説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】外部基板との接合による、基板に形成された素子における不具合の発生を抑制する手段を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、基板111と応力形成膜140とを備える。基板111の第1面の一端部分および他端部分には突起部130が形成される。基板111には、半導体素子112が形成される。応力形成膜140は、基板111の第1面の反対側の第2面に接するように形成される。応力形成膜140の形状は、外部基板200と突起部130との接合により生じる第1応力P10の少なくとも一部を相殺する第2応力P20を生じさせる形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部基板と接合される半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの接合において、バンプを利用したフリップチップ接合が主流になりつつある。
【0003】
特許文献1には、2段形状のバンプを利用することにより、フリップチップ接合時における半導体デバイスの接合ダメージを低減する技術(以下、従来技術A)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−229451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術Aでは、以下の問題点がある。
【0006】
図5は、従来技術Aの問題点を説明するための図である。
【0007】
図5(a)は、従来技術Aを利用した半導体装置1000の構成を示す図である。なお、図5(a)は、2段形状のバンプの形状を簡略化して、バンプ532として示している。
【0008】
図5(a)に示されるように、基板511には、アクティブエリア512が形成される。アクティブエリア512には電子回路が構成される。アクティブエリア512には、例えば、トランジスタ等の複数の半導体素子が形成される。当該半導体素子は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0009】
基板511の一端部分および他端部分には、電極パッド531が形成される。アクティブエリア512に形成される半導体素子は、図示されない配線により、電極パッド531と電気的に接続される。
【0010】
基板511の上面のうち、電極パッド531が形成されている以外の部分には、保護膜520が形成される。すなわち、電極パッド531は、バンプ532が形成される前は、外部に露出される。各電極パッド531上には、バンプ532が形成される。各電極パッド531と、バンプ532とは電気的に接続される。
【0011】
図5(b)は、半導体装置1000と外部基板1200とを接合した状態を示す図である。
【0012】
図5(b)において、外部基板1200は、例えば、配線基板である。外部基板1200において、半導体装置1000と電気的に接合される部分には、外部電極1210が形成される。この場合、外部電極1210と、バンプ532とが圧着されることにより、外部電極1210と、バンプ532とが電気的に接合される。すなわち、外部基板1200と、半導体装置1000とが接合される。
【0013】
なお、半導体装置1000の保護膜520と、外部基板1200の底面のうち外部電極1210が形成されている以外の部分との間の空間は、接合樹脂550により充填される。接合樹脂550の主な材料は、例えば、アンダーフィル剤である。
【0014】
図5(c)は、半導体装置1000と外部基板1200との接合によって、接合樹脂550に生じる応力を示す図である。
【0015】
この場合、接合樹脂550には、当該接合樹脂550から外部基板1200に向かう方向へ応力P30が発生する。
【0016】
応力P30は、端部応力P31と、中心部応力P32とを含む。端部応力P31は、バンプ532の近傍部分に加わる応力である。すなわち、端部応力P31は、基板511のうち、バンプ532の近傍部分に加わる応力である。中心部応力P32は、基板511のうち、2つのバンプ532の中心部分に加わる応力である。
【0017】
端部応力P31は、中心部応力P32より十分に大きい。そのため、アクティブエリア512において端部応力P31が加わる部分の近傍に形成される半導体素子には、アクティブエリア512において中心部応力P32が加わる部分の近傍に形成される半導体素子より大きな応力がかかる。
【0018】
すなわち、半導体装置1000と外部基板1200との接合により、基板511には、位置によって異なる応力が加わる。すなわち、基板511のアクティブエリア512に形成される複数の半導体素子の各々には、異なる応力が加わる。
