説明

半田接合部の基準位置特定方法および基準位置特定装置

【課題】半田接合部に存在するボイドを特定し、そのボイドによる影響を除くことにより、基準となる位置を正確に特定することができる半田接合部の基準位置特定方法および基準位置特定装置を提供する。
【解決手段】本方法は、基板上の電子部品の半田接合部に放射線を照射して透過放射線を検出する透過放射線検出工程と、検出した透過放射線の2次元強度分布からボイドと判定される領域の特徴情報を取得するボイド情報取得工程と、2次元強度分布の強度変化に関する特徴情報(エッジ画像)を取得する2次元強度分布特徴情報取得工程と、ボイド情報に基づいて2次元強度分布特徴情報からボイド情報を除去した2次元強度分布補正特徴情報(補正エッジ画像)を取得する2次元強度分布補正特徴情報取得工程と、2次元強度分布補正特徴情報から所定の特徴を示す情報を基準位置情報として抽出し、これに基づいて基準位置を特定する基準位置特定工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田接合部の基準位置特定方法および基準位置特定装置に関し、さらに詳しくは、放射線を用いて基板に実装された電子部品の半田接合部の基準位置を特定する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線等の放射線を照射して基板に実装された電子部品の半田付け部の位置を特定することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、透過画像を加算若しくは空間微分してリードの基部(バックフィレット)に生じるピーク値を検出し、検出した位置を基にリード先端の候補領域に生じる別のピーク値を検出することにより、半田付け部の位置を検出することが提案されている。
しかし、上記の提案は、QFP(Quad Flat Package)やSOP(Small Outline Package)などの電子部品のリードやチップ部品やミニモールドなどの端子の半田付け部分にボイド(気泡)が含まれている場合には、ボイドの影響によって、上記リードの基部や先端部のフィレットによるピークとは異なる位置にもピークが出現してしまい、基準位置となる本来のピークを検出できないといった問題があった。
そして、今日の鉛フリー半田の普及によって、上記半田付け部にはボイドが一層発生し易くなっており、半田付け部の基準位置を特定することが一層困難になっている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−74741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、半田接合部に存在するボイドを特定し、そのボイドによる影響を除くことにより、基準となる位置を正確に特定することができる半田接合部の基準位置特定方法および基準位置特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の通りである。
1.基板に実装された電子部品の半田接合部に放射線を照射して該半田接合部を透過した放射線を検出する透過放射線検出工程と、
上記検出した透過放射線の2次元強度分布からボイドと判定される領域の特徴情報を取得するボイド情報取得工程と、
上記2次元強度分布の強度変化に関する特徴情報を取得する2次元強度分布特徴情報取得工程と、
上記ボイド情報に基づいて上記2次元強度分布特徴情報から上記ボイド情報を除去した2次元強度分布補正特徴情報を取得する2次元強度分布補正特徴情報取得工程と、
上記2次元強度分布補正特徴情報から所定の特徴を示す情報を基準位置情報として抽出し、該基準位置情報に基づいて上記半田接合部の基準位置を特定する基準位置特定工程と、を備えることを特徴とする半田接合部の基準位置特定方法。
2.上記1.の半田接合部の基準位置特定方法において、上記基準位置は、上記電子部品の半田付けされたリード先端部であることを特徴とする。
3.上記1.または2.の半田接合部の基準位置特定方法において、上記2次元強度分布特徴情報は、上記2次元強度分布を空間微分処理することにより得られた空間微分画像であり、上記2次元強度分布補正特徴情報は、該空間微分画像から上記ボイドに相当する画像成分を除去する補正が行われた補正空間微分画像であることを特徴とする。
4.上記3の半田接合部の基準位置特定方法において、上記基準位置情報は、上記補正空間微分画像の輝度値を所定方向に投影加算したプロファイルの所定の基準を満たす極大値又は極小値の位置であることを特徴とする。
5.基板に実装された電子部品の半田接合部に放射線を照射して該半田接合部を透過した放射線を検出する透過放射線検出手段と、
