説明

半導電性ポリイミドベルト及びその製造方法

【課題】積層構造によらず、高弾性率で外面の摩擦係数を下げ、内面の摩擦係数が外面の摩擦係数より高い半導電性ポリイミドベルトを提供する。
【解決手段】シリコン含有繰り返し単位のモル含有率が0.1/100〜15/100であるシリコン変性ポリイミドを含む半導電性ポリイミドベルトであって、前記ベルトの引張弾性率が2000MPa以上、ベルト外面の摩擦係数が0.4未満であり、ベルト内面と外面の摩擦係数の比(内面/外面比)が、1.1以上である半導電性ポリイミドベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性ポリイミドベルト、その製造方法、及び、当該半導電性ポリイミドベルトを備える画像形成装置に関するものであり、特に、画像形成装置を備えた電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等に用いる転写搬送体、中間転写体、転写定着体、定着体に使用される半導電性ポリイミドベルトを成形する場合に有用である。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を応用した画像形成装置は、無機又は有機光導電性感光体からなる潜像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザーや発光ダイオード光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、上記トナー像を中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写することにより所要の再生画像を得る。特に、上記像担持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、さらに中間転写体のトナー像を記録紙に二次転写する中間転写方式が知られている。
【0003】
前記中間転写方式を用いた画像形成装置に用いられる無端ベルトの材料としてはポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等の熱可塑性樹脂からなる半導電性のポリイミドベルト等が提案されている。
【0004】
前記中間転写方式を用いた画像形成装置では、記録紙にトナー像を二次転写した後も、僅かにベルト上にトナーが残存することから、クリーニングブレードやローラ、ブラシ等によって残存したトナーをクリーニングする必要性がある。
【0005】
また、近年、画像形成装置のトナーの小粒径化に伴い、クリーニングブレードやローラ等を、ベルトに強く押しつけ必要がある。
【0006】
更に、画像形成装置の高速化により、クリーニングブレードやローラ等とベルトとの摩擦係数を下げ、ベルトの高弾性率化が要求されている。
【0007】
高弾性率ベルトの摩擦係数を下げる方法としては、高弾性性ベルト基材の上にシロキサン変性ポリイミド樹脂(特許文献1)やフッ素樹脂(特許文献2)をコーティングする方法が知られている。
【0008】
しかし、高弾性性ベルト基材上にシロキサン変性ポリイミド樹脂やフッ素樹脂をコーティングを行なうと、工数の増加を伴い、生産性が悪化するものであった。
【0009】
また、積層構造をとるベルトは、ベルト基材とコーティング層(表面層)の機械特性に大きな違いがある場合や、装置を長期間運転した場合に、コーティング層が剥離して、摩擦係数の低減効果が失われるという問題がある。
【0010】
特許文献3には、高弾性率ベルトの原料ワニスに、フッ素樹脂を分散させた電子写真装置用無端ベルトが開示されている。
【0011】
しかし、上記ベルトは、金型内面に原料ワニスを塗布し乾燥させた後、該塗布膜を前記内面から取り外し、SUS製円筒焼成型に装着し、加熱キュアを行なう必要があった。この場合、最終キュアは円筒焼成型に装着して、固体潤滑剤を表面に出す必要があり、工数が増加するばかりでなく、良品率の低下につながり、生産性も劣るものであった。
【0012】
【特許文献1】特開平11−219036号公報
【特許文献2】特許第3248455号
【特許文献3】特開2004−157221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、上記実情に鑑み、本発明は、積層構造によらず、高弾性率で、内面の摩擦係数が外面の摩擦係数より高い半導電性ポリイミドベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、以下に示す半導電性ポリイミドベルト及びその製造方法等により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明は、シリコン含有繰り返し単位のモル含有率が0.1/100〜15/100であるシリコン変性ポリイミドを含む半導電性ポリイミドベルトであって、前記ベルトの引張弾性率が2000MPa以上、ベルト外面の摩擦係数が0.4未満であり、ベルト内面と外面の摩擦係数の比(内面/外面比)が、1.1以上である半導電性ポリイミドベルト、に関する。
【0016】
本発明によると、特定のシリコン変性ポリイミドを用いることによって、積層構造によらず、高弾性率で、ベルト内面の摩擦係数がベルト外面の摩擦係数より高い半導電性ポリイミドベルトが得られる。
【0017】
なお、本発明において、上記半導電性ポリイミドベルトを中間転写ベルトとして画像形成装置に組み込んで稼動する場合、ベルトの外面とは、潜像担持体やトナークリーニングブレード等と接する面を指し、ベルトの内面とは、駆動ローラ等と接する面を指す。
