説明

半導体装置の製造方法

【課題】基板の剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製
造方法を提供する。
【解決手段】実施形態にかかる半導体装置の製造方法は、支持基板の一方の面に半導体積層体を設けて第1の基板を形成させ、第1の基板のうち半導体積層体が形成された面に、第1の基板の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数を有する第2の基板を密着させ、第1の基板と第2の基板のうち、熱膨張係数が小さい一方の基板に対して、他方の基板より高い温度で加熱して接合する。第1の基板は、ナイトライド系半導体層を有するサファイア基板、またはGaAs基板であり、第2の基板は、シリコン基板、GaAs基板、Ge基板、金属基板のいずれかであってもよい。第1の基板と第2の基板の間に、第1接合層と第2接合層と第3接合層と順に積層し、第1接合層と第2接合層と第3接合層とを介して、第1の基板と第2の基板を加熱して接合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造には、同じ種類の基板、あるいは異なる種類の基板を接合する工程がある。この2枚の基板を接合する方法は複数あるが、熱処理を伴う方法が一般的である。例えば、金属、半田、ガラスフリットなどの接合材料を用いる場合は、2枚の基板を加熱して接合界面の接合材料を溶融、あるいは軟化させて、2枚の基板を結合一体化させ、その後、基板を室温に戻す手法がとられている。
【0003】
一方、接合材料を用いない場合は、例えば直接接合と呼ばれる方法や、表面活性化接合と呼ばれる方法などが用いられる。
直接接合とは、OH基どうしの結合力で2枚の基板を室温で密着させ、その後基板の温度を上げて界面の接合反応を進めることにより、2枚の基板を強固に接合し、最後に基板を室温に戻す手法である。
また表面活性化接合とは、真空中で基板表面にプラズマやスパッタ処理をして、汚染や酸化膜を除去し、あるいはダングリングボンドを形成するなどの活性化処理を行い室温で活性化された面を接触させるだけで、2枚の基板を接合できる技術である。室温で貼り合わせた後に、さらに熱処理を加えて接合強度を増すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−57441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら従来の方法を用いて材質が異なる基板同士を接合する場合、両基板の熱膨張係数が異なるために基板に問題が生じることがある。すなわち、昇温または降温の際に、熱膨張係数が大きい方の基板が小さい方の基板に比べて、より多く延びる、または、縮むため、接合界面や基板本体に熱応力がかかり、接合中や接合後に剥がれが生じたり、基板自体に反りが発生したり、また破壊が生じることがある。
【0006】
そこで、本発明は基板の剥がれや破壊などを発生させずに、異種の基板を接合する半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態にかかる半導体装置の製造方法は、支持基板の一方の面に半導体積層体を設けて第1の基板を形成し、前記第1の基板のうち半導体積層体が形成された面に、前記第1の基板の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数を有する第2の基板を密着させ、前記第1の基板と前記第2の基板のうち熱膨張係数が小さい一方の基板に対して、他方の基板より高い温度で加熱して接合する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法に係る半導体装置の模式断面図である。
【図2】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す模式工程断面図である。
【図3】第1の実施形態にかかる基板の接合および圧着する工程を示した模式工程断面図である。
【図4】第1の実施形態にかかる接合および圧着方法に係る時間と温度の条件を例示したグラフであり、図4(a)は第1の実施形態にかかる時間/温度の条件を、図4(b)は第1の比較例にかかる時間/温度の条件を示す。
【図5】第1の実施形態にかかる第1の変形例にかかる半導体装置の製造工程を示す模式工程断面図である。
【図6】第1の実施形態にかかる第1の変形例におよび圧着方法に係る時間と温度の条件を例示したグラフである。
【図7】第2の実施形態に係る半導体製造方法に係る半導体装置の模式断面図である。
【図8】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す模式工程断面図である。
【図9】第2〜第4の実施形態にかかる基板の接合および圧着する工程を示した模式工程断面図である。
【図10】第2の実施形態および第2の比較例にかかる接合および圧着方法に係る時間と温度の条件を例示したグラフであり、図10(a)は第2の実施形態にかかる時間/温度条件を、図10(b)は第2の比較例にかかる時間/温度条件を示す。
【図11】第2の実施形態の変形例にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフであり、図11(a)は第2の実施形態の第1の変形例にかかる時間/温度の条件を、図11(b)は第2の変形例に時間/温度条件を、図11(C)は第3の変形例にかかる時間/温度の条件を示す。
【図12】第3の実施形態にかかる半導体装置の製造方法に係る半導体装置の模式断面図である。
【図13】第3の実施形態にかかる半導体装置の製造工程を示す模式工程断面図である。
【図14】第3の実施形態にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフであり、図14(a)は第3の実施形態にかかる時間/温度条件を示し、図14(b)は本実施形態の第1の変形例にかかる時間/温度条件を示す。
【図15】第4の実施形態にかかる半導体装置500を例示する模式断面図である。
【図16】第4の実施形態にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
【0010】
「接合」とは2枚の基板を直接、または接合層を介在して一体化することを意味し、本発明の範囲である熱処理を伴う場合は、熱処理工程も「接合」工程の一部に含まれる。
「密着」とは、接合する基板同士が、外力または自力で接合面全面に渡って接触している状態を意味する。
「InGaAlP系」とは、Inx(Ga1−yAly)1−xP(0<x<1、0≦y≦1)の組成式で表される半導体積層体を意味する。
【0011】
[第1の実施形態]
本実施形態は、熱膨張係数が異なる異種基板を、共晶半田金属を用いて共晶接合する方法に関する。
