰されてボール圧着部42が形成されており、ボール圧着部42から出たワイヤ38がバンプ41上を経由している。ワイヤ38によるチップ32と内側ランド34または外側ランド35との接続においては、ファーストボンド側をチップ32のパッド40、セカンドボンド側を内側ランド34または外側ランド35としている。なお、背景技術においては、パッドを二つの領域に分け、一方を針を押し当てる領域、他方をワイヤを接続する領域として使用すると説明したが、このように同一パッドにバンプとボール圧着部を形成する場合は長方形の中央をねらって針を押し当てるのが望ましい。それにより、痕跡の影響がバンプとボール圧着部の両方に同程度に及ぶか、あるいは大きさの関係によってはどちらへも及ばずに済むためである。
【0030】
また、43はチップ32の中心付近に設けられた内側パッドであり、44はチップ32の外周側に設けられた外側パッドである。外側パッド44にはバンプ41が形成され、内側パッド43にはボール圧着部42が形成されて、ボール圧着部42から出たワイヤ38がバンプ41上に接続されている。この箇所では、バンプ41とボール圧着部42を同一パッドに設けるのではなく、違うパッドに設けているのが他と異なる。
【0031】
次に、この半導体装置の製造方法について説明する。製造工程としてはダイボンド工程、ワイヤボンド工程、封止工程、個片化工程がある。まず、図1および図2に示すように、エッチングやプレスの加工により2列周状となった内側ランド34、外側ランド35や面高さが部分的に異なるダイパッド36が形成されたリードフレーム33を作製する。このリードフレーム33に対し、ダイボンド工程では、まずダイパッド36の支持部にダイボンド剤37を塗り、そこにダイシングされてテープに貼り付いた状態のチップ32をピックアップして載置した後、加熱して固着させる。ワイヤボンド工程では金属のワイヤ38を使用し、熱と超音波の作用により、パッド40と内側ランド34または外側ランド35とを接続している。
【0032】
このワイヤボンド工程については、図3乃至図5を用いて詳細に説明する。これら各図にはワイヤボンドの工程で用いるキャピラリ45とその動作経路も描いている。
【0033】
まず、図3を用いてバンプ41の形成について説明する。キャピラリ45を下降させることでワイヤ38の先端に形成したイニシャルボールをパッド40へ圧着し、次にキャピラリ45に上昇と斜め下方への微少動作をさせることで上面形状を整えた後、キャピラリ45を上昇させるが、上昇の途中からはキャピラリ45側でワイヤ38をつかむことで、ワイヤ38を引きちぎり、バンプ41を形成する。引きちぎったワイヤ38に対しては放電により先端にイニシャルボールを形成する。
【0034】
次に、図4を用いてパッドと内側ランドとの接続について説明する。キャピラリ45をバンプ41の隣でチップ32の中心に近い側に下降させることでワイヤ38の先端に形成したイニシャルボールを潰してボール圧着部42を形成する。次にキャピラリ45はワイヤ38を繰り出しながら上昇し、その位置からバンプ41に向けて円弧状に動いてバンプ41上に一旦下降、ワイヤ38の下面をバンプ41の上面に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これによりチップ32側でのループ高さは、バンプ41に向かうワイヤ38の曲げ高さ(図4のH1)とすることができる。なお、図4ではバンプ41のつば高さとボール圧着部42のつば高さを同じに描いているが、イニシャルボールを大きくする等により、バンプ41の方を高くすることもできるため、ループ高さがワイヤ38の曲げ高さではなく、バンプ41にワイヤ38の径を加えた高さ(図4のH2)となることもある。次に、キャピラリ45はワイヤ38を繰り出しながら上昇し、その高さのままでワイヤ38の接続方向とは逆の方向へ移動する。これにより、キャピラリ内外のワイヤ38に角度差ができるため、ワイヤ38に曲げ癖が付く。
【0035】
次に、キャピラリ45はワイヤ38を繰り出しながら上昇し、ループ形成に必要な分のワイヤ38の繰り出しを終了した最上位置から、ワイヤ38の他端の接続先である内側ランド34へ向けて円弧状の動作を行った後、ワイヤ38の下部を内側ランド34に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これにより、パッド40から内側ランド34に至るループ46が形成される。次にキャピラリ45は上昇し、上昇の途中からはキャピラリ45側でワイヤ38をつかむことで、ワイヤ38を引きちぎり、その先端にイニシャルボールを形成して1サイクル分の動作が終了する。
