説明

半導体装置の製造方法

【課題】剥離層の表面上に、良好にパターニングされた絶縁層を形成することができ、かつ、支持体の剥離を容易に行うことができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】支持体27の表面上に第1の剥離層28を形成する工程と、第1の剥離層の表面上に、第1の剥離層と同温時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層より高い第2の剥離層29を形成する工程と、第2の剥離層の表面上に第1の絶縁層22を最下層とする配線層を形成する工程と、この配線層の表面上に、半導体チップを載置する工程と、半導体チップをモールド樹脂体26で封止する工程と、第1の剥離層を加熱し、第1の絶縁層から支持体を剥離する工程と、を具備し、第1の剥離層は、第1の絶縁層から支持体を剥離する温度において、第1の絶縁層から支持体を剥離可能なずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´を有する熱可塑性樹脂である半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型かつ薄型の半導体装置として、配線層の表面に半導体チップが載置され、この半導体チップがモールド樹脂体等の樹脂体で覆われた構成がある。この半導体装置の製法の一つとして、従来は、まず、シリコンウエハ等の支持体の表面上に、熱可塑性樹脂からなる剥離層を介して、複数の絶縁層が積層された配線層を形成する。次に、配線層の表面上に半導体チップを載置し、載置された半導体チップを樹脂体で封止する。最後に、支持体を加熱して剥離層を軟化させ、支持体を横方向にスライドさせることにより、支持体を配線層から剥離する。これにより、従来の半導体装置は製造される。
【0003】
しかし、熱可塑性樹脂からなる剥離層の表面上に配線層の最下層になる絶縁層を形成する場合において、剥離層の表面上の絶縁材料をパターニングし、これを硬化させるために加熱すると、剥離層が軟化する。この剥離層の軟化によって、最下層になる絶縁層の開口位置がずれ、さらには開口形状が劣化する問題がある。
【0004】
一方で、この問題の発生を抑制するために、剥離層として、支持体を加熱しても剥離層が軟化しないような熱可塑性樹脂を適用した場合、支持体をスライド剥離することができなくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−182338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、この問題に鑑みてなされたものであり、剥離層の表面上に、良好にパターニングされた絶縁層を形成することができ、かつ、支持体の剥離を容易に行うことができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、支持体の上に第1の剥離層を形成する工程と、前記第1の剥離層の上に、第2の剥離層を形成する工程と、前記第2の剥離層の上に絶縁材料を形成し、前記絶縁材料をパターニングする工程と、前記パターニングされた前記絶縁材料を加熱硬化させることにより、開口パターンを有する絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の前記開口パターン内に金属を形成する工程と、前記絶縁層上に、前記金属に電気的に接続されるように半導体チップを載置する工程と、前記半導体チップを樹脂体で封止する工程と、前記第1の剥離層を加熱することにより、前記絶縁層から前記支持体を剥離する工程と、を具備し、前記第2の剥離層は、同温時におけるずり粘弾性率若しくは弾性率が前記第1の剥離層より高いことを特徴とする方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の要部を示す垂直断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、第1の剥離層を形成する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、第2の剥離層を形成する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、開口パターンを有する絶縁層を形成する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、絶縁層の開口パターン内に電極を形成する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、配線層を形成する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、半導体チップを載置する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、半導体チップをモールド樹脂体で封止する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、配線層から支持体を剥離する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、配線層の裏面の残渣を洗浄除去する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、モールド樹脂体および配線層を切断する工程を示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図12】試料の引張試験を行うための試験装置を模式的に示す斜視図である。
【図13】試料の温度と、図12の引張試験によって得られたデータに基づいて算出された弾性率E´との関係を示すグラフである。
【図14】試料のずり測定を行うための測定装置を模式的に示す斜視図である。
【図15】試料の温度と、図14のずり測定によって得られたデータに基づいて算出されたずり粘弾性率G´との関係を示すグラフである。
【図16】図1の半導体装置を適用したモジュールを示す、図1に相当する垂直断面図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の要部を示す垂直断面図である。
