説明

半導体集積回路およびその動作方法

【課題】電池の劣化により変化する満充電容量Qmaxと内部抵抗の算出時間の短縮を可能とすること。
【解決手段】半導体集積回路には、電池電流情報と電池電圧情報とがそれぞれ供給可能とされる。半導体集積回路は、メモリ機能、電流積算機能765、電圧ベース充電量演算機能764、電流ベース充電量演算機能766、比較判定機能767、補正機能769、抵抗劣化係数出力機能768を具備する。メモリ機能719は、電池の満充電容量Qmaxと電池の内部抵抗劣化係数CDegとの関係を格納する。比較判定機能767によって比較される電圧ベース充電量SOC_Vと電流ベース充電量SOC_Iとが実質的に一致すると判定された状態で補正機能769から出力される満充電容量Qmaxと抵抗劣化係数出力機能768から出力される内部抵抗劣化係数CDegをメモリ機能に格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池制御機能を有する半導体集積回路およびその動作方法に関し、特に電池の劣化に関係するパラメータである満充電容量Qmaxと内部抵抗値との算出時間の短縮を可能するのに有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータ(以下、ノートPCと言う)や携帯電話、スマートフォン等の民生用途の携帯機器では、電源としての二次電池の劣化度や、放電時の電池の残量や残時間、あるいは充電時の残量や残時間等の電池の特性情報をユーザに通知することが必要とされる。
【0003】
下記特許文献1には、電池の充放電電流を積算した電流積算に基づく残存容量SOCcと電池の開放電圧の推定値に基づく残存容量SOCvとを重み付けして合成残存容量SOCを算出することが記載されている。更に、電流積算に基づく残存容量の変化ΔSOCcと合成残存容量の変化ΔSOCから電流容量変化率σを算出して、電流容量変化率σが所定値以下となったときには、電池の劣化が進んだと判定される。尚、残存容量(SOC)は、充電率もしくは充電量と呼ばれる。
【0004】
下記特許文献2には、電池の充放電電流を積算して算出される充電量(SOC:Sate of Charge)を使用して、電池の劣化を判定する方法が記載されている。電池の充放電電流からは電流ベース充電量(ISOC)が生成されて、電池の電圧からは電圧ベース充電量(VSOC)が算出される。両者のいずれかの値が高い場合には電圧ベース充電量(VSOC)から電流ベース充電量(ISOC)が減算され減算値が第1しきい値を超過する場合、もしくは両者のいずれかの値が低い場合には減算値が第2しきい値未満の場合には、劣化係数に加算値が加算されて、劣化係数が修正される。劣化係数が第3しきい値を超過する場合には、電池が劣化したと判断される。
【0005】
下記特許文献3には、定電流定電圧充電により2次電池を充電する場合の充電終了までの充電時間を演算する方法が記載されている。2次電池のオープン電圧が検出され、このオープン電圧と定電流充電時の2次電池の内部抵抗の電圧降下から定電流充電時間が算出され、内部抵抗の電圧降下から定電圧充電時間が算出され、両者から充電終了までの充電時間が演算される。
【0006】
下記特許文献4には、二次電池の相対残容量および満充電容量を算出する方法が記載されている。まず、二次電池の満充電状態の開放端子電圧OCVfullに従って参照テーブルから相対残容量SOCfullを計算した後に、二次電池の放電停止時に検出される開放端子電圧OCVに従って参照テーブルから求められる相対残容量SOCを満充電状態の相対残容量SOCfullに基づいて補正することで真の相対残容量SOCtrueを求める。更に二次電池の放電電流を積算して二次電池の満充電状態から放電停止時までの放電容量Q[Ah]を求め、この放電容量Qと真の相対残容量SOCtrueとに基づいて、二次電池の満充電容量QfullをQfull=Q÷[(100−SOCtrue)/100]として求めるが、この満充電容量Qfullの算出方法は一般的な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−14702号 公報
【特許文献2】特開2003−178811号 公報
【特許文献3】特開平9−322420号 公報
【特許文献4】特開2011−53088号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載された技術は、電流容量変化率σから電池の劣化度を判定するものであるが、下記に説明するように,電池の正確な残量表示を可能とするための満充電容量Qmaxと内部抵抗とを算出することが不可能なものである。
【0009】
上記特許文献2に記載された技術では、電流ベース充電量(ISOC)と電圧ベース充電量(VSOC)の両者のいずれかの値が高い場合で電圧ベース充電量(VSOC)から電流ベース充電量(ISOC)が減算され減算値が第1しきい値以下の場合には第1しきい値の絶対値よりも小さな第4しきい値未満であるか否か判定され、減算値が第4しきい値である場合には電流ベース充電量(ISOC)を電池の充電量(SOC)に決定する。更に、電流ベース充電量(ISOC)と電圧ベース充電量(VSOC)との両者のいずれかの値が低い場合で電圧ベース充電量(VSOC)から電圧ベース充電量(VSOC)が減算され減算値が第2しきい値異常の場合には電流ベース充電量(ISOC)を電池の充電量(SOC)に決定する。以上のように上記特許文献2に記載された技術は複雑な判定処理を実行するものであるので、計算の実行には計算収束時間が必要である。上記特許文献2に記載の技術は電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)等に搭載される電池を想定したもので、この分野で使用される電池制御用半導体集積回路では、処理速度の高速化によって計算収束時間の短縮は不可能ではない。しかし、ノートPC等の民生用途の携帯機器の分野で使用される電池制御用半導体集積回路では、計算収束時間短縮は容易ではないことが、本発明に先立った本発明者等による検討の結果、明らかとされた。
【0010】
近年、ノートPCの分野では、スマートバッテリーシステム(SBS:Smart Battery System)と呼ばれる仕様が策定され、具体的にはバッテリーパック内部に内蔵された電子回路基板が使用され、正確な残量インジケーターの機能と過充放電に対する安全回路等の機能を備えるものである。
【0011】
またスマートバッテリーシステム(SBS)の電池の正確な残量表示のためには、後で詳細に説明するように満充電容量Qmaxと内部抵抗との算出が必要とされる。本願明細書で言う満充電容量Qmaxは、極小さい電流(≒0)で放電した場合に放電終止電圧に到達するまでの容量を示す。
【0012】
しかし、上記特許文献2に記載の技術では、電池の劣化係数の算出は可能であるが、満充電容量Qmaxと内部抵抗との算出は不可能なものである。
【0013】
一方、上記特許文献3に記載の技術は、定電流定電圧充電により2次電池を充電する場合の充電終了までの充電時間を演算するものであるが、やはり満充電容量Qmaxの算出は不可能なものである。更に、上記特許文献3に記載の技術では、2次電圧のオープン電圧の変化を近似する指数関数に基づき定電圧充電時間を算出する際に2次電圧のオープン電圧が満充電電圧となるまでの時間をテーブル化した充電時間テーブルを使用するものである。従って、実際の電池制御用半導体集積回路でこの充電時間テーブルを実現するには、大きな記憶容量の不揮発性メモリが必要となる。
【0014】
一方、上記特許文献4に記載の技術は、満充電容量を算出することができるが、必ず満充電状態に到達する必要があり、実使用上、満充電にならない場合には、正確な計算ができないという問題がある。
【0015】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等による検討の結果、なされたものである。
【0016】
従って、本発明の目的とするところは、電池の劣化により変化する満充電容量Qmaxと内部抵抗の算出時間の短縮を可能とすることにある。
【0017】
また、本発明の他の目的とするところは、電池の残量の推定精度を向上することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0020】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態は、電池(702)の放電動作と充電動作との少なくともいずれか一方を制御可能な電池制御機能を有する半導体集積回路(703)である。
【0021】
前記半導体集積回路には、前記電池の電流を検出する電流検出部(706)から生成される電流情報と、前記電池の電圧を検出する電圧検出部(705)から生成される電圧情報とがそれぞれ供給可能とされる。
【0022】
前記半導体集積回路は、メモリ機能(719)と、電流積算機能(765)と、電圧ベース充電量演算機能(764)と、電流ベース充電量演算機能(766)と、比較判定機能(767)と、補正機能(769)と、抵抗劣化係数出力機能(768)とを具備する。
【0023】
前記メモリ機能は、前記電池の満充電容量(Qmax)と前記電池の内部抵抗劣化係数(CDeg)との関係を格納可能とされる。
【0024】
前記比較判定機能によって比較される電圧ベース充電量と電流ベース充電量とが実質的に一致すると判定された状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量と前記抵抗劣化係数出力機能から出力される前記内部抵抗劣化係数を前記メモリ機能に格納可能とされたことを特徴とする(図4参照)。
【0025】
更に、本発明の他の代表的な実施の形態は、電池(702)の放電動作と充電動作との少なくともいずれか一方を制御可能な電池制御機能を有する半導体集積回路(703)の動作方法である。
【0026】
前記半導体集積回路は、メモリ機能(719)と、電流積算機能(765)と、電圧ベース充電量演算機能(764)と、電流ベース充電量演算機能(766)と、比較判定機能(767)と、補正機能(769)と、抵抗劣化係数出力機能(768)とを具備する。
【0027】
前記半導体集積回路の動作方法として、前記メモリ機能に、前記電池の満充電容量(Qmax)と前記電池の内部抵抗劣化係数(CDeg)との関係を格納するステップと、前記半導体集積回路に、前記電池の電流を検出する電流検出部(706)から生成される電流情報と、前記電池の電圧を検出する電圧検出部(705)から生成される電圧情報とをそれぞれ供給するステップと、前記比較判定機能によって比較される電圧ベース充電量と電流ベース充電量とが実質的に一致すると判定された状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量と前記抵抗劣化係数出力機能から出力される前記内部抵抗劣化係数を前記メモリ機能に格納するステップとを有することを特徴とする(図4参照)。
【発明の効果】
【0028】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0029】
すなわち、本発明によれば、電池の劣化により変化する満充電容量Qmaxと内部抵抗の算出時間の短縮を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703の電圧検出部705の構成と、電池702の構成を示す図である。
【図3】図3は、図1に示した本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703を利用してノートパソコン708のモニタに電池残容量等の検知状態情報が表示される様子を示す図である。
【図4】図4は、図1に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の機能を説明する図である。
【図5】図5は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の動作を説明する図である。
【図6】図6は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の動作を説明する図である。
【図7】図7は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の好適な動作を説明する図である。
【図8】図8は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の他の好適な動作を説明する図である。
【図9】図9は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用して定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvを算出する際に、直線近似方法が利用される様子を示す図である。
【図10】図10は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用して、電池702が充電される様子を示す図である。
【図11】図11は、図9に示した定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvを算出する際の直線近似方法を更に詳細に説明する図である。
【図12】図12は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用して電池702の充電残時間を算出するフローチャートを示す図である。
【図13】図13は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用した本発明の実施の形態1による図6の電池703の放電時の動作とメモリ719の不揮発性メモリの格納内容と本発明の実施の形態2による図9から図12で説明した電池703の充電時の動作との関係を示す図である。
【図14】図14は、電池702の充電量SOCと電池702の回路オープン電圧OCVとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号は、それが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0032】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、電池(702)の放電動作と充電動作との少なくともいずれか一方を制御可能な電池制御機能を有する半導体集積回路(703)である。
【0033】
前記半導体集積回路には、前記電池の電流を検出する電流検出部(706)から生成される電流情報と、前記電池の電圧を検出する電圧検出部(705)から生成される電圧情報とがそれぞれ供給可能とされる。
【0034】
前記半導体集積回路は、メモリ機能(719)と、電流積算機能(765)と、電圧ベース充電量演算機能(764)と、電流ベース充電量演算機能(766)と、比較判定機能(767)と、補正機能(769)と、抵抗劣化係数出力機能(768)とを具備する。
【0035】
前記メモリ機能は、前記電池の満充電容量(Qmax)と前記電池の内部抵抗劣化係数(CDeg)との関係を格納可能とされる。
【0036】
前記比較判定機能によって比較される電圧ベース充電量と電流ベース充電量とが実質的に一致すると判定された状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量と前記抵抗劣化係数出力機能から出力される前記内部抵抗劣化係数を前記メモリ機能に格納可能とされたことを特徴とする(図4参照)。
【0037】
前記実施の形態によれば、電池の劣化により変化する満充電容量Qmaxと内部抵抗の算出時間の短縮を可能とすることができる。
【0038】
好適な実施の形態では、前記メモリ機能には、前記満充電容量の初期値と前記電流ベース充電量の初期値が格納可能とされる。
【0039】
前記電流積算機能に前記電流情報が供給されることによって、前記電流積算機能は前記電流積算値を出力可能とされる。
【0040】
前記電流情報と前記電圧情報とが前記電圧ベース充電量演算機能に供給されることによって、前記電圧ベース充電量演算機能は電圧ベース充電量(SOC_V)を出力可能とされる。
【0041】
