説明

半導電性ゴム製品の製造方法

【課題】半導電性ゴム製品を成形する際、製造ライン中の未加硫ゴム混練物を採取して、その体積抵抗率が最終製品と良好な対応関係にある体積抵抗率調整用シートを作成する。このシートの体積抵抗率の測定値から、効率よく所望の体積抵抗率を有する半導電性ゴム製品を製造することができる半導電性ゴム製品の製造方法を提供する。
【解決手段】ゴム成分とカーボンブラックとを混練し、未加硫ゴム混練物を成形する半導電性ゴム製品の製造方法であって、未加硫ゴム混練物を採取する。該未加硫ゴム混練物を、体積抵抗率調整用シートの成形型のキャビティー4に対して、縦辺A、横辺B、厚さCがそれぞれ特定の比率であり、特定の体積比のシートに形成し、該シートを前記体積抵抗率調整用シートの成形型で成形する。得られる体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率を測定し、この測定値により半導電性ゴム製品の製造条件を調整して体積抵抗率の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックを配合して導電性を付与した半導電性ゴム製品の製造方法に関する。より詳しくは、最終製品の半導電性ゴム製品の体積抵抗率と良好な対応関係にある体積抵抗率を有する体積抵抗率調整用シートを作製し、その測定値に応じて製造条件を調整し、所望の体積抵抗率の半導電性ゴム製品を得る半導電性ゴム製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ゴム製品は、ゴム成分に導電性付与剤としてカーボンブラックを配合して製造されることが多い。カーボンブラックを用いる場合、体積抵抗率の環境依存性が小さく、安価、低汚染性などが利点としてある。しかし、カーボンブラックを配合して、凡そ1×102Ωcm〜1×107Ωcm程度の半導電性のゴムシートを製造する場合、ロットによってゴム製品の体積抵抗率が大きく変動し、半導電性の安定性が問題となることが多い。
【0003】
カーボンブラックをゴム成分に配合する場合、加圧式ニーダーやバンバリーミキサー等によって混練、分散を行うが、カーボンブラックの分散状態やカーボンゲルの生成量の変動により体積抵抗率が変動する。体積抵抗率の変動の原因として、ゴムの粘度やカーボンブラックのpH等の原材料の物性や、混練や加硫の時間や温度等の加工条件の僅かな変動が挙げられる。このように僅かな加工条件の変動が最終製品の体積抵抗率の大きい変動として表れるため、混練後の未加硫ゴムの体積抵抗率と最終のゴム製品の体積抵抗率との正確な相関を検出し、加工条件の微調整により最終製品の体積抵抗率の調整を行うことがある。そのために、最終製品を成形する前段階において、製造ラインから未加硫ゴムを採取し体積抵抗率を測定し、最終製品の体積抵抗率を高精度に予測することが必要となる。
【0004】
従来、カーボンブラックによって導電性を付与した未加硫ゴムの体積抵抗率をオフラインで予測する方法や分散度を評価する方法については種々の報告がなされている。例えば、加硫特性試験と同時に電気抵抗測定を行う方法(特許文献1)が報告されているが、特殊な評価機が必要である。また、カーボンブラックの凝集度を画像解析することでカーボンブラックの分散度を評価する方法(特許文献2)が報告されているが、カーボンブラックの分散度を画像処理すると、測定箇所によって測定値がばらつく場合がある。また、実際の運用には膨大なデータを蓄積しなければならないという問題がある。簡易な方法としては、混練後の未加硫ゴムをJIS―6299:2001に記載されている方法によって作製した加硫ゴムシートを体積抵抗率測定機(例えば、(株)ダイアインスツルメンツ製のハイレスタやロレスタ等)を用いて体積抵抗率を測定する場合が多い。
【0005】
しかしながら、上記オフラインで成形する体積抵抗率の測定用の加硫ゴムシートは、未加硫ゴムを採取する製造ラインにおける位置や、ロット間により、最終製品の体積抵抗率の再現性が悪くなってしまう。体積抵抗率測定用の加硫ゴムシートの体積抵抗率から、加工条件と最終製品の体積抵抗率との相関を得るためには、膨大な体積抵抗率測定用加硫ゴムシートを作成しなければならず、効率が低下する上、所望の体積抵抗率を有する最終製品の製造が困難となっている。
【特許文献1】特開平7−198642号公報
【特許文献2】特開2005−179479
