説明

半導体装置の製造方法

【課題】半導体装置を簡便に製造することが可能で、且つ、生産性に優れた半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体装置の製造方法は、回路面S1上に、複数の突出電極10aを覆う絶縁性樹脂層12を形成する工程と、半導体ウエハ10をダイシングフレーム14及びダイシングテープ16に取り付ける工程と、半導体ウエハ10の回路面S1側から半導体ウエハ10及び絶縁性樹脂層12をダイシングすることで、複数の半導体チップ20に個片化する工程と、ピックアップされた半導体チップ20を位置合わせヘッドによって保持した状態で、半導体チップ20の突出電極10aと基板上の回路電極との位置合わせを行い、仮固定する工程と、接続ヘッドを用いて半導体チップ20と基板とを加熱圧着することで、半導体チップ20の突出電極10aと基板の回路電極とを電気的に接続する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハのダイシング方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化の進展に伴って、半導体装置に対して小型化、薄型化及び電気特性の向上(高周波伝送への対応など)が求められている。これらの半導体装置に対する要求に応じ、ワイヤボンディングで半導体チップを基板に接続する従来の方式から、半導体チップにバンプと呼ばれる導電性の突出電極を形成して、当該突出電極と基板上の回路電極とを接続するフリップチップ接続方式への移行が始まっている。
【0003】
フリップチップ接続方式としては、はんだやスズなどを用いて金属接合させる方法、超音波振動を印加して金属接合させる方法、樹脂の収縮力を利用して機械的接触を保持する方法などが知られている。この中でも、生産性や接続信頼性の観点から、はんだやスズなどを用いて金属接合させる方法が広く用いられている。特にはんだを用いる方法は、高い接続信頼性を示すことから、MPU(Micro Processing Unit)などの実装に適用されている。
【0004】
ところで、フリップチップ接続方式によって半導体チップを基板に搭載した場合、半導体チップと基板との熱膨張係数差に由来する熱応力が接続部分に集中して、接続部分が破壊する虞があるという問題があった。そこで、この熱応力を分散して接続信頼性を高めるために、半導体チップと基板との間に形成される空隙を樹脂で封止充填する必要がある(例えば、下記特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開2004−349561号公報
【特許文献2】特開2000−100862号公報
【特許文献3】特開2003−142529号公報
【特許文献4】特開2001−332520号公報
【特許文献5】特開2005−028734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂を封止充填するための方式としては、一般に、半導体チップと基板とを接続した後、毛細管現象を利用して液状封止樹脂を半導体チップと基板との間隙に注入する方式が採用されている。しかしながら、MPUなどはチップが大型化しているため、液状樹脂を均一に充填することが困難な場合があった。また、液晶ドライバICの実装パッケージであるCOF(Chip On Film)は、回路電極の狭ピッチ化に伴って、半導体チップと基板との間に形成される空隙が狭くなりつつあるため、液状樹脂の注入が困難になる場合があった。
【0006】
そこで、半導体チップと基板との間に形成される空隙を封止充填するための樹脂(ペースト状やフィルム状)を半導体チップや基板表面に予め供給した後、フリップチップ接続を行うことによって、半導体チップと基板との接続と同時に樹脂による封止充填を完了する半導体装置の製造方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、ペースト状の樹脂を半導体チップや基板に対して個別に供給する場合、半導体チップと基板との接続部分以外の回路電極を汚染しないように塗布パターンや塗布量を制御する必要があるが、樹脂の粘度の経時変化によって塗布パターンや塗布量の制御が困難になる場合があった。