【0019】
その結果、基板511に形成される一部の半導体素子に不具合が生じやすくなるという問題が発生する。当該不具合は、例えば、基板511が破損し、それにより、半導体素子の一部が破損することにより、半導体素子の電気的特性が、設計値から大きくずれるという不具合である。
【0020】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、外部基板との接合による、基板に形成された素子における不具合の発生を抑制することを可能とした半導体装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の課題を解決するために、この発明のある局面に従う半導体装置は、外部基板と接合される。半導体装置は、平面状の基板と、前記基板の少なくとも一部に形成される応力形成膜とを備え、前記基板は、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面とを有し、前記基板の第1面の一端部分および他端部分には突起部が形成され、前記基板には、半導体素子が形成され、前記応力形成膜は、前記基板の前記第2面に接するように形成され、前記応力形成膜の形状は、前記外部基板と前記突起部との接合により生じる第1応力の少なくとも一部を相殺する第2応力を生じさせる形状である。
【0022】
すなわち、半導体装置は、基板と、応力形成膜とを備える。基板の第1面の一端部分および他端部分には突起部が形成される。前記基板には、半導体素子が形成される。前記応力形成膜は、前記基板の前記第2面に接するように形成される。前記応力形成膜の形状は、前記外部基板と前記突起部との接合により生じる第1応力の少なくとも一部を相殺する第2応力を生じさせる形状である。
【0023】
したがって、半導体装置と外部基板との接合により基板に加わる応力を、基板に応力形成膜が形成されていない場合より小さくできる。その結果、半導体装置と外部基板との接合による、基板に形成された半導体素子における不具合の発生を抑制することができる。
【0024】
また、好ましくは、前記突起部は、前記半導体素子と電気的に接続される電極パッドと、前記電極パッドと電気的に接続されるバンプとを含む。
【0025】
また、好ましくは、前記応力形成膜の形状は、閉ループ形状であり、前記応力形成膜は、前記基板の前記第2面の周縁部に形成される。
【0026】
また、好ましくは、前記応力形成膜の形状は、閉ループ形状であり、前記応力形成膜の形状は、8角形である。
【0027】
また、好ましくは、前記応力形成膜の形状は、楕円である。
【0028】
また、好ましくは、前記応力形成膜は、大きさの異なる複数の閉ループ形状の平面サブ膜から構成される。
【0029】
また、好ましくは、前記基板の側面と、前記応力形成膜の側面とは、同一平面上にある。
【0030】
また、好ましくは、前記応力形成膜の一部または全ては、樹脂系材料により構成される。
【0031】
また、好ましくは、前記応力形成膜の一部または全ては、酸化膜または窒化膜により構成される。
【0032】
また、好ましくは、前記半導体装置と前記外部基板との接合は、フリップチップ接合である。
【0033】
この発明の他の局面に従う半導体装置の製造方法は、半導体素子が形成された平面状の基板を備え、外部基板と接合される半導体装置の製造方法である。前記基板は、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面とを有し、前記半導体装置の製造方法は、前記基板の第1面の一端部分および他端部分に突起部を形成する工程と、前記基板の前記第2面に接するように応力形成膜を形成する工程と、前記応力形成膜の形状を、前記外部基板と前記突起部との接合により生じる第1応力の少なくとも一部を相殺する第2応力を生じさせる形状とする工程とを含む。
【0034】
また、好ましくは、前記半導体装置の製造方法は、さらに、前記突起部を形成する工程と前記応力形成膜を形成する工程との間に、前記基板の厚さが50〜300μmになるように、前記基板を削る工程を含む。
【0035】
また、好ましくは、前記半導体装置と前記外部基板との接合は、フリップチップ接合である。
【発明の効果】
【0036】
本発明により、半導体装置と外部基板との接合による、基板に形成された半導体素子における不具合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の実施の形態における半導体装置を説明するための図である。
【図2】応力形成膜の形状を説明するための図である。
