説明

半導体装置

【課題】容易に動作を変更可能な電子機器を製造することのできる技術を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体装置は、基板と、前記基板上に配置された複数の半導体チップと、前記基板上に配置され、アンテナの指向性を調整することによって送信先の半導体チップを切り替えつつ、前記半導体チップへ信号を無線送信する制御用半導体チップと、を有し、前記制御用半導体チップは、動的に回路構成を再構成可能であり、その回路構成に応じて送信先として選択する前記半導体チップを動的に変更可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に基板上に配置された半導体チップ間で無線通信によって信号伝達を行う半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来電子機器では、半導体モジュールなどの電子デバイスがプリント配線板(PWB: Printed Wiring Board)上にハンダを用いて接続されている。PWB内には、基板の外層・
内層に銅線などの電気良導体で3次元的に回路が形成されている。
【0003】
PWBでは配線構造が複雑になるため実装密度の向上に限界がある。そこで、半導体モジュール間を無線通信によって接続する技術が研究されている。
【非特許文献1】Yu Su, Jau-Jr Lin, and Kenneth K O, “A 20-GHz CMOS RF Down-Converter with an On-chip Antenna,” 2005 IEEE International Solid-State Circuits Conference, pp. 270-272, February 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、電子デバイスの位置および回路構成が固定されているため、一旦構成した回路の機能を変更したり拡張したりすることは難しい。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、容易に動作を変更可能な電子機器を製造することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は以下のような構成をとる。本発明は、基板上に配置された半導体モジュール(半導体チップ)間で無線通信によって信号伝達を行う半導体装置である。基板上に配置された複数の半導体チップと制御用半導体チップとが無線通信によって情報の送受信を行う。半導体チップ間を銅線等の電気良導体で接続するのではなく、無線によって接続するため配線構造が複雑になることを防ぐことができる。
【0007】
本発明における制御用半導体チップは、アンテナの指向性を調整することによって送信先の半導体チップを切り替えつつ、半導体チップへ信号を無線送信する。ここで、通信する必要のある半導体チップのみに信号が送信されるようにアンテナの指向性を調整することが好ましい。通信する必要のない半導体チップに対して電波を送信するとノイズが発生し誤動作の原因となる場合がある。アンテナの指向性を調整することで不必要な電波が通信する必要のない半導体チップに送信されることを防止し、このような誤動作を減らすことができる。また、電波の送信出力を必要最小限の送信出力に調整することで、ノイズの影響を防止するとともに省電力化を図ることができる。なお、半導体チップおよび制御用半導体チップは基板上に固定されておりその位置があらかじめ分かるので、通信相手の半導体チップに応じてアンテナの指向性や送信出力を調整することが可能である。
【0008】
制御用半導体チップにおいて用いられるアンテナはアレイアンテナであることが好ましい。アレイアンテナは素子アンテナ(例えばパッチアンテナ)を複数並べたものである。個々のアンテナの配置方法は、線状、面状(三角形状、四角形状、円形上等)、立体形状等様々な配置をとることができる。アレイアンテナでは、素子アンテナを共相励振することによって指向性を調整することができる。また、このアンテナは制御用半導体チップと
ワンチップで構成されることが好ましいが、制御用半導体チップの外部に位置しても良い。
【0009】
また、本発明における制御用半導体チップは、動的に回路構成を再構成可能(プログラマブル)であり、動的に動作を変更することができる。制御用半導体チップは、複数の演算ユニットとそれらを結ぶ配線部分と配線回路の構成を制御する制御部から構成される。制御部が配線回路の構成を変更することで、動的に動作を変更することができる。このようなチップとして、FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)あるいはリコンフィグラブルチップ(Reconfigurable Chip)等を用い
ることができる。
【0010】
このように、制御用半導体チップとして再構成可能(プログラマブル)なチップを用いることで、送信先として選択する半導体チップを動的に変更することが可能となり、柔軟な回路設計を行うことが可能である。つまり、仮想的に回路を増やすことが可能であり、多くの機能を持った半導体装置を提供することが可能となる。また、製品出荷後であっても仕様変更や機能拡張などを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に動作を変更可能な電子機器を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、車両に搭載された画像認識装置であって、車載のカメラによって撮像された画像から観測対象物を検出する画像認識装置である。画像認識処理は、空間フィルタリング処理、特徴量抽出処理、パターンマッチング処理などの複数の工程に分かれる。本実施形態では、各処理を実行する専用のモジュール(LSIチップ)を用いて画像認識処理を行う。また、画像認識処理のアルゴリズムは、観測対象物や入力画像の特性などによって変えることが望ましい。例えば、入力画像から、自動車・オートバイ・人物という単位で検出を行う場合と、乗用車・バス・トラックという単位で検出を行う場合とで異なるアルゴリズムを用いることが望ましい。また、入力画像の解像度や照明条件などに応じてアルゴリズムを使い分けることが好ましい。本画像認識装置では、入力画像から検出する観測対象物に応じて使用するアルゴリズムを切り替える。