一方、フィルム状の樹脂を半導体チップや基板に対して個別に供給する場合、各半導体チップ又は各基板に対してフィルム状の樹脂を貼り付ける装置が別途必要となったり、各半導体チップ又は各基板に対してフィルム状の樹脂を貼り付けるために時間を要することから、半導体装置の生産性が低下する場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、半導体装置を簡便に製造することが可能で、且つ、生産性に優れた半導体ウエハのダイシング方法及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体ウエハのダイシング方法は、一方の主面に複数の突出電極が設けられた半導体ウエハを用意する第1工程と、一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、複数の突出電極を絶縁性樹脂層内に埋め込む第2工程と、ダイシングテープを半導体ウエハの他方の主面及び環状のダイシングフレームに貼付けて、半導体ウエハがダイシングフレームに固定された状態とする第3工程と、一方の主面側から半導体ウエハ及び絶縁性樹脂層をダイシングすることで、複数の半導体チップに個片化する第4工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る半導体ウエハのダイシング方法では、第2工程において、半導体ウエハの一方の主面上に、複数の突出電極を覆う絶縁性樹脂層を形成し、第4工程において、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化している。そのため、半導体チップの回路面に予め絶縁性樹脂層が配置されたものを形成することができる。従って、回路面に予め絶縁性樹脂層が配置された半導体チップを基板に搭載するだけで、半導体チップと基板との間に形成される空隙を樹脂で封止充填することができることとなる。その結果、ペースト状の樹脂の塗布パターンや塗布量を制御したり、半導体チップ又は基板に対してフィルム状の樹脂を個別に貼り付ける必要がなくなるので、半導体装置を簡便に製造することが可能で、且つ、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る半導体ウエハのダイシング方法では、第4工程において、一方の主面側から半導体ウエハ及び絶縁性樹脂層をダイシングすることで、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化している。ここで、半導体ウエハの回路面を上向き(半導体ウエハの回路面がダイシングブレード等に向かう向き)としてダイシングすることを「フェイスアップダイシング」といい、半導体ウエハの回路面を下向き(半導体ウエハの回路面とは反対側の面がダイシングブレード等に向かう向き)としてダイシングすることを「フェイスダウンダイシング」と呼ぶこととする。
【0012】
ここで、フェイスダウンダイシングにより半導体ウエハのダイシングを行う場合には、絶縁性樹脂層の表面がダイシングテープに貼り付けられた状態で、半導体ウエハのダイシングが行われる。このとき、柔らかい絶縁性樹脂層の上に半導体ウエハが位置することとなり、ダイシング時の振動などによって半導体ウエハにクラックなどのダメージが発生しやすく、ダイシングの条件を精密にコントロールする必要がある。
【0013】
しかしながら、本発明に係る半導体ウエハのダイシング方法では、上記のように、半導体ウエハの一方の主面側から半導体ウエハ及び絶縁性樹脂層をダイシング(フェイスアップダイシング)しているので、半導体ウエハがダイシングテープに直接貼り付けられて固定された状態となっており、フェイスダウンダイシングによる半導体ウエハのダイシングの場合と比較して、半導体ウエハへのダメージ発生が低減される。
【0014】
好ましくは、絶縁性樹脂層の可視光に対する光透過率が10%以上である。絶縁性樹脂層の可視光に対する光透過率が10%未満であると、半導体ウエハの一方の主面に形成されている位置合わせ用の基準マークを、絶縁性樹脂層を通して認識することが困難となる傾向にある。
【0015】
好ましくは、第2工程では、表面に絶縁性樹脂組成物が設けられたフィルムを一方の主面に貼付けることで一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、複数の突出電極を絶縁性樹脂層内に埋め込む。
【0016】
好ましくは、絶縁性樹脂層を構成する絶縁性樹脂組成物が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する。
【0017】
