説明

半導体集積回路、保護回路及び電池パック

【課題】放電電流が大きい場合でも電池容量を効率よく使い切ることが可能な半導体集積回路、保護回路及び電池パックを提供することを目的としている。
【解決手段】二次電池の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部と、前記二次電池に接続される負荷及び/又は充電器の負極側に抵抗を介して接続される負荷開放検出用端子の電圧に基づき、前記二次電池に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部と、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部と、前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部へ出力する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電制御用スイッチ及び充電制御用スイッチのオン/オフを制御して二次電池の保護を行う半導体集積回路、保護回路及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、二次電池を用いた電池パックを用いて駆動する電子機器等が普及している。二次電池は、電池パックが充電器に装着されることによって充電される。また二次電池は、電池パックが電子機器に装着された状態で電子機器にACアダプタ等を接続することにより充電されても良い。
【0003】
二次電池の充放電の制御は、二次電池の過充電や過放電等から保護する機能や、電池残量の管理等を行う電池監視機能等を有する保護回路により行われる。
【0004】
このような保護回路において、例えば過放電が検出された状態から通常状態への復帰(以下、過放電復帰)の方法として、充電器接続復帰と電圧復帰の2つが知られている。充電器接続復帰とは、電池パックに対する充電器の接続を検知して、過放電の状態から通常状態へ復帰させる方法である。電圧復帰とは、二次電池の電池電圧が過放電復帰電圧以上になるまで充電されたことを検出して、過放電の状態から通常状態へ復帰させる方法である。
【0005】
図1は、充電器接続復帰を採用した従来の保護回路の例を示す図である。図1に示す保護回路10は、充放電制御IC20、スイッチトランジスタM1と、スイッチトランジスタM2と、抵抗R1、抵抗R2、B+端子、B−端子、P+端子、P−端子を有する。また充放電制御IC20は、コンパレータ21、基準電圧Vref、ロジック回路22、スイッチSW1、プルアップ抵抗R3を有する。
【0006】
B+端子とB−端子との間には二次電池B1が接続され、P+端子とP−端子との間には充電器又は負荷が接続される。充放電制御IC20は、二次電池B1の電池電圧から過充電を検出すると、ロジック回路22は端子OVからトランジスタM2をオフさせる制御信号を出力して充電を停止させる。
【0007】
充放電制御IC20は、P+端子とP−端子との間に負荷が接続されて二次電池B1の電池電圧が過放電検出電圧以下となったとき、二次電池B1の過放電を検出する。過放電を検出するとロジック回路21は、端子DCHGからトランジスタM1をオフさせる制御信号を出力して放電を停止させる。
【0008】
以下に充放電制御IC20における過放電復帰の動作を説明する。充放電制御IC20において過放電が検出されると、ロジック回路22によりスイッチSW1がオンされ、V−端子の電位が負荷とプルアップ抵抗R3によりVDD電位にプルアップされる。P+端子とP−端子との間に接続された負荷が開放されてP+端子とP−端子との間に充電器が接続されると、V−端子の電位は基準電圧Vref以下のVSS電位となる。充放電制御IC20では、V−端子の電位が基準電圧Vref以下となったことを検出し、過放電状態から通常状態へ復帰する。
【0009】
例えば特許文献1には、過放電状態からの復帰について記載されている。また特許文献2には、過電流状態からの復帰について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−124640号公報
【特許文献2】特開2002−034163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の保護回路10において、P+端子とP−端子との間に負荷が接続された場合、保護回路10に入力される電池電圧は、負荷によって流れる放電電流と二次電池B1のインピーダンスによる電圧降下分の電圧が実際よりも低く見積もられる。この状態で過放電検出を行うと、二次電池B1のインピーダンスによる電圧降下分の電池容量を使用しないまま過放電が検出され、保護回路10に充電器が接続されるまでこの電池容量は使用できない。使用できない電池容量は、放電電流が大きくなるほど大きくなる。
