説明

半導体試験装置および半導体試験方法

【課題】基準クロックの周波数よりも低い周波数で動作する素子を用いて信号特性の変化を検出することを目的とする。
【解決手段】DUTから出力された試験信号の良否判定のテストを行う半導体試験装置であって、基準クロックを分周した周波数で動作し、試験信号を入力して遅延量の異なる負の遅延を与えて検査信号として出力する複数の負側遅延素子6−1〜6−4および負側フリップフロップ7−1〜7−4と、基準クロックを分周した周波数で動作し、試験信号を入力して遅延量の異なる正の遅延を与えて検査信号として出力する複数の正側遅延素子6−5〜6−8および正側フリップフロップ7−5〜7−8と、各検査信号が試験信号を基準としてそれぞれ信号変化点を含むように遅延量を設定する遅延量設定部16と、検査信号の値に基づいて試験信号の信号特性の検査を行う信号特性検査部14と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被試験デバイスのテストを行う半導体試験装置および半導体試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被試験デバイス(DUT:Device Under Test)に所定の試験信号の入出力を行ってテストを行う半導体試験装置が従来から用いられている。半導体試験装置の概略構成は、例えば図8のようなものがあり、この図の半導体試験装置101は、DUTインターフェイス102とフロントエンドチップ103とイベントジェネレータチップ104とピンコントロールチップ105とカードコントローラ106とバックプレーンインターフェイス107とを備えて概略構成している。なお、図8において、DUTインターフェイスを「DIF」、フロントエンドチップを「FEC」、イベントジェネレータチップを「EGC」、ピンコントロールチップを「PCC」、カードコントローラを「CCT」、バックプレーンインターフェイスを「BPI」として示している。
【0003】
DUTインターフェイス102は被試験デバイスであるDUTに接続されているインターフェイスである。フロントエンドチップ103はDUTインターフェイス102とイベントジェネレータチップ104とに接続されており、DCソース回路111とDCメジャー回路112とドライバ回路113とコンパレータ回路114とを備えて概略構成している。なお、図8において、DCソース回路は「DSC」、DCメジャー回路は「DMC」、ドライバ回路は「DRC」、コンパレータ回路は「CPC」として示している。
【0004】
DCソース回路111は各種回路に対して電源供給を行う回路であり、DCメジャー回路112はDUTに対して電源を供給してテストを行うための回路である。ドライバ回路113はDUTに対して所定の試験信号を入力するための回路である。コンパレータ回路114はDUTから出力された試験信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する回路になる。
【0005】
イベントジェネレータチップ104はフロントエンドチップ103とピンコントロールチップ105とに接続されており、マスタークロックジェネレータ121とパターンジェネレータ122とタイミングジェネレータ123とレシーバ回路124とを備えて概略構成している。なお、図8において、マスタークロックジェネレータを「MCG」、パターンジェネレータを「PTG」、タイミングジェネレータを「TMG」、レシーバ回路を「RVC」として示している。
【0006】
マスタークロックジェネレータ121は基準クロックを発生する回路であり、パターンジェネレータ122はDUTに対して入力する試験信号のパターンを発生する回路である。タイミングジェネレータ123はタイミングを発生する回路であり、レシーバ回路124はDUTからの試験信号を受信する回路になる。このレシーバ回路124はコンパレータ回路114から出力されたデジタルの試験信号を入力している。
【0007】
ピンコントロールチップ105はイベントジェネレータチップ104とカードコントローラ106とに接続されており、ピンコントローラ131とキャプチャメモリ132とを備えて概略構成している。なお、図8において、ピンコントローラは「PCT」、キャプチャメモリは「CPM」として示している。
【0008】
ピンコントローラ131はレシーバ回路124から試験信号を入力して、当該試験信号に基づいてDUTの良否判定を行う。キャプチャメモリ132は試験信号の良否判定を行うときに基準となる期待値を記憶しており、ピンコントローラ131はキャプチャメモリ132に記憶されている期待値と入力した試験信号との比較を行うことによりDUTの良否判定を行う。
【0009】
以上のフロントエンドチップ103とイベントジェネレータチップ104とピンコントロールチップ105とは1枚のデジタルチャンネルカード内に搭載されており、カードコントローラ106が各デジタルチャンネルカードの制御を行う。バックプレーンインターフェイス108は各デジタルチャンネルカードのピンコントロールチップ105から出力される良否判定の結果を整理して図示しない制御装置に出力する。
【0010】
図9は主にレシーバ回路124およびその周辺回路を示している。レシーバ回路124は2つのフリップフロップ(フリップフロップ142Aおよびフリップフロップ142B)と2つの遅延素子(遅延素子143Aおよび遅延素子143B)と2つのイベントカウンタ(イベントカウンタ144Aおよびイベントカウンタ144B)とを備えて概略構成している。なお、図9において、フリップフロップを「FF」、遅延素子を「DL」として示している。
【0011】
マスタークロックジェネレータ121は図示しない制御装置からシステムクロックを入力しており、動作タイミングの基準となる基準クロックを生成および出力している。コンパレータ回路114から出力された試験信号は2つに分岐されてそれぞれフリップフロップ142Aおよびフリップフロップ142Bに入力されて一時的に記憶される。遅延素子143Aおよび第2の遅延素子143Bはそれぞれマスタークロックジェネレータ121から基準クロックを入力して、この基準クロックの周波数で動作する遅延素子である。遅延素子143Aは時間T0だけ遅延させてフリップフロップ142Aから試験信号を出力させ、遅延素子143Bは時間T1だけ遅延させてフリップフロップ142Bから試験信号を出力させる。
【0012】
イベントカウンタ144Aおよびイベントカウンタ144Bはそれぞれ所定の条件に合致した場合にのみ試験信号をピンコントローラ131に対して出力を行う。例えば、DUTの全テスト時間のうち所定の期間のみを有効期間とする場合、イベントカウンタ144Aおよびイベントカウンタ144Bに予め有効期間を設定しておき、当該有効期間に入力した試験信号のみをピンコントローラ131に対して出力するようにする。
【0013】
以上の構成におけるDUTの良否判定動作について説明する。DUTから出力された試験信号は、コンパレータ回路114においてアナログ信号からデジタル信号に変換されてレシーバ回路124に入力される。そして、図9に示すように、レシーバ回路124ではデジタルの試験信号が2つに分岐されて、フリップフロップ142Aとフリップフロップ142Aとに入力される。フリップフロップ142Aとフリップフロップ142Aとに入力された試験信号は、それぞれ異なる遅延量(T0とT1)が与えられてイベントカウンタ144Aとイベントカウンタ144Bとに入力される。そして、所定の有効期間の試験信号のみがピンコントローラ131に入力される。
【0014】
ピンコントローラ131はキャプチャメモリ132に記憶されている期待値とイベントカウンタ144Aおよびイベントカウンタ144Bから出力される試験信号とを比較して良否判定を行う。このとき、イベントカウンタ144Aとイベントカウンタ144Bとから出力される試験信号はそれぞれ異なる遅延量T0とT1とが与えられている。このため、同じ試験信号に対して異なるタイミングで良否判定がされることになるため、良否判定の基準となるストローブ信号が異なるタイミングで発生されている状態になる。
【0015】
