説明

半導体装置

【課題】 Au溶融ボールをAlパッドへボンディングする時に溶融金属の表面上に浮き上がる酸化物の均一な半球状の薄膜バリアによって溶融ボールの拡がりを抑制した半導体装置を提供することにある。本発明の他の課題は、純金に対する微量添加元素の表面への析出を利用して細線の表面に微量添加元素を濃縮させ、それらの高濃度の微量添加元素を酸化することによって細線の表面に安定した所定の薄い酸化物の均一な層を形成した半導体装置を提供する。
【解決手段】 純度99.99質量%以上のAuからなる極細線が酸化性雰囲気下でAlパッドへボール・ボンディングされた半導体装置において、該接合されたAuボールの最大直径が極細線の線径の2倍以下であり、かつ、そのボール部の表層として8nm〜20nm厚の微量添加元素の酸化物層が形成されていることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップのAl電極と99.99質量%以上のAuからなる極細線とがボール・ボンディングされた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりICやトランジスタなどの集積回路素子上の純AlまたはAlを主成分とする合金、例えば純AlあるいはAl−1%Si合金やAl−0.5%Cu合金やAl−0.5%Cu−1%Si%合金からなる電極パッドと、リードフレームやセラミック基板上の導体配線との間を接続する純度99.99質量%以上のAu極細線としては、線径が25μmのものが一般的に利用されている。最近では、半導体装置の一層の高集積化および小型化、薄型化および高機能化に伴い、半導体装置の大きさが小さくなっている。それに伴って、Alパッドの大きさも100μm角から60μm角へと小さくなり、かつ、入出力端子の数が増大してきている。
このようなチップ電極パッドの大きさが縮小される背景から、接続すべき外部接続電極の密度が飛躍的に高まりつつある。そのためボール・ボンディングするためのパッドの接合領域やパッドのピッチ間隔は狭小化されている。この狭小化に対応するため極細線の線径を細くすることによって極細線のボール径を小さくすることが考えられてきた。しかしながら、ボール径が微小になればなるほど、Auボールの高真球度が必要とされる。これまでの100μm角Alパッドの場合には、Auボールが多少いびつになることがあっても、あるいは、Alパッド上へ溶け拡がりの生じることがあっても、Alパッドが広いので問題にはならなかった。しかし、Alパッドが60μm角へと小さくなると、これまで許容されていた多少のいびつさやわずかな溶け拡がりまでが問題になってきた。更には、Alパッドへのボール・ボンディング時における圧着ボール径の形状の安定性を確保したり、狭小な接合領域への接合性を確保したりすることも重要である。
【0003】
この解決手段として極細線の表面層の機械的強度を高める方法が従来から数多く提案されている。たとえば、特開昭60−145363号公報(特許文献1)には「表面にめっきまたは蒸着を施した金属材料をその再結晶温度以上に加熱後、断面減少率15%以上の加工を行い、さらに再結晶温度以上に加熱する工程を含むことを特徴とする成分濃度勾配を有する合金の製造方法」が開示され、特許第2708573号公報(特許文献2)には「導体細線の表面に、合金元素或いは高濃度合金を被覆し、該導体細線に、その外周部から中心部にかけて、連続的に合金元素の濃度が変化する拡散処理を行ったのち、線引きすることを特徴とする半導体用ボンディング細線の製造方法」が開示されている。また、特開平6−77274号公報(特許文献3)には「ワイヤ本体にセラミックス層が被覆され、かつこのセラミックス層が、上記ワイヤ本体の線径の1/500〜1/25も膜厚に設定されたことを特徴とする半導体用ボンディングワイヤ」が開示されている。しかしながら、表面層の機械的強度を高めたこれらの極細線は、異種金属等からなる一定の厚さを有する表面層を接合しているため接合界面の接着強度が強い部分と弱い部分を有しており、細線化によって不十分な接合個所が顕在化して接合不良が生じてしまうことがある。また、表面層の機械的強度を高めたこれらのワイヤであっても、ボール・ボンィングの際には電気トーチによる放電等で溶融または半溶融ボールを作るため、通常の溶解法で合金化され鋳造された純度99.99質量%以上のAuからなる極細線と異なることがなくなってしまう。
【0004】
一方、微量添加元素をAuに添加して最終的にAuの純度を99.99質量%以上にする通常の溶解法では、酸化性雰囲気下でボールをAlパッドへ接合する時にボールの結晶粒界が多くなるように微量添加元素を添加しておくと、Auの真球ボールが得られやすいが、複雑な微量添加元素の添加によってAuボールが硬くなりすぎ、ボール接合時にSiチップの損傷をもたらすという欠点があった。これまでこれらの問題は溶融ボールの表面に存在する微量添加元素の酸化物が引き起こすと考えられていたため、微量添加元素の酸化物層を初めから生じないようにしたり、できるだけ取り除こうとしたりして余分な費用をかけていた。例えば、極細線の表面を有機物質で被覆したり、還元性雰囲気下でボール・ボンディングしたりしていた。