なお、以下の説明では、サファイア基板上にGaNエピタキシャル層を成長させた基板とシリコン基板とを用意し、両基板を、共晶半田金属を用いて共晶接合する方法に関して具体的に説明するが、本実施形態に用いることが可能な基板は上記に限られない。例えば、GaAs基板に、InGaAlP系をエピタキシャル成長させた基板に対して、Si基板を接合させる方法にも適用可能である。また、以下の説明では、n型基板にp型の半導体層が形成された半導体装置を一例として上げるが、p型基板にn型の半導体層が形成された半導体装置に対しても適用可能である。
【0012】
図1は、本実施形態の半導体製造方法に係る半導体装置1の模式断面図を示す。図1に示すように、半導体装置1は、例えば、GaN系LEDである。
半導体装置1は、上から、上部電極10と、半導体積層体20と、反射層30と、接合層40と、Si基板50と、下部電極60とを有する。
【0013】
半導体積層体20は第1の主面と第2の主面を有し、第1の主面の側に上部電極10が設けられており、第2の主面の側に設けられた反射層30と接合層40とを介してSi基板50と下部電極60が設けられている。
半導体積層体20は、図示しないサファイア基板を成長用基板として、ガリウムナイトライド(GaN)系化合物半導体層をエピタキシャル成長させることにより形成されたものである。具体的には、半導体積層体20は、活性層23と、この活性層23を中心に、第1の主面の側にn型クラッド層22を、第2の主面の側にp型クラッド層24とを積層して有する。半導体積層体20は、電流を拡散し、電極とのコンタクトを取るため、必要に応じてInやAlを含有するGaN系半導体層を含む複数の層を有している。
活性層23は、例えば、DH(Double Hetero)、MQW(Multiple‐Quantum Well)の構造であってもよい。活性層23は、n型クラッド層22およびp型クラッド層24によって両側から挟まれ、縦方向にキャリアを閉じ込める。
【0014】
なお、半導体積層体20は、上部電極10とコンタクトをとるコンタクト層(図示せず)や、輝度を向上させる透明導電膜(図示せず)を有していてもよい。反射層30は、半導体積層体20の第2の主面の側にバリア層30を解して設けられている。反射層30は、例えば、反射率の高い銀(Ag)や、接合層を兼ねた金(Au)や、アルミニウム(Al)などの金属、あるいはこれらを主成分とする合金、であってもよい。なお、半導体積層体20と反射層30との間には、Ti、Ni、W、Ptなどを主な材質とするバリア層が設けられていてもよい(図示せず)。
【0015】
反射層30は、反射を必要とする部分にだけ設けてもよい(図示せず)。例えば、半導体積層体20の第2の主面の中央にのみ反射膜30を設けて、周辺部は反射膜30を設けずに半導体積層体20とSi基板50を接合することも可能である。一般に反射膜は隣接する膜や基板との密着性が低いため、このようにしても密着強度が変化することはない。一方で、光の反射量を維持しつつ、半導体積層体20とSi基板50との接合強度を増やすことが可能となる。さらにこのような構造であれば、機械的および化学的に弱い反射層30を露出させることなく、チップを切り分けることが可能となるため、ブレードダイシング工程における歩留りを上げ、チップの信頼性を向上させる。
【0016】
接合層40は、反射層30の半導体積層体層の反対側、あるいは半導体積層体20の第2の主面の側に設けられている。本実施形態では、説明の便宜上、接合層40はAuを主な材質とした金スズ(AuSn)とするが、金インジウム(AuIn)(Inの融点:156℃)、金ゲルマニウム(AuGe)(共晶温度:約350℃)、金シリコン(AuSi)(共晶温度:約380℃)などであってもよい。
【0017】
Si基板50は、第1の主面と第2の主面を有しており、第1の主面において半導体積層体の第2の主面側に接合層40を介して設けられている。Si基板50は例えば、ボロン(B)ドープ、比抵抗1〜20mΩ・cmの高濃度P型、サイズは、4インチ、厚さは300μmであってよい。Si基板50は下部電極60から発光層に電流を供給するため、高濃度低抵抗が望ましく、基板はn型であってもかまわない。
【0018】
下部電極60は、Si基板50の第2の主面の側に設けられている。
【0019】
このように実施形態にかかる半導体装置1は、GaN系の組成を有する半導体積層体20と反射層30を有するため、高い輝度で発光させることが可能となる。
【0020】
図2は、本実施形態にかかる半導体装置1の製造方法を示す模式工程断面図である。
まず、図2(a)に示すように、サファイア基板25(熱膨張係数7.0×10−6/K)上にGaNをエピタキシャル成長させることで、半導体積層体20が形成する。半導体積層体20は、サファイア基板25の側から、低温成長GaNバッファー層21、n型GaNクラッド層22、GaN/InGaNのMQW(Multiple Quantum Well)活性層23、p型GaNクラッド層24を有する。半導体積層体20は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等のエピタキシャル成長装置を用いて形成される。また、上記の様な積層構造に限らず、活性層をInGaNの単層にしたり、クラッド層を組成やキャリア濃度が異なる2段以上の構造にしたり、その他設計上必要な層を付け加えてもかまわない。
次に、図2(b)に示すように、半導体積層体20の第2の主面の側に反射層30を形成する。反射層30の厚さは、反射率を高く保つことが可能な、例えば50nm以上が好ましい。但し、反射層30を厚くし過ぎると、半導体積層体20との間の応力が大きくなり、またコストがかかることから、1μm以下が好ましい。反射層30がAgを主な材質とする場合は、例えば燐酸を含む溶液エッチング法またはドライエッチング法でパターニングがすることができる。なお、反射層30を半導体積層体20の第2の主面全面に形成した後、フォトレジストを用いて反射層のパターニングすることにより反射層30を部分的に設けることができる。
次に、反射層30の上に、第1接合層41を形成する。第1接合層41は、例えば、Auを主な材質とする。第1接合層41の厚さは0.1〜10μmが好ましく、ここでは説明の便宜上1μmとする。
さらに、第1接合層41の上に第2接合層42を形成する。第2接合層42は、説明の便宜上、以下、Au0.28Sn0.72(共晶温度:約280℃)とするが、In、Si、Snの様にAuと低融点の合金を造る金属、あるいはこれらの金属とAuとの合金や混合物、さらにこれらの組み合わせでもかまわない。また、第2接合層の厚さは0.1〜10μmが好ましく、以下の説明では便宜上0.8μmとする。
以下、サファイア基板25の上に半導体積層体20、反射層30、第1の接合層41、第2の接合層42を積層した状態の基板を第1基板Aとする。
【0021】
他方、図2(c)に示すように、Si基板50(熱膨張係数4.2×10−6/K)の上には、例えば、Auを主な材質とする第3接合層を形成する。第3接合層43の厚さは0.1〜10μmが好ましく、ここでは便宜上1μmとする。
【0022】
以下、説明の便宜上、Si基板50の上に第3接合層43を形成した状態の基板を第2基板Bとする。
【0023】