上記検出した透過放射線の2次元強度分布からボイドと判定される領域の特徴情報を取得するボイド情報取得手段と、
上記2次元強度分布の強度変化に関する特徴情報を取得する2次元強度分布特徴情報取得手段と、
上記ボイド情報に基づいて上記2次元強度分布特徴情報から上記ボイド情報を除去した2次元強度分布補正特徴情報を取得する2次元強度分布補正特徴情報取得手段と、
上記2次元強度分布補正特徴情報から所定の特徴を示す情報を基準位置情報として抽出し、該基準位置情報に基づいて上記半田接合部の基準位置を特定する基準位置特定手段と、を備えることを特徴とする半田接合部の基準位置特定装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明の半田接合部の基準位置特定方法によると、基板に実装された電子部品の半田接合部に放射線を照射して検出した透過放射線の2次元強度分布からボイドと判定される領域の特徴情報を取得し、そのボイドの特徴情報に基づいて、2次元強度分布の特徴情報から上記ボイド情報を除去した2次元強度分布補正特徴情報を取得し、上記2次元強度分布補正特徴情報から所定の特徴を示す情報を基準位置情報として抽出するようにしている。これにより、基準位置を特定する情報として、半田接合部に存在するボイドの影響を取り除いた情報を取得することができるので、これに基づいた正確な半田接合部の基準位置が特定できる。
【0007】
また、この特定する基準位置が電子部品の半田付けされたリード先端部である場合は、緩やかに湾曲したリード基部や形状に違いが生じやすい半田フィレットの先端部を基準位置とする場合と比較して、より正確な基準位置として特定することができる。
【0008】
さらに、上記2次元強度分布特徴情報が、2次元強度分布を空間微分処理することにより得られた空間微分画像であり、上記2次元強度分布補正特徴情報が、該空間微分画像から上記ボイドに相当する画像成分を除去する補正が行われた補正空間微分画像である場合は、2次元強度分布の強度変化をエッジ画像として明確に抽出することができ、この画像に含まれるボイドの画像成分も明確に特定され、そこから除去することができるので、より一層正確に基準位置を特定することができる。
【0009】
また、上記基準位置情報が、上記補正空間微分画像の輝度値を所定方向に投影加算したプロファイルの所定の基準を満たす極大値又は極小値の位置である場合は、補正空間微分画像の輝度値を所定方向に投影加算したプロファイルにおいて、ピーク値として明確に現れる位置を基準位置情報として用いることができるので、より一層明確に基準位置を特定することができる。
【0010】
以上は、本発明が方法として実現される場合について説明したが、かかる方法を実現する装置としても発明は実現可能であり、その実質的な動作については上述した方法の場合と同様である。すなわち、前記に示す「半田接合部の基準位置特定方法」に係わる本発明において説明した事項は、全て、本「半田接合部の基準位置特定装置」にも適用できるものである。
以上のような半田接合部の基準位置特定装置は、単独で実現される場合もあるし、ある方法に適用され、あるいは同方法が他の機器に組み込まれた状態で利用されることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明において如何様にも適用できる。
(1)本実施形態の構成:
(2)基準位置特定処理(基準位置特定方法):
【0012】
(1)本実施形態の構成:
図1は本発明にかかる半田接合部の基準位置特定方法によって実現された半田接合部の基準位置特定装置(以下、基準位置特定装置と略記する。)1の概略ブロック図である。同図1に示すように、基準位置特定装置1は、撮像部10と制御部20を備えている。
【0013】
撮像部10は、放射線発生器11とX−Yステージ12と放射線検出器13とを備えており、それぞれCPU24によって制御される。すなわち、基準位置特定装置1はCPU24を含む制御系として放射線制御機構21とステージ制御機構22と画像取得機構23とCPU24とメモリ25と入力部26と出力部27とを備えている。この構成において、CPU24は、メモリ25に記録された基準位置特定プログラム25aを実行し、各部を制御し、また所定の演算処理を実施することができる。
【0014】
メモリ25はデータを蓄積可能な記憶媒体であり、基準位置特定処理を実行するための基準位置特定プログラム25aと、放射線発生器11にて放射線を発生させる際の条件(印加電圧、照射時間、撮像倍率等)を示すデータである撮像条件データ25bと、基準位置を特定する対象となる半田接合部に関するデータや対象範囲を特定するために用いられるウィンドウに関するデータ等を含む特定用データ25cとが予め記録されている。また、メモリ25は基準位置特定処理過程で生成される各種データを記憶可能で、放射線画像データ25d、ボイド情報データ25e、エッジ画像データ25f、補正エッジ画像データ25g、補正エッジ画像投影データ25h、特定結果データ25iを記憶可能である。なお、メモリ25は、データを蓄積可能であれば、HDDやDVD−RWなどリード/ライトが可能な如何様な形態の記録媒体であってもよい。