【0036】
このような、ワイヤ38の途中部分をバンプ41に接続することを少なくとも1本のワイヤ38について行う。ここでは、リードフレーム33側の接続先を内側ランド34としたが、外側ランド35としても、ワイヤ38が長くなるだけで同様である。
【0037】
次に図5を用いてチップの中心付近に設けたパッドからワイヤを引き出す場合について説明する。内側パッド43と外側パッド44とが距離をおいて存在する場合は、ボール圧着部42を形成した後のキャピラリ45の上昇位置が高くなり、バンプ41に向けての円弧状動作の径が大きくなることが異なるものの、それ以外は同じである。このように、パッドをチップ32の中心付近に設けた場合でも、外周側に設けたバンプ41を中継することで、低いループで内側ランド34または外側ランド35までを結ぶことができる。また、パッドをチップ32の中心付近に設けることで、従来のループであれば危険が生じるワイヤ38とチップエッジ47との接触についても、バンプ41を中継しているため発生することはない。
【0038】
封止工程では、リードフレーム33を片側が凹形状になった金型ではさみ、凹形状の部分に加熱、溶融した封止樹脂39を流し込み硬化させる。個片化工程では、パッケージダイシングにより半導体装置30をリードフレーム33全体から切り離すことで、個片にして取り出す。
【0039】
以上のように、本実施の形態によれは、パッド40上に形成したバンプ41にループ46の途中部分を接続することで、チップ32側のループ高さをバンプ41に向かうワイヤ38の曲げ高さ、あるいはバンプ41にワイヤ38の径を加えた高さとすることができ、この高さは従来に比べて低いため半導体装置の薄型化が図れる。
【0040】
なお、本実施の形態によれば、パッケージをリードフレームベースのLGAとしたが、チップとベース間の接続をワイヤで行うものなら別のパッケージとしてもよく、また、パッケージ内のチップ数を1としたが、2以上の複数として積層したり並置してもよい。また、チップのパッドとリードフレーム側のランドとの接続関係や、バンプを形成してその上にワイヤループの途中部分を接続する箇所や数は、例示したものに限らず種々変形可能である。また、バンプ形成時に台座上部に所定の形状を形成するためのキャピラリの動作のさせ方、引きちぎるときのキャピラリの動作のさせ方は種々変更可能であり、さらに言えば、バンプはどのような形成手法によるもの、どのような形状のものでもよい。また、パッドは長方形としたが、バンプとボール圧着部の形成が行われるとすれば、正方形や円といった形状でもよいし、楕円や円を2個つないだ形状といったようにどのような形状でもよく、バンプとボール圧着部の形成箇所が分離したものでもよい。
【0041】
本実施の形態における発明の要旨は、問題を生じることなく低ループ化を図るためにボール圧着部から出たループの途中の一部をバンプに接続する点にその骨子がある。
【0042】
(実施の形態2)
本実施の形態は本発明の前記第2の目的に対応するものであり、前記実施の形態1に対してバンプを複数段としている点に特徴があるのでこれに関する説明を重点的に行うものとする。
【0043】
図6は本発明半導体装置の実施の形態2における構成を示す断面図、図7は図6に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図、図8は図6に示す半導体装置の1段目のバンプ形成についての説明図、図9は図6に示す半導体装置の2段目のバンプ形成についての説明図、図10は図6に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図、図11は図6に示す半導体装置の下側チップのワイヤを考慮する必要のない場合のパッドからランドへの接続についての説明図、図12は図6に示す半導体装置においてバンプが1段でその高さを高くする場合の説明図である。
【0044】
図6において、50は半導体装置全体を示し、52はこの半導体装置50に搭載された上側チップ、53は下側チップである。54は、この半導体装置50のベース部であるリードフレーム全体を示し、このリードフレーム54は外部端子として露出する内側ランド55、外側ランド56、チップを載せるためのダイパッド57等で構成されている。58は下側チップ53をダイパッド57の支持部に固着させるためのダイボンド剤である。また、59は上側チップ52を下側チップ53に固着させるためのダイボンドテープである。60は上側チップ52または下側チップ53と内側ランド55または外側ランド56とを接続するワイヤである。61は、内部保護のために半導体装置50を全体的に覆う封止樹脂である。
