半導体装置
【課題】遠赤外領域の光を扱うことができるなど、直接遷移型の半導体を用いて半導体装置で新たな機能が発現できるようにする。
【解決手段】第1障壁層102と、チャネル層103と、第2障壁層104と、基板101の平面方向に対向して配置されてチャネル層103を挟んで形成され、チャネル層103にオーミック接続する第1電極105および第2電極106と、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を第1電極105の側の第1領域151および第2電極106の側の第2領域152とに2分割した第1領域151の第2障壁層104の上で第1電極105の上部領域に接して形成され、第1領域151のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極107とを備える。
【解決手段】第1障壁層102と、チャネル層103と、第2障壁層104と、基板101の平面方向に対向して配置されてチャネル層103を挟んで形成され、チャネル層103にオーミック接続する第1電極105および第2電極106と、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を第1電極105の側の第1領域151および第2電極106の側の第2領域152とに2分割した第1領域151の第2障壁層104の上で第1電極105の上部領域に接して形成され、第1領域151のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極107とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体などの直接遷移型の半導体を用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、化合物半導体などの直接遷移型の半導体を用いることで、発光素子、受光素子、および半導体レーザなどの様々な半導体装置が開発されている。例えば、InSbを活性層に用いることで、波長5.28μmの発光が得られる発光素子が開発されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】G.R.Nash et al. , "InSb/AlInSb quantum-well light-emitting diodes", Applied Physics Letters, vol.88, 051107, 2006.
【非特許文献2】御子柴宣夫著、「半導体の物理」、株式会社培風館、p258-259、1991年改訂版。
【非特許文献3】M.Konig et al. , "The Quantum Spin Hall Effect: Theory and Experiment", Journal of the Physical Society of Japan, vol.77, no.3, 031007, 2008.
【非特許文献4】N.Goel et al. , "Ballistic transport in InSb mesoscopic structures", Physica E, vol.21, pp.761-764, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、波長が10μmより長い遠赤外線を発光する発光素子,半導体レーザ、および受光する受光素子などが得られていないという問題がある。現在、波長が10μmより長い遠赤外領域の光源としては、電球などのフィラメントの熱輻射、高圧水銀灯、軌道放射光、炭酸ガスレーザによるアルコールガスの励起などがあるが、いずれも、巨大でかつ変換効率も悪い。
【0005】
また、波長が10μmより長い遠赤外領域の光の検出は、ボロメータなど、熱放射を受けることによる抵抗変化の検出により行われている、感度が悪く応答速度も遅いという問題がある。また、波長が10μmより長い遠赤外線レーザは、炭酸ガスレーザにより励起するアルコールガスの発振により得られているが、大型で複雑な装置となるなど様々な問題がある。
【0006】
従って、半導体装置により、遠赤外線を発光する発光素子や受光素子が実現できれば、上述したような問題が解消できるが、現在の半導体装置では、前述したように、例えば、遠赤外領域の光を扱うことができないなど、用途に限界があるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、遠赤外領域の光を扱うことができるなど、直接遷移型の半導体を用いた半導体装置で新たな機能が発現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、基板の上に形成された半導体からなる第1障壁層と、第1障壁層の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層と、チャネル層の上に形成された半導体からなる第2障壁層と、基板の平面方向に対向して配置されてチャネル層を挟んで形成され、チャネル層にオーミック接続する第1電極および第2電極と、第1電極および第2電極で挟まれた領域を第1電極の側の第1領域および第2電極の側の第2領域とに2分割した第1領域の第2障壁層の上で第1電極の上部領域に接して形成され、第1領域のチャネル層に電界を印加する第1電界印加電極とを備え、第1電界印加電極に所定の電圧が印加されることでチャネル層の第1領域および第2領域でpn接合が形成される。
【0009】
上記半導体装置において、チャネル層は、n型およびp型のなかより選択された導電型を備えていればよい。また、第2領域の第2障壁層の上で第2電極の上部領域に接して形成され、第2領域のチャネル層に電界を印加する第2電界印加電極を備え、チャネル層は、i型を備えて構成されているようにしてもよい。
【0010】
上記半導体装置において、第1電極および第2電極が形成されている領域以外の第1電極と第2電極との対向方向に垂直な方向のチャネル層の対向する2つの断面に形成された反射手段より構成された共振器を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、第1領域の第2障壁層の上で第1電極の上部領域に接して形成され、第1領域のチャネル層に電界を印加する第1電界印加電極を備えるようにしたので、直接遷移型の半導体を用いて半導体装置で新たな機能が発現できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における半導体装置の一部構成を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図5】図5は、量子井戸構造に対する電界の印加による導電型の制御について説明する説明図である。
【図6】図6は、実施の形態1における半導体装置のチャネル層103におけるバンド状態を示すバンド図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1の実施例1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図8】図8は、第1障壁層705−チャネル層706−第2障壁層707のバンド状態を示すバンド図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1の実施例2における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図10】図10は、チャネル層904のバンド状態を示すバンド図である。
【図11】図11は、第1障壁層903−チャネル層904−第2障壁層905のバンド状態を示すバンド図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態1の実施例3における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図13】図13は、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206におけるGaSb/InAsからなるヘテロ接合の状態を示す説明図である。
【図14A】図14Aは、実施例3における半導体装置の特性評価に用いた測定構成を示す斜視図である。
【図14B】図14Bは、実施例3における半導体装置の特性評価に用いた測定構成を示す平面図である。
【図15】図15は、実施例3の半導体装置におけるホール抵抗と電界印加電極への印加電圧との関係を示す特性図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0014】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における半導体装置の一部構成を示す平面図である。この半導体装置は、基板101の上に形成された半導体からなる第1障壁層102と、第1障壁層102の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上に形成された半導体からなる第2障壁層104とを備える。障壁層とチャネル層103とにより価電子帯および伝導帯ともに量子井戸構造が形成されている。
【0015】
また、この半導体装置は、基板101の平面方向に対向して配置されてチャネル層103を挟んで形成され、チャネル層103にオーミック接続する第1電極105および第2電極106と、第1領域151における第2障壁層104の上で第1電極105の上部領域に接して形成され、第1領域151のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極(第1電界印加電極)107とを備える。
【0016】
なお、電界印加電極107は、例えば、絶縁層108の上に形成されていればよい。また、第1領域151は、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を2分割した一方の領域であり、第1電極側の領域である。また、第2電極側の領域が第2領域152となる。第1領域151および第2領域152により、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を、第1電極105の側および第2電極106の側に2分割している。第1領域151および第2領域152は、等分に形成されている必要はない。
【0017】
本実施の形態における半導体装置は、電界印加電極107に所定の電圧が印加されることでチャネル層103の第1領域151および第2領域152でpn接合が形成されるようにしたものである。
