説明

半導体装置用テープキャリアの製造方法

【課題】 配線パターンのパターン間隔が広い部分と狭い部分とでの、サイドエッチングの進行の速さのばらつきを抑えつつ、オーバーエッチングを行って、配線パターンのさらなる微細化を、精度よく安定的に実現する。
【解決手段】 絶縁性材料からなるフィルム基板1上に形成された銅層2(金属材料層)の表面に、レジストパターン6を形成する工程と、レジストパターン6をマスクとして用いたエッチングプロセスにより銅層2を加工して疎密のパターン間隔19が混在する配線パターン7を形成する工程とを含む半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、レジストパターン6における各位置ごとでのエッチング代(しろ)11の寸法を、配線パターン7のパターン間隔が広いほど、大きい寸法に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCOF(Chip On Film)技術を適用してなる液晶表示装置用の半導体装置のような超微細配線パターンをエッチングプロセスによって形成する工程を含む半導体装置用テープキャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、この種の従来技術に係る製造方法によって製造されるCOF用TABテープキャリア等に用いられる銅張フィルム基材の一例を示す図である。絶縁性フィルム基板であるポリイミド樹脂テープ101の表面上に、Cr層等(図示省略)を介してCuめっきにより、金属導体層として銅層102が形成されている。
【0003】
一連の製造工程における搬送作業を容易なものとするために、ポリイミド樹脂テープ101の裏面上に、接着剤層を介して補強フィルム103が貼り付けられる。そして、搬送孔をプレスにて抜いた後、レジストコート、露光、現像を行い、銅層102上にサブトラクティブ法(ウェットエッチングプロセス)により配線パターンを形成し、レジスト剥離を行う。その後、実装用搬送孔のプレス抜きを行い、ICチップと液晶表示デバイスのガラス基板上の配線との接続のためにSnめっきを施す。続いて、補強フィルム103を剥離し、絶縁および機械的強度の向上のため、ソルダーレジストを形成する。その後、スリット・点検・出荷となる。
【0004】
液晶表示装置の高精細化およびカラー化の進展につれて、液晶表示装置用(LCDドライバIC用)のテープキャリアでは、配線パターンのさらなる微細化が強く要請されている。また、液晶表示装置用以外でも一般に、半導体装置用のテープキャリアにおいて、中空配線の不要なCOF技術は、微細配線に対応可能であるものとして開発されて注目を集めており、それを用いてさらなる微細配線の形成を実現することが期待されている。また、そのような超微細化された配線パターンは、単に超微細寸法に形成すればよいというわけではなく、線幅のばらつきを許容誤差の範囲内に収めて安定的に(高精度に)形成できなくてはならない。
【0005】
そのような半導体装置用テープキャリアの配線パターンのさらなる微細化(超微細化)を安定的に達成するための技術としては、例えばエッチングプロセス条件をフィードバック制御することで配線パターンの幅のばらつきを低減するという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、配線パターン同士の広いパターン間隔の部分にダミーパターンを配置することで配線パターンの均一なエッチングを実現するという技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−111577号公報
【特許文献2】特開2007−53237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1にて提案された、エッチングプロセス条件をフィードバック制御するという技術では、配線パターン間のパターン間隔のばらつきを低減することは可能であるものの、この技術のみでは、配線パターン自体の線幅のさらなる微細化を達成することは困難ないし不可能である。
また、上記の特許文献2にて提案された、ダミーパターンを用いて配線パターンの線幅の均一化を図るという技術では、ダミーパターンを配置可能な程度以上の大きなパターン
間隔を有するテープキャリアには適用可能であるが、ダミーパターンを追加して配置することが実際上不可能なほど小さなパターン間隔しか有していないものの場合には適用できないため、超微細配線パターンの形成には、実際上、適用不可能である。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みて成されたもので、その目的は、半導体装置用テープキャリアの配線パターンのさらなる微細化を安定的に実現することが可能な半導体装置用テープキャリアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、絶縁性材料からなるフィルム基板上に形成された金属材料層の表面に、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いたエッチングプロセスにより前記金属材料層を加工して疎密のパターン間隔が混在する配線パターンを形成する工程とを含む半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、前記レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代(しろ)の寸法を、前記配線パターンのパターン間隔が広いほど、大きい寸法に設定することを特徴としている。
