説明

半導体装置

【課題】金属細線同士の接触を防ぎ、封止樹脂の注入条件の拡大及びパッケージ表面からの金属細線の露出を防止する。
【解決手段】半導体装置は、アイランド2及びインナーリード1を有するリードフレーム3と、アイランド2の上の半導体チップ5Aと、半導体チップ5Aの上の電極6A、6Bと、電極6A、6Bとインナーリード1とを接続し且つ複数の屈曲点を有する配線とを備えている。第1の配線8は、第1屈曲点8bから第2屈曲点8dに向かって高くなる傾斜を持ち、第2屈曲点8dは、第1の配線8のうち最も高い屈曲点である。第2の配線9は、第1屈曲点9bから第2屈曲点9dに向かって低くなる傾斜を持ち、第2屈曲点9dは、第2の配線9のうち最も低い屈曲点である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、半導体チップ上の電極とインナーリードとを接続する複数の金属細線を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、DVD、デジタルテレビ及びカーナビゲーション等の電化製品の小型化、高性能化及び多機能化に伴い、半導体デバイスも多ピン化、小型化及び高密度化さらには低コスト化のパッケージ技術の開発が求められている。組立工程において、狭ピッチ化された電極とインナーリードとを金属細線で接続し、封止工程時の封止樹脂の注入により金属細線に変形が生じた場合であっても、隣接する金属細線同士の間隔を十分に確保することが可能となれば、低コストの狭ピッチ化に対応した半導体装置を実現することができる。
【0003】
この問題に対応するために、従来、複数の半導体チップがリードフレームのアイランドに積層してマウントされ、半導体チップ上に設けられた電極とリードフレームのインナーリードとを金属細線で接続している半導体装置が、例えば特許文献1に提示されている。
【0004】
以下、図面を参照しながら従来の半導体装置を説明する。
【0005】
図9は複数の半導体チップ上の電極とインナーリードとが電気的に接続されている一部分の断面図であり、図10は金属細線により、半導体チップ上の電極とインナーリードとが電気的に接続されている一部分の平面図である。
【0006】
図9はリードフレーム103のアイランド102の上に半導体チップ105A、105B、105Cが順次積層され、半導体チップ105A、105B、105Cそれぞれの電極上の第1ボンド点107A、107B、107Cとインナーリード101の上のそれぞれの第2ボンド点111A、111B、111Cとが金属細線108、109、110によりそれぞれ接続された構成を示している。
【0007】
従来の金属細線の形状(屈曲形状)は、それぞれの第1屈曲点108a、109a、110aから連なる部分は台形上であり、これらを台形部108b、109b、110bとし、且つ、上段の金属細線110以外は第2屈曲点108c、109c以降の傾斜部に第3屈曲点108e、109eを形成し、2つの傾斜部である台形部側傾斜部108d、109dとリード側傾斜部108f、109fとを有する形状を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−345339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の半導体装置には次のような問題がある。
【0010】
従来の金属細線では、上段の金属細線の傾斜部分とその下方の金属細線の傾斜部分との間隔は確保されているものの、封止樹脂の注入時の影響が無視されており、封止工程後の金属細線同士の間隔を保持することは困難である。また、第1屈曲部と第2屈曲部との間の台形部分の斜辺は金属細線同士の間隔は十分でなく金属細線の接触の可能性が大きい等の問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記従来の問題に鑑み、その目的は、狭ピッチ化に対応した金属細線同士の接触を防ぐと共に、封止樹脂の注入条件の拡大及び封止樹脂からなるパッケージ表面からの金属細線の露出の防止が可能となる半導体装置を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、半導体装置を、半導体チップ上の電極とリードフレームのインナーリードとを接続する第1の配線と第2の配線とが異なる屈曲形状を採る構成とする。
【0013】
