説明

協同作用可能な二成分を含む多成分制汗剤及びヒトの発汗を処置するための二段階法

本発明は、化粧料組成物Aから形成された第一の成分、及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bから形成された第二の成分を含む、多成分制汗剤に係り、これら成分は同時に、別々に又は時間的に順次皮膚に適用されて組み合わされるものであり、該化粧料組成物Aは、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Aとは異なる該化粧料組成物Bは、既に処置されている該皮膚に対して作用を及ぼすことのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、該組成物の組合せが、皮膚に対して制汗作用を付与することができる。本発明は、また該多成分制汗剤を用いて発汗を処置するための方法、及びこのような薬剤の使用にも係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別々に又は時間的に順次皮膚に適用される2つの成分を含む、ヒトの発汗を処置するための多成分剤に係り、該成分各々は、皮膚と接触した際に、一緒に協同して制汗作用を与えることができる。本発明は、また上で定義した如き多-区画薬剤の使用を含む、ヒトの発汗を処置するための二段階化粧方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
腋窩及び身体の他の部分は、一般的にはかなり不快な部位であり、該不快さは、直接又は間接的に、発汗に起因する可能性がある。この不快さは、主として発汗の結果としての汗の存在による不愉快な及びいやな感覚へと導くことがあり、幾つかの場合において、該発汗は、特に腋窩及び背中の領域において、皮膚及び衣類を湿潤させる恐れがあり、そのため視認できる跡を付ける可能性がある。その上、汗の存在は、体臭発生のもととなる可能性があり、その体臭は、一般的に不愉快なものである。最後に、その蒸発中に、汗は、皮膚の表面において塩及び/又はタンパク質を残す恐れがあり、これらは、衣類に白っぽい跡をもたらす恐れがある。このような不快さは、穏やかな発汗の場合を含めて、処置すべきである。
従って、化粧料の分野において、上記のような問題を克服するために、汗の流れを制限しあるいはさらに防止する効果を持つ物質を含有する制汗製品を、局所的な適用により使用することは周知である。これらの製品は、一般的にロールオン、スティック、エーロゾル又はスプレーの形態で入手できる。
【0003】
制汗性物質は、一般的にアルミニウム塩、例えば塩化アルミニウム及びアルミニウムヒドロキシハライド、又はアルミニウムとジルコニウムとの錯体から形成されている。これらの物質は、汗腺管に栓を形成することによって、汗の流れを減じている。
しかし、良好な効果を得ることを目的としてこれら物質を高濃度で使用すると、処方が困難になる。
さらに、これらの物質の制汗効果は、これらが単独で使用された場合には、制限されることが見出されている。このことは、これらの物質が、満足かつ効果的な制汗作用を得るためには、皮膚に対して定期的に適用する必要があることを意味する。しかし、これらの物質の反復的な適用は、幾人かのユーザーの場合には、皮膚に対する刺激を引起す恐れがあることが分かっている。
さらに、これらの物質は、とりわけ洗浄した際に、さらにはまた実質的な発汗があった場合には、消失する傾向のある制汗作用を示す。
最後に、これらの制汗性物質は、またその適用の際に跡を残す可能性があり、結果として衣類を汚染する。
【0004】
一変形として、制汗作用を得るために、ボツリヌス菌の毒素を使用することからなる方法の開発が提案されている。しかし、各使用に際しての、このような毒素を注入する必要性は、この方法の利用を著しく制限している。
上記の欠点全てを克服する目的で、上記アルミニウム塩及び/又はアルミニウムとジルコニウムとの錯体の全て又はその一部を置き換えるために、皮膚に対して十分に許容され、かつ処方が容易な、他の有効な活性物質を探し出すべきことが提案されている。
汗の流れの制限は、汗腺管に栓を形成することにより、該汗管を部分的に閉塞することにより実現できるが、同様に皮膚の表面に、汗に対して抵抗性の接着性又は非-接着性のフィルム形成することによっても実現できる。
【0005】
そこで、国際特許出願WO 2001/054 658においては、少なくとも1種の水と反応性のシアノアクリレートモノマー、無水媒体、重合阻害剤、及びデオドラント物質、制汗性物質及び芳香性物質から選択される活性物質、又はこれら物質の混合物を含む、無水で非-接着性の制汗性組成物を使用することが提案されている。このような組成物において使用される該シアノアクリレートモノマーは、求核試薬、例えば水中に含まれるヒドロキシドイオン(OH-)の存在下で、皮膚の表面上に直接アニオン重合されて、耐水性ポリマーフィルムを形成する。換言すれば、該シアノアクリレートモノマーは、汗と反応して、その場で、アニオン重合を介して、該汗腺管を遮断するフィルムを皮膚上に形成する。
しかし、これらの閉塞性フィルム-形成ポリマーは、完全に満足な制汗効果を与えることはなく、また依然として処方の問題を有している。
さらに、国際特許出願WO 2006/028 612は、皮膚に対して接着性シリコーンを適用し、その後熱処理を行うことからなる第一の段階及び該接着剤の表面に制汗性化合物を適用することからなる第二の段階を含む方法を記載している。この方法は、該制汗性化合物の適用を簡単化することを可能とする。