【0018】
例えば、図3に示すように、電界印加電極107と第1電極105との間に、電界印加電極107の側が負となる電圧を印加すると、第1領域151のチャネル層103をp型とすることができる。ここで、チャネル層103がn型の状態となっていれば、電界が印加されていない第2領域152のチャネル層103は、n型の状態を維持し、電界が印加された第1領域151のチャネル層103はp型となるので、これらの間にpn接合が形成されるようになる。チャネル層103をn型の状態としておくことは、例えば、障壁層にドナーとなる不純物を導入しておくことで実現できる。
【0019】
この状態で、第1電極105と第2電極106との間に、第1電極105の側が正となる電圧を印加すれば、チャネル層103のバンドギャップエネルギーに対応した発光が得られるようになる。言い換えると、図3を用いて説明した半導体装置により、発光ダイオードが構成できる。
【0020】
また、図4に示すように、電界印加電極107と第1電極105との間に、電界印加電極107の側が負となる電圧を印加すると、上述同様に、n型の半導体から構成された第1領域151のチャネル層103をp型とすることができる。この場合においても、チャネル層103の平面方向(第1電極105および第2電極106が対向する方向)にpn接合が形成されるようになる。
【0021】
この状態で、チャネル層103に、チャネル層103のバンドギャップエネルギー以上の光を照射すると、上記pn接合に光起電力が生じ、これを測定すれば、照射された光の強度を検出することができる。
【0022】
上述では、電界印加電極107に負の電圧が印加された場合について説明したが、電界印加電極107に正の電圧を印加すれば、第1領域151をn型に反転させることができる。この場合、チャネル層103がp型の状態となっていればよい。このようにしても、チャネル層103の平面方向にpn接合が形成できる。チャネル層103をp型の状態としておくことは、例えば、障壁層にアクセプタとなる不純物を導入しておくことで実現できる。
【0023】
ここで、量子井戸構造に対する電界の印加による導電型の制御について説明する。
【0024】
図5の(a)に示すように、第1障壁層501,チャネル層502,および第2障壁層503からなる量子井戸構造に、絶縁層504を介して形成した電界印加電極505で電界を印加する場合を考える。
【0025】
まず、電界印加電極505に正の電圧を印加すると、絶縁層504を挟んだコンデンサ構造となっているので、電界印加電極505の側に正電荷が蓄積し、チャネル層502の側に負電荷が蓄積する。この結果、図5の(b)に示すように、量子井戸構造のバンド全体がフェルミレベルより価電子帯の側に移動し、チャネル層502の伝導帯下端がフェルミレベルより低い状態となる。この状態では、フェルミレベルより下のチャネル層502の伝導帯下端に、電子511が蓄積されるようになる。この状態は、図5の(c)に分散関係を示すように、n型の状態となる。
【0026】
一方、電界印加電極505に負の電圧を印加して量子井戸構造に電界を印加すると、電界印加電極505の側に負電荷が蓄積し、チャネル層502の側に正電荷が蓄積する。この結果、量子井戸構造のバンド全体がフェルミレベルより伝導帯の側に移動し、チャネル層502の価電子帯上端がフェルミレベルより高い状態となる。この状態では、フェルミレベルより上のチャネル層502の価電子帯上端に、正孔512が蓄積されるようになる。この状態は、図5の(c)に分散関係を示すように、p型の状態となる。
【0027】
従って、図1を用いて説明した半導体装置において、チャネル層103をn型の状態としておき、電界印加電極107に負の電圧を印加すれば、図6に示すように、まず、第2領域152においては、チャネル層103は伝導帯下端がフェルミレベルより低く、ここに電子601が蓄積された状態であり、n型の状態が維持される。これに対し、第1領域151においては、チャネル層103の価電子帯下端がフェルミレベルより上になりここに正孔602が蓄積され、p型に反転する。この結果、チャネル層103の第1領域151と第2領域152との間に、pn接合が形成されるようになる。
【0028】
次に、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0029】
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。図7は、実施例1における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、GaAsからなる基板701、AlSbからなる層厚1000nmの半導体層702、Al0.09In0.91Sbからなる層厚1000nmの半導体層703、AlInSb/InSb超格子からなる緩衝層704、Al0.09In0.91Sbからなる層厚2030nmの第1障壁層705、InSbからなる層厚20nmのチャネル層706、Al0.09In0.91Sbからなる層厚140nmの第2障壁層707、および第2障壁層707の表面を被覆するInSbからなる層厚1nmの酸化防止層708を備える。
【0030】
上述した各層は、例えば、分子線エピタキシー法により形成(エピタキシャル成長)すればよい(非特許文献3参照)。半導体層702,半導体層703,および緩衝層704は、よく知られているように、第1障壁層705,チャネル層706,および第2障壁層707の結晶性向上のために設けている。また、酸化防止層708は、Alを含む第2障壁層707の酸化を防止するために用いている。
【0031】
なお、第1障壁層705は、Siをいわゆるデルタドープすることで導入して形成した不純物導入領域705aを備える。Siは、AlInSbに対してドナーとなる不純物である。同様に、第2障壁層707は、Siをデルタドープすることで導入して形成した不純物導入領域707aおよび不純物導入領域707bを備える。これらの不純物導入領域の形成により、チャネル層706がn型となる。
【0032】
不純物導入領域705aは、例えば、Siの濃度が1.5×1012cm-2とされている。また、不純物導入領域707aは、Siの濃度が1.5×1012cm-2とされ、不純物導入領域707bは、Siの濃度が2×1012cm-2とされている。また、不純物導入領域705aは、例えば、チャネル層706と第1障壁層705との界面より30nm離間して形成されている。これらの距離は、チャネル層706の電子に不純物散乱が生じない範囲である。また、不純物導入領域707aは、チャネル層706と第2障壁層707との界面より30nm離間して形成されている。
【0033】
また、実施例1における半導体装置は、基板701の平面方向に対向して配置されてチャネル層706を挟んで形成され、チャネル層706にオーミック接続する第1電極709および第2電極710を備える。また、酸化防止層708の上に、Al2O3からなる層厚20nmの絶縁層711を備える。加えて、第1電極709および第2電極710で挟まれた領域を第1電極709の側の第1領域751および第2電極710の側の第2領域752とに2分割した第1領域751の第2障壁層707の上で第1電極709の上部領域に接して形成され、第1領域751のチャネル層706に電界を印加する電界印加電極712を備える。
【0034】
第1電極709および第2電極710は、AuGeNi合金やInから構成すればよい。これらは、蒸着により形成することができる。
【0035】
また、絶縁層711は、トリメチルアルミニウムやトリエチルアルミニウムなどのアルミニウム原料および酸化剤ガスを交互に供給して1原子層ずつ酸化アルミニウムの層を形成する原子層成長法により形成すればよい。なお、例えば、上述した各電極を形成した後、絶縁層711を形成すればよい。各電極に超音波ハンダにより配線を接続することで、絶縁層711を破壊して電極−配線間の導通を取ることができる。
【0036】
電界印加電極712は、下層をチタン層として上層を金層とした金属の2層構造から構成すればよい。例えば、電子ビーム蒸着により各金属材料を蒸着することで、電界印加電極712が形成できる。
【0037】
この実施例1における半導体装置においても、電界印加電極712に所定の電圧を印加することで、チャネル層706の第1領域751をp型の状態とすることができる。この結果、この半導体装置においても、チャネル層706のp型に反転した第1領域751と、n型の第2領域752とによりpn接合が形成できる。
【0038】
より詳細に説明すると、チャネル層706を構成するInSbのバンドギャップエネルギーは、0.235eV(波長5.28μm)であり、第1障壁層705および第2障壁層707を構成するAlInSbのうちAl濃度が最も高いAlSbのバンドギャップエネルギーは、2.386eV(波長520nm)である。従って、第1障壁層705−チャネル層706−第2障壁層707のバンド状態は、図8のバンド図で示すように変化する。本実施例の半導体装置では、チャネル層706の層厚や障壁層のAl濃度を変化させることで、発光および受光における波長のピークを、520nm〜5.28μmで変化させることができる。
【0039】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。図9は、実施例2における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、CdZnTeからなる基板901、CdTeからなる半導体層902、Hg0.3Cd0.7Teからなる第1障壁層903、HgTeからなるチャネル層904、Hg0.3Cd0.7Teからなる第2障壁層905を備える。
【0040】
上述した各層は、例えば、分子線エピタキシー法により形成(エピタキシャル成長)すればよい(非特許文献4参照)。半導体層902は、よく知られているように、第1障壁層903,チャネル層904,および第2障壁層905の結晶性向上のために設けているバッファ層である。
【0041】
なお、第1障壁層903は、HgCdTeに対してドナーとなる不純物であるヨウ素を導入して形成した層厚9nm程度の不純物導入領域903bを備える(非特許文献3参照)。不純物導入領域903は、第1障壁層903の層厚方向の中央部に配置し、この上下の不純物が導入されていないアンドープ層903a,903cに挟まれた状態に形成する。このように構成することで、まず、不純物導入領域903bは、層厚10nmのアンドープ層903cにより、チャネル層904より離間させる。また、第1障壁層903の全厚に対して薄い不純物導入領域903bとすることで、第1障壁層903の全体としては障壁として機能させ、所望とする不純物濃度を実現している。