【0018】
本発明における半導電性ポリイミドベルトは、導電剤としてカーボンブラックを含有し、表面抵抗率の常用対数値が7〜14logΩ/□である。表面抵抗率の常用対数値が、上記範囲にある場合は、安定な電気特性により、良好な画像を確保することができる。
【0019】
本発明における半導電性ポリイミドベルトは、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写体に沿って直列に配置したタンデム式カラー画像形成装置の中間転写体として使用されることが好ましい。
【0020】
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内周面に展開する工程と、そのポリアミド酸溶液をベルト状に成形してイミド転化させてポリイミドベルトを得る工程を含むポリイミドベルトの製造方法において、前記ポリアミド酸が、前記シリコン変性ポリイミドの前駆体を含み、前記イミド転化における最終キュア温度が320℃以上であることが好ましい。この場合、外面の摩擦係数が内面の摩擦係数より低い半導電性ポリイミドベルトが得られる。
【0021】
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法において、前記円筒状金型内周面が予め離型剤で処理する工程を含むことが好ましい。前記処理により、作業性を向上させることができる。
【0022】
前記離型剤が、シリコーン系離型剤であって、前記円筒状金型内周面のケイ素と酸素の比(Si/O比)が、0.5以上であることが好ましい。前記Si/O比においては、離型不良が生じにくい。
【0023】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、これを中間転写ベルトとして備える画像形成装置等に広く応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、シリコン含有繰り返し単位のモル含有率が0.1/100〜15/100であるシリコン変性ポリイミドを含むものであって、前記ベルトの引張弾性率が2000MPa以上、ベルト外面の摩擦係数が0.4未満であり、ベルト内面と外面の摩擦係数の比(内面/外面比)が、1.1以上である。
【0026】
本発明において、シリコン含有繰り返し単位のモル含有率が0.1/100〜15/100の範囲内にすることが必要であり、好ましくは0.5/100〜10/100であり、より好ましくは1/100〜7/100である。前記半導電性ポリイミドベルトに対して、シリコン含有繰り返し単位のモル含有率が15/100を越えると高弾性率のベルトが得られない。一方、0.1/100未満になると摩擦係数の低減の効果が認められない。なお、前記半導電性ポリイミドベルトには、ポリイミドと、シリコン変性ポリイミドの混合物も含む。
【0027】
本発明における半導電性ポリイミドベルトの引張弾性率は、2000MPa以上であり、好ましくは2500MPa以上であり、より好ましくは3000MPa以上である。引張弾性率が2000MPa未満になると、ベルトの伸び率が高くなって寸法安定性が乏しくなり、画像形成装置内に組み込んで稼動させると、徐々にベルトが伸びて画像ムラが生じる原因となる。
【0028】
本発明における半導電性ポリイミドベルトのベルト外面の摩擦係数は、0.4未満であり、好ましくは0.35未満であり、より好ましくは0.33未満である。ベルト外面の摩擦係数を0.4以上であると、潜像担持体やクリーニングブレード等との間の摩擦が大きくなり、ベルトの駆動制御性が低下して、画像ムラが発生する原因となる。また、トナーの剥離性やクリーニングブレード等との滑り性も低下するため、トナーのクリーニング性能も低下する。
【0029】
本発明における半導電性ポリイミドベルトは、ベルト内面と外面の摩擦係数の比(内面/外面比)が、1.1以上であり、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.25以上である。前記内面/外面比が、1.1未満であると、ベルトと駆動ローラとの間でスリップが生じて均一に回転ができなくなり、画像ムラや色ムラを生じる原因となる。
【0030】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、シリコン変性ポリイミドを含む。
【0031】
本発明において、シリコン変性ポリイミドとは、ケイ素原子を含有するシリコン含有繰り返し単位を有するポリイミドを指す。ケイ素原子はシロキサン結合、シラノール基、アルコキシル基等の形で、シリコン含有繰り返し単位に含有させることができるが、本発明では、主鎖中にシロキサン結合を含有するものが好ましい。このようなシロキサン含有繰り返し単位は、例えば、両末端ジアミノシロキサンをジアミン成分として添加し、テトラカルボン酸成分と重合させることによって、前記シリコン変性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸溶液を得ることができる。
【0032】
テトラカルボン酸成分として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。特に、高弾性率のポリイミドを作成するために3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物やピロメリット酸二無水物を用いる事が好ましい。
【0033】
