説明

半田材検査装置、半田材検査方法、及び半田材印刷装置

【課題】 半田材の劣化状態を容易に評価することができる半田材検査装置を提供する。
【解決手段】 本発明の半田材検査装置は、スキージ13とマスク14との、それぞれの表面に接するように半田材15が介在している状態から、スキージ13とマスク14とが引き離された状態において、当該スキージ13とマスク14との間に位置する半田材15へ光を出射する投光部11と、半田材15を通過した通過光を受光する受光部12とを備えている。これにより、半田材15の劣化状態を容易に評価することが可能となり、特に、インラインにおける半田材15の劣化評価に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面への部品実装に用いられる半田材の劣化を評価する半田材検査装置、半田材検査方法、及び半田材印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板表面へチップ等の部品を実装する場合、所要パターンの穴が形成されたマスクを用いて基板表面に半田材を印刷し、当該印刷された半田材上に部品をマウント(載置)して、当該チップ部品等と基板とを接合することがなされている。ここで、半田材は、金属粉とフラックスとを含んで構成されているものであり、基板表面への印刷を繰り返すことに伴いフラックス中の溶剤が蒸発することや、保管・印刷時等において金属粉とフラックスとが反応することに起因して、その粘度上昇等の粘度変化が生じる。
【0003】
前記のような半田材の劣化に伴う粘度変化は、例えば、半田材の粘度上昇によって基板上への印刷量が必要量よりも少なくなることに起因するカケ、印刷途中での基板と印刷用マスクとの位置ずれによる剪断、マスクと基板との密着性不良に起因するにじみ、半田材の粘度低下に起因するだれ等の問題が発生する原因となる。
【0004】
このため、従来、印刷装置に供給する前において、粘度測定装置を用いて予め供給前の半田材の粘度を測定して、その粘度の把握および管理を行っている。しかしながら、半田材の粘度は、経時変化や印刷工程により刻々と変化するものであるため、投入前の粘度測定結果による粘度管理では、実際の印刷時における半田材の粘度変化を把握できないという問題がある。
【0005】
この問題を解決するために、予め半田材の粘度と流動速度との相対関係を求めておき、レーザセンサで測定した半田材の流動速度と予め求めた前記相対関係とを比較し、実際の印刷時における半田材の粘度及びその連続変化を求める測定方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、半田材を評価することを目的とした前記の方法以外のものとしては、フラックスの酸値自動測定装置や(例えば、特許文献2参照)、大気雰囲気紫外線光電子分光法により半田材の大気雰囲気紫外線光電子スペクトルを測定し、得られた光電子スペクトルから当該半田材の表面酸化膜より放出される光電子の放出強度を求め、求めた光電子放出強度を、予め求めた半田材の表面酸化率と表面酸化膜より放出される光電子放出強度との関係に当てはめて当該半田材の表面酸化率を求める方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されている。
【特許文献1】特開平5−99831号公報(1993年4月23日公開)
【特許文献2】特公平8−20434号公報(1996年3月4日公開)
【特許文献3】特開平10−82737号公報(1998年3月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の測定方法には、スキージ駆動時のみしか計測できず、印刷工程で使用中の半田材に限られるという問題点がある。
【0008】
また、前記特許文献2に記載の方法には滴定作業が必要であるから、手間がかかりインラインでの半田材の粘度変化の測定に用いることができないという問題点がある。また、前記特許文献3に記載の表面酸化度の評価方法は、半田材に紫外線を照射して表面酸化膜から放出される光電子の放出強度を求めるものであるが、その表面がフラックスにより覆われている半田材の評価に用いることは困難であり、また、紫外線は人体に悪い影響を及ぼす危険性があるという問題点もある。
【0009】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、半田材の劣化を容易に評価することができる、半田材検査装置、半田材検査方法、及び半田材印刷装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半田材検査装置は、前記の課題を解決するために、それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において2つの部材間に光を出射する投光部と、当該投光部から出射された光が前記2つの部材間を通過した通過光、又は前記投光部から出射された光が前記半田材によって反射された反射光を受光する受光部とを備えていることを特徴としている。