次に、図2(d)に示すように、第1基板Aの第2接合層42と、第2基板Bの第3接合層43とを重ね合わせて加圧し、第2接合層42の融点以上、あるいは第2接合層と第1または第3接合層との共晶温度以上に、加熱して接合する。接合温度は、その材質によって、例えば80〜600℃の温度範囲内とすることができる。溶融した接合層は、接合面が平坦であれば、第2合層42と第3接合層43との粗面の隙間を埋める。また、反射層30が部分的に設けられている場合、反射層30が設けられた部分と設けられない部分との段差を埋めて、第1基板Aと第2基板Bとの接合強度を高めることができる。
さらに、接合工程における時間や温度の条件次第では、第1接合層41と第3接合層43との界面近傍から合金化が進みやすい。熱処理プロセスの温度および時間を変化することにより、合金の組成比を制御できる。この結果、第1接合層41と、第3接合層43との間の接着強度が高められる。
【0024】
最後に、図2(e)に示すように、結晶成長基板としてのサファイア基板25を除去する。例えば、サファイア基板25の側からレーザー光を低温成長GaNバッファー層21に照射し、低温成長GaNバッファー層を分解してサファイア基板25を除去する、いわゆるレーザーリフトオフを用いることが可能である。
また、サファイア基板25と半導体積層体20の間に、化学的に弱い膜を入れておき、この膜をケミカルエッチングしてサファイア基板25を除去する、いわゆるケミカルリフトオフを使用してもよい。
【0025】
その後、上部電極10を半導体積層体20の第1の主面に、下部電極60をSi基板50と接合層40との接合界面とは反対の面に積層することで、図1に示す半導体装置1を得ることが出来る。
【0026】
なお、本実施例では第2接合層42は第1基板A側に設けた上で、第1基板Aと第2基板Bとを接合させたが、第2接合層42は第2基板B側のみ、あるいは第1基板Aと第2基板Bの両方に設けてもかまわない。
また、反射層30、接合層40に使用する、Ag、Au、Sn、In、Si、Sn、およびその他の金属は、相互に、および基板のSiやGaN系エピ膜と反応しやすいため、図示していないが、GaN系エピ膜と反射膜30の間と、反射膜30と第1接合層41の間と、第3接合層とSi基板50との間に、拡散や合金反応を防止する、いわゆるバリア層を設ける方が望ましい。バリア層は、例えば、Ti、W、Pt、Niなどの一般に融点が高い金属やその合金が使われ、必要に応じて、上記金属を組み合わせ、あるいは繰り返し積層することが可能である。
【0027】
図3は、加熱装置100を用いて、2枚の基板を接合する工程を示した模式工程断面図である。加熱装置100は、雰囲気を真空、減圧、または不活性ガスに変化させることが可能な真空チャンバー110と上部加熱板120と下部加熱板130とを備えている。また、加熱装置100は、上側加熱板120と下側加熱板130とを独立に温度制御ができる機能や、この上側加熱板120と下側加熱板130に夾んだ基板を、10トン程度までの加重をかけることが可能な機構を有している(図示せず)。
【0028】
本実施形態では、第1基板Aは上側加熱板120に静電力により固定させられる。一方、第2基板Bは下側加熱板130に静電力により固定させられる。その上で、雰囲気を真空にし、上側加熱板120と下側加熱板130を動作させ、両基板の接合層42、43同士を密着させる。その後、対抗配置された両加熱板により加重Pをもって加圧する。本実施形態では、加重Pは例えば500kgの荷重であってもよい。
【0029】
図4は、本実施形態の接合方法に係る時間と温度の条件を例示したグラフであり、グラフの横軸は時間t(分)、縦軸は温度T(℃)を示す。実線は上側加熱板120の時間/温度を、破線は下側加熱板130の時間/温度を、一点鎖線は両加熱板の時間/温度の平均をそれぞれ示す。
【0030】
本実施形態では、図4(a)に示す通り、熱膨張係数7.0×10−6/Kのサファイア基板25を含む第1基板Aが載置された上側加熱板120と、熱膨張係数4.2×10−6/KのSi基板50を含む第2基板Bが載置された下側加熱板130とを、異なる温度と時間の条件で加熱する。
まず、上側加熱板120については、20分間で室温T0から200度まで昇温し、200度で保持時間t1を60分にして保持した後、40分間で200度から室温T0に戻す。一方、下側加熱板130については、20分間で室温T0から400度まで昇温させ、保持時間t1を60分間にして保持した後、40分間で400度から室温T0に戻す。
両基板の厚さが同じであり、かつ、接合する基板の温度が基板に対して垂直方向に直線的に変化すると仮定した場合、上側加熱板120の設定温度と下側加熱板130の設定温度の平均を示す一点鎖線の温度は、第1基板Aと第2基板Bの接合界面の温度に相当することになる。接合界面の温度が、加熱開始後にAu0.28Sn0.72の共晶点280℃に達すると、まずAu0.28Sn0.72からなる第2接合層42が共晶となって溶融し、次いで第1接合層41と一体化する。60分間の保持後、温度を下げると、降温中に溶融していた第2接合層42のAuSnは固化して、両基板は図2の(d)に示すように接合層の接合界面において接合する。本実施形態では、接合界面が固化固定された時点で熱膨張係数が大きい第1基板Aの方が第2基板Bよりも温度が低いため、その後室温に戻るまでの熱収縮が、従来の第1と第2基板を同じ温度で加熱する小さくなり、両基板が同じ温度で固定される比較例よりも、熱応力が小さくなる。
上記の共晶接合を5回繰り返した結果、5組の基板は全て全面が接合し、スリップラインやクラックは見られなかった。
【0031】
さらに図2(e)の工程の通りレーザーリフトオフでサファイア基板25を除去しても、すべての接合基板においてスリップや割れは生ぜず、この接合基板の半導体積層体20の第1の主面とSi基板50とに上部電極10と下部電極60を設け、ダイシングを行い各チップに切り分けることで、図1の構造の半導体装置1を得ることができる。
【0032】
(第1の比較例)
図4(b)は、第1基板Aが載置された上側加熱板120と第2基板Bが載置された下側加熱板130において、両加熱板の時間/温度の条件を同じにした第1の比較例を示す。第1の比較例では、上側加熱板120と下側加熱板130とを、20分間で室温T0から300度に昇温し、300度で保持時間t1を60分にして保持した後、300度から室温T0まで40分間で降温することで、接合した。
【0033】
接合層40の温度が共晶点、すなわちAuSnの共晶温度である280度を越えると、まず第2接合層42のAuSnが共晶となって溶融し、次いで上下の第1接合層41と第3接合層43との間でAuとSnの拡散が起こり一体化する。保持時間t1を60分にして保持した後、温度を下げると、溶融していた第2接合層42のAuSnは固化して、両基板は図2(d)に示すように接合層40において接合する。
【0034】
第1の比較例の条件で5組の基板を接合し、超音波探傷(SAT:Scanning Acoustic Tomography)で接合界面付近を検査した結果、すべての基板において、第1基板Aの半導体積層体にスリップが生じていることを確認した。
さらに、図2(e)のサファイア基板25を除去する工程で、レーザーリフトオフによりサファイア基板12を取り除いた場合、3組の接合基板では、第2基板Bの支持基板50が割れた。
