説明

半導電性ベルトの製造方法

【課題】簡便な操作により、所望の半導電性(例えば、表面抵抗率、体積抵抗率)を有する半導電性ベルトを製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明の半導電性ベルトの製造方法は、ベルトの表面抵抗率、体積抵抗率を配合により調整し、ポリアミドイミド系樹脂と、酸化処理カーボンブラックと、pKaが7以上のアミン化合物とを含む半導電性樹脂組成物を用い、加熱処理をして半導電性のベルトを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で像を形成記録する画像形成装置としては、複写機やレーザープリンタ、ビデオプリンタやファクシミリやこれらの複合機等が知られている。この種の装置では、装置寿命の向上などを目的として、感光ドラム等の像担持体上の像を中間転写ベルトに一旦転写(一次転写)し、それを印刷シート上に転写(二次転写)してから定着を行う中間転写方式が検討されている。また、印刷シートへ転写しつつ、そのシートの搬送も兼ねさせる転写方式も検討されている。
【0003】
上記中間転写ベルト等に用いられる半導電性ベルトは、代表的には、導電性フィラーであるカーボンブラックを含有する樹脂組成物から形成される。カーボンブラックとして、通常のカーボンブラックを用いた場合、二次凝集が起こりやすいという問題がある。そこで、分散性に優れ得る酸化処理されたカーボンブラック(酸化処理カーボンブラック)も用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかし、用いる樹脂およびカーボンブラックの組み合わせによっては、カーボンブラックの添加量を増やしても、目的とする半導電性が得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−341673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、簡便な操作により、所望の半導電性(例えば、表面抵抗率、体積抵抗率)を有する半導電性ベルトを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導電性ベルトの製造方法は、ポリアミドイミド系樹脂と、酸化処理カーボンブラックと、pKaが7以上のアミン化合物とを含む半導電性樹脂組成物を用いる。
好ましい実施形態においては、上記アミン化合物のpKaが10以下である。
好ましい実施形態においては、上記アミン化合物の融点が75℃より高い。
好ましい実施形態においては、上記アミン化合物がイミダゾールである。
好ましい実施形態においては、円筒状の金型内に上記半導電性樹脂組成物を供給して、金型内面に塗膜を形成する工程と、加熱処理を施す工程とを含み、加熱処理を二段階で行い、最初の加熱処理を金型の外側から熱風をあてることにより行う。
好ましい実施形態においては、上記アミン化合物の融点が上記最初の加熱処理温度より高い。
好ましい実施形態においては、上記最初の加熱処理温度が75〜85℃である。
本発明の別の局面によれば、半導電性ベルトが提供される。この半導電性ベルトは、上記製造方法により製造される。
好ましい実施形態においては、表面抵抗率が1×1010〜1×1014Ω/□の半導電層を含む。
好ましい実施形態においては、体積抵抗率が1×10〜1×1013Ω・cmの半導電層を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導電性ベルトの製造方法によれば、アミン化合物を用いることにより所望の半導電性(例えば、表面抵抗率、体積抵抗率)を有する半導電性ベルトを簡便に製造することができる。具体的には、アミドイミド系樹脂と酸化処理カーボンブラックとを組み合わせた場合、カーボンブラックの添加量を調整しても、所望の半導電性領域に達しない場合がある。これは、カーボンブラックの分散性が高く導電パスが形成されないことが要因の一つとして考えられる。アミン化合物を添加することにより、酸化処理カーボンブラックの表面状態を変化させ得、カーボンブラックを凝集させて導電パスが形成され得る。その結果、得られるベルトの半導電性を変化させることができる。したがって、アミン化合物の添加量を調整することにより、得られるベルトの半導電性を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アミン化合物の添加量と表面抵抗率との関係を示すグラフである。
【図2】アミン化合物の添加量と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
A.製造方法
本発明の半導電性ベルトの製造方法は、ポリアミドイミド系樹脂と、酸化処理カーボンブラックと、pKaが7以上のアミン化合物とを含む半導電性樹脂組成物を用いる。
【0011】
A−1.半導電性樹脂組成物
本発明の半導電性樹脂組成物は、ポリアミドイミド系樹脂と、酸化処理カーボンブラックと、アミン化合物とを含む。ポリアミドイミド系樹脂は、代表的には、アミド基と1〜2個のイミド基とが有機基を介して結合した繰り返し単位を含む。有機基の構造により、例えば、芳香族ポリアミドイミド、脂肪族ポリアミドイミドに分類される。
【0012】
ポリアミドイミド系樹脂は、例えば、酸成分と、ジアミンまたはジイソシアネートとを、任意の適切な方法により縮重合して製造することができる。具体的には、酸成分とジアミンまたはジイソシアネートとを、N,N′−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の極性溶剤中、所定温度(通常、60〜200℃程度)に加熱しながら撹拌することにより製造することができる。
【0013】