本発明のシリコン変性ポリイミドは、ジアミン成分としては、シリコーンジアミンである両末端ジアミノシロキサン及び上記テトラカルボン酸成分との重合により得られる。両末端ジアミノシロキサンとしては、下記の一般式(1)で表すことができる。
【0034】
【化1】

(1)

(式中、R1〜R6 は、アルキル基、フェニル基または置換フェニル基を示し、nは5以上の整数を表す)。両末端ジアミノシロキサンの数平均分子量としては、100〜10000であることが好ましく、より好ましくは500〜5000である。数平均分子量が100より小さいと、滑り性が改善されない。一方、10000を超えると、ポリアミド酸溶液中の溶媒と固体分離を起こしやすくなるため、好ましくない。なお、上記構造中のR2〜R5は、C1〜C3のアルキル基、特にC1のメチル基が好ましい。
【0035】
一方、両末端ジアミノシロキサン以外のジアミン成分として、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフオン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ベンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロボキシエタン、2,2−ジメチルブロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピベラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0036】
本発明のシリコン変性ポリイミドは、次のようにして得られる。なお、本発明における半導電性ポリイミドベルトには、ポリイミドとシリコン変性ポリイミドの混合物も含む。
【0037】
前記シリコン変性ポリイミドの製造方法としては、両末端ジアミノシロキサンとテトラカルボン酸成分のモル比を等モルからずらし、アミノ末端或いは酸末端のシリコン変性ポリアミド酸を合成する。次に、ポリイミドのモノマー成分であるテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分である両末端ジアミノシロキサンを添加し、反応をさせる。この時、両末端ジアミノシクロキサンとそれ以外のジアミン成分のモル数と、テトラカルボン酸成分のモル数が、等モルになるように添加する。
【0038】
一方、前記混合物の製造方法としては、両末端ジアミノシロキサンとテトラカルボン酸成分を等モル加え、反応させて、シリコン変性ポリイミドを合成する。次に、テトラカルボン酸成分と両末端ジアミノシロキサン以外のジアミン成分を等モル添加し、反応させてポリイミドを合成する。これらを混合することにより得られる。
【0039】
本発明における半導電性ポリイミドベルトは、導電剤としてカーボンブラックを含有し、表面抵抗率の常用対数値が7〜14logΩ/□であり、より好ましくは、8〜13logΩ/□である。
【0040】
本発明は、半導電性を得るために樹脂中に各種導電剤を使用することが好ましい。具体的には、カーボンブラック、アルミニウム、ニッケル、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機化合物やポリアニリンやポリピロールなどに代表される導電性高分子を用いることができる。特に、抵抗制御や抵抗低下の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0041】
本発明に用いるカーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0042】
これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができ、中間転写ベルトや転写搬送ベルトなどの中抵抗から高抵抗域(表面抵抗率が10〜1014Ω/□)において、制電性が必要である場合は、特にファーネスブラックやチャンネルブラックが好適に用いられる。
【0043】
前記ファーネスブラックとしては、デグサ社製のSpecial Black 550、Special Black 350、Special Black 250、Special Black 100、Printex 35、Printex 25、三菱化学社製のMA 7、MA 77、MA 8、MA 11、MA 100、MA100R、MA220、MA230、キャボット社製、MONARCH1300、MONARCH 1100、MONARCH 1000、MONARCH 900、MONARCH 880、MONARCH 800、MONARCH 700、MOGUL L、REGAL 400R、ULCAN XC−72R等が挙げられる。また、チャンネルブラックとして、デグサ社製のColor Black FW200、Color B1ack FW2、Color Black FW2V、Color Black FW1、Color Black FW18、Special Black 6、Color Black S170、Color Black S160、Special Black5、Special Black 4、Special Black 4A、Printex 150T、Printex U、Printex V、Printex 140U、Printex 140V等が挙げられる。
【0044】
また、カーボンブラックはその用途によって、酸化処理、グラフト処理等の酸化劣化を防止したものや、溶剤への分散性を向上させたものを用いることが好ましく、特に、酸化処理されたカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0045】