【図18】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、開口パターンを有する絶縁層を形成する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図19】同じく、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、開口パターンを有する絶縁層を形成する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、絶縁層の開口パターン内にVia層および配線パターンを形成する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、多層配線層を形成する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図22】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、半導体チップを載置する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図23】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、半導体チップを樹脂体で封止する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図24】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するための図であって、配線層から支持体を剥離する工程を示す、図17に相当する垂直断面図である。
【図25】図17の半導体装置を適用例したモジュールを示す、図17に相当する垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の要部を示す垂直断面図である。図1に示す半導体装置10は、複数の半導体チップ11、12を内部に有する小型かつ薄型の半導体装置である。
【0011】
複数の半導体チップ11、12は、例えば、第1の半導体チップ11および第2の半導体チップ12からなる。第1の半導体チップ11の表面には第1の電極パッド13が設けられている。このような第1の半導体チップ11は、配線層14の表面上にDAF(Die Attach Film)からなる接着層15を介して載置されている。
【0012】
また、第2の半導体チップ12は、第1の半導体チップ11と同様に、その表面に第2の電極パッド16が設けられている。このような第2の半導体チップ12は、第1の半導体チップ11の表面上に、第1の電極パッド13に重ならないように、DAFからなる接着層15を介して載置されている。
【0013】
このような第1の半導体チップ11と第2の半導体チップ12とは、第1の電極パッド13と第2の電極パッド16とが、例えばAuワイヤ等の導体17によって接続されることにより、相互に電気的に接続されている。
【0014】
なお、実際の半導体装置10においては、2個〜16個程度の複数の半導体チップが積層されることが望ましいが、半導体チップの数は限定されない。
【0015】
第1、第2の半導体チップ11、12が積層される配線層14は、表面電極18、裏面電極19、およびこれらの電極18、19間を相互に電気的に接続する配線パターンを含む配線パターン20が、絶縁膜21で覆われたものである。表面電極18は、この表面が絶縁膜21の表面から露出するように形成されており、また、裏面電極19は、この裏面が絶縁膜21の裏面から露出するように形成されている。
【0016】
また、配線層14の絶縁膜21は、複数の絶縁層が積層された構成である。図1に示す半導体装置において、絶縁膜21は、第1の絶縁層22、第2の絶縁層23、第3の絶縁層24がこの順で積層された構成である。従って、表面電極18は、第3の絶縁層24を貫通するように形成されており、裏面電極19は、第1の絶縁層22を貫通するように形成されている。また、配線パターン20は、第2の絶縁層23を貫通し、一部が表面電極18および裏面電極19に接触するように形成されている。
【0017】
表面電極18の表面上には、第1、第2の電極パッド13、16と同様の第3の電極パッド25が形成されている。そして、第1の電極パッド13と第3の電極パッド25とは、例えばAuワイヤ等の導体17によって、相互に電気的に接続されている。
【0018】
このような配線層14の表面上には、第1、第2の半導体チップ11、12を
覆うようにモールド樹脂体26が形成されており、これによって、第1、第2の半導体チップ11、12は封止されている。
【0019】
次に、図1に示される半導体装置10の製造方法について説明する。この製造方法は、シリコンウエハ等の支持体27上に、後の工程において支持体27の剥離が可能な第1の剥離層28、および、第1の剥離層28と同温におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層28よりも高い第2の剥離層29をこの順で積層形成し、これらの第1、第2の剥離層28、29を従来の剥離層と同様に適用する製造方法である。これにより、第2の剥離層29上に、良好にパターニングされた第1の絶縁層22を形成することが可能となり、かつ、支持体と配線層14との熱スライド剥離を容易に行うことが可能となる。以下に、この製造方法について、図2乃至図11を参照して詳細に説明する。なお、図2乃至図11は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程を示す、図1に対応する断面図である。
【0020】
まず、図2に示すように、支持体27上、例えば支持体27の表面全面に、溶剤入熱可塑性樹脂からなる第1の剥離層28を形成する。支持体27は、例えば8インチのシリコンウエハであるが、ガラス基板、ガラス、サファイヤ、樹脂板、若しくは例えばエポキシ系等の有機材料基板を支持体として使用してもよい。このような支持体27上の第1の剥離層28は、例えば以下のように形成される。
【0021】
まず、支持体27の表面上に第1の剥離層28となる溶剤入熱可塑性樹脂をスピンコートにより塗膜する。次に、支持体27を、例えば200℃で30分加熱することによって熱可塑性材料中の溶剤を揮発させる。これによって、支持体27の表面上に、第1の剥離層28が形成される。
【0022】
第1の剥離層28は、後の工程において形成される配線層14の裏面から、支持体27を熱スライド剥離することが可能なずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´を有する熱可塑性樹脂である。このような第1の剥離層28は、特に、粘弾性率G´が以下の物性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0023】
すなわち、第1の剥離層28は、支持体27を熱スライドする際の温度におけるずり粘弾性率G´が、2500Pa以下の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0024】