【0012】
また例えば従来の保護回路において過放電状態からの復帰の方法を電圧復帰とした場合、過放電検出電圧及び過放電復帰電圧のヒステリシスが小さいと、過放電検出と過放電復帰を繰り返す発振が起こる可能性がある。この発振は、放電電流が大きい場合に起こりやすい。またヒステリシスを大きくすると、充電器接続復帰と同様の問題が発生する。
【0013】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべくなされたものであり、放電電流が大きい場合でも電池容量を効率よく使い切ることが可能な半導体集積回路、保護回路及び電池パックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。
【0015】
本発明は、放電制御用スイッチ(M10)及び充電制御用スイッチ(M20)のオン/オフを制御して二次電池(B10)の保護を行う半導体集積回路(110)であって、
前記二次電池(B10)の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部(130、131〜135)と、
前記二次電池(B10)に接続される負荷及び/又は充電器の負極側に抵抗を介して接続される負荷開放検出用端子(V−)の電圧に基づき、前記二次電池(B10)に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部(113)と、
前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部(112)と、
前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部(112)へ出力する制御部(114)と、
を有する。
【0016】
また本発明の半導体集積回路は、前記二次電池(B10)の電池電圧を分圧する分圧電圧(111)を有し、
前記負荷開放検出部(113)は、
前記負荷開放検出用端子(V−)の電圧と、前記分圧回路(111)により分圧された前記電池電圧とを比較するコンパレータ(113)である。
【0017】
また本発明の半導体集積回路は、前記二次電池(B10)の正極と接続される第一端子(VDD)と、前記二次電池(B10)の負極と接続される第二端子(VSS)とを有し、
前記過放電復帰部(112)は、
前記負荷開放検出用端子(V−)と、前記第二端子(VSS)との間に接続されている。
【0018】
また本発明の半導体集積回路において、前記過放電復帰部(112)は、
スイッチ(SW10)とプルダウン抵抗(R50)とを有し、
前記スイッチ(SW10)の一端が前記負荷開放検出用端子(V−)に接続され、他端が前記プルダウン抵抗(R50)の一端に接続され、
前記プルダウン抵抗(R50)の他端が前記第二端子(VSS)に接続されている。
【0019】
また本発明の半導体集積回路において、前記制御部(114)は、
前記過放電検出部(112)により過放電が検出されてから所定の遅延時間が経過し過放電状態となったとき、前記過放電復帰部(112)の前記スイッチ(SW10)をオンさせ、
前記負荷開放検出部(113)により前記負荷の開放が検出されてから所定の時間が経過し過放電状態から復帰したとき前記スイッチ(SW10)をオフさせる。
【0020】
本発明は、二次電池(B10)の保護を行う保護回路(100)であって、
前記二次電池(B10)と負荷及び/又は充電器とが接続される正極側端子(P+)及び負極側端子(P−)と、
放電制御用スイッチ(M10)及び充電制御用スイッチ(M20)と、
放電制御用スイッチ(M10)及び充電制御用スイッチ(M20)のオン/オフの制御を行う半導体集積回路(110)と、を有し、
前記半導体集積回路(110)は、
前記二次電池(B10)の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部(130、131〜135)と、
抵抗(R10)を介して前記負極側端子(P−)に接続される負荷開放検出用端子(V−)の電圧に基づき、前記二次電池(B10)に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部(113)と、
前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部(112)と、
前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部(112)へ出力する制御部(114)と、
を有する。
【0021】
本発明は、二次電池(B10)と、
前記二次電池(B10)と負荷及び/又は充電器とが接続される正極側端子(P+)及び負極側端子(P−)と、
放電制御用スイッチ(M10)及び充電制御用スイッチ(M20)と、