【図3】半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図4】半導体装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】従来技術Aの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。また、図面は説明のために一部を強調するなどデフォルメすることがあり、必ずしも図面に現れる比率が正しいとは限らない。
【0039】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における半導体装置100を説明するための図である。
【0040】
図1(a)は、第1の実施の形態における半導体装置100の断面図である。
【0041】
図1(a)に示されるように、半導体装置100は、基板111と、保護膜120と、電極パッド131と、バンプ132と、応力形成膜140とを含む。
【0042】
基板111の形状は、平面状である。基板111を構成する主な材料は、Si(シリコン)、GaAs等である。基板111の厚みは、例えば、50〜300μmである。
【0043】
基板111は、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面とを有する。第1面は、電極パッド131等が形成される面である。第2面は、応力形成膜140が形成される面である。図1(a)において、第1面は上面である。また、第2面は、下面(底面)である。
【0044】
なお、半導体装置100の向きが上下方向に反転した場合、第1面は下面であり、第2面は上面である。
【0045】
基板111内には、水平方向に並ぶ複数の半導体素子112が形成される。なお、半導体素子112は、基板111上に形成されてもよい。すなわち、基板111には、半導体素子112が形成される。
【0046】
なお、基板111に形成される半導体素子112は、1つであってもよい。
【0047】
半導体素子112は、例えば、MOSFETである。なお、半導体素子112は、MOSFETに限定されることなく、他の半導体素子であってもよい。
【0048】
基板111の第1面の一端部分および他端部分には、電極パッド131が形成される。電極パッド131は、半導体素子112と外部基板との電気的接合をとるための電極パッドである。電極パッド131の材料は、例えば、Alである。
【0049】
各半導体素子112は、図示されない配線により、電極パッド131と電気的に接続される。
【0050】
基板111の第1面のうち、電極パッド131が形成されている以外の部分には、表面保護膜としての保護膜120が形成される。また、電極パッド131の一部にも、保護膜120が形成される。保護膜120の主な材料は、例えば、SiNである。
【0051】
なお、電極パッド131上の一部には、保護膜120が形成されなくてもよい。
【0052】
すなわち、電極パッド131の少なくとも一部は、バンプ132が形成される前は、外部に露出される。
【0053】
保護膜120が形成された後、各電極パッド131上には、バンプ132が形成される。各電極パッド131と、バンプ132とは電気的に接続される。
【0054】
バンプ132は、例えば、パッケージ基板等の外部基板と電気的接合を取るためのものである。バンプ132の主な材料は、Au、Cuなどである。なお、バンプ132は、通常、めっき方式などにより形成される。
【0055】
電極パッド131とバンプ132とから、突起部130が形成される。すなわち、突起部130は、半導体素子112と電気的に接続される電極パッド131と、電極パッド131と電気的に接続されるバンプ132とを含む。
【0056】
すなわち、基板111の第1面の一端部分および他端部分には、電極パッド131とバンプ132とから構成される突起部130が形成される。
【0057】
本実施の形態の特徴として、基板111の第2面に接するように、応力形成膜140が形成される。なお、応力形成膜140の側面と、基板111の側面とが同一平面上に存在するように、応力形成膜140は形成される。すなわち、基板111の側面と、応力形成膜の側面とは、同一平面上にある。
【0058】
図2は、応力形成膜140の形状を説明するための図である。図2は、基板111の第2面(底面)から応力形成膜140を視た場合の応力形成膜140の形状を示す図である。
【0059】
図2(a)は、一例としての応力形成膜140の形状を示す平面図である。なお、図2(a)には、説明のために、応力形成膜140に含まれない基板111も示される。後述する図2(b)、図2(c)、図2(d)においても、説明のために、応力形成膜140に含まれない基板111も示される。
【0060】
図2(a)に示されるように、応力形成膜140の形状は、閉ループ形状である。また、応力形成膜140は、基板の第2面の周縁部に形成される。
【0061】
