説明

半導体装置用トレイ

【課題】半導体装置に衝撃が加わってしまうことを十分に抑制する。
【解決手段】半導体装置用トレイ100は、半導体装置50に沿うように変形する可撓性でシート状の緩衝材1、2と、緩衝材1、2の周縁部を保持する枠状の本体部3であって緩衝材1、2を介して半導体装置50を保持する本体部3と、を有する。半導体装置用トレイ100は、複数の半導体装置用トレイ100を積み重ねて用いるように構成されている。半導体装置用トレイ100は、半導体装置50の下面を面支持する第1の緩衝材1と、半導体装置用トレイ100よりも一段下段に位置する他の半導体装置用トレイ100の第1の緩衝材1により面支持された半導体装置50の上面に沿うように変形する第2の緩衝材2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置用トレイに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の搬送時などに半導体装置を収容するトレイとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1のトレイは、凹状の収納部と、収納部に設けられた緩衝部と、を有し、緩衝部によって半導体装置を支持するように構成されている。より具体的には、緩衝部にはテーパー状の複数の突起部が形成され、これら突起部によって半導体装置を支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−002871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のトレイでは、複数の突起部によって半導体装置を支持する構成であるため、半導体装置に衝撃が加わってしまうことを十分に抑制することは困難だった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、半導体装置に沿うように変形する可撓性でシート状の緩衝材と、
前記緩衝材の周縁部を保持する枠状の本体部であって前記緩衝材を介して前記半導体装置を保持する本体部と、
を有することを特徴とする半導体装置用トレイを提供する。
【0006】
この半導体装置用トレイによれば、半導体装置に沿うように変形する可撓性でシート状の緩衝材を有し、この緩衝材を介して、枠状の本体部によって半導体装置を保持するように構成されている。このため、緩衝材が半導体装置の形状にフィットした状態となって、半導体装置を保持することができる。よって、半導体装置用トレイの落下時等、半導体装置用トレイに衝撃が加わった際に、緩衝材が半導体装置と一体的に挙動しつつ変形するような動作を呈することができるため、半導体装置に衝撃が加わってしまうことを十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体装置に衝撃が加わってしまうことを十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る半導体装置用トレイの使用時を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る半導体装置用トレイを示す断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る半導体装置用トレイを示す平面図である。
【図4】第2の実施形態に係る半導体装置用トレイの使用時を示す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体装置用トレイを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0010】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係る半導体装置用トレイ100の使用時を示す断面図である。図2は半導体装置用トレイ100を示す断面図、図3は半導体装置用トレイ100を示す平面図である。なお、図2は図3のA−A矢視断面図である。
【0011】
本実施形態に係る半導体装置用トレイ100は、半導体装置50に沿うように変形する可撓性でシート状の緩衝材(第1の緩衝材1と第2の緩衝材2)と、緩衝材の周縁部を保持する枠状の本体部3であって緩衝材を介して半導体装置50を保持する本体部3と、を有する。以下、詳細に説明する。
【0012】
図3に示すように、本体部3は、例えば、複数の貫通孔4を格子状に(マトリクス状の配置で)有する枠状体である。各貫通孔4は、本体部3の表裏を貫通している。各貫通孔4は、例えば、平面形状が矩形状となっている。
【0013】