【0006】
特許出願US 2007/0 053 959は、制汗剤及び/又はデオドラント剤を含む層を備えたパッチを記載しており、該パッチ上には、保護層が配置されている。即ち、この方法は、第一段階において、皮膚の表面に該パッチを適用して該制汗剤及び/又はデオドラント剤を堆積し、また第二段階において該保護層を除去することからなる。
しかし、これらの化粧料組成物を用いて得られる該フィルムは、皮膚に対して完全に許容性のものではなく、通常は幾人かのユーザーの場合には、刺激の問題を生じる。
最後に、ヒトの発汗を処置するための方法の利用は、既にもくろまれており、この方法は、改善された、かつ耐性のある制汗作用を実現する目的で、第一段階において、第一の制汗性物質を皮膚に適用し、また第二段階において、第二の制汗性物質を皮膚に適用することからなっている。
しかし、該第二の制汗性物質の適用が、一般に、該第一の物質によって付与された制汗作用を阻害し、減じ若しくはさらに排除さえするという欠点を持つことが観測され、このことは、特に制汗作用の保留力及びその効果さえも減じてしまうという結果をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記諸欠点の全てを有さない、即ち特に効果及び汗に対する耐性の点で、満足な制汗作用を与え、また皮膚により許容される、ヒトの発汗を処置するための薬剤を、皮膚において使用する現実の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願人は、驚いたことに2種の異なる成分、即ち皮膚を処置することのできる第一の成分、及び既に処置されている皮膚に作用を及ぼして、制汗作用を付与することのできる第二の成分を、別々に又は時間的に順次皮膚に適用することにより、毒物学的なプロフィールが皮膚に対して適しており、また特に効果及び汗に対する耐性の点で、満足な制汗作用を与える、多成分制汗剤を得ることができることを見出した。
換言すれば、本出願人は、第一の成分により調整された皮膚に作用を及ぼして制汗作用を付与できる第二の成分と、第二の成分がこのように作用するように皮膚を調整できる第一の成分との組み合わせであって、前記成分の各々が制汗作用を有しているか又は有していない組み合わせが、満足すべき制汗作用をもたらしうることを見出した。
換言すれば、該第一の成分は、第二の成分が第一の成分によって処理された皮膚において活性でありうるように、該皮膚を処理することができる。
【0009】
従って、該第一の成分は、皮膚を調整するのに適しており、即ち皮膚を化学的又は物理的に変性するのに適しており、また該第一の成分と異なる該第二の成分は、このようにして調整された皮膚に作用するのに適しており、即ち該調整された皮膚において、制汗作用を付与するために、第二の成分は活性であるか又はその活性が強化されている。従って、該第二成分は一旦調整された皮膚を有効に利用するのに適している。
上記2つの成分は、従って皮膚に制汗作用を付与するように選択される。
換言すれば、皮膚と接触した際に協同して、皮膚に制汗作用を付与することのできる2つの異なる成分の皮膚に対する使用は、皮膚に満足かつ効果的な制汗作用を付与することを可能とする。ここで該第一の成分は、第一の成分によって調整された皮膚に対して第二の成分が作用を及ぼすことができるように皮膚を調整することができる。
従って、本発明による多成分薬剤は、2種の化粧料組成物の適用を組合せることを可能とし、該組成物を構成する化合物は、皮膚と接触した際に、発汗に抗する作用を生みだし、特に汗の流れ及びさらにはその作用、例えば体臭又は特に腕の下部の衣類において生成される汚れに対する作用を生みだすように一緒に協同し得る。
【0010】
従って、本発明の目的の一つは、特に、化粧料組成物Aから形成された第一の成分及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bから形成された第二の成分を含む多成分制汗剤にあり、これらの成分は、皮膚に別々に又は時間的に順次適用することにより組み合わされるのであり、該化粧料組成物Aは、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、また該化粧料組成物Bは、一旦処置されている皮膚に作用を及ぼすことのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、これら2種の組合せは、制汗作用を皮膚に付与することができる。
該用語「制汗剤」とは、それ自体が汗の流れを減じ又は制限する作用を持つ、任意の物質を意味する。
また、本発明のもう一つの目的は、ヒトの発汗を処置するための化粧学的方法を提供することであり、該方法は、化粧料組成物A及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bを、皮膚に、別々に又は時間的に順次適用することにより組合せる工程からなり、該化粧料組成物Aは、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、また該化粧料組成物Bは、一旦処置された皮膚に作用を及ぼすことのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、これら2種の組合せは、制汗作用を皮膚に付与することができる。
【0011】
同様に、本発明は、上で定義された如き多成分制汗剤の、ヒトの発汗を処置するための使用に関する。