【0042】
同様に、第2障壁層905は、ヨウ素を導入して形成した不純物導入領域905bおよび、アンドープ層905a,905cを備える。不純物導入領域905bは、層厚9nm程度とする。また、アンドープ層905aは、層厚10nm程度とする。これらの不純物導入領域の形成により、チャネル層904がn型となる。
【0043】
また、実施例2における半導体装置は、基板901の平面方向に対向して配置されてチャネル層904を挟んで形成され、チャネル層904にオーミック接続する第1電極906および第2電極907を備える。また、第2障壁層905の上に、Al2O3からなる層厚20nmの絶縁層908を備える。加えて、第1電極906および第2電極907で挟まれた領域を第1電極906の側の第1領域951および第2電極907の側の第2領域952とに2分割した第1領域951の第2障壁層905の上で第1電極906の上部領域に接して形成され、第1領域951のチャネル層904に電界を印加する電界印加電極909を備える。
【0044】
第1電極906および第2電極907は、AuGeNi合金やInから構成すればよい。これらは、蒸着により形成することができる。
【0045】
また、絶縁層908は、トリメチルアルミニウムやトリエチルアルミニウムなどのアルミニウム原料および酸化剤ガスを交互に供給して1原子層ずつ酸化アルミニウムの層を形成する原子層成長法により形成すればよい。なお、例えば、上述した各電極を形成した後、絶縁層908を形成すればよい。各電極に超音波ハンダにより配線を接続することで、絶縁層908を破壊して電極−配線間の導通を取ることができる。
【0046】
電界印加電極909は、下層をチタン層として上層を金層とした金属の2層構造から構成すればよい。例えば、電子ビーム蒸着により各金属材料を蒸着することで、電界印加電極909が形成できる。
【0047】
この実施例2における半導体装置においても、電界印加電極909に所定の電圧を印加することで、チャネル層904の第1領域951をp型の状態とすることができる。この結果、この半導体装置においても、チャネル層904のp型に反転した第1領域951と、n型の第2領域952とによりpn接合が形成できる。
【0048】
より詳細に説明すると、井戸となるチャネル層904を構成するHgTeは、図10の(a)に示すように、バルクの状態では価電子帯と伝導帯とが交差しており、バンドギャップはない状態である(波長無限大)。これに対し、HgCdTeからなる障壁層でチャネル層904を挟む構成とすることで、図10の(b)に示すように、量子閉じ込めによりチャネル層904にバンドギャップを形成することができる。この状態を、図11のバンド図に示す。
【0049】
また、本実施例2においても、チャネル層904の層厚を変えることで、発光および受光における波長のピークを変化させることができる。ここで、本実施例2において、障壁層を構成するHg0.3Cd0.7TeのHg組成を0としたCdTeのバンドギャップエネルギーは、1.61eV(波長770nm)である。従って、実施例2に比較して、発光および受光における波長のピークの可変幅が広く、770nm〜無限大で、より長い波長(例えば遠赤外)の光の発光および受光が可能となる。長波長側の限界は、熱エネルギーがバンドギャップを超えることで決定され、室温(300K)では48μmとなり、液体窒素温度(77K)では187μmとなり、液体ヘリウム温度(4.2K)では、3.43mmとなる。
【0050】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。図12は、実施例3における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、絶縁性のGaAsからなる基板1201、Al0.7Ga0.3Sbからなる層厚500nmの緩衝層1202、AlSb/GaSb超格子からなる超格子緩衝層1203、Al0.7Ga0.3Sbからなる層厚50nmの第1障壁層1204、GaSbからなる層厚8nmの第1チャネル層1205、InAsからなる層厚8nmの第2チャネル層1206、Al0.7Ga0.3Sbからなる層厚30nmの第2障壁層1207、および第2障壁層1207の表面を被覆するGaSbからなる層厚5nmの酸化防止層1208を備える。
【0051】
上述した各層は、例えば、分子線エピタキシー法により形成(エピタキシャル成長)すればよい(非特許文献4参照)。緩衝層1202および超格子緩衝層1203は、よく知られているように、第1障壁層1204,第1チャネル層1205,第2チャネル層1206,および第2障壁層1207の結晶性向上のために設けている。なお、超格子緩衝層1203は、例えば、AlSb/GaSbの各層を10原子層ずつ50周期積層させて形成すればよい。また、酸化防止層1208は、Alを含む第2障壁層1207の酸化を防止するために用いている。
【0052】
なお、第2障壁層1207は、Beをいわゆるデルタドープすることで導入して形成した不純物導入領域1207aを備える。Beは、AlGaSbに対して浅いアクセプタとなる不純物であるこの不純物導入領域の形成により、第2チャネル層1206がp型となる。
【0053】
不純物導入領域1207aは、例えば、Beの濃度が5×1011cm-2とされている。また、不純物導入領域1207aは、例えば、第2チャネル層1206と第2障壁層1207との界面より5nm離間して形成されている。この距離は、第2チャネル層1206の電子に不純物散乱が生じない範囲である。
【0054】
また、実施例3における半導体装置は、基板1201の平面方向に対向して配置されて第1チャネル層1205および第2チャネル層1206を挟んで形成され、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206にオーミック接続する第1電極1209および第2電極1210を備える。また、酸化防止層1208の上に、Al2O3からなる層厚20nmの絶縁層1211を備える。
【0055】
加えて、第1電極1209および第2電極1210で挟まれた領域を第1電極1209の側の第1領域1251および第2電極1210の側の第2領域1252とに2分割した第1領域1251の第2障壁層1207の上で第1電極1209の上部領域に接して形成され、第1領域1251の第2チャネル層1206に電界を印加する電界印加電極1212を備える。
【0056】
第1電極1209および第2電極1210は、AuGeNi合金やInから構成すればよい。これらは、蒸着により形成することができる。
【0057】
また、絶縁層1211は、原子層成長法により形成すればよい。なお、例えば、上述した各電極を形成した後、絶縁層1211を形成すればよい。各電極に超音波ハンダにより配線を接続することで、絶縁層1211を破壊して電極−配線間の導通を取ることができる。
【0058】
電界印加電極1212は、下層をチタン層として上層を金層とした金属の2層構造から構成すればよい。例えば、電子ビーム蒸着により各金属材料を蒸着することで、電界印加電極1212が形成できる。
【0059】
この実施例3における半導体装置においても、電界印加電極1212に所定の電圧を印加することで、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206の第1領域1251をn型の状態とすることができる。この結果、この半導体装置においても、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206のn型に反転した第1領域1251と、p型の第2領域1252とによりpn接合が形成できる。
【0060】
より詳細に説明する。第1チャネル層1205および第2チャネル層1206におけるGaSb/InAsからなるヘテロ接合では、これらの層厚が厚いなどの状態で閉じ込めがない場合、図13の(a−1)および(a−2)に示すように、InAsの伝導帯下端CbeがGaSbの価電子帯上端Vbeより0.15eV低くなる。
【0061】
上述した状態に対し、GaSb/InAsからなるヘテロ接合を薄くするなど閉じ込め状態とすることで、図13の(b−1)および(b−2)に示すように、InAsの伝導帯下端CbeがGaSbの価電子帯上端Vbeより高くなり、これらの間にバンドギャップが形成されるようになる。第1障壁層1204および第2障壁層1207を構成するAlGaSbのGa組成がゼロであるAlSbのバンドギャップが2.386eV(波長520nm相当)であり、これらによる量子井戸構造とすることで、発光および受光における波長のピークを、上述したエネルギーの間(波長520nm〜無限大)で変化させることができる。長波長側の限界は、熱エネルギーがバンドギャップを超えることで決定され、室温(300K)では48μmとなり、液体窒素温度(77K)では187μmとなり、液体ヘリウム温度(4.2K)では、3.43mmとなる。
【0062】
次に、上述した実施例3の構成とした半導体装置の特性評価について説明する。この特性評価では、第1チャネル層1205の層厚を10nmとし、第2チャネル層1206の層厚を15nmとしている。なお、第2障壁層1207に、2.5×1011cm-2のBeデルタドープを行っている。アクセプタ(p型)のドープであるが、ドープ量が少なく、格子欠陥などがドナー(n型)として働くので、電界が印加されていない状態ではチャネル層はn型のままである。
【0063】
また、半導体装置を、図14Aの斜視図および図14Bの平面図に示すように、平面視十字の形状とし、十字を構成する各辺の端部において、第1電極1209a−第2電極1210a、および第1電極1209b−第2電極1210bの2つの組を形成する。また、これら電極の内側の十字の中央部に絶縁層1211および電界印加電極1212を形成する。この測定では、作製の便宜上、第1電極と第2電極との間の全域に電界印加電極を形成している。また、図14Aでは、電界印加電極を省略して示している。
【0064】
上述した試料の半導体装置を作製し、第1電極1209a−第2電極1210aの間の電圧Vを、第1電極1209b−第2電極1210bの間に流れる電流Iで割った値でホール抵抗とし、このホール抵抗と電界印加電極1212への印加電圧VGとの関係を測定する。測定の結果、図15に示すように、電界印加電極1212への印加電圧VGを−8Vから8Vまで掃引すると、−4.3V程度を境に、ホール抵抗が負の値より正の値に変化する。この結果より、電界印加電極1212への印加電圧により、p型からn型へ反転させるなどの導電型の制御が可能であることがわかる。