【0015】
放射線制御機構21は、上記撮像条件データ25bを参照し、図示しない上昇/下降機構を介して放射線発生器11をZ軸方向に駆動して撮像倍率を変更すると共に、放射線発生器11を制御して放射線の出力位置から出力側のほぼ全方位、すなわち、立体角2πの範囲に所定の放射線を発生させることができる。なお、本実施形態では、放射線発生器11は開放管型X線発生器を採用している。
ステージ制御機構22はX−Yステージ12と接続されており、上記特定用データ25cに基づいて同X−Yステージ12を制御する。
【0016】
画像取得機構23は放射線検出器13に接続されており、放射線検出器13から出力される透過放射線の強度レベルを示す検出値の2次元分布から、その強度レベルを輝度(濃淡)の差で表した放射線透過画像を取得する。取得した放射線透過画像は、放射線画像データ25dとしてメモリ25に記憶される。なお、放射線検出器13としては、被検査対象を透過した透過放射線の強度を検出することができれば良く、種々の構成を採用することができる。本実施形態における放射線検出器13は、2次元的に分布したセンサを備え、撮影したデータをシリアル出力するフラットパネルセンサを採用しており、透過放射線の強度が検出値として検出される。
【0017】
CPU24は、メモリ25に蓄積された各種制御プログラムに従って所定の演算処理を実行可能であり、基準位置の特定処理を行うために、図1に示す放射線制御部24aとステージ制御部24bと画像取得部24cとボイド情報取得部24dとエッジ画像生成部24eとエッジ画像補正処理部24fと補正エッジ画像投影処理部24gと特定処理部24hとによる演算を実行する。
【0018】
放射線制御部24aは、上記撮像条件データ25bを取得し、上記放射線制御機構21を制御して所定の放射線(例えば、100KeVのX線)を放射線発生器11から出力させる。
ステージ制御部24bは、上記特定用データ25cを取得し、基準位置特定の対象となる電子部品aの半田接合部が放射線検出器13の視野内に含まれるように、制御信号をステージ制御機構22に供給する。この結果、ステージ制御機構22は、電子部品aが放射線検出器13の視野内に配置されるようにX−Yステージ12を移動させる。
画像取得部24cは、画像取得機構23に指示を行い、放射線検出器13が出力する検出値に基づいた放射線透過画像を取得し、放射線画像データ25dとしてメモリ25に記録する。
【0019】
ボイド情報取得部24dは、透過放射線の2次元強度分布を表す上記放射線画像データ25dからボイドの特徴を示す領域を特定し、そのボイドと判定された領域の特徴情報(位置、形状)をボイド情報データ25eとしてメモリ25に記録する。
エッジ画像生成部24eは、放射線画像データ25dを空間微分処理することにより、2次元強度分布における周囲との強度の差の大きな箇所、すなわち、放射線透過画像における濃淡の変化の大きな箇所がエッジとして強調された空間微分画像(エッジ画像)を生成し、これを透過放射線の2次元強度分布の特徴を表すエッジ画像データ25fとして取得する。このエッジ画像は、微分値の大きさを濃淡で表している。
【0020】
エッジ画像補正処理部24fは、上記取得したエッジ画像データ25fから、上記ボイド情報データ25eに基づいてエッジ画像内のボイドに相当する画像成分を除去する処理を実行し、この処理された画像を補正エッジ画像データ25gとしてメモリ25に記録する。
補正エッジ画像投影処理部24gは、上記補正エッジ画像において濃淡で表されている微分値を所定方向に投影加算したプロファイルを生成し、このプロファイルにおいて所定の基準を満たすピーク(極大値または極小値)の位置を基準位置情報として取得し、補正エッジ画像投影データ25hとしてメモリ25に記録する。
特定処理部24hは、補正エッジ画像投影データ25hに基づいて、それに対応する半田接合部の位置を基準位置として特定し、特定結果データ25iとしてメモリ25に記録する。
【0021】
出力部27は上記放射線透過画像等を表示するディスプレイであり、入力部26は利用者の入力を受け付ける操作入力機器である。すなわち、利用者は入力部26を介して種々の入力を実行可能であるし、CPU24の処理によって得られる種々の演算結果や放射線透過画像、基準位置特定結果等を出力部27に表示することができる。
【0022】
(2)基準位置特定処理(基準位置特定方法):