【0011】
この構成により、半田材の劣化状態を容易に評価することができる。すなわち、前記のように半田材が介在している2つの部材を引き離し、当該2つの部材間に位置する半田材の状態を投光部及び受光部により、測定することにより、半田材の粘度変化を容易に評価することができる。また、当該半田材の粘度変化はその劣化状態を反映しているから、前記状態における半田材の状態を受光部で測定することにより、半田材の劣化状態を容易に評価することができる。
【0012】
したがって、本発明の半田材検査装置によれば、受光部の測定結果に基づいて、半田材の状態の変化を定量的に把握することができるから、半田材の劣化の進行を予測して適切なタイミングで廃棄すること、及び半田材の印刷不良の発生を未然に防ぐことが可能になる。また、本発明の半田材検査装置によれば、半田材の劣化状態をインラインで評価することができるから、測定のための余計な手間や時間を省くことが可能になる。
【0013】
より具体的に説明すれば、2つの部材間を通過する通過光、及び半田材によって反射された反射光は何れも、半田材の有無によって強度及び量が異なり、半田材の状態を反映したものである。具体的には、その粘度が高くなるにしたがい、2つの部材間において半田材が占める領域は大きくなるから、例えば、前記受光部が通過光を受光する構成のものである場合、半田材の粘度が高くなるにしたがって、受光量が減少することとなる。このため、これら通過光及び/又は反射光を受光する受光部により、2つの部材間における半田材の状態を評価することができる。
【0014】
なお、投光部の光、通過光、又は反射光を受光部で受光することにより、2つの部材間の半田材を評価する上記の構成以外の状態測定方法としては、2つの部材間に風を当てて、風量の変化により半田材を評価する構成が挙げられる。
【0015】
前記受光部は、前記通過光を受光する位置、又は前記反射光を受光する位置に設けることとすればよい。
【0016】
前記受光部が前記通過光を受光する位置に設けられた構成によれば、受光部の受光する通過光強度において、前記2つの部材間において半田材が存在する領域と、存在しない領域とのコントラストが大きくなるから、半田材の劣化を高い精度で評価することを容易に実現できる。
【0017】
一方、前記受光部が前記反射光を受光する位置に設けられた構成によれば、投光部と受光部とを近接して配置できるから、半田材検査装置をコンパクトにすることができる。この場合、前記通過光を反射する反射部を備えた構成とすることが好ましい。前記反射光は、前記通過光に比べて、半田材が存在する領域と存在しない領域との間のコントラストが小さいが、反射部を設けることにより、当該反射部に反射された反射部光と半田材によって反射された反射光との間のコントラストを向上させることができるから、反射光による半田材の状態の評価をより確実に行うことができる。
【0018】
なお、本発明の半田材検査装置は、前記受光部の受光強度に基づいて半田材の劣化を評価する処理部を備えたものであっても良い。これによれば、受光部の受光強度を外部の装置により評価するのではなく、半田材検査装置自身により半田材の劣化を評価することができる。前記処理部による半田の劣化評価は、例えば、前記受光部の受光強度を所定の閾値と比較することにより行うことができる。
【0019】
また、この場合、処理部において比較対象とされる閾値の設定、変更を行う操作部を備えていることが好ましい。この操作部を用いて、閾値を設定、変更することにより、具体的な条件に応じて半田材の劣化を評価することができる。
【0020】
また、前記処理部の測定結果の表示又は外部に出力する出力部をさらに備えたものであってもよい。これによれば、出力部の表示や外部へ出力された測定結果に基づいて、半田材の劣化状態に応じた、交換などの処理を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の半田材検査装置の前記2つの部材は、所要パターンの穴が形成されたマスクと、当該マスクの上面をスライドして半田材を印刷するスキージとであってもよい。
【0022】
前記2つの部材がマスクとスキージとである場合、本発明の半田材検査装置によれば、半田材印刷装置におけるマスクとスキージとの間の半田材の劣化状態を連続的に評価することができる。すなわち、前記の本発明の半田材検査装置によれば、半田材印刷装置における半田材の劣化状態を、インラインで評価することができる。
【0023】
本発明の半田材検査装置は、前記2つの部材が所定の距離引き離されたことを検知する検出部をさらに備えていてもよい。この構成により、2つの部材が所定の距離引き離された時点、すなわち2つの部材間の距離が所定値となった時点を検知し特定することができる。これにより、所定の距離引き離された状態や、当該状態から所定時間が経過した状態等のような、一定の条件下における半田材の状態を測定することが容易になる。
【0024】