【0065】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図16を用いて説明する。図16は、本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を示す構成図(断面図)である。この半導体装置は、基板101の上に形成された直接遷移型の半導体からなる第1障壁層102と、第1障壁層102の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上に形成された直接遷移型の半導体からなる第2障壁層104とを備える。障壁層で挟まれているチャネル層103により量子井戸構造が形成されている。
【0066】
また、この半導体装置は、基板101の平面方向に対向して配置されてチャネル層103を挟んで形成され、チャネル層103にオーミック接続する第1電極105および第2電極106と、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を第1電極105の側の第1領域151および第2電極106の側の第2領域152とに2分割した第1領域151の第2障壁層104の上で第1電極105の上部領域に接して形成され、第1領域151のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極(第1電界印加電極)107とを備える。また、電界印加電極107は、絶縁層108の上に形成されている。
【0067】
上述した構成は、前述した実施の形態1と同様である。本実施の形態2では、まず、チャネル層103がi型になる状態とする。例えば、第1障壁層102,チャネル層103,および第2障壁層104を真性半導体から構成し、第1障壁層102,第2障壁層104に不純物導入領域を形成しない構成とすればよい。また、上述した構成に加え、第2領域152の第2障壁層104の上で第2電極106の上部領域に接して形成され、第2領域152のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極(第2電界印加電極)1607を備える。
【0068】
本実施の形態2における半導体装置は、電界印加電極107および電界印加電極1607に、各々所定の電圧が印加されることで、チャネル層103の第1領域151および第2領域152でpn接合が形成されるようにしたものである。
【0069】
例えば、電界印加電極107に負の電圧を印加し、電界印加電極1607に正の電圧を印加することで、第1領域151のチャネル層103をp型とし、第2領域152のチャネル層103をn型とすることができる。この結果、チャネル層103の平面方向(第1電極105および第2電極106が対向する方向)にpn接合が形成されるようになる。また、電界印加電極107に正の電圧を印加し、電界印加電極1607に負の電圧を印加することで、第1領域151のチャネル層103をn型とし、第2領域152のチャネル層103をp型としてもよい。
【0070】
この状態で、第1電極105と第2電極106との間に、第1電極105の側が正となる電圧を印加すれば、チャネル層103のバンドギャップエネルギーに対応した発光が得られるようになる。言い換えると、図16を用いて説明した半導体装置により、発光ダイオードが構成できる。
【0071】
また、チャネル層103に、チャネル層103のバンドギャップエネルギー以上の光を照射すると、上記pn接合に光起電力が生じ、これを測定すれば、照射された光の強度を検出することができる。
【0072】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について、図17を用いて説明する。図17は、本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を示す斜視図である。この半導体装置は、基板(不図示)の上に形成された半導体からなる第1障壁層1701と、第1障壁層1701の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層1702と、チャネル層1702の上に形成された半導体からなる第2障壁層1703とを備える。障壁層とチャネル層1702とにより、伝導帯および価電子帯ともに量子井戸構造が形成されている。
【0073】
また、この半導体装置は、基板(不図示)の平面方向に対向して配置されてチャネル層1702を挟んで形成され、チャネル層1702にオーミック接続する第1電極1704および第2電極1705と、第1電極1704および第2電極1705で挟まれた領域を第1電極1704の側の第1領域1751および第2電極1705の側の第2領域1752とに2分割した第1領域1751の第2障壁層1703の上で第1電極1704の上部領域に接して形成され、第1領域1751のチャネル層1702に電界を印加する電界印加電極(第1電界印加電極)1707とを備える。また、電界印加電極1707は、絶縁層1706の上に形成されている。
【0074】
上述した構成は、前述した実施の形態1と同様であり、電界印加電極1707に対する電圧印加で、チャネル層1702にpn接合が形成されるようになる。
【0075】
本実施の形態3では、第1電極1704および第2電極1705が形成されている領域以外の第1電極1704と第2電極1705との対向方向に垂直な方向のチャネル層1702の対向する2つの断面に、反射膜1711および反射膜1712を備える。反射膜1711および反射膜1712は、電界印加電極1707に対する電圧印加で形成されるチャネル層1702のpn接合が延在する方向で、対向して配置されている。反射膜1711および反射膜1712は、例えば、蒸着により形成された金の膜から構成することができる。
【0076】
なお、本例では、第1障壁層1701および第2障壁層1703も、チャネル層1702と同様に加工され、各々断面に、反射膜1711および反射膜1712が形成されている。この反射膜1711および反射膜1712は、チャネル層1702を挟んで対向して配置された反射手段であり、共振器を構成している。
【0077】
本実施の形態3では、第1電極1704と第2電極1705との間に、第1電極1704の側が正となる電圧を印加すれば、チャネル層1702のバンドギャップエネルギーに対応した発光が得られるようになる。加えて、チャネル層1702に反射膜1711および反射膜1712からなる共振器を備えているので、レーザ発振が可能となる。
【0078】
例えば、閃亜鉛鉱型の結晶構造は、劈開により原子レベルで平坦な(110)面を得ることができる。従って、このような結晶構造を持つ化合物半導体よりチャネル層1702を構成し、この[1−10]方向に向かうpn接合が、[110]方向に沿って形成されるようにし、(110)面を劈開してこの面に反射膜1711および反射膜1712を形成すればよい。
【0079】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、実施例3においては、チャネル層であるGaSbとInAsの層の積層順は、逆でもよい。また、チャネル層は、InAs/GaSb/InAsの3層構造としてもよい。また、第1障壁層,チャネル層,および第2障壁層を構成する半導体は、上述した各実施例で示した材料に限るものではなく、他の化合物半導体を用いるようにしてもよい。また、複数層のグラフェンの積層構造を利用してもよい。
【0080】
また、上述では、発光および受光素子として説明したが、これに限るものではなく、本発明の半導体装置は、ダイオードとして用いてもよいことはいうまでもない。この用途の場合、SiGe/Siといった間接遷移型半導体のヘテロ構造を材料として用いることもできる。また、電界印加電極は、いわゆるショットキー接続した金属から構成してもよい。また、上述では、断面(端面)に反射膜を形成して共振器としてレーザとしたが、これに限るものではなく、外部共振器の構造としてもよい。
【0081】
なお、電界印加電極は、チャネル層にオーミック接続する第1電極もしくは第2電極の上部領域に接して形成されていることが重要となる。これは、例えば、電界印加電極の形成領域と第1電極形成領域との間に、隙間がない状態である。例えば、第1領域に電界印加電極を形成する場合、電界印加電極の形成箇所と第1電極の形成箇所との間に間隙あると、チャネル層において、間隙の領域がn型、電界印加電極の領域がp型、第2領域がn型となり、npn構造となる。また、間隙の領域がp型、電界印加電極の領域がn型、第2領域がp型のpnp構造となる。このような構成では、第1電極と第2電極との間が絶縁状態となり、前述したような光素子を構成することができない。
【符号の説明】
【0082】
101…基板、102…第1障壁層、103…チャネル層、104…第2障壁層、105…第1電極、106…第2電極、107…電界印加電極(第1電界印加電極)、108…絶縁層、151…第1領域、152…第2領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体などの直接遷移型の半導体を用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、化合物半導体などの直接遷移型の半導体を用いることで、発光素子、受光素子、および半導体レーザなどの様々な半導体装置が開発されている。例えば、InSbを活性層に用いることで、波長5.28μmの発光が得られる発光素子が開発されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】G.R.Nash et al. , "InSb/AlInSb quantum-well light-emitting diodes", Applied Physics Letters, vol.88, 051107, 2006.
【非特許文献2】御子柴宣夫著、「半導体の物理」、株式会社培風館、p258-259、1991年改訂版。
【非特許文献3】M.Konig et al. , "The Quantum Spin Hall Effect: Theory and Experiment", Journal of the Physical Society of Japan, vol.77, no.3, 031007, 2008.