本実施形態においては、上述の構成において図2および3に示すフローチャートに従って半田接合部の基準位置の特定を行う。なお、本実施形態においては、図4(a)に示すように、電子部品aとしてQFPが基板Sに実装されており、その半田付けされた各リードLの先端部を基準位置として特定する場合を説明する。
【0023】
最初に、変数n、mおよびlをそれぞれ"1"に初期化する(ステップS100)。これら変数n、mおよびlは、それぞれ最大値をN、MおよびLとする整数であり、Nは各基板Sから取得する放射線透過画像の数、Mは後述する各放射線透過画像内のウィンドウWの数、LはウィンドウW内の基準位置が特定される対象範囲Rの数で、それぞれ予め設定されている。
【0024】
次に、特定用データ25cに基づいて、X−Yステージ12上に載置された基板S上の基準位置特定の対象となる半田接合部が透過放射線検出手段としての放射線検出器13の視野内に含まれるようにX−Yステージ12を駆動する(ステップS105)。そして、撮像条件データ25bとして予め設定されている放射線発生器11の撮像条件においてその放射線透過画像を取得し(ステップS110)、放射線画像データ25dとしてメモリ25に記録する。
【0025】
続いて、CPU24は特定用データ25cを参照し、取得した放射線透過画像内の所定位置にウィンドウWを設定し(ステップS115)、当該ウィンドウW内の画像を読み取る。ウィンドウWが設定されると、今度はそのウィンドウW内の各半田接合部について、基準位置特定の対象となる各領域を対象範囲Rとして設定する(ステップS120)。この対象範囲Rは、ウィンドウW内の画像を二値化処理等することにより、半田接合部のおおよその範囲を特定して設定される。
【0026】
ここで、ウィンドウWおよび対象範囲Rは、図4(a)および(b)に示すように、基準位置特定処理を迅速に行うために、通常そのウィンドウW内に複数(図中4箇所)の対象範囲R(半田接合部)が含まれるように設定されるが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、さらに多くの対象範囲Rを含むようにウィンドウWを設定してもよいし、半田接合部1箇所ごとにウィンドウWを設定、すなわち、対象範囲RがウィンドウWであるように設定してもよい。さらに、放射線透過画像全体がウィンドウWとなるように設定、すなわち、ウィンドウWの範囲ごとに放射線透過画像を撮影するようにしてもよい。
【0027】
次に、ボイド情報取得手段としてのボイド情報取得部24dは、図5(a)に示す対象範囲R内の画像から、ボイドと判定される領域の特徴情報を取得するボイド情報取得処理を実行する(ステップS125)。なお、放射線透過画像に基づいて半田接合部に存在するボイドを特定し、そのボイドに関する情報を取得する方法は、既知の、または新規の方法を適宜採用可能であるが、以下にその一例を説明する。
【0028】
本ボイド情報取得処理は、図3に示すフローチャートに従って実行される。最初に、ボイド情報取得部24dは、ステップS120で設定した対象範囲Rから、この範囲内の放射線透過画像に基づいて半田の厚みに相当する厚みプロファイルを取得する(ステップS200)。この厚みプロファイルは、透過放射線の検出強度を半田の実際の厚みに換算することで求めることができる。なお、厚みプロファイルを取得するにあたり、基準となる既知の半田厚みを有する試験プレートを透過させた放射線強度を予め測定してデータ換算テーブルを作成しておくことにより、半田厚みに対応する透過放射線の検出値を半田厚みに換算することができ、この厚みを濃淡で表した厚みプロファイルを取得することができる。
【0029】
図6(a)に示すように、半田H内にボイドV1〜V3が存在する場合、半田の放射線透過率は予め基準となる厚みを有する試験プレートを透過したデータによって上述のように既知であり、また、ボイドのような空隙は放射線をほとんど吸収しないことから、透過放射線の検出値I(強度)に基づいて半田Hの厚みを求めることができる。図6(b)は、2次元平面X−Yにおいて、透過放射線の検出値I(強度)に基づいて換算した厚みtを縦軸にとり、その分布を立体的に表した図(厚みプロファイル)である。半田H内にボイドV1〜V3が存在する場合には、この厚みプロファイルにボイドV1〜V3の影響による変化(凹み)が生じる。
【0030】
図7(a)に示すように、ボイドVの形状が略球形状である場合、そのボイドに起因した透過放射線の検出値Iのプロファイル形状は図7(b)のように釣鐘状となる。この図7(b)において、検出値Iが急激な変化を示す位置x1およびx2はボイドの輪郭(外形)を示す位置に相当する。そして、透過放射線の検出値Iに基づいて求めた厚みtの分布においても同様に、厚みtが急激な変化を示す位置が存在する。したがって、次のステップでは、このような位置を輪郭として抽出する処理を実行する。