ずり粘弾性率G´とは、試料のずり測定によって得られる弾性率である。ずり測定方法については後述する。また、ずり粘弾性率G´の好ましい範囲は、本願発明者等の実験から得られた範囲であり、この実験についても後述する。
【0025】
次に、図3に示すように、第1の剥離層28上、例えば第1の剥離層28の表面上に、第2の剥離層29を形成する。この第2の剥離層29は、第1の剥離層28と同様に形成すればよい。
【0026】
第2の剥離層29は、少なくとも第1の剥離層28よりも、絶縁膜21の加熱硬化時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が高い層である。この第2の剥離層29は、特に以下の物性を有する熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0027】
第2の剥離層29は、配線層14の最下層である第1の絶縁層22を加熱硬化させる温度における弾性率E´が10MPa以上の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0028】
弾性率E´とは、試料の引張試験によって得られる弾性率である。引張試験の方法については後述する。また、弾性率E´の好ましい範囲は、本願発明者等の実験から得られた範囲であり、この実験についても後述する。
【0029】
以上に説明した第1、第2の剥離層28、29は、それぞれポリイミド系、フェノール系、またはポリエーテル系の材料からなる熱可塑性樹脂であることが好ましいが、特に、第2の剥離層29は、上記物性を満足するような樹脂層であれば、必ずしも熱可塑性樹脂である必要はない。
【0030】
次に、第2の剥離層29上、例えば第2の剥離層29の表面上に配線層14を形成する。配線層14は、以下のように形成される。まず、図4に示すように、第2の剥離層29の表面上に、開口パターン30を有する第1の絶縁層22を形成する。これは、例えば以下のように形成される。
【0031】
すなわち、まず、第1の絶縁層22となる絶縁材料を第2の剥離層29の表面上に塗膜し、露光、現像によりパターニングを行って、絶縁材料に開口パターン30を形成する。さらに、開口パターン30が形成された絶縁材料を、例えば200℃に加熱することにより絶縁材料を硬化させる。これによって、第1の絶縁層22は形成される。
【0032】
ここで、第1の絶縁層22となる絶縁材料を例えば200℃に加熱する場合、これに接する第2の剥離層29も同じ温度まで加熱される。しかし、第2の剥離層29は、少なくとも第1の剥離層28と同温時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が高い層である。従って、支持体27の熱スライド剥離が可能な第1の剥離層28の表面上に第1の絶縁層22を形成する場合と比較して、第2の剥離層29の表面上に、良好にパターニングされた第1の絶縁層22を形成することが可能となる。
【0033】
すなわち、支持体27の熱スライド剥離が可能な第1の剥離層28の表面上に第1の絶縁層22を形成した場合、第1の絶縁層22を硬化させる際に第1の剥離層28が軟化し、流動するため、開口パターン30の位置がずれ、さらに、開口パターン30の寸法および形状が変化する。しかし、第1の剥離層28の表面上に、これよりずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が高い第2の剥離層29を形成し、この第2の剥離層29上に第1の絶縁層22を形成することにより、開口パターン30の位置ずれ、寸法の変化、および形状の変形が抑制される。
【0034】
なお、このときの第1の剥離層28は、第2の剥離層29と同様に軟化しないことが好ましいが、軟化していてもよい。
【0035】
次に、図5に示すように、第1の絶縁層22の開口パターン30内に裏面電極19を形成する。裏面電極19は、例えば、第1の絶縁層22の開口パターン30にCuをめっき法により形成することによって形成される。
【0036】
以下、図4、図5に示す工程を繰り返すことにより、図6に示すように、第2の剥離層43の表面上に配線層14を形成する。すなわち、第1の絶縁層22の表面上に、開口パターンを有する第2の絶縁層23の形成、配線パターン20の形成、第3の絶縁層24の形成、表面電極18の形成を順に行うことにより、配線層14を形成する。配線パターン20は、例えば、第2の絶縁層23となる絶縁材料の開口パターン内にCuをめっきすることにより形成され、表面電極18は、例えば、第3の絶縁層24となる絶縁材料の開口パターン内に、Ni(3μm)、Pd(0.03μm)、Au(0.3μm)をこの順でめっき法により形成することによって形成される。特にNiは、3μm〜10μm程度の膜厚で形成されることが望ましい。
【0037】
なお、裏面電極19および配線パターン20は例えばCuをめっきすることにより形成されたが、Cu以外に、Al、Ag、Auなどをめっきすることにより形成されてもよい。
【0038】
このように配線層14を形成した後、配線層14の表面から露出する表面電極18の表面上に、第3の電極パッド25を形成する。この後、図7に示すように、複数の第1の半導体チップ11を、配線層14の表面上の互いに離間した位置に、接着層15を介して載置する。続いて、それぞれの第1の半導体チップ11上に、接着層15を介して、第2の半導体チップ12を載置する。
【0039】
さらに、このように第1、第2の半導体チップ11、12を載置した後、第1の半導体チップ11の第1の電極パッド13と、第2の半導体チップ12の第2の電極パッド16とを、例えばAuからなるワイヤ等の導体17で接続する。これと同時に、第1の電極パッド13と第3の電極パッド25とを、同様に、例えばAuからなるワイヤ等の導体17で接続する。
【0040】
次に、図8に示すように、第1、第2の半導体チップ11、12が載置された配線層14の表面に、全ての第1、第2の半導体チップ11、12が覆われるようにモールド樹脂体26を塗布し、この樹脂体26を加熱することにより硬化させる。これにより、第1、第2の半導体チップ11、12は、モールド樹脂体26に封止される。
【0041】
モールド樹脂体26は、例えば酸無水物硬化系のモールド樹脂体である。このモールド樹脂体26の厚みは、100μm〜500μm程度であることが好ましい。また、樹脂体26を加熱硬化させるための加熱温度は、125℃〜175℃であることが望ましい。なお、モールド樹脂体26の硬化系は、酸無水物系以外にもビフェニル系、アミン系、フェノール系であっても良い。
【0042】
次に、支持体41を例えば250℃に加熱することによって、第1の剥離層42を軟化させる。この後、図9に示すように、支持体27を水平方向にスライドさせることによって、配線層14から支持体27を剥離する。なお、支持体27を剥離した後、配線層14の裏面には、第1、第2の剥離層28、29である熱可塑性樹脂の少なくとも一部が残渣として残る。