以上により、DUTの良否判定のテストが行われる。なお、前述した技術のようにストローブ信号を異なるタイミングで発生させるような技術が例えば特許文献1に開示されている。この技術では、タイミング発生器から出力されるタイミング信号を2つに分岐させ、スキュー調整回路において異なる遅延を与えることにより、ストローブ信号のタイミングを異ならせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2002−286805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
半導体試験装置ではストローブ信号のタイミングで期待値と試験信号との比較を行ってDUTの良否が判定される。従って、DUTから出力される試験信号のタイミングとストローブ信号のタイミングとを一致させなければ正確なテストを行うことができない。例えば、図10(a)のように、試験信号の波形の立ち上がりおよび立ち下りの中間にストローブ信号が位置している場合には正確なテストを行うことができるが、図10(b)のように、波形の位相が正方向或いは負方向にシフトして、波形の立ち上がりまたは立ち下りのタイミングでストローブ信号を発生すると、正常な判定を行うことができなくなり、テストの正確性が失われる。この場合はテスト結果を無効にしなければならない。なお、図10において、ストローブ信号を「Strobe」として示しており、「Threshold」は試験信号が「0」か「1」であるかの閾値である。
【0018】
DUTには自己発熱や周辺温度の温度変動等により、位相や周波数等の信号特性が変化するという特有の問題がある。特に、近年のDUTは高機能化・高周波化が進んでいるため極めてシビアな信号特性が求められる一方で、発生する熱量が高くなるために信号特性が変化しやすいという問題を抱えており、テストの正確性という点で問題がある。そこで、図10のように1箇所でストローブ信号を発生させるのではなく、複数個所でストローブ信号を発生させることで、信号特性が変化しているか否かの検出が可能になる。
【0019】
DUTのテストを行うためのストローブ信号を基準として、その直前および直後にダミー用のストローブ信号を発生させ、各ストローブ信号を監視することにより、信号特性の変化を検出できる。このためには、少なくとも3つのストローブ信号を発生させなければならない。例えば、位相のずれを生じるような信号特性の変化であれば、時間軸の正方向と負方向との何れの方向にもずれを生じる可能性があるからである。また、信号特性の変化を高精度に検出する場合には、さらに多くのストローブ信号を発生させなければならない。
【0020】
図8および図9で説明した技術ではタイミングの異なる複数のストローブ信号を発生させるために2つの遅延手段(フリップフロップおよび遅延素子)を設けており、当該遅延手段の個数をさらに多く設けることにより、信号特性の変化を検出することはできる。また、特許文献1の技術であれば、複数のタイミング信号に対してスキュー調整回路がそれぞれ異なる遅延量を与えることにより、信号特性の変化を検出することは可能である。ただし、遅延手段にせよ、スキュー調整回路にせよ、それぞれマスタークロックジェネレータ或いはタイミング発生器により制御されており、つまり基準クロックの周波数で動作していることになる。
【0021】
前述したようにDUTの高機能化・高周波化に伴い、半導体試験装置の基準クロックの動作周波数が高速になっている。このため、遅延手段或いはスキュー調整回路の動作周波数も高いものになり、各回路の消費電力が大きくなっている。特に、近年のDUTは著しく高機能・高周波になっており、しかも大量のDUTを短時間で試験を行わなければならないことから、半導体試験装置の基準クロックは飛躍的に高速になっており、1つの素子に必要な消費電力は極めて大きくなる。そして、信号特性の変化を検出するために多くの素子を用いられると、或いはスキュー調整回路による遅延量の設定個数を増加させると、膨大な電力が消費されることになる。また、遅延手段或いはスキュー調整回路に高速動作可能な素子を用いているため、回路が複雑化および大規模化するという問題も生じる。さらに、高周波で動作する素子は低い周波数で動作する素子よりも不良率が高くなるため、高周波で動作する素子数の増加により不良率が著しく高くなるという問題も起こる。
【0022】
そこで、本発明は、基準クロックの周波数よりも低い周波数で動作する素子を用いて信号特性の変化を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1の半導体試験装置は、被試験デバイスから出力された試験信号の良否判定のテストを行う半導体試験装置であって、基準クロックを分周した周波数で動作し、前記試験信号を入力して遅延量の異なる負の遅延を与えて検査信号として出力する複数の負側遅延手段と、基準クロックを分周した周波数で動作し、前記試験信号を入力して遅延量の異なる正の遅延を与えて検査信号として出力する複数の正側遅延手段と、前記負側遅延手段と前記正側遅延手段とにより遅延された前記検査信号が前記試験信号を基準としてそれぞれ信号変化点を含むように前記負側遅延手段と前記正側遅延手段との遅延量を設定する遅延量設定手段と、前記検査信号の値に基づいて前記試験信号の信号特性の検査を行う検査手段と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この半導体試験装置によれば、試験信号を基準として負側および正側において複数の異なるタイミングで検査信号を判定することで、信号特性の変化を検査することができるようになる。負側および正側遅延手段に用いられる素子の動作周波数は基準クロックを分周したものであるが、正方向および負方向に検査信号を遅延させていることから、正確に信号特性の変化を検出できる。そして、低い周波数で動作させることで、消費電力の低減、回路の簡略化および小規模化、不良率の低下等の効果が得られるようになる。
【0025】
本発明の請求項2の半導体試験装置は、請求項1記載の半導体試験装置において、前記検査手段は、負の遅延を与えられた各検査信号と正の遅延を与えられた各検査信号とのうち何れか一方の各検査信号が全て同じ値であり、且つ前記試験信号およびその前後の試験信号からなる3ビットの試験信号が連続して変化しているか否かを検査する第1の特性検査手段と、前記3ビットの試験信号に対応する各検査信号の正常値と前記遅延手段から出力された各検査信号の値とが一致しているか否かを検査する第2の特性検査手段と、を備えていることを特徴とする。
【0026】
この半導体試験装置によれば、第1の特性検査手段と第2の特性検査手段とにより信号特性の検査を行うことができるようになる。第1の特性検査手段で予め検査の必要がないパターンを除外していることで、第2の特性検査手段における判定処理を低減させることができるようになる。
【0027】
本発明の請求項3の半導体試験装置は、請求項1記載の半導体試験装置において、前記負側遅延手段から出力される各検査信号を入力し、これらの検査信号の値に変化があるときには、前記検査手段に検査信号を出力しないように制御する負側信号出力制御手段と、前記正側遅延手段から出力される各検査信号を入力し、これらの検査信号の値に変化があるときには、前記検査手段に検査信号を出力しないように制御する正側信号出力制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0028】
この半導体試験装置によれば、負側信号出力制御手段と正側信号出力制御手段とは信号特性の検査を行う必要のない場合には、検査信号を出力しないように制御している。検査信号に変化がある場合には信号変化点を見失っていないことを示しているため、不要な場合に検査手段による検査を行わせないことで、検査手段の処理負担の軽減を図るようにしている。
【0029】
本発明の請求項4の半導体試験装置は、請求項1記載の半導体試験装置において、前記遅延量設定手段は、前記試験信号の1パルス分のパルス幅を前記負側遅延手段および前記正側遅延手段の個数分に均等に分割した間隔ごとに前記負側遅延手段と前記正側遅延手段との遅延量を設定する第1の遅延量設定手段と、この第1の遅延量設定手段により設定された遅延量の遅延が与えられた前記検査信号のうち前記負側遅延手段の各検査信号と前記正側遅延手段の各検査信号とのそれぞれにおいて信号変化点を含む前後の検査信号間を前記負側遅延手段の個数と前記正側遅延手段の個数とで分割した間隔ごとに前記負側遅延手段と前記正側遅延手段との遅延量を設定する第2の遅延量設定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0030】