一方、本発明に係る半導体装置の製造方法は、一方の主面に複数の突出電極が設けられた半導体ウエハを用意する第1工程と、一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、複数の突出電極を絶縁性樹脂層内に埋め込む第2工程と、ダイシングテープを半導体ウエハの他方の主面及び環状のダイシングフレームに貼付けて、半導体ウエハがダイシングフレームに固定された状態とする第3工程と、一方の主面側から半導体ウエハ及び絶縁性樹脂層をダイシングすることで、複数の半導体チップに個片化する第4工程と、半導体チップをダイシングテープから剥離してピックアップする第5工程と、第5工程でピックアップされた半導体チップを位置合わせヘッドによって保持した状態で、当該半導体チップの突出電極と基板上の回路電極との位置合わせを行い、位置合わせヘッドを用いて当該半導体チップと基板とを仮固定する第6工程と、位置合わせヘッドよりも高温に設定された接続ヘッド又は接続ステージを用いて当該半導体チップと基板とを加熱圧着することで、当該半導体チップの突出電極と基板の回路電極とを電気的に接続する第7工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る半導体装置の製造方法では、第2工程において、半導体ウエハの一方の主面上に、複数の突出電極を覆う絶縁性樹脂層を形成し、第4工程において、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化している。そのため、半導体チップの回路面に予め絶縁性樹脂層が配置されたものを形成することができる。従って、回路面に予め絶縁性樹脂層が配置された半導体チップを基板に搭載するだけで、半導体チップと基板との間に形成される空隙を樹脂で封止充填することができることとなる。その結果、ペースト状の樹脂の塗布パターンや塗布量を制御したり、半導体チップ又は基板に対してフィルム状の樹脂を個別に貼り付ける必要がなくなるので、半導体装置を簡便に製造することが可能で、且つ、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る半導体装置の製造方法では、第4工程において、一方の主面側から半導体ウエハ及び絶縁性樹脂層をダイシングすることで、半導体ウエハを複数の半導体チップに個片化している。そのため、フェイスダウンダイシングによる半導体ウエハのダイシングの場合と比較して、ダイシング条件の設定が非常に容易である。その結果、生産性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0020】
ところで、半導体チップの突出電極がAuであり、基板の回路電極がSnめっき銅であるような場合、半導体チップの突出電極と基板の回路電極とを金属接合するために、接続温度をSnとAuとの共晶温度である278℃以上にする必要があり、半導体チップが保持される接続装置のヘッドやステージの温度を300℃以上に設定する必要がある。しかしながら、このような高温によって絶縁性樹脂層が加熱されると、半導体チップを保持している間、すなわち、半導体チップの突出電極と基板の回路電極とが接合する前に絶縁性樹脂層が硬化してしまい、絶縁性樹脂層による半導体チップと基板との接着がうまく行われないことがある。ここで、温度を急速に昇温することができるパルスヒート制御可能な接続装置もあるが、接続を行う度に昇温及び冷却といった温度制御を行う必要があり、接続時間が長くなるため生産性が低下する。このため、接続装置の設定温度を一定に保った状態(コンスタントヒート)で半導体装置の製造を行う方が生産性向上に有利である。
【0021】
そこで、本発明に係る半導体装置の製造方法では、第6工程において、第5工程でピックアップされた半導体チップを位置合わせヘッドによって保持した状態で、当該半導体チップの突出電極と基板上の回路電極との位置合わせを行い、位置合わせヘッドを用いて当該半導体チップと基板とを仮固定し、第7工程において、位置合わせヘッドよりも高温の接続ヘッドを用いて当該半導体チップと基板とを加熱圧着することで、当該半導体チップの突出電極と基板の回路電極とを電気的に接続している。つまり、仮固定のための位置合わせヘッドと、当該半導体チップと基板との加熱圧着のための高温の接続ヘッドとの二つのヘッドを用いている。そのため、半導体チップの突出電極と基板の回路電極とが接合する前に、熱履歴等で絶縁性樹脂層の硬化状態が変化してしまうのを抑制することが可能となる。
【0022】
好ましくは、絶縁性樹脂層の可視光に対する光透過率が10%以上である。絶縁性樹脂層の可視光に対する光透過率が10%未満であると、半導体ウエハの一方の主面に形成されている位置合わせ用の基準マークを、絶縁性樹脂層を通して認識することが困難となる傾向にある。
【0023】
好ましくは、半導体チップと基板とを加熱接続する際の温度が接続ヘッドが300℃以上であるときに、絶縁性樹脂層に発泡が生じない。このようにすると、発泡によるボイド発生及びそのボイドによる絶縁信頼性や接着力の低下を抑制することができ、得られる半導体装置の信頼性を確保することが可能となる。