応力形成膜140の主な材料は、樹脂系材料である。すなわち、応力形成膜140の一部または全ては、樹脂系材料により構成される。当該樹脂系材料は、一例として、ポリイミドなどである。応力形成膜140の材料として、樹脂系材料が用いられる場合、樹脂塗布により応力形成膜140が形成される。
【0062】
なお、応力形成膜140の主な材料は、樹脂系材料に限定されない。応力形成膜140の主な材料は、例えば、酸化膜または窒化膜(SiN膜)であってもよい。すなわち、応力形成膜140の一部または全ては、酸化膜または窒化膜により構成される。この場合、応力形成膜140は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。
【0063】
半導体装置100に応力形成膜140が形成されることにより、半導体装置100の内部から基板111の第2面(底面)へ向かう方向へ応力が生じる。
【0064】
図1(b)を参照して、半導体装置100は、外部基板200と電気的に接合される。半導体装置100と外部基板200との接合は、フリップチップ接合である。
【0065】
外部基板200において、半導体装置100と電気的に接合される部分には、外部電極210が形成される。この場合、外部電極210と、バンプ132とが圧着されることにより、外部電極210と、バンプ132とが電気的に接合される。
【0066】
すなわち、半導体装置100の突起部130と、外部基板200の外部電極210とは、電気的に接合される。
【0067】
なお、外部電極210は、当該外部電極210の下面が外部に露出するように外部基板200の内部に形成されてもよい。すなわち、この場合、外部基板200は外部電極210を含む。この場合、半導体装置100の突起部130と、外部基板200(外部電極210)とが電気的に接合される。半導体装置100の突起部130と、外部基板200(外部電極210)とが接合されるということは、半導体装置100と、外部基板200とが接合されるということである。
【0068】
外部基板200は、例えば、パッケージ基板である。なお、半導体装置100の保護膜120と、外部基板200の底面のうち外部電極210が形成されている以外の部分との間の空間は、接合樹脂50により充填される。接合樹脂50の主な材料は、例えば、アンダーフィル剤である。
【0069】
図1(c)は、半導体装置100と外部基板200との接合によって各部に生じる応力を示す図である。
【0070】
接合樹脂50には、図5(c)の接合樹脂550と同様に、当該接合樹脂50から外部基板200に向かう方向へ応力P10が発生する。応力P10は、前述した応力P30と同様な力である。すなわち、応力P10は、半導体装置100と外部基板200との接合により、接合樹脂50において生じる応力である。
【0071】
具体的には、応力P10は、外部基板200(外部電極210)と突起部130(半導体装置100)との接合により生じる第1応力である。
【0072】
応力P10は、端部応力P11と、中心部応力P12とを含む。端部応力P11は、突起部130(バンプ132)の近傍部分に加わる応力である。すなわち、端部応力P11は、基板111のうち、突起部130(バンプ132)の近傍部分に加わる応力である。中心部応力P12は、基板111のうち、2つの突起部130(バンプ132)の中心部分に加わる応力である。端部応力P11は、中心部応力P12より十分に大きい。
【0073】
応力P20は、基板111の第2面(底面)に応力形成膜140が形成されることにより、応力形成膜140において発生する応力である。
【0074】
応力P20は、応力P10と反対方向に向かう力である。すなわち、応力P20は、接合樹脂50から基板111の第2面に向かう方向へ発生する応力である。応力P20は、応力P10のほぼ全てを相殺する応力である。なお、応力P20は、応力P10の一部を相殺する応力であってもよい。
【0075】
応力形成膜140の形状は、第1応力(応力P10)のほぼ全てを相殺する応力P20(第2応力)を生じさせる形状である。なお、応力形成膜140の形状は、第1応力(応力P10)の一部を相殺する応力P20(第2応力)を、外部基板200(外部電極210)と突起部130との接合により生じさせる形状であってもよい。
【0076】
応力P20は、端部応力P21と、中心部応力P22とを含む。端部応力P21は、突起部130(バンプ132)の近傍部分に加わる応力である。すなわち、端部応力P21は、基板111のうち、突起部130(バンプ132)の近傍部分に加わる応力である。中心部応力P22は、基板111のうち、2つの突起部130(バンプ132)の中心部分に加わる応力である。端部応力P21は、中心部応力P22より十分に大きい。
【0077】
また、端部応力P21が加わる方向は、端部応力P11が加わる方向と反対方向である。中心部応力P22が加わる方向は、中心部応力P12が加わる方向と反対方向である。端部応力P21は、端部応力P11とほぼ同じ大きさである。また、中心部応力P22は、中心部応力P12とほぼ同じ大きさである。すなわち、応力P20は、応力P10のほぼ全てを相殺する応力である。
