説明

半田付け用真空加熱装置

【課題】真空室内に配置された被加熱物を効率良く加熱する半田付け用真空加熱装置を提供する。
【解決手段】被接合部材(3)が半田(2)を介在して設置された被加熱物(1)を加熱するために、真空室内に配置された半田付け用真空加熱装置であって、前記被加熱物(1)にヒータ加熱面がそれぞれ接触する複数のヒータ(32)と、前記複数のヒータ(32)をそれぞれ収容する複数のヒータ受け(33)と、前記被加熱物(1)に対して前記複数のヒータ受け(33)をそれぞれ独立して弾性体(50)で押圧して、前記ヒータ加熱面を密着させるフローティング機構と、前記フローティング機構が設けられた支持台(34、35、36)と、前記ヒータ受け(33)から前記被加熱物(1)が受ける押圧力を受圧する受圧部(31)を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空室内に配置された被加熱物を効率良く加熱する半田付け用真空加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に加熱炉において被加熱物を加熱するには、直接ヒータ上に載せたり、雰囲気温度を制御して空気の伝熱を利用するなどして、炉内雰囲気の気体による熱対流を利用した均熱加熱を行っている。伝熱の形態として輻射伝熱、対流伝熱、伝導伝熱の3つの形態が知られている。
しかしながら、真空状態における加熱では、対流する気体の熱伝導が活用できないため、特許文献1に示すような、ランプヒータ等を配置した輻射加熱などで被加熱物を加熱していた。
【0003】
図1は、上記のような、ランプヒータ等を配置した輻射加熱などで被加熱物を加熱する装置の説明図である。図2は、図1の一部拡大説明図である。
10は、真空状態で加熱する加熱炉10であって、パレット5に載置された被加熱部1は1つずつ炉外部の搬送手段により、炉内に送り込まれる。搬入・搬出部の扉を閉じた後、真空状態にされて炉内上下に設けられたランプヒータ11により輻射加熱される。
しかし、図1に示すような、複数個の被加熱物を短時間に加熱する場合、熱を与えるランプヒータの光は個々の被加熱物へ熱を与えるものの被加熱物の熱容量バラツキにより到達する温度を一定にすることが困難であった。
そのため被加熱物の下面に各々温度を均一にする伝熱板12(図2)を設ける等の手段をとることによって本来必要とするエネルギー以上のエネルギーを使用することとなり無駄を発生させていた。
図3は、ヒータ20を被加熱物1へ設けた場合の説明図である。このようなヒータを被加熱物へ設ける方法で加熱した場合、真空状態の場合においては、大気圧下の炉内で得られるような、被加熱物とヒータの隙間内に生じる気体による対流伝熱効果が得られないため、ヒータと被加熱物との接触面のうねりなどに因って起こる接触伝熱面積のばらつきや、伝熱面積低下の影響で、温度ムラが発生し、安定した熱供給が困難となる。それ故、短時間に加熱・冷却することができないという問題があった。
特に、このような真空下での加熱冷却を半田付け工程に採用した場合、加熱冷却のプロファイルが重要となり、長時間の緩やかな加熱冷却や昇降温カーブのばらつきは品質不良につながることがわかった。
【0004】
【特許文献1】特公平6−93440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、真空室内に配置された被加熱物を効率良く加熱する半田付け用真空加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、被接合部材(3)が半田(2)を介在して設置された被加熱物(1)を加熱するために、真空室内に配置された半田付け用真空加熱装置であって、前記被加熱物(1)にヒータ加熱面がそれぞれ接触する複数のヒータ(32)と、前記複数のヒータ(32)をそれぞれ収容する複数のヒータ受け(33)と、前記被加熱物(1)に対して前記複数のヒータ受け(33)をそれぞれ独立して弾性体(50)で押圧して、前記ヒータ加熱面を密着させるフローティング機構と、前記フローティング機構が設けられた支持台(34、35、36)と、前記ヒータ受け(33)から前記被加熱物(1)が受ける押圧力を受圧する受圧部(31)とを具備する半田付け用真空加熱装置である。
【0007】
これにより、真空室内に配置された被加熱物を効率良く加熱することができ、ヒータと被加熱物の接触面の安定化に着目し、ヒーターの熱マスを低減し、ヒータを2個以上に分割し、そのヒータ毎にフローティングする機構を設けたことで、少ないエネルギーで、かつ短時間で加熱することができるものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記半田付け用真空加熱装置は、前記被加熱物(1)に直接接触する温度検知部(13)をさらに具備することを特徴とする。
これにより、被加熱物を直接温度計測する機構を設け、被加熱物の昇温カーブをモニタするソフトにより被加熱物に伝達された熱量に合わせて供給熱エネルギーを制御することで、少ないエネルギーで短時間に加熱制御できるようにする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記半田付け用真空加熱装置は、前記被加熱物(1)を冷却する冷却部(40)をさらに具備することを特徴とする。これにより、さらに、短時間に加熱冷却できるようにする。
