説明

半導体装置用両面配線テープキャリアおよびその製造方法

【課題】絶縁テープの両面を覆う導体箔間の導通信頼性を高め、配線パターンのファインピッチ化を可能とし、配線パターンを形成する際の歩留まりを改善する。
【解決手段】
絶縁テープの両面にそれぞれ第1の導体箔および第2の導体箔が貼り付けられた3層のテープ基材と、第1の導体箔および絶縁テープを前記テープ基材の厚さ方向に貫通するよう設けられて、底面が第2の導体箔で塞がれるブラインドビアホールと、ブラインドビアホールの内部全体を埋めるように第1の導体箔の表面全面に形成されて、第1の導体箔と第2の導体箔とを導通する金属めっき層とを備え、第1の導体箔の裏面を基準面として、基準面から、第1の導体箔と金属めっき層とから成る導体層の表面までの合計厚さを15μm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に用いるテープキャリアおよびその製造方法に関し、特に、ファインピッチ化に好適な半導体装置用両面配線テープキャリアおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やICカードを始めとする情報関連機器等では、小型化、薄型化に加え、高周波数領域での低ノイズ化、高配線密度化が必要となってきており、そのような要請に答えるべく半導体装置用テープキャリアが実用化されてきた。
【0003】
半導体装置用両面配線テープキャリアの材料としては、一般的には、ポリイミド等の有機絶縁テープと、かかる絶縁テープの両面をそれぞれ覆う銅箔とを有する3層のテープ基材が用いられる。
【0004】
両面の銅箔を電気的に導通させるため、テープ基材には、一方の銅箔と絶縁テープとを厚さ方向に貫通し、底面が他方の銅箔により塞がれるブラインドビアホールが設けられる。ブラインドビアホールの内面を銅めっき層で覆うことにより、両面の銅箔が導通される。
【0005】
両面の銅箔を導通させた後、フォトエッチング法を用いて両面の銅箔に配線パターンを形成する。その際、液状レジストの他、両面の配線パターンの同時形成が可能であり、表面の凹凸形状についても十分保護できるという理由から、ドライフィルムレジストが用いられる場合がある。(たとえば、特許文献1参照)
【0006】
配線パターンの形成後、配線パターンの表面に保護用の絶縁層等を形成し、半導体装置用両面配線テープキャリアの製造を完了する。
【0007】
ここで、銅箔間の導通信頼性向上の要請からは、ブラインドビアホールの内部は銅めっきで完全に埋められることが望ましい。一方、銅箔に形成する配線パターンのファインピッチ化の要請からは、銅箔表面に析出する銅めっき層の厚さは薄いことが望ましい。
【0008】
ブラインドビアホールの内面を銅めっき層で覆う方法としては、コンフォーマルめっき方法とビアフィリングめっき方法が知られている。
コンフォーマルめっき方法とは、下地の形状に添って均一な速度で銅めっきを析出させる電気めっき方法である。かかる方法によれば、銅箔表面にもブラインドビアホールの内面にも均一な厚さの銅めっき層が形成される。
一方、ビアフィリングめっき方法とは、添加剤を用いて銅箔表面への銅めっきの析出を抑制しながら、ブラインドビアホールの内面への銅めっきの析出を促進させる電気めっき方法である。かかる方法によれば、銅箔表面へ析出させる銅めっき層を薄く保ちながら、ブラインドビアホールの内部全体を銅めっきで埋めることが出来る。(たとえば、特許文献2および3参照)
【0009】
【特許文献1】特開平11−251374
【特許文献2】特開2005−19577
【特許文献3】特開2005−217216
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述のコンフォーマルめっき方法およびビアフィリングめっき方法には、以下のような問題点がある。
【0011】
(1)コンフォーマルめっき方法の問題点
コンフォーマルめっき方法では、銅箔表面に析出させる銅めっき層を薄くすると、ブラインドビアホールの内面に析出する銅めっき層も薄くなってしまう。かかる場合、銅箔表面に析出する銅めっき層が薄いことから配線パターンのファインピッチ化は可能であるが、ブラインドビアホールの内面の銅めっき層が温度変化により破断しやすく、銅箔間の導通信頼性が低くなってしまう。
【0012】
また、コンフォーマルめっき方法では、ブラインドビアホールの内面に析出させる銅めっき層を厚くすると、銅箔表面に析出する銅めっき層も厚くなってしまう。この場合、銅箔間の導通信頼性は高いが、銅箔に形成する配線パターンのファインピッチ化が困難となってしまう。
【0013】
