説明

半導体装置

【目的】 逆漏れ電流及び順電圧降下を増大することなく、高速でかつ高耐圧の半導体装置を得る。
【構成】 N+ 型半導体層4上に設けられたN型半導体層3とPN接合を形成すると共に、前記N型半導体層3の表面に該N型半導体層3の複数個の露出した領域を画成するように設けられたP+ 型半導体層2を形成し、前記N型及びP+ 型半導体層の表面に亘って接触させ、ショットキ接触又はオーミック接触を有する金属電極1を設け、前記N型半導体層3と金属電極1の接触面eからの深さDと、該接触面eの直下にあってP+ 型半導体層2の対向する領域間の最近接距離Wとの関係をD≧0.5Wとすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体装置に関し、特に半導体整流器、バイポ−ラトランジスタ、静電誘導トランジスタなどの高耐圧および高速動作を有する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、整流器等の半導体装置の特性改善、特に、スイッチング速度、順方向及び逆方向特性について改善のための開発が進められ、種々の半導体装置が提案されている。
【0003】図19に通常のPN接合による整流器の構造を示す。1はオ−ミック接合を形成する金属電極、2はP+ −型半導体層、3はN−型半導体層、4はN+ −型半導体層、5はオーミック金属電極であり、Aはアノード、Cはカソードを示す。
【0004】一般に、図19で示されたような整流器における順方向特性は図6のVF −JF (順電圧降下−順電流)特性図の(a)のごとく、又、逆方向特性は図7のVR −JR (逆方向電圧−逆漏れ電流)特性図の(a)のごとき特性曲線を示す。
【0005】一方、順方向から逆方向に印加電圧をスイッチすると、N−型半導体層3に多量に注入された移動速度の遅い正孔の存在により、完全にPN接合を逆方向特性に回復するまでの時間(逆回復時間trr)として例えば、数百nsec以上もの長時間を要し、高速回路の用途には適さない。このような欠点を解消するため、従来から種々の構造が提案されている。例えば、図19の整流器に金、白金等の重金属を拡散することにより、少数キャリア(正孔)の消滅を促進することが一般的に行われている。
【0006】このような重金属拡散を用いた構造ではtrrを約1/10程度まで減少できるが、通常のPN接合の整流器より逆漏れ電流、及び順方向電圧降下が大となり、損失が増大する。
【0007】また、ショットキバリア接合を用いた整流器も高速化を目的とした整流器として提案されているが、順方向については、図6のVF −JF 特性図の(b)のごとき特性を示し、逆方向については、図7のVR −JR 特性図の(b)のごとき特性を示す。即ち、スイッチング速度及び順方向電圧降下は通常のPN接合型整流器に比較して改善されるが、図7の(a)と(b)の対比で明らかなように、逆漏れ電流および耐圧を改善することはできない。
【0008】ショットキバリア型接合の前記の欠点を改善するため、特公昭59−35183や特開昭60−74582が提案されているが、逆漏れ電流を抑制するための要件及び高速化のための要件の提供において十分なものではない。
【0009】
【発明の目的】本発明の一の目的は、従来のPN接合型及びショットキバリア接合型の半導体装置の問題点を解消し、高耐圧、高速の新規な半導体装置を提供することにある。本発明の他の目的は、順電圧降下および逆漏れ電流の小さい半導体装置を提供することにある。本発明の別の目的は、逆回復時間の小さい半導体装置を提供することにある。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。図1および図2は本発明の第1実施例による整流器の単位セルを示し、また、図3は複数個の単位セルを含む整流器を示す。なお、図19と同一符号は同一部分を示す。
【0011】図1および図2において、整流器の単位セルはN+ −型半導体層4とN−型半導体層3とを有する半導体基板を含む。N−型半導体層3には、深さDを有するP+ −型半導体層2が設けられPN接合を形成している。上記基板表面に金属電極1を設けて露出したN−型半導体層3の表面と接触面eを形成する。P+ −型半導体層2の上記深さDは接触面eからの距離により与えられる。また、接触面e、即ち、基板表面に露出したN−型半導体層3の直下において、P+ −型半導体層2の互いに対向する部分或るいはPN接合間の最近接距離はWで与えられる。この場合、互いに対向するP+ −型半導体層2の上記部分は接触面eの外側に存在する、言い換えると、接触面eの内側に存在しないので、上記最近接距離Wは、基板表面においてN−型半導体層3が露出する幅により実質的に与えられる。N+ −型半導体層4にはオ−ミック金属電極5が設けられる。図3から明らかなように、基板表面に露出したN−型半導体層3は幅(最近接距離)Wを有する正方形である。