前記酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面に酸素含有官能基(例えば、カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)を付与して得ることができるものである。
【0046】
前記酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触・反応させる空気酸化法、常温で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、及び高温での空気酸化後、低温でオゾン酸化する方法等により行うことができる。上記方法により得られる酸化処理カーボンブラックは、一部に過剰な電流が流れ、繰り返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくい。また、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、ポリイミド中への分散性が高く、抵抗のバラツキを小さくすることができ、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起き難くなる。
【0047】
その結果、転写電圧による電気抵抗の低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性や環境による抵抗の変化が少なく、用紙走行部が白く抜ける等の画質欠陥の発生を抑制することができるため、高画質を得ることのできる中間転写体となる。
【0048】
前記酸化処理カーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂に対して10〜50重量%程度が好ましく、より好ましくは12〜30重量%である。この含有量が10重量%未満であると、電気抵抗の均一性が低下し、耐久使用時の表面抵抗率の低下が大きくなる場合がある。一方、50重量%を超えると、所望の抵抗率が得られ難く、また、本発明の半導電性ポリイミドベルトを用いた成型物が脆くなるため、好ましくない。
【0049】
カーボンブラックの分散液中の含有量は、2〜35重量%が好ましく、より好ましくは5〜25重量%である。カーボンブラック含有量が高いほど、分散させることが困難となり、また、カーボンブラックの凝集・沈殿が発生しやすく保存安定性が著しく低下する。一方、含有量が低い場合には、導電特性の効果を発揮することができない。
【0050】
本発明に用いる溶媒としては、特に制限されないが、溶解性等の点より極性溶媒が好適に挙げられる。特に、カーボンブラックなどの導電剤の分散用と重合反応の溶媒用とを兼用できるものが好ましい。極性溶媒としては、N,N−ジアルキルアミド類が好ましく、具体的には、例えば、これの低分子量のものであるN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単数または複数併用することができる。
【0051】
カーボンブラックの分散方法には、公知の分散方法を適用することができる。例えば、溶媒にカーボンブラックを添加した後、ナノマイザー、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ホモジナイザー、超音波などの方法を適宜選択して、分散作業を行うことができる。
【0052】
導電剤の分散液は、導電剤と有機極性溶媒との親和性を高めるために、分散剤を添加することができる。分散剤としては、本発明の目的にかなうものであれば、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤、界面活性剤、無機塩等の分散安定化剤を用いることができる。
【0053】
本発明における半導電性ポリイミドベルトは、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写体に沿って直列に配置したタンデム式カラー画像形成装置の中間転写体として使用されることが好ましい。
【0054】
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法としては、ポリアミド酸溶液を円筒状金型内周面に展開する工程と、そのポリアミド酸溶液をベルト状に成形してイミド転化させてポリイミドベルトを得る工程を含み、前記ポリアミド酸が、前記シリコン変性ポリイミドの前駆体を含み、前記イミド転化における最終キュア温度が320℃以上であることが好ましい。この場合、ベルトの内面が空気面になることにより、外面の摩擦係数が内面の摩擦係数より低くなるベルトが得られる。一方、キュア温度が320℃未満であると、外面と内面の摩擦係数の差がなくなり、外面の摩擦係数を下げると、内面の摩擦係数も同時に下がることになる。これにより、内側の摩擦係数が低いと、転写ベルトとして使用するとスリップがおこり、均一な回転ができなくなり色ズレが発生する。
【0055】
本発明における半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、ポリアミド酸溶液を円筒状金型内周面に供給・展開することにより被膜とし、加熱によりイミド転化させることにより得られる。以下詳細に説明する。
【0056】
前記円筒状金型の内周面の表面状態は、鏡面仕上げしたものが好ましい。鏡面仕上げを行うことにより、ポリイミドベルトの外面の表面粗度が小さくなり、前記ベルトの外面の摩擦係数が、内面の摩擦係数より小さくなり、有効だからである。