具体的には、本発明に係る半導体装置は、アイランド及びインナーリードを有するリードフレームと、アイランドの上に固着された半導体チップと、半導体チップの上に形成された複数の電極と、各電極と前記インナーリードとを接続し、且つそれぞれ複数の屈曲点を有する複数の配線とを備え、複数の配線のうちの第1の配線は、電極上の第1接続点から電極の上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって高くなる傾斜を持ち、第1の配線の第2屈曲点は、第1の配線のうち最も高い屈曲点であり、複数の配線のうちの第2の配線は、電極上の第1接続点から電極の上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって低くなる傾斜を持ち、第2の配線の第2屈曲点は、第2の配線のうち最も低い屈曲点である。
【0014】
本発明の半導体装置によると、第1の配線は、電極上の第1接続点から電極の上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって高くなる傾斜を有し、第2の配線は、電極上の第1接続点から電極の上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって低くなる傾斜を有するため、配線間の間隔を拡大する配線の屈曲形状を持つ。このため、封止工程時の封止樹脂の注入により配線の変形が発生して該配線同士が接触することを防止できる。これにより、第1の配線のネック立ち上がり部分の高さを抑えることができるため、パッケージ表面からの配線の露出を防止できる。また、これにより、封止樹脂の注入条件の拡大が可能となる。
【0015】
本発明の半導体装置において、第1の配線の第2屈曲点は、第1の配線の第1接続点とインナーリードと接続される第2接続点との距離の約50%よりも半導体チップに近い位置に設けられ、第2の配線の第2屈曲点は、第2の配線の第1接続点とインナーリードと接続される第2接続点との距離の約50%よりも半導体チップに近い位置に設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明の半導体装置において、第1の配線は、第2屈曲点と第2接続点との間に、第3屈曲点が設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明の半導体装置において、第2の配線は、第2屈曲点と第1接続点との間に中間屈曲点が設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明の半導体装置において、第1の配線は、第2屈曲点と第2接続点との間に、第3屈曲点が設けられており、第2の配線は、第2屈曲点と第1接続点との間に中間屈曲点が設けられており、第1の配線の第2屈曲点と第3屈曲点との間の傾斜角は、第2の配線の中間屈曲点と第2屈曲点との間の傾斜角よりも小さいことが好ましい。
【0019】
本発明の半導体装置において、第1接続点の高さは、第2接続点の高さと同一か又は第2接続点よりも高く設定されており、第1の配線の第2屈曲点から第2接続点との間の傾斜角は、第2の配線の第2屈曲点から第2接続点との間の傾斜角よりも大きいことが好ましい。
【0020】
本発明の半導体装置において、第1接続点の高さは、第2接続点の高さよりも低く設定されており、第1の配線は、第2屈曲点から第2接続点に向かって低くなり、第2の配線は、第2屈曲点から第2接続点に向かって高くなることが好ましい。
【0021】
本発明の半導体装置において、複数の配線のうち、第1の配線と第2の配線との少なくとも1組は、互いに隣接して設けられていることが好ましい。
【0022】
本発明の半導体装置において、第1の配線は、第2の配線よりも第1接続点からのネック立ち上がり部分の上端の高さが高いか又は同一であることが好ましい。
【0023】
本発明の半導体装置において、半導体チップは、アイランドの上に複数設けられ、第1の配線と第2の配線とは、異なる半導体チップと接続されていることが好ましい。
【0024】
本発明の半導体装置において、半導体チップとインナーリードとの間は、互いの屈曲形状が異なる少なくとも3種類の配線によって接続されており、第1の配線の上方に位置する第3の配線は、半導体チップ上の第1接続点から上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって高くなり、第3の配線の第2屈曲点は、第3の配線の第1接続点と第2接続点との距離の50%部分の位置よりも半導体チップに近い位置に設けられ且つ最も高い屈曲点であり、且つ第1の配線の第2屈曲点よりもインナーリード側に位置することが好ましい。
【0025】