【0078】
前述した従来の半導体装置1000は、外部基板1200との接合により、応力P10と同様な応力P30のみが生じていた。そのため、半導体装置1000と外部基板1200との接合により、基板511には、位置によって異なる応力が加わる。すなわち、基板511のアクティブエリア512に形成される複数の半導体素子の各々には、異なる応力が加わる。
【0079】
その結果、基板511に形成される一部の半導体素子に不具合が生じやすくなるという問題が発生する。当該不具合は、例えば、基板511が破損し、それにより、半導体素子の一部が破損することにより、半導体素子の電気的特性が設計値から大きくずれるという不具合である。
【0080】
また、当該不具合は、例えば、アクティブエリア512に形成される複数の半導体素子のうち、基板511の端部付近の半導体素子の電気特性と、基板511の中心部付近の半導体素子の電気特性とが大きく異なるという不具合である。
【0081】
しかし、本実施の形態における半導体装置100では基板111の第2面(底面)に応力形成膜140が形成されている。応力P20は、応力P10のほぼ全てを相殺する応力である。
【0082】
上記の応力形成膜140が形成された半導体装置100により、端部応力P11に対して反対方向に端部応力P21を働かせることが可能となる。また、中心部応力P12に対して反対方向に中心部応力P22を働かせることが可能となる。
【0083】
これにより、応力P10のほぼ全てが、応力P20により相殺される。
【0084】
したがって、半導体装置100と外部基板200との接合により、基板111に応力がほぼ加わらない。すなわち、半導体装置100と外部基板200との接合による、基板111に悪影響のある応力が加わるのを防ぐことができる。このため、半導体装置100と外部基板200との接合によって、基板111が破損するという不具合の発生を抑制することができる。
【0085】
すなわち、半導体装置100と外部基板200とが接合されても、基板111に形成される複数の半導体素子112の各々には、応力がほぼ加わらない。すなわち、半導体装置100と外部基板200との接合によって、基板111に形成される複数の半導体素子112の各々に悪影響のある応力が加わるのを防ぐことができる。
【0086】
そのため、基板111に形成される複数の半導体素子112のうち、基板111の端部付近の半導体素子112の電気特性と、基板111の中心部付近の半導体素子112の電気特性とが大きく異なるという不具合の発生を防ぐことができる。
【0087】
すなわち、半導体装置100と外部基板200との接合による、基板111に形成された素子(半導体素子112)における不具合の発生を抑制することができる。
【0088】
したがって、従来は半導体装置の基板内の半導体素子の電気特性の変動差異が大きくなるという理由により電極パッド下部に設置できなかった半導体素子の配置位置の自由度が向上できる。その結果、半導体チップ(半導体装置)の集積度の向上やそれによるコストダウンも可能となる。
【0089】
応力形成膜140の形状を、図2(a)で示した形状とすることにより、端部応力P21が、端部応力P11に強く相反して働く。
【0090】
なお、応力形成膜140の形状は、図2(a)で示した形状に限定されない。応力形成膜140の形状は、応力P10のほぼ全てを相殺する応力P20を、外部基板200(外部電極210)と突起部130との接合により生じさせる形状であればどのような形状であってもよい。
【0091】
例えば、応力形成膜140の形状は、図2(b)、図2(c)、図2(d)に示される形状であってもよい。
【0092】
図2(b)に示される応力形成膜140は、大きさの異なる平面サブ膜141,142,143から構成される。平面サブ膜141,142,143の各々の形状は、閉ループ形状である。すなわち、応力形成膜140は、大きさの異なる複数の閉ループ形状の平面サブ膜から構成される。このような構成にすることにより、端部応力P21を、より強く働かせることが可能となる。
【0093】
なお、応力形成膜140は、3つの平面サブ膜に限定されることなく、2つまたは4つ以上の平面サブ膜から構成されてもよい。
【0094】
図2(c)に示される応力形成膜140は、大きさの異なる平面サブ膜141A,142Aから構成される。平面サブ膜141A,142Aの各々の形状は、閉ループ形状である。また、平面サブ膜141A,142Aの各々の形状は、8角形である。すなわち、応力形成膜140の形状は、8角形である。
【0095】
平面サブ膜141A,142Aの各々は、例えば、平面サブ膜141のうち基板111の角部に対応する部分がエッジカットされたものである。