放電制御用スイッチ(M10)及び充電制御用スイッチ(M20)のオン/オフを制御して二次電池(B10)の保護を行う半導体集積回路(110)と、を有する電池パック(200)であって、
前記半導体集積回路(110)は、
前記二次電池(B10)の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部(130、131〜135)と、
抵抗(R10)を介して前記負極側端子(P−)に接続される負荷開放検出用端子(V−)の電圧に基づき、前記二次電池(B10)に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部(113)と、
前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部(112)と、
前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部(112)へ出力する制御部(114)と、
を有する。
【0022】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、放電電流が大きい場合でも電池容量を効率よく使い切ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】充電器接続復帰を採用した従来の保護回路の例を示す図である。
【図2】本実施形態の保護回路を説明する図である。
【図3】本実施形態の充放電制御ICを接続する図である。
【図4】本実施形態の充放電制御ICによる過放電検出及び過放電復帰の動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態の保護回路は、負荷が開放されたときに過放電状態から復帰する負荷開放復帰を採用したものである。
【0026】
図2は、本実施形態の保護回路を説明する図である。
【0027】
本実施形態の保護回路100は、充放電制御IC110、スイッチトランジスタM10、スイッチトランジスタM20、抵抗R10、抵抗R20、B+端子、B−端子、P+端子、P−端子を有する。
【0028】
本実施形態の保護回路100は、B+端子とB−端子との間に二次電池B10が接続されて電池パック200を構成する。保護回路100のP+端子とP−端子との間に充電器及び/又は負荷が接続される。
【0029】
本実施形態の二次電池B10は、P+端子とP−端子とに充電器が接続されると充電され、P+端子とP−端子との間に負荷が接続されると放電される。
【0030】
本実施形態の充放電制御IC110は、分圧回路111、過放電復帰用回路112、負荷開放検出用コンパレータ113、VDD端子、VSS端子、CS端子、DCHG端子、OV端子、V−端子を有する。尚本実施形態の充放電制御IC110は、上述する構成以外にも、二次電池B10を保護するための各種回路を有する。充放電制御IC110の詳細は後述する。
【0031】
VDD端子は二次電池B10の正極と接続され、VSS端子は二次電池B10の負極に接続される。CS端子は、抵抗R20を介してB−端子と接続され、二次電池B10からの放電電流を検出する。DCHG端子は、トランジスタM10のゲートに接続されており、OV端子はトランジスタM20のゲートに接続されている。V−端子は、P−端子と抵抗R10を介して接続されている。
【0032】
本実施形態の充放電制御IC110において、分圧回路111は、VDD端子とVSS端子との間に直列に接続された抵抗R30と抵抗R40とにより構成されており、VDD端子−VSS端子間の電圧を分圧する。すなわち本実施形態の分圧回路111は、VDD端子とVSS端子との間に接続された二次電池B10の電池電圧を分圧する。分圧回路111における抵抗R30と抵抗R40の接続点Aの電圧は、負荷開放検出用コンパレータ113の反転入力端子に供給される。尚本実施形態では、接続点Aの電圧は二次電池B10の電池電圧の半分程度となるように抵抗R30と抵抗R40の値が設定されていても良い。
【0033】
過放電復帰用回路112は、V−端子とVSS端子との間に直列に接続されたプルダウン抵抗R50とスイッチSW10とにより構成される。スイッチSW10の一端とV−端子との接続点Bの電圧が負荷開放検出用コンパレータ113の非反転入力端子へ供給される。負荷開放検出用コンパレータ113の出力は、後述する過放電遅延回路162へ供給される。
【0034】
本実施形態の充放電制御IC110は、トランジスタM10、トランジスタM20をオン/オフさせる信号を出力する。
【0035】
以下に本実施形態の保護回路100が過放電を検出した際の動作を説明する。
【0036】
本実施形態の保護回路100は、P+端子とP−端子との間に負荷が接続され、二次電池B10の電池電圧が過放電検出電圧以下となったとき、二次電池B10の過放電を検出する。過放電が検出されると、充放電制御IC110は、DCHG端子からトランジスタM10をオフさせる制御信号を出力して放電を停止させる。またこのときスイッチSW10がオンされる。