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、半導電性ゴム製品を成形する際、製造ライン中の未加硫ゴム混練物を採取して、その体積抵抗率が最終製品と良好な対応関係にある体積抵抗率調整用シートを作成する。そして、得られた体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率の測定値から、効率よく所望の体積抵抗率を有する半導電性ゴム製品を製造することができる半導電性ゴム製品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、製造ラインから未加硫ゴム混練物を採取して、これを成形型のキャビティーに対し、特定の大きさの関係にあるシート、即ち、特定の割合の分出し寸法、特定の割合の体積のシートとし、これを成形型により加熱、加圧し、加硫した。得られた体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率は、最終製品の体積抵抗率と極めて対応していることを見い出した。
【0008】
未加硫ゴムを成形型により加硫してゴム製品を成形するとき、加硫初期から中期(全加硫期間100に対し開始から(Tc)凡そ10〜50の範囲)において、加熱によるカーボンブラックの凝集とゴムの分子の応力緩和が起きて低抵抗化する挙動が起きている。一方、加硫中期から加硫後期(凡そTc50〜Tc90の範囲)において、加硫反応によってゴム分子とカーボンブラックが固定化されて分散状態が安定化すると考えられる。加硫の初期段階で気泡を抜くために複数回の加圧操作を行うと、カーボンブラックの分散状態が不均一となり、ゴム製品の体積抵抗率がばらつく要因になることに着目した。体積抵抗率調整用シートの成形型による成形において、一回の加圧操作により成形を行うと、加硫初期に生じるカーボンブラックの分散状態の変動を抑制し、その体積抵抗率は最終製品の体積抵抗率と優れた対応関係にあることを見出した。
【0009】
また、このような加硫とカーボンブラック分散の関係から、加硫過程におけるゴム及びカーボンブラックの緩和挙動を小さくすることに着眼した。高温下で高速で加硫を行うことにより、未加硫ゴム混練物の分散状態を加硫後のゴムシートに反映させることができ、最終製品の半導電性ゴム製品の体積抵抗率と優れた対応関係にある体積抵抗率を有する体積抵抗率調整用シートが得られることの知見を得た。これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ゴム成分とカーボンブラックとを混練し、未加硫ゴム混練物を成形する半導電性ゴム製品の製造方法であって、
未加硫ゴム混練物を採取し、
該未加硫ゴム混練物を、体積抵抗率調整用シートの成形型のキャビティーに対して、縦辺と横辺との長さの比率がそれぞれ0.67以上0.84以下、厚さの比率が1.80以上2.60以下であり、体積が112体積%以上145体積%以下のシートに形成し、
該シートを前記体積抵抗率調整用シートの成形型で成形して得られる体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率を測定し、この測定値により半導電性ゴム製品の製造条件を調整して体積抵抗率の調整を行うことを特徴とする半導電性ゴム製品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導電性ゴム製品の製造方法は、半導電性ゴム製品を成形する際、製造ラインから未加硫ゴム混練物を採取して、その体積抵抗率が最終製品と良好な対応関係にある体積抵抗率測定用ゴムシートを作成する。そして、得られた体積抵抗率測定用ゴムシートの体積抵抗率の測定値から、効率よく所望の体積抵抗率を有する半導電性ゴム製品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の半導電性ゴム製品の製造方法は、半導電性ゴム製品の製造であれば、いずれにも適用することができる。半導電性ゴム製品としては、具体的には、複写機、レーザービームプリンター、LEDプリンター、電子写真製版システム等の電子写真装置の帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等の半導電性ゴム層を有する半導電性ゴムローラーを挙げることができる。
【0013】
本発明の半導電性ゴム製品の製造方法の一例として、半導電性ゴムローラーの製造方法を例示して説明する。半導電性ゴムローラーは、図1の断面概略図に示すように、導電性支持体1上に半導電性ゴムからなる半導電性ゴム層2と、この上に表面層3が設けられている。
【0014】