この半導体試験装置によれば、第1の遅延量設定手段により設定された間隔をさらに第2の遅延量設定手段により信号変化点を含むように狭小に設定することが可能になる。信号特性の検査範囲を絞ることで検査信号間の遅延間隔を極めて短く設定できるため高精度に検査を行うことができ、且つ検査範囲を限定的に絞り込んでいるため、検査信号の個数もそれほど多く設ける必要がなくなる。
【0031】
本発明の請求項5の半導体試験装置は、請求項1記載の半導体試験装置において、基準クロックの周波数を4分周以上に分周した周波数で前記遅延手段を動作させることを特徴とする。
【0032】
この半導体試験装置によれば、遅延手段の動作周波数を4分周以上に低くすることができるため、消費電力の低減効果、回路の簡略化および小規模化、不良率の低下といった効果を極めて高く奏するようになる。4分周以上にすることにより、全ての波形の立ち上がりおよび立ち下りを検査することができなくなるが、信号特性の変化は徐々に生じるものであるから、一部の波形の立ち上がりおよび立ち下りを定期的に検査することで、十分に信号特性の変化を検出できるようになる。
【0033】
本発明の請求項6の半導体試験装置は、請求項1記載の半導体試験装置において、前記試験信号を2つの異なる閾値で判定したH側試験信号とL側試験信号とをそれぞれ前記負側遅延手段と前記正側遅延手段とに対して選択的に入力させるための複数のスイッチを備え、前記検査手段は、前記H側試験信号と前記L側試験信号とのそれぞれについて生成された各検査信号の値の違いに基づいて前記試験信号の波形の立ち上がり時間と立ち下り時間とを求めることを特徴とする。
【0034】
この半導体試験装置によれば、閾値の異なるH側試験信号とL側試験信号との検査信号を比較して、両者の値の違いに基づいて試験信号の波形の立ち上がり時間および立ち下り時間を得ることができるようになる。これにより、DUTの種類ごとに定められている規定値内に立ち上がり時間および立ち下り時間が満たしているか否かによって、DUTの良否判定を行うことができるようになる。
【0035】
本発明の請求項7の半導体試験方法は、被試験デバイスから出力された試験信号のテストを行う半導体試験方法であって、基準クロックの周波数で動作するマスターストローブを基準として、正および負方向において前記基準クロックを分周した周波数で動作する複数のシャドウストローブを、それぞれ信号変化点を含むように設定する工程と、前記シャドウストローブの値に基づいて前記試験信号の信号特性の検査を行う工程と、を有していることを特徴とする。
【0036】
この半導体試験方法によれば、マスターストローブの前後にそれぞれ設けた複数のシャドウストローブが波形の立ち上がりおよび立ち下りを監視することで、信号特性の変化を検出することができるようになる。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、複数の遅延手段によりそれぞれ異なるタイミングで遅延させた複数の検査信号を、試験信号を基準として正および負方向に信号変化点を含むように異なった遅延量で遅延させることにより、信号特性の変化を検出できる。遅延手段は基準クロックを分周した周波数で動作させていることにより、消費電力の低減、回路の簡略化および小規模化、不良率の低下といった効果が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】半導体試験装置の一部の構成を示すブロック図である。
【図2】ピンコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】波形無変位テーブルの内容を示す図である。
【図4】遅延量設定工程を説明するためのタイムチャートである。
【図5】信号特性の検査を説明するためのタイムチャートである。
【図6】変形例における半導体試験装置の一部構成を示すブロック図である。
【図7】変形例の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】半導体試験装置の全体構成を示すブロック図である。
【図9】従来の半導体試験装置の一部構成を示すブロック図である。
【図10】従来の試験信号の良否判定を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の半導体試験装置のレシーバ回路1およびその周辺回路としてピンコントローラ2とキャプチャメモリ3とマスタークロックジェネレータ4とを示している。図1の構成は図8で示す半導体試験装置101の一部の構成である。このうちキャプチャメモリ3およびマスタークロックジェネレータ4は図8のキャプチャメモリ132およびマスタークロックジェネレータ121と同じであるが、レシーバ回路1とピンコントローラ2とは従来のものとは異なっている。なお、本発明の半導体試験装置がテストを行うDUTとしては、メモリやIC、LSI等の任意の被試験デバイスを適用することができる。また、図1において、マスタークロックジェネレータを「MCG」として示している。
【0040】
レシーバ回路1は、分周器5と遅延素子群6とフリップフロップ群7とイベントカウンタ群8とを備えて概略構成している。なお、図1において、分周器は「DIV」、遅延素子は「DL」、フリップフロップは「FF」として示している。
【0041】
マスタークロックジェネレータ4は図示しない制御装置からシステムクロックを入力して基準クロックを生成および出力しているものであり、図8で説明したマスタークロックジェネレータ121と同じものである。分周器5はマスタークロックジェネレータ4から基準クロックを入力して、そのままの周波数のクロック(図1では「1/1」として示している:以下、基準クロックとする)と2分周したクロック(図1では「1/2」として示している:以下、分周クロックとする)との2つのクロックを出力している。
【0042】
遅延素子群6は9個の遅延素子から構成されており、各遅延素子にはそれぞれ異なる遅延量が設定される。このうち分周器5から基準クロックを入力している遅延素子を基準遅延素子6−0とし、それ以外の8個の遅延素子のうち4個の遅延素子を負側遅延素子6−1〜6−4、残りの4個の遅延素子を正側遅延素子6−5〜6−8とする。負側遅延素子6−1〜6−4および正側遅延素子6−5〜6−8は分周器5から分周クロックを入力しており、基準クロックの半分の周波数で動作を行っている。なお、以下において、基準遅延素子6−0と負側遅延素子6−1〜6−4と正側遅延素子6−5〜6−8との総称を単に遅延素子とする。
【0043】
フリップフロップ群7は9個のフリップフロップから構成されており、何れのフリップフロップも一時的に信号を記憶する記憶素子である。これらうち基準遅延素子6−0に接続されているフリップフロップを基準フリップフロップ7−0とし、負側遅延素子6−1〜6−4に接続されているものを負側フリップフロップ7−1〜7−4、正側遅延素子6−5〜6−8に接続されているものを正側フリップフロップ7−5〜7−8とする。なお、以下において、基準フリップフロップ7−0と負側フリップフロップ7−1〜7−4と正側フリップフロップ7−5〜7−8との総称を単にフリップフロップとする。
【0044】
フリップフロップ群7には図8で説明したコンパレータ回路114からデジタルの試験信号が入力される。この試験信号は分岐されてフリップフロップ7−0〜7−8に入力される。フリップフロップ7−0〜7−8から出力される信号は遅延素子6−0〜6−8により所定の遅延が与えられており、その遅延量はそれぞれ異なっている。また、フリップフロップ7−0〜7−8はそれぞれ遅延素子6−0〜6−8と同じ周波数で動作しており、基準フリップフロップ7−0は基準クロックの周波数で動作し、それ以外のフリップフロップ7−1〜7−8は分周クロックの周波数で動作する。
【0045】
基準遅延素子6−0が与える遅延量はT0であり、基準フリップフロップ7−0は試験信号をT0だけ遅延させて出力する。基準フリップフロップ7−0から出力される試験信号はDUTの良否判定を行うために用いられる信号である。遅延量T0は任意の値に設定可能になっているため、DUTの種類等に応じてユーザが適宜の遅延量を設定する。遅延量T0を適宜に設定することにより、信号の判定タイミングを自由に設定できる。信号の判定を行うストローブ信号は固定されているが、試験信号に遅延を与えることにより相対的にストローブ信号のタイミングを変化させることができる。これにより、ストローブ信号を任意のタイミングで発生させることができるようになる。