【0010】
本発明の第2の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、上記第1の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、前記レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代の寸法を、前記エッチングプロセスにおける前記金属材料層のサイドエッチングの速さに対応して、当該サイドエッチングの速さが速いほど、大きい寸法に設定することを特徴としている。
【0011】
本発明の第3の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、上記第1または第2の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、前記レジストパターンにおける各位置ごとでのレジストパターン間隔と前記エッチングプロセスによる出来上がりの配線パターンの線幅との対応関係に基づいて、前記レジストパターンのエッチング代の寸法を設定することを特徴としている。
【0012】
本発明の第4の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、上記第3の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、前記レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代の寸法を、前記エッチングプロセスで用いられるエッチング液の種類、前記金属材料層の材質および厚さ、前記レジストパターンの厚さ、を少なくとも含むプロセス条件を設定して実際に前記エッチングプロセスを行い、当該エッチングプロセスによる出来上がりの配線パターンの線幅と前記レジストパターンのレジストパターン間隔との対応関係に基づいて、前記レジストパターンのエッチング代の寸法を設定することを特徴としている。
【0013】
本発明の第5の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、上記第1ないし第4のうちいずれかの半導体装置用テープキャリアの製造方法において、前記配線パターン同士の中心線間の最小ピッチが60μm以下であることを特徴としている。
【0014】
本発明の第6の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、上記第1ないし第5のうちいずれかの半導体装置用テープキャリアの製造方法において、前記エッチングプロセスにて、オーバーエッチングを行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代(しろ)の寸法を、配線パターンのパターン間隔が広いほど、大きい寸法に設定するようにしたので、エッチングプロセスにおける配線パターンのパターン間隔が広い部分と狭い部分とでの、
サイドエッチングの進行の速さのばらつきを抑えつつ、オーバーエッチングを行って、配線パターンのさらなる微細化を、精度よく安定的に、実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における主要な工程の流れを示す図、図2は、図1に引き続いて、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における主要な工程の流れを示す図である。
【0017】
まず、図1(a)に示したように、例えば38μm以下の厚さのポリイミド樹脂テープからなるフィルム基板1上に、金属材料層として例えば12μm以下の厚さの銅箔からなる銅層2を形成する。この銅層2は、フィルム基板1の表面にCrスパッタ層(図示省略)を介して銅めっき法により形成してもよく、あるいは極薄銅箔をラミネートして形成してもよい。フィルム基板1の裏面には、補強フィルム3を貼り合せる。
【0018】
続いて、図1(b)に示したように、搬送孔4を打ち抜き形成する。そして、図1(c)に示したように、銅層2の表面上に液状のフォトレジスト5を塗付した後、図1(d)に示したように、レジストパターン露光用フォトマスクおよび投影露光機(図示省略)を用いたレジスト露光を行う。そしてそのフォトレジスト5を現像して、図1(e)に示したように、所定のエッチング代を有するレジストパターン6を形成する。
【0019】