【0043】
この支持体27の剥離工程において、第1の剥離層28は、支持体27の剥離時の温度において、支持体27の剥離が可能となる程度に軟化する層である。従って、配線層14から支持体27を容易に剥離することができる。なお、このときの第2の剥離層29は、第1の剥離層28と同様に軟化していることが好ましいが、軟化してなくともよい。
【0044】
次に、図10に示すように、配線層14の裏面の残渣を、洗浄溶媒を用いて除去する。洗浄溶媒は、配線層14の裏面側の第1の絶縁層22が溶解されないものを適用する。このような洗浄溶媒は、例えばNMP(N‐メチル‐2‐ピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、THF(テトラヒドロフラン)である。
【0045】
なお、上述の第1の剥離層28と第2の剥離層29とを、これらの洗浄溶媒が一致する熱可塑性樹脂となるように選定することにより、残渣を一回の洗浄でまとめて除去することができる。
【0046】
最後に、図11に示すように、モールド樹脂体26および配線層14を、スクライブライン(図示せず)に沿ってダイシングすることによって、複数の図1に示される半導体装置が一括形成される。
【0047】
以上に示される半導体装置の製造方法によれば、支持体27上に、支持体27の剥離時の温度において軟化する第1の剥離層28を形成し、この第1の剥離層28上に、第1の剥離層28と同温時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層28より高い第2の剥離層29を形成する。従って、配線層14の最下層である第1の絶縁層22の開口パターン30の位置ずれ、寸法の変化、および形状の変形を抑制し、良好にパターニングされた第1の絶縁層22を、第2の剥離層29上に形成することができ、かつ、支持体27と配線層14との熱スライド剥離を容易に行うことができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【0048】
実際に、以下に示す物性を有する4種類の熱可塑性樹脂(試料A、試料B、試料B、試料D)の弾性率E´およびずり粘弾性率G´を測定し、図1に示される半導体装置10を製造した。そこでまず、試料A、試料B、試料C、試料Dそれぞれの弾性率E´およびずり粘弾性率G´の測定方法について説明する。
【0049】
図12は、引張試験を行うための測定装置を示す模式的な斜視図である。図12に示すように、引張試験は、フィルム状に薄い帯状の試料A、B、C、Dのいずれかの両端部を測定装置内の挟持体101、102に挟み込み、挟持体101、102を上下方向に引っ張り振動を与えることにより、弾性率E´を測定するものである。
【0050】
引張試験の測定条件は、以下の通りである。
・試料のサイズ・・・4mm×20mm×35〜75um厚
・昇温速度・・・10℃/min
・測定温度範囲・・・30℃〜300℃
・雰囲気・・・大気中
・測定周波数・・・10Hz
この条件の下で、試料A、B、C、Dについて、それぞれ引張試験を行った。なお、試験に用いた装置は、Rheogel−E4000(ユービーエム製)である。
【0051】
図13は、試料A、B、C、Dについて、試料の温度と、測定した弾性率E´との関係を示す。図13に示すように、200℃よりも低温の場合には、試料A、試料B、試料D、試料Cの順で、小さい弾性率E´を有する物性を有するとともに、200℃よりも高温の場合には、試料A、試料B、試料C、試料Dの順で、小さい弾性率E´を有する物性を有し、200℃の場合には、試料Cと試料Dとが、ほぼ同じ弾性率E´を有することがわかった。
【0052】
特に、第1の絶縁層22を硬化させるための温度である200℃における試料Aの弾性率E´は、0.249MPa、試料Bの弾性率E´は、4.86MPa、試料Cの弾性率E´は、17.7MPaであり、測定された試料中、最も硬い試料Dの200℃における弾性率E´は、29.8MPaであった。
【0053】
なお、試料Aは、温度が200℃より高くなると、弾性率E´が小さくなりすぎてしまい、上記測定装置では測定不能であった。そこで、200℃以降の弾性率を測定するために、ずり粘弾性率G´を測定した。以下に、その方法を説明する。
【0054】
図14は、ずり測定を行うための測定装置を示す模式的な斜視図である。図14に示すように、ずり測定は、フィルム状の薄い試料A、B、C、Dを所定の枚数だけ重ね合わせ、これを測定装置内の回転体に挟み込み、回転体の一方を回転させることにより、ねじれ振動を与え、ずり粘弾性G´を測定するものである。
【0055】
ずり測定の測定条件は、以下の通りである。
【0056】
・試料のサイズ・・・500um厚(35〜75um厚のフィルムを重ね合わせたもの)
・昇温速度・・・10℃/min
・測定温度範囲・・・35℃〜300℃
・雰囲気・・・大気中
・測定周波数・・・1.0Hz
この条件の下で、試料A、B、C、Dについて、それぞれずり測定を行った。なお、測定に用いた装置は、ARES−RDA(ティー・エイ・インスツルメントジャパン製)である。
【0057】
図15は、試料A、B、C、Dについて、試料の温度と、ずり粘弾性率G´との関係を示す。図15に示すように、試料A、試料B、試料C、試料Dの順で、小さいずり粘弾性率G´を有する物性を有することがわかった。これは、図13に示す結果と同様の傾向である。
【0058】
特に、支持体27を剥離する温度である250℃において、最も柔らかい試料Aの弾性率G´は、1115Paであり、同温における試料Bの弾性率G´は、95294Pa、試料Cの弾性率G´は、661000Pa、試料Dの弾性率G´は、961000Paであった。
【0059】
以上に示す試料A、B、C、Dをそれぞれ第1の剥離層28または第2の剥離層29として適用して、図1に示す半導体装置10を製造した。具体的には、まず、支持体27となる8インチのシリコンウエハの表面上に、試料A、B、C、Dのいずれかからなる第1の剥離層28を15μmの厚みを有するように形成した。次に、試料A、B、C、Dのいずれか(ただし、第1の剥離層28として適用した試料以外)からなる第2の剥離層43を10μmの厚みを有するように形成した。次に、第2の剥離層43の表面上に、200℃の温度で硬化された第1の絶縁層22を含む配線層14を形成し、続いて、配線層14の表面上に、それぞれが20μm〜40μm程度の厚みを有する複数の第1の半導体チップ11を、5μm〜40μmの厚みを有する接着層15を介して載置した。さらに、同様に、各第1の半導体チップ11の表面上に、20μm〜40μm程度の厚みを有する第2の半導体チップ12を、5μm〜40μmの厚みを有する接着層15を介して載置し、これらの半導体チップ11、12を、350μm程度の厚みのモールド樹脂体26で封止した。そして最後に、250℃に加熱してシリコンウエハをスライド剥離した。
