説明

半導体装置用テープキャリア及びその製造方法

【課題】テープキャリアが有する可撓性等の本来の特性を損なうことなく、放熱性に優れた半導体装置用テープキャリア及びその製造方法を提供する。
【解決手段】50μmの厚さと35mmの幅を有するポリイミドテープ1の表面に、配線用接着剤2を介して、厚さが25μmの電解銅箔からなる配線層3を形成し、更に、配線層3上に、銅箔用接着剤4aを介して銅箔4bを形成して保護層4とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープキャリアが有する可撓性等の本来の特性を損なうことなく、放熱性に優れた半導体装置用テープキャリア及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置用テープキャリアは、LCD用ドライバーICやプリンター用インク制御ICなどの半導体チップを搭載する基板として欠かせない存在となっている。
【0003】
図2は、従来の半導体装置用テープキャリアの構造を示したものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の長手方向所定面の断面図である。
【0004】
この半導体装置用テープキャリア20は、絶縁性樹脂のポリイミドテープ1の表面に、配線用接着剤2を介して、銅からなる配線層3が形成されており、この配線層3は半導体チップ7の搭載を可能にするインナーリード部3a、外部電極との接続を可能にするアウターリード3b、及び配線部3cを有している。配線部3cには保護層としてソルダーレジスト8が被覆されている。ソルダーレジスト8は、多くの場合、エポキシ樹脂系の液状ソルダーレジスト材を印刷塗布した後、これに加熱硬化処理を施して形成される。また、インナーリード部3aとアウターリード部3bの銅表面は、SnあるいはAu等のめっきが施されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−332064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の半導体装置用テープキャリア20の構成では、半導体チップの高密度化・高集積化に伴って、半導体装置を駆動した際にチップや電源用配線などから発生する熱量が大きくなり、この発熱により半導体装置が高温になり、本来の機能に支障をきたすという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、テープキャリアが有する可撓性等の本来の特性を損なうことなく、放熱性に優れた半導体装置用テープキャリア及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の半導体装置用テープキャリアは、絶縁性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に導体配線層を形成し、当該導体配線層の所定の箇所に半導体チップ搭載部を形成すると共に、当該導体配線層の所定の部分に保護層を被覆した半導体装置用テープキャリアにおいて、前記保護層の一部が金属で形成されていることを特徴とする。
【0008】
前記保護層を金属層と絶縁性接着剤とし、前記金属層を、絶縁性接着剤を介して前記導体配線層に貼付けることができる。
【0009】
前記金属層の厚さを、30μm以下とすることが好ましい。
【0010】
前記半導体チップ搭載部はデバイスホールを有するものとし、前記絶縁性樹脂フィルムの所定の箇所に形成することができる。
【0011】
前記半導体チップ搭載部はデバイスホールを有しないものとし、前記絶縁性樹脂フィルムの所定の箇所に形成することもできる。
【0012】
前記導体配線層を前記絶縁性樹脂フィルムの両面に形成し、それぞれの導体配線層に前記保護層を被覆することもできる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の半導体装置用テープキャリアの製造方法は、予め半導体チップ搭載部を形成した絶縁性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、導体配線層を形成する工程と、前記絶縁性樹脂フィルム上で、絶縁性接着剤が塗布された金属層を、前記絶縁性接着剤を下面にして打抜きプレスでパンチングすることにより、前記導体配線層の所定の部分に、パンチング動作と連続した動作で前記金属層を接着する工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
更に、所定の温度で加熱処理を施すことにより前記絶縁性接着剤を硬化させ、前記導体配線層上に前記金属層を接着させる工程を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テープキャリアが有する可撓性等の本来の特性を損なうことなく、放熱性に優れた半導体装置用テープキャリアを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(テープキャリアの構成)
図1は、本発明による半導体装置用テープキャリアの一実施形態を示したものであり、(a)は平面図、(b)は(a)の長手方向所定面の断面図である。
【0017】
この半導体装置用テープキャリア10は、50μmの厚さと35mmの幅を有するポリイミドテープ1の表面に、配線用接着剤2を介して、厚さが25μmの電解銅箔からなる配線層3が形成されており、この配線層3は半導体チップ7の搭載を可能にするインナーリード部3a、外部電極との接続を可能にするアウターリード3b、及び配線部3cを有している。なお、ポリイミドテープ1の所定の箇所には、半導体チップ7を搭載するためのデバイスホール5及び送り孔6が設けられている。
【0018】
更に、この半導体装置用テープキャリア10の特徴部分として、配線部3cに、保護層4が形成されている。保護層4は、図1(b)に示すように、配線層3上に、銅箔用接着剤4aを介して、銅箔4bが形成された構造となっている。銅箔4bの厚さは、半導体装置用テープキャリア10の可撓性を損なわないように、30μm以下とすることが好ましい。銅箔用接着剤4aとしては、例えば、熱硬化性エポキシ系樹脂を用いることができ、配線層3を十分に被覆するために、配線層3の厚さよりも厚く形成することが好ましい。
【0019】
また、保護層4より露出したインナーリード3a及びアウターリード3bは、それぞれ、半導体チップ7、外部電極(図示せず)との接続を容易にするために、0.5μm厚のNiめっきを下地とした0.5μm厚のAuめっきが施されている。
【0020】
(製造方法)