【0035】
以上説明したように、第1の比較例における第1基板Aと第2基板Bでは、上記説明した本実施形態のそれと異なり、スリップラインやクラックが生じ易い。これは、本実施形態では、熱膨張係数が異なる第1基板と第2基板に対して、異なる条件で共晶接合を行ったからである。すなわち、共晶接合では、降温を始めて、共晶が固化した時点で接合界面が固定されて熱応力が発生し始めるために、熱膨張係数が大きく縮む量が大きいサファイア基板25を含む第1基板A側は、熱膨張係数が小さく縮みが少ないSi基板50を含む第2基板Bに引っぱられて、引っぱり応力が発生する。逆に、Si基板50を含む第2基板Bは、サファイア基板25を含む第1基板Aより縮むため、圧縮応力が発生する。このため、熱応力によって半導体積層体20にスリップが入り、基板が割れることとなる。
【0036】
したがって、本実施形態のように、第1基板Aと第2基板Bとを比較した場合に、熱膨張係数が大きい第1基板Aの側のピーク温度を低くし、熱膨張係数が小さい第2基板Bの側のピーク温度を高く設定することで、第1基板Aの第2基板Bへの引っ張り応力を低減し、熱応力によるスリップラインやクラックの発生を防ぐことが可能となる。
さらに、本実施形態に示すように、第2接合層42を熱処理温度が低い方の基板、すなわち熱膨張係数が大きい第1基板Aの側に設けることにより、接合熱処理中に、第2接合層42と第1接合層41の界面に比べて、第2接合層42と第3接合層43の界面の温度がより高くすることが可能となる。これにより、第2基板Bの接合界面の拡散反応を促進し、より強固な接合を得ることが可能となる。
【0037】
(変形例)
図5は本実施形態の変形例1にかかる半導体装置1の製造工程を示す模式工程断面図である。図5(a)、(b)、(c)に示すように、この半導体装置1の製造工程は、第1基板Aの製造工程において、第1接合層41と第2接合層43の間に、インサート層44を設けることとする。また、第1基板Aにおいて反射層30と第1接合層41の間に第1バリア層71を、第2基板Bにおいて第3接合層43とSi基板50の間に第2バリア層72を設けるこことする。
【0038】
インサート層44は、例えば、厚さ20nmのTiを主な材質として含む単層であってよい。第1バリア層71および第2バリア層72は、例えば、各基板の側から順にTi100nm/Pt200nm/Ti100nmを含む3層構造であってもよい。
【0039】
図5(d)に示すように、上記の層を含む第1基板Aと第2基板Bとを接合熱処理を行った。
【0040】
図6は、本実施形態の変形例にかかる接合および圧着方法に係る時間と温度の条件を例示したグラフであり、グラフの横軸は時間t(分)、縦軸は温度T(℃)を示す。図6に示す熱接合処理条件では、第1の実施形態で説明したインサート層44が設けられない接合方法よりも、昇温速度を40分遅くするが、保持時間t1は既述の実施形態同様60分とする。
【0041】
かかる時間と温度の条件の下では、インサート層44を含む基板すべてに接合部分が見られなかった。一方、インサート層44を含まない基板すべてにおいては、未接合部分が見られた。
【0042】
未接合部分が発生する理由は次の通りである。昇温中に、まず、第2の接合層42が溶融する。次に第2の接合層42は、第1の接合層41および第3の接合層43と相互拡散を起こして一体化し、第1基板Aと第2基板Bとが接合する。しかしながら、相互拡散は、接合に必須の第2接合層42と第3接合層43間よりも、第1接合層41と第2接合層42間で先に起こる。なぜなら第1接合層41と第2接合層42は蒸着などにより連続して形成されるため、隙間がなく層間の不純物も少ない。これに対して、第3の接合層43は別の基板上に形成され、外気に触れた後、同じく外気に触れた第2接合層42との接合装置内で加圧により密着させるだけなので、両接合層間にはミクロな隙間や吸着した水分や不純物が存在するためである。第1の接合層41の拡散が始まってから第2の接合層42との拡散が始まるまでの時間が長くなると、第2の接合層42の低融点成分が第1の接合層41との拡散や反応で消費されてしまい、第3の接合層43と反応できなくなりボイドが発生する。反応が始まる時間の差は、接合面が平滑でない場合、吸着不純物が多い場合、さらに昇温をゆっくりした場合に長くなり、未接合部分が発生し易い傾向が見られた。
【0043】
本変形例の様に、第1接合層41と第2接合層42の間にインサート層44を入れることで、第1接合層41と第2接合層42間の拡散と反応を抑制することが可能となり、接合に必要な第2と第3の接合層間の拡散と反応を阻害せず、未接合部分の発生を抑制する。
【0044】
[第2の実施形態]
本実施形態は、熱膨張係数が異なる2つの異種基板を直接接合法で接合する方法に関する。以下、GaAs基板上にInGaAlPをエピ成長させた化合物半導体を含む基板と、GaP基板上にGaP膜をエピ成長させた基板を用意し、両基板を直接接合法で接合する方法に関して説明するが、本実施形態に用いることが可能な基板は上記に限られない。例えば、サファイア基板上にGaNエピタキシャル層を成長させた基板に対して、シリコン基板を接合する方法にも適用可能である。
【0045】
図7は、本実施形態に係る半導体製造方法に係る半導体装置300の模式断面図を示す。図7に示すように、半導体装置300は、例えば、InGaAlP系LEDである。半導体装置300は、上から上部電極310と、半導体積層体320と、基板350と、下部電極360とを有する。
半導体積層体320は第1の主面と第2の主面を有し、第1の主面の側に上部電極310が設けられており、第2の主面の側に支持基板350と下部電極360が設けられている。
【0046】
半導体積層体320は、図示しないN型のGaAs基板324を成長用基板として、InGaAlPをエピタキシャル成長させることにより形成されたものである。具体的には、半導体積層体320は、活性層322と、この活性層322を介在させて、第1の主面の側にn型クラッド層321を、第2の主面の側にp型クラッド層323とを積層して有する。なお、半導体積層体320は、上部電極310とコンタクトをとるコンタクト層(図示せず)や、輝度を向上させる透明導電膜(図示せず)を有していてもよい。活性層322は、例えば、DH(Double Hetero)、MQW(Multiple‐Quantum Well)の構造であってもよい。活性層322は、n型クラッド層321およびp型クラッド層323によって両側から挟まれ、縦方向にキャリアを閉じ込める。
GaP基板350は、半導体積層体320の第2の主面の側に設けられている。支持基板350は、例えば、GaPを主な材質としており、直径3インチで厚さ300μmである。基板は、例えば、不純物として1×1018/cmのZnを含有するP型の基板であってもよい。
【0047】
図8は、本実施形態にかかる半導体装置300の製造工程を示す模式工程断面図である。