【0031】
ステップS205では、厚みtが濃淡で表された画像の隣接する各画素の輝度(濃淡)の差を予め設定した基準値と比較する。すなわち、隣接する各画素との輝度差が所定の閾値以上となる画素を輪郭画素とする輪郭抽出処理を実行する。そして、図5(b)に示すように、抽出された各輪郭画素により閉領域を形成している画素群をボイド候補として取得する(ステップS210)。この取得した各ボイド候補からボイドのみを選択する方法は特に限定されず、種々の方法を採用可能であるが、その例として、下記のボイド候補の縦横比を用いる方法を説明する。
【0032】
リード先端の半田内に存在するボイドは、通常、球形状に近い形状を示すことが知られている。そして、ボイドVの形状が略球形状である場合、そのボイドに起因した2次元平面X−Y上の輪郭の形状は図5(b)の拡大図に示すように円形に近い形状となり、円の直径に相当する線分でありかつ直交する2つの線分の長さの比は略1となる。したがって、ボイド候補の直交する縦Yと横Xの長さの比Y/Xを求めることにより、このY/Xの値が予め設定した範囲内(略1となる範囲)であれば、この輪郭はボイドに起因する輪郭であると判別することができる。ただし、上記Y/Xの値の範囲の設定については、実際のボイドが示すY/Xの値等を測定すること等により、その許容範囲を適宜設定すればよい。
【0033】
ここで、上記ボイドに起因する輪郭の判別において、ノイズ等がランダムあるいは何らかの傾向を持って発生したとしても、その輪郭の縦横比が"略1"となることはまれである。したがって、本実施形態のように球形状のボイドによって形成される円形の輪郭形状をボイド候補として抽出することにより、ボイドを確実に抽出することができる。
【0034】
上述のようにして、ステップS215において、各円形状の輪郭をボイド候補として1つずつ選択し、これがボイドに起因する輪郭であるか否かを判別する(ステップS220)。ボイドに起因するものであると判別されれば、ステップS225にてこれをボイドとして抽出する。ボイドに起因するものであると判別されなければ、ステップS230に移行する。
【0035】
ステップS230においては、以上の一連の処理を全ての上記ボイド候補について適用したか否かを判別する。そして、全てのボイド候補について適用したと判別されるまでステップS215以降の処理を繰り返す。全てのボイド候補について適用したと判別されれば、図5(c)に示すように、ステップS225において抽出した全てのボイドの放射線透過画像上の位置、形状を表す情報をボイド情報として取得し(ステップS235)、ボイド情報データ25eとしてメモリ25に記録する。
【0036】
なお、上述の輪郭抽出処理では、透過放射線の検出値を半田厚みに換算した厚みプロファイルの隣接する各画素との輝度差を基準値と比較することによりボイド候補となる輪郭を抽出するようにしたが、これに限られるものではなく、例えば、透過放射線の検出値を半田厚みに換算せずに、放射線透過画像の隣接する各画素の輝度差を基準値と比較してボイド候補となる輪郭を抽出するようにしてもよい。
【0037】
以上のようにしてボイド情報を取得すると、次に、2次元強度分布特徴情報取得手段としてのエッジ画像生成部24eは、対象範囲R内の2次元強度分布画像を空間微分処理することによって2次元強度分布画像としてのエッジを抽出したエッジ画像を生成し(ステップS130)、エッジ画像データ25fとしてメモリ25に記録する。このエッジ画像は、図5(d)に示すように、透過放射線の検出値が急激に変化する部分であるエッジ部分を輝度の差として表した画像である。このエッジ画像において、エッジに相当する画像成分はその周りの他の画像成分の輝度値よりも濃く、または淡く表されている。
【0038】
ここで、上記エッジ画像において、半田接合部にボイドが存在していなければ、このエッジ画像におけるリード先端部に相当するエッジを抽出することにより基準位置を特定することができるが、ボイドが存在している場合、そのボイドの影響によりリード先端部に相当するエッジを特定することが困難となる。そこで、2次元強度分布補正特徴情報取得手段としてのエッジ画像補正処理部24fにより、ステップS125にて取得したボイド情報に基づいて、上記エッジ画像からボイドによる影響を除去する補正処理を行い(ステップS135)、補正エッジ画像データ25gを取得する。
【0039】