【0012】このような整流器のアノ−ドAとカソ−ドC間に電圧を印加しない、即ち、零バイアス時の空乏層6は、低い不純物濃度を有するN−型半導体層3中に伸び、その幅はWbiで与えられる。
【0013】図1は基板表面に露出したN−型半導体層3の幅Wと上記空乏層6の幅Wbiとの関係がW<2Wbiで与えられる構造を示し、また、図2は同様にW>2Wbiで与えられる構造を示す。図1および図2の構造で重要な要件は、P+ −型半導体2の深さDと上記最近接距離Wの関係をD≧0.5Wとすることである。
【0014】なお、深さDは接触面eからの距離で与えられるから、例えば、接触面eの部分がP+ −型半導体層2の表面より突出する構造の場合はその突出せる接触面からの深さとなり、また、最近接距離Wが接触面eより下方(N−型半導体層3の内部)にあるときはその位置での距離となる、ことは明らかである。
【0015】図3に示されたように、基板表面に露出したN−型半導体層3は幅(最近接距離)Wを有する正方形としているが、図4に示すように、基板表面に露出したN−型半導体層3を幅(最近接距離)Wのストライプ状にしても良い。なお、図5はその断面図である。
【0016】図1に示した整流器は、例えば、次のように形成される。比抵抗が0.010Ω−cmのN+ −型半導体層4と、該半導体層上にエピタキシャル成長技術により成長され、比抵抗が5Ω−cm、厚さが14μmのN−型半導体層3とを有する半導体基板を用意する。次いで、N−型半導体層3に選択的にP−型不純物を導入して、基板表面に露出したN−型半導体層3が2μmの幅(最近接距離)Wを有する正方形となるように、深さDが3μmのP+ −型半導体層2を形成する。上記基板表面にTi電極1を設けて露出したN−型半導体層3の表面と接触面eを形成する。この場合、金属電極1とN−型半導体層3と間にショットキバリア接合が形成され、また、金属電極1とP+ −型半導体層2との間にオーミック接合が形成される。Tiに代えて、Mo,W,Cr,Al等を用いても良い。N+ −型半導体層4には、リンを1021Atoms/cm3 の濃度となるように導入した後、Crによりオ−ミック金属電極5が設けられる。しかる後、半導体基板を1.6×1.6mmの大きさのチップに分割して整流器を得る。
【0017】このような整流器においては、零バイアス時の空乏層6の幅Wbiは1.05μmで与えられる。なお、この空乏層6の幅Wbiは、上記N−型半導体層3における比抵抗の製作上のバラツキ、或るいはP+ −型半導体層2の形成条件等により1〜1.5μmの範囲で変化する。
【0018】上記第1実施例においてN−型半導体層3と金属電極1との間をショットキバリア接合、P+ −型半導体層2と金属電極1との間をオーミック接合としたが、P+ −型半導体層2或るいはN−型半導体層3の不純物濃度を変えることにより、3−1間および2−1間をショトキバリア接合で、3−1間および2−1間をオーミック接合で、および3−1間をオーミック接合、2−1間をショットキバリア接合でそれぞれ形成することもできる。
【0019】図6は種々に組み合わせられた接合を有する整流器の順方向特性を示すVF −JF 特性図であり、図7はそれらの逆方向特性を示すVR −JR 特性図である。
【0020】即ち、図6および図7において、本発明の構造による順方向特性および逆方向特性は、(c)、(d)、(e)、および(f)の曲線により、それぞれ示される。曲線(c)〜(f)は、下記のようなN−型半導体層3又はP+ −型半導体層2と金属電極1との接合の組み合わせを示す。
曲線(c):3−1間をオーミックコンタクトおよび2−1間をオーミックコンタクト曲線(d):3−1間をオーミックコンタクトおよび2−1間をショットキバリア接合曲線(e):3−1間をショットキバリア接合および2−1間をオーミックコンタクト曲線(f):3−1間をショットキバリア接合および2−1間をショットキバリア接合なお、曲線(a)は上記したように、PN接合を用いた整流器の特性を、また、曲線(b)はショットキバリア接合を用いた整流器の特性をそれぞれ示す。