まず、図8(a)に示すように、n型のGaAs基板(熱膨張係数5.2×10−6/K)324上にInGaAlPをエピタキシャル成長させることで、半導体積層体320を形成する。半導体積層体320は、GaAs基板324の側から、n型クラッド層321、活性層322、p型クラッド層323を有する。半導体積層体320は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等のエピタキシャル成長装置を用いて形成される。
n型のGaAs基板324は、サイズが直径3インチ、厚さ300μmであり、不純物としてSiが約1×1018/cmドープされている。GaAs基板324と半導体積層体320の間には、バッファー層(図示せず)を有していてもよい。
本実施形態では、n型クラッド層321は1μm、活性層322は0.6μmの厚さを、p型クラッド層323は0.6μmの厚さをそれぞれ有している。以下、説明の便宜上、GaAs基板324上に半導体積層体320を形成させた基板を第3基板Cとする。
【0048】
他方、図8(b)に示すように、GaP基板(熱膨張係数4.7×10−6/K)350が支持基板として用意される。
なお、GaP基板350の上にGaP膜をエピタキシャル成長させることで、支持基板としてのGaP基板350を形成してもよい。具体的には、GaP基板350は、直径3インチで厚さ300μmであり、不純物として1×1018/cmのZnを含有するP型の基板上に、不純物濃度が3×1018/cmになるようにMOCVDで成長させることにより形成される。なお、GaP基板350は、InやAlなどを含むものであってもよい。以下、説明の便宜上、GaP基板350を第4基板Dとする。
本実施形態では、第3基板Cにおいて、InGaAlPの合計厚が2.3μmであり、成長基板としてのGaAs基板厚の100分の1以下であるため、このInGaPエピタキシャル基板はGaAs基板と実質上同じ熱膨張係数、すなわち、5.2×10−6/Kの値を持つものとする。
また、第4基板DにおけるGaP基板21は、仮にGaPエピタキシャル層にInやAlおよびその他の成分を含有していても、エピタキシャル厚が基板に対して薄いため、このエピタキシャル基板は実質上GaP基板と同様の物性を持つ。
これら熱膨張係数の異なる第3基板Cと第4基板Dを、通常の化合物半導体洗浄方法、例えば有機溶剤や界面活性剤などを用いて洗浄し、希弗酸やフッ化アンモニウムで表面酸化膜を除去し、最後に水洗とスピン乾燥をして接合の準備を整える。これらの処理で、基板表面にOH基が形成される。
【0049】
ついで、図8(c)に示す通り、2枚の基板を清浄な空気雰囲気化の室温で密着させる。両基板表面に形成されたOH基同士が水素結合で引き合うため、室温の密着だけで両基板は強固に結合し、1枚の基板として取り扱うことが可能となる。その後、さらに加熱を行い、接合を強固にする。
【0050】
最後に、図8(d)に示すように、接合した基板から、GaAs基板324を過酸化水素水とアンモニアの混合液による選択エッチングで取り除く。
【0051】
その後、上部電極310と下部電極360を設け、ウェハをダイシングで切り分けることで、図7に示す形状の半導体装置300を得ることができる。
【0052】
図9は、加熱装置200を用いて、第3基板Cと第4基板Dを接合する工程を示した工程模式断面図である。加熱装置200は、図3に示す加熱装置100と同様、雰囲気を真空、減圧、または不活性ガスに変化させることが可能な真空チャンバー210と上部加熱板220と下部加熱板230とを備えている。また、加熱装置200は、上部加熱板220と下部加熱板230とを独立に温度制御ができる機能や、この上側加熱板220と下側加熱板230に夾んだ基板を、10トン程度までの加重をかけられる機構を有している(図示せず)。
本実施形態にかかる加熱装置200は、図9に示すように、上側加熱板220の中央部分と下側加熱板230の中央部分に、それぞれ突起221及び231が設けられていてもよい。あるいは、各加熱板全体が凸面となって中央が高くなっていてもよい。中央部を高くすることで、熱処理中に基板全面に大きな加重を与えて、熱応力と熱歪みの結果である反りを無理に押さえ込む必要がなく、また、室温に戻して熱応力を開放した際に残留歪みを軽減することが可能となる。
【0053】
図10は、本実施形態の接合方法にかかる時間と温度の条件を例示しており、グラフの横軸は時間t(分)、縦軸は温度T(℃)を示す。実線Aは上側加熱板220の時間と温度の条件を、破線Bは下側加熱板230の時間と温度の条件を、それぞれ示している。
本実施形態では、熱膨張係数5.2×10−6/KのGaAs基板を含む第3基板Cが載置された上側加熱板220と、膨張係数4.7×10−6/KのGaP基板を含む第4基板Dが載置された下側加熱板230とを異なる温度と時間を条件として制御する。
【0054】
図10(a)に示すように、本実施形態では、下側加熱板220を20度/分の速度で室温T0から昇温させ、上側加熱板230は3分遅らせて20度/分の速度で室温T0から昇温させた。両加熱板は400度まで昇温して一定に保持し、遅れて昇温させた上側加熱板230が400度に達してから60分間保持した後(保持時間t1=60)に、400度から室温T0まで降温を施す。降温は両加熱板について同時に開始し、速度は5度/分とした。なお、室温で密着一体化している両基板を、加熱装置220を用いて加熱により密着強度を上げて接合するため、第1の実施形態のように加重を与えて基板同士を圧着する必要はない。
上記直接接合の方法で5組の基板を接合し、接合後の基板を観察したところ、5枚とも割れや剥がれはなく、スリップラインも生じなかった。
【0055】
(第2の比較例)
図10(b)は第3基板Cが載置された上側加熱板220と第4基板Dが載置された下側加熱板230において、時間と温度の条件を同じにした第2の比較例の時間/温度の条件を示す。上側加熱板220と下側加熱板230を、室温T0から400度まで20℃/分の速度で昇温し、保持時間t1を60分として400度で保持し、その後、80分間で400度から室温T0まで5℃/分で降温させる。
【0056】
第2の比較例の条件で5組の基板を接合し、超音波探傷で接合界面付近を検査した結果、2組の基板において、第3基板Cの半導体積層体にスリップが生じていることを確認した。 以上説明したように、本実施形態では、熱膨張係数が大きい第3基板Cが載置された上側加熱板220の昇温を3分遅らせる結果、昇温中、上側加熱板220の温度は膨張係数が小さい第4基板Dが載置された下側加熱板230の温度よりも60度低く保たれることになる。加熱板間の基板内で直線的に温度が変化すると仮定すれば、第3基板Cの中心温度は、第4基板Dの中心温度よりも30度低くなり、その分熱膨張による伸びが小さくなる。したがって、両基板間の熱応力と熱歪みは軽減され、剥がれが生じなくなる。
【0057】
本実施形態の場合、両基板を400度で保持している状態では、熱応力と熱歪について、第2の比較例と差がなくなる。比較的密着力が小さく剥がれやすい昇温過程において、第1基板温度差を付けることで、基板の剥がれ防止に資する。
また、直接接合に限らず、昇温により密着強度が増加していく接合方法においては、昇温中に熱膨張係数が大きい側の基板の温度を熱膨張係数が小さい方の基板の温度より低くすることで、基板の剥がれ防止を抑制することが可能となる。