【0045】
また、図7において、上側チップ52、下側チップ53の上面にはそれぞれ長方形のパッド62,63が設けられている。上側チップ52の一部のパッド62については、外周に近い側に複数段からなるバンプ64が形成され、中心に近い側にはイニシャルボールが潰されてボール圧着部65が形成されており、ボール圧着部65から出たワイヤ60がバンプ64上を経由している。ワイヤ60による上側チップ52と内側ランド55または外側ランド56との接続においては、ファーストボンド側を上側チップ52のパッド62、セカンドボンド側を内側ランド55または外側ランド56としている。
【0046】
次に、この半導体装置の製造方法について述べる。製造工程としては前記実施の形態1と同様、ダイボンド工程、ワイヤボンド工程、封止工程、個片化工程がある。まず、図6および図7に示すように、エッチングやプレスの加工により2列周状となった内側ランド55、外側ランド56やダイパッド57が形成されたリードフレーム54を作製する。このリードフレーム54に対し、ダイボンド工程では、まずダイパッド57の支持部にダイボンド剤58を塗り、そこにダイシングされてテープに貼り付いた状態の下側チップ53をピックアップして載置した後、加熱し固着させる。その後、基材と接着剤の2層構造のダイシングテープに貼り付いた状態の上側チップ52をピックアップして、下側チップ53の上に載置した後、加熱して固着させる。このピックアップ時に上側チップ52の裏面側に付いてくるダイシングテープの接着剤(ダイボンドテープ59)の作用により、上下チップ間の結合が行われる。ワイヤボンド工程では、金属のワイヤ60を使用し、熱と超音波の作用により、パッド62,63と内側ランド55または外側ランド56とを接続している。
【0047】
このワイヤボンド工程については図8乃至図10を用いて詳細に説明する。まず、図8を用いて1段目のバンプ形成について説明するに、このとき既に下側チップ53には正ボンド方式でワイヤ60が接続されているとする。キャピラリ66を下降させることでワイヤ60の先端に形成したイニシャルボールを上側チップ52のパッド62へ圧着し、次にキャピラリ66を上昇させるが、上昇の途中からはキャピラリ66側でワイヤ60をつかむことで、ワイヤ60を引きちぎり、対称的な形状の1段目のバンプ67を形成する。ここでは、単にワイヤ60を引きちぎっただけで、1段目のバンプ67が中央で上方にワイヤ60が突出した形状となっているが、この形状でもこの上に別のバンプを積むことに問題は生じない。引きちぎったワイヤ60に対しては放電により先端にイニシャルボールを形成する。
【0048】
次に、図9を用いて2段目のバンプ形成について説明する。キャピラリ66を1段目のバンプ67へ下降させることで、イニシャルボールを1段目のバンプ67上へ圧着し、次にキャピラリ66に上昇と斜め下方への微少動作させることで上面形状を整えた後、キャピラリ66を上昇させてワイヤ60を引きちぎり、2段に形成されたバンプ64を形成する。引きちぎったワイヤ60に対しては、放電により先端にイニシャルボールを形成する。
【0049】
次に、図10を用いてパッドからランドへの接続について説明する。キャピラリ66を2段バンプ64の隣で上側チップ52の中心に近い側に下降させることでワイヤ60の先端に形成したイニシャルボールを潰してボール圧着部65を形成する。次にキャピラリ66はワイヤ60を繰り出しながら上昇し、その位置から2段バンプ64に向けて円弧状に動作して2段バンプ64上に一旦下降、ワイヤ60の下面を2段バンプ64上面に押し付け、熱と超音波の作用で接合を行う。これにより、チップエッジ68でのループ高さを2段バンプ64にワイヤ60の径を加えた高さとすることができる。
【0050】
次に、キャピラリ66はワイヤ60を繰り出しながら上昇し、その高さのままでワイヤ60の接続方向とは逆の方向へ移動する。これにより、キャピラリ内外のワイヤ60に角度差ができるため、ワイヤ60に曲げ癖が付く。次に、キャピラリ66はワイヤ60を繰り出しながら上昇し、ループ形成に必要な分のワイヤ60の繰り出しを終了した最上位置からワイヤ60の他端の接続先であるランドへ向けて円弧状の動作を行った後、ワイヤ60とランドとの接合を行う。このように、パッド62上に形成した2段バンプ64にループの途中部分を接続することで低いループ高さを実現しながらも、その高さをバンプの段数に応じて調整でき、下側チップ53に接続したワイヤ60との間隔の確保が図れる。
【0051】