ここで、コンフォーマルめっき方法を用いてブラインドビアホールの内面に銅めっき層を厚く析出させた後、銅箔表面に過剰に析出した銅めっき層のみを事後的に研磨して薄くする方法も考えられる。しかし、コンフォーマルめっき方法では、ブラインドビアホールの内部全体が銅めっき層で充填されておらず、上記研磨の際にブラインドビアホールの内部にも研磨剤が入り込んでしまうため、銅箔表面のみを選択的に研磨することは困難である。
【0014】
また、コンフォーマルめっき方法では、前述のとおりブラインドビアホールの内部全体が銅めっき層で充填されていない。したがって、ドライフィルムレジストがブラインドビアホールの開口部を覆った場合、ドライフィルムレジストの裏側に空洞ができ(すなわちテント性が悪く)、ドライフィルムレジストに破れが生じやすい。このため、ファインピッチ化に好適な薄いドライフィルムレジストを用いることができず、銅箔に形成する配線パターンのファインピッチ化が困難となってしまう。
【0015】
(2)ビアフィリングめっき方法の問題点
ビアフィリングめっき方法では、めっき液中の添加剤がめっき電解と共に分解され、分解生成物の一部がめっき液中に蓄積していく。
分解生成物は、ブラインドビアホールの内面への銅めっきの析出促進に悪影響を及ぼす。そのため、かかる分解生成物を除去せずに同一のめっき液を用いてめっき電解を継続すると、徐々にブラインドビアホールの内部全体を銅めっきで埋めることが出来なくなり、銅箔間の導通信頼性を損なってしまう。
【0016】
分解生成物の蓄積による悪影響を避けるには、銅箔の表面に析出させる銅めっき層を厚く保ちながら、めっき電解を行うことが有効である。しかし、銅箔の表面に析出させる銅めっき層が厚いと、銅箔に形成する配線パターンのファインピッチ化が困難となってしまう。
【0017】
(3)共通の問題点
コンフォーマルめっき方法およびビアフィリングめっき方法は光沢めっきであって、めっき処理後の銅箔表面は非常に滑らかであり、摩擦係数が低い。そのため、めっき処理後の銅箔表面とドライフィルムレジストとの密着性が低く、銅箔に配線パターンを形成する際の歩留まりが悪化してしまう。
【0018】
そこで本発明は上記事情に鑑み、
絶縁テープの両面を覆う導体箔間の導通信頼性を改善し、導体箔に形成される配線パターンのファインピッチ化を実現し、配線パターンを形成する際の歩留まりを改善する
半導体製造装置用両面配線テープキャリアおよびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成をとる。
【0020】
請求項1の発明に係る半導体装置用両面配線テープキャリアは、絶縁テープの両面にそれぞれ第1の導体箔および第2の導体箔が貼り付けられた3層のテープ基材と、前記第1の導体箔および前記絶縁テープを前記テープ基材の厚さ方向に貫通するよう設けられて、底面が前記第2の導体箔で塞がれるブラインドビアホールと、前記ブラインドビアホールの内部全体を埋めるように前記第1の導体箔の表面全面に形成されて、前記第1の導体箔と前記第2の導体箔とを導通する金属めっき層とを備え、前記第1の導体箔の裏面を基準面として、該基準面から前記第1の導体箔と前記金属めっき層とから成る導体層の表面までの合計厚さが15μm以下となっていることを特徴とする。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアにおいて、前記導電層の表面が粗面となっていることを特徴とする。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアにおいて、前記第2の導体箔の厚さが15μm以下であることを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアにおいて、前記導体層の表面および前記第2の導体箔の表面の中心線表面粗さが0.2μm以上であることを特徴とする。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアにおいて、前記第1の導体箔および前記第2の導体箔に配線パターンが形成されており、該配線パターンの配線ピッチが60μm以下であることを特徴とする。
【0025】
請求項6の発明に係る半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法は、絶縁テープの両面にそれぞれ第1の導体箔および第2の導体箔を貼り付けることにより、3層のテープ基材を形成する工程と、前記第1の導体箔および前記絶縁テープを前記テープ基材の厚さ方向に穿孔することより、底面が前記第2の導体箔で塞がれるブラインドビアホールを形成する工程と、前記第1の導体箔の表面全面に所定厚さの金属めっき層を形成することにより、前記ブラインドビアホールの内部全体を金属めっきで埋めて、前記第1の導体箔と前記第2の導体箔とを導通する工程と、前記第1の導体箔の裏面を基準面として、該基準面から前記第1の導体箔と前記金属めっき層とから成る導体層の表面までの合計厚さが基準厚さ以下となるように、前記導体層の表面側を削る工程とを含むことを特徴とする。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項6の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記金属めっき層の所定厚さが5μm以上であることを特徴とする。