この半導体装置用テープキャリア10を製造するには、まず、予め50μmの厚さと35mmの幅を有するポリイミドテープ1の所定の箇所に、半導体チップ7を搭載するためのデバイスホール5及び送り孔6を形成しておき、このポリイミドテープ1の表面に、配線用接着剤2を介して厚さが25μmの電解銅箔を接着する。
【0021】
次に、当該電解銅箔をエッチングしてインナーリード部3a、アウターリード部3b、及び配線部3cを有する所定のパターンの配線層3を形成する。
【0022】
更に、9μmの厚さの銅箔4bの片面に厚さ40μmの熱硬化性エポキシ系樹脂の接着剤4aを塗布した保護層4を、接着剤4aを下面にして打抜きプレスで所定の形状にパンチングして、インナーリード部3aとアウターリード部3b以外の配線層3cの部分に連続した動作で接着する。
【0023】
最後に、保護層4に180℃の加熱処理を施すことにより、接着剤4aを硬化させ、これにより配線層3を覆うように接着させる。
【0024】
(本実施形態の効果)
本実施形態の半導体装置用テープキャリア10によれば、配線部3cの表面に形成された保護層4の表面が銅箔4bで構成されているので、従来の樹脂単体あるいは樹脂と有機フィルムとで構成される保護層と比較して、半導体チップ7や導体配線から発生する熱の放熱性が良好になり、信頼性の高い半導体装置を提供することが可能になる。
【0025】
即ち、半導体チップは、駆動時にそれ自体の温度が100℃以下であることが一般的に好ましいとされている。ここで、図2で示すような熱硬化エポキシ樹脂のソルダーレジスト8を保護層とした半導体装置用テープキャリア20に、LCD用ドライバーICを搭載して実際に駆動させると、半導体チップ自体の到達最高温度は120℃となってしまう。これに対して、本実施形態の半導体装置用テープキャリア10のように、保護層4の表面に銅箔4bを有したテープキャリアに前記LCD用ドライバーICを搭載した場合は、半導体チップ自体の到達最高温度を100℃にすることが可能となった。
【0026】
また、本実施形態の半導体装置用テープキャリア10では、銅箔4bの厚さを30μm以下としているので、テープキャリアが有する可撓性を損なうことがない。
【0027】
また、本実施形態の製造方法によれば、保護層4はフィルム状の原材をプレスによって打ち抜くことによって形成されるので、打ち抜きパンチの打ち抜き動作の延長においてそのまま配線層3に貼り付けることができる。このため、製造工程の簡略化が可能になる。
【0028】
[他の実施形態]
上記実施形態では、保護層4の表面を銅箔4bで構成したが、他にAl等の熱伝導率の良好な金属箔を用いても良い。
【0029】
また、上記実施形態では、絶縁性樹脂フィルムであるポリイミドテープ1の片面にのみ、配線層3を形成した例を示したが、ポリイミドテープ1の両面に配線層3を形成することもできる。この場合は、両面の配線層3に保護層4を形成することが好ましい。
【0030】
また、上記実施形態では、半導体チップ搭載部としてデバイスホール5を形成した例を示したが、適用される半導体装置の構成に応じて、デバイスホール5を省略することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の半導体装置用テープキャリアの一実施形態を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)の長手方向所定面の断面図である。
【図2】従来の半導体装置用テープキャリアの構成を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)の長手方向所定面の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ポリイミドテープ(絶縁性樹脂フィルム)
2 配線用接着剤
3 配線層
3a インナーリード部
3b アウターリード部
3c 配線部
4 保護層
4a 銅箔用接着剤(絶縁性接着剤)
4b 銅箔(金属層)
5 デバイスホール(半導体チップ搭載部)
6 送り孔
7 半導体チップ
8 ソルダーレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に導体配線層を形成し、当該導体配線層の所定の箇所に半導体チップ搭載部を形成すると共に、当該導体配線層の所定の部分に保護層を被覆した半導体装置用テープキャリアにおいて、
前記保護層の一部が金属で形成されていることを特徴とする半導体装置用テープキャリア。
【請求項2】
前記保護層は、金属層と絶縁性接着剤とからなり、前記金属層は、絶縁性接着剤を介して前記導体配線層に貼付けられていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項3】
前記金属層の厚さは、30μm以下であることを特徴とする請求項2記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項4】
前記半導体チップ搭載部は、デバイスホールを有し、前記絶縁性樹脂フィルムの所定の箇所に形成されていることを特徴とする請求項1項記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項5】
前記半導体チップ搭載部は、デバイスホールを有することなく、前記絶縁性樹脂フィルムの所定の箇所に形成されていることを特徴とする請求項1項記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項6】
前記導体配線層が前記絶縁性樹脂フィルムの両面に形成され、それぞれの導体配線層に前記保護層が被覆されていることを特徴とする請求項1項記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項7】
予め半導体チップ搭載部を形成した絶縁性樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、導体配線層を形成する工程と、
前記絶縁性樹脂フィルム上で、絶縁性接着剤が塗布された金属層を、前記絶縁性接着剤を下面にして打抜きプレスでパンチングすることにより、前記導体配線層の所定の部分に、パンチング動作と連続した動作で前記金属層を接着する工程と、
を備えることを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項8】
更に、所定の温度で加熱処理を施すことにより前記絶縁性接着剤を硬化させ、前記導体配線層上に前記金属層を接着させる工程を備えることを特徴とする請求項7記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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