【0024】
好ましくは、第2工程では、表面に絶縁性樹脂組成物が設けられたフィルムを一方の主面に貼付けることで一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、複数の突出電極を絶縁性樹脂層内に埋め込む。
【0025】
好ましくは、絶縁性樹脂層を構成する絶縁性樹脂組成物が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、半導体装置を簡便に製造することが可能で、且つ、生産性に優れた半導体ウエハのダイシング方法及び半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す図である。
【図2】図2は、図1の後続の工程を示す図である。
【図3】図3は、図2の後続の工程を示す図である。
【図4】図4は、図3の後続の工程を示す図である。
【図5】図5は、図4の後続の工程を示す図である。
【図6】図6は、図5の後続の工程を示す図である。
【図7】図7は、図6の後続の工程を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る他の半導体装置の製造方法の一工程を示す図である。
【図9】図9は、図8の後続の工程を示す図である。
【図10】図10は、図9の後続の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは図面の上方向及び下方向に対応したものである。
【0029】
図1〜図7を参照して、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0030】
まず、図1に示されるような半導体ウエハ10を用意する。半導体ウエハ10は、回路面(一方の主面)S1と、回路面S1の反対側の面である裏面(他方の主面)S2とを有している。回路面S1には、当該回路面S1から突出する突出電極10aが複数形成されている。なお、このときの半導体ウエハ10の厚さは、半導体ウエハ10を予めバックグラインド処理することで所望の厚さにすることが好ましく、例えば100μm〜550μm程度である。
【0031】
続いて、図2に示されるように、半導体ウエハ10の回路面S1上に絶縁性樹脂層12を形成する。このとき、半導体ウエハ10の回路面S1上に形成されている複数の突出電極10aが絶縁性樹脂層12内に埋め込まれるように、絶縁性樹脂層12が形成される(図2参照)。
【0032】
絶縁性樹脂層12は、樹脂ワニスをスピンコート法によって半導体ウエハ10の回路面S1上に塗布した後、乾燥することによって形成してもよく、樹脂ワニスを印刷法によって半導体ウエハ10の回路面S1上に塗布した後、乾燥することによって形成してもよく、フィルム状樹脂をロールラミネータや真空ラミネータを用いて半導体ウエハ10の回路面S1に貼り合わせることによって形成してもよい。このうち、作業性の観点から、フィルム状樹脂を用いて絶縁性樹脂層12を形成することが好ましい。
【0033】
ここで、フィルム状樹脂としては、単独でフィルム形成が可能な樹脂組成物を用いてもよいし、離型処理されたPETフィルムなどの支持フィルム(図示せず)上に樹脂組成物を塗布して乾燥したものを用いてもよい。離型処理された支持フィルム上に樹脂組成物を塗布して乾燥したものを用いる場合には、半導体ウエハ10の回路面S1に当該樹脂組成物を貼り付けて、離型処理された支持フィルムを剥離することで、半導体ウエハ10の回路面S1上に絶縁性樹脂層12を形成する。
【0034】
絶縁性樹脂層12は、半導体ウエハ1の回路面S1に形成されている位置合わせ用基準マーク(図示せず)を認識できるように、可視光に対する透過性を備えていることが望ましく、例えば、555nmの光に対して10%以上の透過率を示すことが望ましい。絶縁性樹脂層12の可視光に対する光透過率が10%未満であると、半導体ウエハ10の回路面S1に形成されている位置合わせ用の基準マークを、絶縁性樹脂層12を通して認識することが困難となる傾向にある。
【0035】
絶縁性樹脂層12は、高温接続条件においてボイドが発生しないものを用いることが望ましい。例えば、COF(Chip On Film)においては接続温度が300℃以上となるため、樹脂の熱分解等に起因する樹脂発泡によってボイドが発生することが懸念事項であるが、300℃以上で樹脂発泡を起こさない樹脂組成物を用いて絶縁性樹脂層12を構成することによってボイドを抑制することが可能となる。
【0036】