前記メモリ機能からそれぞれ出力される前記満充電容量の前記初期値および前記電流ベース充電量の前記初期値と前記電流積算機能から出力される前記電流積算値とが前記電流ベース充電量演算機能に供給されることによって、前記電流ベース充電量演算機能は電流ベース充電量(SOC_I)を出力可能とされる。
【0042】
前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが前記比較判定機能にそれぞれ供給されることによって、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量との差に対応した比較出力信号(ΔQmax)を前記比較判定機能が出力可能とされる。
【0043】
前記比較判定機能から出力される前記比較出力信号と前記メモリ機能から出力される前記満充電容量の前記初期値とが前記補正機能に供給されることによって、前記補正機能は前記満充電容量の補正計算値を出力可能とされる。
【0044】
前記抵抗劣化係数出力機能は、前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値に応答して、前記内部抵抗劣化係数を出力可能とされる。
【0045】
前記放電動作の開始直後に、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが実質的に一致する前記状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値と、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量が実質的に一致する前記状態の当該電圧ベース充電量と当該電流ベース充電量のいずれか一方とが、前記満充電容量の前記初期値と前記電流ベース充電量の前記初期値として前記メモリ機能にそれぞれ格納可能とされたことを特徴とする(図6参照)。
【0046】
他の好適な実施の形態では、前記半導体集積回路は、抵抗パラメータ出力機能(761)を更に具備する。
【0047】
前記抵抗パラメータ出力機能は、前記電圧ベース充電量演算機能から出力される前記電圧ベース充電量と前記電池の内部抵抗との関係(f(SOC))を示すテーブルによって構成され、前記電圧ベース充電量演算機能から出力される前記電圧ベース充電量に応答して、前記電池の前記内部抵抗の抵抗パラメータ(f(SOC))を出力可能とされる。
【0048】
前記電池の放電継続中に、前記電圧検出部から生成される前記電池の回路クローズド電圧と前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流とに基づいて、前記電池の前記内部抵抗を算出する。
【0049】
前記電池の前記放電継続中の前記電池の前記内部抵抗の算出結果に従って、前記抵抗パラメータ出力機能の前記電池の前記内部抵抗の前記抵抗パラメータの出力方法が更新可能とされたことを特徴とする(図7参照)。
【0050】
更に他の好適な実施の形態では、前記電池の放電終了後数時間経過した時点で前記電圧検出部から生成される前記電池の回路オープン電圧より算出される充電量と前記電池の放電中の前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流の積算値とに基づいて、前記電池の満充電容量を算出する。
【0051】
前記電池の放電中の前記電池の電流値と電圧値とに基づき、前記内部抵抗劣化係数を算出する。
【0052】
前記電池の放電終了後数時間経過した時点での前記満充電容量の算出結果と前記電池の放電中の前記内部抵抗劣化係数の算出結果とに基づき、前記メモリ機能に格納された前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数との前記関係を更新可能とされたことを特徴とする(図8参照)。
【0053】
より好適な実施の形態では、前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数とに基づいて、前記半導体集積回路は前記電池の利用可能充電量と残容量と残時間とを算出することを特徴とする(図7参照)。
【0054】
他のより好適な実施の形態では、前記充電動作の開始直後に、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが実質的に一致する前記状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値と、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量が実質的に一致する前記状態の当該電圧ベース充電量と当該電流ベース充電量のいずれか一方とが、前記満充電容量の前記初期値と前記電流ベース充電量の前記初期値として前記メモリ機能にそれぞれ格納可能とされたことを特徴とする。
【0055】
他のより好適な実施の形態では、前記電池の充電継続中に、前記電圧検出部から生成される前記電池の回路クローズド電圧と前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流とに基づいて、前記電池の前記内部抵抗を算出する。
【0056】
前記電池の前記充電継続中の前記電池の前記内部抵抗の算出結果に従って、前記抵抗パラメータ出力機能の前記電池の前記内部抵抗の前記抵抗パラメータの出力方法が更新可能とされたことを特徴とする。
【0057】
更に他のより好適な実施の形態では、前記電池の充電終了後数時間経過した時点で前記電圧検出部から生成される前記電池の回路オープン電圧より算出される充電量と前記電池の充電中の前記電流検出部から生成される前記電池の充電電流の積算値とに基づいて、前記電池の満充電容量を算出する。
【0058】
前記電池の充電中の前記電池の電流値と電圧値とに基づき、前記内部抵抗劣化係数を算出する。
【0059】
前記電池の充電終了後数時間経過した時点での前記満充電容量の算出結果と前記電池の充電中の前記内部抵抗劣化係数の算出結果とに基づき、前記メモリ機能に格納された前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数との前記関係を更新可能とされたことを特徴とする。
【0060】
別のより好適な実施の形態では、前記充電動作としては、充電前半に定電流充電が実行されて、充電後半に定電圧充電が実行されるものである。
【0061】
前記定電流充電から前記定電圧充電に切り替わる変化点充電量(SOC_change)を算出することによって、前記定電流充電の定電流充電時間(Tcc)と前記定電圧充電の定電圧充電時間(Tcv)とを算出して、前記定電流充電時間と前記定電圧充電時間との加算値を充電残時間(Tcg)として出力することを特徴とする(図9乃至図12参照)。
【0062】
更に別のより好適な実施の形態では、前記定電圧充電時間の算出において、前記電池の充電量と前記定電圧充電の充電電流(Icv)との関係を直線近似して、前記定電圧充電時間を算出することを特徴とする(図11参照)。
【0063】
具体的な実施の形態では、前記変化点充電量を算出する算出手法は、前記電池の前記定電流充電の期間の回路クローズド電圧が前記定電圧充電の制限電圧(V_lim)に一致するタイミングにおける前記変化点充電量を算出するか、または、前記電池の前記定電圧充電の期間の前記充電電流が前記定電流充電の一定電流(Icc)に一致するタイミングにおける前記変化点充電量を算出するかの、少なくともいずれか一方を実行するものである。
【0064】
前記半導体集積回路は、前記算出手法によって算出された前記変化点充電量を、前記電池の実際の充電中に定電流充電から定電圧充電への変化に基づいて算出される実際の変化点充電量の値に更新するものである。
【0065】
前記半導体集積回路は、前記実際の変化点充電量の値を使用することによって前記定電圧充電時間を再計算して、前記残充電時間の出力値を更新することを特徴とする(図12参照)。
【0066】
最も具体的な実施の形態では、前記メモリ機能は、前記半導体集積回路に内蔵された不揮発性メモリによって実現されることを特徴とする。
【0067】
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態は、電池(702)の放電動作と充電動作との少なくともいずれか一方を制御可能な電池制御機能を有する半導体集積回路(703)の動作方法である。
【0068】
前記半導体集積回路は、メモリ機能(719)と、電流積算機能(765)と、電圧ベース充電量演算機能(764)と、電流ベース充電量演算機能(766)と、比較判定機能(767)と、補正機能(769)と、抵抗劣化係数出力機能(768)とを具備する。
【0069】
前記半導体集積回路の動作方法として、前記メモリ機能に、前記電池の満充電容量(Qmax)と前記電池の内部抵抗劣化係数(CDeg)との関係を格納するステップと、前記半導体集積回路に、前記電池の電流を検出する電流検出部(706)から生成される電流情報と、前記電池の電圧を検出する電圧検出部(705)から生成される電圧情報とをそれぞれ供給するステップと、前記比較判定機能によって比較される電圧ベース充電量と電流ベース充電量とが実質的に一致すると判定された状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量と前記抵抗劣化係数出力機能から出力される前記内部抵抗劣化係数を前記メモリ機能に格納するステップとを有することを特徴とする(図4参照)。
【0070】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0071】
[実施の形態1]
《電池制御用半導体集積回路の構成》
図1は、本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の構成を示す図である。
【0072】
また図1は電池制御用半導体集積回路703だけではなく、電池パック701とノートPC708とAC/DCコンバータ712も示している。
【0073】
電池パック701は、3個直列もしくは4個直列の電池702と、電池制御用半導体集積回路703と、保護回路704と、電圧検出部705と、電流検出部706と、温度検出部707とから構成されている。図1に示した例では、電池702は複数の電池セルを直列に接続したものである。
【0074】
電池制御用半導体集積回路703は、A/D変換器709と、A/D変換器715と、保護回路制御部716と、タイマ717と、演算部718と、メモリ719と、入出力部720とから構成されている。保護回路制御部716は保護回路704に接続され、保護回路704を制御するものである。入出力部720はノートPC708と接続されているので、電池制御用半導体集積回路703はノートPC708と入出力部720を介してデータ転送を実行する。演算部718は中央処理ユニット(CPU)により構成されることが可能であり、メモリ719は演算部718の中央処理ユニット(CPU)のためのSRAM等の揮発性メモリとフラッシュメモリ等の不揮発性メモリとを含んでいる。
【0075】
ノートPC708の電力系統は、図1に示すように、AC電源731からAC/DCコンバータ712を介してノートPC708に電力を供給するルート710と、AC電源731の非接続時において電池702からDC/DCコンバータ721を介して電力を供給するルート711とがある。ルート710とルート711とのいずれの場合においても、ルート725からノートPC708の中央処理ユニット(CPU)722やハードディスクドライブ(HDD)723やDVDドライブ724等の各ユニットへ電力が供給される。また電池702の充電時には、AC電源731からAC/DCコンバータ712とルート710とDC/DCコンバータ721とルート711とを介して電池702が充電される。
【0076】
図2は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703の電圧検出部705の構成と、電池702の構成を示す図である。
【0077】
図2に示したように、電池702は複数の電池セルを直列に接続した直列接続を複数個数用意して複数の直列接続を並列接続したものである。電圧検出部705は電池702の任意の接続ノードを選択してA/D変換器709のアナログ入力端子に供給可能なように多入力・1出力のマルチプレクサMPXによって構成され、マルチプレクサMPXの多入力端子は電池702の複数の接続ノードに接続されて、マルチプレクサMPXの単一出力端子はA/D変換器709のアナログ入力端子に接続される。
【0078】
図1に示した本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703は、電圧検出部705と電流検出部706と温度検出部707とに接続されている。電圧検出部705は電池702の両端の電圧を検出して、電流検出部706は電池702に流れる電流を検出して、サーミスタや熱電対等の温度検出部707は電池702の温度を検出する。電圧検出部705の検出電圧と温度検出部707の検出温度とのアナログ信号はA/D変換器709によってデジタル信号に変換され、電流検出部706の検出アナログ電流は別のA/D変換器715によってデジタル信号に変換され、これのデジタル信号はバスを介して演算部718とメモリ719とに供給される。
【0079】
温度検出部707は電池702の表面の近傍で、かつノートPC708の中央処理ユニット(CPU)722の近傍の高温の熱蓄積部分に配置するのが望ましい。保護回路制御部716は検出電流と検出電圧と検出温度の値に応答して過充電保護と過放電保護等の電池702の安全確保のための制御を実行して、保護回路704へ制御指令を出力するものである。一方、演算部718は検出電流と検出電圧と検出温度の情報とメモリ719に格納された種々の情報を利用して満充電容量Qmaxと内部抵抗と残量等を算出することにより、電池702の状態検知を実行する。すなわち、演算部718の算出結果は入出力部720を介してノートパソコン708の中央処理ユニット(CPU)722へ供給されるので、ノートパソコン708のモニタに電池残容量や残使用可能時間等が表示されることが可能である。
【0080】
図3は、図1に示した本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703を利用してノートパソコン708のモニタに電池残容量等の検知状態情報が表示される様子を示す図である。
【0081】
例えば、電池702の使用時には、図3の簡易表示751に示すように、モニタの下端部分に小さく電池残容量や残使用可能時間が表示されるものである。更にノートPC708の操作によって別に詳細表示画面750を立ち上げると、例えば、電池の劣化度や、交換目安等の詳細情報が表示される。尚、電池残容量等は、図示しないが、電池パック701の側面に配置した複数の発光ダイオード(LED)によってレベル表示することも可能である。
【0082】
《演算部の機能》
図4は、図1に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の機能を説明する図である。
【0083】
図4には、演算部718の機能で満充電容量Qmaxを算出する機能が、特に詳細に示されている。図4に示したように演算部718は、加算器769とQmax−R劣化係数演算部768とR温度係数テーブル763と内部抵抗演算部762と内部抵抗テーブル761と電圧ベース充電率演算部764と電流積算部765と電流ベース充電率演算部766と比較判定部767とによって構成されている。また、演算部718のQmax−R劣化係数演算部768と内部抵抗演算部762と電圧ベース充電率演算部764と電流積算部765と電流ベース充電率演算部766と比較判定部767との各機能は、実際には演算部718を構成する中央処理ユニット(CPU)のソフトウェア処理によって実現されることが可能である。更に、演算部718のR温度係数テーブル763と内部抵抗テーブル761とQmax−R劣化係数演算部768との各機能は、実際には演算部718のためのフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ719によって実現されることが可能である。
【0084】
冒頭で説明したように、満充電容量Qmaxは、極小電流(≒0)で放電した場合に放電終止電圧に達するまでの容量を示しており、一般的に放電終了後充電量SOCと、放電開始前充電量SOC_iniと、放電電流積算値Quseとから、下記(数1)のように算出される。
【0085】
【数1】