【0037】
過放電が検出されてスイッチSW10がオンされると、V−端子の電位は負荷とプルダウン抵抗R50とにより分圧された電位となる。この電位は、P+端子に負荷が接続されているため、接続点Aの電位よりも高い電位となる。
【0038】
ここで保護回路100のP+端子とP−端子との間に接続された負荷が開放されると、V−端子の電位はプルダウン抵抗R50によりVSS電位まで引き下げられ、過放電検出電圧である接続点Aの電圧よりも低くなる。すると負荷開放検出用コンパレータ113の出力が反転する。すなわち本実施形態のV−端子は、負荷開放検出用端子の機能を果たす。
【0039】
本実施形態の充放電制御IC110は、負荷開放検出用コンパレータ113の出力の反転により、負荷が開放されたことを検出し、DCHG端子からトランジスタM10をオンさせる制御信号を出力する。これにより保護回路100は、過放電状態から復帰する。またスイッチSW10は、過放電状態から復帰すると、オフされる。
【0040】
このように本実施形態では、保護回路100に負荷の接続により過放電が検出された場合に、負荷が開放されると保護回路100及び充放電制御IC110を過放電状態から通常状態へ復帰させることができる。
【0041】
尚本実施形態の過放電状態とは、二次電池B10からの放電が停止している状態を示し、通常状態とは二次電池B10の放電及び充電が可能な状態を示す。
【0042】
以下に図3を参照して本実施形態の充放電制御IC110の詳細を説明する。図3は、本実施形態の充放電制御ICを接続する図である。
【0043】
本実施形態の充放電制御IC110は、図2で説明した各回路に加え、ロジック回路114、過充電検出回路120、過放電検出回路130、OR回路140、150、セレクタ160、過放電遅延回路161、過放電遅延回路162、過電流保護回路163、短絡検出回路164、基準電圧生成回路165、過電流検出用コンパレータ171、過電流解除用コンパレータ172、短絡検出用コンパレータ173、過電流復帰用回路174、外部通信制御回路180を有する。
【0044】
過充電検出回路120は、例えば二次電池B10が保護回路100に複数接続される場合を考慮して、過充電検出回路121〜125を有する。過充電検出回路121〜125では、各過充電検出回路に接続された二次電池の電圧が所定電圧以上となったことを検出して出力する。過充電検出回路121〜125は、それぞれが同様の構成を有するから、以下には一例として過充電検出回路121について説明し、過充電検出回路122〜125の説明は省略する。
【0045】
過充電検出回路121は、V5端子、V4端子、電流源126、ダイオード127、コンパレータ128を有する構成とした。電流源126とダイオード127とは、V5端子とV4端子との間に接続されており、所定の電圧を生成する。コンパレータ128は、V5端子−V4端子間の電圧を分圧した電圧と、所定の電圧(過充電検出電圧)とを比較し、V5端子−V4端子間の分圧が所定の電圧以上となったとき出力を反転させる。V5端子−V4端子間の電圧は、V5端子−V4端子間に接続される二次電池の電池電圧である。
【0046】
過充電検出回路121〜125の出力はOR回路140へ供給され、OR回路140の出力は過充電遅延回路161へ供給される。過充電遅延回路161は、OR回路140の出力から過充電の検出を検知すると、所定の遅延時間が経過した後に過充電検出の信号をロジック回路114へ出力する。ロジック回路114は、この信号を受けてトランジスタM20をオフさせる信号をOV端子から出力する。
【0047】
過放電検出回路130も、過充電検出回路120と同様に、過放電検出用コンパレータ131〜135を有する。過放電検出用コンパレータ131〜135は、それぞれが同様の構成であるため、過放電検出用コンパレータ131について説明し、過放電検出用コンパレータ132〜135の説明は省略する。
【0048】
過放電検出用コンパレータ131は、V5端子−V4端子間の電圧を分圧した電圧と所定の電圧(過放電検出電圧)とを比較し、V5端子−V4端子間の電圧を分圧が所定の電圧以下となったとき、出力を反転させる。
【0049】
過放電検出コンパレータ131〜135の出力は、OR回路150へ供給される。OR回路150の出力は過放電遅延回路162へ供給される。過放電遅延回路162は、OR回路150の出力から過放電の検出を検知すると、所定の遅延時間が経過した後に過放電検出の信号をロジック回路114へ出力する。ロジック回路114は、この信号を受けてトランジスタM10をオフさせる信号をDCHG端子から出力する。またロジック回路114は、この信号を受けて過放電復帰用回路112のスイッチSW10をオンさせる。