本発明の半田材検査装置は、前記受光部による測定結果の変化を評価する処理部をさらに備えていてもよい。この構成により、前記2つの部材間の半田材量が時間の経過に伴って変化する場合に、当該変化が半田材の状態の評価に与える影響を抑制することができる。
【0025】
例えば、前記2つの部材がマスクとスキージである場合、半田材の印刷が繰り返されることによって、マスク上の半田材の量が変化する。より具体的には、マスク上の半田材は、印刷(基板への転写)の繰り返しによる減少と、適宜のタイミングでの半田材量の補充による増加を繰り返している。ここで、マスクとスキージとの間の半田材の状態は、マスク上の半田材量の多寡により影響を受けるから、例えば、半田材の粘度が同じ場合であっても、半田材量が異なる場合には、前記受光部の測定結果が異なるといった事態が生じる。一方、マスクとスキージとが所定の距離引き離された後の半田材の状態変化(例えば、所定の距離引き離された時点と、当該時点から所定時間経過した後の時点との変化量)は、マスク上の半田材量の多寡により受ける影響が小さい。このため、前記受光部による測定結果の変化を評価する処理部により時間経過処理をすれば、半田材量の変化による影響を抑制することができる。
【0026】
本発明の半田材印刷装置は、本発明の前記半田材検査装置を備えていることを特徴としている。このため、半田材印刷装置における半田材の劣化をインラインで評価することができる。
【0027】
また、本発明の半田材印刷装置は、前記受光部の測定結果または前記処理部の評価結果に基づいて半田材印刷機の印刷パラメータを制御する制御部を備えているものであってもよい。このように、制御部によって、前記受光部の測定結果または前記処理部の評価結果に基づいて半田材印刷機の印刷パラメータを制御することができるから、半田材の劣化状態を印刷パラメータに反映させて、より適切な条件を用いて半田材の印刷を制御することが可能となる。
【0028】
本発明の半田劣化評価方法は、それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において、当該2つの部材間に位置する半田材の状態を測定するステップを備えていることを特徴としている。これにより、上述した本発明の前記半田材検査装置と同様に、半田材の劣化状態を容易に評価することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の半田材検査装置及び半田材印刷装置は、以上のように、それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において2つの部材間に光を出射する投光部と、当該投光部から出射された光が前記2つの部材間を通過した通過光、又は前記投光部から出射された光が前記半田材によって反射された反射光を受光する受光部を備えているので、半田材の劣化状態を容易に評価することができるという効果を奏する。
【0030】
また、本発明の半田材検査方法は、それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において、当該2つの部材間に位置する半田材の状態を測定するステップを備えているので、半田材の劣化状態を容易に評価することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施の形態を説明する前に、本願発明の発明者が、それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において、当該2つの部材間に位置する半田材の状態を測定するという技術思想に想到した経緯につき、図9(a)〜(d)を参酌して以下に説明する。
【0032】
図9(a)〜(d)は、従来の半田材印刷装置において、マスク114との間に半田材115が介在しているスキージ113を、マスク114から所定の距離だけ離した状態を示す正面図であり、(a)〜(d)の順に、印刷初期、印刷400回、印刷800回、印刷1200回の時点における状態を示している。同図に示されているように、半田材印刷装置で印刷を繰り返し行うと、スキージ113とマスク114との間(実線で囲った部分)の半田材115の状態が変化する。
【0033】
具体的には、図9(a)(b)に示すように、印刷初期の時点と印刷400回の時点における半田材115は何れも、スキージ113とマスク114それぞれの表面に分散して付着しており、両者の間では大きな状態の変化は認められない。一方、図9(c)(d)に示すように、印刷800回、印刷1200回の時点においては、スキージ113から垂れた半田材115が、スキージ113表面とマスク114表面との間に連続して付着した状態になっている。このように、印刷を繰り返すことによって半田材115が粘度変化する結果、スキージ113がマスク114から所定の距離だけ離された状態において、両者の間に半田材115が連続的に存在する領域が生じる(以下、「半田材115が連続的に存在する領域」を「半田材115の垂れ」という。)。そして、本発明の発明者は、この半田材115の垂れが粘度上昇に起因しており、また、その程度は半田材115の粘度上昇の程度を反映していることを見出した。