【0086】
ここで、Iは電池702の放電電流であり、Quseは電池702からの放電電流の時間積分によって算出される放電電荷であり、SOCは放電終了後の充電量であり、SOC_iniは放電直前の充電量SOCである。ここでの放電直前の充電量SOC_iniは、充放電終了後一定時間経過後の電池702の電圧が略安定した状態での電圧ベース充電量を使用することが望ましい。電圧ベース充電量を、充放電開始直前に不揮発性メモリまたは揮発性メモリに格納して、利用する。
【0087】
一般的に、電流ベース充電量SOC_Iは、下記(数2)のように計算される。また、電流ベース充電量の初期値となるSOC_iniは充放電直前の電圧より、下記(数3)により電圧ベースで求められる。
【0088】
【数2】

【0089】
一方、電圧ベース充電量は、電池の開放電圧から算出することが可能であり、電池702の放電時には、電池の放電電流Iと内部抵抗Rとの電圧降下分、電池702の回路クローズド電圧CCVは電池702の回路オープン電圧OCVよりも低いので、CCV=OCV−IRの関係から、下記(数3)となる。
【0090】
【数3】

【0091】
ここで、fは関数を示すものであり、OCVは回路オープン電圧(Open-Circuit Voltage)であり、CCVは回路クローズド電圧(Closed-Circuit Voltage)であり、Iは電池702の放電電流であり、Rは電池702の内部抵抗である。尚、関数f(OCV)の算出のためには、図14に示すような充電量SOCと回路オープン電圧OCVとの関係を示す関係テーブルが、演算部718のための不揮発性メモリに別途に配置される。
【0092】
一方、電池702の内部抵抗Rは、下記(数4)で与えられる。
【0093】
【数4】

