説明

半導体装置

【課題】ボンディング面と接続部材との密着性を高くするとともにボンディング面と樹脂封止のための樹脂との密着性を高くし、従来の半導体装置よりも高い信頼性を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体チップ110と、半導体チップ110を搭載するための第1リードフレーム120と、ボンディング面132を有する第2リードフレーム130,140とを備え、第2リードフレーム130,140におけるボンディング面132,142は、接続部材150を介して半導体チップ110と電気的に接続され、半導体チップ110、第1リードフレーム120及び第2リードフレーム130,140が樹脂封止により一体化された半導体装置であって、ボンディング面132,142は、第1の粗化処理が施された第1の粗化面であり、めっきを介することなく接続部材150と接続されていることを特徴とする半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来の半導体装置900を説明するために示す図である。
【0003】
従来、半導体チップ910と、半導体チップ910を搭載するためのダイパッド922を有する第1リードフレーム920と、ボンディング面932を有し第1リードフレーム920とは離間して配置された第2リードフレーム930とを備え、第2リードフレーム930におけるボンディング面932は、接続部材950を介して半導体チップ910と電気的に接続され、半導体チップ910、第1リードフレーム920及び第2リードフレーム930が樹脂封止により一体化された半導体装置900が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
従来の半導体装置900は、第1リードフレーム920における半導体チップ910を搭載する側の面とは反対側の面(第1リードフレーム920の裏面という。)及び第2リードフレーム930におけるボンディング面932とは反対側の面(ボンディング面932の裏面という。)のそれぞれに、樹脂封止のための樹脂との密着性を高くするための粗化処理が施されている。また、ボンディング面932には粗化処理が施されておらず、めっきが施されている。なお、従来の半導体装置900においては、接続部材としてボンディングワイヤーを用いている。
【0005】
従来の半導体装置900によれば、第1リードフレーム920の裏面及びボンディング面932の裏面にはそれぞれ粗化処理が施されているため、第1リードフレーム920の裏面と樹脂封止のための樹脂との密着性及びボンディング面932の裏面と樹脂封止のための樹脂との密着性をそれぞれ高くすることが可能となり、高信頼性の半導体装置900を提供することが可能となる。
【0006】
また、従来の半導体装置900によれば、ボンディング面932にはめっきが施されているため、ボンディング面932と接続部材950との密着性を高くすることが可能となり、この観点においても高信頼性の半導体装置900を提供することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−314411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明の発明者らの研究によれば、従来の半導体装置900においては、ボンディング面932に施されためっきの表面が平滑に過ぎるため、ボンディング面932と樹脂封止のための樹脂との密着性を高くするうえでめっきが障害となり、高信頼性の半導体装置を提供することが困難な場合があるという問題があることが明らかになった。
【0009】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、ボンディング面と接続部材との密着性を高くするとともにボンディング面と樹脂封止のための樹脂との密着性を高くすることにより、高信頼性の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明の半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップを搭載するためのダイパッドを有する第1リードフレームと、ボンディング面を有し、前記第1リードフレームとは離間して配置された第2リードフレームとを備え、前記第2リードフレームにおける前記ボンディング面は、接続部材を介して前記半導体チップと電気的に接続され、前記半導体チップ、前記第1リードフレーム及び前記第2リードフレームが樹脂封止により一体化された半導体装置であって、前記ボンディング面は、第1の粗化処理が施された第1の粗化面であり、めっきを介することなく前記接続部材と接続されていることを特徴とする。
【0011】
[2]本発明の半導体装置においては、前記ダイパッドにおける前記半導体チップを搭載する側の面は、第2の粗化処理が施された第2の粗化面であることが好ましい。
【0012】
[3]本発明の半導体装置においては、前記第1の粗化面の平均粗さは、前記第2の粗化面の平均粗さよりも小さいことが好ましい。
【0013】
[4]本発明の半導体装置においては、前記接続部材は、ボンディングワイヤーであることが好ましい。
【0014】
[5]本発明の半導体装置においては、前記ボンディング面と前記ボンディングワイヤーとは、超音波振動を加えながら熱圧着された構造を有することが好ましい。
【0015】