このエッジ画像補正処理は、図5(e)に示すように、ステップS130にて取得したエッジ画像(図5(d))のボイドVに相当する画像成分の領域に対し、ステップS125にて取得したボイド情報に基づいて穴埋め処理を施すことである。すなわち、この穴埋め処理とは、エッジ画像上のボイドに相当する画像成分に対して、ボイド情報を用いることにより、ボイドに相当する画像成分の領域に対応する微分値を"0"に置き換える処理である。これにより、エッジ画像からボイドによる影響を取り除くことができる。
【0040】
次に、この補正エッジ画像に基づいて基準位置となるリード先端部の位置を特定するにあたり、補正エッジ画像投影処理部24gにより、上記補正エッジ画像における輝度値(微分値)を図5(e)の上下方向、すなわち、リード先端部の端面と平行な方向へ投影加算する処理を実行する(ステップS140)。これにより、基準位置情報として、補正エッジ画像投影プロファイル(図8(b))を取得し、これを補正エッジ画像投影データ25hとしてメモリ25に記録する。
【0041】
ここで、図4の1つの対象範囲Rに対して2次元強度分布補正特徴情報取得工程によりエッジ画像補正処理を実行して投影処理を行った場合と実行せずに投影処理を行った場合の違いについて図8に従い説明する。図8(a)は1つの対象範囲Rの側断面図を、図8(b)(c)はそれぞれエッジ画像補正処理を実行してリードLの端面に平行な方向にエッジ画像を投影加算した場合とエッジ画像補正処理を実行せずに投影加算した場合の輝度値(微分値)の加算結果を示す。図8(b)においてはエッジ画像補正処理によりボイドVの先端のピークが小さいのに対して、図8(c)においては基準位置として特定されるべきリード先端部を示す位置の近傍にはリードL先端部とボイドV先端部の2つのピークが出現している。このため、半田付け部分にボイドを含む場合にはどちらのピークが基準位置を示すものであるかを判別することが困難であることがわかる。
【0042】
ステップS145において、基準位置特定手段としての特定処理部24hは、上記補正エッジ画像投影プロファイルにおける基準位置となるリード先端部のエッジに相当するピークの位置を抽出し、このピークの位置を基準位置として特定する。この特定方法としては、種々の方法を採用可能であるが、例えば、対象範囲Rにおいて、予め設定された範囲(リード先端部近傍)における投影加算された微分値の極大値または極小値の位置を基準位置として特定することができる。図8(b)において、X方向の所定範囲内において極大値を示すピークは、ボイドVの影響を除去したことにより、リード先端部のエッジに起因して生じたピークとなっていることがわかる。
そして、上記特定された基準位置は、この対象範囲Rにおける半田接合部の特定結果データ25iとしてメモリ25に記録される。
【0043】
上述のようにして、ひとつの対象範囲Rについての基準位置を特定すると、ステップS150においては、変数lが最大値Lに達しているか否か、すなわち、上記ウィンドウWにおける全ての対象範囲Rについて上記処理を実行したか否かが判別され、最大値Lに達していると判別されなければ、変数lをインクリメントし(ステップS155)、ステップS125以降の処理を繰り返す。変数lが最大値Lに達していると判別されれば、ステップS160へ移行する。
【0044】
ステップS160においては、変数mが最大値Mに達しているか否か、すなわち、上記放射線透過画像に対して予め設定されている全てのウィンドウWについて上記処理を実行したか否かが判別され、最大値Mに達していると判別されなければ、変数mをインクリメントし(ステップS165)、ステップS120以降の処理を繰り返す。変数mが最大値Mに達していると判別されれば、ステップS170へ移行する。
【0045】
ステップS170においては、変数nが最大値Nに達しているか否か、すなわち、上記基板Sに対して予め設定されている全ての放射線透過画像を取得したか否かが判別され、最大値Nに達していると判別されなければ、変数nをインクリメントし(ステップS175)、ステップS110以降の処理を繰り返す。変数nが最大値Nに達していると判別されれば、基板Sに対して設定されている全ての基準位置特定処理が終了する。
【0046】
以上のように、本実施形態では、放射線透過画像からボイドと判定される領域の特徴情報を取得し、そのボイドの特徴情報に基づいて、放射線透過画像のエッジ画像から上記ボイドに相当する画像成分を除去した補正エッジ画像を取得し、これに基づいて基準位置情報を取得するようにしている。このように、基準位置を特定する情報として、半田接合部に存在するボイドの影響を取り除いた情報を取得することができるので、これに基づいた正確な半田接合部の基準位置が特定できる。
【0047】