【0046】
負側遅延素子6−1〜6−4の与える遅延により、試験信号は時間T1〜T4の遅延量が与えられて出力される。負側フリップフロップ7−1〜4から出力される試験信号はDUTの良否判定を行うための信号ではなく、信号特性の変化の検査を行うための信号になる。以下、試験信号と区別するためにこれらの信号を検査信号とする。負側遅延素子6−1〜6−4は基準遅延素子6−0よりもそれぞれ時間軸に対して早くなる方向に対して遅延(負の遅延)を発生させる。従って、T1〜T4とT0との関係は「T1〜T4<T0」となる。なお、信号特性の変化とは、自己発熱や温度変動等による位相のずれや周波数の変化等をいい、以下においては、位相にずれを生じている場合について説明する。
【0047】
正側遅延素子6−5〜6−8の与える遅延により、試験信号は時間T5〜T8の遅延量が与えられて出力される。正側フリップフロップ7−5〜7−8から出力される信号も負側フリップフロップと同様に信号特性の変化の検査を行うための検査信号となる。正側遅延素子6−5〜6−8は基準遅延素子6−0よりもそれぞれ時間軸に対して遅くなる方向に対して遅延(正の遅延)を発生させる。従って、T5〜T8とT0との関係は「T5〜T8>T0」となり、「T1〜4<T0<T5〜8」の関係になる。
【0048】
図1に示すように、遅延素子群6の各遅延素子とフリップフロップ群7の各フリップフロップとは1対1で対応している関係になり、遅延素子とフリップフロップとにより信号を遅延させる遅延手段を構成する(遅延素子6−1〜6−4とフリップフロップ7−1〜7−4とにより負側遅延手段が構成され、遅延素子6−5〜6−8とフリップフロップ7−5〜7−8とにより負側遅延手段が構成される)。T0〜T8までの異なる遅延量を設定することにより、試験信号と各検査信号とをそれぞれ異なる時間で遅延させている。前述したように、検査信号に対してそれぞれ異なる遅延を与えることにより、相対的にタイミングの異なる9個のストローブ信号を発生させることが可能になる。なお、遅延素子とフリップフロップとにより遅延手段を構成しているが、信号に対して遅延を与えるものであれば任意の遅延手段を用いてもよい。
【0049】
イベントカウンタ群8には基準イベントカウンタ8−0と負側イベントカウンタ8−1と正側イベントカウンタ8−2との3つのイベントカウンタが備えられている。このうち、基準イベントカウンタ8−0は基準フリップフロップ7−0から出力される1ビットの試験信号を入力する。また、負側イベントカウンタ8−1は負側フリップフロップ7−1〜7−4から出力される各検査信号(4ビットの検査信号)を入力し、正側イベントカウンタ8−2は正側フリップフロップ7−5〜7−8から出力される各検査信号(4ビットの検査信号)を入力する。なお、以下において、基準イベントカウンタ8−0と負側イベントカウンタ8−1と正側イベントカウンタ8−2とを総称して単にイベントカウンタとする。
【0050】
イベントカウンタ8−0〜8−2は試験信号、検査信号の値が「0」であるのか「1」であるのかを判定する。イベントカウンタ8−0〜8−2は同一のタイミングでストローブ信号を発生している。前述したように、試験信号と各検査信号とはそれぞれ異なった遅延量T0〜T9が与えられており、相対的にそれぞれが1つの信号に対してT0〜T9のタイミングでストローブ信号を発生することができるようになる。イベントカウンタ8−0〜8−2は、それぞれのストローブ信号のタイミングで信号の判定を行う。
【0051】
また、イベントカウンタ8−0〜8−2は所定の条件に合致した場合にのみピンコントローラ2に対して試験信号、検査信号の出力を行う信号出力制御手段である。イベントカウンタ8−1は負方向の検査信号の出力制御を行う負側信号出力制御手段であり、イベントカウンタ8−2は正方向の検査信号の出力制御を行う正側信号出力制御手段である。また、前記の所定の条件としては、背景技術の箇所で説明したように、所定の有効期間内のみを判定の対象とする場合であり、この場合には有効期間外の試験信号、検査信号の出力は行わない。この有効期間は予めイベントカウンタ8−0〜8−2に設定されている。
【0052】
イベントカウンタ8−1〜8−2については、それぞれに入力する検査信号が全て同じ値になったときにのみ検査信号の出力を行うようにしている。イベントカウンタ8−1には負側フリップフロップ7−1〜7−4から合計4ビットの検査信号が入力され、イベントカウンタ8−2には正側フリップフロップ7−5〜7−8から合計4ビットの検査信号が入力されているため、それぞれが「1111」または「0000」になったときにのみ検査信号の出力が行われる。このとき、負側イベントカウンタ8−1と正側イベントカウンタ8−2とのうち何れか一方の検査信号の全ビットが同じになったときに、他方のイベントカウンタからも検査信号の出力を行うようにする。
【0053】
ピンコントローラ2は試験信号に基づくDUTの良否判定、検査信号に基づく信号特性の検査、遅延素子6−0〜6−8に設定する遅延量の設定等の制御を行う。図2(a)に示すように、ピンコントローラ2は、信号入力部11と良否判定部12と試験信号記憶部13と信号特性検査部14とテーブル情報記憶部15と遅延量設定部16とを備えて概略構成している。信号入力部11は基準イベントカウンタ8−0から1ビットの試験信号を入力しており、また負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2からそれぞれ4ビットの検査信号を入力している。
【0054】
良否判定部12はDUTの良否判定を行う。キャプチャメモリ3には期待値が記憶されており、良否判定部12は信号入力部11が入力した試験信号とキャプチャメモリ3から読み出した期待値とを比較することによりDUTの良否判定を行っている。そして、良否判定の結果が「PASS(良)」または「FAIL(否)」の情報として背景技術で説明したカードコントローラ106に出力される。また、試験信号記憶部13は信号入力部11が入力した試験信号を順次記憶していく。
【0055】
信号特性検査部14は試験信号の位相のずれ(信号特性の変化)を検査する検査手段である。図2(b)に示すように、信号特性検査部14は第1の特性検査部21と第2の特性検査部22とを備えており、これら2つの特性検査部により信号特性の検査が行われる。第1の特性検査部21は試験信号記憶部13が記憶している試験信号の中から連続した3ビット分の試験信号の情報を取得し、また信号入力部11から各検査信号を入力して、これらの情報に基づいて位相にずれを生じているか否かの第1の特性検査を行う。また、第2の特性検査部22は信号入力部11から各検査信号を入力して、試験信号記憶部13から連続した3ビット分の試験信号の情報を取得し、またテーブル情報記憶部15に記憶されている後述する波形無変位テーブルを参照して、位相にずれを生じているか否かの第2の特性検査を行う。
【0056】
テーブル情報記憶部15は図3で示すような波形無変位テーブルを記憶している記憶部になる。波形無変位テーブルは連続した3ビットの試験信号に対応して、各検査信号の正常値を記憶しているテーブルであり、第2の特性検査のときに用いられる。
【0057】
遅延量設定部16は遅延素子群6の各遅延素子6−0〜6−8の遅延量T0〜T8を設定するための遅延量設定手段である。遅延量T0〜T8のうちT0については、ユーザが自由に設定可能な値になっているが、T1〜T8については試験信号の波形の立ち上がりおよび立ち下りを検出して信号変化点を含むように自動的に遅延量設定部16が設定する。なお、遅延量設定部16は以下の2つの遅延量設定工程(第1の遅延量設定工程および第2の遅延量設定工程)を行うものであり、各工程を行うための第1の遅延量設定部16−1と第2の遅延量設定部16−2との2つの設定部を備えている。
【0058】