【0005】
特に、半導体デバイスの軽薄短小化が一段と進む近年の半導体製造では、チップ電極の接合可能面積の狭小化によりアーク放電によって溶融されるAuボールの直径も小さくなるため、従来のように高荷重、高出力での接合がますます難しくなってきている。例えば、低荷重で超音波発振させる高出力のボンディング装置によって複雑な微量添加元素を添加したAu溶融ボールを微小なAlパッドの接合領域へ強く押し当てずに接合しようとすると、圧着ボール径の超音波発振方向へ潰れる度合いが大きくなり、Auボールのわずかな溶け拡がりがAlパッドの接合領域からはみだすという問題が生じる。他方、Au溶融ボールを微小なAlパッドの接合領域へ強く押し当てて接合しようとすると、硬いAuボールの中心がAlパッドの一点へ押し付けられる結果ボール接合時にAlパッドの下のSiチップの損傷をもたらす。これらの欠点は極細線の線径が細くなればなるほど極細線自身の剛性が失われていくため微小な接合領域への圧着ボール径の安定化が図れなくなっていくという課題に発展する。
【0006】
本発明の目的は、純金ボールの表面に微量添加元素の酸化物の均一な薄い層を形成することによって、その酸化物層が接合時に溶融ボールの溶け拡がりのバリア層となり、狭小なAlパッドの接合領域へ安定した接合性を確保した半導体装置を提供するものである。たとえ低荷重で超音波発振させる高出力のボンディング装置を利用しても、圧着ボールの圧着とは異なる方向へ溶融Auボールが溶け拡がるのを抑制した半導体装置を提供することである。すなわち、これまでは純金は酸化しないものと信じられていたため、Au極細線の表面に酸化物層を積極的に形成させるという概念はなく、添加元素の酸化物層がたまたま表層として形成されることがあっても全長にわたって均一に形成されていなかった。そのためたまたま発生したボンディング不良の半導体装置を詳細に分析して、溶融ボールの表層の上部で異常に凝集した酸化物を見つけ出し、この異常に凝集した酸化物が半導体チップへボンディングする際にチップ割れを起こす原因であると結論付けていた。このような現象は、極細線の表層として形成された析出物の酸化物層が均一のものでなければ、熱併用超音波ボンディング法や単純な超音波ボンディング法でも大なり小なり生じていると予想される。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−145363号公報
【特許文献2】特許第2708573号公報
【特許文献3】特開平6−77274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、Au溶融ボールをAlパッドへボンディングする時に溶融金属の表面上に浮き上がる酸化物の均一な半球状の薄膜バリアによって溶融ボールの拡がりを抑制した半導体装置を提供することにある。本発明の他の課題は、純金に対する微量添加元素の表面への析出を利用して細線の表面に微量添加元素を濃縮させ、それらの高濃度の微量添加元素を酸化することによって細線の表面に安定した所定の薄い酸化物の均一な層を形成した半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、以下に示す半導体装置が提供される。
(1)純度99.99質量%以上のAuからなる極細線が酸化性雰囲気下でAlパッドへボール・ボンディングされた半導体装置において、該接合されたAuボールの最大直径が極細線の線径の2倍以下であり、かつ、そのボール部の表層として8nm〜20nm厚の微量添加元素の酸化物層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
(2)極細線の線径が25μm以下である前記(1)に記載の半導体装置。
(3)Auボールの最大直径が50μm以下である前記(1)または(2)に記載の半導体装置。
(4)微量添加元素の酸化物層が極細線の表面から中心方向へ連続的に濃度が減少している前記(1)〜(3)のいずれかに記載の半導体装置。
(5)微量添加元素が低融点金属Aである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置。
(6)低融点金属Aが、In、Sn、Bi、Pb、SbおよびGaの中から選ばれる少なくとも1種である前記(5)に記載の半導体装置。
(7)微量添加元素が、その酸化物の標準生成自由エネルギーが炭素の標準生成自由エネルギーよりも低い金属Bである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置。
(8)金属BがCa、Be、Mg、MnおよびCeの中から選ばれる少なくとも1種である前記(7)に記載の半導体装置。
(9)微量添加元素が低融点金属Aおよび金属Bの双方を含有している前記(1)〜(4)のいずれかに記載の半導体装置。