【0021】これらの特性から明らかなように、(c)、(d)、(e)および(f)の構造を有する整流器においては順方向特性の小さなJF 領域では、従来型ショットキバリア整流器の特性(b)とPN接合型整流器の特性(a)との間のVF 値となり、逆方向特性はPN接合型整流器の特性(a)と同等の特性となることがわかる。図8および図9は基板表面に露出したN−型半導体層3の幅(最近接距離)Wと零バイアス時の空乏層の幅Wbiとの関係について示す。
【0022】即ち、図8はW−JR (最近接距離−逆漏れ電流)特性図を、図9はW−VF(最近接距離−順電圧降下)特性図をそれぞれ示す。これらはDとWの関係において、本発明の範囲外のD=0.1WやD=0.05Wの曲線についても図示している。
【0023】なお、図8のW−JR 特性において、本発明の範囲外のD=0.05WやD=0.1Wの構造のものは逆漏れ電流JR が著しく大きくなることがわかる。W<3Wbiの範囲でD≧0.5Wではきわめて逆漏れ電流JR が小さくなることは明らかである。さらに、図10R>0は本発明の整流器のW−trr(最近接距離−逆回復時間)特性図を示す。
【0024】図10においては本発明の構造によるD=Wの値を示している。実線は2−1間をオーミックとした場合であり、単一接合のショットキバリア接合型整流器に比し、若干、trrが増加するが、実用上、同等である。
【0025】図10において、破線は2−1間をショットキバリアとした場合であり、極めてtrrの小なる特性が得られる。即ち、アノードA、カソードC間に順バイアスが印加されると、2−1間のショットキバリア接合が逆バイアスされ、P+ N接合にはほとんど順バイアス電圧がかからない。そのためP+ −型半導体層2からN−型半導体層3への正孔の注入がほとんどなく、結果として、順方向特性は図6の(d)、(f)の高シリーズ抵抗をもった特性となるが、図10の破線のごとく高速スイッチング特性が得られる。
【0026】上記したように、本発明の重要な要件であるD≧0.5Wを満足する構造であっても、既に図8、図9、図10に提示するごとく、それらの特性はWとWbiの関係に影響を受けることがわかる。即ち、W≦3Wbi又はW≧Wbiの条件を満たすことにより、本発明の整流器として、更に、優れた特性を示すものとなる。次ぎに、本発明の第2実施例による整流器について説明する。図11〜図14は、本発明の第1実施例と同様に、整流器の単位セルを示し、その平面図は図3〜図4と同じである。
【0027】この実施例においては、第1実施例におけるD≧0.5Wに加えて、接触面eまたはN−型半導体層3の表面とPN接合上の点fを通る接線sとのなす角度θを60°≦θ≦120°とすることである。この場合、PN接合上の点fは、PN接合と、零バイアス時の空乏層6の頂部を通り上記接触面eまたは露出したN−型半導体層3の表面と平行に伸びる直線gとの交点で与えられる。
【0028】図11は、N−型半導体層3と金属電極1との間の接触面eがP+ −型半導体層2と電極金属1との間の接触面より一層突出した構造を有する整流器の単位セルを示し、接触面eとPN接合上の点fを通る接線sとのなす角度θは鋭角、例えば、60°であり、その範囲は60°≦θ<90°となる。この場合、図1および図2で示した第1実施例とは異なり、P+ −型半導体層2の互いに対向する部分は、接触面eの内側に存在するので、上記最近接距離Wは、P+ −型半導体層2の互いに対向する上記部分或るいはPN接合間の距離により与えられる。また、P+ −型半導体層2の上記深さDは接触面eからの深さであるから、それは突出せる接触面eとP+ −型半導体層2との間の距離となる。
【0029】図11、図12、図13および図14は、角度θを60°≦θ≦120°の範囲で変化した整流器の単位セルを示し、角度θは順次大きくなっており、図1414において角度θは120°である。この場合、P+ −型半導体層2の上記深さDは接触面eからの深さであるが、上記最近接距離Wは、基板表面においてN−型半導体層3が露出する幅により実質的に与えられる。
【0030】さらに、第2実施例における整流器は第1実施例と同様に製造される。また、それらのVF −JF 順方向特性およびVR−JR 逆方向特性は、第1実施例における図6および図7と同様である。図15はθ−JR (角度−逆漏れ電流)特性図を示す。
【0031】図15から明らかなように、図7の(c)、(d)、(e)および(f)のような特性を示すためには、60°≦θ≦120°の範囲になる必要がある。即ち、θが60°より小さくなる場合、及び120°を超える場合は、D≧0.5Wの条件を満足していても逆漏れ電流JR は増大し、本発明の目的を達成できない。なお、図15はD=Wにおいて、3−1間をショットキバリア接合で形成し、2−1間をショットキバリア接合又はオーミック接合で形成した際の曲線を示している。ここで、θを変えた試料はボロン源からの熱処理拡散条件、表面からの研磨及びイオン注入の技術の一つ又は組合せた製作工程により作製した。また、図15に示すように、最近接距離Wと零バイアス時の空乏層の幅Wbiの関係をパラメータとして示した。