本体部3は、第1及び第2緩衝材1、2よりも剛性が大きい材質により構成されている。具体的には、本体部3は、例えば、金属又は樹脂により構成されている。
【0014】
図2に示すように、第1及び第2の緩衝材1、2は、それぞれ、シート状に形成されている。これら第1及び第2の緩衝材1、2は、半導体装置50(図1)に沿うように変形する可撓性の材質により構成されている。
【0015】
第1及び第2の緩衝材1、2の材質としては、例えば、ゴム又は樹脂などの高分子材料が挙げられる。
【0016】
第1及び第2の緩衝材1、2は、ESA(ElectoStatic Attraction)対策(静電気対策)のために導電性であることが好ましい。具体的には、第1及び第2の緩衝材1、2は、導電性ゴムであることが好ましい一例である。或いは、第1及び第2の緩衝材1、2は、ポリビニル等の樹脂の表面に導電性材料(例えばアルミ等)を塗布したことにより、導電性とされたものであっても構わない。
【0017】
また、第1及び第2の緩衝材1、2は、耐熱性にも優れていることが好ましく、例えば、導電性の耐熱ゴムにより構成することができる。
【0018】
第1及び第2の緩衝材1、2は、本体部3の各貫通孔4を塞ぐように、本体部3に設けられている。第1の緩衝材1は、各貫通孔4の上部を塞ぐように本体部3に設けられている。一方、第2の緩衝材2は、各貫通孔4の下部を塞ぐように本体部3に設けられている。第1の緩衝材1と第2の緩衝材2とに挟まれた領域は中空6となっている。第1の緩衝材1と第2の緩衝材2とは互いにほぼ平行に配置されている。
【0019】
図2に示すように、第1の緩衝材1は、例えば、予め、その上面が下側に窪む凹形状に形成されていることが好ましい一例である。この凹部5の底面は、例えば、平坦に形成され、且つ、半導体装置50の下面の寸法とほぼ等しく設定されている。このように、第1の緩衝材1は、予め、半導体装置50の外形に沿う形状に形成されている。
【0020】
一方、第2の緩衝材2は、例えば、平坦に形成されている。
【0021】
第1及び第2の緩衝材1、2は、可撓性であるとともに、伸縮性を有している。このため、半導体装置50の形状に沿うように、半導体装置50と一体的に変形(伸縮)することが可能である。
【0022】
図1に示すように、第1及び第2の緩衝材1、2は、半導体装置50を面支持するように配置されている。
【0023】
より具体的には、半導体装置用トレイ100は、複数の半導体装置用トレイ100を積み重ねて用いるように構成されている。例えば、本体部3の上面の複数箇所には、他の半導体装置用トレイ100の本体部3の下面と係合する係合部(例えば、凸部又は凹部等)が形成され、本体部3の下面の複数箇所には、他の半導体装置用トレイ100の本体部3の上面と係合する被係合部(例えば、凹部又は凸部等)が形成されている。本体部3にこれら係合部及び被係合部が形成されているので、複数の半導体装置用トレイ100を積み重ねた状態を容易に保つことができるようになっている。
【0024】
そして、半導体装置用トレイ100は、半導体装置50の下面を面支持する第1の緩衝材1と、半導体装置用トレイ100よりも一段下段に位置する他の半導体装置用トレイ100の第1の緩衝材1により面支持された半導体装置50の上面に沿うように変形する第2の緩衝材2と、を有する。
【0025】
次に、図1を参照して動作を説明する。
【0026】
なお、以下では、説明を分かりやすくするために、図1に示される3段の半導体装置用トレイ100のうち、最上段の半導体装置用トレイ100を半導体装置用トレイ101、中段の半導体装置用トレイ100を半導体装置用トレイ102、最下段の半導体装置用トレイ100を半導体装置用トレイ103と称する場合がある。
【0027】
例えば、先ず、半導体装置用トレイ103の各第1の緩衝材1の上にそれぞれ半導体装置50を配置する。ここで、半導体装置50は、樹脂封止された半導体パッケージである。そして、半導体装置50の下面が凹部5に配置されるように、各半導体装置50を位置決めする。
【0028】
ここで、凹部5の底面は平坦であり、且つ、半導体装置50の下面とほぼ等しい寸法に設定されているため、第1の緩衝材1の凹部5によって半導体装置50の下面が面支持される。
【0029】
次に、半導体装置用トレイ103の上に、半導体装置用トレイ102を積み重ねる。この際に、半導体装置用トレイ102の第2の緩衝材2の下面が、半導体装置用トレイ103の第1の緩衝材1の上に配置されている半導体装置50の上面に当接し、半導体装置50の上面に沿うように変形する(伸びる)。こうして、半導体装置用トレイ103の第1の緩衝材1の上面と、半導体装置用トレイ102の第2の緩衝材2の下面とにより、半導体装置50を上下から包み込むようにして(挟み込むようにして)保持することができる。