絶縁性樹脂層12は、熱硬化性成分とその硬化剤とを含んでいることが望ましい。熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、トリアジン樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、アクリレート樹脂などが挙げられ、特に好ましいのは耐熱性の観点からエポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シロキサン変性エポキシ樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂である。これらは単独または二種以上の混合物として使用することができる。硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独または二種以上の混合物として使用することができる。熱硬化性成分と硬化剤との組み合わせとして耐熱性の観点から特に好ましいのは、エポキシ樹脂とフェノール樹脂、及びエポキシ樹脂とイミダゾール類である。
【0037】
絶縁性樹脂層12は、熱可塑性成分を含んでいてもよく、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴムスチレン樹脂、スチレンブタジエン共重合体、アクリル酸共重合体などが挙げられる。これらは、単独または二種以上を併用して使用することができる。これらの中でも、耐熱性及びフィルム形成性の観点から、ポリイミド樹脂やフェノキシ樹脂が好ましい。
【0038】
絶縁性樹脂層12には、低熱膨張化のために無機フィラーを含んでいてもよく、可視光に対する透過率を10%より低下させないように、フィラー種、粒径、配合量などを設定することが好ましい。
【0039】
さらに、絶縁性樹脂層12には、硬化促進剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤、イオントラップ剤などの添加剤を配合してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。配合量については、各添加剤の効果が発現するように調整すればよい。
【0040】
絶縁性樹脂層12の厚みは、絶縁性樹脂層12が半導体チップ20(詳しくは後述する)と基板26(詳しくは後述する)との間を充分に充填できる厚みであることが好ましい。通常、絶縁性樹脂層12の厚みが突出電極10aの高さと基板26の回路電極26aの高さとを加えた値に相当する厚みであれば、半導体チップ20と基板26との間を充てん可能である。
【0041】
続いて、図3に示されるように、半導体ウエハ10の回路面S1に絶縁性樹脂層12が配置されている状態(突出電極10aが絶縁性樹脂層12内に埋め込まれている状態)で、半導体ウエハ10の裏面S2及びダイシングフレーム14の下縁14aにダイシングテープ16を貼付ける。ここで、ダイシングフレーム14は、円環状(リング状)の金属製部材であり、半導体ウエハ10のダイシング時に半導体ウエハ10の固定治具として用いられる。ダイシングフレーム14は、その内径が半導体ウエハ10の外形よりも大きくなっており、半導体ウエハ10を囲むようにダイシングテープ16上に配置される。
【0042】
また、ダイシングテープ16は、基材フィルム16aと、基材フィルム16aの表面に形成された粘着層16bとを有している。ダイシングテープ16としては、加熱及び紫外線照射の少なくともいずれか一方により粘着層16bの粘着力が低下して粘着層16bが基材フィルム16aから剥離可能となるものであれば、特に制限されることなく従来公知のものを使用することができる。
【0043】
続いて、図4に示されるように、ダイシングフレーム14及びダイシングテープ16に搭載された半導体ウエハ10を、ダイシング装置のステージ18上に載置する。次に、カメラ等を用いて、半導体ウエハ10の回路面S1上に形成されているダイシングパターンを、半導体ウエハ10の回路面S1側から絶縁性樹脂層12を通して認識する。そして、認識されたダイシングパターンに基づいて、半導体ウエハ10の回路面S1が上方を向いた状態(半導体ウエハ10の回路面S1がダイシングブレードDBに向かう状態)で、ダイシングブレードDBによって、半導体ウエハ10を絶縁性樹脂層12と共にダイシングし(いわゆる、フェイスアップダイシング)、複数の半導体チップ20に個片化する。
【0044】
半導体チップ20のサイズとしては特に制限はないが、例えばCOF用の半導体チップの場合、1mm〜2mm×10mm〜25mm程度の矩形状となるようにする。なお、半導体チップ20をダイシングテープ16から剥離するためには、回路面S1及び裏面S2の両側から紫外線を照射し、ダイシングテープ16の粘着層16bを硬化させて、粘着層16bの粘着力を低下させることが可能なダイシングテープ16を用いることが好ましい。