【非特許文献4】N.Goel et al. , "Ballistic transport in InSb mesoscopic structures", Physica E, vol.21, pp.761-764, 2004.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、波長が10μmより長い遠赤外線を発光する発光素子,半導体レーザ、および受光する受光素子などが得られていないという問題がある。現在、波長が10μmより長い遠赤外領域の光源としては、電球などのフィラメントの熱輻射、高圧水銀灯、軌道放射光、炭酸ガスレーザによるアルコールガスの励起などがあるが、いずれも、巨大でかつ変換効率も悪い。
【0005】
また、波長が10μmより長い遠赤外領域の光の検出は、ボロメータなど、熱放射を受けることによる抵抗変化の検出により行われている、感度が悪く応答速度も遅いという問題がある。また、波長が10μmより長い遠赤外線レーザは、炭酸ガスレーザにより励起するアルコールガスの発振により得られているが、大型で複雑な装置となるなど様々な問題がある。
【0006】
従って、半導体装置により、遠赤外線を発光する発光素子や受光素子が実現できれば、上述したような問題が解消できるが、現在の半導体装置では、前述したように、例えば、遠赤外領域の光を扱うことができないなど、用途に限界があるという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、遠赤外領域の光を扱うことができるなど、直接遷移型の半導体を用いた半導体装置で新たな機能が発現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体装置は、基板の上に形成された半導体からなる第1障壁層と、第1障壁層の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層と、チャネル層の上に形成された半導体からなる第2障壁層と、基板の平面方向に対向して配置されてチャネル層を挟んで形成され、チャネル層にオーミック接続する第1電極および第2電極と、第1電極および第2電極で挟まれた領域を第1電極の側の第1領域および第2電極の側の第2領域とに2分割した第1領域の第2障壁層の上で第1電極の上部領域に接して形成され、第1領域のチャネル層に電界を印加する第1電界印加電極とを備え、第1電界印加電極に所定の電圧が印加されることでチャネル層の第1領域および第2領域でpn接合が形成される。
【0009】
上記半導体装置において、チャネル層は、n型およびp型のなかより選択された導電型を備えていればよい。また、第2領域の第2障壁層の上で第2電極の上部領域に接して形成され、第2領域のチャネル層に電界を印加する第2電界印加電極を備え、チャネル層は、i型を備えて構成されているようにしてもよい。
【0010】
上記半導体装置において、第1電極および第2電極が形成されている領域以外の第1電極と第2電極との対向方向に垂直な方向のチャネル層の対向する2つの断面に形成された反射手段より構成された共振器を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、第1領域の第2障壁層の上で第1電極の上部領域に接して形成され、第1領域のチャネル層に電界を印加する第1電界印加電極を備えるようにしたので、直接遷移型の半導体を用いて半導体装置で新たな機能が発現できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における半導体装置の一部構成を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図5】図5は、量子井戸構造に対する電界の印加による導電型の制御について説明する説明図である。
【図6】図6は、実施の形態1における半導体装置のチャネル層103におけるバンド状態を示すバンド図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1の実施例1における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図8】図8は、第1障壁層705−チャネル層706−第2障壁層707のバンド状態を示すバンド図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1の実施例2における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図10】図10は、チャネル層904のバンド状態を示すバンド図である。
【図11】図11は、第1障壁層903−チャネル層904−第2障壁層905のバンド状態を示すバンド図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態1の実施例3における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図13】図13は、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206におけるGaSb/InAsからなるヘテロ接合の状態を示す説明図である。
【図14A】図14Aは、実施例3における半導体装置の特性評価に用いた測定構成を示す斜視図である。
【図14B】図14Bは、実施例3における半導体装置の特性評価に用いた測定構成を示す平面図である。
【図15】図15は、実施例3の半導体装置におけるホール抵抗と電界印加電極への印加電圧との関係を示す特性図である。
【図16】図16は、本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を示す構成図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0014】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について、図1および図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を示す構成図である。また、図2は、本発明の実施の形態1における半導体装置の一部構成を示す平面図である。この半導体装置は、基板101の上に形成された半導体からなる第1障壁層102と、第1障壁層102の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上に形成された半導体からなる第2障壁層104とを備える。障壁層とチャネル層103とにより価電子帯および伝導帯ともに量子井戸構造が形成されている。
【0015】
また、この半導体装置は、基板101の平面方向に対向して配置されてチャネル層103を挟んで形成され、チャネル層103にオーミック接続する第1電極105および第2電極106と、第1領域151における第2障壁層104の上で第1電極105の上部領域に接して形成され、第1領域151のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極(第1電界印加電極)107とを備える。
【0016】
なお、電界印加電極107は、例えば、絶縁層108の上に形成されていればよい。また、第1領域151は、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を2分割した一方の領域であり、第1電極側の領域である。また、第2電極側の領域が第2領域152となる。第1領域151および第2領域152により、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を、第1電極105の側および第2電極106の側に2分割している。第1領域151および第2領域152は、等分に形成されている必要はない。
【0017】
本実施の形態における半導体装置は、電界印加電極107に所定の電圧が印加されることでチャネル層103の第1領域151および第2領域152でpn接合が形成されるようにしたものである。
【0018】
例えば、図3に示すように、電界印加電極107と第1電極105との間に、電界印加電極107の側が負となる電圧を印加すると、第1領域151のチャネル層103をp型とすることができる。ここで、チャネル層103がn型の状態となっていれば、電界が印加されていない第2領域152のチャネル層103は、n型の状態を維持し、電界が印加された第1領域151のチャネル層103はp型となるので、これらの間にpn接合が形成されるようになる。チャネル層103をn型の状態としておくことは、例えば、障壁層にドナーとなる不純物を導入しておくことで実現できる。
【0019】
この状態で、第1電極105と第2電極106との間に、第1電極105の側が正となる電圧を印加すれば、チャネル層103のバンドギャップエネルギーに対応した発光が得られるようになる。言い換えると、図3を用いて説明した半導体装置により、発光ダイオードが構成できる。
【0020】
また、図4に示すように、電界印加電極107と第1電極105との間に、電界印加電極107の側が負となる電圧を印加すると、上述同様に、n型の半導体から構成された第1領域151のチャネル層103をp型とすることができる。この場合においても、チャネル層103の平面方向(第1電極105および第2電極106が対向する方向)にpn接合が形成されるようになる。
【0021】
この状態で、チャネル層103に、チャネル層103のバンドギャップエネルギー以上の光を照射すると、上記pn接合に光起電力が生じ、これを測定すれば、照射された光の強度を検出することができる。
【0022】
上述では、電界印加電極107に負の電圧が印加された場合について説明したが、電界印加電極107に正の電圧を印加すれば、第1領域151をn型に反転させることができる。この場合、チャネル層103がp型の状態となっていればよい。このようにしても、チャネル層103の平面方向にpn接合が形成できる。チャネル層103をp型の状態としておくことは、例えば、障壁層にアクセプタとなる不純物を導入しておくことで実現できる。
【0023】
ここで、量子井戸構造に対する電界の印加による導電型の制御について説明する。
【0024】
図5の(a)に示すように、第1障壁層501,チャネル層502,および第2障壁層503からなる量子井戸構造に、絶縁層504を介して形成した電界印加電極505で電界を印加する場合を考える。
【0025】