このレジストパターン6は、全体またはその一部分が、出来上がりの配線パターン7の線幅よりも太いパターン幅に設定されており、後のエッチング工程で、このレジストパターン6をマスクとして用いてオーバーエッチングを行うことにより、所定の微細線幅の配線パターン7が形成されることとなる。また、このレジストパターン6は、配線パターン7同士のパターン間隔の広い部分のレジストパターン6aと狭い部分のレジストパターン6bとで、異なったエッチング代(しろ)を有するように設定されている。具体的には、図1(f)に示した如く、出来上がりの配線パターン7a同士のパターン間隔のような広いパターン間隔の部分におけるレジストパターン6aのエッチング代の大きさ(寸法)を、出来上がりの配線パターン7b同士のパターン間隔のような狭いパターン間隔の部分におけるレジストパターン6bのエッチング代の大きさよりも、大きな寸法に設定する。
【0020】
または、出来上がりの配線パターン7a同士のパターン間隔のような、広いパターン間隔の部分では、配線パターン7b同士のような狭いパターン間隔の部分よりも、銅層2をエッチング加工して配線パターン7を形成する際に、サイドエッチングの速度が速くなる傾向にある。そのようなサイドエッチングの速度の差に着目して、サイドエッチングの速さが速い部分のレジストパターン6ほど、大きい寸法に設定するようにしてもよい。
【0021】
さらには、そのエッチング代の具体的な寸法は、レジストパターン6における各位置ごとでのレジストパターン間隔(隣り合うレジストパターン6同士の間隔)の大きさ(その間隔の幅方向の寸法)とエッチングプロセスによる出来上がりの(または設計上の目標値としての)配線パターン7の幅寸法との対応関係を、あらかじめ実験等により求めておき、その対応関係に基づいて、設定することが可能である。
【0022】
あるいは、エッチングプロセスで用いられるエッチング液の種類、銅層2(換言すれば金属材料層)の材質および厚さ、レジストパターン6の厚さ、を少なくとも考慮に入れたプロセス条件を実験的に複数種類設定し、それらの設定で実際にエッチングプロセスを実験的に行って、出来上がりの配線パターン7の寸法とレジストパターン6のレジストパターン間隔との対応関係を求め、それに基づいて、レジストパターン6のエッチング代の寸
法を具体的に設定するようにしてもよい。
【0023】
続いて、図1(f)に示したように、レジストパターン6をエッチングマスクとして用いて銅層2のオーバーエッチングを行って、例えば配線パターンの中心線間の最小ピッチが60μm以下(いわゆるレンジで60μm以下)のような、所望の極めて微細な線幅を有する配線パターン7を、その線幅のばらつきが所定の許容誤差範囲内に収まるように高精度に形成する。このときのエッチングでは、敢えてオーバーエッチングすることにより、配線パターン7の線幅のさらなる微細化を達成することが可能である。
【0024】
そして、図1(g)に示したように、レジストパターン6を剥離する。その後、図2(a)に示したように、実装工程用の搬送孔8を打ち抜き形成する。そして、図2(b)に示したように、配線パターン7上に、ICチップおよび液晶ガラス基板上の接続パッド等(いずれも図示省略)との接続のためのSn(錫)めっき9を施し、さらに、図2(c)に示したように、補強フィルム3を剥離する。続いて、図2(d)に示したように、配線パターン7上を覆ってその絶縁性および機械的強度をさらに向上させるため、ソルダーレジスト10を印刷形成し、最後に、図2(e)に示したように、一点鎖線11で示した部分にスリットを行うことで、本実施の形態に係る半導体装置用(液晶表示装置に用いられるドライバIC用)のCOFテープキャリアの主要部を完成する。
【0025】
図3(a)は、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における主要な作用を模式的に示す図、図3(b)は、一般的な従来の半導体装置用テープキャリアの製造方法における、ウェットエッチング法により金属材料層を蝕刻加工して配線パターンを形成する方法を示す図、図3(c)は、従来のオーバーエッチングによって微細線幅の配線パターンを形成する方法を示す図、図3(d)は、従来の半導体装置用テープキャリアの製造方法における、ウェットエッチング法により金属材料層をオーバーエッチングして配線パターンを形成する際の、サイドエッチングの進行にばらつきが生じる現象を模式的に示す図である。
【0026】
従来の一般的な配線パターンの形成プロセスでは、最小配線ピッチ(配線パターンの中心線間の最小ピッチ)が100μm(いわゆるレンジで100μm)を超えるような、いわゆるラフピッチの配線パターン7を形成する場合、ウェットエッチング法によって銅層2(金属材料層)をエッチング加工して配線パターン7を形成する際に、レジストマスク6のパターン幅17と、それを用いたウェットエッチング法により銅層2を加工することで出来上がる(あるいは設計上の目標値としての)配線パターン7の線幅15とを、図3(b)に示したように、同じ幅寸法に設定している。これはジャストエッチングとも呼ばれる設定であり、この場合には、エッチング代は0である。ここで、「エッチング代」とは、エッチング代=(レジストマスクの線幅−出来上がりの配線パターンの線幅)/2で基本的に定義される寸法である。この図3(b)に示したような、全ての配線パターン7が、同一の線幅15および同一のパターン間隔16に設定されている場合には、理論上、全ての配線パターン7で同一のエッチング条件となるので、配線パターン7の線幅15やパターン間隔16の寸法を所定の許容誤差の範囲内で均一に揃えることは、例えば60μm超ないしは100μm以上の配線ピッチを有する、いわゆるラフパターンの形成などにおいては、不可能ではない。