上記導電性支持体としては、導電性を有し、半導電性ゴム層を支持することができる強度を有するものであれば特に制限はない。その材料としては、例えば、SUS、鉄、銅、ステンレス、真鍮、導電性プラスチック等を使用することができる。導電性支持体の形状は、円柱状の他、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。導電性支持体の外径は、例えば、4.0〜8.0mm等の範囲を挙げることができる。
【0015】
上記半導電性ゴム層は、ゴム成分と導電性付与剤としてカーボンブラックとを混練した未加硫ゴム混練物を成形して得られるものであり、その厚さとしては、例えば、0.5mmから5.0mmの範囲を挙げることができる。
【0016】
上記半導電性ゴム層に用いられるゴム成分としては、特に制限されるものではない。例えば、以下のものを例示することができる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム。EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン−共重合体)、天然ゴム、エピクロルヒドリンゴム、CR(クロロプレン)、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、NBRを好適に用いることができる。NBRは1×1010Ωcm程度と体積抵抗率が比較的低く、カーボンブラックの配合量を半導電性ゴム層の硬度が上昇しない範囲の量とすることができると共に、汚染性も比較的低い。
【0017】
ゴム成分としては、ムーニー粘度(ML(1+4)100℃、JIS−K6300−1:2001に準ずる)が55以下のものが好ましい。ムーニー粘度が55以下であれば、成形型のキャビティ内での流動性が良好であり、均一な体積抵抗率を有し、また、加硫に伴う生成物の除去が容易となり、気泡が少ない半導電性ゴム層を得ることができる。
【0018】
用いられるカーボンブラックとしては、特に制限はなく、半導電性ゴム層の体積抵抗率、硬さ、引張り特性、耐磨耗性等に応じて、カーボンブラックの種類と配合量を選択することができる。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの導電性カーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボンブラックを用いることができる。
【0019】
半導電性ゴム層は、上記物質の機能を阻害しない範囲で、他の添加物を含有していてもよい。添加物として、具体的には、ゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤、分散剤等、滑材、受酸剤等を用いることができる。
【0020】
半導電性ゴム層の製造方法について以下に説明する。
【0021】
ゴム原料に、カーボンブラックの他、充填剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、分散剤、滑材、受酸剤等を配合し、混練して未加硫ゴム混練物を作製する。混練には、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等の混練機を用いることができる。
【0022】
未加硫ゴム混練物は製造ラインからその一部が採取され、成形する半導電性ゴム層の体積抵抗率と良好な対応関係にある体積抵抗率を有する体積抵抗率調整用シートに形成される。体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率によって半導電性ゴム層の成形条件を調整する。体積抵抗率調整用シートの形成については後述する。
【0023】
未加硫ゴム混練物の成形は、押出成形、型成形等いずれであってもよい。例えば、導電性支持体をセットした円筒状金型に混練物を注入し、加熱、加圧して未加硫ゴムを加硫し、半導電性ゴム層を形成する。また、クロスヘッドを備えたベント式押出し機にて導電性支持体と共に押出す、あるいは押出し機で円筒状に押出し、所定長さに切断した未加硫ゴムチューブを形成し、これに導電性支持体を挿入した後、加硫して半導電性ゴム層を形成することができる。加硫は、加硫缶やバッチ式熱風炉、連続加硫、プレス加硫等の方法によることができる。加硫を行う時間、温度、加圧等の条件については、未加硫ゴム混練物から作成した体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率に応じて、最終製品の半導電性ゴム層が所望の体積抵抗率を有するように調整して行う。
【0024】
半導電性ゴム層は、端部を突切る等して、端部を整えることが好ましい。特に、導電性支持体と共に未加硫ゴム混練物を押し出す場合は、加硫前に端部を整えておくことが好ましい。また、半導電性ゴム層は、乾式研磨や湿式研磨等の研磨加工を行い、表面特性や形状を調整してもよい。