【0027】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記基準厚さが15μm以下であることを特徴とする。
【0028】
請求項9に記載の発明は、請求項6から8のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記導体層の表面側を削る工程には、前記導体層の表面および前記第2の導体箔の表面を中心線表面粗さが0.2μm以上になるよう研磨する工程が含まれることを特徴とする。
【0029】
請求項10に記載の発明は、請求項6から9のいずれかに記載半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記ブラインドビアホールを形成する工程の後、前記金属めっき層を形成する工程の前に、前記ブラインドビアホールの内面に、錫−パラジウム又はその化合物、ニッケル又はその化合物、グラファイト、導電性カーボン、導電性ポリマーのいずれかを材料とする導電性薄膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0030】
請求項11に記載の発明は、請求項6から10のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記導体層の表面側を削る工程の後、前記導体層の表面および前記第2の導体箔の表面をドライフィルムレジストでラミネートする工程と、前記導体層および前記第2の導体箔をエッチングして配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記ドライフィルムレジストの厚さが20μm以下であることを特徴とする。
【0032】
請求項13に記載の発明は、請求項11又は12に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法において、前記配線パターンを形成する工程の後、前記配線パターンの表面に熱硬化性若しくは感光性のソルダーレジスト、又はカバーレイ等の絶縁層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる半導体製造装置用両面配線テープキャリアおよびその製造方法によれば、絶縁テープの両面を覆う導体箔間の導通信頼性を改善でき、導体箔に形成される配線パターンのファインピッチ化を実現でき、配線パターンを形成する際の歩留まりを改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
つぎに、図面を参照しながら、本発明にかかる実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態にかかる半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法の説明図である。図2は、本発明の実施形態にかかる半導体装置用両面配線テープキャリアの断面図である。図3は、ビアフィリングめっき方法の説明図である。図4は、ブラインドビアホールにおける銅めっき層の充填率を示す説明図である。図5は、分解生成物の蓄積により充填率が悪化する様子の説明図である。
【0035】
図2に示すとおり、絶縁テープとしてのポリイミドテープ2の表面には、第1の導体箔としての銅箔2aが貼り付けられ、ポリイミドテープ2の裏面には第2の導体箔としての銅箔2bが貼り付けられ、3層のテープ基材1が形成されている。
【0036】
テープ基材1には、銅箔2aとポリイミドテープ2とを厚さ方向に貫通するブラインドビアホール3が複数設けられている。各ブラインドビアホール3の底面は、ポリイミドテープ2の裏面側にて銅箔2bにより塞がれている。ブラインドビアホール3の直径は例えば40μmから100μmである。
【0037】
ブラインドビアホール3の内面と銅箔2aの表面には、錫−パラジウム又はその化合物、ニッケル又はその化合物、グラファイト、導電性カーボン、ポリピロール等の導電性ポリマーのいずれかを材料とする導電性薄膜4が形成されている。
【0038】
さらに、ブラインドビアホール3の内面と銅箔2aの表面には、前述の導電性薄膜4を下地として、金属めっき層としての銅めっき層5が形成され、銅箔2aと銅箔2bとは電気的に導通される。なお、銅箔2aと導電性薄膜4と銅めっき層5とから成る積層体を導体層6と呼ぶ。導体層6は、ポリイミドテープ2の表面を覆う。
【0039】