【0030】
なお、このように、第2の緩衝材2は、半導体装置50を保持する際に該半導体装置50に沿うように変形するような形状及び配置に設定されている。
【0031】
次に、半導体装置用トレイ102の各第1の緩衝材1の上にも、同様に半導体装置50を配置する。
【0032】
次に、半導体装置用トレイ102の上に、半導体装置用トレイ101を積み重ねる。これにより、半導体装置用トレイ102の第1の緩衝材1の上面と、半導体装置用トレイ101の第2の緩衝材2の下面とにより、半導体装置50を上下から包み込むようにして保持することができる。
【0033】
そして、このように複数の半導体装置用トレイ100によって半導体装置50を保持した状態で半導体装置用トレイ100に衝撃が加わった際には、第1及び第2の緩衝材1、2は、半導体装置50の外形に沿った状態のまま、半導体装置50と一体的に挙動しつつ(半導体装置50に伴って変位しつつ)変形する。これにより、半導体装置50への衝撃を十分に抑制することができる。
【0034】
なお、1つの半導体装置用トレイ100を単体で用いるときには、第1の緩衝材1の凹部5に半導体装置50を載置すると良い。凹部5が半導体装置50の形状に沿うような形状であるため、第1の緩衝材1の上面において半導体装置50を好適に保持することができる。
【0035】
以上のような第1の実施形態によれば、半導体装置用トレイ100は、半導体装置50に沿うように変形する可撓性でシート状の第1及び第2の緩衝材1、2を有し、これら第1及び第2の緩衝材1、2を介して、枠状の本体部3によって半導体装置50を保持するように構成されている。このため、第1及び第2の緩衝材1、2が半導体装置50の形状にフィットした状態となって、半導体装置50を保持することができる。よって、半導体装置用トレイ100の落下時等、半導体装置用トレイ100に衝撃が加わった際に、第1及び第2の緩衝材1、2が半導体装置50と一体的に挙動しつつ変形するような動作を呈することができる。これにより、半導体装置50に衝撃が加わってしまうことを十分に抑制することができる。
【0036】
また、半導体装置用トレイ100は、複数の半導体装置用トレイ100を積み重ねて用いるように構成され、半導体装置50の下面を面支持する第1の緩衝材1と、半導体装置用トレイ100よりも一段下段に位置する他の半導体装置用トレイ100の第1の緩衝材1により面支持された半導体装置50の上面に沿うように変形する第2の緩衝材2と、を有する。よって、半導体装置用トレイ100の第2の緩衝材2の下面と、一段下段の半導体装置用トレイ100の第1の緩衝材1の上面と、により半導体装置50を上下から包み込むようにして保持することができる。これにより、半導体装置50に衝撃が加わってしまうことを一層十分に抑制することができる。
【0037】
〔第2の実施形態〕
図4は第2の実施形態に係る半導体装置用トレイ200の使用時を示す断面図、図5は半導体装置用トレイ200を示す断面図である。
【0038】
本実施形態の場合、例えば、第1の緩衝材1の弾性率が第2の緩衝材2の弾性率よりも小さい。第1の緩衝材1と第2の緩衝材2との材質をそれぞれ適切に選択することによって、すなわち、第1の緩衝材1を第2の緩衝材2よりも柔らかい材質により構成することによって、第1の緩衝材1の弾性率を第2の緩衝材2の弾性率よりも小さくすることができる。このようにすることにより、半導体装置用トレイ200に衝撃が加わった際に、半導体装置50に伴う第1の緩衝材1の挙動をより容易に実現することができる。よって、図4に示すように、例えばBGA(Ball Grid Array)などのように一方の面に端子51が形成されている半導体装置50の端子面(端子51が形成されている面)を下側にして、半導体装置用トレイ200によって半導体装置50を保持することにより、端子面を優先的に保護することができる。
【0039】
また、本実施形態の場合、第1の緩衝材1の凹部5の形状は、第1の実施形態よりも半導体装置50の外形の形状に近い形状に設定されている。すなわち、図5に示すように、凹部5の側壁5aの傾斜角度は、凹部5の周囲の部分の傾斜角度よりも大きくなっている。これにより、より一層、第1の緩衝材1が半導体装置50にフィットすることができる。
【0040】
衝撃による半導体装置50の損傷としては、端子51の損傷が比較的多い。このような事情に対し、第2の実施形態によれば、第1の緩衝材1の弾性率が第2の緩衝材2の弾性率よりも小さいので、半導体装置50の端子面の損傷を好適に抑制することができる。
【0041】
上記の各実施形態では、第1の緩衝材1に凹部5が形成されている例を説明したが、第2の緩衝材2も、その下面が上側に向けて窪む凹形状(第1の緩衝材1と上下対称の形状)に形成されていても良い。或いは、第1の緩衝材1も、第2の緩衝材2と同様に平坦に形成されていても良い。