【0025】
次に、体積抵抗率調整用シートの作製方法について説明する。
【0026】
未加硫ゴム混練物は、混練の最終段階から採取することが好ましい。
【0027】
採取した未加硫ゴム混練物を、先ずシートに形成する。形成するシートの大きさは、体積抵抗率調整用シートの成形型のキャビティーに対して、縦辺と横辺との長さの比率をそれぞれ0.67以上、0.84以下、厚さの比率を1.80以上、2.60以下とし、且つ、体積を、112体積%以上、145体積%以下とする。シートの大きさ及び体積を、体積抵抗率調整用シートの成形型のキャビティーに対し、上記範囲とすることにより、成形型内で適切に加圧、加熱により加硫され、最終製品の体積抵抗率に対応した体積抵抗率を有する体積抵抗率調整用シートを形成することができる。
【0028】
上記シートの成形は、未加硫ゴムの膨張を考慮した上で、間隙を調整したオープンロールを用いて、成形型のキャビティ寸法の深さ方向に対して厚さが1.80以上、2.60以下の比率になるように形成(分だし)する。その後、成形型のキャビティーに対し、体積が上記範囲を満たし、縦、横が上記範囲を満たす大きさに切断してシートを形成する。切断したシートは分散したカーボンブラックとゴムの応力緩和が安定するまで常温常湿下で放置することが好ましい。
【0029】
形成したシートを加硫、成形する体積抵抗率調整用シートの成形型(以下、調整用シート成形型ともいう。)としては、キャビティーを所定の温度、圧力で一定保持できるものであれば特に制限はない。調整用シート成形型のキャビティーの温度のばらつきはゴムの加硫速度、即ち体積抵抗率に影響を及ぼすので、キャビティの温度を±1℃以内に制御できることが好ましい。また、キャビティ内に配置した上記シートを厚さ方向に加圧可能な加圧手段を有するものが好ましい。加圧手段としては、加圧開始から所定の圧力に到達するまでの操作を短時間且つ一定にできるよう、油圧による自動加圧装置が好ましい。調整用シート成形型としてはJIS−K6299(2001)に準ずるものが好ましい。
【0030】
調整用シート成形型の一例として、図2にその一部を示すものを挙げることができる。図2に示す調整用シート成形型は、縦、横の長さA、B、厚さCを有するキャビティー4を有する。キャビティー4の底面5とキャビティ4の上部には熱盤(図示せず)が設けられ、上部の熱盤を下方に向かって移動させ、キャビティー内のシートを加圧するための油圧によるプレス機(図示せず。)が設けられる。キャビティー内に配置された上記シートは、所定の温度、所定の加圧が負荷され、体積抵抗率調整用シートに成形される。調整用シート成形型のキャビティーの大きさは適宜選択することができ、例えば、縦横は50mm以上、200mm以下、厚さは0.5mm以上、4mm以下の範囲とすることもできる。
【0031】
上記調製用シート成形型により未加硫ゴムを加硫して体積抵抗率調整用シートを成形する際の加硫時間は、半導電性ゴム製品を成形する加硫時間Tc90より長く、加硫戻りが発生しない範囲で任意に設定すればよい。加硫時間はJIS−K6300−1(2001)に準ずることが好ましい。
【0032】
上記調製用シート成形型により未加硫ゴムを加硫して体積抵抗率調整用シートを成形する際の加熱温度は、半導電性ゴム製品の加熱温度と同じにする必要はなく、むしろそれより高温とし、即ち加硫速度を速くすることが好ましい。加熱温度を高くし高速で加硫反応を行い、カーボンブラックやゴム分子の緩和が最終まで進行し、体積抵抗率が最低値に到達する前に、加硫反応を終了させることで、未加硫ゴム混練物の分散状態を体積抵抗率調整用シートに反映させることが可能となる。体積抵抗率調整用シートを成形する際の加熱温度は170℃以上、205℃以下であることが好ましい。また、体積抵抗率調整用シートの成形型による成形は、加圧操作を1回で行うことが好ましい。
【0033】
加硫後、体積抵抗率調整用シートの冷却方法は、例えば、調整用シート成形型を水冷して急冷させる方法や、体積抵抗率調整用シートを調整用シート成形型から取り出して放冷、冷却水に直接浸漬、又は冷却水を循環させた金属板上で急冷する方法等によればよい。冷却後は、一定の温湿度環境下で一定時間以上放置することが好ましい。
【0034】