また、本実施形態では、電子部品aの半田付けされたリードLの先端部を基準位置として特定するようにしたので、緩やかに湾曲したリード基部や形状に違いが生じやすい半田フィレットの先端部を基準位置とする場合と比較して、より正確な基準位置として特定することができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、2次元強度分布の特徴情報として、2次元強度分布を空間微分処理することにより得られた空間微分画像であるエッジ画像とし、また、補正特徴情報として、エッジ画像からボイドに相当する画像成分を除去する補正が行われた補正エッジ画像としたので、2次元強度分布の特徴を明確に抽出することができ、より一層正確に基準位置を特定することができる。
【0049】
また、本実施形態では、基準位置情報として、補正エッジ画像の輝度値を所定方向に投影加算したプロファイルの所定の基準を満たす極大値又は極小値の位置としたので、ボイドの影響が除去され、また、投影加算することにより、基準位置となるリード先端部のエッジがピークとして明確に現れる位置を基準位置情報として用いることができ、さらにより一層明確に基準位置を特定することができる。
【0050】
なお、上記の実施形態では、放射線発生器11に開放管型X線発生器を採用する提案を行ったが、特定の範囲に対してコーン状の放射線を出力する密閉管型X線発生器を採用してもよい。また、利用できる放射線としてはX線に限られず、γ線等、被検査対象を透過する種々の放射線を採用可能である。
また、放射線検出器13に関しても、本実施形態のフラットパネルセンサに代えてイメージインテンシファイアーを採用してもよい。
【0051】
また、上述の実施形態においては、電子部品aの半田付けされたリードの先端部を基準位置として特定する例を説明したが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、チップ部品等の電子部品a’の半田付けされた端部を基準位置として特定、すなわち、端部を半田付けされた電子部品全般におけるその端部を基準位置として特定することもできる。
さらに、上述の実施形態では、基板Sに実装された電子部品aとしてQFPの場合を説明したが、これに限定されず、SOPなど、半田付けされたリードLを有する電子部品全般の半田接合部の基準位置を特定するようにしてもよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、補正エッジ画像を取得し、これを投影加算して補正エッジ画像投影プロファイルを取得することにより、補正エッジ画像の微分値をY方向に加算してそのピークを求めるようにしたが、これに限定されず、例えば、補正エッジ画像におけるX方向に平行な直線上でのプロファイルを複数取得し、これを加算したプロファイルを取得するようにしてもよい。
さらに、上述の実施形態においては、エッジ画像の補正として、ボイドと判定された範囲全ての微分値を"0"に置き換えることにより補正するようにしたが、これに限定されず、例えば、ボイドと判定された範囲において基準位置の特定に影響を及ぼす所定の値以上の微分値についてのみ"0"に置き換えるように補正してもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、ボイドの判定方法として、抽出した輪郭の縦横比を用いて判定するようにしたが、これに限定されず、例えば、抽出したボイド候補の輪郭の直径(例えば、図7(b)のx2−x1)の1/2から半径を求め、この半径に基づいて計算で求めた球の体積と、各画素の濃度情報から直接求めた球の体積(図7(b)の釣鐘の体積に相当)の比を基準値と比較することによってボイド候補を球形の特徴を持つボイドと特定するなど球形の特徴を判定する種々の方法を採用可能である。
【0054】
なお、参考までに、多層基板表面に実装された電子部品等の基準位置の特定において、上述のボイドの影響によって基準位置の特定が困難である場合のほか、基板内層に実装された電子部品やパターン層等の影響により基準位置を特定するための基準位置情報を取得することが困難となるような場合においては、放射線透過画像上のそれら電子部品やパターン等の画像成分を、それらの既知の位置および形状等に基づいて抽出し、その影響を除去するようにすることもできる。
また、上述の実施形態においては、半田接合部の基準位置を特定するために、ボイドを抽出してその影響を除去する方法を説明したが、スルーホールのように、放射線透過画像においてボイドと同じ円形状を示す対象に対しても、同様の方法でその影響を除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態にかかる半田接合部の基準位置特定装置の概略ブロック図である。
【図2】基準位置特定処理のフローチャートである。
【図3】ボイド情報取得処理のフローチャートである。
【図4】本実施形態にかかるウィンドウWおよび対象範囲Rを説明するための説明図である。