【0045】
続いて、ピックアップ装置(図示せず)を用いて半導体チップ20の一つをピックアップし、図5に示されるように、半導体チップ20を位置合わせヘッド22によって吸着し、保持する。そして、位置合わせヘッド22によって半導体チップ20を保持したまま、半導体チップ20と位置合わせステージ24上に載置されている基板26との位置合わせを行う。半導体チップ20と基板26との位置合わせは、上下の双方を同時に認識可能な認識用カメラ28を用いて、半導体チップ20の回路面S1上に形成されている位置合わせ用基準マーク(図示せず)又は突出電極10aと、基板26の回路面S3上に形成されている位置合わせ用基準マーク(図示せず)又は回路電極26aとを認識することにより行われる(図5の上向きの矢印及び下向きの矢印を参照)。
【0046】
続いて、図6に示されるように、位置合わせヘッド22及び位置合わせステージ24によって半導体チップ20、絶縁性樹脂層12、基板26等を加熱しつつ加圧することで、絶縁性樹脂層12の表面と基板26とを仮固定する。このときの加熱温度は、絶縁性樹脂層12が粘着性を示す温度であれば特に制限されないが、例えば、40℃〜100℃程度に設定することができる。
【0047】
続いて、図7に示されるように、接続ヘッド30及び接続ステージ32によって半導体チップ20、絶縁性樹脂層12、基板26等を加熱しつつ、半導体チップ20と基板26とを圧着する。これにより、絶縁性樹脂層12が溶融して半導体チップ20と基板26との間に形成される空隙が絶縁性樹脂層12によって封止充填されつつ、半導体チップ20の突出電極10aと基板26の回路電極26aとが電気的に接続される。その結果、半導体チップ20と基板26とが電気的に接続された半導体装置を得ることができる。なお、絶縁性樹脂層12の硬化をさらに促進させるために、引き続いて加熱オーブンなどを用いて加熱処理を行うようにしてもよい。
【0048】
以上のような本実施形態においては、半導体ウエハ10の回路面S1上に、複数の突出電極10aを覆う絶縁性樹脂層12を形成し、半導体ウエハ10を複数の半導体チップ20に個片化している。そのため、半導体チップ20の回路面S1に予め絶縁性樹脂層12が配置されたものを形成することができる。従って、回路面S1に予め絶縁性樹脂層12が配置された半導体チップ20を基板26に搭載するだけで、半導体チップ20と基板26との間に形成される空隙を樹脂で封止充填することができることとなる。その結果、ペースト状の樹脂の塗布パターンや塗布量を制御したり、半導体チップ20又は基板26に対してフィルム状の樹脂を個別に貼り付ける必要がなくなるので、半導体装置を簡便に製造することが可能で、且つ、生産性の向上を図ることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態においては、回路面S1側から半導体ウエハ10及び絶縁性樹脂層12をダイシングすることで、半導体ウエハ10を複数の半導体チップ20に個片化している。そのため、フェイスダウンダイシングによる半導体ウエハ10のダイシングの場合と比較して、半導体ウエハへのダメージが低減される。
【0050】
また、本実施形態においては、半導体ウエハ10の回路面S1上に形成されている複数の突出電極10aが絶縁性樹脂層12内に埋め込まれるように、絶縁性樹脂層12が形成される。そのため、突出電極10aの先端を先鋭化させたり、絶縁性樹脂層12の厚みを調整するなどといった、突出電極10aの頭出しを行うのに要する手間を省くことができる。その結果、生産性の一層の向上を図ることが可能となる。なお、突出電極10aの頭出しをしなくても、絶縁性樹脂層12の流動性を調整することにより、突出電極10aと回路電極26aとの電気的接続を確保することが可能である。
【0051】
ところで、半導体チップ20の突出電極10aがAuであり、基板26の回路電極26aがSnめっき銅であるような場合、半導体チップ20の突出電極10aと基板26の回路電極26aとを金属接合するために、接続温度をSnとAuとの共晶温度である278℃以上にする必要があり、半導体チップが保持される接続装置のヘッドやステージの温度を300℃以上に設定する必要がある。しかしながら、このような高温によって絶縁性樹脂層12が加熱されると、半導体チップ20を保持している間、すなわち、半導体チップ20の突出電極10aと基板26の回路電極26aとが接合する前に絶縁性樹脂層12が硬化してしまい、絶縁性樹脂層12による半導体チップ20と基板26との接着がうまく行われないことがある。ここで、温度を急速に昇温することができるパルスヒート制御可能な接続装置もあるが、接続を行う度に昇温及び冷却といった温度制御を行う必要があり、接続時間が長くなるため生産性が低下する。このため、接続装置の設定温度を一定に保った状態(コンスタントヒート)で半導体装置の製造を行う方が生産性向上に有利である。