上記酸成分としては、例えば、トリメリット酸、トリメリット酸無水物または酸塩化物の他、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメリット酸),ビフェニルテトラカルボン酸,ビフェニルスルホンテトラカルボン酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸,ビフェニルエーテルテトラカルボン酸,エチレングリコールビストリメリテート,プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸およびこれらの無水物、シュウ酸,アジピン酸,マロン酸,セバチン酸,アゼライン酸,ドデカンジカルボン酸,ジカルボキシポリブタジエン,ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン),ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸,1,3−シクロヘキサンジカルボン酸,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸,ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸,イソフタル酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニルエーテルジカルボン酸,ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
上記ジアミンまたはジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートや、1,4−シクロヘキサンジアミン,1,3−シクロヘキサンジアミン,イソホロンジアミン,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートや、m−フェニレンジアミン,p−フェニレンジアミン,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,4,4′−ジアミノジフェニルエーテル,4,4′−ジアミノジフェニルスルホン,ベンジジン,o−トリジン,2,4−トリレンジアミン,2,6−トリレンジアミン,キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートや、1,5’−ジイソシアナトナフタレン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル等が挙げられる。これらは単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
ポリアミドイミド系樹脂として、市販品を用いることができる。例えば、日立化成工業株式会社製のHPCシリーズ、東洋紡績株式会社製のバイロマックス等が挙げられる。
【0016】
半導電性樹脂組成物におけるポリアミドイミド系樹脂の濃度は、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは10〜35重量%である。
【0017】
上記酸化処理カーボンブラックは、その表面に酸性官能基を有している。酸性官能基としては、例えば、カルボキシル基、ラクトン基、フェノール性水酸基、キノン基等が挙げられる。酸化処理カーボンブラックの平均一次粒子径は、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは10〜50nmである。
【0018】
酸化処理カーボンブラックは、例えば、カーボンブラックに酸化処理を施すことにより製造することができる。酸化処理としては、例えば、高温雰囲気下で空気と接触・反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する方法等が挙げられる。
【0019】
酸化処理カーボンブラックとして、市販品を用いることができる。例えば、SPECIAL BLACK4(Degussa社製)、SPECIAL BLACK250(Degussa社製)、BLACK PEARLS L(キャボット社製)等が挙げられる。
【0020】
酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリアミドイミド系樹脂(固形分)100重量部に対して、好ましくは10〜40重量部、さらに好ましくは15〜35重量部である。
【0021】
上述のとおり、本発明の半導電性樹脂組成物はアミン化合物を含む。アミン化合物は、そのpKaが、好ましくは7以上である。ここで、「pKa」とは、アミン化合物の共役酸の解離定数であり、温度25℃、水溶液の状態で求めた値である。このようなpKaのアミン化合物を用いることにより、所望の半導電性(例えば、表面抵抗率、体積抵抗率)を有する半導電性ベルトを簡便に製造することができる。具体的には、アミン化合物を含有させることにより、酸化処理カーボンブラックの表面状態を変化させ得、カーボンブラックを凝集させて導電パスが形成され得る。その結果、得られるベルトの半導電性を変化させることができる。したがって、カーボンブラックの含有量を変更しなくても、アミン化合物の含有量を調整することにより、得られるベルトの半導電性を制御することができる。
【0022】
アミン化合物のpKaの最大値は14であり、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは7.5以下である。このようなpKaのアミン化合物を用いることにより、所望の半導電性を得るための制御を容易に行うことができる。具体的には、pKaの値が大きすぎると、少量で急激な抵抗率の変化が起こる傾向にあり、抵抗率の制御が困難となるおそれがある。
【0023】
アミン化合物の融点は、好ましくは、後述の初期乾燥温度より高い。具体的には、75℃より高いことが好ましい。このようなアミン化合物を用いることにより、所望の半導電性を良好に得ることができる。具体的には、半導電性樹脂組成物が流動性を有する間に、良好にカーボンブラックを凝集させ得る。一方で、アミン化合物の融点が初期乾燥温度よりも低いと、溶剤の乾燥とともにアミン化合物が除去されてしまうおそれがある。その結果、上記カーボンブラックの凝集が誘起されない、乾燥条件によって得られる抵抗率が大きく変化する等、抵抗率のバラツキの原因となるおそれがある。
【0024】