得られた体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率の測定は、市販の種々の体積抵抗率測定機を用いることができる。例えば、株式会社ダイアインスツルメンツ製のハイレスタやロレスタ等を用いることができるが、体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率が低い場合、例えば、10Ωcm〜1×106Ωcm程度では、ロレスタを用いることが好ましい。また、その場合の測定プローブは平面型で加圧力が一定になるような構造、例えば、同社のローレスタ用プローブESP型等を用い、プローブとゴムの加圧による接触面積のばらつきを小さくして測定することができる。体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率が50Ω・cm以上、10000Ω・cm以下であることが好ましい。
【0035】
上記半導電性ゴム層上に設けられる表面層は、半導電性ゴム層からの析出物による感光体の汚染を抑制し、リークの発生を抑制し、感光体の均一帯電を促進させる等の機能を半導電性ゴムローラーに付与するために設けられる。表面層の膜厚は、例えば、1〜50μmの範囲とするのが好ましい。表面層がこの範囲の厚さを有することにより、半導電性ゴムローラーの静電容量が大きくなり、耐ピンホールリーク性や帯電均一性を向上させることができ、耐ブリード性を有する。
【0036】
表面層としては、柔軟性、耐磨耗性及び機械強度のある高分子バインダーを結着樹脂とし、この樹脂中に導電剤を分散して抵抗を調整したものを挙げることができる。高分子バインダーとしては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂等を使用することができる。
【0037】
表面層の成形は以下の方法によることができる。高分子バインダーを溶剤に溶解し、その中に導電剤を加え、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、ペイントシェーカー等の塗料分散機を用いて分散する。これを浸漬塗工、スプレー塗工、ロールコート等の塗工方法によって半導電性ゴム層の外周に塗布する。更に熱風循環乾燥機や赤外線乾燥炉等を用いて溶剤を除去して表面層を形成する。
【0038】
また、上記表面層に替えて、半導電性ゴム層に電子線、紫外線、X線、赤外線、プラズマ等のエネルギー線を照射して、半導電性ゴム層の表面を高架橋化してもよい。中でも、紫外線による高架橋化が好ましい。高架橋した半導電性ゴム層の表面は、静電容量が大きくなり、粘着性や摩擦係数が低下するため、トナーや外添剤の付着を抑制することができる。半導電性ゴム層に紫外線照射する場合、低圧水銀ランプを用いた紫外線照射装置を用い、半導電性ゴムローラーを回転させながら紫外線照射することで半導電性ゴム層を均一に表面処理することができ、良好な表面性能が得られる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の導電性ゴムローラーを適用した具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【0040】
実施例、比較例で使用した原料は以下のとおりである。
(1)原料ゴム
アクリルニトリルブタジエンゴム
N230SV:JSR株式会社製(アクリルニトリル量35.0%)(NBR)
(2)カーボンブラック
トーカブラック#7360SB:東海カーボン株式会社製
(3)充填剤、加硫剤等
炭酸カルシウム(ナノックス#30:丸尾カルシウム株式会社製)
酸化亜鉛:亜鉛華2種
ステアリン酸亜鉛
硫黄
(4)加硫促進剤
テトラベンジルチウラムジスルフィド(ノクセラーTBZTD:大内新興化学工業株式会社製)(TBZTD)
[実施例1]
原料ゴムとしてNBR100質量部、カーボンブラック48質量部、炭酸カルシウム20質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸亜鉛1質量部を配合し、加圧式ニーダー((株)モリヤマ社製)(75L)に対して68%の体積充填量で配合した。ニーダーブレードの回転数は20rpmとし、BIT後の混練時間を5min、8min、11min、14min、17minと変えて体積抵抗率が異なる未加硫ゴムを5種作製した。加圧式ニーダーで混練したゴムは、外径22mmのオープンロール(株式会社関西ロール社製)に連続して移した。オープンロールはフロントロール15.2rpm、バックロール17.0rpm、ロール間隙5.0mmでブレンダーロールにかけて7分間冷却混練した。更に、硫黄1.2質量部、TBZTD4.5質量部を配合して5分間混練し、未加硫ゴム混練物を作成した。その後、分だし後のゴムの厚さが0.45cmの厚さになるようにオープンロールの間隙を調整して体積抵抗率調整用シート作製用の未加硫ゴム混練物を採取した。
【0041】