【0052】
そこで、本実施形態では、上記のように、ピックアップされた半導体チップ20を位置合わせヘッド22によって保持した状態で、半導体チップ20の突出電極10aと基板26上の回路電極26aとの位置合わせを行い、位置合わせヘッド22を用いて半導体チップ20と基板26とを仮固定し、位置合わせヘッド22よりも高温の接続ヘッド30を用いて半導体チップ20と基板26とを加熱圧着することで、半導体チップ20の突出電極10aと基板26の回路電極26aとを電気的に接続している。つまり、仮固定のための位置合わせヘッド22と、半導体チップ20と基板26との加熱圧着のための高温の接続ヘッド30との二つのヘッドを用いている。そのため、半導体チップ20の突出電極10aと基板26の回路電極26aとが接合する前に、熱履歴等で絶縁性樹脂層12の硬化状態が変化してしまうのを抑制することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては位置合わせヘッド22を用いて半導体チップ20と基板26とを仮固定していたが、温度を高温に設定する必要がない場合には、位置合わせヘッド22を用いず、ピックアップされた半導体チップ20を直接接続ヘッド22によって保持して、半導体チップ20と基板26とを加熱圧着するようにしてもよい。
【0054】
また、本発明をCOFに適用することも可能である。具体的には、半導体ウエハ10を複数の半導体チップ20に個片化した後、ピックアップ装置(図示せず)を用いて半導体チップ20の一つをピックアップし、図8に示されるように、半導体チップ20の裏面S2が下向き、すなわち、位置合わせ装置(図示せず)の位置合わせステージ24側に向くようにして、半導体チップ20を位置合わせステージ24上に載置する。そして、半導体チップ20と、表面S4にSnめっき配線34aが形成された、光透過性の高いポリイミド基板34をとの位置合わせを行う。
【0055】
半導体チップ20とポリイミド基板34との位置合わせは、ポリイミド基板34を半導体チップ20の回路面S1側に配置した状態で、一方向を認識可能な認識用カメラ36を用いて、ポリイミド基板34の表面S4とは反対側の面(裏面)S5側から、半導体チップ20の回路面S1上に形成されている位置合わせ用基準マーク(図示せず)又は突出電極10aと、ポリイミド基板34の表面S4上に形成されている位置合わせ用基準マーク(図示せず)又はSnめっき配線34aとを認識することにより行われる(図8の下向きの矢印を参照)。
【0056】
続いて、図9に示されるように、圧着ヘッド38及び位置合わせステージ24によって半導体チップ20、絶縁性樹脂層12、ポリイミド基板34等を加圧することで、絶縁性樹脂層12の表面とポリイミド基板34とを仮固定する。このとき、圧着ヘッド38や位置合わせステージ24を加熱してもよい。その加熱温度は、絶縁性樹脂層12が粘着性を示す温度であれば特に制限されないが、例えば、40℃〜100℃程度に設定することができる。
【0057】
続いて、図10に示されるように、接続ヘッド30及び接続ステージ32によって半導体チップ20、絶縁性樹脂層12、ポリイミド基板34等を加熱しつつ、半導体チップ20とポリイミド基板34とを圧着する。これにより、絶縁性樹脂層12が溶融して半導体チップ20とポリイミド基板34との間に形成される空隙が絶縁性樹脂層12によって封止充填されつつ、半導体チップ20の突出電極10aとポリイミド基板34のSnめっき配線34aとが電気的に接続される。その結果、半導体チップ20とポリイミド基板34とが電気的に接続された半導体装置を得ることができる。なお、絶縁性樹脂層12の硬化をさらに促進させるために、引き続いて加熱オーブンなどを用いて加熱処理を行うようにしてもよい。以上のような接続方法は、ポリイミド基板34をリールtoリール方式で扱う際に、特に効果的である。
【符号の説明】
【0058】
10…半導体ウエハ、10a…突出電極、12…絶縁性樹脂層、14…ダイシングフレーム、16…ダイシングテープ、20…半導体チップ、22…位置合わせヘッド、26…基板、26a…回路電極、30…接続ヘッド、36…圧着ヘッド、S1…回路面(一方の主面)、S2…裏面(他方の主面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に複数の突出電極が設けられた半導体ウエハを用意する第1工程と、