【0094】
ここで、fは関数を示すものであり、充電量SOCと電池702の内部抵抗Rの対応を示す関係テーブル761によって算出されるものである。CDegは電池702の内部抵抗Rの劣化係数であり満充電量Qmaxに依存し、CTempは電池702の内部抵抗Rの温度係数である。すなわち、上記(数3)は、電池702の内部抵抗Rの値は充電量SOC、満充電容量Qmax、温度に依存することを示している。
【0095】
従って、図4に示した演算部718では、メモリ719の不揮発性メモリの記憶領域中に格納されていた満充電容量Qmaxの初期値が加算器769を介してQmax−R劣化係数演算部768に供給されるので、Qmax−R劣化係数演算部768から電池702の内部抵抗Rの劣化係数CDegが出力される。
【0096】
一方、温度検出部707の検出温度のA/D変換器709によるデジタル温度情報が温度情報TempとしてR温度係数テーブル763に供給されるので、R温度係数テーブル763から電池702の内部抵抗Rの温度係数CTempが出力される。
【0097】
一方、電圧検出部705により検出される電池702の回路クローズド電圧CCVのA/D変換器709によるデジタルクローズド電圧情報がクローズド電圧情報CCVとして電圧ベース充電率演算部764に供給されるので、さらに内部抵抗Rと電流値Iとを使用して、電圧ベース充電率演算部764は上記(数3)に従って電圧ベース充電量SOC_Vを算出して内部抵抗テーブル761に供給する。従って、内部抵抗テーブル761は、電圧ベース充電量SOC_Vに応答して、上記(数4)の右辺の第1項の関数f(SOC)の値を出力する。
【0098】
その結果、内部抵抗演算部762には、Qmax−R劣化係数演算部768からの電池702の内部抵抗Rの劣化係数CDegが供給され、R温度係数テーブル763からの電池702の内部抵抗Rの温度係数CTempが供給され、内部抵抗テーブル761からの電池702の関数f(SOC)が供給される。従って、関数f(SOC)と劣化係数CDegと温度係数CTempを使用して、上記(数4)に従って内部抵抗演算部762は電池702の内部抵抗Rを算出する。
【0099】
一方、電流検出部706の検出アナログ電流のA/D変換器715によるデジタル電流情報が電流情報Iとして電圧ベース充電率演算部764に供給され、電圧検出部705によって検出される電池702の回路クローズド電圧CCVのA/D変換器709によるデジタルクローズド電圧情報がクローズド電圧情報CCVとして電圧ベース充電率演算部764に供給される。従って、電圧ベース充電率演算部764は内部抵抗演算部762からの電池702の内部抵抗RとA/D変換器715からの電流情報IとA/D変換器709からのクローズド電圧情報CCVを使用して、上記(数3)に従って放電開始以降の電池702の電圧ベース充電量SOC_Vを算出する。
【0100】
一方、放電開始直前の回路オープン電圧OCVから電圧ベースで算出した電流ベース充電量SOC_Iの初期値SOC_iniはメモリ719に格納されており、メモリ719より読み出された電流ベース充電量SOC_Iの初期値SOC_iniが電流ベース充電率演算部766に供給される。またメモリ719の不揮発性メモリの記憶領域中に格納されていた満充電容量Qmaxの初期値が、加算器769を介して、電流ベース充電率演算部766に供給される。更に電池702の放電開始以降の放電電流は、電流検出部706の検出アナログ電流のA/D変換器715によるデジタル電流情報Iとして電流積算部765に供給されている。従って、電流積算部765は電池702の放電電流の時間積分を実行して、放電開始以降での電池702の放電電荷Quseを算出する。その結果、電流ベース充電率演算部766は電流ベース充電量SOC_Iの初期値SOC_iniと電池702の放電電荷Quseと満充電容量Qmaxの初期値とを使用して、上記(数2)に従って電流ベース充電量SOC_Iを算出する。
【0101】
理想的には、電圧ベース充電率演算部764によって上記(数3)に従って算出される放電開始以降の電池702の電圧ベース充電量SOC_Vの値と、電流ベース充電率演算部766によって上記(数2)に従って算出される放電開始以降の電池702の電流ベース充電量SOC_Iの値とは一致するものである。
【0102】
しかし、実際には、電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値とは一致しないことが多い。この不一致の原因としては、電圧ベース充電量SOC_Vを算出する際の電池702の内部抵抗Rに誤差が含まれること、すなわち、電池702の内部抵抗Rを決定する上記(数4)の右辺の第1項の関数f(SOC)か第2項の劣化係数CDegか第3項の温度係数CTempかに電池劣化による誤差が含まれること等が想定される。
【0103】
また、不一致の他の原因としては、メモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に格納されていた満充電容量Qmaxの初期値が、電池702の劣化により電池702の実際の満充電容量Qmaxと異なっていること等が想定される。
【0104】
従って、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718では、特に電圧ベース充電率演算部764が上記(数3)に従って算出する電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電率演算部766が上記(数2)に従って算出する電流ベース充電量SOC_Iの値とは、比較判定部767の一方の入力端子と他方の入力端子とにそれぞれ供給される。その結果、比較判定部767は一方の入力端子に供給される電圧ベース充電量SOC_Vの値が他方の入力端子に供給される電流ベース充電量SOC_Iの値より小さい場合には、この2個の値の差に比例したあるいは、符号のみ反映させた一定値の比較出力信号ΔQmaxを出力する。すなわち、この比較出力信号ΔQmaxは、電圧ベース充電量SOC_Vの値から電流ベース充電量SOC_Iの値を減算した値に比例するものとなる。このように比較判定部767はデジタル減算器によって構成されるが、デジタルコンパレータによって構成されることも可能である。いずれの場合においても、2つの入力信号の差分が所定値以下となった場合には2つの入力信号が一致したと判定するものである。比較判定部767から生成される比較出力信号ΔQmaxは加算器769によって満充電容量Qmaxの初期値と加算され、加算器769から満充電容量Qmaxの補正計算値が生成される。
【0105】
《シミュレーション結果》
図5は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の動作を説明する図である。
【0106】
この図5は、図1に示した本発明の実施の形態1による電池パック710の実使用時の回路オープン電圧OCVと回路クローズド電圧CCVと放電電流Iと内部抵抗Rの温度係数CTempと電池パック710の温度等のデータを利用したシミュレーションの結果を示している。
【0107】
図5には、電圧ベース充電率演算部764で算出される電圧ベース充電量SOC_Vの値と、Qmax−R劣化係数演算部768で出力される内部抵抗Rの劣化係数CDegの値と、電流ベース充電率演算部766で算出される電流ベース充電量SOC_Iの値と、加算器769で生成される満充電容量Qmaxの補正計算値とが、順番に示されている。
【0108】
このシミュレーションでは、電圧ベース充電量SOC_Vの値が電流ベース充電量SOC_Iの値よりも小さいので、比較出力信号ΔQmaxの値は負の値となる。その結果、加算器769から生成される満充電容量Qmaxの補正計算値は、満充電容量Qmaxの初期値よりも減少する。
【0109】
このようにして加算器769から生成された満充電容量Qmaxの補正計算値は、Qmax−R劣化係数演算部768と電流ベース充電率演算部766に供給される。従って、Qmax−R劣化係数演算部768は、満充電容量Qmaxの初期値よりも減少した満充電容量Qmaxの補正計算値に応答して、電池702の内部抵抗Rの劣化係数CDegとして以前の値よりも大きな値を出力する。その結果、内部抵抗演算部762は関数f(SOC)と温度係数CTempと以前の値よりも大きな値の劣化係数CDegとを使用して、上記(数4)に従って電池702の内部抵抗Rを再度算出する。再度算出された電池702の内部抵抗Rの値は、以前の値よりも増大する。従って、電圧ベース充電率演算部764は、A/D変換器715からの電流情報IとA/D変換器709からのクローズド電圧情報CCVと内部抵抗演算部762で再度算出された電池702の内部抵抗Rとを使用して、上記(数3)に従って放電開始以降の電池702の電圧ベース充電量SOC_Vを再度算出する。再度算出された電圧ベース充電量SOC_Vの値は、電池702の内部抵抗Rの劣化係数CDegの増大に対応して、以前の値よりも増大する。
【0110】
一方、加算器769から生成された満充電容量Qmaxの補正計算値が電流ベース充電率演算部766に供給されているので、電流ベース充電率演算部766は電流ベース充電量SOC_Iの初期値SOC_iniと電池702の放電電荷Quseと満充電容量Qmaxの補正計算値を使用して、上記(数2)に従って電流ベース充電量SOC_Iを再度算出する。満充電容量Qmaxの補正計算値は満充電容量Qmaxの初期値より減少しているので、上記(数2)に従って再度算出される電流ベース充電量SOC_Iの値は、以前の値よりも減少する。
【0111】
このように、電圧ベース充電率演算部764によって算出される電圧ベース充電量SOC_Vの値は増大する一方、電流ベース充電率演算部766によって算出される電流ベース充電量SOC_Iの値は減少する。従って、当初は不一致であった電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値とは、一致するようになる。
【0112】
従って、電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値とが一致すると言う理想的な状態が、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718により実現されるものである。この理想的な状態においては、電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値とが不一致となった原因となっていた誤差を含む満充電容量Qmaxと内部抵抗Rの値が、実質的に誤差を含まずに算出されるものである。従って、この重要な二つのパラメータが正確に算出されることによって、電池702の正確な残量を算出することができる。
【0113】
この動作においては、電池702の放電中に逐次変化する電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値と使用して満充電容量Qmaxと内部抵抗Rの値を算出するものであるが、電池702の放電電流が安定している時間領域の電流値と電圧値をメモリ719の揮発性メモリに格納することによってあるタイミングでのデータをベースに算出することもできる。
【0114】
また、上述の説明は、上記(数2)と上記(数3)と上記(数4)と「満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数の関係式」との連立方程式を理想状態「SOC_I=SOC_V」と仮定することによって、未知変数である電流ベース充電量SOC_Iの値と電圧ベース充電量SOC_Vの値と満充電容量Qmaxの値と内部抵抗Rの内部抵抗劣化係数値を算出するものであった。
【0115】
上述の説明では、満充電容量Qmaxの値を逐次変化させて、未知変数である電流ベース充電量SOC_Iの値と電圧ベース充電量SOC_Vの値と満充電容量Qmaxの値と内部抵抗Rの内部抵抗劣化係数値を算出する手法を採用したが、逐次変化させるのは内部抵抗Rの内部抵抗劣化係数とすることも可能であり、また2分法等を採用することも可能である。
【0116】
以上説明した満充電容量Qmaxと内部抵抗Rの算出処理の後に、放電中の充電量SOCは、逐次、下記(数5)に従って演算部718によって算出される。
【0117】
【数5】