【0034】
以上のようにして、本発明の発明者は、印刷時の半田材115の劣化を評価するための手段として、半田材115の垂れを測定、評価するという技術思想に想到したものである。
【0035】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、図1〜4に基づいて以下に説明する。
図1は、投光部11からの光の出射方向に平行であって、マスク14からスキージ13を引き離す方向に対して略垂直な方向から見た、本実施形態の半田材検査装置の要部構成の概略を示す図である。同図に示すように、本実施の形態の半田材検査装置は、投光部11、受光部12、検出部16、処理部17、及び出力部18を備えている。
【0036】
投光部11は、図1に示すように、印刷装置のスキージ(部材)13がマスク(部材)14から所定の距離離れた状態において、両者の間に存在する半田材15に対し光を照射(出射)するものである。投光部11は、スキージ13とマスク14との間に光を照射する位置に設けられていればよい。また、投光部11としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)やレーザなどを用いることができる。
【0037】
受光部12は、投光部11から出射された光のうち、スキージ13とマスク14との間を通過した通過光を受光するものである。このため、受光部12は、スキージ13とマスク14との間に半田材15の垂れが形成されている状態において、当該半田材15を挟んで、投光部11と反対側となる位置に設けられている。受光部12の受光により、半田材15の垂れの状態を評価することができるが、これについては、後に、図3を参酌して説明する。また、受光部12としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等の受光素子よりなる、ラインセンサやエリアセンサ等を用いることができる。エリアセンサによればスキージ13とマスク14との間の全体の画像が得られるので、ラインセンサに比べて測定領域設定が容易であるという利点がある。
【0038】
検出部16は、スキージ13がマスク14から所定の距離離れたことを検出するものであり、例えば、光電センサ等を用いることができる。検出部16によって上記の検出がなされた時点、又は検出から所定時間が経過した時点において、受光部12により受光された通過光を測定することとすれば、一定の条件下で半田材15の垂れを評価することが容易になる。
【0039】
処理部17は、受光部12における通過光の測定結果を処理するものである。より具体的には、本実施形態における処理部17は、受光部12に受光された通過光の強度に基づいて、半田材15の劣化を評価するものである。処理部17による半田材15の状態の評価は、例えば、受光部12の受光強度が所定の閾値よりも低い領域の割合が所定の基準値以下となった時点で、半田材15が交換を要する程度に劣化したと判断することより行うことができる。処理部17としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)等を用いることができ、前記の閾値、前記の基準値や、受光部12の受光した通過光強度を保存する記憶部をも備えた構成としてもよい。
【0040】
出力部18は、処理部17における測定結果を表示すると共に外部に出力するものである。半田材検査装置の操作者は、出力部18に表示又は出力部18から出力された測定結果により、半田材15の劣化状態を判断することができる。このため、半田材15が劣化した時点で、半田材15を交換するという対応が可能となる。また、半田材15の交換等は、操作者により判断されるものではなく、出力部18からの出力に応じて自動的になされる構成としてもよい。
【0041】
図2は、本実施の形態の半田材検査装置により、スキージ13とマスク14との間の半田材15の劣化を評価する評価方法のフローチャートである。同図に示すように、検出部16(図1参照)は、スキージ13の上昇が完了し、マスク14との間が所定の距離となったことを検知する(S10)。その後に、投光部11から照射された光のうち、スキージ13とマスク14との間を通過した通過光を、受光部12によって受光する(S11)。S11の後に、受光部12で受光された通過光の強度を処理部17で処理し(S12)、当該処理結果を出力部18から出力する(S13)。
【0042】
前記の方法により、マスク14表面の半田材15に接しているスキージ13が、マスク14から所定の距離引き離された状態における、スキージ13とマスク14との間の半田材15の垂れの状態を反映した受光量及び/又は受光強度を、受光部12に受光することができる。この受光量及び/又は受光強度を、処理部17で処理し、出力部18から測定結果として出力することにより、半田材15の劣化状態を容易に評価することができる。