【0058】
(第1の変形例)
図11(a)は本実施形態の第1の変形例にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフである。
本変形例では、上側加熱板220と下側加熱板230の昇温速度を異なるように設定することで、第1の実施形態よりも昇温中の温度差を広げた。例えば、熱膨張係数が比較的大きい第3基板Cが載置された上側加熱板220の昇温速度(実線)を16度/分、熱膨張係数が小さい第4基板Dが載置された下側加熱板230の昇温速度(破線)を20度/分にし、400度で保持すれば、最大で80度の温度差が得られる。
第1の変形例についてそれぞれ5組の接合を行ったところ、すべて剥がれやスリップは発生しなかった。
【0059】
(第2の変形例)
図11(b)は本実施形態の第2の変形例にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフである。第2の変形例では、保持時間を2回設けることで、基板同士が一定の密着強度が得られるようにする。第2の変形例では、下側加熱板230を20度/分で昇温させ、150度で保持時間t1を30分として一旦保持させる。一方、上側加熱板220は、下側加熱板230に3分遅れて昇温させられ、150度で一旦保持される。下側加熱板230は保持時間t1が経過した後、さらに400度まで昇温させられるが、このとき、上側加熱板220同時に同じ速度で昇温を行う。その後、400度に達したとき保持時間t2を60分とし400度で保持し、保持時間t2の経過後、5度/分の速度で上側加熱板220と下側加熱板230を降温度させる。このようにすることで、脱水縮合反応が生じ、より強固な接合を得ることが出来る。
第2の変形例についてそれぞれ5組の接合を行ったが、すべて剥がれやスリップは発生しなかった。
【0060】
(第3の変形例)
図11(c)は本実施形態の第3の変形例にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフである。本変形例では、上側加熱板220と下側加熱板230の昇温速度を同一に設定するとともに、ピーク温度とピーク温度の加熱時間を異なるように設定した。
本変形例では、第4基板Dが載置された下側加熱板230を6度/分の速度で室温T0から600度まで昇温し、600度の温度で60分間保持し、その後、6度/分の速度で600度から室温T0まで降温する。
【0061】
一方、第3の基板Cが載置された上側加熱板220については、下側加熱板230と同時に同じ速度で昇温を開始して、6度/分の速度で昇温させ、400度の温度で保持する。その後、下側加熱板230が400度まで降温したタイミングで、上側加熱板220を400度から室温T0まで降温させる。この際、上側加熱板220の降温の速度は、下側加熱板230の降温の速度と同じ速度、すなわち6度/分で室温T0に降温する。
本変形例の条件で5組の基板の接合を行ったが、すべて剥がれやスリップは発生しなかった。
【0062】
本変形例は、図10(b)に示した第2の比較例よりもピーク温度が高いが、熱応力は昇温中の基板同士の温度差に応じて小さくなるため、スリップが発生し難い。また、昇温中の温度差だけではなく、第3基板Cと第4基板Dのピーク温度に温度差を設けて熱応力を緩和しているため、スリップの発生をより抑制することが可能となる。
さらに、本変形例にかかる製造方法によって完成したLEDチップ50個に対して、1週間の連続通電発光を施し、通電前後の輝度を比較する信頼性試験を行った。この信頼性試験において、5%以上の輝度低下を示したLEDを不良としたところ、変形例3の方法によって製造されたLEDの不良率が0であるのに対し、既述の第2の比較例では6%(3/50個)の不良が発生した。
【0063】
[第3の実施形態]
本実施形態は、熱膨張係数が異なる異種基板をとして、表面活性化接合する方法に関する。以下、GaAs基板上にInGaAlPをエピ成長させた化合物半導体を含む基板とSi基板とを用意し、Auを用いて両基板を表面活性化接合する方法に関して説明するが、本実施形態に用いることが可能な基板は上記に限られない。例えば、サファイア基板上にGaNエピタキシャル層を成長させた基板とシリコン基板との接合に適用することが可能である。
【0064】
図12は、本実施形態の半導体製造方法に係る半導体装置400の模式断面図である。同図に示すように、半導体装置400は、第2の実施形態同様GaN系LEDである。しかしながら、本実施形態に係る半導体装置400は、第2の実施形態で説明した半導体装置300とは異なり、第1接合層441と第2接合層442からなる接合層440とをさらに有する点において、半導体装置300とは異なる。また、反射層430を有していてもよい。
【0065】
図13は、本実施形態にかかる半導体装置400の製造プロセスを示す模式工程断面図である。
まず、図13(a)に示すように、本実施形態では、n型のGaAs基板(熱膨張係数5.2×10−6/K)上にInGaAlPをエピタキシャル成長させることで、半導体積層体420を形成する。半導体積層体420は、GaAs基板の側から、n型クラッド層421、活性層422、p型クラッド層423を有する。半導体積層体420は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等のエピタキシャル成長装置を用いて形成される。
【0066】
次に、図13(b)に示すように、半導体積層体420の第2の主面の側に、Ag、Ag合金、Alを主な材質とする反射層430を形成する。反射層430の厚さは、反射率を高く保つことが可能な、例えば50nm以上1μm以下が好ましい。反射層430がAgを主な材質とする場合は、例えば燐酸を含む溶液エッチング法またはドライエッチング法でパターニングすることが可能である。
また、反射層430は、図のようにチップ全面に設けても良いが、反射を必要とする部分にだけ設けることもできる。この場合、半導体積層体420の第2の主面全面に反射層430を形成した後、フォトレジストを用いてパターニングを行うことにより、部分的に反射層430を形成される。また、ダイシングプロセスにおいて半導体積層体420との密着強度を高く保つために、さらに、第2金属をパターニングしてもよい(図示せず)。第2金属は、Au、あるいはPd、Ptなどであってもよい。
次に半導体積層体420の第2の主面の側に第1接合層441を形成する。第1接合層441は、金(Au)を主な材質とし、厚さ0.5μmである。第1接合層441はスパッタで設けることが可能である。以下、説明の便宜上、半導体積層体420の上に反射層430と第1接合層441を形成した状態の基板を第5基板Eとする。
【0067】
他方、図13(c)に示すように、支持基板としてSi基板460(熱膨張係数4.2×10−6/K)の上に第2接合層443を形成する。本実施形態のSi基板460は、p型の低抵抗基板である。以下、説明の便宜上、Si基板の上に第2接合層を形成した状態の基板を第6基板Fとする。
【0068】