(10)低融点金属AがIn、Sn、Bi、Pb、SbおよびGaの中から選ばれる少なくとも1種であり、金属Bが、Ca、Be、Mg、MnおよびCeの中から選ばれる少なくとも1種である前記(9)に記載の半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の極細線表層の酸化物は異種金属を被覆したものではないので、接合界面からはく離するなどの接合不良が生じることがない。しかも、ボンディング用細線として純金表面への微量金属の析出を利用した、連続的に微量添加元素の濃度が変化する安定した細線構造のものを用いるため、ボンディング時に均一な析出物の酸化物層が形成され、そしてこの酸化物の剛性を利用してボンディングワイヤをチップ電極へ押し潰すことができるので、狭小なAlパッドの接合領域へ接合する際の接合性を確保することができる。また、純金への微量金属の析出を利用するので、一方では溶融Auボールの表面は微量添加元素を数%存在させることもでき、高濃度の微量添加元素が酸化されることによって溶融Auボールの表面に安定した所定の酸化物の層を形成することができ、純金の表層内部を保護して表面傷が付きにくい効果もある。他方、溶融Auボール線の内部は微量添加元素を数ppm以下の濃度までこれまで通りコントロールすることができる。
【0011】
これらの濃度コントロールの効果を組み合わせることによって、極細線をボンディングする時にAlパッド上のチップ電極やリードへの損傷を抑制することができ、より狭小なAlパッドの接合領域へ接合する際でも溶融ボールの半球形状を確保することができ、半導体装置の更なる小型化及び薄型化が可能になる。純金の場合は、特にIn、Sn、Bi、Pb、SbおよびGa、並びにCa.Be.Mg、MnおよびCeの微量金属がボール・ボンディングや超音波併用ボール・ボンディングに最適である。また、安定な所定の酸化物の層をその表面に形成した溶融Auボールをボンディングする際に、必要な酸化物が供給されるよう酸化性雰囲気下でボール・ボンディング等するので、たとえ表面の酸化物が純金の内部へ移動しても、表面には新たな微量金属が析出してくるので、新たな酸化物を絶えず補充することができ、均一な膜厚を保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
純金を一定温度で加熱すると、純金以外の残りの元素(不純元素)が表面に高濃度で析出し、純金表面には該不純元素からなる表面層が形成されることは知られている。この表面層における不純元素の濃縮の度合いは、使用する純金中に残存する元素の種類や濃度、純金表面の清浄度、あるいは、微量添加元素の種類・添加量などのわずかな違いによって大幅に異なるため、一概に定めることができない。また、複数の微量添加元素を添加した場合は、表面の自由エネルギーを減少させる効果の最も強い元素が表面を覆い、優先的に酸化する。そこで、酸化しない純金であっても、微量添加元素を表面へ析出させることによって微量添加元素が表面に濃縮される結果、金等が酸化しないにもかかわらず、99.99%以上の純金であってもこれらの微量添加元素を純金の表面で酸化することができる。この場合、大気中の酸素と結合しやすい元素(酸化物層の表層に存在する元素)と純金と結合しやすい元素(酸化物層の最下層に存在する元素)とがある。この酸素と結合しやすい微量添加元素は低融点金属Aまたはその酸化物の標準生成自由エネルギーが炭素の標準生成自由エネルギーよりも低い金属元素Bである。
【0013】
そして、この酸素と結合しやすい微量添加元素を酸化物層に安定して分散させることによって、その極細線の中心方向に連続的に濃度が減少している微量添加元素の酸化物の薄い層構造を安定させることができる。このとき、純金と結合しやすい元素を混在させると、溶融した硬い純金ボールと酸化物の層によってSiチップが損傷したり酸化物の層が形成されなかったりして複雑な現象が生じる。よって、純金に含有させる不純元素は、大気中の酸素と結合しやすい元素だけで構成されることが好ましい。この酸素と結合しやすい微量添加元素の酸化物の層をボンディング時のボール形成に利用すると、まず真球形状の溶融したボールに対して表層の酸化物層がいち早く冷却され殻となって真球形状を保持する。しかも、ボンディング時には、AlパッドとのAlとAuとの接合性は酸化物の層が薄いので問題とならず、AlパッドとAuの溶融ボールとが半球状に接合される。接合される際には薄い酸化物の層が内部の溶融したAuの溶け拡がりを防止するので、小径Auボールをそのまま狭小のAlパッドへ接合できる。このようにして半導体装置が完成されるものと考えられる。
【0014】
Au表面への析出を起こさせる代表的な金属元素としては、表面エネルギーや元素半径などとの関係から、Ca、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Os、Ir、Nb、Mo、Sn、Tc、Ta、In、W、Re、及び希土類元素などが知られているが、Au表面上の酸素と結合しやすい微量添加元素は低融点金属Aまたは金属元素Bである。低融点金属Aとしては、In、Sn、Bi、Pb、SbおよびGaがある。金属元素Bとしては、Ca、Be、Mg、MnおよびCeである。これらの元素Bは形成された酸化物が溶融しても極細線の表面から移動していかないので、ボール・ボンディングや超音波併用ボール・ボンディングに最適である。