本発明は、また多-区画デバイス又はキットに係り、該デバイスは、化粧料組成物Aを含む第一の区画及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bを含む第二の区画を備え、該組成物A及びBは、別々に又は時間的に順次皮膚に適用することにより組合されるものであり、該化粧料組成物Aは、該皮膚を処置することのできる1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、一旦処置されている該皮膚に作用を及ぼすことのできる1種又はそれ以上の化合物を含み、該組成物A及びBの組合せは、皮膚に制汗作用を付与することを可能とすることを特徴とする。
本発明のその他の課題、特徴、局面及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことによりさらに一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的にとって、上記用語「皮膚を処置することのできる」とは、該化粧料組成物Aが、皮膚を化学的又は物理的に変性し得る、1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味する。
本発明の目的にとって、上記用語「化学的に皮膚を変性する」とは、該化粧料組成物Aが、皮膚と化学的に反応して、これと皮膚とを接合し、又は特に皮膚上に反応性部位、イオン性の基、疎水性の基又は触媒作用を持つ部位を生成し得る、1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味する。
本発明の目的にとって、上記用語「物理的に皮膚を変性する」とは、該化粧料組成物Aが、皮膚との化学的反応なしに、皮膚の物性を変性し得る、1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味する。
該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、従って、該化粧料組成物Bを構成する該化合物が、予備処理された皮膚において制汗作用を付与するために、活性であるか又はその活性が強化されるように、該皮膚を化学的に又は物理的に変性することができる。
一態様によれば、該化粧料組成物Aは、化学反応を伴って、皮膚を処置することのできる1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0013】
本発明の目的にとって、上記用語「化学反応を伴って、皮膚を処置することのできる化合物」なる表現は、該化粧料組成物Aが、皮膚との化学反応、例えば皮膚タンパク質、又は他の化合物、例えば水又は体脂肪との化学反応を誘発し、その後皮膚と反応することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味する。
該化粧料組成物Aは、皮膚と接合し得る化合物、皮膚の1種又はそれ以上の結合を開裂し得る化合物、皮膚のイオン的特性を変更し得る化合物、皮膚内に存在する分子の全て又はその一部を除去することのできる化合物、皮膚上に触媒作用を持つ基を生成し得る化合物、又はこれら化合物の混合物から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この態様の第一の局面に従えば、該化粧料組成物Aは、皮膚と接合し得る1種又はそれ以上の化合物を含む。
特に、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、特に皮膚の求核性官能基、例えば皮膚のヒドロキシル基、メルカプタン基及びアミン官能基との反応により、皮膚に接合し得る1種又はそれ以上の官能基を含む。
【0014】
この態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、皮膚と接合し得る1種又はそれ以上の官能基を含むことができ、該官能基は、以下に列挙するものから選択することができる:
・エポキシド;
・アジリジン;
・ビニル及び活性化ビニル、特にアクリロニトリル及びアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル;
・クロトン酸及びクロトン酸エステル、桂皮酸及び桂皮酸エステル、スチレン及びその誘導体、及びブタジエン;
・ビニルエーテル、ビニルケトン、マレイン酸エステル、ビニルスルホン及びマレイミド;
・無水物、酸クロリド及びカルボン酸エステル;
・アルデヒド;
・アセタール、ヘミアセタール;
・アミナール、ヘミアミナール;
・ケトン、α-ヒドロキシケトン、α-ハロケトン;
・ラクトン、チオラクトン;
・イソシアネート;
【0015】
・チオシアネート;
・イミン;
・イミド、特にサクシンイミド及びグルチミド;
・N-ヒドロキシサクシンイミドエステル;
・イミデート;
・チオサルフェート;
・オキサジン及びオキサゾリン;
・オキサジニウム及びオキサゾリニウム;
・式:RX(ここで、X=I, Br又はCl)で表される、C1-C30アルキルハライド又はC6-C30アリール又はアラルキルハライド;
・不飽和炭素を基本とするリング又はヘテロ環のハライド、特にクロロトリアジン;
・クロロピリミジン、クロロキノキサリン又はクロロベンゾトリアゾール;
・スルホニルハライド:RSO2Cl又はRSO2F(ここで、Rは、C1-C30アルキル基である);
・シロキサン。
【0016】
本発明の目的にとって、上記用語「活性化ビニル基」とは、該ビニル基が非対称性の電子分布を持ち、その結果より反応性に富むことを意味する。