【0043】
図3(a)は、スキージ13がマスク14から所定の距離引き離された状態において、半田材15を受光部12の側から見た状態を示している。同図に示すように、半田材15の劣化が進んで粘度が上昇すると、スキージ13からマスク14への半田材15の垂れが発生する。また、スキージ13とマスク14との間において、この半田材15の垂れが占める領域の割合は、半田材15の劣化の度合いを反映している。
【0044】
図3(b)は、図3(a)の計測領域に、投光部11(図1参照)から光を照射した場合において、受光部12(図1参照)よって受光される光(通過光)の強度を示すグラフである。同図に示すように、受光部12における受光強度は、計測領域における半田材15の垂れの状態を反映している。このため、受光部12における通過光の受光強度が所定の閾値以下である領域を半田材15の垂れであると判断すれば、計測領域における半田材15の垂れの状態を測定することができる。
【0045】
そして、計測領域において半田材15の垂れが占める割合に基づいて、マスク14上の半田材15の劣化度合いを評価することができる。例えば、前記割合が所定値以上になった場合に、処理部17により半田材15の交換が必要であると判断して、出力部18に出力すればよい。なお、前記半田材15の垂れが占める割合は、上述したように受光部12における通過光の受光強度以外に、受光部12が受光した通過光の量(受光量)に基づいて評価することもできる。
【0046】
半田材15の垂れは、マスク14上の半田材15の量にも影響されるものであり、一方、マスク14上の半田材15の量は、印刷(基板への転写)の繰り返しによる減少と適宜のタイミングの補充による増加とを繰り返しており一定ではない。このため、スキージ13がマスク14から所定の距離引き離された時点における、受光部12の通過光の受光強度に基づいて、半田材15の垂れを評価すると、当該測定結果は半田材15の量の変動の影響を受けることとなる。
【0047】
そこで、半田材15の量の影響を抑制する処理部17の構成について、図4を参照して以下に説明する。図4はスキージ13がマスク14から所定の距離引き離された(スキージ上昇)時点からの時間の経過に伴う、半田材15の垂れ量の変化を示したグラフである。同図に示すように、半田材15の垂れ量は、スキージ13がマスク14から所定の距離だけ引き離された時点で最大となり、時間の経過に伴って小さくなる。
【0048】
このため、スキージ13がマスク14から所定の距離引き離された後、複数時点において受光部12の受光強度を測定し、この複数の測定結果に基づいて、処理部17によって半田材15の変化率を評価すれば、マスク14上の半田材15の量の相違による測定結果への影響を抑制することができる。上記複数の測定結果に基づいて垂れ量の変化を評価する方法としては、例えば、図4に示したように、2つ又は複数の測定結果に基づいて時間経過に伴う半田材15の垂れ量の変化率に基づいて半田材15の劣化度合いを評価する方法が挙げられる。
【0049】
以上のように、本実施の形態の半田材検査装置は、投光部11から出射された光のうち、スキージ13とマスク14との間を通過した通過光を、受光部12で受光した受光強度に基づいて半田材15の垂れを評価する、いわゆる透過式のものである。このため、スキージ13とマスク14との間において、半田材15が存在する領域と存在しない領域とのコントラストを大きくとることができるから、高精度かつ安定な半田材15の劣化評価を行うことが容易である。
【0050】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5を参照して以下に説明する。以下では、前記実施の形態において説明した部材と同じものには、同じ番号を付してその説明を省略することとする。図5に示すように、本実施の形態の半田材検査装置は、投光部11と受光部12とが、半田材15を基準にして同じ側に設けられている点において図1の半田材検査装置と異なっている。
【0051】
本実施の形態の半田材検査装置の受光部12は、投光部11から半田材15に照射された光のうち、半田材15により反射された反射光を受光するものである。本実施の形態の半田材検査装置のように、受光部12が半田材15からの反射光を受光する構成とした場合も、前記実施の形態において説明した通過光を受光する場合と同様に、半田材15の垂れ量を評価することができる。
【0052】
なお、本実施の形態のように、受光部12によって受光された半田材15からの反射光の受光強度に基づいて半田材15の垂れを評価する場合、半田材15からの反射光の強度が他の領域より大きいものであれば、通過光を受光する場合とは異なり、所定の閾値よりも受光強度が大きい領域を半田材15の垂れとして評価する。この点において、処理部17における処理が、図1に示した半田材検査装置と異なることとなる。
【0053】