この場合に、半導体チップは、アイランドの上に複数設けられ、第1の配線と第3の配線とは、異なる半導体チップと接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る半導体装置によると、隣接する配線同士の間隔の拡大及び配線のネック立ち上がり部分の高さを抑えることが可能となるため、半導体チップの狭ピッチ化に対応でき、封止工程時の封止樹脂の影響を受けにくくなるので、封止樹脂の注入条件の拡大及びパッケージ表面からの配線の露出の防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置であって、チップとインナーリードとを接続する配線の特性を示すグラフである。
【図3】(a)及び(b)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置であって、隣接する配線同士の接触位置をシミュレーションした結果を示し、(a)はチップのセンター部におけるシミュレーション結果を示す図であり、(b)はチップのコーナー部におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【図9】従来例に係る半導体装置を示す断面図である。
【図10】従来例に係る半導体装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図1を参照しながら説明する。
【0029】
図1は本発明の第1の実施形態における半導体装置の断面構成を示している。
【0030】
図1に示すように、インナーリード1及びアイランド2を有するリードフレーム3におけるアイランド2の上には、半導体チップ5Aがダイスボンド材4Aを介して固着されている。半導体チップ5Aの上面に形成された電極6A、6Bとインナーリード1とは、互いに隣接し且つ屈曲形状が異なる第1の金属細線8と第2の金属細線9とにより接続されている。
【0031】
第1の金属細線8は、半導体チップ5Aの電極6Aとの接続点である第1ボンド点7Aから電極6Aの上方に垂直に立ち上がるネック立ち上がり部分8aの第1屈曲点8bから第2屈曲点8dまでの間が徐々に高くなる傾斜部8cを持つ。なお、傾斜部8cは必ずしも直線状でなくても構わない。第2屈曲点8dは、第1の金属細線8が接続される第1ボンド点7Aと第2ボンド点11Aとの距離の50%部分よりも半導体チップ5Aに近い位置に設けられ且つ最も高い屈曲点である。また、第1の金属細線8は、第2屈曲点8dから第2ボンド点11Aまでの間が徐々に低くなる傾斜部8を持つ。
【0032】
第2の金属細線9は、半導体チップ5Aの電極6Bとの接続点である第1ボンド点7Bから電極6Bの上方に垂直に立ち上がるネック立ち上がり部分9aの第1屈曲点9bから第2屈曲点9dまでの間が徐々に低くなる傾斜部9cを持つ。なお、傾斜部9cは必ずしも直線状でなくても構わない。第2屈曲点9dは、第2の金属細線9が接続される第1ボンド点7Bと第2ボンド点11Bとの距離の50%部分よりも半導体チップ5Aに近い位置に設けられ且つ最も低い屈曲点である。
【0033】
ここで、第1の金属配線8の第2屈曲点8d及び第2の金属配線9の第2屈曲点9dが設けられる位置において、上記の50%の数値根拠について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2に示すワイヤ特性を有する配線を用いて、チップとインナーリードとを接続する互いに隣接する2本の配線が、どの位置において互いに接触するかシミュレーションした結果を図3(a)及び(b)に示している。図3(a)に示すように、チップのセンター部において、隣接する配線のうち一方をスイープさせた場合、配線長に対して、チップ上のボンド点から49.8%の位置において、配線同士の接触が起こる。また、図3(b)に示すように、チップのコーナー部において、互いに隣接する配線のうちの一方をスイープさせると、配線長に対して、チップ上のボンド点から12.6%の位置において、配線同士の接触が起こる。このシミュレーションの結果から、隣接する配線同士が封止樹脂等に起因して変形することにより、配線長に対して、チップ上のボンド点から12.6%から49.8%の間の位置において、互いに隣接する配線同士が接触することが分かる。このため、第2屈曲点8d及び9dのそれぞれを、第1ボンド点7A及び7Bと第2ボンド点11A及び11Bとの距離の約13%から50%の間の半導体チップ5Aに近い位置に設けることが好ましい。
【0034】
第2の金属細線9は、第2屈曲点9dから第2ボンド点11Bまでの間が徐々に低くなる傾斜部8eを持つ。
【0035】
なお、第1ボンド点7A、7Bは第2ボンド点11A、11Bよりも高く、且つ、第1の金属細線8の第2屈曲点8dから第2ボンド点11Aまでの傾斜部8eにおける傾斜角は、第2の金属細線9の第2屈曲点9dから第2ボンド点11Bまでの傾斜部9eにおける傾斜角よりも大きい。
【0036】