ここで、図11を用いて下側チップ53のワイヤを考慮する必要がない場合についても説明を行う。この場合は2段バンプ64と内側ランド55または外側ランド56との間をより少ないワイヤ量で結ぶことができ、封止でのワイヤ位置の変化を少なくできる。しかし、このときのループ70の傾斜度合によっては、チップエッジ68,69との隙間(図11のC1やC2)が小さくなり、接触の危険が生じるが、複数段バンプ64にループの途中部分を接続することにより、ワイヤ60とチップエッジ68,69との接触防止を図ることができる。このようなワイヤ60の途中部分を複数段バンプ64に接続する動作を少なくとも1本のワイヤ60について行う。
【0052】
ここでループ高さの調整を、1段のバンプの高さを変化させて行う場合と複数段のバンプを積み上げて行う場合を比較するため、図12を用いてバンプが1段でその高さを高くする場合について説明する。バンプの径は、パッドに入る大きさであるとしても、イニシャルボールを大きく、また潰し方を弱くすることで、背の高いバンプ71を形成できる。このとき、バンプ71の側面は、パッド62の面になだらかに接する曲面となるが、曲面半径(図12のR)が大きくなることで、接触面積が小さくなり十分な接合強度を得にくくなる。また接合時にキャピラリ66と接触するバンプ71の上面と接合が行なわれるパッド62の面との距離が遠いことで超音波が有効に作用しなくなり、これも十分な接合強度を得にくくなることにつながる。これに対して複数段のバンプを積み上げて行う場合は、パッド上への1段目のバンプ形成ではバンプの側面径は小さく、またバンプ上面とパッド面との距離を近くできるため、バンプとパッド間で十分な接合強度を得ることができる。また、2段目以降のバンプの形成では、バンプ間は同種類の金属同士の接合となるため容易に十分な接合強度を容易に得ることができる。このような違いがあるため、ループ高さの調整は、1段のバンプの高さを変化させて行うのではなく、複数段のバンプで段数を変化させて行うのが望ましい。
【0053】
封止工程では、リードフレーム54を片側が凹形状になった金型ではさみ、凹形状の部分に加熱、溶融した封止樹脂61を流し込み硬化させる。個片化工程では、パッケージダイシングにより半導体装置50をリードフレーム54の全体から切り離すことで、個片にして取り出す。
【0054】
以上のように、本実施の形態によれば、パッド62上に形成した複数段のバンプ64にループの途中部分を接続することで、低いループ高さを実現しながら、その高さを調整できるので、上側チップ52のループ高さを下側チップ53に接続しているワイヤ60との間隔をとるよう調整できるため、両者のショートを防止できる。また、ループの傾斜度合いが大きいときでも、チップエッジ68,69との隙間が小さくなることはなく、ワイヤ60とチップエッジ68,69との接触を防止できる。また、同一チップに接続しているワイヤ同士でも、隣接間で高さを変えれば、ループの途中で平面的には近づけるあるいは交差させるといった3次元配置が可能となる。
【0055】
なお、本実施の形態では、パッケージをリードフレームベースのLGAとしたが、チップとベース間の接続をワイヤで行うものなら別のパッケージとしてもよい。また、チップの積層数は2としたが、単数としてもよいし、3以上の複数としてもよい。また、チップのパッドとリードフレーム側のランドとの接続方法は例示したものに限らず種々変形が可能である。また、バンプを2段に形成するとしたが、3段以上の複数としてもよく、また、バンプの形状を1段目を対称的、上段を非対称的としたが、上下で形状を入れ替えてもよいし、上下ともどちらか一方の形状としてもよく、説明した以外の形状としてもよい。また、バンプの形成方式も限定されるものではない。
【0056】
本実施の形態における発明の要旨は、ループの高さを調節するために、ボール圧着部から出たループの途中の一部を接続するバンプを複数段にする点にその骨子がある。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、パッド上のループ高さを低くして薄型化できるものであり、また、チップの中央にパッドを設けても、低ループでありながら、チップエッジと接触することなく接続できるという効果を奏し、バンプ上にワイヤループの途中を接続した半導体装置およびその製造方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明半導体装置の実施の形態1における構成を示す断面図
【図2】図1に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図