アミン化合物としては、上記pKaを満足し得る、任意の適切な化合物を用いることができる。アミン化合物の種類は、3級アミンであっても、2級アミンであっても、1級アミンであってもよい。具体例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;4−アミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等のピリジン誘導体;2−アミノエタノール、トリエチルアミン等の脂肪族アミン等が挙げられる。これらは単独で、または、2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくはイミダゾールである。
【0025】
アミン化合物の含有量は、目的とする半導電性領域、用いるアミン化合物の種類等に応じて任意の適切な値に設定される。ポリアミドイミド系樹脂(固形分)100gに対して、代表的には0.002〜0.03molである。例えば、アミン化合物としてイミダゾールを用いる場合、好ましくは0.01〜0.3molである。
【0026】
半導電性樹脂組成物は、目的等に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、摺動性フィラー、熱伝導性フィラー、断熱性フィラー、耐摩耗性フィラー等が挙げられる。
【0027】
半導電性樹脂組成物に用いられる溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒や、キシレン、トルエンと上記非プロトン性極性溶媒との混合物が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)である。
【0028】
半導電性樹脂組成物の調製方法としては、任意の適切な方法が採用される。一つの実施形態においては、予め、上記ポリアミドイミド系樹脂を溶剤に溶解させて得られた溶液に、上記カーボンブラックを添加して分散させた後、上記アミン化合物を添加することにより調製される。カーボンブラックの分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等が用いられる。
【0029】
A−2.成形
半導電性ベルトは、好ましくは、上記半導電性樹脂組成物を円筒状の金型内に供給して金型内面に塗膜を形成した後、加熱処理を施すことにより作製される。
【0030】
上記塗膜の形成方法としては、任意の適切な方法が採用される。例えば、回転する金型内に半導電性樹脂組成物を供給し、遠心力により均一な塗膜とする方法、ノズルを金型内面に沿うように挿入し、回転する金型内に半導電性樹脂組成物をノズルから吐出させて、ノズルまたは金型を走行させながら螺旋状に塗布する方法、螺旋状の塗布を粗く行った後に、金型との間に一定のクリアランスを有する走行体(弾丸状、球状)を走行させる方法、半導電性樹脂組成物中に金型を浸潰して内面に塗布膜を形成した後、円筒状ダイス等で成膜する方法、金型内面の片端部に半導電性樹脂組成物を供給した後、金型との間に一定のクリアランスを有する走行体(弾丸状、球状)を走行させる方法等が挙げられる。
【0031】
半導電性樹脂組成物で形成された塗膜の厚みは、好ましくは70〜2000μm、さらに好ましくは100〜1000μmである。
【0032】
上記加熱処理の条件は、任意の適切な条件に設定される。好ましくは、二段階で加熱処理を行う。加熱処理を二段階で行うことにより、表面に欠陥の無い半導電性ベルトを得ることができる。最初の加熱処理(初期乾燥)は、好ましくは、金型内面に形成された塗膜の流動性がなくなり得る程度に行う。好ましい実施形態においては、初期乾燥は金型の外側から熱風をあてることにより行う。熱風をあてることにより、表面に欠陥の無い半導電性ベルトを得ることができる。初期乾燥温度は、好ましくは75〜85℃である。加熱時間は、好ましくは10〜60分である。二回目の加熱処理の加熱温度は、好ましくは150〜300℃である。加熱時間は、好ましくは10〜60分である。
【0033】
B.半導電性ベルト
上記製造方法により得られる半導電性ベルトは、上記半導電性樹脂組成物により形成された層(半導電層)以外の層を含み得る。半導電層の表面抵抗率(ρs)は、好ましくは1×1010〜1×1014Ω/□である。また、体積抵抗率(ρv)は、好ましくは1×10〜1×1013Ω・cmである。
【0034】
半導電層の厚みは、代表的には30〜200μm、好ましくは50〜100μmである。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
(樹脂組成物の調製)
ポリアミドイミドワニス(日立化成工業社製、商品名:HPC−7200)に、酸化処理カーボンブラック(Degussa社製、商品名:Special Black4)を、樹脂固形分100重量部に対して25重量部加え、撹拌翼付きのメカニカルスターラーで予備分散を行ない、ビーズミルまたはロールミルで本分散を行なった。
カーボンブラックを分散させたワニスに、イミダゾール(pKa:7.04、融点:90℃)を樹脂固形分100gに対して所定量を加え、メカニカルスターラーで2時間撹拌し、脱泡のため一晩静置した。
【0037】
(成形)
内径300mm、長さ900mmの円筒状金型(SUS製)の内面に、上記樹脂組成物をディスペンサーで塗布した後、金型を1500rpmで10分間回転させて均一な塗膜を形成した。
次に、初期乾燥として、金型を20rpmで回転させながら、金型の外側より80℃の熱風を30分間あてた。その後、200℃まで昇温して30分間保持した後、冷却し、金型からベルトを離型し、厚み80μmの半導電性ベルトを得た。
【0038】
[実施例2]
イミダゾールのかわりに2−メチルイミダゾール(pKa:7.56、融点:140〜145℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0039】
[実施例3]
イミダゾールのかわりに4−アミノピリジン(pKa:9.26、融点:158℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0040】
[実施例4]