採取後、オープンロール間隙を4.0mmに広げて未加硫ゴム混練物をシート状に分だし排出し、更にリボン状に切断して冷却した。
【0042】
次に、90℃に設定したクロスヘッドを用いた直径50mmベント式押出し成型機によって、導電性支持体(SUS製、外径6.0mm、長さ258.0mm)の外周に未加硫ゴム層を押出した。導電性支持体の端部10.0mmの未加硫ゴム層を切り離して未加硫ゴム層の長さを220.0mmにした。その後、160℃の熱風乾燥炉中で1時間加熱加硫した。加硫後の半導電性ゴム層の表面を、乾式研磨機によって研磨して、半導電性ゴム層を中央の外径8.5mm、端部の外径8.25mmのクラウン形状にした。研磨した半導電性ゴム層を低圧水銀ランプにて、紫外線強度60mW/cm2で、30rpmで回転させながら、100秒間照射して、半導電性ゴムローラーを得た。
【0043】
混練時間の異なる未加硫ゴム混練物5種について、同様にして、半導電性ゴムローラーを各50本作成した。
【0044】
得られた半導電性ゴムローラーについて体積抵抗率Rr(Ω・cm)を以下の測定方法により測定した。
【0045】
半導電性ゴムローラーを23℃、53%RH(NN環境)に24時間以上置いた後、導電性支持体の両端部に各500gの荷重をかけて径30mmのSUS製ドラムに圧接し、SUS製ドラムを30rpmで回転させ、半導電性ゴムローラーを従動回転させる。この状態で導電性支持体の露出部の一方から直流電圧(−200Volt)を印加、SUS製ドラムに直列に接続した抵抗体(1kΩ)にかかる電圧を3秒間測定し、50本の半導電性ローラーの平均値Vr(Volt)を得た。このVrを用いて、半導電性ゴムローラーの体積抵抗率Rrを下記式より算出した。
【0046】
Rr=(200×103/Vr)×L×T/D
式中、L(cm)は半導電性ゴム層の長手方向の長さ、T(cm)は半導電性ゴムローラーとSUSドラムのニップ幅、D(cm)は半導電性ゴム層の長手中央部分の厚さを示す。(L=220cm、T=0.05cm、D=1.25cm)
各混練時間が異なる未加硫ゴム混練物を用いた半導電性ゴム層を有する半導電性ゴムローラー毎に体積抵抗率の平均値を求め、体積抵抗率Rr(ave)とした。各半導電性ゴムローラーのRr(ave)は以下のとおりである。
【0047】
5min:1.2E5Ω・cm
8min:1.8E5 Ω・cm
11min:3.5E5 Ω・cm
14min:5.9E5 Ω・cm
17min:8.8E5 Ω・cm
上記体積抵抗率調整用シート作製用の未加硫ゴム混練物は、分だし後、常温常湿環境で12時間以上放置し、縦、横、それぞれ9.00cmに裁断しシートを得た。厚さはデジタルノギスで10箇所測定しその平均値を厚みとして算出した。シートの体積は、調整用シート成形型のキャビティーの体積に対し、126.6%(充填率)である。
【0048】
図2に示す、キャビティー寸法、縦横12.00cm(図2中A、B)、厚さ0.20cm(図2中C)を有し、材質はS50C、キャビティー部にハードクロムメッキを施した調整用シート成形型を用いてシートを成形した。プレス機は、35cm×35cmの熱盤を有する30ton出力の4柱式加熱加圧式プレス機(HP−30型:ユーカリ技研株式会社製)を使用した。加硫温度は180℃に設定し、調整用シート成形型のキャビティーを上下の熱盤に挟んだ状態で予熱した。キャビティー内が設定温度に達した後、調整用シート成形型を取り出し、速やかに上記シートをキャビティ中央部に置き、シートを100kg/cm2になるまで加圧し、100kg/cm2に達した後は加圧を10分間維持した。その後、体積抵抗率調整用シートを調整用シート成形型から取り出し、約20〜25℃(室温)の金属板の上に平置きして10分間冷却し、更に、23℃、60%RH(NN環境)に12時間以上静置した。得られた体積抵抗率調整用シートの密度は1.25g/cm3であった。
【0049】
体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率測定には株式会社ダイアインスツルメンツ製のローレスタGP(MCP−T610)を用いた。プローブはESPプローブを用いた。測定台はレジテーブルUFL(MCP−ST03)の絶縁面を用いた。補正係数は4.43、印加電圧は90Vとした。体積抵抗率は電圧印加10秒後の値を読み取った。測定位置は体積抵抗率調整用シート内で測定位置が重ならないよう9箇所とし、9点の平均値を体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率Sr(ave)とした。
【0050】