ここで、図13(d)に示すように、本実施形態では、第5基板Eと第6基板Fとを接合させる接合界面に、Arスパッタを2分間行い、表面を活性化させる。Arを接合界面に当てることにより、表面に付着した汚染物や、表面に形成された自然酸化膜などが除去される。また、ウェハ表面の酸化膜や付着物と結合していた結合が切れ、ウェハ表面は、他の材料と結合しやすい、いわゆる活性化された状態になる。
【0069】
なお、表面活性化はArスパッタ以外の方法であってもかまわない。例えば、FAB(Fast Atomic Beam)や、プラズマなどでも活性化ができる。さらに、斜めからビームを当てるのでなく、横方向への移動機構をに付与して、垂直方向から活性化を行い、その後図示したように、接合位置まで横方向に移動させてもよい。また、接合とは別の装置やチャンバーで活性化してもかまわない。
【0070】
ついで、活性化を終えた後、加熱板を動かして、これらの膨張係数が異なる基板を表面活性化接合で密着させ、接合強度を高めるための熱を加えた。加重は300kgに設定した。
【0071】
最後に、図13(e)に示すように、接合した基板から、GaAs基板424を過酸化水素水とアンモニアの混合液による選択エッチングで取り除き、上部電極410と下部電極460を取り付け、図12に示す半導体装置400を形成する。
【0072】
図14は、本実施形態の接合方法にかかる時間と温度の関係を例示したグラフであり、グラフの横軸は時間t(分)、縦軸は温度T(℃)を示す。実線は上側加熱板220の時間/温度の条件を、破線は下側加熱板230の時間/温度の条件を示す。
【0073】
本実施形態では、GaAs基板(熱膨張係数5.2×10−6/K)を含む第5基板Eを上側加熱板220に、Si基板(熱膨張係数4.2×10−6/K)を含む第6基板Fを下側加熱板230に載置した。
【0074】
図14(a)は、本実施形態にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフである。上側加熱板220と下側加熱板230の昇温のタイミングを異なるように設定するとともに、上側加熱板220をキ250度と400度の温度で保持し、下側加熱板230のを350度および400度の温度で保持した。具体的には、下側加熱板230は、室温T0から10度/分の速度で昇温して、350度で保持させる。一方、下側加熱板230の昇温開始から10分遅れて、10度/分の速度で昇温し、250度で保持時間t1を10分にして保持する。その後10度/分で再度昇温を開始した。上側加熱板220が350度に達した時点で、上側加熱板220は下側加熱板230と同時に10度/分で400度まで昇温させる。上側加熱板220と下側加熱板230とを保持時間t2を120分にして400度で保持後、10度/分の速度で降温させた。
【0075】
本実施形態の表面活性化接合では、接合面が完全に平坦で、活性化により吸着不純物が完全に除去され、さらに接合雰囲気が超高真空で接合面への再吸着がなければ、加熱処理をしなくても強固な結合が得られる。しかしながら実際には、接合面に微少な凹凸があったり、再吸着があったりするので、加熱処理により接合層間の固相拡散を促進させて、接合強度を増加させる方が望ましい。
なお、本実施形態においても、剥がれや基板の破壊はなかった。
【0076】
(第1の変形例)
図14(b)は本実施形態の第1の変形例にかかる接合方法の時間と温度の条件を例示したグラフである。本変形例では、上側加熱板220と下側加熱板230の昇温のタイミングを異なるように設定するとともに、上側加熱板220の保持温度を250度と400度にし、下側加熱板230の保持温度を350度よ600度にした。具体的には、下側加熱板230は、室温T0から10度/分の速度で昇温して、350度で保持させる。上側加熱板220側を250度、下側加熱板230側を350度で保持時間t1を10分にして保持した後、上側加熱板220と下側加熱板230とを同時に10度/分の速度で昇温させ、次に、上側加熱板220側を400度、下側加熱板230側を600度で保持する。下側加熱板230側を600度で保持時間t2を60分にして保持した後、10度/分の速度で降温させ、下側加熱板230が400度になった時に上側加熱板220の側も10度/分の速度で室温T0まで降温させる。
【0077】
以上のように、表面活性化接合では、熱処理することにより接合強度が高くなる効果が得られる。室温のみでは、活性化された表面に、真空中とはいえ雰囲気中の原子が再吸着するため接着強度が低い。熱処理を行なうことにより、吸着した原子が拡散したり、あるいは両基板表面の金原子が固相拡散して一体化するために、接合強度を上げることができる。
なお、本実施形態では、接合材料に金を使用したが、表面活性化接合には、金以外にCuやその他のメタル、あるいはSiや化合物半導体結晶の表面、あるいはエピ層の表面も、使うことができる。
【0078】
[第4の実施形態]
本実施形態では、熱膨張係数が異なる異種基板を、液相拡散金属接合を行う方法に関する。以下、GaAs基板上にInGaAlPをエピ成長させた化合物半導体を含む基板とSi基板とを用意し、液相拡散金属接合を行う方法に関して説明するが、本実施形態に用いることが可能な基板は上記に限られない。サファイア基板上にGaNエピタキシャル層を成長させた基板に対して、シリコン基板を接合する方法にも適用可能である。
【0079】
図16は、本実施形態にかかる半導体装置500の製造方法において、第5基板Eと第6基板Fを接合する際の時間/温度の条件を例示するグラフである。グラフの横軸は時間t(分)、縦軸は温度T(℃)を示す。実線は上側加熱板220の時間/温度の条件を、破線は下側加熱板230の時間/温度の条件を示している。
【0080】
図16に示すように、まず、上側加熱板220と下側加熱板230を室温T0で密着させ接合し、ともに20分で室温T0から300度まで昇温し、保持する。上側加熱板220は、保持時間t1を45分として300度で保持し、その後、室温T0まで降温させる。一方、下側加熱板230は、保持時間t2を60分として300度で保持し、その後、室温T0まで降温度させる。上側加熱板220と下側加熱板230の降温の速度は同じである。
このようにすることで、共晶接合材料が固化して界面が固定される時点で、基板に温度差が付いているので、第1の実施形態と同じ効果が発揮できる。
【0081】
その一方で、昇温からキープまで両ステージを同じ温度に設定しているため、第1の実施形態と比較して、接合界面の温度を制御しやすい。すなわち、接合界面の温度が基板の厚さや、熱伝導の影響を受けることがない。
なお、本実施形態においては、第1の実施形態の第1変形例で説明したインサート層を用いて接合することも可能である。
以上の実施例では熱処理装置として、上下のヒーターで夾む方式の装置を使用した。
この方法以外に、直接接合や表面活性化接合の様に熱処理前に基板同士が自力で密着している場合には、密着している基板を、必要であれば複数枚まとめて、通常の拡散炉に入れて熱処理することも可能である。縦型炉の場合は、上下方向の温度勾配を制御できるので、例えば熱膨張係数の小さな基板を下側になるように炉内に設置し、炉の下側の温度が高くなるように設定すればよい。