【0096】
このような構成とすることで、半導体装置100の基板111のエッジ部分に端部応力P21が集中することを防ぐことができる。すなわち、半導体装置100の基板111のエッジ部分にだけ端部応力P21が強く発生するのを防ぐことができる。
【0097】
なお、応力形成膜140は、2つの平面サブ膜に限定されることなく、3つ以上の平面サブ膜から構成されてもよい。
【0098】
図2(d)に示される応力形成膜140は、大きさの異なる平面サブ膜141B,142Bから構成される。平面サブ膜141B,142Bの各々の形状は、閉ループ形状である。また、平面サブ膜141B,142Bの各々の形状は、楕円である。すなわち、応力形成膜140の形状は、楕円である。
【0099】
平面サブ膜141B,142Bの各々は、例えば、平面サブ膜141のうち基板111の角部に対応する部分がR形状にされたものである。このような構成とすることで、半導体装置100の基板111のエッジ部分に端部応力P21が集中することを防ぐことができる。すなわち、半導体装置100の基板111のエッジ部分にだけ端部応力P21が強く発生するのを防ぐことができる。
【0100】
また、応力形成膜140の形状は、基板111の第2面の周縁部に沿って、ループ形状で形成されていればよく、閉環構造に限定されない。すなわち、応力形成膜140の形状は、応力形成膜が、断続的にループ形状に形成された、開環構造でも良い。例えば、応力形成膜140の形状は、応力形成膜の一部が切断された形状、すなわち、隙間を有する形状であってもよい。
【0101】
(半導体装置の製造方法)
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。
【0102】
図3および図4は、半導体装置100の製造方法を説明するための図である。
【0103】
なお、以下で説明する各工程は周知のプロセス技術を用いて実施できるため、プロセス条件などの詳細な説明は適宜省略する。また、以下で示す材料およびプロセスは1つの典型例であって、本発明の半導体装置100およびその製造方法を限定するものではない。適性が知られている他の材料およびプロセスを代用した場合も本発明に含まれる。
【0104】
図3(a)に示されるように、基板としての半導体ウェハ111Aは、境界線L10により複数の基板111に区分される。
【0105】
まず、各基板111の中に、複数の半導体素子112が形成される。基板111を構成する主な材料は、Si、GaAs等である。半導体素子112は、例えば、MOSFETである。
【0106】
次に、突起部形成工程が行われる。突起部形成工程では、各基板111の第1面の一端部分および他端部分に、電極パッド131が形成される。各半導体素子112は、図示されない配線により、電極パッド131と電気的に接続される。電極パッド131の材料は、例えば、Alである。
【0107】
そして、電極パッド131の上部が外部に露出するように、基板111の第1面のうち、電極パッド131が形成されている以外の部分に、保護膜120が形成される。保護膜120の主な材料は、例えば、SiNである。
【0108】
そして、各電極パッド131上には、バンプ132が形成される。バンプ132の主な材料は、Au、Cuなどである。なお、バンプ132は、通常、めっき方式などにより形成される。これにより、電極パッド131とバンプ132とから構成される突起部130が形成される。
【0109】
すなわち、突起部形成工程は、基板111の第1面の一端部分および他端部分に突起部130を形成する工程である。
【0110】
次に、バックグラインド工程が行われる。バックグラインド工程では、図示されないバックグラインド装置の平面砥石20等により、半導体ウェハ111Aの厚みが、50〜300μm程度になるまで、半導体ウェハ111Aの底面が削られる。すなわち、バックグラインド工程では、各基板111の厚みが、50〜300μm程度になるまで、基板111の底面が削られる。これにより、図3(b)に示されるように、半導体ウェハ111Aの厚みは50〜300μm程度になる。
【0111】
なお、半導体ウェハ111Aに半導体素子が形成される場合、半導体ウェハ111Aを損傷しにくくする為、半導体ウェハ111Aの膜厚を、ある程度厚くしているが、本実施の形態では、半導体ウェハ111Aを削る工程が行われる。
【0112】
すなわち、バックグラインド工程は、基板111の厚さが50〜300μmになるように、基板111を削る工程である。
【0113】
但し、後述の工程で使用される応力形成膜140の素材によっては、半導体ウェハ111Aの膜厚を薄くする必要が無い場合がある。この場合、バックグラインド工程は行われなくても良い。
【0114】
次に、応力形成膜形成工程が行われる。応力形成膜形成工程では、図3(c)に示されるように、基板としての半導体ウェハ111Aの底面に、応力形成膜140Nが形成される。すなわち、各基板111の第2面(底面)に接するように、応力形成膜140Nが形成される。