ブラインドビアホール3の内部全体は、銅めっき層5で満たされる。図4において、A/B×100%を充填率と定義した場合、本実施の形態における充填率は90%以上である。したがって、ブラインドビアホール3の上面は、ほぼ平坦な構造となっている。ここで、Aとはブラインドビアホール3の底面からブラインドビアホール3以外の領域の導体層6の表面までの高さであり、Bはブラインドビアホール3の底面からブラインドビアホール3内部の導体層6の最下面までの高さである。
【0040】
銅箔2aの裏面を基準面とすると、基準面から導体層6の表面までの合計厚さd1を15μm以下とする。したがって、銅箔2aの厚さが15μmに満たない場合には、導体層6の最上面が銅めっき層5または導電性薄膜4となる。一方、銅箔2aの厚さが15μmである場合には、ポリイミドテープ2上の導体層6の最上面が銅箔2a又は導電性薄膜4となる。
【0041】
一方、銅箔2bの厚さd2も15μm以下とする。
【0042】
また、導体層6の表面と銅箔2bの表面は粗面化されており、各面の中心線表面粗さは0.2μm以上である。
【0043】
ブラインドビアホール3以外の領域の導体層6および銅箔2bには、配線パターン9が形成されている。配線パターン9の配線ピッチ10は60μm以下である。
【0044】
配線パターン9の一部表面は、絶縁層7としての熱硬化性又は感光性のソルダーレジスト、又はカバーレイで覆われている。一方、絶縁層7で覆われていない配線パターン9の表面は、ニッケルめっき又は金めっきによる表面処理層8で覆われている。
【0045】
続いて、前記半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法について、図1を用いて説明する。
【0046】
絶縁テープとしてのポリイミドテープ2を用意し、ポリイミドテープ2の表面に第1の導体箔としての銅箔2aを貼り付け、ポリイミドテープ2の裏面に第2の導体箔としての銅箔2bを貼り付け、3層のテープ基材1を形成する。
【0047】
かかる貼り付けは接着剤を用いてもよく、用いなくてもよい。接着剤を用いない方法としては、銅箔にワニス状の樹脂を塗りつけるキャスティング法、銅箔とフィルムを熱で圧着するラミネート法、フィルムに銅を蒸着するめっき法がある。また、貼り付け順序は不問であり、銅箔2aまたは銅箔2bのいずれを先に貼り付けてもよく、銅箔2aと銅箔2bを同時に貼り付けても良い。なお、銅箔2bの貼り付けは、後述する銅箔2aとポリイミドテープ2の穿孔後に行っても良い。
【0048】
その後、金型プレスを用い、テープ基材1に製品搬送用のパーフォレーション穴(図示しない)を形成する。
【0049】
その後、銅箔2aの一部をフォトエッチング法により除去し、ポリイミドテープ2の表面を露出する(図1(b))。除去する部位の形状は、直径が40〜100μm程度の円形とするのが一般的である。
【0050】
その後、露出したポリイミドテープ2の表面にCOレーザ光を照射してポリイミドテープ2を厚さ方向に穿孔し、ブラインドビアホール3を形成する(図1(c))。ブラインドビアホール3の底面は、ポリイミドテープ2の裏面側にて銅箔2bにより塞がれている。
【0051】
レーザ加工の際に、ブラインドビアホール3の内面にスミアと呼ばれる焼け焦げ残渣が残った場合には、デスミア処理と呼ばれるスミアの除去が必要となる。なお、ポリイミドテープ2の穿孔は、湿式処理によるエッチング手段を用いてもよい。
【0052】
その後、無電解めっき等の手段を用いて、ブラインドビアホール3の内面と銅箔2aの表面に、錫−パラジウム又はその化合物、ニッケル又はその化合物、グラファイト、導電性カーボン、ポリピロール等の導電性ポリマーのいずれかを材料とする導電性薄膜4を形成する(図1(d))。かかる導電性薄膜4は、後述の銅めっき層5を析出するための下地電極となる。
【0053】
その後、導電性薄膜4を下地とし、ブラインドビアホール3の内面と銅箔2aの表面に金属めっき層としての銅めっき層5を形成する(図1(e))。この際、後述するビアフィリングめっき方法を用いることで、ブラインドビアホール3の内部全体を銅めっき層5で充填し、銅箔2aと銅箔2bとを電気的に導通させる。
【0054】
ビアフィリングめっきの実施に際しては、銅箔2aの表面に所定厚さの銅めっき層5を析出させ、90%以上の充填率を安定して得られるようにする。所定厚さは、ブラインドビアホール3の直径および深さによって変化するが、一般的には5μm以上とすることが望ましい。これにより、ブラインドビアホール3の上面は、ほぼ平坦な構造となる。
【0055】
その後、銅箔2aの裏面を基準面とし、この基準面から導体層6の表面までの合計厚さd1が基準厚さ以下になるよう、導体層6の表面に余剰に析出した銅めっき層5を研磨により削る(図1(f))。配線パターンのファインピッチ化を実現するためには、基準厚さを15μm以下とすることが望ましい。したがって、銅箔2aの厚さが15μmに満たない場合には、導体層6の最上面が銅めっき層5または導電性薄膜4となる。一方、銅箔2aの厚さが15μmを超えている場合には、ポリイミドテープ2上の導体層6の最上面が銅箔2a又は導電性薄膜4となる。