【0082】
また横型炉の場合も、炉内は対流のために断面の上側が温度が自然と高くなる。従って、横型炉の場合はウェハを通常の縦置きではなく、横置きにして、上側に熱膨張係数が小さな基板がくるように熱処理を行うとよい。
また、基板またはエピタキシャル基板の材料として、Si、GaAs、サファイアの例を示したが、その他の材料、例えば金属基板や、半導体であればGe基板を使用した場合も同様の効果が得られる。Geは77×10−6/Kの比較的大きな熱膨張係数を持つため、他の材料と接合する場合は、温度を低く設定するとよい。
【符号の説明】
【0083】
1 第1の実施形態にかかる半導体装置、10 上部電極、20 半導体積層体、21 n型クラッド層、22 活性層、23 p型クラッド層、30 反射層、40 接合層、41第1接合層、42 第2接合層、43 第3接合層、44 インサート層、50 Si基板、 60 下部電極、100 加熱装置、110 チャンバー、120 上側加熱板、130 下側加熱板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板の一方の面に半導体積層体を設けて第1の基板を形成する工程と、
前記第1の基板のうち半導体積層体が形成された面に、前記第1の基板の熱膨張係数とは異なる熱膨張係数を有する第2の基板を密着させる工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板のうち、熱膨張係数が小さい一方の基板に対して、他方の基板より高い温度で加熱して接合する工程と、
を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の基板は、サファイアを主な材質とする前記支持基板の一方の面にGaNを主な材質とする前記半導体積層体を設けた基板であり、前記第2の基板は、Siを主な材質とすることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の基板と前記第2の基板を昇温させる過程において、前記第1の基板と前記第2の基板のうち膨張係数が低い基板を他方の基板より高い温度に保つことを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板と前記第2の基板を一定温度で保持および降温させる過程において、前記第1の基板と前記第2の基板に温度差を設けないことを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の基板と前記第2の基板の間に、第1接合層と第2接合層と第3接合層と順に積層する工程と、
前記第1接合層と前記第2接合層と前記第3接合層とを挟んで、第1の基板と第2の基板を加熱して接合する工程と、
をさらに有していることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記加熱は、前記第1接合層と第2接合層とが固化して接合界面が固定された後で、膨張係数が低い一方の基板を他方の基板より高い温度に保ちながら降温させる工程であることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1の基板と前記第2の基板の間に、第1接合層と第2接合層とインサート層と第3接合層と順に積層する工程と、
前記第1接合層と前記第2接合層とインサート層と前記第3接合層とを挟んで、第1の基板と第2の基板を接合させて、加熱する工程と、
をさらに有していることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1接合層はAuであり、前記第2接合層はIn、Sn、AuSn、InSnのいずれかを主な材質とするものであり、前記第3接合層はAuであり、前記インサート層はTi、Ni、Wのいずれかを主な材質とすることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2接合層は、前記半導体積層体の第2の主面の側から順にIn、Au、Ti、Pt、Tiを積層して形成されたものであることを特徴とする請求項5記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
GaAsを主な材質とする基板の一方の面にInGaAlPを主な材質とする半導体積層体を設けて第1の基板を形成する工程と、
前記第1の基板にGaPを主な材質とする第2の基板を密着させる工程と、
前記第1の基板と前記第2の基板のうち、第2の基板に対して、第1の基板より高い温度で加熱して接合する工程と、
を有していることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1の基板と前記第2の基板を昇温させる過程において、前記第1の基板と前記第2の基板のうち膨張係数が低い基板を他方の基板より高い温度に保つことを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1の基板と前記第2の基板を一定温度で保持および降温させる過程において、前記第1の基板と前記第2の基板に温度差を設けないことを特徴とする請求項11記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の基板と前記第2の基板の間に、第1接合層と第2接合層と第3接合層と順に積層する工程と、
前記第1接合層と前記第2接合層と前記第3接合層とを挟んで、第1の基板と第2の基板を加熱して接合する工程と、
をさらに有していることを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記加熱は、前記第1接合層と第2接合層との接合界面が固定された後で、膨張係数が低い一方の基板を他方の基板より高い温度に保ちながら降温させる工程であることを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1の基板と前記第2の基板の間に、第1接合層と第2接合層とインサート層と第3接合層と順に積層する工程と、
前記第1接合層と前記第2接合層とインサート層と前記第3接合層とを挟んで、第1の基板と第2の基板を接合させて、加熱する工程と、
をさらに有していることを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1接合層はAuであり、前記第2接合層はIn、Sn、AuSn、InSnのいずれかを主な材質とするものであり、前記第3接合層はAuであり、前記インサート層はTi、Ni、Wのいずれかを主な材質とすることを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2接合層は、前記半導体積層体の第2の主面の側から順にIn、Au、Ti、Pt、Tiを積層して形成されたものであることを特徴とする請求項10記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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