【0115】
すなわち、応力形成膜形成工程は、基板111の第2面に接するように応力形成膜140Nを形成する工程である。
【0116】
応力形成膜140Nの主な材料は、樹脂系材料である。当該樹脂系材料は、一例として、ポリイミドなどである。応力形成膜140Nの材料として、樹脂系材料が用いられる場合、樹脂塗布により応力形成膜140Nが形成される。
【0117】
なお、応力形成膜140Nの主な材料は、樹脂系材料に限定されない。応力形成膜140Nの主な材料は、例えば、酸化膜または窒化膜(SiN膜)であってもよい。この場合、応力形成膜140Nは、CVD法により形成される。
【0118】
次に、パターニング工程が行われる。パターニング工程では、図3(d)に示されるように、各応力形成膜140Nの下面にフォトレジスト310が塗布される。その後、パターン露光、現像が行われる。この処理により、各応力形成膜140Nがパターニングされ、各応力形成膜140Nの形状が、前述の応力形成膜140の形状となる。
【0119】
すなわち、パターニング工程が行われることにより、各応力形成膜140Nが、図4(a)に示されるように、前述の応力形成膜140になる。前述したように、応力形成膜140の形状は、第1応力(応力P10)のほぼ全てを相殺する応力P20(第2応力)を生じさせる形状である。
【0120】
すなわち、パターニング工程は、応力形成膜140Nの形状を、外部基板200と突起部130との接合により生じる第1応力の少なくとも一部を相殺する第2応力を生じさせる形状とする工程である。
【0121】
次に、必要に応じて半導体ウェハ111Aに対し熱処理を行う。なお、熱処理は行われなくてもよい。
【0122】
次に、ダイシング工程が行われる。ダイシング工程では、半導体ウェハ111Aの境界線L10の部分が、ダイシングブレード21により切断される。これにより、図4(b)に示される半導体装置100が複数個形成される。図4(a)のように、境界線L10上には、半導体ウェハ111Aの下面に応力形成膜140が形成されている。
【0123】
この場合、半導体ウェハ111Aおよび応力形成膜140が、境界線L10に沿って一括で切断される。これにより、基板111の側面と、応力形成膜140の側面とは、同一平面上にある。
【0124】
次に、図4(c)に示されるように、半導体装置100は、外部基板200と電気的に接合される。半導体装置100と外部基板200との接合は、フリップチップ接合である。外部基板200において、半導体装置100と電気的に接合される部分には、外部電極210が形成される。この場合、外部電極210と、バンプ132とが圧着されることにより、外部電極210と、バンプ132とが電気的に接合される。
【0125】
なお、半導体装置100の保護膜120と、外部基板200の底面のうち外部電極210が形成されている以外の部分との間の空間は、接合樹脂50により充填される。
【0126】
このような製法で生成された半導体装置100には、基板111の第2面(底面)に、応力形成膜140が形成されている。そのため、前述したように、応力P10に対し、反対方向に応力P20を発生させることが可能となる。前述したように、応力P20は、応力P10のほぼ全てを相殺する応力である。
【0127】
したがって、半導体装置100と外部基板200とが接合されても、基板111に応力がほぼ加わらない。すなわち、半導体装置100と外部基板200との接合による、基板111に悪影響のある応力が加わるのを防ぐことができる。このため、半導体装置100と外部基板200との接合により、基板111が破損するという不具合の発生を抑制することができる。
【0128】
すなわち、半導体装置100と外部基板200とが接合されても、基板111に形成される複数の半導体素子112の各々には、応力がほぼ加わらない。すなわち、半導体装置100と外部基板200との接合により、基板111に形成される複数の半導体素子112の各々に悪影響のある応力が加わるのを防ぐことができる。
【0129】
そのため、基板111に形成される複数の半導体素子112のうち、基板111の端部付近の半導体素子112の電気特性と、基板111の中心部付近の半導体素子112の電気特性とが大きく異なるという不具合の発生を防ぐことができる。
【0130】
すなわち、半導体装置100と外部基板200との接合による、基板111に形成された素子(半導体素子112)における不具合の発生を抑制することができる。
【0131】