【0042】
また、上記の第1の実施形態においても、第1の緩衝材1の弾性率を第2の緩衝材2の弾性率よりも小さくしても良い。
【0043】
また、上記においては、第1及び第2の緩衝材1、2をメッシュ状に(網目状に)形成することによって、第1及び第2の緩衝材1、2の通気性を向上させても良い。或いは、第1及び第2の緩衝材1、2を防水性のものとすることにより、半導体装置50の配置領域への水分の浸入を抑制することも好ましい。具体的には、例えば、半導体装置50の上側に配置される第2の緩衝材2を防水性とし、半導体装置50の下側に配置される第1の緩衝材1をメッシュ状にすることが挙げられる。
【0044】
また、第1及び第2の緩衝材1、2が本体部3に対して着脱自在なように、半導体装置用トレイ100、200を構成しても良い。
具体的には、例えば、シート状の第1の緩衝材1の寸法を、本体部3の上面の全面を覆う寸法に設定し、第1の緩衝材1の一部分(例えば、各貫通孔4の周囲4箇所ずつ)を、本体部3の上面に形成された係合部としての凹部に嵌め込む構成とすることが挙げられる。或いは、第1の緩衝材1の一部分(例えば、各貫通孔4の周囲4箇所ずつ)に孔を形成し、この孔に、本体部3の上面に形成された係合部としての凸部を嵌め込む構成とすることが挙げられる。
同様に、シート状の第2の緩衝材2の寸法を、本体部3の下面の全面を覆う寸法に設定し、第2の緩衝材2の一部分に孔を形成し、この孔に、本体部3の下面に形成された被係合部としての凸部を嵌め込む構成としたり、或いは、第2の緩衝材2の一部分を、本体部3の下面に形成された被係合部としての凹部に嵌め込む構成としたりしても良い。
これらの構成により、第1及び第2の緩衝材1、2を本体部3に対して容易に着脱することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 第1の緩衝材
2 第2の緩衝材
3 本体部
4 貫通孔
5 凹部
5a 側壁
6 中空
50 半導体装置
51 端子
100、101、102、103 半導体装置用トレイ
200 半導体装置用トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置に沿うように変形する可撓性でシート状の緩衝材と、
前記緩衝材の周縁部を保持する枠状の本体部であって前記緩衝材を介して前記半導体装置を保持する本体部と、
を有することを特徴とする半導体装置用トレイ。
【請求項2】
前記緩衝材は前記半導体装置を面支持するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項3】
前記半導体装置用トレイは、複数の前記半導体装置用トレイを積み重ねて用いるように構成され、
前記半導体装置用トレイは、
前記半導体装置の下面を面支持する第1の前記緩衝材と、
当該半導体装置用トレイよりも一段下段に位置する他の半導体装置用トレイの前記第1の緩衝材により面支持された前記半導体装置の上面に沿うように変形する第2の前記緩衝材と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項4】
前記第1の緩衝材の弾性率が前記第2の緩衝材の弾性率よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項5】
前記緩衝材は、予め、前記半導体装置の外形に沿う形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項6】
前記緩衝材はゴム又は樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項7】
前記緩衝材は網目状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項8】
前記緩衝材は防水性であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の半導体装置用トレイ。
【請求項9】
前記緩衝材は前記本体部に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の半導体装置用トレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−251730(P2011−251730A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126282(P2010−126282)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】