【0057】
前記ポリアミド酸溶液を円筒状金型内周面に供給する方法は、ディスペンサーによる方法、ダイスによる方法等適宜選択して行うことができる。
【0058】
前記ポリアミド酸溶液をイミド転化させる方法として、加熱しながら遠心成形する方法、弾丸状走行体を用いて成形する方法、回転成形する方法等を適宣選択して、均一な膜厚の被膜を形成する。続いて、内周面に被膜を形成した金型ごと乾燥機中で加温を行ない、イミド転化するまで昇温する方法により得られる。この時、最終キュア温度を320℃以上にすることが好ましい。
【0059】
前記加温方法としては、加熱炉内を通過させる方法や、加熱風を吹き付ける方法などが挙げられるが、特に制限されない。例えば、加熱炉としては、放射型、循環風型などが挙げられる。加熱風の形成には、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒータなどが挙げられる。また、金型周囲にコイルを巻き、誘導加熱により直接金型を加温する方法も挙げられる。
【0060】
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法において、前記円筒状金型内周面が予め離型剤で処理する工程を含むことが好ましい。離型処理を行うことにより、作業性の向上を図ることができるからである。離型剤としては、シリコーン系、フッ素系離型剤等の従来公知のものがいずれも使用可能であるが、特にシリコーン系離型剤であるシリコーン樹脂が好ましい。
【0061】
前記離型剤が、シリコーン系離型剤であって、前記円筒状金型内周面のケイ素と酸素の比(Si/O比)が、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは0.52以上である。前記金型内周面のSi/O比が0.5未満では、離型不良でベルト表面が白化するため好ましくない。
【0062】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、これを中間転写ベルトとして備える画像形成装置等に広く応用することができる。
【0063】
本発明において得られた半導電性ポリイミドベルトは、積層構造によらず、高弾性率で、ベルト内面の摩擦係数が、外面の摩擦係数より高い半導電性ポリイミドベルトを提供できる。そのため、このベルトをカラープリンタ等の中間転写ベルトとして使用すると、色ムラもなく、非常に優れた特性を有する。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性等の評価方法は、次の通りである。
【0065】
(評価方法)
(1)弾性率
JIS K7127に準じて測定を行った。試験片は、JIS K6301(3号ダンベル)を用いた。
(2)静摩擦係数
ポリイミドベルトの24点の表面について、ポータブル摩擦計ミューズ TYPE:94iII(新東科学社製)で測定し、平均値を求めた。
(3)表面抵抗率
ポリイミドベルトの24点の表面について、ハイレスタUP、MCP−HT450(三菱化学社製、プローブ:UR−100)にて印加電圧100V、10秒後、測定条件25℃での表面抵抗率を測定し、その表面抵抗率を常用対数値として示した。
【0066】
<実施例1>
【0067】
(カーボンブラック分散液の製造方法)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1800g中にカーボンブラック(Special Black 4、デグサ社製)200gを添加し、ボールミルで8時間攪拌してカーボンブラック分散NMP液を得た。
【0068】
(カーボンブラック分散ポリアミド溶液の製造方法)
上記分散液1277gに、NMP1405gを添加し、次いで、酸無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物295g(1モル)と、ジアミン成分として分子量3000の両末端ジアミノシロキサン150g(0.05モル)とp−フェニレンジアミン103g(0.95モル)を溶解し、窒素雰囲気下において、室温で5時間攪拌しながら加温し、80℃で5時間加熱・反応させ、粘度調整を行い、カーボンブラックを分散したポリアミド酸溶液(固形分20重量%、23℃におけるB型粘度計による溶液粘度150Pa・s)を得た。
【0069】
(ポリイミドベルトの製造方法)
内径300mm、長さ800mmの円筒状金型内周面に、離型剤であるシリコーン樹脂(SR2462、東レ・ダウコーニング社製)で離型処理を行なった。処理温度は400℃で行なったところ、金型内周面のSi/O比は、0.55であった。
この離型処理を行なった前記円筒状金型内周面に、前記ポリアミド酸溶液300gを塗布した後、回転させて均一な塗膜面を得た。続いて、130℃で20分間加熱した後、残存溶媒の除去、脱閉環水の除去、及びイミド化反応を行うために380℃まで30分で昇温加熱した後、室温まで冷却した。得られたベルトの両端と中央部の不要部分を切断し、半導電性ポリイミドベルトを2本得た。
【0070】
(画像形成)
上記ベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し、画像形成を行ったところ、色ムラもなく良好な画像が得られた。
【0071】
<実施例2>