【0027】
ところが、実際の半導体装置用テープキャリアでは、配線パターン7の線幅15は同一の寸法に設定されているとしても、異なったパターン間隔16が混在している場合が多い。また、実際には、配線パターン7の線幅15についても、一つのテープキャリア内で異なったものが混在している場合が多い。そうすると、実際のテープキャリアでは、パターン間隔16の広い部分と狭い部分とで、サイドエッチングの進行に差が生じることとなり、その結果、配線パターン7の線幅15にばらつきが生じる虞が大きい。そして、このよ
うな線幅15にばらつきが生じる傾向は、図3(c)に示したようなオーバーエッチングを行う場合には、さらに顕著なものとなる。
【0028】
より具体的には、図3(d)に示したように、エッチング代13を全ての配線パターン7で同一の寸法に設定した場合には、配線パターン7の線幅の設計上の目標寸法は同一に設定されていても、広いパターン間隔18aの部分と狭いパターン間隔18bの部分とでは、隣り合うレジストパターン6同士のレジストパターン間隔(レジストパターン同士の間の、いわゆるスペース)の大きさに差が生じる。その差は、エッチング代13が全て同じ寸法なのであるから、パターン間隔18aとパターン間隔18bとの差に等しいこととなる。そうすると、広いパターン間隔18aの部分では、それに対応したレジストパターン6a同士の広いレジストパターン間隔をエッチング液が通りやすい状態となって、この部分ではサイドエッチングの進行が速くなる。またこれとは対照的に、狭いパターン間隔18bの部分では、それに対応したレジストパターン6b同士の狭いレジストパターン間隔をエッチング液が通りにくい状態となって、この部分ではサイドエッチングの進行が遅くなる。このようにしてサイドエッチングの速度がレジストパターン間隔の広い部分と狭い部分とで異なったものとなり、その結果、狭いパターン間隔18bの左右の配線パターン7bを設計上の目標線幅に形成することはできたとしても、広いパターン間隔18aの左右の配線パターン7aが、設計上の目標値としての配線パターン7c(図3(d)では点線で示してある)の線幅に対して著しく痩せた、従って寸法不良として評価されてしまうような線幅となる。あるいは逆に、広いパターン間隔18aの左右の配線パターン7aを設計上の目標線幅に形成することはできたとしても、狭いパターン間隔18bの左右の配線パターン7bが十分にはエッチングされず、所定の目標線幅よりも広い、寸法不良として評価されてしまうような線幅となる。
【0029】
このようなサイドエッチングの速度に差が生じる現象は、レジストパターン6同士の間のレジストパターン間隔が、流体力学的にあたかもオリフィスの開口のように機能して、広いレジストパターン間隔の部分においては、図3(d)に流線14aで模式的に示したように、エッチング液のいわゆる液はけ性が高くなって、サイドエッチングの進行が速くなり、逆に狭いレジストパターン間隔の部分においては、流線14bで模式的に示したように、液はけ性が低くなって、サイドエッチングの進行が遅くなるためであると解せられる。
【0030】
このような考察に基づいて、本発明者は、図3(a)に示したように、レジストパターン6における各位置ごとでのエッチング代11の寸法を、配線パターン7のパターン間隔19が広いほど、それに対応した大きい寸法に設定することにより、各位置ごとでのサイドエッチングの進行を調節して、配線パターン7の線幅のばらつきを抑制ないしは解消することができることを見出した。そして、そのような手法を用いたウェットエッチング法により、実際に幾つかのテープキャリアを実験的に作製し、その結果を評価したところ、オーバーエッチングによって形成された微細な線幅の配線パターン7であっても、その線幅のばらつきが十分効果的に抑制されることを確認した。
【0031】
すなわち、図3(a)に模式的に示したように、配線パターン7同士の間の広いパターン間隔19aの部分における、レジストパターン6aのエッチング代11aの大きさを、狭いパターン間隔19bの部分における、レジストパターン6bのエッチング代11bの大きさよりも、大きくすることにより、広いパターン間隔19aの部分のレジストパターン6a同士の間を出入するエッチング液の液はけ性を適度に抑制して、この広いパターン間隔19aの部分でのサイドエッチングの進行速度を適度に低減させることができる。その結果、広いパターン間隔19aを挟む左右の配線パターン7aの線幅と、狭いパターン間隔19bを挟む左右の配線パターン7bの線幅との、均一化を達成することが可能となる。
【0032】