【0118】
上記(数5)の算出に先立ち、演算部718はメモリ719に格納されていた電流ベース充電量SOC_Iの初期値SOC_iniと満充電容量Qmaxとを読み出し、電流積算値(=放電電荷量Quse)を使用して、演算部718は上記(数5)に従って充電量SOCを算出する。その結果、ノートパソコン708の中央処理ユニット(CPU)722は、算出された充電量SOCと満充電容量Qmaxと内部抵抗Rを使用して、スマートバッテリーシステムに準拠する実際に利用可能な充電率RSOC、残時間(Remaining Time)、残容量(Remaining Capacity)を計算し、モニタに表示する。
【0119】
《演算部の動作》
図6、図7、図8は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の動作を説明する図である。
【0120】
放電時の満充電容量Qmaxと内部抵抗R等の算出は、図6に示す放電開始直後の処理Aと、図7に示す放電中の処理Bと、図8に示す放電終了後の処理Aとの3ステップで計算を実行する。
【0121】
《放電開始直後の処理》
この図6は、電池702の放電開始直後における演算部718の処理Aを示すものである。
【0122】
電池702の劣化の影響を受ける満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数との間には直線あるいは曲線の相関関係があるので、この相関関係を近似式あるいはテーブルで不揮発メモリに格納する。上述のように、電流ベース充電量SOC_Iの値と電圧ベース充電量SOC_Vの値とはそれぞれ、満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数を使用して算出される。また、理想状態が「SOC_I=SOC_V」であることから、劣化状態を推定することが可能である。劣化によって刻々と変化する満充電容量Qmaxと内部抵抗の両方が未知数であることから、上述の算出手法を利用して、図6に示すように電流ベース充電量SOC_Iの値と電圧ベース充電量SOC_Vの値とが一致する点における満充電容量Qmaxの値と内部抵抗劣化係数の値が、これらの正確な値である。
【0123】
すなわち、図6の最初のステップA1では、メモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に格納されていた満充電容量Qmaxの初期値が加算器769を介してQmax−R劣化係数演算部768に供給されるので、Qmax−R劣化係数演算部768から電池702の内部抵抗Rの劣化係数CDegが出力される。
【0124】
図6の次のステップA2では、比較判定部767は電圧ベース充電率演算部764で算出される放電開始以降の電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電率演算部766で算出される放電開始以降の電流ベース充電量SOC_Iの値とが一致するように、満充電容量Qmaxの補正計算値をフィードバック制御する。このステップA2での満充電容量Qmaxの補正計算値の制御の間に内部抵抗Rの劣化係数CDegの値が変化するので、ステップA2の処理とステップA1の処理が反復される間に電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値が一致するものとなる。この一致のタイミングでの満充電容量Qmaxの補正計算値が、電池702の正確な残量表示に使用される。またこのステップA2では、メモリ719の不揮発性メモリに格納された満充電容量Qmaxの初期値と電流ベース充電量SOC_Iの初期値SOC_iniとが満充電容量Qmaxの補正計算値と一致した充電量SOCによってそれぞれ更新される。
【0125】
《放電中の処理》
図7は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の好適な動作を説明する図である。
【0126】
この図7は、電池702の放電中における演算部718の処理Bを示すものである。
【0127】
放電中は、図6の処理Aにおいて算出された満充電容量Qmaxと内部抵抗をベースに、実際に利用可能な充電率RSOC、残時間(Remaining Time)、残容量(Remaining Capacity)を逐次算出する。また、これらの残量算出に重要な内部抵抗テーブル761は、放電中に更新される。残量算出に使用され放電終了充電量SOC_finの算出でも電池702の内部抵抗値が重要であり、劣化により電池702の内部抵抗が変化するためである。
【0128】
図7は、電池702の放電開始以降の放電継続中において、電圧ベース充電量SOC_Vに応答して上記(数4)の右辺の第1項の関数f(SOC)の値を出力する内部抵抗テーブル761の内容が更新される様子を示している。
【0129】
上述したように電池702の放電時には、電池の放電電流Iと内部抵抗Rとの電圧降下分、電池702の回路クローズド電圧CCVは回路オープン電圧OCVよりも低いので、CCV=OCV−IRの関係が成立している。
【0130】
従って、電池702のサイクル劣化あるいは保存劣化により内部抵抗RのSOC特性が変化した場合でも、電圧検出部705で検出される回路クローズド電圧CCVと電流検出部706で検出される放電電流Iとを使用して、放電中の内部抵抗Rの値を下記(数6)に従って算出することが可能である。オープン電圧情報OCVは、電流ベース充電量SOC_Iより、メモリに格納された図14に示す電池702の充電量SOCと電池702の回路オープン電圧OCVとの関係を使用して計算する。
【0131】
【数6】

【0132】
また、その時点でQmax−R劣化係数演算部768から出力される内部抵抗Rの劣化係数CDegとR温度係数テーブル763から出力される内部抵抗Rの温度係数CTempとを使用して、演算部718は各充電量SOCの上記(数4)の右辺の第1項の関数f(SOC)の値を出力する。
【0133】
内部抵抗テーブル761には充電量SOCのそれぞれの値に対応した関数f(SOC)の値が格納されているので、ある充電量SOCに対応して演算部718から出力される関数f(SOC)の値が過去に算出されて内部抵抗テーブル761に格納された値と相違する場合には、図7の矢印744に示したように関数f(SOC)の新しい算出値によって内部抵抗テーブル761を更新する。このようにして、電池702の劣化が進行して、充電量SOCに対する電池702の内部抵抗Rの特性が変化しても、内部抵抗テーブル761に格納される関数f(SOC)の値を最新の状態に更新することが可能である。
【0134】
更に、図7の矢印745に示したようにある充電量SOCに対応する関数f(SOC)の値に従ってそれ以下の充電量SOCに対応する関数f(SOC)の値を推測することで、内部抵抗テーブル761を更新することも可能である。この推測は、例えば、ある充電量SOCに対応する関数f(SOC)の値の変化率と同一の変化率を更新前の値に乗算して、更新後の値を算出するものである。
【0135】
放電中に、図7に示した実施の形態では充電量SOCの10%変化ステップで内部抵抗テーブル761を更新している。しかし、前回使用時からの電池702の劣化が大きい場合には、放電終了直前の内部抵抗の変化が大きく残量推定に重要なパラメータである放電終了充電量SOCの算出精度が低下することとから、放電終了直前に内部抵抗更新頻度を多くすることが推奨される。
【0136】
《放電終了後の処理》
図8は、図4に示す本発明の実施の形態1による電池制御用半導体集積回路703の演算部718の他の好適な動作を説明する図である。
【0137】
この図8は、電池702の放電終了後数時間経過した時点での演算部718の処理Cを示すものである。
【0138】
図8の放電終了後の処理Cは、次回の図6の放電開始直後の処理Aに使用するための満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数との間の相関関係を更新するものである。従って、次回の図6の放電開始直後の処理で、満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数の算出精度を向上することが可能となる。
【0139】
放電終了後には、電圧ベース充電量SOC_Vと放電中の積算電荷量Quseとを使用して、上記(数1)から正確な満充電容量Qmaxを算出して、内部抵抗劣化係数も再計算する。このように放電終了の都度に得られる満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数との正しい関係を、例えば最小二乗法を使用する近似式で算出して、更新するものである。
【0140】
良く知られているように、電池702は放電終了後に時定数の大きい抵抗の影響によって、電池702の電圧は徐々に上昇して、数時間後に安定する。この安定した電圧が、回路オープン電圧OCVである。
【0141】
電池702の放電終了後2時間程度経過すると、演算部718は、放電開始前充電量SOC_iniと放電電流積算値Quseと電圧検出部705によって検出される電池702の回路オープン電圧OCVから算出される充電量SOCとにより上記(数1)に従って満充電容量Qmaxを計算することが可能となる。また、放電中の所定の時刻における電圧情報と電流情報とから、演算部718は内部抵抗劣化係数を算出する。これによって得られた内部抵抗劣化係数と満充電容量の関係を演算部718はそれ以前の放電時の複数回のデータと参照して、例えば最小二乗法を使用する近似式で算出して、更新して、不揮発性メモリに格納する。
【0142】
図8の矢印746に示したQmax−R劣化係数演算部768の演算方法の更新は、演算部718を構成する中央処理ユニット(CPU)のソフトウェアを格納したメモリ719の不揮発性メモリを書き換えることで実現可能である。すなわち、不揮発性メモリの書き換えによって中央処理ユニット(CPU)のソフトウェアが書き換えられ、Qmax−R劣化係数演算部768の近似式が更新されるものである。
【0143】
以上のように図8に示す電池702の放電終了後数時間経過した時点での演算部718の処理Cによって更新された演算部718のQmax−R劣化係数演算部768の近似式は、図6に示した電池702の放電開始直後の演算部718の処理Aの最初のステップA1に利用されるものである。
【0144】
以上のように、図8の放電終了後の処理Cで満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数の近似式を更新することによって、次回の図6の放電開始直後の処理Aにおける満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数の算出精度を向上させることができる。これは、特に電子機器の休止時間が長くなり、次回放電までに電池702が大幅に劣化した場合などに、図8の放電終了後の処理Cと次回の図6の放電開始直後の処理Aとによって劣化を反映した満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数とを算出でき、正確な残量を表示することができる。
【0145】
また、この実施の形態1では、電池702の内部抵抗劣化係数を使用したが、劣化係数を使用しない場合には、満充電容量Qmaxと電池702の内部抵抗との関係式を図6の放電開始直後の処理Aに使用することも可能である。
【0146】
[実施の形態2]
図1に示した電池制御用半導体集積回路703は、上述した実施の形態1にて説明した電池702の放電動作だけではなく電池702の充電動作を制御することが可能とされている。
【0147】
電池702はサイクル劣化や保存劣化等によって劣化するため、充電開始時に大幅劣化している場合も考えられる。図1に示した電池制御用半導体集積回路703は、充電動作期間に過充電保護動作と過電流保護動作とを実行するように構成されている。一方、充電動作の間には充電残時間の表示が好ましいが、演算部718が正確な充電残時間を算出するためには、演算部718が充電中の電池702の正確な満充電容量Qmaxと内部抵抗を算出する必要がある。
【0148】
従って、電池702の充電動作期間において図1に示す電池制御用半導体集積回路703は、図6で説明した放電開始直後の処理Aと類似した充電開始直後の処理を実行することもできる。
【0149】
すなわち、充電開始直後の処理のステップA1では、メモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に格納されていた満充電容量Qmaxの初期値が加算器769を介してQmax−R劣化係数演算部768に供給されるので、Qmax−R劣化係数演算部768から電池702の内部抵抗Rの劣化係数CDegが出力される。
【0150】
充電と放電では内部抵抗値が異なる場合があるため、充電時の電池702の内部抵抗の算出では、メモリ719の不揮発性メモリに別途格納した充電補正係数を放電時の内部抵抗算出の式に乗算する必要がある。
【0151】
充電開始直後の処理の次のステップA2においては、比較判定部767は電圧ベース充電率演算部764で算出される充電開始以降の電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電率演算部766で算出される充電開始以降の電流ベース充電量SOC_Iの値とが一致するように、満充電容量Qmaxの補正計算値をフィードバック制御する。ただし、電流積算部765では、充電電流の時間積分である電池702の充電電荷Qchargeが計算される。このステップA2での満充電容量Qmaxの補正計算値の制御の間に内部抵抗Rの劣化係数CDegの値が変化するので、ステップA2の処理とステップA1の処理とが反復される間に電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電量SOC_Iの値とが一致するものとなる。この一致のタイミングでの満充電容量Qmaxの補正計算値が、電池702の正確な充電残時間の算出に使用される。
【0152】
充電中は、算出された満充電容量Qmaxの値を使用して演算部718は電池702の充電残時間を算出する。具体的な電池702の充電残時間の算出方法については、後に詳述する。
【0153】
更に電池702の充電動作の期間において図1に示した電池制御用半導体集積回路703は、図7で説明した放電継続中の処理Bと類似した充電継続中の処理を実行することもできる。
【0154】
すなわち、この充電継続中の処理によって、電圧ベース充電量SOC_Vに応答して、上記(数4)の右辺の第1項の関数f(SOC)の値を出力する内部抵抗テーブル761の内容が更新される。ただし、電池702の充電時には、電池の充電電流Iと内部抵抗Rとの電圧降下分、電池702の回路クローズド電圧CCVは電池702の回路オープン電圧OCVよりも高いので、CCV=OCV+IRの関係が成立している。従って、演算部718は、この関係を使用して電池702の内部抵抗を算出する。充電継続中の処理のその他の点は、図7で説明した放電継続中の処理Bと同一であるので、説明を省略する。
【0155】
また更に、電池702の充電終了後数時間経過した時点において図1に示した電池制御用半導体集積回路703は、図8で説明した放電終了後数時間経過した時点での処理Cと類似した充電終了後数時間経過した時点の処理を実行することもできる。充電終了後数時間経過した時点の処理中の処理のその他の点は、図8で説明した放電終了後数時間経過した時点での処理Cと同一であるので、説明を省略する。
【0156】
以上説明した満充電容量Qmaxの算出や内部抵抗の更新処理は、充電時は必ずしも実行する必要はない。それは、放電時の処理でも、充電残時間の算出処理に際して満充電容量Qmaxの値と内部抵抗の値の補正できるためである。
【0157】
《充電残時間の算出》
図10は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用して、電池702が充電される様子を示す図である。
【0158】
すなわち、図1に示した本発明の実施の形態1の電池制御用半導体集積回路703を使用して、電池702は、AC電源731からAC/DCコンバータ712とDC/DCコンバータ721と保護回路704とを介して充電されることが可能である。電池702がリチウムイオン電池である場合には、一般的に定電流(Constant Current)・定電圧(Constant Voltage)の充電が使用されることが多い。
【0159】
図10に示したように充電初期の期間においては、電池702の回路クローズド電圧CCVが所定の制限電圧V_limに到達するまでは一定電流Iccによって電池702が充電されると言う定電流充電(CC充電)が実行される。一方、電池702の回路クローズド電圧CCVが制限電圧V_limに到達した以降の充電後期では、一定の電圧である制限電圧V_limによって電池702が充電されると言う定電圧充電(CV充電)が実行される。充電後期の定電圧充電(CV充電)の期間では、定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値は次第に減少する。この充電電流Icvの値が所定の規定電流I_limに到達した時点が満充電の状態とされる。
【0160】
電池702の充電が開始される直前の回路オープン電圧OCVより算出した充電量SOCを充電初期値充電量SOC_iniとして、満充電状態の充電量SOCを満充電充電量SOC_endとして、電池702の充電動作が定電流充電(CC充電)から定電圧充電(CV充電)に変化するタイミングの充電量SOCを変化点充電量SOC_changeとする。
【0161】
図12は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用して電池702の充電残時間を算出するフローチャートを示す図である。この図12に示す電池702の充電残時間の算出のためのフローチャートの処理を開始する前提は、図6に示した放電開始直後の処理AのステップA1とステップA2を実行することによって満充電容量Qmaxの補正計算値を算出済みであるか、あるいは、前回放電時の満充電容量Qmaxを利用して、充電開始直後から開始しても良い。
【0162】
図12のステップ601では、電池制御用半導体集積回路703に含まれた図4の演算部718は、下記のように変化点充電量SOC_changeを算出する。
【0163】
すなわち、電池702の充電時には、電池の充電電流Iと内部抵抗Rとの電圧降下分、電池702の回路クローズド電圧CCVは電池702の回路オープン電圧OCVより高いので、CCV=OCV+IRの関係が成立している。
【0164】
定電圧充電(CV充電)の期間ではCCV=V_lim、I=Icvの関係が成立しているので、定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値は下記(数7)に従って演算部718によって算出される。
【0165】
【数7】