本実施の形態の半田材検査装置は、半田材15を基準として同じ側に投光部11と受光部12とを設け、受光部12によって半田材15からの反射光を受光する、いわゆる反射式のものである。このため、透過式のものに比べて、半田材検査装置をコンパクトにすることができ、また、本実施の形態の半田材検査装置は投光部11と受光部12とを一体化することもできる。したがって、本実施の形態の半田材検査装置は、省スペース条件下において使用する場合に好適である。
【0054】
以上のように、本実施の形態の半田材検査装置によれば、例えば、半田材15を基準として、投光部11とは反対側に、受光部12を配置するのに十分なスペースが存在しない場合であっても、半田材の劣化をインラインで評価することできる。
【0055】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について、図6を参照して以下に説明する。以下では、前記実施の形態において説明した部材と同じものには、同じ番号を付してその説明を省略することとする。図6に示すように、本実施形態の半田材検査装置は、処理部17の閾値を、設定、変更する操作部19を備えている点において図5の半田材検査装置と異なっている。
【0056】
受光部12が、半田材15からの反射光を受光する場合、図1のように通過光を受光する場合に比べて、半田材の垂れの有無による受光強度の差が小さい。そこで、本実施の形態では、処理部17において半田材15の垂れの判断に用いられる閾値を、操作部19によって設定及び変更可能な構成としている。このように、操作部19を備えることによって、具体的な状況に応じて閾値を調整し、最適な閾値を設定することが容易となる。
【0057】
例えば、操作部19を用いて閾値の設定変更を行うことにより、半田材15の背景が複雑な場合や、異なる背景で半田材15がある領域と無い領域(背景)とのコントラストの違う場合であっても、良好な測定条件を設定することが可能である。また、本実施の形態の半田材検査装置によれば、特に閾値の初期設定が容易であることに加え、使用に伴って投光部11が劣化した場合に、操作部19により閾値を変更すれば、当該投光部11の劣化を保障することも可能である。
【0058】
〔実施の形態4〕
本発明の他の実施形態について、図7を参照して以下に説明する。前記実施の形態において説明した部材と同じものには同じ番号を付し、本実施の形態では説明を省略することとする。図7に示すように、本実施形態の半田材検査装置は、半田材15を基準として、投光部11及び受光部12とは反対側に、反射材(反射部)20が設けられている点において図5の半田材検査装置と異なっている。このように反射材20を設けることにより、半田材15と背景と間で安定したコントラストを確保することができるから、半田材15の劣化評価をより確実かつ安定なものとすることができる。
【0059】
反射材20としては、半田材15と高いコントラストを成す材質及び色のものが好ましい。一般に半田材15は灰色であるから、反射材20としては、半田材15よりも高光反射率のものが良い。反射材20として高光反射率のものを用いた場合、反射材20からの反射部光の強度が、半田材15からの反射光の強度よりも大きくなるから、受光部12によって受光した反射光の受光強度に基づき、所定の閾値よりも受光強度が小さい領域を半田材15の垂れと評価する。なお、反射材20として、半田材15よりも低光反射(例えば、黒色)のものを用いてもよいが、この場合は、前記の場合とは異なり、所定の閾値よりも受光強度が大きい領域を半田材15の垂れと評価する。
【0060】
〔実施の形態5〕
本発明の他の実施形態について、図8を参照して以下に説明する。前記実施の形態において説明した部材と同じものには同じ番号を付し、本実施の形態では説明を省略することとする。図8に示すように、本実施形態の半田材印刷装置は、図5に示した部材に加えて、所要パターンの穴が形成されたマスク14の上面をスライドして半田材15を印刷するスキージ16を制御するための印刷パラメータを制御する制御部21を備えている点において図5に示した半田材検査装置を備えた印刷装置と異なっている。この制御部21によれば、半田材15の劣化が検出された場合、自動的に印刷パラメータを調整することができるから、半田材15の劣化が、半田材印刷装置の印刷品質に影響することを防ぐことが可能である。
【0061】
制御部21により制御されるパラメータとしては、スキージ13をマスク14に対して抑えつける圧力(印圧)、スキージ13がマスク14の上面をスライドするスキージ速度などが挙げられる。本実施の形態の印刷装置によれば、半田材検査装置の出力部18から出力されたインラインで半田材15の劣化を検出した結果を用いて、制御部21により、スキージ13の制御パラメータを制御することができる。これにより、半田材15が劣化して粘度が上昇した場合に、半田材15の印刷品質を維持することが可能となる。例えば、半田材15にはチキソトロピー性(攪拌すると流動性を増し、一定時間静置すると流動性が減少する性質)があるから、粘度が上昇した場合、制御部21によってスキージ13がマスク14の上面をスライドする速度を上げることにより、半田材15が印刷される際の粘度を低くして、半田材印刷装置の印刷品質を維持することができる。