まず、電界印加電極505に正の電圧を印加すると、絶縁層504を挟んだコンデンサ構造となっているので、電界印加電極505の側に正電荷が蓄積し、チャネル層502の側に負電荷が蓄積する。この結果、図5の(b)に示すように、量子井戸構造のバンド全体がフェルミレベルより価電子帯の側に移動し、チャネル層502の伝導帯下端がフェルミレベルより低い状態となる。この状態では、フェルミレベルより下のチャネル層502の伝導帯下端に、電子511が蓄積されるようになる。この状態は、図5の(c)に分散関係を示すように、n型の状態となる。
【0026】
一方、電界印加電極505に負の電圧を印加して量子井戸構造に電界を印加すると、電界印加電極505の側に負電荷が蓄積し、チャネル層502の側に正電荷が蓄積する。この結果、量子井戸構造のバンド全体がフェルミレベルより伝導帯の側に移動し、チャネル層502の価電子帯上端がフェルミレベルより高い状態となる。この状態では、フェルミレベルより上のチャネル層502の価電子帯上端に、正孔512が蓄積されるようになる。この状態は、図5の(c)に分散関係を示すように、p型の状態となる。
【0027】
従って、図1を用いて説明した半導体装置において、チャネル層103をn型の状態としておき、電界印加電極107に負の電圧を印加すれば、図6に示すように、まず、第2領域152においては、チャネル層103は伝導帯下端がフェルミレベルより低く、ここに電子601が蓄積された状態であり、n型の状態が維持される。これに対し、第1領域151においては、チャネル層103の価電子帯下端がフェルミレベルより上になりここに正孔602が蓄積され、p型に反転する。この結果、チャネル層103の第1領域151と第2領域152との間に、pn接合が形成されるようになる。
【0028】
次に、実施例を用いてより詳細に説明する。
【0029】
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。図7は、実施例1における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、GaAsからなる基板701、AlSbからなる層厚1000nmの半導体層702、Al0.09In0.91Sbからなる層厚1000nmの半導体層703、AlInSb/InSb超格子からなる緩衝層704、Al0.09In0.91Sbからなる層厚2030nmの第1障壁層705、InSbからなる層厚20nmのチャネル層706、Al0.09In0.91Sbからなる層厚140nmの第2障壁層707、および第2障壁層707の表面を被覆するInSbからなる層厚1nmの酸化防止層708を備える。
【0030】
上述した各層は、例えば、分子線エピタキシー法により形成(エピタキシャル成長)すればよい(非特許文献3参照)。半導体層702,半導体層703,および緩衝層704は、よく知られているように、第1障壁層705,チャネル層706,および第2障壁層707の結晶性向上のために設けている。また、酸化防止層708は、Alを含む第2障壁層707の酸化を防止するために用いている。
【0031】
なお、第1障壁層705は、Siをいわゆるデルタドープすることで導入して形成した不純物導入領域705aを備える。Siは、AlInSbに対してドナーとなる不純物である。同様に、第2障壁層707は、Siをデルタドープすることで導入して形成した不純物導入領域707aおよび不純物導入領域707bを備える。これらの不純物導入領域の形成により、チャネル層706がn型となる。
【0032】
不純物導入領域705aは、例えば、Siの濃度が1.5×1012cm-2とされている。また、不純物導入領域707aは、Siの濃度が1.5×1012cm-2とされ、不純物導入領域707bは、Siの濃度が2×1012cm-2とされている。また、不純物導入領域705aは、例えば、チャネル層706と第1障壁層705との界面より30nm離間して形成されている。これらの距離は、チャネル層706の電子に不純物散乱が生じない範囲である。また、不純物導入領域707aは、チャネル層706と第2障壁層707との界面より30nm離間して形成されている。
【0033】
また、実施例1における半導体装置は、基板701の平面方向に対向して配置されてチャネル層706を挟んで形成され、チャネル層706にオーミック接続する第1電極709および第2電極710を備える。また、酸化防止層708の上に、Al2O3からなる層厚20nmの絶縁層711を備える。加えて、第1電極709および第2電極710で挟まれた領域を第1電極709の側の第1領域751および第2電極710の側の第2領域752とに2分割した第1領域751の第2障壁層707の上で第1電極709の上部領域に接して形成され、第1領域751のチャネル層706に電界を印加する電界印加電極712を備える。
【0034】
第1電極709および第2電極710は、AuGeNi合金やInから構成すればよい。これらは、蒸着により形成することができる。
【0035】
また、絶縁層711は、トリメチルアルミニウムやトリエチルアルミニウムなどのアルミニウム原料および酸化剤ガスを交互に供給して1原子層ずつ酸化アルミニウムの層を形成する原子層成長法により形成すればよい。なお、例えば、上述した各電極を形成した後、絶縁層711を形成すればよい。各電極に超音波ハンダにより配線を接続することで、絶縁層711を破壊して電極−配線間の導通を取ることができる。
【0036】
電界印加電極712は、下層をチタン層として上層を金層とした金属の2層構造から構成すればよい。例えば、電子ビーム蒸着により各金属材料を蒸着することで、電界印加電極712が形成できる。
【0037】
この実施例1における半導体装置においても、電界印加電極712に所定の電圧を印加することで、チャネル層706の第1領域751をp型の状態とすることができる。この結果、この半導体装置においても、チャネル層706のp型に反転した第1領域751と、n型の第2領域752とによりpn接合が形成できる。
【0038】
より詳細に説明すると、チャネル層706を構成するInSbのバンドギャップエネルギーは、0.235eV(波長5.28μm)であり、第1障壁層705および第2障壁層707を構成するAlInSbのうちAl濃度が最も高いAlSbのバンドギャップエネルギーは、2.386eV(波長520nm)である。従って、第1障壁層705−チャネル層706−第2障壁層707のバンド状態は、図8のバンド図で示すように変化する。本実施例の半導体装置では、チャネル層706の層厚や障壁層のAl濃度を変化させることで、発光および受光における波長のピークを、520nm〜5.28μmで変化させることができる。
【0039】
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。図9は、実施例2における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、CdZnTeからなる基板901、CdTeからなる半導体層902、Hg0.3Cd0.7Teからなる第1障壁層903、HgTeからなるチャネル層904、Hg0.3Cd0.7Teからなる第2障壁層905を備える。
【0040】
上述した各層は、例えば、分子線エピタキシー法により形成(エピタキシャル成長)すればよい(非特許文献4参照)。半導体層902は、よく知られているように、第1障壁層903,チャネル層904,および第2障壁層905の結晶性向上のために設けているバッファ層である。
【0041】
なお、第1障壁層903は、HgCdTeに対してドナーとなる不純物であるヨウ素を導入して形成した層厚9nm程度の不純物導入領域903bを備える(非特許文献3参照)。不純物導入領域903は、第1障壁層903の層厚方向の中央部に配置し、この上下の不純物が導入されていないアンドープ層903a,903cに挟まれた状態に形成する。このように構成することで、まず、不純物導入領域903bは、層厚10nmのアンドープ層903cにより、チャネル層904より離間させる。また、第1障壁層903の全厚に対して薄い不純物導入領域903bとすることで、第1障壁層903の全体としては障壁として機能させ、所望とする不純物濃度を実現している。
【0042】
同様に、第2障壁層905は、ヨウ素を導入して形成した不純物導入領域905bおよび、アンドープ層905a,905cを備える。不純物導入領域905bは、層厚9nm程度とする。また、アンドープ層905aは、層厚10nm程度とする。これらの不純物導入領域の形成により、チャネル層904がn型となる。
【0043】
また、実施例2における半導体装置は、基板901の平面方向に対向して配置されてチャネル層904を挟んで形成され、チャネル層904にオーミック接続する第1電極906および第2電極907を備える。また、第2障壁層905の上に、Al2O3からなる層厚20nmの絶縁層908を備える。加えて、第1電極906および第2電極907で挟まれた領域を第1電極906の側の第1領域951および第2電極907の側の第2領域952とに2分割した第1領域951の第2障壁層905の上で第1電極906の上部領域に接して形成され、第1領域951のチャネル層904に電界を印加する電界印加電極909を備える。
【0044】
第1電極906および第2電極907は、AuGeNi合金やInから構成すればよい。これらは、蒸着により形成することができる。
【0045】
また、絶縁層908は、トリメチルアルミニウムやトリエチルアルミニウムなどのアルミニウム原料および酸化剤ガスを交互に供給して1原子層ずつ酸化アルミニウムの層を形成する原子層成長法により形成すればよい。なお、例えば、上述した各電極を形成した後、絶縁層908を形成すればよい。各電極に超音波ハンダにより配線を接続することで、絶縁層908を破壊して電極−配線間の導通を取ることができる。
【0046】
電界印加電極909は、下層をチタン層として上層を金層とした金属の2層構造から構成すればよい。例えば、電子ビーム蒸着により各金属材料を蒸着することで、電界印加電極909が形成できる。
【0047】
この実施例2における半導体装置においても、電界印加電極909に所定の電圧を印加することで、チャネル層904の第1領域951をp型の状態とすることができる。この結果、この半導体装置においても、チャネル層904のp型に反転した第1領域951と、n型の第2領域952とによりpn接合が形成できる。
【0048】
より詳細に説明すると、井戸となるチャネル層904を構成するHgTeは、図10の(a)に示すように、バルクの状態では価電子帯と伝導帯とが交差しており、バンドギャップはない状態である(波長無限大)。これに対し、HgCdTeからなる障壁層でチャネル層904を挟む構成とすることで、図10の(b)に示すように、量子閉じ込めによりチャネル層904にバンドギャップを形成することができる。この状態を、図11のバンド図に示す。