【0166】
すなわち、定電圧充電(CV充電)に使用される一定電圧の制限電圧V_limの値は、メモリ719に格納される。更に放電期間中に演算部718によって上記(数6)に従って電池702の内部抵抗Rの値は、放電時と同様に上記(数6)により求め、充電補正が必要な場合は、それに内部抵抗充電係数を乗算することで算出してメモリ719に格納する。また、回路オープン電圧OCVは、充電量SOCから図14に示した充電量SOCと回路オープン電圧OCVとの関係を使用して算出してメモリ719に格納する。その結果、メモリ719から必要な情報を演算部718が読み出して、上記(数7)に従った定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの算出が可能となる。
【0167】
次に、上記(数7)により算出された定電圧充電の充電電流Icvが定電流充電の一定電流Iccと一致する点が変化点充電量SOC_changeであることから、演算部718が変化点充電量SOC_changeを算出する。すなわち、上記(数7)によって算出された定電圧充電の充電電流Icvとメモリ719から読み出される制限電圧V_limの値と電池702の内部抵抗Rの値とを演算部718の電圧ベース充電率演算部764に供給することによって、電圧ベース充電率演算部764から変化点充電量SOC_changeを出力できる。
【0168】
一方、他の方法としては、定電流充電(CC充電)の期間に着目すると、各充電量SOCにおける電池702の回路クローズド電圧CCVを回路オープン電圧OCVと内部抵抗とから算出して、この回路クローズド電圧CCVが制限電圧V_limと一致するタイミングで充電量SOCが変化点充電量SOC_changeとなる。この一致のタイミングにおいては、CCV=OCV+Icc・R=V_lim、I=Iccの関係が成立する。すなわち、演算部718の電圧ベース充電率演算部764に定電流充電(CC充電)の充電電流Iccとメモリ719の不揮発性メモリから読み出される定電流充電(CC充電)の制限電圧V_limと電池702の内部抵抗Rの値とに供給することによって、電圧ベース充電率演算部764から変化点充電量SOC_changeを出力することができる。尚、定電流充電(CC充電)の充電電流Iccの値は、事前にメモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に格納しても良いし、もしくは電流検出部706の検出アナログ電流のA/D変換器715によるデジタル電流情報を利用することも可能である。
【0169】
次に、図12のステップ602では、上述したステップ601によって算出された変化点充電量SOC_changeを利用することによって、電池制御用半導体集積回路703に含まれた図4の演算部718は、下記のように定電流充電(CC充電)の充電期間Tccを算出する。
【0170】
一方、電池702の充電動作に関係する満充電容量Qmaxは、下記(数8)となる。
【0171】
【数8】

【0172】
ここで、Iccは電池702の定電流充電(CC充電)の充電電流であり、SOC_iniは充電直前での充電量SOCの初期値であり、Tccは定電流充電(CC充電)の充電期間であり、SOC_changeは電池702の充電動作が定電流充電(CC充電)から定電圧充電(CV充電)に変化するタイミングでの変化点充電量SOCである。
【0173】
従って、上記(数8)から定電流充電(CC充電)の充電期間は、下記(数9)のように計算される。
【0174】
【数9】

【0175】
すなわち、演算部718は、図12のステップ602においてメモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に事前に格納された満充電容量Qmaxと放電直前での充電量初期値SOC_iniと変化点充電量SOC_changeと定電流充電(CC充電)の充電電流Iccとを読み出すことによって、上記(数9)に従って定電流充電(CC充電)の充電期間Tccを算出するものである。
【0176】
次に、図12のステップ603では、上述したステップ601によって算出された変化点充電量SOC_changeを利用することで、電池制御用半導体集積回路703に含まれた図4の演算部718は下記のように定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvを算出する。下記(数10)の定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvの算出は、上記(数9)からのアナロジーに従って、充電量SOCが0.1%増大するために必要な部分充電期間Tcvを計算して積算するものである。
【0177】
【数10】

【0178】
すなわち、演算部718は、図12のステップ603においてメモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に事前に格納された満充電容量Qmaxと変化点充電量SOC_changeとを読み出し、上記(数7)に従って算出される定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvより上記(数10)に従って定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvを算出するものである。尚、この時には、満充電充電量SOC_endは、電池702の劣化によって必ずしも100%とはならないことから、演算部718によって別途算出される。
【0179】
特に、上記(数10)に従った定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvの算出には、下記に説明する直線近似方法が利用される。
【0180】
図9は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用して定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvを算出する際に、直線近似方法が利用される様子を示す図である。
【0181】
厳密に言えば、定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvは、図10の曲線650に示すように時間の変化に対して指数関数的に減少するものである。しかし、定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvは、図9の直線651に示したように、充電量SOCの変化に対して略直線に減少するものである。更に、定電圧充電(CV充電)が実行されるのは、電池702の充電期間後半の充電量SOCが高い領域である。また更に定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値を決定する上記(数7)において、電池702の回路クローズド電圧CCVである充電電圧V_limは定電圧であり、内部抵抗Rも充電量SOCが高い領域では大きな変化がなく一定値と仮定することができる。
【0182】
一方、図14は、電池702の充電量SOCと電池702の回路オープン電圧OCVとの関係を示す図である。
【0183】
図14の特性660に示したように、充電量SOCが高い領域では回路オープン電圧OCVと充電量SOCとは略線型の相関関係となっている。
【0184】
従って、上記(数7)において回路オープン電圧OCVは充電量SOCと略線型の関係を使用することによって、定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値を予測するものである。
【0185】
図11は、図9に示した定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvを算出する際の直線近似方法を更に詳細に説明する図である。
【0186】
図11に示したように、定電流充電(CC充電)で使用される定電流Iccの値と、満充電状態の到達と判断するための充電電流Icvの規定電流I_limの値と、図12のステップ601により算出された変化点充電量SOC_changeと、満充電充電量SOC_endとから、演算部718は図11に示す近似直線の勾配aを下記(数11)のように算出する。
【0187】
【数11】