あるいは、さらに直接的にサイドエッチングの進行速度の観点から、レジストパターン6における広いパターン間隔19aと狭いパターン間隔19bとでの、ウェットエッチングプロセスにおける銅層2(金属材料層)のサイドエッチングの速さをそれぞれ実験的に計測しておき、そのサイドエッチングの速さが速い部分ほど、それに対応してエッチング代11aの寸法を大きい寸法に設定するようにしても、上記と同様の作用によって、広いパターン間隔19aの部分でのサイドエッチングの進行速度を適度に低減して、広いパターン間隔19aを挟む左右の配線パターン7aの線幅と、狭いパターン間隔19bを挟む配線パターン7bの線幅との、均一化を達成することが可能となる。
【0033】
上記のようなレジストパターン6a、6bにおけるエッチング代11a、11bの具体的な寸法(大きさ)は、例えば、レジストパターン6における各位置ごとでのパターン間隔19a、19bとエッチングプロセスによる出来上がりの配線パターン7a、7bの線幅との数値的な対応関係を、あらかじめ実験や試作等により求めておき、その対応関係に基づいて、具体的な最適値として設定することが可能である。
【0034】
あるいは、さらに詳細な諸条件を考慮に入れて、エッチング代11の具体的な寸法を設定することも可能である。すなわち、レジストパターン6における各位置ごとでのエッチング代11の寸法を、そのパターニングの際のウェットエッチングプロセスで用いられるエッチング液の種類、銅層2の材質および厚さ、レジストパターン6の厚さ、を少なくとも含んだ設定で、実際にウェットエッチングプロセスを行って、そのウェットエッチングプロセスによる出来上がりの配線パターン7の線幅と、レジストパターン6のパターン間隔19との対応関係に基づいて、レジストパターン6a、6bのエッチング代11a、11bの寸法を設定するようにしてもよい。このように、さらに詳細な諸条件を考慮に入れてエッチング代11の具体的な寸法を設定することにより、さらに適切なサイドエッチングの速さの調節を行うことができ、その結果、オーバーエッチングを行って、配線ピッチ(隣り合う配線の中心線同士のピッチ)が60μm以下、あるいは線幅が30μm以下のような、微細線幅の配線パターン7を形成する場合でも、その配線パターン7の線幅をさらに高精度に均一化することが可能となる。
【0035】
このようにして、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によれば、エッチングプロセスにおける配線パターン7のパターン間隔19が広い部分(19a)と狭い部分(19b)とでの、サイドエッチングの進行の速さのばらつきを抑えつつ、オーバーエッチングを行って、配線パターン7のさらなる微細化を、精度よく安定的に、実現することができる。
【0036】
なお、上記のように、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法は、60μm超ないしは100μm以上のような比較的大きな最小配線ピッチに設定された配線パターン(いわゆるラフパターン)の形成にも適用可能であることは勿論であるが、最小配線ピッチが60μm以下のような、さらなる微細な配線パターンを形成するためにオーバーエッチングを敢えて用いる場合などに、特に好適である。何故なら、そのような微細な配線を形成するためにオーバーエッチングを行う場合、従来の技術では、配線パターンの線幅に著しいばらつきが生じていたが、本実施の形態に係る製造方法によれば、上記のようにして線幅のばらつきを効果的に抑制ないし解消することができるからである。
【実施例】
【0037】
上記の実施の形態で説明したような製造方法によって、半導体装置用テープキャリアを作製した。図4は、配線パターンのパターン間隔とレジストパターンのエッチング代との対応関係の設定を纏めて示す図であり、図5は、その設定で実際に半導体装置用テープキャリアを作製した実験結果を纏めて示す図である。
【0038】
フィルム基板1としては、厚さ38μmのポリイミド樹脂テープを用いた。銅層2は、厚さを12μm以下とし、フィルム基板1上にCrスパッタ層を介して銅めっきすることにより形成した。
そして、配線パターン7のパターン間隔19と、レジストパターン6のエッチング代11との対応関係を、図4に示すような設定とした。この設定は、配線パターン7をパターニングするためのウェットエッチングプロセスで用いられる、エッチング液の種類、銅層2の材質および厚さ、レジストパターン6の厚さ、を少なくとも含んだ諸条件を一定にして、線幅とエッチング代の大きさとを種々変更した多数種類の設定で実際にウェットエッチングプロセスを行って、そのウェットエッチングプロセスによる出来上がりの配線パターン7の線幅とレジストパターン6のパターン間隔19との対応関係を求め、それに基づいて決定した。この図4によれば、配線パターン7のパターン間隔とエッチング代との対応関係は、パターン間隔が大きくなればなるほど、エッチング代も大きな寸法となるように設定されている。
【0039】
配線パターン7の寸法は、設計上の目標値(狙い)をレンジで30μmピッチとした。すなわち、隣り合う配線パターン7の中心線同士のピッチを、30μmと設定した。さらに詳細には、配線パターン7の線幅(ライン)/パターン間隔(スペース)の最小値を、15μm/15μmとした。そして、パターン間隔を、最小の15μm以外にも、30μm、40μm、60μmのものが混在するようにした。配線パターン線幅については、15μmの1通りのみとした。
【0040】