また、第1の金属細線8のネック立ち上がり部分8aの高さは、第2の金属細線9のネック立ち上がり部分9aの高さよりも高い。
【0037】
以上のような半導体装置の構造により、隣接する第1の金属細線8と第2の金属細線9との間隔を十分に確保することが可能となるため、封止工程後の第1の金属細線8と第2の金属細線9との接触を容易に回避できる。さらに、第1の金属細線8のネック立ち上がり部分8aの高さを低くすることが可能となるので、第1の金属細線8の高さが全体的に低くなる。従って、第1の金属細線8の高さのばらつきを小さくでき、また、封止樹脂(図示せず)からなるパッケージ表面までの間隔が大きくなることにより、パッケージ表面から金属細線が露出するおそれが小さくなるため、高品質で且つ自由度がある半導体装置を得られる。
【0038】
(第1の実施形態の第1の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る半導体装置について、図4を参照しながら説明をする。
【0039】
図4は本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る半導体装置の断面構成を示している。
【0040】
図4において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0041】
第1の実施形態との相違点は、次の通りである。
【0042】
図4に示すように、第1の金属細線8は、第2屈曲点8dと第2ボンド点11Aとの間に、第3屈曲点8gを有し、第3屈曲点8gは、第2屈曲点8dよりも低い位置にある。なお、第2屈曲点8dから第3屈曲点8gまでの傾斜部8fは、必ずしも直線状でなくても構わない。さらに、第3屈曲点8gの他に複数の屈曲点を有しても構わない。さらに第3屈曲点8gから第2ボンド点11Aは傾斜がついた形状となっている。
【0043】
第2の金属細線9は、第1屈曲点9bと第2屈曲点9dとの間に、中間屈曲点9gを有し、中間屈曲点9gは、第2屈曲点9dよりも高い位置、また第1屈曲点9bよりも低い位置にあり、中間屈曲点9gから第2屈曲点9dまでの傾斜部9fは、必ずしも直線状でなくても構わない。さらに第2屈曲点9dから第2ボンド点11Bは傾斜がついた形状であり、中間屈曲点9gの他に複数の屈曲点を有しても構わない。
【0044】
なお、第1ボンド点7A、7Bは第2ボンド点11A、11Bよりも高く、且つ、第1の金属細線8の第3屈曲点8gから第2ボンド点11Aまでの傾斜部8hにおける傾斜角は、第2の金属細線9の第2屈曲点9dから第2ボンド点11Bまでの傾斜部9hにおける傾斜角よりも大きく、第1の金属細線8の第2屈曲点8dから第3屈曲点8gまでの傾斜部8fにおける傾斜角は、第2の金属細線9の中間屈曲点9gから第2屈曲点9dまでの傾斜部9fにおける傾斜角よりも小さい。
【0045】
また、第1の金属配線8のネック立ち上がり部分8aの高さは、第2の金属細線9のネック立ち上がり部分9aの高さよりも高い。
【0046】
以上のような半導体装置の構造により、隣接する第1の金属細線8と第2の金属細線9との間隔を十分に確保することが可能となるため、封止工程後の第1の金属細線8と第2の金属細線9との接触を容易に回避できる。さらに、第1の金属細線8のネック立ち上がり部分8aの高さを低くすることが可能となるので、第1の金属細線8の高さが全体的に低くなる。従って、第1の金属細線8の高さのばらつきを小さくでき、また、封止樹脂(図示せず)からなるパッケージ表面までの間隔が大きくなることにより、パッケージ表面から金属細線が露出するおそれが小さくなるため、高品質で且つ自由度がある半導体装置を得られる。
【0047】
(第1の実施形態の第2の変形例)
以下、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る半導体装置について、図5を参照しながら説明をする。
【0048】
図5は本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る半導体装置の断面構成を示している。
【0049】
図5において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0050】
第1の実施形態との相違点は、次の通りである。
【0051】
図5に示すように、インナーリード1及びアイランド2を有するリードフレーム3におけるアイランド2の上には、半導体チップ5Aがダイスボンド材4Aを介して固着されている。半導体チップ5Aの上面に形成された電極6Bとインナーリード1とは第2の金属細線9により接続されている。半導体チップ5Aの上面には、半導体チップ5Bがダイスボンド材4Bを介して固着されており、半導体チップ5Bの上面に形成された電極6Aとインナーリード1とは第1の金属細線8により接続されている。