【0188】
従って、上記(数11)のように算出された勾配aを使用して、演算部718は図11に示した近似直線によって時々刻々電流ベース充電率演算部766によって算出される電流ベース充電量SOC_Iに基づき、下記(数12)のように定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値を算出する。
【0189】
【数12】

【0190】
従って、上記(数12)で算出される定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値を上記(数10)の定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvの算出に使用することによって、変化点充電量SOC_changeから満充電充電量SOC_endまでの充電期間Tcvを算出することが可能となる。
【0191】
次に、図12のステップ604では、図12のステップ602で算出された定電流充電(CC充電)の充電期間Tccと図12のステップ603で算出された定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvとを演算部718が下記(数13)のように加算することによって、充電残時間Tcgを算出する。
【0192】
【数13】

【0193】
このように図12のステップ604で演算部718によって算出された充電残時間Tcgは、電池702の充電中に図3のモニタ表示のように簡易表示751もしくは詳細表示画面750によって表示されることが可能となる。
【0194】
次に、図12のステップ605では、電池702の回路クローズド電圧CCVが制限電圧V_limと実際に一致するタイミングにおける変化点充電量SOC_changeが算出される。
【0195】
これは、電圧検出部705の検出電圧である電池702の回路クローズド電圧CCVが制限電圧V_limと一致したタイミングにおいて電圧ベース充電率演算部764から出力される電圧ベース充電量SOC_Vの値と電流ベース充電率演算部766から出力される電流ベース充電量SOC_Iの値とのいずれか一方が、変化点充電量SOC_changeとして算出される。
【0196】
図12のステップ601において算出された変化点充電量SOC_changeの値は、電池702の内部抵抗Rの値等を使用して計算した予測値であった。それに対して、図12のステップ605にて算出される変化点充電量SOC_changeの値は、電池702の回路クローズド電圧CCVが制限電圧V_limと実際に一致するタイミングにて算出された値であるので、変化点充電量SOC_changeの実測値である。
【0197】
従って、より好適な実施の形態では、図12のステップ605にて算出される変化点充電量SOC_changeの値を使用して、メモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に格納されている電池702の内部抵抗Rの充電係数を補正する。すなわち、図12のステップ606では、図12のステップ605で算出される変化点充電量SOC_changeの値と図12のステップ601で算出された変化点充電量SOC_changeの値との差に基づいて、演算部718はメモリ719の不揮発性メモリの記憶領域に格納されている電池702の内部抵抗の充電係数を補正する。
【0198】
次に、図12のステップ607では、図12のステップ605にて算出される変化点充電量SOC_changeの値を使用して、上記(数11)で算出された勾配aを再計算して、更に上記(数12)で算出された定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値を再算出する。定電圧充電(CV充電)の期間中は、計算された充電電流Icvと実際に計測された充電電流Icvの値を比較して、差が大きい場合には、例えば満充電容量Qmaxを補正することにより、充電電流Icvを補正して、実測値と計算値が近くなるようにすることで、次の定電圧充電時間の算出精度を向上させる。補正した満充電容量Qmaxは、不揮発性メモリに格納して、次回利用されることが可能となる。上記(数12)を使用して再計算された定電圧充電(CV充電)の充電電流Icvの値を使用して、演算部718は、上記(数10)に従って定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvの値を再算出する。
【0199】
従って、図12のステップ607の以降では、図12のステップ607にて再計算された定電圧充電(CV充電)の充電期間Tcvの値が充電残時間として、図3のモニタ表示のように簡易表示751もしくは詳細表示画面750によって表示されることが可能となる。
【0200】
[実施の形態3]
図13は、図1に示した電池制御用半導体集積回路703を使用した本発明の実施の形態1による図6の電池703の放電時の動作とメモリ719の不揮発性メモリの格納内容と本発明の実施の形態2による図9から図12で説明した電池703の充電時の動作との関係を示す図である。
【0201】
すなわち、本発明の実施の形態3によって、図13に示した電池703の放電時での処理810とメモリ719の不揮発性メモリの格納内容820と電池703の充電時の処理830とは、それぞれ相互に関係を有している。
【0202】
図13に示したように、電池703の放電時での処理810では最初にメモリ719の不揮発性メモリの格納内容820の電池702の回路オープン電圧OCVと充電量SOCの関係と、満充電容量Qmaxの初期値と、満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数の近似式と、内部抵抗テーブル761(f(SOC))が、電池703の放電開始直後の処理A(処理811)に使用される。また、電池703の放電開始直後の処理A(処理811)によって、満充電容量Qmaxが、メモリ719の不揮発性メモリの格納内容820で更新される。
【0203】
次に、メモリ719の不揮発性メモリの格納内容820の電池702の回路オープン電圧OCVと充電量SOCの関係と、内部抵抗テーブル761(f(SOC))と、満充電容量Qmaxとが、電池703の放電中の処理B(処理812)に使用される。また、電池703の放電中の処理B(処理811)によって、内部抵抗テーブル761(f(SOC))が、メモリ719の不揮発性メモリの格納内容820で更新される。
【0204】
更に、メモリ719の不揮発性メモリの格納内容820の電池702の回路オープン電圧OCVと充電量SOCの関係と、内部抵抗テーブル761(f(SOC))と、満充電容量Qmaxと内部抵抗劣化係数の近似式が、電池703の放電終了後数時間経過した時点での処理C(処理813)に使用される。また電池703の放電終了後数時間経過した時点での処理C(処理813)によって、Qmax−内部抵抗劣化係数近似式が、メモリ719の不揮発性メモリの格納内容820で更新される。
【0205】
次に、電池703の充電時の処理830では、最初にメモリ719の不揮発性メモリの格納内容820の内部抵抗充電係数と内部抵抗テーブル761(f(SOC))と満充電容量Qmaxとを使用して変化点充電量SOC_changeが算出され(処理831)、算出された変化点充電量SOC_changeはメモリ719の不揮発性メモリに格納される。次に、メモリ719の不揮発性メモリに格納された満充電容量Qmaxと変化点充電量SOC_changeとを使用して、定電流充電(CC充電)の充電時間Tccと定電圧充電(CV充電)の充電時間Tcvとが算出される(処理832)。また、電池703の充電時の処理830の後、図13の破線の矢印に示したように、内部抵抗テーブル761(f(SOC))と満充電容量Qmaxとを更新することも可能である。
【0206】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0207】
例えば、本発明は、ノートPC用の電池だけではなく、PDA(パーソナル・デジタル・アシスト)や携帯型ゲームや携帯電話等に使用される電池制御用半導体集積回路にも適用されることが可能である。
【符号の説明】
【0208】
701…電池パック
702…電池
703…電池制御用半導体集積回路
704…保護回路
705…電圧検出部
706…電流検出部
707…温度検出部
708…ノートPC
709…A/D変換器
710…ルート
711…ルート
712…AC/DCコンバータ
715…A/D変換器
716…保護回路制御部
717…タイマ
718…演算部
719…メモリ
720…入出力部
721…DC/DCコンバータ
722…中央処理ユニット(CPU)
723…ハードディスクドライブ(HDD)
724…DVDドライブ
725…ルート
731…AC電源
761…内部抵抗テーブル
762…内部抵抗演算部
763…R温度係数テーブル
764…電圧ベース充電率演算部
765…電流積算部
766…電流ベース充電率演算部
767…比較判定部
768…Qmax−R劣化係数演算部
769…加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の放電動作と充電動作との少なくともいずれか一方を制御可能な電池制御機能を有する半導体集積回路であって、
前記半導体集積回路には、前記電池の電流を検出する電流検出部から生成される電流情報と、前記電池の電圧を検出する電圧検出部から生成される電圧情報とがそれぞれ供給可能とされ、
前記半導体集積回路は、メモリ機能と、電流積算機能と、電圧ベース充電量演算機能と、電流ベース充電量演算機能と、比較判定機能と、補正機能と、抵抗劣化係数出力機能とを具備して、
前記メモリ機能は、前記電池の満充電容量と前記電池の内部抵抗劣化係数との関係を格納可能とされ、
前記比較判定機能によって比較される電圧ベース充電量と電流ベース充電量とが実質的に一致すると判定された状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量と前記抵抗劣化係数出力機能から出力される前記内部抵抗劣化係数を前記メモリ機能に格納可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記メモリ機能には、前記満充電容量の初期値と前記電流ベース充電量の初期値が格納可能とされ、
前記電流積算機能に前記電流情報が供給されることによって、前記電流積算機能は前記電流積算値を出力可能とされ、
前記電流情報と前記電圧情報とが前記電圧ベース充電量演算機能に供給されることによって、前記電圧ベース充電量演算機能は電圧ベース充電量を出力可能とされ、
前記メモリ機能からそれぞれ出力される前記満充電容量の前記初期値および前記電流ベース充電量の前記初期値と前記電流積算機能から出力される前記電流積算値とが前記電流ベース充電量演算機能に供給されることによって、前記電流ベース充電量演算機能は電流ベース充電量を出力可能とされ、
前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが前記比較判定機能にそれぞれ供給されることによって、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量との差に対応した比較出力信号を前記比較判定機能が出力可能とされ、
前記比較判定機能から出力される前記比較出力信号と前記メモリ機能から出力される前記満充電容量の前記初期値とが前記補正機能に供給されることによって、前記補正機能は前記満充電容量の補正計算値を出力可能とされ、
前記抵抗劣化係数出力機能は、前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値に応答して、前記内部抵抗劣化係数を出力可能とされ、
前記放電動作の開始直後に、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが実質的に一致する前記状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値と、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量が実質的に一致する前記状態の当該電圧ベース充電量と当該電流ベース充電量のいずれか一方とが、前記満充電容量の前記初期値と前記電流ベース充電量の前記初期値として前記メモリ機能にそれぞれ格納可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記半導体集積回路は、抵抗パラメータ出力機能を更に具備して、
前記抵抗パラメータ出力機能は、前記電圧ベース充電量演算機能から出力される前記電圧ベース充電量と前記電池の内部抵抗との関係を示すテーブルによって構成され、前記電圧ベース充電量演算機能から出力される前記電圧ベース充電量に応答して、前記電池の前記内部抵抗の抵抗パラメータを出力可能とされ、
前記電池の放電継続中に、前記電圧検出部から生成される前記電池の回路クローズド電圧と前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流とに基づいて、前記電池の前記内部抵抗を算出して、