このような設定で、実際にウェットエッチングを行って、実際に形成された半導体装置用テープキャリアにおける配線パターン7の線幅を測定し、その寸法精度を評価した。線幅としては、配線パターン7のボトム部分の幅を測定した。
【0041】
その結果、図5に示したように、狙い15μmに対して、平均線幅の最小値は、パターン間隔=15μmの場合の線幅=14.7μm、最大値は、パターン間隔=60μmの場合の線幅=15.3μmであり、その最大誤差幅は、0.6μmとなった。従って、狙いの線幅15μmに対して誤差はその4%程度以内に収まることが確認された。また、そのばらつきは、最大でもパターン間隔=30μmの場合のσ=0.41であり、また全体でもσ=0.62に収まっていることが確認された。
【0042】
このように、本実施例に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法によれば、エッチングプロセスにおける配線パターン7のパターン間隔19が広い部分(19a)と狭い部分(19b)とでの、サイドエッチングの進行の速さのばらつきを抑えつつ、オーバーエッチングを行って、線幅15μmのような微細な配線パターンを精度よく安定的に実現することが可能となることか確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における主要な工程の流れを示す図である。
【図2】図1に引き続いて、本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における主要な工程の流れを示す図である。
【図3】本実施の形態に係る半導体装置用テープキャリアの製造方法における作用について、従来の製造方法と対比して、模式的に示す図である。
【図4】配線パターンのパターン間隔とレジストパターンのエッチング代との対応関係の設定を纏めて示す図である。
【図5】図4の設定で実際に半導体装置用テープキャリアを作製した実験結果を纏めて示す図である。
【図6】従来技術に係る製造方法によって製造されるCOF用TABテープキャリアに用いられる銅張フィルム基材の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 フィルム基板
2 銅層
3 補強フィルム
4 搬送孔
5 フォトレジスト
6 レジストパターン
7 配線パターン
8 搬送孔
9 Snめっき
10 ソルダーレジスト
11、12、13 エッチング代
15 配線パターンの線幅
16、18、19 配線パターンのパターン間隔
17 レジストマスクのパターン幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性材料からなるフィルム基板上に形成された金属材料層の表面に、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして用いてエッチングプロセスにより前記金属材料層を加工して疎密のパターン間隔が混在する配線パターンを形成する工程とを含む半導体装置用テープキャリアの製造方法であって、
前記レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代の寸法を、前記配線パターンのパターン間隔が広いほど、大きい寸法に設定する
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代の寸法を、前記エッチングプロセスにおける前記金属材料層のサイドエッチングの速さに対応して、当該サイドエッチングの速さが速いほど、大きい寸法に設定する
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記レジストパターンにおける各位置ごとでのレジストパターン間隔と前記エッチングプロセスによる出来上がりの配線パターンの線幅との対応関係に基づいて、前記レジストパターンのエッチング代の寸法を設定する
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記レジストパターンにおける各位置ごとでのエッチング代の寸法を、前記エッチングプロセスで用いられるエッチング液の種類、前記金属材料層の材質および厚さ、前記レジストパターンの厚さ、を少なくとも含むプロセス条件を設定して実際に前記エッチングプロセスを行い、当該エッチングプロセスによる出来上がりの配線パターンの線幅と前記レジストパターンのレジストパターン間隔との対応関係に基づいて、前記レジストパターンのエッチング代の寸法を設定する
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記配線パターン同士の中心線間の最小ピッチが、60μm以下である
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記エッチングプロセスにて、オーバーエッチングを行う
ことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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