【0032】図16はDをパラメータとしたVR −EJ (逆方向電圧−電界強度)特性図を示す。ここでEJ は3−1間の接合(接触面e)を横切る電界強度である。
【0033】図16から明らかなように、上記した条件であるD≧0.5Wの範囲では電界強度EJ は小さな値で飽和することがわかる。又、EJ が小さな値で飽和すると逆漏れ電流JR も電圧依存性をもたない小電流値となることは一般に知られる理論式から明らかである。上記条件の範囲外であるD=0.05WやD=0.1WではEJ が電圧依存性をもった大きな値となっている。逆回復時間trrについては、第1実施例における図10のW−trr(最近接距離−逆回復時間)特性図と同様である。
【0034】以上述べたように、第2実施例において二つの条件60°≦θ≦120°およびD≧0.5Wを満たしても、既に図10および図15に示したように、それらの特性はWとWbiの関係に影響を受けることがわかる。即ち、W≦3Wbi又はW≧Wbiの条件を満足することにより、本発明の半導体整流器として、更に、優れた特性を示すものとなる。
【0035】上記した第2実施例から明らかなように、本発明者は、P+ −型半導体層2と金属電極1がオ−ミック接触で少数キャリアの注入を伴う場合においても、D≧0.5W、Wbi≦W≦3Wbiおよび60°≦θ≦120°の条件を満たす構造においては、金属電極1とN−型半導体層3との接触がショットキ接触或いはオ−ミック接触にかかわらず、逆回復特性で著しく特異な現象が起こっていることを見出だした。
【0036】即ち、逆転流時の初期の数ナノ秒の極く短時間の間に、N−型半導体層3に過剰に注入された少数キャリア(ホ−ル)は金属電極1の方向へP+ −型半導体層2を通って流れ込み、同時に、N−型半導体層3内の多数キャリア(電子)が上記過剰少数キャリア(ホ−ル)と同量だけ金属電極1内に電位方向に逆らって流れ、金属電極1内でホ−ルと電子が再結合して消滅する。外部電極には、極く短時間のこれらのキャリアの流れは観測されない。その後、残留少数キャリアはP+ −型半導体層2の下部のN−型半導体層3内で自然消滅する。したがって、極めてすぐれたtrr特性が得られる。図17は本発明の第3実施例を示し、本発明をバイポ−ラトランジスタ、例えば、拡散型PNPトランジスタのエミッタ部に適用した構造を示している。
【0037】即ち、このバイポ−ラトランジスタは、P+ −型半導体層122からなるコレクタ領域と、N−型半導体層123からなるベ−ス領域と、該ベ−ス領域に形成された複数個のP+ −型半導体層125からなるエミッタ領域と、コレクタ領域に設けられたコレクタ電極121と、絶縁膜124の開口部を介してベ−ス領域に設けられたベ−ス電極126と、露出したベ−ス領域およびエミッタ領域に形成され、ベ−ス領域とショットキバリア接合を形成するエミッタ電極127とを含んでいる。この場合、上記第1および第2実施例と同様に、エミッタ領域を形成するP+ −型半導体層125の深さ、表面に露出したベ−ス領域の幅、接触面eまたはベ−ス領域の表面とP+ N接合上の点fを通る接線sとのなす角度(図示せず)は、それぞれ、D、Wおよびθで与えられ、しかも、D≧0.5W、Wbi≦W≦3Wbiおよび/または60°≦θ≦120°の条件を有している。
【0038】通常のエミッタ構造を有するP+ NP+ 型トランジスタではエミッタ領域から注入された少数キャリアがベ−ス領域中に蓄積されて、スイッチング時間tOFFを小さくできないが、上記したエミッタ構造を有するバイポ−ラトランジスタにおいては、ベ−ス領域中に蓄積された少数キャリアのホ−ルはタ−ンオフ期間の初期にエミッタ領域からエミッタ電極127に抜け、同時にベ−ス領域中の多数キャリアの電子がエミッタ電極127側に数ナノ秒という高速で達し、エミッタ電極内で同量のホ−ルと電子の再結合が起こり、スイッチング時間tOFF を極めて短くできる。また、ショットキ接合からベ−ス領域へ多量の多数キャリアの流入があるため、従来構造に比較してベ−ス抵抗を強く変調し、低抵抗化する。その結果、VCEの飽和特性、hFEが著しく改善される。