【0060】
この結果、第1の剥離層28として試料Aを適用した場合のみ、シリコンウエハと配線層14との熱スライド剥離を容易に行うことができた。この結果をもとに、更に別の試料で弾性率G´と剥離特性を同じ条件で実験した結果、2500Paでは剥離可能であったが、3000Paから剥離が困難になり、10000Paでは剥離不可であった。
【0061】
また、試料Aからなる第1の剥離層28の表面上に、第2の剥離層29として、試料C、試料Dのいずれかを適用することにより、第1の絶縁層22の開口パターン30の位置ずれが抑制されるとともに、開口パターン30の寸法の変化が抑制され、さらには、開口パターン30から露出する第2の剥離層29に生ずるうねりも抑制された。
【0062】
特に、第2の剥離層29として試料Dを適用した場合には、第1の絶縁層22の開口パターン30の位置ずれがほぼ完全に抑制されるとともに、開口パターン30の寸法がほぼ規格値に一致した寸法となり、さらには、開口パターン30から露出する第2の剥離層29にうねりが生ずることもなかった。すなわち、第2の剥離層29の表面上に、良好にパターニングされた第1の絶縁層22を形成することができた。
【0063】
以上の結果から、第1の剥離層28は、支持体27の剥離時の温度(250℃)におけるずり粘弾性率G´が2500Pa以下の物性を有する熱可塑性樹脂からなることが好ましいことが分かった。また、より容易に支持体27を熱スライド剥離するためには、剥離時(250℃)におけるずり粘弾性率G´が1500Pa以下であることが好ましく、更には1200Pa以下の物性の熱可塑性樹脂を、第1の剥離層28に適用することが好ましい。
【0064】
また、第2の剥離層29は、上述のように、第1の剥離層28と絶縁層22の加熱硬化時(200℃)におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層28より高ければ、第1の絶縁層22の開口パターン30の位置ずれ等を抑制することができるが、第2の剥離層29は、上記実験の結果、および上記実験の結果に基づいて弾性率E´と形成された第1の絶縁層22の状態との関係を、を同じ条件で実験した結果、第1の絶縁層22を加熱硬化させる際の温度(200℃)における弾性率E´が、10MPa以上の物性を有する熱可塑性樹脂からなることが好ましいことが分かった。
【0065】
また、より良好にパターニングされた第1の絶縁層22を形成するためには、第2の剥離層29として、第1の絶縁層22を加熱硬化させる際の温度における弾性率E´が15MPa以上であることが好ましく、更には25MPa以上の物性の熱可塑性樹脂を適用することが好ましい。
【0066】
なお、以上の製造方法によって製造された半導体装置10は、実際には、例えば以下のモジュールに適用される。図16は、図1に示す半導体装置10を適用したモジュールを示す、図1に対応した断面図である。図16に示すモジュールは、図1に示す複数の半導体装置10、および受動素子31がプリント基板32の表面上に搭載されるとともに、これらがモールド樹脂体33で封止されたものである。
【0067】
プリント基板32は、例えばシリコン等からなる基板34の表面上および裏面上に、所望の配線パターン35等が形成されるとともに、基板34中に、能動素子36が埋め込まれたものである。
【0068】
プリント基板32は、より具体的には以下の通りである。すなわち、基板34中には、例えばトランジスタ等の能動素子36が埋め込まれている。この能動素子36は、その裏面に、電極37が露出する絶縁膜38を有するものである。そして、基板34の表面から、電極37とともに絶縁膜38が露出するようにして、基板34中に埋め込まれている。
【0069】
能動素子36が埋め込まれた基板34の表面上および裏面上には、それぞれ配線パターン35が形成されている。これらの配線パターン35は、基板34の貫通孔の内壁に設けられたVia層39を介して電気的に接続されている。さらに、基板34の表面上に形成された配線パターン35の一部は、能動素子36の電極37に電気的に接続されている。
【0070】
このような配線パターン35を含む基板34の表面上および裏面上、および貫通孔の内部には、絶縁膜40が形成されている。
【0071】
基板34の表面側の絶縁膜40の表面上には、配線パターン35に接続された表面電極41が形成されており、基板34の裏面側の絶縁膜40の表面上には、配線パターン35に接続された裏面電極42が形成されている。
【0072】
さらに、基板34の表面側の絶縁膜40の表面上、および基板34の裏面側の絶縁膜40の表面上には、上述の表面電極41および裏面電極42が露出するようにソルダーレジスト膜43が形成されている。
【0073】
なお、表面電極41の一部は、配線パターン35の一部を介して、能動素子36の電極37に電気的に接続されている。
【0074】
以上に説明したプリント基板32の表面上には、上述のように、図1に示す複数の半導体装置10が搭載されている。複数の半導体装置10は、それぞれが図1に示される状態から上下反転された状態で、プリント基板32の表面上に、DFA等の接着剤44を介して積層されている。この際、複数の半導体装置10は、図16においては図示を省略するが、図1に示される裏面電極19が上面から露出するように積層されている。
【0075】
各半導体装置10の裏面電極19の表面上(図1の裏面電極19の裏面上に相当)には、第1乃至第3の電極パッド13、16、25と同様の電極パッド(図示せず)が形成されている。そして、各電極パッド間、および、最下層の半導体装置10の電極パッドとプリント基板32の表面電極41との間は、例えばAuワイヤ等の導体45によって相互に電気的に接続されている。
【0076】
また、プリント基板32の表面上には、受動素子31が、プリント基板32の表面電極41に電気的に接続されるようにして搭載されている。なお、この受動素子31は、例えば抵抗、キャパシタ、インダクタ等である。
【0077】
このように複数の半導体装置10および受動素子31が搭載されたプリント基板32の表面上には、装置10および受動素子31を覆うようにモールド樹脂体33が形成されており、これによって封止されている。
【0078】
また、上述のプリント基板32の裏面電極42の表面上には、それぞれ例えば半田ボール等の外部電極47が形成されている。
【0079】
図16に示されるモジュールは、図1の半導体装置10を製造した後、複数の半導体装置10を、プリント基板32の表面上に、接着剤41を介して積層する。これと同時に、プリント基板32の表面上には、受動素子31を実装する。この後、プリント基板32の表面上に、複数の半導体装置10、および受動素子31を覆うようにモールド樹脂33を形成し、プリント基板32の裏面に外部電極47を搭載する。図16に示すモジュールは、以上のように製造される。