【図3】図1に示す半導体装置のバンプ形状についての説明図
【図4】図1に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図
【図5】図1に示す半導体装置のチップの中心に近いパッドからワイヤを引き出す場合の説明図
【図6】本発明半導体装置の実施の形態2における構成を示す断面図
【図7】図6に示す半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図
【図8】図6に示す半導体装置の1段目のバンプ形成についての説明図
【図9】図6に示す半導体装置の2段目のバンプ形成についての説明図
【図10】図6に示す半導体装置のパッドとランドとの接続に関する説明図
【図11】図6に示す半導体装置の下側チップのワイヤを考慮する必要のない場合のパッドからランドへの接続についての説明図
【図12】図6に示す半導体装置においてバンプが1段でその高さを高くする場合の説明図
【図13】従来の半導体装置のリードフレームの平面図
【図14】従来の半導体装置の断面図
【図15】従来の半導体装置が樹脂封止される前の状態を示す平面図
【図16】図15に示す半導体装置のループ形成動作途中の状態を示す斜視図
【図17】図15に示す半導体装置のワイヤのリードフレーム側の接合が終了した直後の状態を示す説明図
【符号の説明】
【0059】
30 半導体装置
32 チップ
33 リードフレーム
38 ワイヤ
40 パッド
41 バンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成されるバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中でバンプに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分をバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成される2段以上に積み重ねたバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中で2段以上に積み重ねたバンプに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成すると共に、そのバンプに重なるようバンプを1回以上形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分を最上部のバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項1】
外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成されるバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中でバンプに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分をバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
外部に露出する端子部をもつベース部と、前記ベース部に固着されるチップと、前記チップのパッド上に形成される2段以上に積み重ねたバンプと、前記ベース部と前記チップのパッドとの間を接続するワイヤと、全体を覆う封止樹脂とを備えた半導体装置であって、ワイヤの1本以上がパッドからベース部に至る途中で2段以上に積み重ねたバンプに接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
外部に露出する端子部をもつベース部と前記ベース部に固着されたチップとをワイヤにより接続する半導体装置の製造方法であって、チップのパッド上にバンプを形成すると共に、そのバンプに重なるようバンプを1回以上形成した後、ワイヤの一端をチップのパッド上に接続し、ワイヤの途中部分を最上部のバンプに接続して、さらにそのワイヤの他端をベース部へ接続することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−332491(P2006−332491A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156831(P2005−156831)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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