【0010】
なお、上記に付した符号は、後述する実施形態に記載の具体的実施態様との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図1〜3における部材と同一構成の部材はその説明を省略する。
図4は、本発明の一実施態様を模式的に表す説明図である。図5は、ヒータ受けの具体的一例を示す斜視図である。図6は本実施態様で使用するヒータの構造を示す説明図である。
図4に示すように、被加熱物1は、一例として、電子部品4の上に半田2を介在して載置された被接合部材3からなる。このような被加熱物1としては、上記に限らず基板と電子部品や、ハイブリット車用のインバータ部品などが挙げられるが、半田付けの対象となるものであれば何れのものであってもよい。ここで述べる一実施態様にあっては、3は放熱ブロック(銅)として、説明する。また、4は、必ずしも電子部品に限らずヒートシンクであってもよい。その他の被加熱物1の例示としては、図8が挙げられるが、後述する。使用する半田としては、接合対象によって適宜採用すればよいが、一例として、半田シート、低融点金属を金属フィラーとして用いた導電性接着剤、半田ペーストその他が挙げられる。
【0012】
本実施態様の加熱装置は、真空室内に配置されている。被加熱物1の上面には、被接合部材である放熱ブロック3が、半田2を介在して設置されている。図4に示すように、被加熱物1の下面は、2つのヒータ32のヒータ加熱面がそれぞれ接触している。ヒータ32はヒータ受け33に収容されている。ヒータ受け33は、図4では、模式的に示されているが、具体的には、図5に示されているように、コの字状の上部パネル51、下部パネル53、ボルト52から構成されている。下部パネル53には放熱小穴が多数設けられている。
【0013】
2つのヒータ受け33毎に、それぞれ、フローティング機構は、弾性体であるばね50と、ガイド棒54とから構成されている。ばね50は、プレート34に設けられた有底穴38に収容されて、ヒータ受け33の下面を押圧している。ヒータ受け33について説明すると、上部パネル51と下部パネル53とでヒータ32をサンドウィッチ状に挟み込み、上部パネル51は下部パネル53にボルト52で固定されている。下部パネル53には、ガイド穴56が設けられており、ガイド棒54を、遊びがある状態で貫通している。このため、ヒータ32を被加熱物1の下面に倣うように密着させることができる。すなわち、フローティング機構があるため、ヒータを分割することにより3点支持箇所を増加させていることになる。(厳密には平面を保持するには最低3点支持となる。)
この実施態様では、図5に示すように、ヒータ受け33が線対称に2個設けられている。この実施態様に限らず、ヒータ受け33は2個以上設けてもよい。ヒータ受けの形状はこの実施態様に限定されず、図4のように箱型に収容してもよく、その他様々な設計変更が考えられる。
【0014】
支持台は、プレート34と、支柱36、支持プレート35から構成され、支持プレート35は、図示していないエアシリンダ等により、上下動できるようになっている。支持プレート35には、熱電対13が、貫通穴37を通り抜けて、上方に向くように固定されている。支持台は、上方に向けて移動するように駆動されて、熱電対13の先端が電子部品4の下面に接触すると、支持台の上昇は停止させられる。この時、ばね50により適正圧で、ヒータ32が電子部品4の下面を押圧して密着する。なお、ガイド棒54の上部の鍔は、ばね50によるヒータ受け33の上昇限度を決めるストッパである。
【0015】
熱電対13は、被加熱物である電子部品4と接触することで温度を測定することが可能となる。熱電対13は被加熱物の上方に配置しても良い。熱電対13が被加熱物と接触した状態でヒータ32により加熱を行うと、被加熱物の温度を正確に測定できるので、ヒータ32の加熱温度曲線と著しく一致した被加熱物の温度曲線を得ることができ、真空状態において短時間に精度良く加熱温度制御することができる。また、温度制御するために被加熱物を直接温度測定することで、被加熱物の温度をオーバーシュートすることなく制御することことができる。
本願の熱電対13を用いた場合は、作動中ヒータ32の温度を制御するための、図示していない温度制御システム(PLC-Programmable Logic Controller-等)を使用している。
図7は、熱電対13と温度制御システムを用いた実施態様と従来技術の昇温カーブを比較したグラフである。この構成によれば、任意の温度パターンをいかなる真空下でも安定且つ高速に必要最低限のエネルギーで実現することができる。
【0016】
ヒータ受け33の下方には、冷却部40が設置されている。液体窒素からの冷却気体が導管を通じて流れるようになっており、必要なときに、多数の冷却ノズルから斜め上方に向けて冷却気体が放出されるようになっている。冷却気体の吹き付けによって、半田を急速に固めることができるとともに、ヒータの温度制御においても、冷却ノズルを使用することで被加熱部の温度を正確に制御することも可能である。冷却部40は、冷却上所定の効果の出る部位ならどこに取り付けてもよいが、支持台に設置することも可能である。