【0062】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した各実施形態においては、インラインで使用する場合について説明したが、本発明の半田材検査装置はオフラインで使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の半田材検査装置、半田材検査方法、及び半田材印刷装置は、半田材の劣化状態を容易に評価することができ、特に、半田材の劣化をインラインで評価する用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態としての半田材検査装置の要部構成の概略を示した図である。
【図2】図1の半田材検査装置により、スキージとマスクとの間の半田材の劣化を評価する方法を示すフローチャートである。
【図3】(a)は、スキージがマスクから所定の距離引き離された状態において、半田材を受光部の側から見た状態を示す図である。(b)は(a)の計測領域に、投光部から光を照射した場合において、受光部よって受光される通過光の強度を示すグラフである。
【図4】スキージがマスクから所定の距離引き離された時点からの時間の経過に伴う、半田材の垂れ量の変化を示すグラフである。
【図5】本発明の他の一実施形態としての半田材検査装置の要部構成の概略を示した図である。
【図6】本発明の他の一実施形態としての半田材検査装置の要部構成の概略を示した図である。
【図7】本発明の他の一実施形態としての半田材検査装置の要部構成の概略を示した図である。
【図8】本発明の他の一実施形態としての半田材印刷装置の要部構成の概略を示した図である。
【図9】従来の半田材印刷装置において、半田材が介在しているマスクとスキージとを離した状態における半田材の状態を示す正面図であり、(a)は印刷初期段階の状態を示し、(b)印刷を400回繰り返した段階の状態を示し、(c)は印刷を800回繰り返した段階の状態を示し、(d)は印刷を1200回繰り返した段階の状態を示している。
【符号の説明】
【0065】
11 投光部
12 受光部
13 スキージ(部材)
14 マスク(部材)
15 半田材
16 検出部
17 処理部
18 出力部
19 操作部
20 反射材(反射部)
21 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において2つの部材間に光を出射する投光部と、当該投光部から出射された光が前記2つの部材間を通過した通過光、又は前記投光部から出射された光が前記半田材によって反射された反射光を受光する受光部とを備えていることを特徴とする半田材検査装置。
【請求項2】
前記2つの部材は、所要パターンの穴が形成されたマスクと、当該マスクの上面をスライドして半田材を印刷するスキージとであることを特徴とする請求項1に記載の半田材検査装置。
【請求項3】
前記2つの部材が所定の距離引き離されたことを検知する検出部をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半田材検査装置。
【請求項4】
前記受光部による測定結果の変化を評価する処理部をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半田材検査装置。
【請求項5】
前記受光部が、前記通過光を受光する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半田材検査装置。
【請求項6】
前記受光部が、前記反射光を受光する位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半田材検査装置。
【請求項7】
前記通過光を反射する反射部をさらに備えていることを特徴とする請求項6に記載の半田材検査装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の半田材検査装置を備えていることを特徴とする半田材印刷装置。
【請求項9】
前記受光部による測定結果または前記処理部の評価結果に基づいて半田材印刷機の印刷パラメータを制御する制御部を備えていることを特徴とする請求項8に記載の半田材印刷装置。
【請求項10】
それぞれの表面に接するように半田材が介在している状態から2つの部材が引き離された状態において、当該2つの部材間に位置する半田材の状態を測定するステップを備えていることを特徴とする半田材検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−242927(P2006−242927A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63146(P2005−63146)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】