【図5】本実施形態にかかる基準位置特定処理において取得される画像等の例を示す図であり、(a)は放射線透過画像、(b)は輪郭抽出画像、(c)はボイド情報、(d)はエッジ画像、(e)は補正エッジ画像をそれぞれ示す。
【図6】本実施形態にかかる半田接合部を説明した説明図であり、(a)は半田接合部の模式図、(b)は(a)における透過放射線の2次元強度分布を立体的に表した図である。
【図7】半田H内にボイドが存在する場合の透過放射線の検出値の例を示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る投影プロファイルの例を説明する説明図であり、(a)は図4の1つの対象範囲Rの側断面図、(b)は補正を行ったエッジ画像の投影プロファイル、(c)は補正を行わないエッジ画像の投影プロファイルをそれぞれ示す。
【図9】他の実施形態にかかる半田接合部の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1;基準位置特定装置、10;撮像部、11;放射線発生器、12;ステージ、13;放射線検出器、20;制御部、21;放射線制御機構、22;ステージ制御機構、23;画像取得機構、24;CPU、24a;放射線制御部、24b;ステージ制御部、24c;画像取得部、24d;ボイド情報取得部、24e;エッジ画像生成部、24f;エッジ画像補正処理部、24g;補正エッジ画像投影処理部、24h;特定処理部、25;メモリ、25a;基準位置特定プログラム、25b;撮像条件データ、25c;特定用データ、25d;放射線画像データ、25e;ボイド情報データ、25f;エッジ画像データ、25g;補正エッジ画像データ、25h;補正エッジ画像投影データ、25i;特定結果データ、26;入力部、27;出力部、H;半田、I;検出値、L;リード、R;対象範囲、S;基板、V、V1〜V3;ボイド、W;ウィンドウ、a、a’;電子部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装された電子部品の半田接合部に放射線を照射して該半田接合部を透過した放射線を検出する透過放射線検出工程と、
上記検出した透過放射線の2次元強度分布からボイドと判定される領域の特徴情報を取得するボイド情報取得工程と、
上記2次元強度分布の強度変化に関する特徴情報を取得する2次元強度分布特徴情報取得工程と、
上記ボイド情報に基づいて上記2次元強度分布特徴情報から上記ボイド情報を除去した2次元強度分布補正特徴情報を取得する2次元強度分布補正特徴情報取得工程と、
上記2次元強度分布補正特徴情報から所定の特徴を示す情報を基準位置情報として抽出し、該基準位置情報に基づいて上記半田接合部の基準位置を特定する基準位置特定工程と、を備えることを特徴とする半田接合部の基準位置特定方法。
【請求項2】
上記基準位置は、上記電子部品の半田付けされたリード先端部である請求項1記載の半田接合部の基準位置特定方法。
【請求項3】
上記2次元強度分布特徴情報は、上記2次元強度分布を空間微分処理することにより得られた空間微分画像であり、上記2次元強度分布補正特徴情報は、該空間微分画像から上記ボイドに相当する画像成分を除去する補正が行われた補正空間微分画像である請求項1または2項に記載の半田接合部の基準位置特定方法。
【請求項4】
上記基準位置情報は、上記補正空間微分画像の輝度値を所定方向に投影加算したプロファイルの所定の基準を満たす極大値又は極小値の位置である請求項3に記載の半田接合部の基準位置特定方法。
【請求項5】
基板に実装された電子部品の半田接合部に放射線を照射して該半田接合部を透過した放射線を検出する透過放射線検出手段と、
上記検出した透過放射線の2次元強度分布からボイドと判定される領域の特徴情報を取得するボイド情報取得手段と、
上記2次元強度分布の強度変化に関する特徴情報を取得する2次元強度分布特徴情報取得手段と、
上記ボイド情報に基づいて上記2次元強度分布特徴情報から上記ボイド情報を除去した2次元強度分布補正特徴情報を取得する2次元強度分布補正特徴情報取得手段と、
上記2次元強度分布補正特徴情報から所定の特徴を示す情報を基準位置情報として抽出し、該基準位置情報に基づいて上記半田接合部の基準位置を特定する基準位置特定手段と、を備えることを特徴とする半田接合部の基準位置特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−288184(P2009−288184A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143517(P2008−143517)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】