【0056】
上述の研磨は、加水硫酸系のソフトエッチング液を用いた化学研磨であっても、機械研磨であってもよい。
【0057】
一方、銅箔2bの厚さd2が15μmを超えている場合にも、配線パターンのファインピッチ化を実現するため、同様の研磨手段によって厚さが15μm以下になるよう調節する。
【0058】
なお、上記の研磨の際、導体層6の表面と銅箔2bの表面の中心線表面粗さが0.2μm以上になるように研磨する。かかる粗面化により表面の摩擦係数が高まる。
【0059】
研磨完了後、後述の配線パターンを形成するため、導体層6と銅箔2bの表面にドライフィルムレジスト(図示しない)をラミネートする。両面の配線パターンを効率よく形成するためには、ドライフィルムレジストを両面同時にラミネートすることが望ましい。また、配線パターンのファインピッチ化を実現するためには、ドライフィルムレジストの厚さは20μm以下であることが望ましい。
【0060】
ついで、かかるドライフィルムレジストの表面にフォトマスクを介して紫外線を照射し、ドライフィルムレジストを光硬化させる。こののち、有機溶剤、アルカリ水溶液などの現像液を用い、未硬化部分のドライフィルムレジストを除去して、レジストパターン(図示しない)を形成する。
【0061】
前述のレジストパターンに覆われていない導体層6および銅箔2bをエッチングにより除去し、配線パターン9を形成する(図1(g))。配線パターン9の配線ピッチ10は両面とも60μm以下とする。配線パターン9を形成した後、レジストパターンは除去する。
【0062】
その後、配線パターン9の一部表面上に、スクリーン印刷法を用いて熱硬化性又は感光性のソルダーレジストを塗布し、絶縁層7を作成する(図1(h))。絶縁層7として、接着剤を用いてカバーレイを貼り付ける場合もある。
【0063】
最後に、絶縁層7に覆われていない配線パターン9の表面に、電気ニッケルめっきおよび電気金めっきの順で表面処理層8を施す(図1(i))。
以上により、図2に示す半導体装置用両面配線テープキャリアの製造が完了する。
【0064】
本実施の形態によれば、ビアフィリングめっきの際に銅箔2aの表面へ所定厚さ以上の銅めっき層5を析出させることによって、ブラインドビアホール3内部への銅めっき層5の充填率を常に90%以上とすることができる。したがって、銅箔2aと銅箔2bとの導通信頼性が高い。
【0065】
また、導体層6の厚さd1および銅箔2bの厚さd2は15μm以下となるよう研磨されている。したがって、配線パターン9のファインピッチ化を実現できる。
【0066】
さらに、ブラインドビアホール3のテント性が良好であることから、ファインピッチ化に好適な薄いドライフィルムレジストを用いることが出来る。したがって、配線パターン9のファインピッチ化が実現できる。
【0067】
また、導体層6の表面と銅箔2bの表面は中心線表面粗さが0.2μm以上になるように研磨されており、ドライフィルムレジストとの密着性が高い。したがって、配線パターン9を形成する際の歩留まりが良い。
【0068】
続いて、前述のビアフィリングめっき方法について、図3を用いて説明する。
【0069】
まず、めっき液にレベラー11、ブライトナー12と呼ばれる添加剤を添加して、めっき電解を開始する。めっき電解に際しては、銅箔2aの表面へレベラー11を多く吸着させ、ブラインドビアホール3の底部へブライトナー12を多く吸着させる(図3(a))。
【0070】
レベラー11は析出抑制効果を有するため、銅箔2aの表面への銅めっき層5の析出は抑制される。一方、ブライトナー12は析出促進効果を有するため、ブラインドビアホール3の内面への銅めっき層5の析出は促進される(図3(b))。
【0071】
その後、ブラインドビアホール3の内部への銅めっき層5の充填率が90%以上になったら、めっき電解を終了する(図3(c))。
【0072】
ブラインドビアホール3の内部への銅めっき層5の充填特性は、めっき液の組成変動、すなわちレベラー11およびブライトナー12およびポリマーの濃度変化によって変化する。したがって、めっき電解中には、めっき液中の添加剤濃度の分析を頻繁に行い、めっき液の組成を一定に保つ制御が必要となる。
【0073】
ここで、めっき液中の添加剤はめっき電解と共に分解し、その一部は分解生成物(老廃物)としてめっき液中に蓄積していく。そして、分解生成物の蓄積が進むにつれ、ブラインドビアホール3の内部への充填率が悪化していく。
【0074】