【0052】
また、第1の金属配線8のネック立ち上がり部分8aの高さは、第2の金属細線9のネック立ち上がり部分9aの高さよりも高い。
【0053】
以上のような半導体装置の構造により、隣接する第1の金属細線8と第2の金属細線9との間隔を十分に確保することが可能となるため、封止工程後の第1の金属細線8と第2の金属細線9の接触を容易に回避できる。さらに、第1の金属細線8のネック立ち上がり部8aの高さを低くすることが可能となるので、第1の金属細線8の高さが全体的に低くなる。従って、第1の金属細線8の高さばらつきを小さくでき、また、封止樹脂(図示せず)からなるパッケージ表面までの間隔が大きくなることにより、パッケージ表面から金属細線が露出するおそれが小さくなるため、高品質で且つ自由度がある半導体装置を得られる。
【0054】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置について、図6を参照しながら説明をする。
【0055】
図6は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。
【0056】
図6において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0057】
第1の実施形態との相違点は、次の通りである。
【0058】
図6に示すように、インナーリード1及びアイランド2を有するリードフレーム3におけるアイランド2の上には、半導体チップ5Aがダイスボンド材4Aを介して固着されている。半導体チップ5Aの上面に形成された電極6A、6B及び6Cとインナーリード1とは、互いに隣接し且つ屈曲形状が異なる第1の金属細線8と第2の金属細線9と第3の金属細線10とにより接続されている。
【0059】
第3の金属細線10は、第1の金属細線8の上方に位置し、第2屈曲点10dは、第3の金属細線10が接続される第1ボンド点7Cと第2ボンド点11Cとの距離の50%部分よりも半導体チップ5Aに近い位置に設けられ且つ最も高い屈曲点である。
【0060】
なお、第1ボンド点7A、7B、7Cは第2ボンド点11A、11B、11Cよりも高く、且つ、第1の金属細線8の第2屈曲点8dから第2ボンド点11Aまでの傾斜部8eにおける傾斜角は、第2の金属細線9の第2屈曲点9dから第2ボンド点11Bまでの傾斜部9eにおける傾斜角よりも大きい。第3の金属細線10の第1屈曲点10bから第2屈曲点10dまでの傾斜部10cにおける傾斜角は、第1の金属細線8の第1屈曲点8bから第2屈曲点8dまでの傾斜部8cにおける傾斜角よりも大きい。
【0061】
また、第1の金属配線8のネック立ち上がり部分8aの高さは、第2の金属細線9のネック立ち上がり部分9aの高さよりも高い。
【0062】
以上のような半導体装置の構造により、隣接する第1金属細線8、第2の金属細線9及び第3の金属細線10の互いの間隔を十分に確保することが可能となるため、封止工程後の第1の金属細線8と第2の金属細線9と第3の金属細線10の接触を容易に回避できる。
【0063】
さらに、第1の金属細線8と第3の金属細線10ネック立ち上がり部分8a、10aの高さを低くすることが可能となるので、第1の金属細線8及び第3の金属細線10の高さが全体的に低くなる。従って、第1の金属細線8及び第3の金属細線10の高さばらつきを小さくでき、また、封止樹脂(図示せず)からなるパッケージ表面までの間隔が大きくなることにより、パッケージ表面から金属細線が露出するおそれが小さくなるため、高品質で且つ自由度がある半導体装置を得られる。
【0064】
(第2の実施形態の第1の変形例)
以下、本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る半導体装置について、図7を参照しながら説明をする。
【0065】
図7は本発明の第2の実施形態の第1の変形例に係る半導体装置の断面構成を示している。
【0066】
図7において、図6と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0067】
第2の実施形態との相違点は、次の通りである。
【0068】
図7に示すように、インナーリード1及びアイランド2を有するリードフレーム3におけるアイランド2の上には、半導体チップ5Aがダイスボンド材4Aを介して固着されている。半導体チップ5Aの上面に形成された電極6A、6Bとインナーリード1とは、屈曲形状が異なり、互いに隣接する第1の金属細線8と第2の金属細線9とにより接続されている。さらに、半導体チップ5Aの上には、半導体チップ5Bがダイスボンド材4Bを介し固着されており、半導体チップ5Bの上面に形成された電極6Cとインナーリード1とは第3の金属細線10により接続されている。