【0039】例えば、比抵抗が5Ω−cmのN−型半導体層123を用い、エミッタ電極127をTiにより形成して、露出したベ−ス領域(N−型半導体層123)との間をショットキバリア接合とし、しかも、W=2μm、D=3μm、θ=95°とした際、次のような良好な結果が得られた。
【0040】


更に、図18は本発明の第4実施例を示し、本発明を静電誘導トランジスタ(SIT)のゲ−ト部に適用した構造を示している。
【0041】この静電誘導トランジスタは、金属電極131を有するN+ −型半導体層132からなるドレイン領域と、N−型半導体層133からなるチャンネル領域と、絶縁膜134を介してチャンネル領域に形成された複数個のP+ −型半導体層135および露出したチャンネル領域およびP+ −型半導体層135に形成され、テャンネル領域とショットキバリア接合を形成するゲ−ト電極136とからなるゲ−ト部と、該ゲ−ト部に隣接してチャンネル領域に形成され、N+ −型半導体層137からなるソ−ス領域と、該ソ−ス領域に設けられたソ−ス電極138とを備えている。この場合、上記第3実施例と同様に、ゲ−ト部を形成するP+ −型半導体層135の深さ、表面に露出したチャンネル領域の幅、接触面eまたはチャンネル領域の表面とP+ N接合上の点fを通る接線sとのなす角度(図示せず)は、それぞれ、D、Wおよびθで与えられ、しかも、D≧0.5W、Wbi≦W≦3Wbiおよび/または60°≦θ≦120°の条件を有している。
【0042】従来の静電誘導トランジスタでは単一のP+ −型半導体層からなるゲ−トを順バイアスすると、少数キャリアがN−型半導体層のチャンネル領域に注入されると共に蓄積されて、静電誘導トランジスタのスイッチング時間が遅れ高周波対応のデバイスとして限界がある。
【0043】一方、上記したゲ−ト構造を有する静電誘導トランジスタにおいては、テャンネル領域中に蓄積された少数キャリアのホ−ルはタ−ンオフ期間の初期にP+ −型半導体層135からゲ−ト電極136に抜け、同時にチャンネル領域中の多数キャリアの電子がショットキバリア接合を有するゲ−ト電極136側に数ナノ秒という高速で達し、ゲ−ト部を形成する金属電極内で同量のホ−ルと電子の再結合が起こる。
【0044】その結果、従来の静電誘導トランジスタにおいては、チャンネル領域内に蓄積された少数キャリアの消滅がキャリアライフタイムにしたがって自然消滅していたのに対し、本発明においてチャンネル領域と接するゲ−ト電極はショットキバリア接合を有するので、キャリア濃度に大きな濃度勾配と内部電界勾配を形成する。したがって、チャンネル領域に蓄積された少数キャリアはこのような濃度勾配と内部電界勾配により超高速で消滅する。その後、残留した少量の少数キャリアはライフタイムに応じて自然消滅する。それ故、本発明によれば、スイッチング時間が著しく改善され、良好な高周波特性を有する静電誘導トランジスタが得られる。
【0045】例えば、比抵抗が100Ω−cmのN−型半導体層133を用い、ゲ−ト電極136をAlにより形成して、露出したチャンネル領域(N−型半導体層133)との間をショットキバリア接合とし、しかも、W=5μm、D=5μm、θ=95°とした際、良好な結果が得られた。
【0046】
【発明の効果】以上、説明したごとく、本発明の半導体装置は特に、高耐圧、かつ高速の特性を得ることができ、パワー用をはじめ、各種の産業機器に利用される整流素子、トランジスタ、スイッチ素子等の半導体装置として広く適用でき、その効果極めて大なるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による整流器(W<2Wbi)の単位セルを示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施例による整流器(W>2Wbi)の単位セルを示す断面図である。
【図3】図1または図2の単位セルを多数個配列した整流器の平面図である。
【図4】図1または図2の単位セルを多数個配列した整流器の平面図である。
【図5】図4の線X−Xに沿う断面図である。
【図6】整流器のVF −JF (順電圧降下−順電流)特性図である。
【図7】整流器のVR −JR (逆方向電圧−逆漏れ電流)特性図である。
【図8】整流器のW−JR (最近接距離−逆漏れ電流)特性図である。
【図9】整流器のW−VF (最近接距離−順電圧降下)特性図である。
【図10】整流器のW−trr(最近接距離−逆回復時間)特性図である。
【図11】本発明の第2実施例による整流器の単位セルを示す断面図である。
【図12】本発明の第2実施例による他の整流器の単位セルを示す断面図である。
【図13】本発明の第2実施例による別の整流器の単位セルを示す断面図である。