分解生成物がブラインドビアホール3の内部への充填率を悪化させていく様子を図5に示す。めっき電解の開始直後は、分解生成物の蓄積が少なく、高い充填率が得られる(図5(a))。しかし、同一のめっき液を用いてめっき電解を進行していくと、徐々に分解生成物の蓄積が進み、充填率が悪化し始める(図5(b))。そして、さらに分解生成物の蓄積が進むと、充填率は一層悪化する(図5(c))。したがって、活性炭フィルター等を用いて分解生成物を定期的にフィルタリングすることが必要となる。
【0075】
分解生成物の蓄積による充填率の悪化を防ぐためには、銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5を厚くすることが有効な手段の一つである。必要な銅めっき層5の厚さはブラインドビアホール3の直径および深さによって変化するが、銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5が厚いほど、高い充填率を安定して得られる傾向がある。一般的には、銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5の厚さが5μm以下では、充填率を安定させることが困難である。
【0076】
ただし、銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5が厚くなると、配線パターン9のファインピッチ化が困難となる問題がある。
【0077】
そこで、本実施の形態においては、高い充填率を安定して得られるよう、銅箔2aの表面へ5μm以上の銅めっき層5を一旦析出させ、その後に導体層6を研磨して薄くすることとしている。
【0078】
以下に、実施例1と比較例1〜3について、表1を用いつつ説明する。
【表1】

【0079】
(実施例1)
本実施の形態に示す方法により、半導体装置用両面配線テープキャリアを製造した。
【0080】
ポリイミドテープ2の厚さは25μmとし、銅箔2aと銅箔2bの厚さはそれぞれ9μmとした。
【0081】
ビアフィリングめっきを実施する際、めっき液の濃度は、硫酸銅濃度200g/L、硫酸濃度50g/L、塩素イオン濃度500mg/Lとした。
【0082】
添加剤は、レベラー11としてJGB(ヤーヌスグリーンB)を、ブライトナー12としてSPS(SPS(3−スルホプロピル)ジスルフィド)を、ポリマーとしてPEG(ポリエチレングリコール)を使用した。レベラー11、ブライトナー12、ポリマーの濃度はいずれも100ppmとした。
【0083】
電流密度を1A/dm2、めっき時間を45分とし、銅箔2aへ析出させる銅めっき層5の所定厚さを10μmとした。
【0084】
銅めっき層5の形成後、導体層6の厚さd1が基準値以下の14μmとなるよう化学研磨した。
【0085】
化学研磨の後、厚さ10μmのドライフォトレジストを使用して配線パターン9を形成した。その際、銅箔2aの配線パターン9の配線ピッチ10を45μmとし、配線パターン9を構成するリードのリード幅の目標値を22.5±5μmとした。
また、銅箔2bの配線パターン9の配線ピッチ10を50μmとし、配線パターン9を構成するリードのリード幅の目標値を25±6μmとした。
【0086】
以上の条件で、複数のユニットが列なって成る100mの半導体装置用両面配線テープキャリアを10ロット作成した。その後、各ロットの先頭ユニットについて、以下の評価を実施した。
【0087】
10ユニットについて平均充填率およびばらつきを測定した。その結果、平均充填率は97%と高く、ばらつきは2.2%と小さく安定していた。
【0088】
5ユニットについて信頼性試験を行った。−55℃から125℃の範囲で1000サイクルの温度サイクル試験(TCT)を行った結果、全てのユニットが合格した。また、温度が85℃、湿度が85%、バイアス電圧が3.5V、1000時間の高温高圧バイアス試験(THB)を行った結果、全てのユニットが合格した。
【0089】
10ユニットについて配線形成の安定性を評価した。リード幅の目標値に対し、工程能力指数(Cpk)が1.33以上であることを合格の条件とした。その結果、銅箔2aの配線パターン9の平均リード幅は21.2μmであり、Cpkは1.35であって合格した。一方、銅箔2bの配線パターン9の平均リード幅は24.5μmであり、Cpkは1.33であって合格した。
【0090】
(比較例1)
図6に示すコンフォーマルめっき方法により、半導体装置用両面配線テープキャリアを製造した。
【0091】
まず、実施例1と同一の条件の下、テープ基材1にブラインドビアホール3を形成後、導電性薄膜4を形成した(図6(a)〜(d))。
【0092】
その後、コンフォーマルめっき方法を用いて銅めっき層5を形成した(図6(e))。かかる製造方法ではめっき液に添加剤を添加しないため、銅箔2aの表面へもブラインドビアホール3の内面へもすべて均一な速度で銅めっき層5が析出される。