以上の構成における動作について説明する。図4および図5におけるタイムチャートは試験信号の一例を示しており、この例では「0」と「1」とが繰り返されている波形になっている。勿論、「0」や「1」が連続する波形になることもある。これらの図において、マスターストローブ(図中では「Master Strobe」として示している)とスレーブストローブ(図中では「Slave Strobe」として示している)とは両者ともイベントカウンタ8−0で判定される試験信号のストローブ信号を示している。一方、シャドウストローブ(図中では「Shadow Strobe」として示している)は負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2で判定されるそれぞれ4個の検査信号のストローブ信号を示している。なお、以下の説明および図面において、マスターストローブとスレーブストローブとシャドウストローブを「0」または「1」として示しているが、これは正確には各ストローブが判定した値を示す。
【0059】
シャドウストローブは検査信号の判定を行うストローブ信号であるため、試験信号を2分周した周波数で発生するストローブ信号になる。このため、試験信号のストローブ信号(つまり、マスターストローブおよびスレーブストローブ)の2回に1回の割合で各シャドウストローブが発生する。このシャドウストローブの発生を伴う試験信号のストローブ信号をマスターストローブとし、シャドウストローブの発生を伴わない試験信号のストローブ信号をスレーブストローブとする。
【0060】
以上の前提において、最初にシャドウストローブの発生タイミングの遅延量設定工程が行われる。シャドウストローブの発生タイミングは遅延素子群6の遅延素子6−1〜6−8の遅延量T1〜T8になる。このため、遅延量設定部16は各遅延量を設定する。なお、遅延量T0は既にユーザ等により任意の値に決定されているため、遅延量設定部16が設定を行うことはない。前記の遅延量設定工程は、シャドウストローブの設定は第1の遅延量設定工程と第2の遅延量設定工程との2つの工程に分かれている。
【0061】
第1の遅延量設定工程では、図4(a)に示すように、マスターストローブを基準としてパルス幅全体を均等に分割するように8個のシャドウストローブの設定を行う。マスタークロックジェネレータ4が生成する基準クロックは既知であるため、パルス幅も既知である。従って、このパルス幅を8で除算した間隔となるように8個のシャドウストローブを均等に分割する。そして、マスターストローブを基準として、負方向に4個のシャドウストローブ(遅延量T1〜T4のシャドウストローブ)を配置し、正方向に4個のシャドウストローブ(遅延量T5〜T8のシャドウストローブ)を配置する。図4(a)に示すように、マスターストローブは直前(負方向)のスレーブストローブと直後(正方向)のスレーブストローブとの間の波形の立ち上がりと立ち下りとの中間地点に位置する。以上により第1の遅延量設定工程が完了する。
【0062】
次に、第2の遅延量設定工程は信号変化点を含むように負方向および正方向における各シャドウストローブの間隔を圧縮する。このために、試験信号の波形の立ち上がりおよび立ち下りにおいて、負方向のシャドウストローブおよび正方向のシャドウストローブがそれぞれ信号変化点を含むように遅延量T1〜T8を調整する。信号変化点とは、基準クロックの前後のタイミングにおいて波形の立ち上がりおよび立ち下りにおいて信号が「0」から「1」或いは「1」から「0」に変化する点である。図3および図4に示すスレッシュホールド(図中ではThresholdとして示している)を閾値として、このスレッシュホールドと波形との交点が信号変化点になる。
【0063】
図4(a)に示すように、負方向の4つのシャドウストローブは「0011」になっており、正方向の4つのシャドウストローブは「1100」になっている。負方向の4つのシャドウストローブのうち2番目と3番目とでシャドウストローブにおいて信号が変化しており、この間において波形が立ち上がっていることを認識できる。同様に正方向の4つのシャドウストローブのうち2番目と3番目との信号が変化しているため、この間において波形が立ち下がっていることを認識できる。
【0064】
そこで、第2の遅延量設定工程では、波形の立ち下りおよび立ち下りにおいてそれぞれシャドウストローブの個数分以下に均等に分割するように調整する。つまり、正方向および負方向の2番目と3番目とのシャドウストローブの間隔は既知であり(パルス幅を8で除算した間隔)、この間隔をさらにそれぞれ4で除算した間隔以下に調整することで、図4(a)の間隔よりもシャドウストローブの間隔はさらに狭小な間隔になる。これが図4(b)の状態である。
【0065】
なお、この第2の遅延量設定工程において、波形の立ち下りおよび立ち下りにおいてそれぞれシャドウストローブの間隔を均等に分割しているが、均等ではなく任意の間隔で分割するようにしてもよい。第1の遅延量設定工程で検査範囲がかなり絞られており、この中においてはユーザが決定した任意の間隔でシャドウストローブを設定できる。このときのシャドウストローブの間隔はユーザの設定した判定基準に基づいて算出される。位相のずれ(信号特性の変化)はユーザが任意に設定したい要請があるため、この点で任意に間隔を設定することは有効である。
【0066】
第1の遅延量設定工程だけでも信号変化点が必ず含まれるようになっている。ただし、シャドウストローブ間の間隔が比較的大きくなっているため、各シャドウストローブ間における信号変化を検査することができず、高精度に信号特性の変化を検出できない。そこで、第2の遅延量設定工程により、さらにシャドウストローブ間の間隔を狭小にすることで、検査する範囲を絞って詳細にすることができ、高精度に信号特性の変化を検出することができる。これにより、微小に位相がずれた場合でも検出可能になる。このとき、第1の遅延量設定工程において信号変化点を挟んだ隣接したシャドウストローブ間において第2の遅延量設定工程の調整作業を行っているため、正方向および負方向においてそれぞれシャドウストローブが信号変化点を外すことはない。なお、シャドウストローブを多数設けることにより各シャドウストローブ間の間隔を狭小にできる場合や高い検出精度が必要とされない場合等は、第2の遅延量設定工程を省略することもできる。
【0067】
次に、位相のずれの検出について説明する。位相にずれを生じたことを検出したときには、DUTの良否判定の結果の正確性を欠いたものになる。従って、位相のずれを検出したときには、DUTの良否判定の結果を無効にして、位相の調整を行った後に再度DUTの良否判定を行うようにしなければならない。ここでは、良否判定の結果が有効あるのか無効であるのかの検査について説明する。
【0068】
図5(a)および(b)は位相にずれを生じている場合について説明している。図5(a)は図4(b)の状態から微小な位相のずれを生じている場合を示しており、図5(b)は図5(a)の状態からさらに位相のずれを生じている場合を示している。図5(a)および(b)において破線で示しているものは、位相にずれを生じていない状態での波形(つまり、図4(b)の波形)である。
【0069】
図5(a)は波形の位相が負方向に微小にずれを生じており、このため負方向のシャドウストローブが「0111」に変化し、正方向のシャドウストローブが「1000」に変化している。この状態は位相にずれが生じていることを示しているが、この時点では許容範囲であるとして位相のずれとして認識しない。図5(b)はさらに位相が負方向にずれを生じているため、負方向のシャドウストローブが「1111」に変化し、正方向のシャドウストローブが「0000」に変化している。負側イベントカウンタ8−1は「1111」であることを検出し、正側イベントカウンタ8−2は「0000」であることを検出する。各ビットはそれぞれ全て同じ値になっているため、この時点でピンコントローラ2に対してそれぞれ検査信号(「1111」および「0000」)を出力する。「0000」或いは「1111」は値が変化していないことを示しており、以下において、4個のシャドウストローブの全ての値が同じである検査信号のことを無変位データとする。
【0070】
負方向または正方向のシャドウストローブが無変位データになったときには、信号変化点を見失っており、位相にずれが生じている可能性を示唆している。このため、検査信号を入力したときには、ピンコントローラ2の信号特性検査部14においてシャドウストローブの判定が行われる。なお、ピンコントローラ2に検査信号が入力されない場合には位相のずれの検出は行われない。
【0071】
シャドウストローブが無変位データを示すのは、位相にずれを生じている場合の他に、そもそも試験信号の値が変化していない場合もある。従って、信号特性検査部14では無変位データを入力したとしても、即時に位相にずれを生じているとは判定せず、信号特性が変化していない場合を除外する処理を行った後に、初めて位相にずれを生じていると判定する。このために、第1の特性検査工程と第2の特性検査工程との2つの工程からなる特性判定工程を行う。