【0015】
本発明で微量添加元素として用いる金属Aにおいて、その添加量を示すと、Au中に含まれる割合として、In:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Sn:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Bi:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは5〜40ppm、Pb:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Sb:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Ga:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppmである。Au中に含まれる金属Aの合計量は、5〜60ppm、好ましくは10〜50ppmである。
本発明において用いる好ましい金属Aは、In、SnおよびBiである。
【0016】
本発明で微量添加元素として用いる金属Bにおいて、その添加量を示すと、Au中に含まれる割合として、Ca:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Be:1〜50ppm(質量ppm)、好ましくは5〜40ppm、Mg:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Mn:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Ce:5〜50ppm(質量ppm)、好ましくは10〜40ppm、Au中に含まれる金属Bの合計量は、3〜60ppm、好ましくは5〜50ppmである。
本発明において用いる好ましい金属Bは、Be、CaおよびMgである。
【0017】
本発明で用いる微量添加元素は、金属Aと金属Bの混合物からなることができる。この場合Au中に含まれる金属Aと金属Bの合計量は、5〜100ppm、好ましくは10〜100ppmである。
金属Aと金属Bの好ましい組合せは、In/Ca、Sn/Be、In/Sn/Ca等である。
【0018】
ボンディング後のボールに形成される微量添加元素の酸化物層の厚さは8nm〜20nm、好ましくは10〜20nmである。20nmよりも厚くなると、Alパッドの狭小領域へボンディングする時に厚い酸化物の層を接合するに十分な極細線の押し付け力が必要となり、半導体のチップ電極を破損するおそれがあるからである。逆に、8nm未満の場合は、微量添加元素の酸化物の均一な膜を形成することが困難となって溶融ボールの真球形状や半球形状を安定して形成することができなくなり、狭小なAlパッドへ正確に接合することができなくなるからである。なお、純金と微量添加元素の組み合わせによって表面へ析出がしやすいものとしにくいものがあり、また析出させる温度条件などによっても微量添加元素の酸化物の量すなわち層の厚さは異なる。例えば、酸化条件としては、大気酸化、真空下での酸素雰囲気による酸化あるいは高酸素圧酸化、オゾンガスによる酸化などがあるが、酸化時間にはあまり影響されない。
【0019】
なお、本明細書で言う酸化物層は、Auボール中に含まれる微量不純元素の酸化物からなるもので、Auボールの表面層として形成されたものである。Auボールの表面層として形成された酸化物層において、その酸化物の濃度は、ボール表面からボール中心に向けて、徐々に低下している。
Auボールの最大直径は、ボール・ボンディングに用いる極細線の直径の2倍以下、好ましくは1.8倍以下であり、その下限値は、通常、1.4倍である。該極細線の線径は、好ましくは10〜25μm、特に15〜25μmである。
Auボールの最大直径は、通常、50μm以下、好ましくは、45μm以下であり、その下限値は、通常35μmである。
【実施例】
【0020】
次に本発明を実施例により詳細に説明する。
【0021】
実施例1
純度99.999重量%の高純度金に微量金属として表1に記載の数値(質量ppm)になるように配合した実施品の成分組成を添加し、真空溶解炉で溶解鋳造した。これを伸線加工して、線径が25μmのところで最終熱処理し、伸び率を4%に調整した。この極細線を60μm角のAlパッド上へ大気中で次の条件下でボール・ボンディングしたところ、すべてのボールが60μm角のAlパッド内に形成されていた。その結果を表1の右欄に示す。
ボール・ボンディング条件:
(1)ボンダー:一般に市販されているワイヤボンダー
(2)キャピラリー:一般汎用のセラミック製キャピラリー