【0069】
以上のような半導体装置の構造により、隣接する第1の金属細線8と第2の金属細線9と第3の金属細線10との間隔を十分に確保することが可能となるため、封止工程後の第1の金属細線8と第2の金属細線9と第3の金属細線10の接触を容易に回避できる。さらに、第1の金属細線8と第3の金属細線10のネック立ち上がり部分8a、8cの高さを低くすることが可能となるので、第1の金属細線8及び第3の金属細線10の高さが全体的に低くなる。従って、第1の金属細線8及び第3の金属細線10の高さばらつきを小さくでき、また、封止樹脂(図示せず)からなるパッケージ表面までの間隔が大きくなることにより、パッケージ表面から金属細線が露出するおそれが小さくなるため、高品質で且つ自由度がある半導体装置を得られる。
【0070】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置について、図8を参照しながら説明をする。
【0071】
図8は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の断面構成を示している。
【0072】
図8において、図1と同一の構成部材には同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0073】
第1の実施形態との相違点は、次の通りである。
【0074】
図8に示すように、半導体チップ5A上の第1ボンド点7A、7Bは、インナーリード1の第2ボンド点11A、11Bよりも低くなっている。これにより、第1の金属細線8の第2屈曲点8dから第2ボンド点11Aまでの傾斜部は8eは、低くなる傾斜を持ち、第2の金属細線9の第2屈曲点9dから第2ボンド点11Bまでの傾斜部9eは、高くなる傾斜を持つ。
【0075】
また、第1の金属配線8のネック立ち上がり部分8aの高さは、第2の金属細線9のネック立ち上がり部分9aの高さよりも高くなっている。
【0076】
以上のような半導体装置の構造により、隣接する第1の金属細線8と第2の金属細線9との間隔を十分に確保することが可能となるため、封止工程後の第1の金属細線8と第2の金属細線9の接触を容易に回避できる。さらに、第1の金属細線8のネック立ち上がり部分8aの高さを低くすることが可能となるので、第1の金属細線8の高さが全体的に低くなる。従って、第1の金属細線8の高さばらつきを小さくでき、また、封止樹脂(図示せず)からなるパッケージ表面までの間隔が大きくなることにより、パッケージ表面から金属細線が露出するおそれが小さくなるため、高品質で且つ自由度がある半導体装置を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る半導体装置は、隣接する配線同士の間隔の拡大及び配線のネック立ち上がり部分の高さを抑えることが可能となるため、半導体チップの狭ピッチ化に対応でき、封止工程時の封止樹脂の影響を受けにくくなるので、封止樹脂の注入条件の拡大及びパッケージ表面からの配線の露出の防止が可能となり、特に、半導体チップ上の電極とインナーリードとを接続する複数の金属細線を有する半導体装置等に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1 インナーリード
2 アイランド
3 リードフレーム
4A ダイボンド材
4B ダイボンド材
5A 半導体チップ
5B 半導体チップ
6A 電極
6B 電極
6C 電極
7A 第1ボンド点(接続点)
7B 第1ボンド点(接続点)
7C 第1ボンド点(接続点)
8 第1の金属細線(配線)
8a ネック立ち上がり部分
8b 第1屈曲点
8c 傾斜部
8d 第2屈曲点
8e 傾斜部
8f 傾斜部
8g 第3屈曲点
8h 傾斜部
9 第2の金属細線(配線)
9a ネック立ち上がり部分
9b 第1屈曲点
9c 傾斜部
9d 第2屈曲点
9e 傾斜部
9f 傾斜部
9g 中間屈曲点
9h 傾斜部
10 第3の金属細線(配線)
10a ネック立ち上がり部分
10b 第1屈曲点
10c 傾斜部
10d 第2屈曲点
10e 傾斜部
11A 第2ボンド点(接続点)
11B 第2ボンド点(接続点)
11C 第2ボンド点(接続点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイランド及びインナーリードを有するリードフレームと、
前記アイランドの上に固着された半導体チップと、
前記半導体チップの上に形成された複数の電極と、
前記各電極と前記インナーリードとを接続し、且つそれぞれ複数の屈曲点を有する複数の配線とを備え、