【0072】
第1の特性検査工程は図2(b)で示した第1の特性検査部21が行う。第1の特性検査部21は試験信号記憶部13から連続した3ビット分の試験信号の情報(以下、試験信号データとする)を取得する。試験信号データはマスターストローブとスレーブストローブとのタイミングで判定された試験信号の情報であり、第1の特性検査部21はマスターストローブを基準として直前および直後のスレーブストローブの3ビット分を得るようにして試験信号データを取得する。
【0073】
第1の特性検査部21が取得した試験信号データの3ビットが連続して変化している場合(つまり、「010」または「101」となっている場合)には、必ず試験信号に変化を生じているため、本来であれば負側イベントカウンタ8−1または正側イベントカウンタ8−2から無変位データが出力されることはない。それにもかかわらず、無変位データを出力しているのは、位相にずれを生じているためである。これにより、試験信号の値が変化していない場合を除外でき、第1の特性検査部21は位相にずれを生じていると認識する。そして、DUTの良否判定の結果を無効にする。
【0074】
第1の特性検査工程はあくまでも試験信号データが連続している場合を除外したものであって、これをクリアした場合であっても、なお位相にずれを生じていない可能性がある。そこで、第2の特性検査部22が第2の特性検査工程を行う。第2の特性検査部22は、第1の特性検査部21が第1の特性判定工程をクリアした場合にのみ処理を開始する。第2の特性検査部22は、信号入力部11から無変位データを入力しており、また試験信号記憶部13から前述した試験信号データを取得する。そして、テーブル情報記憶部15の波形無変位テーブルを参照する。
【0075】
波形無変位テーブルについて図3を参照して説明する。波形無変位テーブルは第1のテーブル(同図(a))と第2のテーブル(同図(b))と第3のテーブル(同図(c))との3つのテーブルから構成されている。第1のテーブルは試験信号データの3ビットのビットパターンをテーブル化したものであり、パターンごとにA〜Fの識別子を付している。第1のテーブルにおいて、「Slave Strobe(Prior)」はマスターストローブの直前のスレーブストローブを示しており、「Slave Strobe(After)」はマスターストローブの直後のスレーブストローブを示している。
【0076】
第1のテーブルは3ビットのビットパターンを示しているため、本来なら8パターンを持っていなければならないが、第1の特性検査工程において連続して値が変化している場合を既に除外している。このため、第2の特性検査工程において判定の必要がないため、「010」および「101」のパターンを除外した6パターンを持たせている。つまり、第1のテーブルは無変位データが含まれるパターンを示していることになる。
【0077】
第2のテーブルは第1のテーブルのビットパターンに対応した負方向の4個のシャドウストローブの正常値を示している。また、第3のテーブルは第1のテーブルのビットパターンに対応した正方向の4個のシャドウストローブの正常値を示している。第2のテーブルおよび第3のテーブルはそれぞれTopとBottomとの2ビットずつに分けている。Topとは負方向の2ビットであり、Bottomとは正方向の2ビットである。図3のテーブルからも明らかなように、第2のテーブルのBottomの2ビットと第3のテーブルのTopの2ビットとは同じ値を示しており、これは第1のテーブルのマスターストローブのビットを2つ並べたものと同じになっている。
【0078】
図3において、例えば、第1のテーブルのパターンCの場合には、直前のスレーブストローブとマスターストローブとの間で信号が「0」から「1」に変化しているため、負方向のシャドウストローブは「0011」とならなければならず、またマスターストローブと直後のスレーブストローブとの間では信号が「1」のまま変化しないため、正方向のシャドウストローブは「1111」とならなければない。なお、このときの「1111」が無変位データになる。
【0079】
第2の特性検査部22は、無変位データを入力しているタイミングに合致するマスターストローブを基準として直前および直後の試験信号データを試験信号記憶部13から読み出して、テーブル情報記憶部15に記憶されている第1のテーブルを参照する。例えば、試験信号データが「010」であればパターンCを認識する。そして、第2のテーブルおよび第3のテーブルのパターンCを参照して、それぞれ「0011」、「1111」を認識する。第2の特性検査部22は入力した検査信号のシャドウストローブのうち負方向のシャドウストローブを第2のテーブルのビットパターンと比較し、正方向のシャドウストローブを第3のテーブルのビットパターンと比較する。
【0080】
例えば、負方向のシャドウストローブが「0011」であり、正方向のシャドウストローブが「1111」である場合には、各シャドウストローブと波形無変位テーブルのビットパターンとが一致している。この場合には、各シャドウストローブは正常値になっているため、位相が変化しているとは判定しない。一方、一致しない場合には正常でないビットパターンを検出しており、位相に変化が生じていると判定する。
【0081】
負方向または正方向シャドウストローブの何れか一方または両方が無変位データになっている場合には位相に変化が生じている場合と試験信号が変化していない場合とがあるが、波形無変位テーブルとの比較を行うことにより、試験信号が変化していない場合を完全に除外することができ、最終的に位相が変化しているのか否かを認識できる。以上が第2の特性検査工程である。この工程により位相が変化していると判定した場合にはDUTの良否判定の結果を無効にする。
【0082】
以上において、位相の変化を検出しているのは、正方向および負方向に設けたそれぞれ4個のシャドウストローブであり、合計8個のシャドウストローブが必要になる。8個のシャドウストローブを発生すべく、8個の遅延素子6−1〜6−8とフリップフロップ7−1〜7−8とを設けている。背景技術で説明したように、高速で動作する素子(遅延素子およびフリップフロップ)の個数が多くなると、消費電力の増大化や回路の複雑化・大規模化、不良率の増加といった問題がある。
【0083】
本発明では、シャドウストローブを発生するための遅延素子6−1〜6−8とフリップフロップ7−1〜7−8とはそれぞれ分周器5により2分周させた分周クロックにより動作させている。つまり、遅延素子6−1〜6−8とフリップフロップ7−1〜7−8とはそれぞれ基準クロックの半分の周波数で動作するものを用いることができる。一般に、素子の動作周波数が半分になると、その消費電力は飛躍的に低下する。素子の消費電力をPとし、動作周波数をF、負荷容量をCL、電源電圧をVDD、動作率をαとしたときに、「P=α×CL×VDD×F」の式が成立することが知られている。
【0084】
従って、前記のCL、VDD、Fの値のうち何れか1つでも低くできれば全体としての消費電力は低下する。このとき、素子の動作周波数Fが低速になれば、少なくとも前記のVDDの値は低くなる。特に、VDDは二乗に比例しているため、VDDを低くすることによる消費電力の低減効果は大きくなる。例えば、動作周波数Fが1/2のときには、電源電圧VDDを20%程度は低くできるため、動作率α=1とし、負荷容量CLが一定の場合には、全体として消費電力Pはおおよそ1/3に低減される。また、負荷容量CLも動作周波数に伴って低下し、この他に漏れ電流等のファクターによってもさらに消費電力Pは低減される。
【0085】
このため、動作周波数Fが半分の素子を用いることにより、飛躍的な消費電力の低減を図ることができる。また、消費電力が極めて少ない遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8を多数設けたとしても、全体としての消費電力の低減効果を得ることができる。
【0086】