【0049】
また、本実施例2においても、チャネル層904の層厚を変えることで、発光および受光における波長のピークを変化させることができる。ここで、本実施例2において、障壁層を構成するHg0.3Cd0.7TeのHg組成を0としたCdTeのバンドギャップエネルギーは、1.61eV(波長770nm)である。従って、実施例2に比較して、発光および受光における波長のピークの可変幅が広く、770nm〜無限大で、より長い波長(例えば遠赤外)の光の発光および受光が可能となる。長波長側の限界は、熱エネルギーがバンドギャップを超えることで決定され、室温(300K)では48μmとなり、液体窒素温度(77K)では187μmとなり、液体ヘリウム温度(4.2K)では、3.43mmとなる。
【0050】
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。図12は、実施例3における半導体装置の構成を示す断面図である。この半導体装置は、絶縁性のGaAsからなる基板1201、Al0.7Ga0.3Sbからなる層厚500nmの緩衝層1202、AlSb/GaSb超格子からなる超格子緩衝層1203、Al0.7Ga0.3Sbからなる層厚50nmの第1障壁層1204、GaSbからなる層厚8nmの第1チャネル層1205、InAsからなる層厚8nmの第2チャネル層1206、Al0.7Ga0.3Sbからなる層厚30nmの第2障壁層1207、および第2障壁層1207の表面を被覆するGaSbからなる層厚5nmの酸化防止層1208を備える。
【0051】
上述した各層は、例えば、分子線エピタキシー法により形成(エピタキシャル成長)すればよい(非特許文献4参照)。緩衝層1202および超格子緩衝層1203は、よく知られているように、第1障壁層1204,第1チャネル層1205,第2チャネル層1206,および第2障壁層1207の結晶性向上のために設けている。なお、超格子緩衝層1203は、例えば、AlSb/GaSbの各層を10原子層ずつ50周期積層させて形成すればよい。また、酸化防止層1208は、Alを含む第2障壁層1207の酸化を防止するために用いている。
【0052】
なお、第2障壁層1207は、Beをいわゆるデルタドープすることで導入して形成した不純物導入領域1207aを備える。Beは、AlGaSbに対して浅いアクセプタとなる不純物であるこの不純物導入領域の形成により、第2チャネル層1206がp型となる。
【0053】
不純物導入領域1207aは、例えば、Beの濃度が5×1011cm-2とされている。また、不純物導入領域1207aは、例えば、第2チャネル層1206と第2障壁層1207との界面より5nm離間して形成されている。この距離は、第2チャネル層1206の電子に不純物散乱が生じない範囲である。
【0054】
また、実施例3における半導体装置は、基板1201の平面方向に対向して配置されて第1チャネル層1205および第2チャネル層1206を挟んで形成され、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206にオーミック接続する第1電極1209および第2電極1210を備える。また、酸化防止層1208の上に、Al2O3からなる層厚20nmの絶縁層1211を備える。
【0055】
加えて、第1電極1209および第2電極1210で挟まれた領域を第1電極1209の側の第1領域1251および第2電極1210の側の第2領域1252とに2分割した第1領域1251の第2障壁層1207の上で第1電極1209の上部領域に接して形成され、第1領域1251の第2チャネル層1206に電界を印加する電界印加電極1212を備える。
【0056】
第1電極1209および第2電極1210は、AuGeNi合金やInから構成すればよい。これらは、蒸着により形成することができる。
【0057】
また、絶縁層1211は、原子層成長法により形成すればよい。なお、例えば、上述した各電極を形成した後、絶縁層1211を形成すればよい。各電極に超音波ハンダにより配線を接続することで、絶縁層1211を破壊して電極−配線間の導通を取ることができる。
【0058】
電界印加電極1212は、下層をチタン層として上層を金層とした金属の2層構造から構成すればよい。例えば、電子ビーム蒸着により各金属材料を蒸着することで、電界印加電極1212が形成できる。
【0059】
この実施例3における半導体装置においても、電界印加電極1212に所定の電圧を印加することで、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206の第1領域1251をn型の状態とすることができる。この結果、この半導体装置においても、第1チャネル層1205および第2チャネル層1206のn型に反転した第1領域1251と、p型の第2領域1252とによりpn接合が形成できる。
【0060】
より詳細に説明する。第1チャネル層1205および第2チャネル層1206におけるGaSb/InAsからなるヘテロ接合では、これらの層厚が厚いなどの状態で閉じ込めがない場合、図13の(a−1)および(a−2)に示すように、InAsの伝導帯下端CbeがGaSbの価電子帯上端Vbeより0.15eV低くなる。
【0061】
上述した状態に対し、GaSb/InAsからなるヘテロ接合を薄くするなど閉じ込め状態とすることで、図13の(b−1)および(b−2)に示すように、InAsの伝導帯下端CbeがGaSbの価電子帯上端Vbeより高くなり、これらの間にバンドギャップが形成されるようになる。第1障壁層1204および第2障壁層1207を構成するAlGaSbのGa組成がゼロであるAlSbのバンドギャップが2.386eV(波長520nm相当)であり、これらによる量子井戸構造とすることで、発光および受光における波長のピークを、上述したエネルギーの間(波長520nm〜無限大)で変化させることができる。長波長側の限界は、熱エネルギーがバンドギャップを超えることで決定され、室温(300K)では48μmとなり、液体窒素温度(77K)では187μmとなり、液体ヘリウム温度(4.2K)では、3.43mmとなる。
【0062】
次に、上述した実施例3の構成とした半導体装置の特性評価について説明する。この特性評価では、第1チャネル層1205の層厚を10nmとし、第2チャネル層1206の層厚を15nmとしている。なお、第2障壁層1207に、2.5×1011cm-2のBeデルタドープを行っている。アクセプタ(p型)のドープであるが、ドープ量が少なく、格子欠陥などがドナー(n型)として働くので、電界が印加されていない状態ではチャネル層はn型のままである。
【0063】
また、半導体装置を、図14Aの斜視図および図14Bの平面図に示すように、平面視十字の形状とし、十字を構成する各辺の端部において、第1電極1209a−第2電極1210a、および第1電極1209b−第2電極1210bの2つの組を形成する。また、これら電極の内側の十字の中央部に絶縁層1211および電界印加電極1212を形成する。この測定では、作製の便宜上、第1電極と第2電極との間の全域に電界印加電極を形成している。また、図14Aでは、電界印加電極を省略して示している。
【0064】
上述した試料の半導体装置を作製し、第1電極1209a−第2電極1210aの間の電圧Vを、第1電極1209b−第2電極1210bの間に流れる電流Iで割った値でホール抵抗とし、このホール抵抗と電界印加電極1212への印加電圧VGとの関係を測定する。測定の結果、図15に示すように、電界印加電極1212への印加電圧VGを−8Vから8Vまで掃引すると、−4.3V程度を境に、ホール抵抗が負の値より正の値に変化する。この結果より、電界印加電極1212への印加電圧により、p型からn型へ反転させるなどの導電型の制御が可能であることがわかる。
【0065】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について図16を用いて説明する。図16は、本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を示す構成図(断面図)である。この半導体装置は、基板101の上に形成された直接遷移型の半導体からなる第1障壁層102と、第1障壁層102の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層103と、チャネル層103の上に形成された直接遷移型の半導体からなる第2障壁層104とを備える。障壁層で挟まれているチャネル層103により量子井戸構造が形成されている。
【0066】
また、この半導体装置は、基板101の平面方向に対向して配置されてチャネル層103を挟んで形成され、チャネル層103にオーミック接続する第1電極105および第2電極106と、第1電極105および第2電極106で挟まれた領域を第1電極105の側の第1領域151および第2電極106の側の第2領域152とに2分割した第1領域151の第2障壁層104の上で第1電極105の上部領域に接して形成され、第1領域151のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極(第1電界印加電極)107とを備える。また、電界印加電極107は、絶縁層108の上に形成されている。
【0067】
上述した構成は、前述した実施の形態1と同様である。本実施の形態2では、まず、チャネル層103がi型になる状態とする。例えば、第1障壁層102,チャネル層103,および第2障壁層104を真性半導体から構成し、第1障壁層102,第2障壁層104に不純物導入領域を形成しない構成とすればよい。また、上述した構成に加え、第2領域152の第2障壁層104の上で第2電極106の上部領域に接して形成され、第2領域152のチャネル層103に電界を印加する電界印加電極(第2電界印加電極)1607を備える。
【0068】
本実施の形態2における半導体装置は、電界印加電極107および電界印加電極1607に、各々所定の電圧が印加されることで、チャネル層103の第1領域151および第2領域152でpn接合が形成されるようにしたものである。
【0069】
例えば、電界印加電極107に負の電圧を印加し、電界印加電極1607に正の電圧を印加することで、第1領域151のチャネル層103をp型とし、第2領域152のチャネル層103をn型とすることができる。この結果、チャネル層103の平面方向(第1電極105および第2電極106が対向する方向)にpn接合が形成されるようになる。また、電界印加電極107に正の電圧を印加し、電界印加電極1607に負の電圧を印加することで、第1領域151のチャネル層103をn型とし、第2領域152のチャネル層103をp型としてもよい。