【0014】
図1は、本実施形態に係る画像認識システムの構成を示す図である。本画像認識装置は、画像認識システムAを構成する画像処理モジュール3a,4a,5a、画像認識システムBを構成する画像処理モジュール3b,4b,5b、各画像処理モジュールに対して駆動信号を送信する制御・通信モジュール2から構成される。これらの各モジュールは1つのプリント配線板(PWB)1上に配置される。
【0015】
画像認識システムAは、入力画像から自動車・オートバイ・人物という単位で観測対象物を検出する画像認識システムである。画像処理モジュール3aはカメラ6からの入力画像からノイズを除くために平滑化処理や画像強調などの空間フィルタリング処理を行うモジュールである。画像処理モジュール4aは、画像から特徴量を抽出するモジュールである。画像処理モジュール5aは、抽出された特徴量に基づいてあらかじめ定められたパターンと一致するかを判定することにより画像中に観測対象物が存在するかを検出するパターンマッチング処理を行うモジュールである。
【0016】
画像認識システムBは、入力画像から乗用車・バス・トラックという単位で観測対象物
を検出する画像認識システムである。画像処理モジュール3b,4b,5bは上記と同様、それぞれ画像フィルタリング処理、特徴量抽出処理、パターンマッチング処理を行う。ただし、それぞれの処理におけるアルゴリズムは、観測対象物に応じて最適化されている。
【0017】
制御・通信モジュール2は、各画像処理モジュールへ駆動信号を送信して画像処理を実行させる。各画像処理モジュールと制御・通信モジュール2には、それぞれ送受信機が組み込まれており、UWB(Ultra Wide Band)、無線LAN、Bluetooth(登録
商標)などの無線技術を用いてシグナル転送を実施する。
【0018】
図2は、制御・通信モジュール2の構成を示す図である。制御・通信モジュール2は、制御部10、構成変更部11およびアレイアンテナ12を有する。制御部10は、どの画像処理モジュールにどのような情報を送信するかという制御を行う。より具体的には、通信先の画像処理モジュールを特定し、アレイアンテナ12から送信する電波の指向性や送信出力を制御する。また、送信情報に応じて使用帯域を切り替える。
【0019】
アレイアンテナ12は複数の素子アンテナ(例えばパッチアンテナ)を配列して構成されており、各素子アンテナから送信される信号の位相および振幅を調整することで任意の方向に対して指向性を持たせることができる。制御・通信モジュール2や各画像処理モジュールはPWB1上に固定されているため、通信相手に応じてどの方向に指向性を持たせればよいかやどの程度の送信出力で通信すればよいかを決定することができる。このように指向性や送信出力を調整することによって通信する必要のない画像処理モジュールに対して送信される不要な電波を減らすことができる。これによってクロストークによって発生するノイズを減らすことができ、誤動作を抑止することが可能となる。なお、制御・通信モジュール2や各画像処理モジュールは、通信経路上に他のモジュール等の障害物が存在しないように配置されることが好ましい。
【0020】
制御・通信モジュール2はリコンフィグラブルチップによって構成されており、構成変更部11によってその配線回路が動的に変更することができる。これにより、必要に応じて動的にシステム変更が可能であり、本画像認識装置においては、入力画像からどのような観測対象物を検出するかに応じて使用する画像認識システムを切り替えるようにシステム変更される。なお、制御・通信モジュール2はリコンフィグラブルチップではなく、FPGAなどのプログラマブルなデバイスを用いても良い。
【0021】
次に、本画像認識装置の動作について説明する。まず、カメラ6によって撮像された画像(入力画像)を制御・通信モジュール2が受け取る。ここで、入力画像から、車両・オートバイ・人物という単位で対象を検出する場合には、構成変更部11が制御・通信モジュール2のソフトウェアを書き換えて(配線回路の構成を変更して)画像認識システムA(画像処理モジュール3a,4a,5aから構成される)を利用するように動作を変更する。制御・通信モジュール2は、画像処理モジュール3aに対して駆動信号を無線によって送信し、入力画像に対して空間フィルタリング処理を行う。制御・通信モジュール2は処理結果を画像処理モジュール3aから受信する。同様に、制御・通信モジュール2は画像処理モジュール4a、5aに対して駆動信号を順次送信し、特徴量抽出処理、パターンマッチング処理を実行させ、その処理結果を受信する。このようにして、入力画像から観測対象物を検出する。
【0022】
入力画像から、乗用車、トラック、バスという単位で対象を検出する場合には、構成変更部11が制御・通信モジュール2のソフトウェアを書き換えて画像認識システムB(画像処理モジュール3b,4b,5bから構成される)を利用するように動作を変更する。制御・通信モジュール2は、駆動信号を画像処理モジュール3b、4b、5bに順次送信
して空間フィルタリング処理、特徴量抽出処理、パターンマッチング処理を実行させて、その処理結果を受信する。このようにして、入力画像から観測対象物を検出する。
【0023】