ここで、遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8の周波数が半分になることにより、シャドウストローブの発生タイミングはマスターストローブやスレーブストローブの発生タイミングの1/2になることは前述したとおりである。この場合であっても、シャドウストローブを正方向および負方向にそれぞれ設けているため、波形の全ての立ち上がりおよび立ち下りの信号変化点が含まれるようになっている。従って、遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8の動作周波数が基準クロックの半分の周波数であったとしても、正確に位相のずれの検査を行うことができる。しかも、動作周波数を半分にしたことにより、消費電力の低減効果だけではなく、回路の簡略化・小規模化が図られ、低速な素子を使用していることにより装置全体の不良率を低下させることができるようになる。
【0087】
なお、遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8を基準クロックの周波数で動作させると、シャドウストローブの個数を半分にしても本発明と同様に位相のずれを検出できる。つまり、マスターストローブとスレーブストローブとの両方のタイミングで負方向に2つのシャドウストローブおよび正方向に2つのシャドウストローブを発生させることで、同様の効果を得ることもできる。ただし、この場合には、素子(遅延素子およびフリップフロップ)の数を半分にできるものの、高速動作を行う素子を複数用いなければならないため、本発明よりも多くの電力を消費することになる。
【0088】
以上において、負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2はそれぞれ検査信号が無変位データ(「0000」または「1111」)にならなければピンコントローラ2に検査信号の出力を行わないようにしている。これに対して、負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2から無条件に検査信号をピンコントローラ2に出力するように制御することもできる。ただし、無変位データを入力していないということは位相の変化を生じていないということになるため、このときにピンコントローラ2に検査信号を出力して判定を行わせると、ピンコントローラ2は無駄な処理を行なうことになる。そこで、無変位データの入力を条件に検査信号を出力することで、ピンコントローラ2の処理負担の軽減を図ることができる。これにより、装置全体の高速化や消費電力の低減等の効果を得ることができるようになる。
【0089】
一方、負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2は無変位データになったときにピンコントローラ2に検査信号を出力して位相のずれを検出させているが、例えば図4(b)のような状態(「0111」、「1000」、「0001」または「1110」)になったときに検査信号をピンコントローラ2に出力するようにしてもよい。この場合には信号変化点を検出してはいるものの、厳密には位相に変化を生じている。従って、この時点でピンコントローラ2に位相のずれを検出させるようにしてもよい。ただし、前述したように、この状態が許容範囲であれば、ピンコントローラ2に検出を行なわせないようにして、処理負担の軽減を図るようにすることができる。
【0090】
また、図2(a)で示した信号特性検査部14とテーブル情報記憶部15とを負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2に持たせるようにして、試験信号記憶部13を基準イベントカウンタ8−0に持たせるようにしてもよい。これにより、信号特性の検査を行った状態でピンコントローラ2に対して有効であるのか無効であるのかを出力できるようになる。なお、この場合には、基準イベントカウンタ8−0と負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2とをそれぞれ接続するようにして、試験信号データを負側イベントカウンタ8−1および正側イベントカウンタ8−2に出力可能なようにしておく。
【0091】
また、以上の例では、信号特性の変化の例として位相のずれについて説明したが、この他にも周波数の変化についても検出することは可能である。周波数が変化すると、波形のパルス幅が拡張ないしは短縮されることになり、波形の立ち上がりおよび立ち下りのポイントにずれを生じる。これは、位相のずれと同様に、負方向および正方向のシャドウストローブにより検出可能である。
【0092】
また、遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8は基準クロックを2分周した周波数で動作しているが、4分周以上に分周してもよい。この場合にはシャドウストローブの発生タイミングは1/4になり、マスターストローブとマスターストローブとの間には3つのスレーブストローブが存在することになる。このため、3つのスレーブストローブの間では波形の立ち上がりおよび立ち下りにシャドウストローブを発生させることができず、位相のずれや周波数の変化等を検出できなくなる。
【0093】
しかし、DUTの自己発熱や温度変動等による位相のずれや周波数の変化は短時間で急激に変化するものではなく、徐々に変化していくものになる。従って、3つのスレーブストローブの間で検出を行わなくても、1/4のタイミングで発生するシャドウストローブにおいて信号特性の変化状況を検出することで、十分に検査を行うことが可能になる。一方で、遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8の動作周波数を1/4にすることにより、飛躍的な消費電力の低減効果が得られ、また回路の簡略化・小規模化および不良率の低下といった効果も極めて大きなものになる。特に、近年のDUTおよび半導体試験装置はさらに高速化の傾向にあるため、周波数をより低くすることは非常に有利な効果を奏する。
【0094】
また、シャドウストローブについては負方向および正方向においてそれぞれ4個を設けているが、信号変化点を含むように負方向および正方向のシャドウストローブを設定すればよいため、それぞれ少なくとも2個のシャドウストローブを設ければよい。ただし、シャドウストローブの個数を少なくすると信号特性の検出精度が低下するため、高精度に検出する場合にはシャドウストローブの個数を多く設けるようにする。
【0095】
一方で、シャドウストローブを多く設けることは素子の使用量が増大するため、消費電力や回路の複雑化・大規模化の問題等を招来する。この場合には、遅延素子6−1〜6−8およびフリップフロップ7−1〜7−8の周波数をより大きく分周させることでバランスをとる。つまり、分周数を大きくすることによって検出精度は低下するが、シャドウストローブを多く設けることによって検出精度は向上するため、全体として検出精度は一定或いは向上するようになる。そこで、分周数とシャドウストローブの個数とをバランスよく設定するようにすることが望ましい。
【0096】
また、図1において、基準イベントカウンタ8−0と負側イベントカウンタ8−1と正側イベントカウンタ8−2とをそれぞれ別個の回路として設けているが、1つの回路が各イベントカウンタの機能を持つようにしてもよい。
【0097】
また、信号特性の変化の検査を行う工程を第1の特性検査工程と第2の特性検査工程との2つの工程に分けているが、第2の特性検査工程だけを設けるようにしてもよい。第1の特性検査工程は無変位データを入力する可能性がないものを予め除外しているものであり、第2の特性検査工程において波形無変位テーブルに「010」および「101」のパターンを持たせることにより、第1の特性検査工程を省略することが可能になる。ただし、第1の特性検査工程は波形無変位テーブルを参照して比較を行う処理を要しないことから、予め第1の特性検査工程を行うことにより、不要な処理を省略して高速化を図ることができるようになる。
【0098】
次に、本発明の変形例について図6および図7を用いて説明する。図6は各フリップフロップ7−0〜7−8とコンパレータ回路114との間に8個のスイッチ31〜38を設けているものであり、その他の機構については図1と同じである。なお、各スイッチ31〜38は入力切り替えスイッチになっている。
【0099】