実施例1に対して、ジアミン成分として、分子量3000の両末端ジアミノシロキサンの添加量を60g(0.02モル)、p−フェニレンジアミン53g(0.49モル)、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル98g(0.49モル)に変更し、イミド化反応における最終キュア温度を340℃に変更した。これ以外については、実施例1と同様に行い、半導電性ベルトを2本得た。このベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し画像形成を行ったところ、色ムラもなく良好な画像が得られた。
【0072】
<実施例3>
実施例2に対して、酸無水物をピロメリット酸無水物218g(1モル)に、分子量3000の両末端ジアミノシロキサン45g(0.015モル)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル197g(0.985モル)に変更した。これ以外については、実施例2と同様に行い、半導電性ベルトを2本得た。このベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し画像形成を行ったところ、色ムラもなく良好な画像が得られた。
【0073】
<比較例1>
実施例3に対して、最終キュア温度を310℃に変更した。これ以外については、実施例3と同様に行なった。得られたベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し画像形成を行ったところ、ベルトがスリップするために、色ズレが発生した。
【0074】
<比較例2>
実施例1に対して、分子量3000の両末端ジアミノシロキサンを使用せず、p−フェニレンジアミン108g(1モル)に変更した。これ以外については、実施例1と同様に行なった。得られたベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し画像形成を行ったところ、ベルトがスリップするために、色ズレが発生した。
【0075】
<比較例3>
実施例1に対して、分子量3000の両末端ジアミノシロキサン600g(0.2モル)とp−フェニレンジアミン86g(0.8モル)に変更した。これ以外については、実施例1と同様に行なった。得られたベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し画像形成を行ったところ、色ズレが発生した。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示した結果から、本発明に示したポリイミドベルトを用いた実施例1〜3のいずれにおいても、引張弾性率、静摩擦係数、静摩擦係数の内面/外面比が、良好な半導電性ポリイミドベルトが得られた。また、前記ポリイミドベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し、画像形成を行ったところ、色ムラもなく良好な画像が得られた。
【0078】
一方、比較例1は実施例3に対して、最終キュア温度を310℃に下げてイミド化を行ったところ、静摩擦係数の内面/外面比が1.1を下回り、得られたベルトをタンデム式中間転写型画像形成装置の中間転写ベルトとして搭載し、画像形成を行ったところ、ベルトがスリップするために、色ズレが発生した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有繰り返し単位のモル含有率が0.1/100〜15/100であるシリコン変性ポリイミドを含む半導電性ポリイミドベルトであって、前記ベルトの引張弾性率が2000MPa以上、ベルト外面の摩擦係数が0.4未満であり、ベルト内面と外面の摩擦係数の比(内面/外面比)が、1.1以上である半導電性ポリイミドベルト。
【請求項2】
導電剤としてカーボンブラックを含有し、表面抵抗率の常用対数値が7〜14logΩ/□の範囲にある請求項1記載の半導電性ポリイミドベルト。
【請求項3】
各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写体に沿って直列に配置したタンデム式カラー画像形成装置の中間転写体として使用されるものである請求項1又は2記載の半導電性ポリイミドベルト。
【請求項4】
ポリアミド酸溶液を円筒状金型内周面に展開する工程と、そのポリアミド酸溶液をベルト状に成形してイミド転化させてポリイミドベルトを得る工程を含むポリイミドベルトの製造方法において、前記ポリアミド酸が、前記シリコン変性ポリイミドの前駆体を含み、前記イミド転化における最終キュア温度が320℃以上である半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
【請求項5】
前記円筒状金型内周面が予め離型剤で処理したものである請求項4記載の半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
【請求項6】
前記離型剤が、シリコーン系離型剤であって、前記円筒状金型内周面のケイ素と酸素の比(Si/O比)が、0.5以上である請求項5記載の半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3何れかに記載の半導電性ポリイミドベルトを中間転写体として備えることを特徴とする画像形成装置。

【公開番号】特開2008−197365(P2008−197365A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32285(P2007−32285)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】