前記電池の前記放電継続中の前記電池の前記内部抵抗の算出結果に従って、前記抵抗パラメータ出力機能の前記電池の前記内部抵抗の前記抵抗パラメータの出力方法が更新可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記電池の放電終了後数時間経過した時点で前記電池の回路オープン電圧より算出される充電量と前記電池の放電中の前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流の積算値とに基づいて、前記電池の満充電容量を算出して、
前記電池の放電中の前記電池の電流値と電圧値とに基づき、前記内部抵抗劣化係数を算出して、
前記電池の放電終了後数時間経過した時点での前記満充電容量の算出結果と前記電池の放電中の前記内部抵抗劣化係数の算出結果とに基づき、前記メモリ機能に格納された前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数との前記関係を更新可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項5】
請求項2において、
前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数とに基づいて、前記半導体集積回路は前記電池の利用可能充電量と残容量と残時間とを算出する
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
請求項2において、
前記充電動作の開始直後に、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが実質的に一致する前記状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値と、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量が実質的に一致する前記状態の当該電圧ベース充電量と当該電流ベース充電量のいずれか一方とが、前記満充電容量の前記初期値と前記電流ベース充電量の前記初期値として前記メモリ機能にそれぞれ格納可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項7】
請求項3において、
前記電池の充電継続中に、前記電圧検出部から生成される前記電池の回路クローズド電圧と前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流とに基づいて、前記電池の前記内部抵抗を算出して、
前記電池の前記充電継続中の前記電池の前記内部抵抗の算出結果に従って、前記抵抗パラメータ出力機能の前記電池の前記内部抵抗の前記抵抗パラメータの出力方法が更新可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項8】
請求項4において、
前記電池の充電終了後数時間経過した時点で前記電圧検出部から生成される前記電池の回路オープン電圧より算出される充電量と前記電池の充電中の前記電流検出部から生成される前記電池の充電電流の積算値とに基づいて、前記電池の満充電容量を算出して、
前記電池の充電中の前記電池の電流値と電圧値とに基づき、前記内部抵抗劣化係数を算出して、
前記電池の充電終了後数時間経過した時点での前記満充電容量の算出結果と前記電池の充電中の前記内部抵抗劣化係数の算出結果とに基づき、前記メモリ機能に格納された前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数との前記関係を更新可能とされた
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項9】
請求項3において、
前記充電動作としては、充電前半に定電流充電が実行されて、充電後半に定電圧充電が実行されるものであり、
前記定電流充電から前記定電圧充電に切り替わる変化点充電量を算出することによって、前記定電流充電の定電流充電時間と前記定電圧充電の定電圧充電時間とを算出して、前記定電流充電時間と前記定電圧充電時間との加算値を充電残時間として出力する
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項10】
請求項9において、
前記定電圧充電時間の算出において、前記電池の充電量と前記定電圧充電の充電電流との関係を直線近似して、前記定電圧充電時間を算出する
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項11】
請求項10において、
前記変化点充電量を算出する算出手法は、前記電池の前記定電流充電の期間の回路クローズド電圧が前記定電圧充電の制限電圧に一致するタイミングにおける前記変化点充電量を算出するか、または、前記電池の前記定電圧充電の期間の前記充電電流が前記定電流充電の一定電流に一致するタイミングにおける前記変化点充電量を算出するかの、少なくともいずれか一方を実行するものであり、
前記半導体集積回路は、前記算出手法によって算出された前記変化点充電量を、前記電池の実際の充電中に定電流充電から定電圧充電への変化に基づいて算出される実際の変化点充電量の値に更新するものであり、
前記半導体集積回路は、前記実際の変化点充電量の値を使用することによって前記定電圧充電時間を再計算して、前記残充電時間の出力値を更新する
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項12】
請求項11において、
前記メモリ機能は、前記半導体集積回路に内蔵された不揮発性メモリによって実現される
ことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項13】
電池の放電動作と充電動作との少なくともいずれか一方を制御可能な電池制御機能を有する半導体集積回路の動作方法であって、
前記半導体集積回路は、メモリ機能と、電流積算機能と、電圧ベース充電量演算機能と、電流ベース充電量演算機能と、比較判定機能と、補正機能と、抵抗劣化係数出力機能とを具備して、
前記メモリ機能に、前記電池の満充電容量と前記電池の内部抵抗劣化係数との関係を格納するステップと、
前記半導体集積回路に、前記電池の電流を検出する電流検出部から生成される電流情報と、前記電池の電圧を検出する電圧検出部から生成される電圧情報とがそれぞれ供給するステップと、
前記比較判定機能によって比較される電圧ベース充電量と電流ベース充電量とが実質的に一致すると判定された状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量と前記抵抗劣化係数出力機能から出力される前記内部抵抗劣化係数を前記メモリ機能に格納するステップとを含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記メモリ機能に、前記満充電容量の初期値と前記電流ベース充電量の初期値が格納するステップと、
前記電流積算機能に前記電流情報が供給されることによって、前記電流積算機能から前記電流積算値を出力するステップと、
前記電流情報と前記電圧情報とが前記電圧ベース充電量演算機能に供給されることによって、前記電圧ベース充電量演算機能から電圧ベース充電量を出力するステップと、
前記メモリ機能からそれぞれ出力される前記満充電容量の前記初期値および前記電流ベース充電量の前記初期値と前記電流積算機能から出力される前記電流積算値とが前記電流ベース充電量演算機能に供給されることによって、前記電流ベース充電量演算機能から電流ベース充電量を出力するステップと、
前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが前記比較判定機能にそれぞれ供給されることによって、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量との差に対応した比較出力信号を前記比較判定機能から出力するステップと、
前記比較判定機能から出力される前記比較出力信号と前記メモリ機能から出力される前記満充電容量の前記初期値とが前記補正機能に供給されることによって、前記補正機能から前記満充電容量の補正計算値を出力するステップと、
前記抵抗劣化係数出力機能から、前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値に応答して、前記内部抵抗劣化係数を出力するステップと、
前記放電動作の開始直後に、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量とが実質的に一致する前記状態で前記補正機能から出力される前記満充電容量の前記補正計算値と、前記電圧ベース充電量と前記電流ベース充電量が実質的に一致する前記状態の当該電圧ベース充電量と当該電流ベース充電量のいずれか一方とを、前記満充電容量の前記初期値と前記電流ベース充電量の前記初期値として前記メモリ機能にそれぞれ格納するステップとを含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記半導体集積回路は、抵抗パラメータ出力機能を更に具備して、
前記抵抗パラメータ出力機能は、前記電圧ベース充電量演算機能から出力される前記電圧ベース充電量と前記電池の内部抵抗との関係を示すテーブルによって構成され、
前記抵抗パラメータ出力機能から、前記電圧ベース充電量演算機能から出力される前記電圧ベース充電量に応答して、前記電池の前記内部抵抗の抵抗パラメータを出力するステップと、
前記電池の放電継続中に、前記電圧検出部から生成される前記電池の回路クローズド電圧と前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流とに基づいて、前記電池の前記内部抵抗を算出するステップと、
前記電池の前記放電継続中の前記電池の前記内部抵抗の算出結果に従って、前記抵抗パラメータ出力機能の前記電池の前記内部抵抗の前記抵抗パラメータの出力方法を更新するステップとを含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記電池の放電終了後数時間経過した時点で前記電圧検出部から生成される前記電池の回路オープン電圧より算出される充電量と前記電池の放電中の前記電流検出部から生成される前記電池の放電電流の積算値とに基づいて、前記電池の満充電容量を算出するステップと、
前記電池の放電中の前記電池の電流値と電圧値とに基づき、前記内部抵抗劣化係数を算出するステップと、
前記電池の放電終了後数時間経過した時点での前記満充電容量の算出結果と前記電池の放電中の前記内部抵抗劣化係数の算出結果とに基づき、前記メモリ機能に格納された前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数との前記関係を更新するステップとを含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項17】
請求項14において、
前記満充電容量と前記内部抵抗劣化係数とに基づいて、前記半導体集積回路は前記電池の利用可能充電量と残容量と残時間とを算出するステップを更に含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項18】
請求項15において、
前記充電動作としては、充電前半に定電流充電が実行されて、充電後半に定電圧充電が実行されるものであり、
前記定電流充電から前記定電圧充電に切り替わる変化点充電量を算出するステップと、
前記変化点充電量から前記定電流充電の定電流充電時間と前記定電圧充電の定電圧充電時間とを算出するステップと、
前記定電流充電時間と前記定電圧充電時間との加算値を充電残時間として出力するステップとを含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記定電圧充電時間の算出する前記ステップにおいて、前記電池の充電量と前記定電圧充電の充電電流との関係を直線近似して、前記定電圧充電時間を算出する
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項20】
請求項19において、
前記変化点充電量を算出する算出手法は、前記電池の前記定電流充電の期間の回路クローズド電圧が前記定電圧充電の制限電圧に一致するタイミングにおける前記変化点充電量を算出するか、または、前記電池の前記定電圧充電の期間の前記充電電流が前記定電流充電の一定電流に一致するタイミングにおける前記変化点充電量を算出するかの、少なくともいずれか一方を実行するものであり、
前記算出手法によって算出された前記変化点充電量を、前記電池の実際の充電中に定電流充電から定電圧充電への変化に基づいて算出される実際の変化点充電量の値に更新するステップと、
前記半導体集積回路は、前記実際の変化点充電量の値を使用することによって前記定電圧充電時間を再計算して、前記残充電時間の出力値を更新するステップとを含む
ことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−247339(P2012−247339A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120119(P2011−120119)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】