【0050】
過電流検出コンパレータ171は、基準電圧生成回路165において生成される基準電圧とCS端子の電圧とを比較し、過電流を検出する。過電流が検出されると、過電流検出用コンパレータ171の出力は反転し、過電流保護回路163はこの出力の反転により過電流を検出する。過電流保護回路163は、過電流を検出すると、所定の遅延時間の経過後に過電流検出をロジック回路114へ出力する。
【0051】
ロジック回路114は、この信号を受けてトランジスタM10をオフさせる信号をDCHG端子から出力する。またロジック回路114は、この信号を受けて過電流復帰用回路174のスイッチSW20をオンさせる。
【0052】
本実施形態の過電流復帰回路174は、負荷が開放されると過電流状態を解除して通常状態へ復帰させる回路である。過電流状態とは、放電電流が所定値以上であり放電が停止された状態である。過電流復帰回路174は、プルダウン抵抗R60とスイッチSW20とがV−端子とVSS端子との間で直列に接続されている。尚スイッチSW20は、トランジスタにより構成されても良い。
【0053】
過電流解除用コンパレータ172は、V−端子の電圧が非反転入力端子に供給され、基準電圧生成回路165で生成された基準電圧が反転入力端子に供給される。尚基準電圧生成回路165は、VDD端子−VSS端子間の電圧を抵抗R11、R12、R13、R14の何れかにより分圧して、複数の基準電圧を生成することができる。
【0054】
以下に過電流が検出された場合と過電流から復帰する場合の動作を説明する。本実施形態において過電流が検出されると、ロジック回路114がスイッチSW20をオンとする。するとV−端子の電位は、は負荷とプルダウン抵抗R60とにより分圧された電位となる。この電位は、過電流解除用コンパレータ172の反転入力端子に供給される基準電圧よりも高い電位である。
【0055】
ここで負荷が開放されると、V−端子の電位はプルダウン抵抗R60によりVSS電位まで引き下げられ、過電流解除用コンパレータ172に供給される基準電圧よりも低くなる。すると過電流解除用コンパレータ172の出力が反転する。過電流保護回路163は、過電流解除用コンパレータ172の出力の反転により、負荷が開放されたことを検出しロジック回路114を介してDCHG端子からトランジスタM10をオンさせる制御信号を出力する。これにより保護回路100は、過電流状態から復帰し、通常状態へ戻る。
【0056】
短絡検出用コンパレータ173は、CS端子の電圧に基づき、P+端子−P−端子間に外部ショートが発生しているか否かを検出する。外部ショートが検出された場合、短絡検出用コンパレータ173の出力は反転する。短絡検出回路164は、この出力の反転により外部ショートを検出し、ロジック回路114にトランジスタM20をオフさせる信号を出力させる。
【0057】
セレクタ160は、過放電検出回路130において使用する過放電検出用コンパレータを選択する選択信号を出力する。図3の例では、セレクタ160からの選択信号は、過放電検出用コンパレータ133、134、135に供給されている。この場合VSS端子−V1端子間、V1端子−V2端子間、V2端子−V3端子間に二次電池が接続され、過放電検出用コンパレータ133、134、135が動作するように選択信号が供給されていても良い。
【0058】
図3の例以外にも、VSS端子−V1端子間、V1端子−V2端子間、V2端子−V3端子間、V3端子−V4端子間、V4端子−V5端子間のそれぞれに二次電池が接続された場合、セレクタ160は過放電検出用コンパレータ133、134、135それぞれに選択信号を供給し、過放電検出用コンパレータ131〜135を動作させても良い。
【0059】
外部通信制御回路180は、本実施形態の充放電制御IC110と同様の充放電制御ICが複数接続される場合に、他の充放電制御ICと通信を行うためのSOC端子とSDC端子とを有する。
【0060】
ここで、図3及び図4を参照して本実施形態の充放電制御IC110による過放電検出及び過放電が状態から通常状態への復帰の動作について説明する。図4は、本実施形態の充放電制御ICによる過放電検出及び過放電復帰の動作を説明するタイミングチャートである。
【0061】
尚以下の説明では、V4端子−V5端子間に接続された二次電池について、過放電検出用コンパレータ131により過放電が検出された場合を説明する。
【0062】
図4において、タイミングT1で保護回路100のP+端子とP−端子との間に重負荷が接続され、V4端子−V5端子間に接続された二次電池の電池電圧VCELLが過放電検出電圧VCELLSより低くなると、過放電検出用コンパレータ131の出力はハイレベル(以下、Hレベル)からローレベル(以下、Lレベル)に反転する。過放電検出用コンパレータ131の出力は、OR回路150を介して過放電遅延回路162へ供給される。過放電遅延回路162は、過放電検出用コンパレータ131の出力の反転を受けて、CDC端子に接続されている図示しないコンデンサの放電を開始し、遅延時間tDV1を生成する。尚遅延時間tDV1は、CDC端子の電圧が過放電遅延回路162内の図示しない基準電圧の1/2になるまでの時間であっても良い。