混練時間の異なる5種の半導電性ゴムローラーについて、体積抵抗率調整用シートとの体積抵抗率Sr(ave)と、最終製品である半導電性ゴムローラーの体積抵抗率Rr(ave)との累乗近似Y=aXb(Y=Sr(ave)、X=Rr(ave))を求めた。累乗近似から、傾きbと、R2(決定係数)を求め、対応関係を評価した。決定係数は0.992、bは0.531であった。決定係数は1に近いもの程、対応関係を有することを示す。
【0051】
[実施例2〜7、比較例1〜6]
体積抵抗率調整用シート作製用の未加硫ゴム混練物の分だしシートの大きさ、体積(充填率)を表1、3に示すように変更し、加硫温度を表1、3に変更した以外は実施例1と同様に体積抵抗率調整用シートを作製し、半導電性ゴムローラーを作製した。実施例1と同様にして、半導電性ゴムローラーと体積抵抗率調整用シートとの体積抵抗率を測定し、評価を行った。結果を表2、4に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
実施例1〜7は、半導電性ゴムローラーと体積抵抗率調整用シートとの体積抵抗率の決定係数は0.980以上であり、これらが対応関係にあることが分かった。
【0057】
一方、調整用シート成形型への未加硫ゴム混練物の充填率が高い場合(比較例1)、また、低い場合(比較例2)、体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率の測定値がばらつき、決定係数が低下した。未加硫ゴム混練物から形成するシートの大きさが調整用シート成形型のキャビティに対し、厚さ方向で2.75と比率が高い場合(比較例3)、1.65と低い場合(比較例4)、体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率の測定値がばらつき、決定係数が低下した。未加硫ゴム混練物から形成するシートの大きさが調整用シート成形型のキャビティに対し、縦・横方向で0.88と比率が高い場合(比較例5)、0.66と比率が低い場合(比較例6)、体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率がばらつき、決定係数が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の半導電性ゴム製品の製造方法を適用して製造される半導電性ゴム製品の一例である半導電性ゴムローラーを示す概略断面図である。
【図2】本発明の半導電性ゴム製品の製造方法に用いる体積抵抗率調整用シートの成形型の一例を示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 導電性支持体
2 半導電性ゴム層
3 表面層
4 キャビティー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分とカーボンブラックとを混練し、未加硫ゴム混練物を成形する半導電性ゴム製品の製造方法であって、未加硫ゴム混練物を採取し、該未加硫ゴム混練物を、体積抵抗率調整用シートの成形型のキャビティーに対して、縦辺と横辺との長さの比率がそれぞれ0.67以上、0.84以下、厚さの比率が1.80以上、2.60以下であり、体積が112体積%以上、145体積%以下のシートに形成し、該シートを前記体積抵抗率調整用シートの成形型で成形して得られる体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率を測定し、この測定値により半導電性ゴム製品の製造条件を調整して体積抵抗率の調整を行うことを特徴とする半導電性ゴム製品の製造方法。
【請求項2】
体積抵抗率調整用シートの成形型による成形は、加圧操作を1回で行うことを特徴とする請求項1記載の半導電性ゴム製品の製造方法。
【請求項3】
体積抵抗率調整用シートの成形型による成形は、170℃以上、205℃以下で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の半導電性ゴム製品の製造方法。
【請求項4】
体積抵抗率調整用シートの体積抵抗率が50Ω・cm以上、10000Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の半導電性ゴム製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−248344(P2009−248344A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95424(P2008−95424)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】