本実施形態では、各デバイス間を無線によって接続したため、従来のように銅配線等を利用した場合に生じる配線接続が高密度になるという問題を回避することが可能となる。また、リコンフィグラブル(再構成可能)なチップを用いているため、画像認識のアルゴリズム毎に制御・通信モジュール2を用意する必要がなく、内部のソフトウェア書き換えによって複数(本実施例では2つ)のアルゴリズムに対応することができる。したがって、部品数を削減することができ、製造コストを削減するとともに省スペース化も実現できる。さらに、機能の拡張・変更(例えば、画像処理モジュール3a,4a,5bを用いて画像認識処理を行うなど)も、ソフトウェアの書き換えによって対応可能である。
【0024】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、モータを駆動制御するためのモータ制御システムである。図3は、本モータ制御システムの構成を示す図である。本モータ制御システムは、駆動信号発生部21,モータドライバ22a,22b,22cおよびモータ23a,23b,23cから構成される。駆動信号発生部21が各モータドライバに駆動信号を順次送信し、駆動信号を受信したモータドライバは対応するモータを駆動する。
【0025】
本実施形態における駆動信号発生部21,モータドライバ22a,22b,22cは1つのプリント配線板(PWB)24上に配置される。そして、駆動信号発生部21および各モータドライバにはそれぞれ送受信機が組み込まれており、UWB、無線LAN、Bluetoothなどの無線技術を用いてシグナル転送を実施する。
【0026】
駆動信号発生部21は、第1の実施形態における制御・通信モジュールと同様の構成(図2参照)であり、制御部、構成変更部およびアレイアンテナを有する。駆動信号発生部21は、アレイアンテナから送信する電波の位相や振幅を調整することで任意の方向に対して指向性を持たせることができる。また、通信距離に応じて送信出力を適宜調整する。このように指向性や送信出力を調整することで、他のモータドライバへ送信される不要な電波を減らすことできる。これによってクロストークによって発生するノイズを減らすことができ、誤動作を抑止することが可能となる。なお、駆動信号発生部21や各モータドライバは、通信経路上に他のモジュール等の障害物が存在しないように配置されることが好ましい。
【0027】
駆動信号発生部21はリコンフィグラブルチップによって構成されており、その配線回路は動的に変更することができる。したがって、モータの駆動方法(各モータドライバへの駆動信号の送信順序や、信号の構造など)を適宜変更することができる。このように再構成可能なチップを用いることで、仮想的に回路を増やすことが可能となり、多くの機能を持ったモータ制御システムを提供することができる。これは同時に部品数を減らすことにもつながり、製造コストを削減するとともに省スペース化も実現できる。
【0028】
各モータドライバはモータを駆動するため高電圧(本実施形態では500V)で制御される必要がある。逆に、駆動信号発生部21は低電圧(本実施形態では5V)で制御される。このような、モータドライバと駆動信号発生部21を共通のバスやシグナルラインで接続する場合には、制御電圧を調整する必要が生じる。これに伴い、ノイズが発生して誤動作が生じる可能性がある。この問題はモータ駆動装置に限らず、高電圧部品を駆動・制御する装置一般に共通する問題である。
【0029】
本実施形態では、モータドライバと駆動信号発生部21間の駆動信号伝達に無線通信を用いたため、制御電圧を調整する必要がなくなる。したがって、制御電圧の調整に伴うノ
イズの発生およびノイズによる誤動作を防止することが可能である。すなわち、本実施形態は、所定の電圧が供給される第1の半導体チップと、前記所定の電圧とは異なる電圧が供給され、前記第1の半導体チップに信号を送信する第2の半導体チップと、を有し、前記第2の半導体チップは、無線通信によって前記第1の半導体チップへ信号を送信することを特徴とする半導体装置(高電圧部品駆動制御装置)の発明として捉えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態に係る画像認識装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態における制御・通信モジュールの構成を示す図である。
【図3】第2の実施形態に係るモータ制御システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 配線板
2 制御・通信モジュール
3a,4a,5a 画像処理モジュール
3b,4b,5b 画像処理モジュール
6 カメラ
10 制御部
11 構成変更部
12 アレイアンテナ
21 駆動信号発生部
22a,22b,22c モータドライバ
23a,23b,23c モータ
24 配線板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された複数の半導体チップと、
前記基板上に配置され、アンテナの指向性を調整することによって送信先の半導体チップを切り替えつつ、前記半導体チップへ信号を無線送信する制御用半導体チップと、
を有し、
前記制御用半導体チップは、動的に回路構成を再構成可能であり、その回路構成に応じて送信先として選択する前記半導体チップを動的に変更可能であることを特徴とする半導体装置。







【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−251614(P2007−251614A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72510(P2006−72510)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】