【0063】
過放電遅延回路162は、遅延時間tDV1が経過したタイミングT2において、ロジック回路114へ過放電検出の信号を出力する。ロジック回路114は、この信号を受けてDCGH端子の出力をHレベルからLレベルとし、トランジスタM10をオフさせて放電を停止させる。すると電池電圧VCELLは、流れていた電流と二次電池110B10のインピーダンスによる電圧降下分の電圧が上昇する。電池電圧VCELLが過放電復帰電圧であるVCELLDよりも高くなった場合、過放電検出用コンパレータ131の出力はLレベルからHレベルへ反転する。
【0064】
またロジック回路114は、タイミングT2において過放電復帰用回路112のスイッチSW10をオンさせる。スイッチSW10がオンされると、V−端子の電位は負荷とプルダウン抵抗R50とにより分圧された電位となる。この電位は、接続点Aの電位VVM2よりも高い電位となる。したがって負荷開放検出用コンパレータ113の出力は、タイミングT2においてLレベルからHレベルに反転する。
【0065】
次にタイミングT3で保護回路100のP+端子とP−端子との間に接続された重負荷が開放されると、V−端子の電位は、過放電復帰用回路112のプルダウン抵抗R50によりVSS電位まで引き下げられ、接続点Aの電位VVM2よりも低くなる。したがって負荷開放検出用コンパレータ113の出力は、タイミングT3においてHレベルからLレベルに反転する。
【0066】
負荷開放検出用コンパレータ113の出力は、過放電遅延回路162に供給されている。過放電遅延回路162は、タイミングT3において過放電検出用コンパレータ113の出力が反転すると、遅延時間tDV2を生成する。尚遅延時間tDV2は、例えばCDC端子の電圧が、CDC端子に接続されたコンデンサを充電し図示しない基準電圧の1/2になるまでの時間である。
【0067】
タイミングT4において遅延時間tDV2が経過すると、過放電遅延回路162はロジック回路114へ通常状態への復帰通知する信号を出力する。ロジック回路114は、この信号を受けてDCGH端子の出力をLレベルからHレベルとし、トランジスタM10をオンさせて放電を再開させ、通常状態に復帰する。
【0068】
このように本実施形態では、保護回路100から負荷が開放されたとき、二次電池の電池電圧が電圧VCELLD以上である場合に、P+端子とP−端子との間に充電器を接続しなくても、過放電状態から通常状態へ復帰する。
【0069】
次に、保護回路100から負荷が開放されたときに二次電池の電池電圧が電圧VCELLD以下であった場合を説明する。
【0070】
図4のタイミングT5では、保護回路100から負荷が開放された場合でも、V4端子−V5端子間に接続された二次電池の電池電圧VCELLが電圧VCELLDより低い。このため過放電検出用コンパレータ131の出力はLレベルを維持している。
【0071】
ここでタイミングT6において保護回路100のP+端子とP−端子との間に充電器が接続され、タイミングT7で電池電圧VCELLが電圧VCELLDを越えると、過放電検出用コンパレータ131の出力が反転し、過放電遅延回路162が過放電から復帰するための遅延時間tDV2を生成する。
【0072】
すなわち本実施形態の過放電遅延回路162は、負荷が開放されたとき、二次電池の電池電圧が過放電復帰電圧以上である場合には、負荷開放検出用コンパレータの出力の反転により遅延時間の生成を開始する。過放電遅延回路162は、二次電池の電池電圧が過放電復帰電圧より低い場合には、過放電検出用コンパレータの出力の反転により遅延時間の生成を開始する。
【0073】
また本実施形態の充放電制御IC110では、過放電復帰用回路112のプルダウン抵抗R50の抵抗値は、過電流復帰用回路174のプルダウン抵抗R60の抵抗値よりも大きいことが好ましい。
【0074】
過放電復帰用回路112では、プルダウン抵抗R60の抵抗値が大きいほど、スイッチSW10がオンであるときに充放電制御IC110内でV−端子−VSS端子間を流れる電流を小さくすることができる。充放電制御IC110内に流れる電流を小さくすることができれば、過放電検出から過放電復帰するまでの間の電池電圧の消耗を低減することができる。よって本実施形態によれば、放電電流が大きい場合でも電池容量を効率よく使い切ることができる。
【0075】
本実施形態では、例えばプルダウン抵抗R50の抵抗値を5MΩとした場合、プルダウン抵抗R60の抵抗値は数10KΩ程度であっても良い。
【0076】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0077】