【0080】
(第2の実施形態)
図17は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置の要部を示す垂直断面図である。図17に示す半導体装置50は、配線層51の表面に半導体チップ52が、いわゆるフリップチップ実装されており、この半導体チップ52が樹脂体53で覆われたものである。以下に、この半導体装置について説明する。
【0081】
図17に示すように、半導体チップ52は、外部電極である複数の金属バンプ54がチップ52の裏面に配列形成されたものである。この半導体チップ52は、それぞれの金属バンプ54が、後述する配線層51の表面から露出する表面電極55に接触するように、配線層51上にフリップチップ実装されている。
【0082】
各金属バンプ54は、例えば、SuAgからなる20μm径のものであり、このような複数の金属バンプ54が、例えば、40μmのピッチで半導体チップ52の裏面上の周辺部に形成されている。なお、各金属バンプ54は、SnAg以外に、Au、Sn、Ag、Cu、Bi、In、Ge、Ni、Pd、Pt、Pb等からなるものであってもよい。
【0083】
このような半導体チップ52が実装される配線層51は、表面電極55、多層にわたって形成された複数の配線パターン56、および上下方向において隣接する配線パターン56間を相互に電気的に接続するVia層57が、絶縁膜58で覆われたものである。表面電極55は、この表面が絶縁膜58の表面から露出するように形成されている。
【0084】
また、配線層51の絶縁膜58は、複数の絶縁層が積層された構成であり、図17に示す半導体装置50において、絶縁膜58は、第1の絶縁層59、第2の絶縁層60、第3の絶縁層61、第4の絶縁層62、第5の絶縁層63がこの順で積層された構成である。従って、表面電極55は、第5の絶縁層63の表面から露出するように形成されており、配線パターン56は、第2、第4の絶縁膜60、62をそれぞれ貫通するように形成されている。また、Via層57は、第1、第3の絶縁膜59、61を貫通し、直上若しくは直下に形成される配線パターン56に接触するように形成されている。
【0085】
なお、これらの表面電極55、配線パターン56、およびVia層57は、対応するそれぞれの絶縁層59乃至63の開口パターン内に形成されるものであるが、後述のように、特に配線パターン56およびVia層57が電解めっき法によって形成される場合、配線パターン56、およびVia層57と、対応する絶縁層59乃至63の開口パターンとの間に、電解めっき用のシード膜64が形成される。なお、シード膜64は、例えばTi膜とCu膜とがこの順で積層されたものである。
【0086】
このような配線層51の表面上には、半導体チップ52を覆うように樹脂体53が形成されており、これによって、半導体チップ52は封止されている。なお、樹脂体53は、配線層51の表面と半導体チップ52の裏面との間に形成された第1の樹脂であるアンダーフィル樹脂65と、半導体チップ52の裏面以外を覆う第2の樹脂であるモールド樹脂66と、によって構成される。
【0087】
次に、図17に示される半導体装置50の製造方法について説明する。この製造方法も第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法と同様に、例えばシリコンウエハ等の支持体27表面に、支持体27を剥離する際の温度において軟化する第1の剥離層28、および第1の剥離層28と同温時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層28より高い第2の剥離層29をこの順で積層形成し、これらの第1、第2の剥離層28、29を従来の剥離層と同様に適用して、半導体装置を製造する方法である。以下に、この製造方法について、図18乃至図23を参照して詳細に説明する。図18乃至図24は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置50の製造工程を示す、図17に対応する断面図である。
【0088】
まず、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法と同様に、支持体27上、例えば支持体27の表面上に、第1の剥離層28、第2の剥離層29を、この順で形成する。
【0089】
次に、第2の剥離層29上、例えば第2の剥離層29の表面上に配線層51を形成する。配線層51は、以下のように形成される。まず、図18に示すように、第2の剥離膜29の表面上に、開口パターン30−1を有する第1の絶縁層59を形成する。これは、例えば、第2の剥離膜29の表面上に、ポリイミド等の有機材料からなる絶縁材料を塗膜し、露光、現像によりパターニングを行って、絶縁材料に開口パターン30−1を形成する。そして、開口パターン30−1が形成された絶縁材料を、例えば200℃に加熱することにより絶縁材料を硬化させることにより形成される。なお、開口パターン30−1は、例えば、配線層51の表面上に、20μm径の金属バンプ54が40μmのピッチで複数設けられた半導体チップ52を搭載する場合、この金属バンプ54のサイズおよびピッチに適合するように、すなわち、20μm径、40μmのピッチで開口パターン30−1を形成する。
【0090】
ここで、第1の絶縁層59となる絶縁材料を例えば200℃に加熱するとき、これに接する第2の剥離層29も同じ温度まで加熱される。しかし、第2の剥離層29は、第1の実施形態において説明したように、第1の剥離層28と同温時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層28よりも高い層である。従って、第2の剥離層29の表面上に、開口パターン30−1の位置ずれ、寸法の変化、および形状の変形が抑制された第1の絶縁層59を形成することが可能となる。
【0091】
次に、図19に示すように、第1の絶縁層59の表面上に、開口パターン30−2を有する第2の絶縁層60を形成する。第2の絶縁層60は、第1の絶縁層59と同様に形成すればよいが、第2の絶縁層60の複数の開口パターン30−2のいくつかが、第1の絶縁層59の開口パターン30−1上に位置するように形成される。
【0092】
次に、図20に示すように、第1の絶縁層59の開口パターン30−1内にVia層57を形成するとともに、第2の絶縁層60の開口パターン30−2内に配線パターン56を形成する。Via層57および配線パターン56は、例えば、Cuを電解めっきすることによって形成される。
【0093】