[6]本発明の半導体装置においては、前記第1の粗化処理は、エッチングによる粗化処理であることが好ましい。
【0016】
[7]本発明の半導体装置においては、前記第1の粗化処理は、研磨剤を用いた粗化処理であることが好ましい。
【0017】
[8]本発明の半導体装置においては、前記第1の粗化処理は、銅及び酸化銅からなる粒子を前記ボンディング面に電着させる粗化処理であることが好ましい。
【0018】
なお、本発明において「第1の粗化処理」はボンディング面と接続部材との密着性を高くするための粗化処理のことをいい、「第1の粗化面」は第1の粗化処理が施された粗化面のことをいう。また、「第2の粗化処理」はダイパッド面と樹脂封止のための樹脂との密着性を高くするための粗化処理のことをいい、「第2の粗化面」は第2の粗化処理が施された面のことをいう。
【発明の効果】
【0019】
本発明の半導体装置によれば、ボンディング面は、第1の粗化処理が施された第1の粗化面であるため、ボンディング面と接合部材との密着性をアンカー効果により高くすることが可能となり、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0020】
また、本発明の半導体装置によれば、ボンディング面は、めっきを介することなく接続部材と接続されているため、ボンディング面と樹脂封止のための樹脂との密着性を高くするうえでめっきが障害となることがない。このため、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0021】
また、本発明の半導体装置によれば、ボンディング面は、めっきを介することなく接続部材と接続されているため、めっきを施すための時間と手間と設備とが必要なくなり、高生産性の半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る半導体装置100を説明するために示す図である。
【図2】従来の半導体装置900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の半導体装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0024】
[実施形態]
1.実施形態に係る半導体装置100の構成
まず、実施形態に係る半導体装置100の構成を説明する。
図1は、実施形態に係る半導体装置100を説明するために示す図である。図1(a)は実施形態に係る半導体装置100の平面図であり、図1(b)は実施形態に係る半導体装置100の側断面図である。
【0025】
実施形態に係る半導体装置100は、半導体チップ110と、第1リードフレーム120と、第2リードフレーム130,140とを備え、第2リードフレーム130,140におけるボンディング面132,142は、接続部材150,150を介して半導体チップ110と電気的に接続され、半導体チップ110、第1リードフレーム120及び第2リードフレーム130,140が樹脂封止により一体化されている。実施形態に係る半導体装置100におけるボンディング面132,142は、第1の粗化処理が施された第1の粗化面であり、めっきを介することなく接続部材150,150と接続されている。
【0026】
半導体チップ110は、所望の半導体素子を用いる。実施形態においては、第1リードフレーム120と接する側の面に1つの電極端子を有し、第1リードフレーム120と接する側の面とは反対側の面に2つの電極端子を有するMOSFETの半導体素子を用いる。
【0027】
第1リードフレーム120は、半導体チップ110を搭載するためのダイパッド122と、ダイパッド122から外部に向けて延在するアウターリード124とを有する。ダイパッド122における半導体チップ110を搭載する側の面(以下、ダイパッド面126という。)においては半田128によって半導体チップ110と接続されている。アウターリード124は、実施形態に係る半導体装置100を基板などに接続する端子となる。第1リードフレーム120の素材としては、例えば銅を用いることができる。
【0028】
ダイパッド面126は、ダイパッド面126と樹脂封止のための樹脂との密着性を良好な状態にするための第2の粗化処理が施された第2の粗化面である。実施形態においては、第2の粗化処理として、エッチングによる粗化処理が施されている。
【0029】
エッチングによる粗化処理は、ダイパッド面126の表面を塩酸や硫酸などの酸で溶かし、表面を粗化する処理である。ダイパッド面126に酸を付着させる方法としては、スプレーで吹きかける方法、スピナーに取り付けて酸を滴下する方法、容器に満たした酸にダイパッド面126の表面を浸す方法等が挙げられる。
【0030】
第2リードフレーム130、140は、接続部材150,150と電気的に接続するためのボンディング面132,142と、ボンディング面132、142からそれぞれ外部に向けて延在するアウターリード134、144とを有する。
【0031】
ボンディング面132,142は、接続部材150,150との密着性を高くするための第1の粗化処理が施された第1の粗化面である。第1の粗化面の平均粗さは、第2の粗化面の平均粗さよりも小さい。実施形態においては、第1の粗化処理として、エッチングによる粗化処理が施されている。なお、ボンディング面132,142には、めっきが施されていない。
【0032】