(3)ボンディング温度:200℃
(4)初期ボール狙い:38μm
(5)圧着ボール径:45±5μm
(6)圧着ボール厚:8±4μm
(7)ボンディング総数:100ワイヤ
【0022】
実施例2
接合ボールの上面に半球状の酸化物の殻が形成されていたので、表面酸化した半球状の酸化物の代表的な殻についてバーキンエルマー社製オージェ電子分光分析装置によって毎分5nmのスパッタ速度でその表面から中心方向への酸化物濃度を調べたところ、表1の右欄の結果を得た。
【0023】
比較例1
純度99.999重量%の高純度金に微量金属として表の左欄に記載の比較品の成分組成を添加し、真空溶解炉で溶解鋳造した。これを実施例1と同様にしてAlパッド上へ大気中でボール・ボンディングし、表2の右欄の結果を得た。
【0024】
比較例2〜8
また、実施例2と同様にして酸化物濃度を調べたところ、表2の右欄の結果を得た。
なお、表1および表2において、金属Aは低融点金属を示し、金属Bは酸化物の標準生成エネルギーが炭素の標準生成エネルギーよりも低い金属を示す。
【0025】
なお、実施例品はいずれの試料でも表面では1%前後の酸化物濃度があり、中心に向かうに従って、その値が連続的に薄くなっていた。
ここで、「圧着ボール径」は、オリンパス社製の測長顕微鏡を用い、N=40で測定した平均値である。「X/Y」の判定基準は、測定値が0.98未満のものをバツ(×)とし、0.99以上のものをマル(○)とした。「Cpk」は圧着ボール径の規格(45μm/5μm)を示し、Cpkが1.33未満のものをバツ(×)とし、Cpkが1.33以上のものをマル(○)とした。「シェア強度」は、DAGE社製の万能ボンドテスターBT−2400を用い、3μmのステップバックと毎秒125μmのシェア速度、N=40で測定したシェア荷重を圧着ボール径の面積で割り、単位面積あたりの接合強度で判断した。この値が10kgf/mm未満のものをバツ(×)とし、10kgf/mm以上のものをマル(○)とした。「Au−Al」はAu−Al合金の合金化率を示し、ボンディングしたサンプルを塩基性水溶液中にて溶解して接合面を露出させた後、日本電子社製の走査型電子顕微鏡JSM−5900LVで1、000倍の倍率で観察し、N=5で測定した。この測定値が70%未満のものをバツ(×)とし、70%以上のものをマル(○)とした。
【0026】
上記結果から明らかなように、実施品の1から38までの試料のボンディング・ワイヤは圧着ボール径が小さくても満足のいくボンディング効果が得られることがわかる。これに対し比較品の1から6までのボンディング・ワイヤの場合は、圧着ボール径が小さいと満足のいくボンディング効果が得られないことがわかる。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度99.99質量%以上のAuからなる極細線が酸化性雰囲気下でAlパッドへボール・ボンディングされた半導体装置において、該接合されたAuボールの最大直径が極細線の線径の2倍以下であり、かつ、そのボール部の表層として8nm〜20nm厚の微量添加元素の酸化物層が形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
極細線の線径が25μm以下である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
Auボールの最大直径が50μm以下である請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
微量添加元素の酸化物層が極細線の表面から中心方向へ連続的に濃度が減少している請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
微量添加元素が低融点金属Aである請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
低融点金属Aが、In、Sn、Bi、Pb、SbおよびGaの中から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
微量添加元素が、その酸化物の標準生成自由エネルギーが炭素の標準生成自由エネルギーよりも低い金属Bである請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
金属BがCa、Be、Mg、MnおよびCeの中から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
微量添加元素が低融点金属Aおよび金属Bの双方を含有している請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
低融点金属AがIn、Sn、Bi、Pb、SbおよびGaの中から選ばれる少なくとも1種であり、かつ、金属BがCa、Be、Mg、MnおよびCeの中から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の半導体装置。