【0017】
支持台は、上方に向けて移動するように駆動されて、熱電対13の先端が電子部品4の下面に接触すると、支持台の上昇は停止させられる。この時、ばね50により適正圧で、ヒータ32が電子部品4の下面を押圧して密着する。支持台の上昇による押圧力を受圧するために、受圧部31が設けられている。支持台が上方に移動する場合は、受圧部31は、不動であってもよいが、受圧部31はバネで支持されていてもよい。エアシリンダ等で受圧部31下方に移動するようにした場合は、支持台は不動にしてもよい。受圧部31を図3のようなヒータとしてもよい。
【0018】
さらに、別の実施態様として、受圧部31は、ヒータ受け33の下部に設けたフローティング機構と同様な機構を、上部の受圧部として設けてもよい。すなわち、上部の受圧部31を、図4のような単なるストッパの代わりに、複数のヒータ32と、複数のヒータ32をそれぞれ収容する複数のヒータ受け33と、前記被加熱物1に対して前記複数のヒータ受け33をそれぞれ独立して弾性体50で押圧して、前記ヒータ加熱面を密着させるフローティング機構と、前記フローティング機構が設けられた支持台から構成してもよい。
このような別の実施態様によれば、図8に示す被加熱物のように上部の放熱ブロックの上にさらに半田を載せて別部材に接合することができる。
【0019】
本発明の作動を以下に説明する。
まず、複数個に分割されたヒータ32の上に被加熱物1をセットする。次に上部からの受圧部31であるストッパにより被加熱物を押える。この際、受圧部31は同様なフローティング機構を持つヒータで押えても良い。この被加熱物1を挟んだ状態の時、熱電対13は被加熱物と接触することで温度を測定することが可能となる。なお、熱電対13は被加熱物1の上方に配置しても良い。そして、ヒータ32により加熱を行うと被加熱物1もヒータ32の一部材となり、ヒータ31の加熱温度曲線と著しく一致した温度曲線を得ることができる。その後、必要な温度を得られたヒータ32の電源を切り、受圧部31であるストッパを取り外した後、被加熱物1を取り出す。また、冷却ノズル40を使用することで被加熱部の冷却温度も制御することも可能である。
以上の一連の動作によって、真空状態において短時間に精度良く加熱温度制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ランプヒータ等を配置した輻射加熱などで被加熱物を加熱する装置の説明図である。
【図2】図1の一部拡大説明図である。
【図3】ヒータを被加熱物へ設けた場合の説明図である。
【図4】本発明の一実施態様を模式的に表す説明図である。
【図5】ヒータ受けの具体的一例を示す斜視図である。
【図6】本実施態様で使用するヒータの構造を示す説明図である。
【図7】熱電対と温度制御システムを用いた実施態様と、従来技術の昇温カーブを比較したグラフである。
【図8】被加熱物1のその他の例示を示す説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 被加熱物
2 半田
3 被接合部材
13 温度検知部(熱電対)
31 受圧部(ストッパ)
32 ヒータ
33 ヒータ受け
34、35、36 支持体
40 冷却部
50 弾性体(ばね)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材(3)が半田(2)を介在して設置された被加熱物(1)を加熱するために、真空室内に配置された半田付け用真空加熱装置であって、
前記被加熱物(1)にヒータ加熱面がそれぞれ接触する複数のヒータ(32)と、前記複数のヒータ(32)をそれぞれ収容する複数のヒータ受け(33)と、前記被加熱物(1)に対して前記複数のヒータ受け(33)をそれぞれ独立して弾性体(50)で押圧して、前記ヒータ加熱面を密着させるフローティング機構と、前記フローティング機構が設けられた支持台(34、35、36)と、前記ヒータ受け(33)から前記被加熱物(1)が受ける押圧力を受圧する受圧部(31)とを具備する半田付け用真空加熱装置。
【請求項2】
前記半田付け用真空加熱装置は、前記被加熱物(1)に直接接触する温度検知部(13)をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の半田付け用真空加熱装置。
【請求項3】
前記半田付け用真空加熱装置は、前記被加熱物(1)を冷却する冷却部(40)をさらに具備することを特徴とする請求項1または2に記載の半田付け用真空加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−125486(P2010−125486A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302886(P2008−302886)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】