前記一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、前記複数の突出電極を前記絶縁性樹脂層内に埋め込む第2工程と、
ダイシングテープを前記半導体ウエハの他方の主面及び環状のダイシングフレームに貼付けて、前記半導体ウエハが前記ダイシングフレームに固定された状態とする第3工程と、
前記一方の主面側から前記半導体ウエハ及び前記絶縁性樹脂層をダイシングすることで、複数の半導体チップに個片化する第4工程とを備えることを特徴とする半導体ウエハのダイシング方法。
【請求項2】
前記絶縁性樹脂層の可視光に対する光透過率が10%以上であることを特徴とする、請求項1に記載された半導体ウエハのダイシング方法。
【請求項3】
前記第2工程では、表面に絶縁性樹脂組成物が設けられたフィルムを前記一方の主面に貼付けることで前記一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、前記複数の突出電極を前記絶縁性樹脂層内に埋め込むことを特徴とする、請求項1又は2に記載された半導体ウエハのダイシング方法。
【請求項4】
前記絶縁性樹脂層を構成する絶縁性樹脂組成物が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載された半導体ウエハのダイシング方法。
【請求項5】
一方の主面に複数の突出電極が設けられた半導体ウエハを用意する第1工程と、
前記一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、前記複数の突出電極を前記絶縁性樹脂層内に埋め込む第2工程と、
ダイシングテープを前記半導体ウエハの他方の主面及び環状のダイシングフレームに貼付けて、前記半導体ウエハが前記ダイシングフレームに固定された状態とする第3工程と、
前記一方の主面側から前記半導体ウエハ及び前記絶縁性樹脂層をダイシングすることで、複数の半導体チップに個片化する第4工程と、
前記半導体チップを前記ダイシングテープから剥離してピックアップする第5工程と、
前記第5工程でピックアップされた前記半導体チップを位置合わせヘッドによって保持した状態で、当該半導体チップの突出電極と基板上の回路電極との位置合わせを行い、前記位置合わせヘッドを用いて当該半導体チップと前記基板とを仮固定する第6工程と、
前記位置合わせヘッドよりも高温に設定された接続ヘッド又は接続ステージを用いて当該半導体チップと前記基板とを加熱圧着することで、当該半導体チップの前記突出電極と前記基板の前記回路電極とを電気的に接続する第7工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁性樹脂層の可視光に対する光透過率が10%以上であることを特徴とする、請求項5に記載された半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記半導体チップと前記基板とを加熱接続する際の温度が300℃以上であるときに、前記絶縁性樹脂層に発泡が生じないことを特徴とする、請求項5又は6に記載された半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程では、表面に絶縁性樹脂組成物が設けられたフィルムを前記一方の主面に貼付けることで前記一方の主面上に絶縁性樹脂層を形成して、前記複数の突出電極を前記絶縁性樹脂層内に埋め込むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載された半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁性樹脂層を構成する絶縁性樹脂組成物が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂及び硬化剤を含有することを特徴とする、請求項5〜8のいずれか一項に記載された半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165031(P2012−165031A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129804(P2012−129804)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2008−246572(P2008−246572)の分割
【原出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】