銅箔2aへ析出させる銅めっき層5の所定厚さを15μmとし、導体層6の合計厚さd1は24μmとした。
【0093】
銅めっき層5の形成後、化学研磨は行わなかった。その後は、実施例1と同一の条件の下、配線パターン9、絶縁層7、表面処理層8を形成した(図6(f)〜(h))。
【0094】
かかる条件の下、複数のユニットが列なって成る100mの半導体装置用両面配線テープキャリアを10ロット作成した。その後、各ロットの先頭ユニットについて、以下の評価を実施した。
【0095】
コンフォーマルめっき方法を用いており、図6(e)に示すようにブラインドビアホールの内部は銅めっき層5で充填されていない。したがって平均充填率とそのばらつきについては測定しなかった。
【0096】
温度サイクル試験(TCT)は、全てのユニットが合格した。一方、高温高圧バイアス試験(THB)は、導体層6が厚いため、リードボトムでの銅残りが発生するユニットがあり、不合格だった。
【0097】
銅箔2bの配線パターン9の平均リード幅は23.5μmであり、Cpkは1.44であって合格した。しかし、銅箔2aの配線パターン9の平均リード幅は24μmであり、Cpkは0.4であって不合格だった。
【0098】
(比較例2)
研磨を行わない従来のビアフィリングめっき方法により、半導体装置用両面配線テープキャリアを製造した。
【0099】
銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5の厚さを10μmとし、導体層6の合計厚さd1は19μmとした。化学研磨は行わなかった。
【0100】
その他の条件は実施例1と同様である。かかる条件の下、複数のユニットが列なって成る100mの半導体装置用両面配線テープキャリアを10ロット作成した。その後、各ロットの先頭ユニットについて、以下の評価を実施した。
【0101】
平均充填率は97%と高く、ばらつきは2.2%と安定していた。
【0102】
温度サイクル試験(TCT)については、全てのユニットが合格した。しかし、高温高圧バイアス試験(THB)については、導体層6が厚いため、リードボトムでの銅残りが発生するユニットがあり、不合格だった。
【0103】
銅箔2bの配線パターン9の平均リード幅は20.5μmであり、Cpkは1.35であって合格した。しかし、銅箔2aの配線パターン9の平均リード幅は25μmであり、Cpkは0.8であって不合格だった。
【0104】
(比較例3)
研磨を行わない従来のビアフィリングめっき方法を用いて、半導体装置用両面配線テープキャリアを製造した。
【0105】
銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5の厚さを5μmとし、導体層6の合計厚さd1は14μmとなった。化学研磨は行わなかった。
【0106】
その他の条件は実施例1と同様である。かかる条件の下、複数のユニットが列なって成る100mの半導体装置用両面配線テープキャリアを10ロット作成した。その後、各ロットの先頭ユニットについて、以下の評価を実施した。
【0107】
銅箔2aの表面へ析出させる銅めっき層5の厚さが不足しており、分解生成物の影響により平均充填率は44.5%と低下し、ばらつきも21.5%と増加した。
【0108】
高温高圧バイアス試験(THB)については、全てのユニットが合格した。しかし、温度サイクル試験(TCT)については、ブラインドビアホール3の内部でクラックが生じたユニットがあり、不合格だった。
【0109】
銅箔2aの配線パターン9の平均リード幅は27μmであり、Cpkは1.35であって合格した。また、銅箔2bの配線パターン9の平均リード幅は20.8μmであり、Cpkは1.52であって合格した。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施形態にかかる半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法の説明図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる半導体装置用両面配線テープキャリアの断面図である。
【図3】ビアフィリングめっき方法の説明図である。
【図4】ブラインドビアホールにおける銅めっき層の充填率を示す説明図である。
【図5】分解生成物の蓄積により充填率が悪化する様子の説明図である。
【図6】コンフォーマルめっき方法による半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法の説明図である。
【符号の説明】
【0111】
1 テープ基材
2 ポリイミドテープ
2a 銅箔
2b 銅箔
3 ブラインドビアホール
4 導電性薄膜
5 銅めっき層
6 導体層
7 絶縁層
8 表面処理層
9 配線パターン
10 ピッチ
11 レベラー