イミダゾールのかわりに2−アミノエタノール(pKa:9.64、融点:10.5℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0041】
[実施例5]
イミダゾールのかわりに4−ジメチルアミノピリジン(pKa:9.68、融点:110〜114℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0042】
[実施例6]
イミダゾールのかわりにトリエチルアミン(pKa:10.68、融点:−114.7℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0043】
[比較例1]
樹脂組成物の調製に際し、イミダゾールを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0044】
[比較例2]
酸化処理カーボンブラックを樹脂固形分100重量部に対して30重量部加えたこと以外は比較例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0045】
[比較例3]
イミダゾールのかわりにイソキノリン(pKa:5.14、融点:26〜28℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0046】
[比較例4]
イミダゾールのかわりに2−フェニルイミダゾール(pKa:6.5、融点:146℃)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、半導電性ベルトを得た。
【0047】
<評価>
得られた半導電性ベルトの表面抵抗率(ρs)および体積抵抗率(ρv)を、以下の方法により測定した。測定結果を表1に常用対数値にて示す。図1および図2は、表1の値を、横軸をアミン化合物の添加量、縦軸を抵抗率としてプロットしたものである。なお、表1中、抵抗率の対数が14.5以上の場合は「over」と示し、抵抗率の対数が6.5以下の場合は「under」と示した。また、図1および図2において、便宜的に「over」の場合は14.5、「under」の場合は6.5と表した。
【0048】
(表面抵抗率および体積抵抗率の測定方法)
ハイレスタUP MCP−HTP16(三菱化学アナリテック社製、プローブ:URS)を用いて、25℃、60%RHの条件下で、表面抵抗率(印加電圧500V、10秒後)および体積抵抗率(印加電圧100V、10秒後)を測定した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示すとおり、実施例1から6では、アミン化合物の添加量が増加するに従って、抵抗率は低下している。一方、アミン化合物を添加しなかった比較例1,2では、酸化処理カーボンブラックの添加量を変化させても、抵抗率は高いままであった。また、pKaの値が低いアミン化合物を用いた比較例3,4では、アミン化合物を添加しても、抵抗率は高いままであった。
図1および図2に示すとおり、実施例1から6を比較すると、pKaの値が大きいと抵抗率の低下が著しい傾向にあるといえる。なお、初期乾燥時に液体であるアミン化合物を用いた実施例4,6は、この傾向から外れていた。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により得られる半導電性ベルトは、例えば、電子写真方式で像を形成記録する画像形成装置の中間転写ベルトや転写搬送ベルト等に好適に用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドイミド系樹脂と、酸化処理カーボンブラックと、pKaが7以上のアミン化合物とを含む半導電性樹脂組成物を用いる、半導電性ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記アミン化合物のpKaが10以下である、請求項1に記載の半導電性ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記アミン化合物の融点が75℃より高い、請求項1または2に記載の半導電性ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記アミン化合物がイミダゾールである、請求項1から3のいずれかに記載の半導電性ベルトの製造方法。
【請求項5】
円筒状の金型内に前記半導電性樹脂組成物を供給して、金型内面に塗膜を形成する工程と、加熱処理を施す工程とを含み、
前記加熱処理を二段階で行い、最初の加熱処理を前記金型の外側から熱風をあてることにより行う、請求項1から4のいずれかに記載の半導電性ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記アミン化合物の融点が前記最初の加熱処理温度より高い、請求項5に記載の半導電性ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記最初の加熱処理温度が75〜85℃である、請求項5または6に記載の半導電性ベルトの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の製造方法により製造された、半導電性ベルト。
【請求項9】
表面抵抗率が1×1010〜1×1014Ω/□の半導電層を含む、請求項8に記載の半導電性ベルト。
【請求項10】
体積抵抗率が1×10〜1×1013Ω・cmの半導電層を含む、請求項8または9に記載の半導電性ベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−191500(P2011−191500A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57361(P2010−57361)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【復代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
【Fターム(参考)】