すなわち、まず、開口パターン30−1、30−2内を含む第2の絶縁層60の表面上に、電解めっき用のシード膜64としてTi膜、Cu膜をこの順で形成する。Ti膜は例えば0.05μm、Cu膜は、例えば0.1μmの厚みで形成される。次に、これらのシード膜64の表面上にレジスト材料を塗布する。レジスト材料は、例えば5μmの厚みで塗布される。次に、レジスト材料を露光現像することによって、第2の絶縁層60の開口パターン30−2上に開口パターンを有するレジスト層を形成する。これにより、シード膜64は、レジスト層の開口パターンのみから露出するため、これを電極として電解Cuめっきを行う。この後、レジスト層を除去し、さらに、レジスト層の除去によって表面に露出したシード層64をエッチングにより除去する。Cu膜は硫酸と過酸化水素水を混合させたものを用いてエッチングされ、Ti膜はアンモニア水と過酸化水素水を混合させたものを用いてエッチングされる。Via層57および配線パターン56は、以上のようにして形成される。
【0094】
以下、図18乃至図20に示す工程を繰り返すことにより、図21に示すように、第2の剥離層29の表面上に配線層51を形成する。すなわち、図18、図19に示す工程と同様にして、第2の絶縁層60の表面上に、開口パターンを有する第3、第4の絶縁層61、62を形成する。次に、第3、第4の絶縁層61、62に形成された開口パターン内に、図20に示す工程と同様にして、Via層57および配線パターン56を形成する。次に、第4の絶縁膜62の表面上に、開口パターンを有する第5の絶縁層63を形成し、この開口パターン内に、表面電極55を形成する。なお、特に表面電極55は、例えば、第5の絶縁層63の開口パターン内に、Ni(3μm)、Pd(0.03μm)、Au(0.3μm)をこの順でめっき法により形成することによって形成される。特にNiは、3μm〜10μm程度の膜厚で形成されることが望ましい。
【0095】
次に、図22に示すように、複数の金属バンプ54を有する複数の半導体チップ52を、配線層51の表面上にフリップチップ実装する。フリップチップ実装は、例えば以下のようにして行われる。
【0096】
まず、金属バンプ54上にフラックスを塗布した後、複数の半導体チップ52を、配線層51の表面上に、それぞれの金属バンプ54が表面電極55に接触するようにして、フリップチップボンダーを用いて搭載する。次に、複数の半導体チップ52が配線層51の表面上に搭載された状態でリフロー炉に入れ、金属バンプ54と表面電極55とを接続させる。この後、フラックスを洗浄液で除去する。金属バンプ54と表面電極55との接続は、フラックスを用いずに、金属バンプ54の酸化膜をプラズマを用いて除去し、フリップチップボンダーを用いてパルスヒートで行ってもよい。
【0097】
このように配線層51の表面上に半導体チップ52をフリップチップ実装した後、図23に示すように、半導体チップ52を、アンダーフィル樹脂65およびモールド樹脂66からなる樹脂体53で封止する。すなわち、まず、半導体チップ52と配線層51との間にアンダーフィル樹脂65を流し込んで半導体チップ52を固定した後、配線層51の表面に、半導体チップ52を覆うようにモールド樹脂66を塗布する。この後、樹脂体53を加熱することにより硬化させる。これにより、半導体チップ52は、樹脂体53に封止される。
【0098】
次に、配線層51の表面上に複数の半導体チップ52を搭載した後、支持体27を例えば250℃に加熱することによって、第1の剥離層28を軟化させる。この後、図24に示すように、支持体27を水平方向にスライドさせることによって、配線層51から支持体27を剥離する。なお、支持体27を剥離した後、配線層51の裏面には、第1、第2の剥離層28、29である熱可塑性樹脂の少なくとも一部が残渣として残る。
【0099】
この支持体27の剥離工程において、第1の剥離層28は、支持体27の剥離時の温度において、支持体27の剥離が可能となる程度に軟化する層である。従って、配線層51から支持体27を容易に剥離することができる。
【0100】
次に、配線層51の裏面の残渣を、洗浄溶媒を用いて除去する。最後に、図11に示す工程と同様にして、モールド樹脂66および多層配線層51を、スクライブライン(図示せず)に沿ってダイシングすることによって、複数の図17に示される半導体装置50が一括形成される。
【0101】
以上に示される半導体装置50の製造方法であっても、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法と同様に、支持体27上に、支持体27の剥離時の温度において軟化する第1の剥離層28を形成し、この第1の剥離層28上に、第1の剥離層28と同温時におけるずり粘弾性率G´若しくは弾性率E´が、第1の剥離層28よりも高い第2の剥離層を形成する。従って、第1の絶縁層59となる絶縁材料に形成される開口パターン30−1の位置ずれ、寸法の変化、および形状の変形を抑制し、良好にパターニングされた第1の絶縁層59を第2の剥離層29上に形成することができ、かつ、支持体27と配線層51との熱スライド剥離を容易に行うことができる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【0102】
なお、以上に説明した図17に示す半導体装置50は、実際には、例えば以下のモジュールに適用される。図25は、図17に示す半導体装置50を適用したモジュールを示す、図17に対応した断面図である。図25に示すモジュールは、図1に示す半導体装置50を含む半導体装置67、および受動素子31がプリント基板32の表面上に搭載されるとともに、これらがモールド樹脂体33で封止されたものである。なお、図25に示すモジュールは、プリント基板32の表面上に実装される半導体装置67以外は、全て図16と同一である。
【0103】
図25に示すように、半導体装置67は、図17に示される半導体装置50の裏面(配線層51の裏面)に、さらに半導体チップ52がフリップチップ実装されるとともに、この半導体チップ52が樹脂53(アンダーフィル樹脂65およびモールド樹脂66)で封止されたものであり、図17に示す状態から上下反転した状態でプリント基板32の表面上に実装されたものである。
【0104】
すなわち、半導体装置67の配線層51の裏面には、Via層57および配線パターン56に接続される複数の裏面電極68が形成されている。これらの裏面電極68のうち、少なくとも1つを除いた全てには、半導体チップ52の金属バンプ54が接触している。このように、配線層51の裏面上には、表面上と同様にして半導体チップ52が実装されている。
【0105】
また、配線層51の裏面と半導体チップ52との間には、アンダーフィル樹脂65が形成されている。さらに、配線層51の裏面上のうち、金属バンプ54が接触しない裏面電極68上を除いた領域には、半導体チップ52を覆うようにしてモールド樹脂66が形成されている。