12 ブライトナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁テープの両面にそれぞれ第1の導体箔および第2の導体箔が貼り付けられた3層のテープ基材と、
前記第1の導体箔および前記絶縁テープを前記テープ基材の厚さ方向に貫通するよう設けられて、底面が前記第2の導体箔で塞がれるブラインドビアホールと、
前記ブラインドビアホールの内部全体を埋めるように前記第1の導体箔の表面全面に形成されて、前記第1の導体箔と前記第2の導体箔とを導通する金属めっき層と
を備え、
前記第1の導体箔の裏面を基準面として、該基準面から前記第1の導体箔と前記金属めっき層とから成る導体層の表面までの合計厚さが15μm以下であることを特徴とする半導体装置用両面配線テープキャリア。
【請求項2】
前記導電層の表面が粗面となっていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用両面配線テープキャリア。
【請求項3】
前記第2の導体箔の厚さが15μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置用両面配線テープキャリア。
【請求項4】
前記導体層の表面および前記第2の導体箔の表面の中心線表面粗さが0.2μm以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリア。
【請求項5】
前記第1の導体箔および前記第2の導体箔に配線パターンが形成されており、該配線パターンの配線ピッチが60μm以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリア。
【請求項6】
絶縁テープの両面にそれぞれ第1の導体箔および第2の導体箔を貼り付けることにより、3層のテープ基材を形成する工程と、
前記第1の導体箔および前記絶縁テープを前記テープ基材の厚さ方向に穿孔することより、底面が前記第2の導体箔で塞がれるブラインドビアホールを形成する工程と、
前記第1の導体箔の表面全面に所定厚さの金属めっき層を形成することにより、前記ブラインドビアホールの内部全体を金属めっきで埋めて、前記第1の導体箔と前記第2の導体箔とを導通する工程と、
前記第1の導体箔の裏面を基準面として、該基準面から前記第1の導体箔と前記金属めっき層とから成る導体層の表面までの合計厚さが基準厚さ以下となるように、前記導体層の表面側を削る工程と
を含むことを特徴とする半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項7】
前記金属めっき層の所定厚さが5μm以上であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項8】
前記基準厚さが15μm以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項9】
前記導体層の表面側を削る工程には、
前記導体層の表面および前記第2の導体箔の表面を中心線表面粗さが0.2μm以上になるよう研磨する工程
が含まれることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項10】
前記ブラインドビアホールを形成する工程の後、前記金属めっき層を形成する工程の前に、
前記ブラインドビアホールの内面に、錫−パラジウム又はその化合物、ニッケル又はその化合物、グラファイト、導電性カーボン、導電性ポリマーのいずれかを材料とする導電性薄膜を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項11】
前記導体層の表面側を削る工程の後、
前記導体層の表面および前記第2の導体箔の表面をドライフィルムレジストでラミネートする工程と、
前記導体層および前記第2の導体箔をエッチングして配線パターンを形成する工程と
を含むことを特徴とする請求項6から10のいずれかに記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項12】
前記ドライフィルムレジストの厚さが20μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。
【請求項13】
前記配線パターンを形成する工程の後、
前記配線パターンの表面に熱硬化性若しくは感光性のソルダーレジスト、又はカバーレイ等の絶縁層を形成する工程
を含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の半導体装置用両面配線テープキャリアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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