エッチングによる粗化処理は、ボンディング面132,142の表面を塩酸や硫酸などの酸で溶かし、表面を粗化する処理である。ボンディング面132,142に酸を付着させる方法としては、スプレーで吹きかける方法、スピナーに取り付けて酸を滴下する方法、容器に満たした酸にボンディング面132,142の表面を浸す方法等が挙げられる。
【0033】
接続部材150は、アルミニウム、金などからなるボンディングワイヤーである。実施形態においてはアルミニウム製のボンディングワイヤーを用いる。ボンディング面132,142とボンディングワイヤーとは、超音波振動を加えながら熱圧着された構造を有する。
【0034】
2.実施形態に係る半導体装置100の効果
以下、実施形態に係る半導体装置100の効果を記載する。
【0035】
実施形態に係る半導体装置100によれば、ボンディング面132,142は、第1の粗化処理が施された第1の粗化面であるため、ボンディング面132,142と接続部材150との密着性をアンカー効果により高くすることが可能となり、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0036】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、ボンディング面132,142はめっきを介することなく接続部材150と接続されているため、ボンディング面132,142と樹脂封止のための樹脂との密着性を高くするうえでめっきが障害となることがない。このため、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0037】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、ボンディング面132,142はめっきを介することなく接続部材150と接続されているため、めっきを施すための時間と手間と設備とが必要なくなり、高生産性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0038】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、ダイパッド面126は、第2の粗化処理が施された第2の粗化面であるため、アンカー効果によりダイパッド面126と樹脂封止のための樹脂との密着性を向上させることができ、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0039】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、第1の粗化面の平均粗さは、第2の粗化面の平均粗さよりも小さいため、ワイヤーボンディングの際に、動摩擦係数の関係から活性化された金属面(ボンディング面132,142)と接続部材150,150との金属結合が容易になる。このため、ボンディング面132,142と接続部材150,150との間に微少な隙間が生じることを防ぐことが可能となり、ボンディング面132,142と接続部材150,150との密着性が低下することを防ぐことが可能となる。その結果、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0040】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、接続部材150がボンディングワイヤーであるため、容易にボンディング面132,142と半導体チップ110とを電気的に接続することが可能となる。
【0041】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、ボンディング面132,142とボンディングワイヤーとは超音波振動を加えながら熱圧着された構造を有するため、ボンディング面132,142の表面に生成されている酸化被膜は超音波振動により破壊されている。その結果、ボンディング面132,142とボンディングワイヤーとの間に酸化被膜が介在することに起因して密着性が低下することを防ぐことが可能となる。その結果、高信頼性の半導体装置を提供することが可能となる。
【0042】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、第1の粗化処理はエッチングによる粗化処理であるため、ボンディング面132,142を容易に粗化することが可能となり、所望の平均粗さを有する粗化面とすることが可能となる。
【0043】
また、実施形態に係る半導体装置100によれば、第2の粗化処理はエッチングによる粗化処理であるため、ダイパッド面126を容易に粗化することが可能となり、所望の平均粗さを有する粗化面とすることが可能となる。
【0044】
以上、本発明の半導体装置を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0045】
(1)上記した実施形態においては、第1の粗化処理としてエッチングによる粗化処理を施したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1の粗化処理として研磨剤を用いた粗化処理を施してもよく、第1の粗化処理として銅及び酸化銅からなる粒子をボンディング面132,142に電着させる粗化処理を施してもよい。
【0046】
研磨剤を用いた粗化処理は、圧縮空気に研磨剤(例えば、アルミナ粒子)を混ぜてボンディング面132,142に吹きつけて、こすることにより粗化する処理である。このように第1の粗化処理として研磨剤を用いた粗化処理を施した場合であっても、ボンディング面132,142と接続部材150,150との密着性を高めることが可能となり、高信頼性を有する半導体装置とすることが可能となる。