前記複数の配線のうちの第1の配線は、前記電極上の第1接続点から前記電極の上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって高くなる傾斜を持ち、前記第1の配線の第2屈曲点は、前記第1の配線のうち最も高い屈曲点であり、
前記複数の配線のうちの第2の配線は、前記電極上の第1接続点から前記電極の上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって低くなる傾斜を持ち、前記第2の配線の第2屈曲点は、前記第2の配線のうち最も低い屈曲点であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の配線の第2屈曲点は、前記第1の配線の第1接続点と前記インナーリードと接続される第2接続点との距離の約50%よりも前記半導体チップに近い位置に設けられ、
前記第2の配線の第2屈曲点は、前記第2の配線の第1接続点と前記インナーリードと接続される第2接続点との距離の約50%よりも前記半導体チップに近い位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の配線は、前記第2屈曲点と前記第2接続点との間に、第3屈曲点が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の配線は、前記第2屈曲点と前記第1接続点との間に中間屈曲点が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の配線は、前記第2屈曲点と前記第2接続点との間に、第3屈曲点が設けられており、
前記第2の配線は、前記第2屈曲点と前記第1接続点との間に中間屈曲点が設けられており、
前記第1の配線の第2屈曲点と第3屈曲点との間の傾斜角は、前記第2の配線の中間屈曲点と第2屈曲点との間の傾斜角よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1接続点の高さは、前記第2接続点の高さと同一か又は第2接続点よりも高く設定されており、
前記第1の配線の第2屈曲点から第2接続点との間の傾斜角は、前記第2の配線の第2屈曲点から第2接続点との間の傾斜角よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1接続点の高さは、前記第2接続点の高さよりも低く設定されており、
前記第1の配線は、前記第2屈曲点から前記第2接続点に向かって低くなり、前記第2の配線は、前記第2屈曲点から前記第2接続点に向かって高くなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の配線のうち、前記第1の配線と前記第2の配線との少なくとも1組は、互いに隣接して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の配線は、前記第2の配線よりも前記第1接続点からのネック立ち上がり部分の上端の高さが高いか又は同一であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体チップは、前記アイランドの上に複数設けられ、
前記第1の配線と前記第2の配線とは、異なる半導体チップと接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記半導体チップと前記インナーリードとの間は、互いの屈曲形状が異なる少なくとも3種類の配線によって接続されており、
前記第1の配線の上方に位置する第3の配線は、前記半導体チップ上の第1接続点から上方に立ち上がるネック立ち上がり部分の上端の第1屈曲点から第2屈曲点に向かって高くなり、前記第3の配線の第2屈曲点は、前記第3の配線の第1接続点と第2接続点との距離の50%部分の位置よりも前記半導体チップに近い位置に設けられ且つ最も高い屈曲点であり、且つ前記第1の配線の第2屈曲点よりも前記インナーリード側に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体チップは、前記アイランドの上に複数設けられ、
前記第1の配線と前記第3の配線とは、異なる半導体チップと接続されていることを特徴とする請求項11に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−186980(P2010−186980A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198116(P2009−198116)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】