以上、本発明における半導体装置100について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、あるいは異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0132】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、フリップチップ接合等により、外部基板と接合される半導体装置およびその製造方法に関して有用である。
【符号の説明】
【0134】
50 接合樹脂
100 半導体装置
111 基板
111A 半導体ウェハ
112 半導体素子
120 保護膜
131 電極パッド
132 バンプ
140,140N 応力形成膜
141,141A,141B,142,142A,142B,143 平面サブ膜
200 外部基板
210 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部基板と接合される半導体装置であって、
平面状の基板と、
前記基板の少なくとも一部に形成される応力形成膜とを備え、
前記基板は、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面とを有し、
前記基板の第1面の一端部分および他端部分には突起部が形成され、
前記基板には、半導体素子が形成され、
前記応力形成膜は、前記基板の前記第2面に接するように形成され、
前記応力形成膜の形状は、前記外部基板と前記突起部との接合により生じる第1応力の少なくとも一部を相殺する第2応力を生じさせる形状である、
半導体装置。
【請求項2】
前記突起部は、
前記半導体素子と電気的に接続される電極パッドと、
前記電極パッドと電気的に接続されるバンプとを含む、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記応力形成膜の形状は、閉ループ形状であり、
前記応力形成膜は、前記基板の前記第2面の周縁部に形成される、
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記応力形成膜の形状は、閉ループ形状であり、
前記応力形成膜の形状は、8角形である
請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記応力形成膜の形状は、楕円である
請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記応力形成膜は、大きさの異なる複数の閉ループ形状の平面サブ膜から構成される、
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記基板の側面と、前記応力形成膜の側面とは、同一平面上にある、
請求項1〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記応力形成膜の一部または全ては、樹脂系材料により構成される、
請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記応力形成膜の一部または全ては、酸化膜または窒化膜により構成される、
請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体装置と前記外部基板との接合は、フリップチップ接合である、
請求項1〜9のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
半導体素子が形成された平面状の基板を備え、外部基板と接合される半導体装置の製造方法であって、
前記基板は、第1面と、該第1面の反対側の面である第2面とを有し、
前記半導体装置の製造方法は、
前記基板の第1面の一端部分および他端部分に突起部を形成する工程と、
前記基板の前記第2面に接するように応力形成膜を形成する工程と、
前記応力形成膜の形状を、前記外部基板と前記突起部との接合により生じる第1応力の少なくとも一部を相殺する第2応力を生じさせる形状とする工程とを含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体装置の製造方法は、さらに、
前記突起部を形成する工程と前記応力形成膜を形成する工程との間に、前記基板の厚さが50〜300μmになるように、前記基板を削る工程を含む、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記半導体装置と前記外部基板との接合は、フリップチップ接合である、
請求項11または12に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−243880(P2011−243880A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116759(P2010−116759)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】