【0070】
この状態で、第1電極105と第2電極106との間に、第1電極105の側が正となる電圧を印加すれば、チャネル層103のバンドギャップエネルギーに対応した発光が得られるようになる。言い換えると、図16を用いて説明した半導体装置により、発光ダイオードが構成できる。
【0071】
また、チャネル層103に、チャネル層103のバンドギャップエネルギー以上の光を照射すると、上記pn接合に光起電力が生じ、これを測定すれば、照射された光の強度を検出することができる。
【0072】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について、図17を用いて説明する。図17は、本発明の実施の形態3における半導体装置の構成を示す斜視図である。この半導体装置は、基板(不図示)の上に形成された半導体からなる第1障壁層1701と、第1障壁層1701の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層1702と、チャネル層1702の上に形成された半導体からなる第2障壁層1703とを備える。障壁層とチャネル層1702とにより、伝導帯および価電子帯ともに量子井戸構造が形成されている。
【0073】
また、この半導体装置は、基板(不図示)の平面方向に対向して配置されてチャネル層1702を挟んで形成され、チャネル層1702にオーミック接続する第1電極1704および第2電極1705と、第1電極1704および第2電極1705で挟まれた領域を第1電極1704の側の第1領域1751および第2電極1705の側の第2領域1752とに2分割した第1領域1751の第2障壁層1703の上で第1電極1704の上部領域に接して形成され、第1領域1751のチャネル層1702に電界を印加する電界印加電極(第1電界印加電極)1707とを備える。また、電界印加電極1707は、絶縁層1706の上に形成されている。
【0074】
上述した構成は、前述した実施の形態1と同様であり、電界印加電極1707に対する電圧印加で、チャネル層1702にpn接合が形成されるようになる。
【0075】
本実施の形態3では、第1電極1704および第2電極1705が形成されている領域以外の第1電極1704と第2電極1705との対向方向に垂直な方向のチャネル層1702の対向する2つの断面に、反射膜1711および反射膜1712を備える。反射膜1711および反射膜1712は、電界印加電極1707に対する電圧印加で形成されるチャネル層1702のpn接合が延在する方向で、対向して配置されている。反射膜1711および反射膜1712は、例えば、蒸着により形成された金の膜から構成することができる。
【0076】
なお、本例では、第1障壁層1701および第2障壁層1703も、チャネル層1702と同様に加工され、各々断面に、反射膜1711および反射膜1712が形成されている。この反射膜1711および反射膜1712は、チャネル層1702を挟んで対向して配置された反射手段であり、共振器を構成している。
【0077】
本実施の形態3では、第1電極1704と第2電極1705との間に、第1電極1704の側が正となる電圧を印加すれば、チャネル層1702のバンドギャップエネルギーに対応した発光が得られるようになる。加えて、チャネル層1702に反射膜1711および反射膜1712からなる共振器を備えているので、レーザ発振が可能となる。
【0078】
例えば、閃亜鉛鉱型の結晶構造は、劈開により原子レベルで平坦な(110)面を得ることができる。従って、このような結晶構造を持つ化合物半導体よりチャネル層1702を構成し、この[1−10]方向に向かうpn接合が、[110]方向に沿って形成されるようにし、(110)面を劈開してこの面に反射膜1711および反射膜1712を形成すればよい。
【0079】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、実施例3においては、チャネル層であるGaSbとInAsの層の積層順は、逆でもよい。また、チャネル層は、InAs/GaSb/InAsの3層構造としてもよい。また、第1障壁層,チャネル層,および第2障壁層を構成する半導体は、上述した各実施例で示した材料に限るものではなく、他の化合物半導体を用いるようにしてもよい。また、複数層のグラフェンの積層構造を利用してもよい。
【0080】
また、上述では、発光および受光素子として説明したが、これに限るものではなく、本発明の半導体装置は、ダイオードとして用いてもよいことはいうまでもない。この用途の場合、SiGe/Siといった間接遷移型半導体のヘテロ構造を材料として用いることもできる。また、電界印加電極は、いわゆるショットキー接続した金属から構成してもよい。また、上述では、断面(端面)に反射膜を形成して共振器としてレーザとしたが、これに限るものではなく、外部共振器の構造としてもよい。
【0081】
なお、電界印加電極は、チャネル層にオーミック接続する第1電極もしくは第2電極の上部領域に接して形成されていることが重要となる。これは、例えば、電界印加電極の形成領域と第1電極形成領域との間に、隙間がない状態である。例えば、第1領域に電界印加電極を形成する場合、電界印加電極の形成箇所と第1電極の形成箇所との間に間隙あると、チャネル層において、間隙の領域がn型、電界印加電極の領域がp型、第2領域がn型となり、npn構造となる。また、間隙の領域がp型、電界印加電極の領域がn型、第2領域がp型のpnp構造となる。このような構成では、第1電極と第2電極との間が絶縁状態となり、前述したような光素子を構成することができない。
【符号の説明】
【0082】
101…基板、102…第1障壁層、103…チャネル層、104…第2障壁層、105…第1電極、106…第2電極、107…電界印加電極(第1電界印加電極)、108…絶縁層、151…第1領域、152…第2領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された半導体からなる第1障壁層と、
前記第1障壁層の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上に形成された半導体からなる第2障壁層と、
前記基板の平面方向に対向して配置されて前記チャネル層を挟んで形成され、前記チャネル層にオーミック接続する第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極で挟まれた領域を前記第1電極の側の第1領域および前記第2電極の側の第2領域とに2分割した前記第1領域の前記第2障壁層の上で前記第1電極の上部領域に接して形成され、前記第1領域の前記チャネル層に電界を印加する第1電界印加電極と
を備え、
前記第1電界印加電極に所定の電圧が印加されることで前記チャネル層の前記第1領域および前記第2領域でpn接合が形成される
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記チャネル層は、n型およびp型のなかより選択された導電型を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2領域の前記第2障壁層の上で前記第2電極の上部領域に接して形成され、前記第2領域の前記チャネル層に電界を印加する第2電界印加電極を備え、
前記チャネル層は、i型を備えて構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1電極および前記第2電極が形成されている領域以外の前記第1電極と前記第2電極との対向方向に垂直な方向の前記チャネル層の対向する2つの断面に形成された反射手段より構成された共振器を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
基板の上に形成された半導体からなる第1障壁層と、
前記第1障壁層の上に形成された直接遷移型の半導体からなるチャネル層と、
前記チャネル層の上に形成された半導体からなる第2障壁層と、
前記基板の平面方向に対向して配置されて前記チャネル層を挟んで形成され、前記チャネル層にオーミック接続する第1電極および第2電極と、
前記第1電極および前記第2電極で挟まれた領域を前記第1電極の側の第1領域および前記第2電極の側の第2領域とに2分割した前記第1領域の前記第2障壁層の上で前記第1電極の上部領域に接して形成され、前記第1領域の前記チャネル層に電界を印加する第1電界印加電極と
を備え、
前記第1電界印加電極に所定の電圧が印加されることで前記チャネル層の前記第1領域および前記第2領域でpn接合が形成される
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、
前記チャネル層は、n型およびp型のなかより選択された導電型を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、
前記第2領域の前記第2障壁層の上で前記第2電極の上部領域に接して形成され、前記第2領域の前記チャネル層に電界を印加する第2電界印加電極を備え、
前記チャネル層は、i型を備えて構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置において、
前記第1電極および前記第2電極が形成されている領域以外の前記第1電極と前記第2電極との対向方向に垂直な方向の前記チャネル層の対向する2つの断面に形成された反射手段より構成された共振器を備えることを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図17】
【図6】
【公開番号】特開2012−114146(P2012−114146A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260032(P2010−260032)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人科学技術振興機構「原子操作により形成したナノ構造による半導体表面における量子コヒーレンス現象の走査トンネル分光法による研究」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人科学技術振興機構「原子操作により形成したナノ構造による半導体表面における量子コヒーレンス現象の走査トンネル分光法による研究」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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