【0106】
このような半導体装置67は、図17に示される状態から上下反転した状態でプリント基板32の表面上に実装される。そして、モールド樹脂66で覆われない裏面電極68の表面、およびプリント基板32の表面電極41の表面上には、電極パッド(図示せず)が形成されており、これらの電極パッド間は、例えばAu等の金属からなる導体69によって電気的に接続されている。
【0107】
このようにプリント基板32の表面上に実装された半導体装置67、および受動素子31は、モールド樹脂体33で封止されている。
【0108】
図25に示されるモジュールは、図17の半導体装置50を製造した後、配線層51の裏面から露出したシード膜64の一部であるTi膜を、エッチングより除去する。次に、Ti膜の除去によって露出したCu膜上に、例えば無電界めっきにより、Niを3μm、Pdを0.05μm、Auを0.5μm形成することにより、裏面電極68を形成する。このとき、配線パターン56に接続される裏面電極68(半導体チップ52の金属バンプ54が接触されない裏面電極68)も、同時に形成しておく。次に、半導体チップ52を、配線層51の表面上に搭載された半導体チップ52と同様にして、フリップチップ実装し、樹脂53で封止する。次に、この配線層51の両面に半導体チップ52が搭載され、樹脂53で封止された半導体装置67を、プリント基板32の表面上に搭載し、配線層51の裏面電極68と、プリント基板の表面電極41とを、Auワイヤ等の導体69を用いて電気的に接続させる。次に、プリント基板の32表面上の半導体装置67をモールド樹脂33で封止し、プリント基板32の裏面に外部電極47を搭載する。図25に示すモジュールは、以上のように製造される。
【0109】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0110】
例えば、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法においては、第2の剥離層29の表面上に配線層14を形成し、第2の実施形態に係る半導体装置50の製造方法においては、第2の剥離層29の表面上に配線層51を形成した。しかし、第1の実施形態に係る半導体装置10の製造方法においては、第2の剥離層29の表面上に図17に示される配線層51を形成してもよいし、第2の実施形態に係る半導体装置50の製造方法においては、第2の剥離層29の表面上に図1に示される配線層14を形成してもよい。すなわち、配線層14、51の製造方法は、少なくとも開口パターン30、30−1を有する第1の絶縁層22、59が第2の剥離層29の表面上に形成される工程を含むものであれば、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0111】
10、50・・・半導体装置
11・・・第1の半導体チップ
12・・・第2の半導体チップ
13・・・第1の電極パッド
14・・・配線層
15・・・接着層
16・・・第2の電極パッド
17・・・導体
18・・・表面電極
19・・・裏面電極
20・・・配線パターン
21・・・絶縁膜
22・・・第1の絶縁層
23・・・第2の絶縁層
24・・・第3の絶縁層
25・・・第3の電極パッド
26・・・モールド樹脂体
27・・・支持体
28・・・第1の剥離層
29・・・第2の剥離層
30、30−1、30−2・・・開口パターン
31・・・受動素子
32・・・プリント基板
33・・・モールド樹脂体
34・・・基板
35・・・配線パターン
36・・・能動素子
37・・・電極
38・・・絶縁膜
39・・・Via層
40・・・絶縁膜
41・・・表面電極
42・・・裏面電極
43・・・ソルダーレジスト膜
44・・・接着剤
45・・・導体
47・・・外部電極
51・・・配線層
52・・・半導体チップ
53・・・樹脂体
54・・・金属バンプ
55・・・表面電極
56・・・配線パターン
57・・・Via層
58・・・絶縁膜
59・・・第1の絶縁層
60・・・第2の絶縁層
61・・・第3の絶縁層
62・・・第4の絶縁層
63・・・第5の絶縁層
64・・・シード膜
65・・・アンダーフィル樹脂
66・・・モールド樹脂
67・・・半導体装置
68・・・裏面電極
69・・・導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の上に第1の剥離層を形成する工程と、
前記第1の剥離層の上に、第2の剥離層を形成する工程と、
前記第2の剥離層の上に絶縁材料を形成し、前記絶縁材料をパターニングする工程と、
前記パターニングされた前記絶縁材料を加熱硬化させることにより、開口パターンを有する絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の前記開口パターン内に金属を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記金属に電気的に接続されるように半導体チップを載置する工程と、
前記半導体チップを樹脂体で封止する工程と、
前記第1の剥離層を加熱することにより、前記絶縁層から前記支持体を剥離する工程と、
を具備し、
前記第2の剥離層は、同温時におけるずり粘弾性率若しくは弾性率が前記第1の剥離層より高いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の剥離層は、前記絶縁層から前記支持体を剥離する際の温度におけるずり粘弾性率G´が2500Pa以下の熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の剥離層は、前記絶縁材料を加熱硬化させる温度における弾性率E´が10MPa以上の樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層から前記支持体を剥離する工程の後に、前記絶縁層の裏面に残渣として残された前記第1の剥離層および前記第2の剥離層を、溶媒を用いて除去する工程をさらに具備し、
前記第2の剥離層は、前記第1の剥離層と同じ溶媒によって除去可能な熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の剥離層は、前記絶縁層から前記支持体を剥離する際の温度において、前記絶縁層から前記支持体を剥離することが可能なずり粘弾性率若しくは弾性率を有する熱可塑性樹脂であり、
前記絶縁層から前記支持体を剥離する工程は、前記支持体を、前記絶縁層からスライド剥離する工程であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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