図6から明らかなように、コンパレータ回路114からは2つの試験信号が入力されている。2つの試験信号は同一の試験信号ではあるが、それぞれ信号の判定を行う閾値であるスレッシュホールドが異なっている。1つは高く設定されたスレッシュホールド(図中では「Threshold High」として示している)により「1」または「0」が判定されるH側試験信号であり、1つは低く設定されたスレッシュホールド(図中では「Threshold Low」として示している)により「1」または「0」が判定されるL側試験信号である。
【0100】
スイッチ31はH側試験信号を出力するか否かを選択するスイッチであり、スイッチ32はL側試験信号を出力するか否かを選択するスイッチである。スイッチ31と32とのうち何れか一方を出力するようになし、出力される側の試験信号のスレッシュホールドを中間地点に設定するようにすれば、図1と同じ試験信号を入力することが可能になる。つまり、入力する試験信号を1つにするのか、2つにするのかの選択をスイッチ31と32とが行っている。
【0101】
スイッチ33〜38はH側試験信号とL側試験信号とをそれぞれ基準イベントカウンタ8−0と負側イベントカウンタ8−1と正側イベントカウンタ8−2とに入力させている。従って、スイッチ33〜38を制御することにより、H側試験信号を各イベントカウンタ8−0〜8−2に入力させることもでき、またL側試験信号を各イベントカウンタ8−0〜8−2に入力させることもできる。
【0102】
図7はH側試験信号およびL側試験信号のそれぞれについてのシャドウストローブおよび2つのスレッシュホールドを示している。スイッチ33〜38の制御により、H側試験信号とL側試験信号とのそれぞれについてシャドウストローブを発生させており、H側試験信号のシャドウストローブをシャドウストローブ・ハイ(図中では、「Shadow Strobe High」として示している)とし、L側試験信号のシャドウストローブをシャドウストローブ・ロウ(図中では、「Shadow Strobe Low」として示している)として示している。
【0103】
図7からも明らかなように、スレッシュホールドを異なる高さに設定していることにより、シャドウストローブ・ハイとシャドウストローブ・ロウとは異なる値を示す。シャドウストローブは波形の立ち上がりおよび立ち下りに細かく設定されているものであり、シャドウストローブ・ハイとシャドウストローブ・ロウとの信号の違いにより波形の立ち上がり時間および立ち下り時間を検出することができる。
【0104】
図7の例では、立ち上がりのシャドウストローブ・ハイは「0001」になっており、シャドウストローブ・ロウは「0111」になっている。これにより、2つのシャドウストローブは2ビット目および3ビット目の値が異なっており、これにより、少なくとも2ビット目と3ビット目との間では波形が立ち上がっていることが認識される。同様に、立ち下りのシャドウストローブ・ハイは「1000」になっており、シャドウストローブ・ロウは「1110」になっている。これにより、2つのシャドウストローブは2ビット目および3ビット目が異なっていることから、少なくともこれらの位置では波形が立ち下がっていることが認識される。
【0105】
シャドウストローブ・ハイとシャドウストローブ・ロウとはシャドウストローブであるため、各シャドウストローブの間隔は既知である。つまり、前述した実施形態で説明したように、第1の遅延量設定工程でパルス幅の1/8に設定し、さらに第2の遅延量設定工程でその幅を1/4以下にしているものである。各シャドウストローブの間隔における時間をTS、波形の立ち上がり時間をTR、立ち下り時間をTFとすると、立ち上がりも立ち下りも2ビット目および3ビット目の2ビットが変化していることを認識しているため、「TR≒TS×2」、「TF≒TS×2」の結果が得られる。
【0106】
波形の立ち上がり時間TRおよび立ち下り時間TFは規定値がDUTの種類ごとに定められており、この規定値を超過しているか否かの検査を本変形例により行うことができるようになる。つまり、本変形例を適用することにより、DUTの良否判定を行うことができるようになる。
【符号の説明】
【0107】
1 レシーバ回路 2 ピンコントローラ
4 マスタークロックジェネレータ 5 分周器
6 遅延素子群 7 フリップフロップ群
8 イベントカウンタ群 11 信号入力部
12 良否判定部 13 試験信号記憶部
14 信号特性検査部 15 テーブル情報記憶部
16 遅延量設定部 21 第1の特性検査部
22 第2の特性検査部 31〜38 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイスから出力された試験信号の良否判定のテストを行う半導体試験装置であって、
基準クロックを分周した周波数で動作し、前記試験信号を入力して遅延量の異なる負の遅延を与えて検査信号として出力する複数の負側遅延手段と、
基準クロックを分周した周波数で動作し、前記試験信号を入力して遅延量の異なる正の遅延を与えて検査信号として出力する複数の正側遅延手段と、
前記負側遅延手段と前記正側遅延手段とにより遅延された前記検査信号が前記試験信号を基準としてそれぞれ信号変化点を含むように前記負側遅延手段と前記正側遅延手段との遅延量を設定する遅延量設定手段と、
前記検査信号の値に基づいて前記試験信号の信号特性の検査を行う検査手段と、
を備えたことを特徴とする半導体試験装置。
【請求項2】
前記検査手段は、
負の遅延を与えられた各検査信号と正の遅延を与えられた各検査信号とのうち何れか一方の各検査信号が全て同じ値であり、且つ前記試験信号およびその前後の試験信号からなる3ビットの試験信号が連続して変化しているか否かを検査する第1の特性検査手段と、
前記3ビットの試験信号に対応する各検査信号の正常値と前記遅延手段から出力された各検査信号の値とが一致しているか否かを検査する第2の特性検査手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の半導体試験装置。
【請求項3】
前記負側遅延手段から出力される各検査信号を入力し、これらの検査信号の値に変化があるときには、前記検査手段に検査信号を出力しないように制御する負側信号出力制御手段と、
前記正側遅延手段から出力される各検査信号を入力し、これらの検査信号の値に変化があるときには、前記検査手段に検査信号を出力しないように制御する正側信号出力制御手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の半導体試験装置。
【請求項4】
前記遅延量設定手段は、
前記試験信号の1パルス分のパルス幅を前記負側遅延手段および前記正側遅延手段の個数分に均等に分割した間隔ごとに前記負側遅延手段と前記正側遅延手段との遅延量を設定する第1の遅延量設定手段と、
この第1の遅延量設定手段により設定された遅延量の遅延が与えられた前記検査信号のうち前記負側遅延手段の各検査信号と前記正側遅延手段の各検査信号とのそれぞれにおいて信号変化点を含む前後の検査信号間を前記負側遅延手段の個数と前記正側遅延手段の個数とで分割した間隔ごとに前記負側遅延手段と前記正側遅延手段との遅延量を設定する第2の遅延量設定手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の半導体試験装置。
【請求項5】
基準クロックの周波数を4分周以上に分周した周波数で前記遅延手段を動作させること
を特徴とする請求項1記載の半導体試験装置。
【請求項6】
前記試験信号を2つの異なる閾値で判定したH側試験信号とL側試験信号とをそれぞれ前記負側遅延手段と前記正側遅延手段とに対して選択的に入力させるための複数のスイッチを備え、
前記検査手段は、前記H側試験信号と前記L側試験信号とのそれぞれについて生成された各検査信号の値の違いに基づいて前記試験信号の波形の立ち上がり時間と立ち下り時間とを求めること
を特徴とする請求項1記載の半導体試験装置。
【請求項7】
被試験デバイスから出力された試験信号のテストを行う半導体試験方法であって、
基準クロックの周波数で動作するマスターストローブを基準として、正および負方向において前記基準クロックを分周した周波数で動作する複数のシャドウストローブを、それぞれ信号変化点を含むように設定する工程と、
前記シャドウストローブの値に基づいて前記試験信号の信号特性の検査を行う工程と、
を有していることを特徴とする半導体試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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