【0047】
銅及び酸化銅からなる粒子をボンディング面132,142に電着させる粗化処理は、銅イオンを含む電解質溶液中にボンディング面132,142を浸し、ボンディング面132,142の表面に銅及び酸化銅からなる粒子を電着させることにより粗化する処理である。このように第1の粗化処理として銅及び酸化銅からなる粒子をボンディング面132,142に電着させる粗化処理を施した場合であっても、ボンディング面132,142と接続部材150,150との密着性を高めることが可能となり、高信頼性を有する半導体装置とすることが可能となる。
【0048】
(2)上記した実施形態においては、第2の粗化処理としてエッチングによる粗化処理を施したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第2の粗化処理として研磨剤を用いる粗化処理を施してもよく、第2の粗化処理として銅及び酸化銅からなる粒子をダイパッド面126に電着させる粗化処理を施してもよい。
【0049】
(3)上記した実施形態においては、第1リードフレーム120の裏面及びボンディング面132,142の裏面にそれぞれ樹脂封止のための樹脂との密着性を向上させるための粗化処理を施してもよい。
【0050】
(4)上記した実施形態においては、半導体チップ110としてMOSFETを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、MOSFET以外のトランジスタ、ダイオード、サイリスタ、トライアックなど適宜の半導体素子を用いることができる。
【0051】
(5)上記した実施形態においては、第1リードフレーム120と接する側の面とは反対側の面に2つの電極端子が設けられた半導体素子を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1リードフレーム120と接する側の面とは反対側の面に1つ又は3つ以上の電極端子を有する半導体素子を用いることもできる。この場合、当該電極端子の数に応じた本数の第2リードフレームを用いるが、それぞれのボンディング面にそれぞれ第1の粗化処理を施して第1の粗化面とした第2リードフレームを用いることができる。
【0052】
(6)上記した実施形態においては、ダイパッド面126全体に第2の粗化処理を施したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ダイパッド面126における半導体チップが搭載されない領域にだけ第2の粗化処理を施してもよい。
【符号の説明】
【0053】
100,900…半導体装置、110,910…半導体チップ、120,920…第1リードフレーム、122、922…ダイパッド、124…アウターリード、126…ダイパッド面、128…半田、130,140,930…第2リードフレーム、132,142,932…ボンディング面、150…接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを搭載するためのダイパッドを有する第1リードフレームと、
ボンディング面を有し、前記第1リードフレームとは離間して配置された第2リードフレームとを備え、
前記第2リードフレームにおける前記ボンディング面は、接続部材を介して前記半導体チップと電気的に接続され、
前記半導体チップ、前記第1リードフレーム及び前記第2リードフレームが樹脂封止により一体化された半導体装置であって、
前記ボンディング面は、第1の粗化処理が施された第1の粗化面であり、めっきを介することなく前記接続部材と接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ダイパッドにおける前記半導体チップを搭載する側の面は、第2の粗化処理が施された第2の粗化面であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記第1の粗化面の平均粗さは、前記第2の粗化面の平均粗さよりも小さいことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置において、
前記接続部材は、ボンディングワイヤーであることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4のいずれかに記載の半導体装置において、
前記ボンディング面と前記ボンディングワイヤーとは、超音波振動を加えながら熱圧着された構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置において、
前記第1の粗化処理は、エッチングによる粗化処理であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置において、
前記第1の粗化処理は、研磨剤を用いた粗化処理であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置において、
前記第1の粗化処理は、銅及び酸化銅からなる粒子を前記ボンディング面に電着させる粗化処理であることを特徴とする半導体装置。

【図2】
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【図1】
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