100 保護回路
110 充放電制御IC
111 分圧回路
112 過放電復帰用回路
113 負荷開放検出用コンパレータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電制御用スイッチ及び充電制御用スイッチのオン/オフを制御して二次電池の保護を行う半導体集積回路であって、
前記二次電池の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部と、
前記二次電池に接続される負荷及び/又は充電器の負極側に抵抗を介して接続される負荷開放検出用端子の電圧に基づき、前記二次電池に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部と、
前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部と、
前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部へ出力する制御部と、
を有する半導体集積回路。
【請求項2】
前記二次電池の電池電圧を分圧する分圧電圧を有し、
前記負荷開放検出部は、
前記負荷開放検出用端子の電圧と、前記分圧回路により分圧された前記電池電圧とを比較するコンパレータである請求項1記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記二次電池の正極と接続される第一端子と、前記二次電池の負極と接続される第二端子とを有し、
前記過放電復帰部は、
前記負荷開放検出用端子と、前記第二端子との間に接続されている請求項2記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記過放電復帰部は、
スイッチとプルダウン抵抗とを有し、
前記スイッチの一端が前記負荷開放検出用端子に接続され、他端が前記プルダウン抵抗の一端に接続され、
前記プルダウン抵抗の他端が前記第二端子に接続された請求項3記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記制御部は、
前記過放電検出部により過放電が検出されてから所定の遅延時間が経過し過放電状態となったとき、前記過放電復帰部の前記スイッチをオンさせ、
前記負荷開放検出部により前記負荷の開放が検出されてから所定の時間が経過し過放電状態から復帰したとき前記スイッチをオフさせる請求項4記載の半導体集積回路。
【請求項6】
二次電池の保護を行う保護回路であって、
前記二次電池と負荷及び/又は充電器とが接続される正極側端子及び負極側端子と、
放電制御用スイッチ及び充電制御用スイッチと、
放電制御用スイッチ及び充電制御用スイッチのオン/オフの制御を行う半導体集積回路と、を有し、
前記半導体集積回路は、
前記二次電池の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部と、
抵抗を介して前記負極側端子に接続される負荷開放検出用端子の電圧に基づき、前記二次電池に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部と、
前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部と、
前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部へ出力する制御部と、
を有する保護回路。
【請求項7】
二次電池と、
前記二次電池と負荷及び/又は充電器とが接続される正極側端子及び負極側端子と、
放電制御用スイッチ及び充電制御用スイッチと、
放電制御用スイッチ及び充電制御用スイッチのオン/オフを制御して二次電池の保護を行う半導体集積回路と、を有する電池パックであって、
前記半導体集積回路は、
前記二次電池の電池電圧に基づき過放電を検出する過放電検出部と、
抵抗を介して前記負極側端子に接続される負荷開放検出用端子の電圧に基づき、前記二次電池に接続された前記負荷が開放されたか否かを検出する負荷開放検出部と、
前記過放電状態を通常状態へ復帰させる過放電復帰部と、
前記過放電状態において前記負荷の開放が検出されたとき、前記過放電状態を通常状態へ復帰させる制御信号を前記過放電復帰部へ出力する制御部と、
を有する電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55759(P2013−55759A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191446(P2011−191446)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】