【図14】本発明の第2実施例によるさらに別の整流器の単位セルを示す断面図である。
【図15】整流器のθ−JR (角度−逆漏れ電流)特性図である。
【図16】整流器のVR −EJ (逆方向電圧−電界強度)特性図である。
【図17】本発明の第3実施例によるバイポ−ラトランジスタを示す断面図である。
【図18】本発明の第4実施例による静電誘導トランジスタを示す断面図である。
【図19】従来の整流器を示す断面図である。
【符号の説明】
1…金属電極
2…P+ 導電型半導体層
3…N導電型半導体層
4…N+ 導電型半導体層
5…オーミック金属電極
A…アノード
C…カソード
W…相互間の最近接距離
bi…零バイアス時の空乏層6の幅
F …順電圧
F …順電流
R …逆方向電圧
R …逆漏れ電流
trr…逆回復時間
θ…角度
e…接触面
f…PN接合上の接点
s…PN接合上の接線
D…接触面eからの深さ
B…ベース
E…エミッタ
G…ゲート
S…ソース
DR…ドレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一導電型半導体層を有する半導体基板と、該一導電型半導体層とPN接合を形成すると共に、前記一導電型半導体層の表面に該一導電型半導体層の複数個の露出した領域を画成するように設けられた逆導電型半導体層と、前記一導電型半導体層の複数個の露出した領域と前記逆導電型半導体層とに亘って設けられた金属電極とを備え、前記一導電型半導体層の複数個の露出した領域の中の一つの領域と前記金属電極とにより形成される接触面と前記逆導電型半導体層の底部との間の深さDと、前記接触面下にあって前記逆導電型半導体層の互いに対向する領域間の最近接距離Wとの関係をD≧0.5Wにすることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】 前記一導電型半導体層の比抵抗できまる零バイアス時の空乏層の幅をWbiとしたとき、前記最近接距離WはWbi≦W≦3Wbiであることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】 前記電極金属と前記一導電型半導体層との前記接触面、及び前記電極金属と前記逆導電型半導体層との前記接触面をオーミック接触、又はショットキバリア接触のいずれかに形成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】 前記接触面又は前記−導電型半導体層の表面と、前記空乏層の頂部を通り上記接触面又は前記露出した前記−導電型半導体層の表面と平行に伸びる直線と前記PN接合との交点を通る接線とのなす角度をθとしたとき、該θは60°≦θ≦120°で与えられることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】 前記半導体基板が高不純物濃度を有する−導電型半導体からなり、前記−導電型半導体層が低不純物濃度を有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の半導体整流器。
【請求項6】 前記半導体基板が高不純物濃度を有する逆導電型半導体からなるコレクタ、前記−導電型半導体層が低不純物濃度を有するベース、前記接触面を含む前記金属電極がエミッタとなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載のバイポーラトランジスタ。
【請求項7】 前記半導体基板が高不純物濃度を有する−導電型半導体からなるドレイン、前記−導電型半導体層が低不純物濃度を有するチャンネル、前記接触面を含む前記金属電極がゲートとなり、前記−導電型半導体層に設けられ,高不純物濃度を有する−導電型半導体からなるソースを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の静電誘導トランジスタ。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図19】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【図18】
image rotate


【公開番号】特開平5−136015
【公開日】平成5年(1993)6月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−58394
【出願日】平成4年(1992)3月16日
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)