特に、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、例えば皮膚の1種又はそれ以上のヒドロキシル基又はアミン官能基と反応し得る、1種又はそれ以上のシロキサン官能基を含むことができる。
この態様の第二の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚の1種又はそれ以上の結合、特に該皮膚を構成するケラチンのジスルフィド結合又はペプチド結合を開裂し得る、1種又はそれ以上の化合物を含む。
本発明の目的にとって、上記「皮膚を構成するケラチンのジスルフィド結合又はペプチド結合の開裂」なる表現は、該化粧料組成物Aが、ケラチンのジスルフィド結合(S-S)又はペプチド結合(2つのアミノ酸間の炭素/窒素結合)を破壊することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味する。
ケラチンの1種又はそれ以上のジスルフィド結合又はペプチド結合を開裂し得る該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、皮膚の表面に1種又はそれ以上の反応性の基を生成し得る。換言すれば、このような化合物は、皮膚の表面に反応性の基を生成し得る化合物であると考えられる。
【0017】
従って、ケラチンの1種又はそれ以上のジスルフィド結合を開裂し得る1種又はそれ以上の化合物を含む該化粧料組成物Aが、皮膚に適用された場合、1種又はそれ以上の反応性の基、例えばチオール基、チオサルフェート基、混合ジスルフィド基及び/又はスルホン酸基が、皮膚の表面上に形成される。該用語「混合ジスルフィド」とは、該ジスルフィドの2つの硫黄原子を含む該2つの基が異なっており、また特に同一の電子供与又は電子求引効果を生じない化合物を意味する。この非対称的特徴において、該混合ジスルフィドは、対称性のジスルフィドよりも一層反応性に富むものであり得る。
あるいはまた、該化粧料組成物Aが、1種又はそれ以上のペプチド結合を、例えばタンパク質鎖の該ペプチド結合を加水分解することにより、あるいはタンパク質のペンダント官能基を加水分解することにより開裂することのできる、及び特にグルタミン及びアスパラギンのアミド官能基を開裂し得る、1種又はそれ以上の化合物を含む場合、1種又はそれ以上の反応性の基が、特に1種又はそれ以上のアミン及び/又は酸官能基を皮膚の表面に形成することによって、生成される。
皮膚の1種又はそれ以上のジスルフィド又はペプチド結合を開裂することのできる該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、還元剤、酸、塩基及び酸化剤、並びにこれら化合物の混合物から選択することができる。
【0018】
該化粧料組成物Aにおいて使用できる該還元剤は、チオール、スルフィン酸、ホスフィン、亜硫酸塩、及び水素化物、又はこれら化合物の混合物から選択することができる。
チオール還元剤としては、特にチオグリコール酸、システイン、ホモシステイン又はチオ乳酸、及び同様にこれらチオールの塩を使用することが可能である。
上記のスルフィン酸としては、ヒドロキシメタンスルフィン酸を使用することが好ましい。該スルフィン酸の化粧学的に許容される塩は、特にアルカリ金属(Na, K)、アルカリ土類金属(Ca)又は亜鉛スルフィネートから選択される。該化粧料組成物Aにおいて使用することのできる該スルフィン酸としては、ナトリウムヒドロキシメタンスルフィネートが特に好ましい。
上記スルフィネートとしては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、並びにこれらの混合物を使用することが、特に好ましい。より具体的には、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウムを挙げることができる。
【0019】
上記水素化物としては、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば水素化ナトリウを使用することが好ましい。
上記ホスフィンとしては、トリス(ヒドロキシメチル)ホスフィン、トリス(ヒドロキシプロピル)ホスフィン及びトリス(カルボキシエチル)ホスフィンを使用することが好ましい。
該化粧料組成物Aにおいて使用し得る上記酸は、無機又は有機酸、例えば塩酸、オルトリン酸、硫酸、カルボン酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸又は乳酸、及びスルホン酸から選択することができる。
該化粧料組成物Aにおいて使用し得る上記塩基は、アンモニア水、アルカリ金属炭酸塩、アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、及びさらにはこれらの誘導体、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び以下の一般式(VI)で表される化合物から選択することができる:
【0020】
【化1】

(VI)
【0021】
ここで、Wは場合によりヒドロキシル基で置換されたプロピレン残基又はC1-C4アルキル基であり;Ra、Rb、Rc及びRdは、同一又は異なっていてもよく、水素原子、C1-C4アルキル基又はC1-C4ヒドロキシアルキル基を表す。
前記酸化剤は、過酸化水素、過酸化ウレア、アルカリ金属臭素酸塩、過酸塩、例えばパーボレート又は過流酸塩、過酸、及びオキシダーゼ酵素(可能なその補因子と共に)から選択することができ、中でも特にパーオキシダーゼ、2-電子オキシドレダクターゼ、例えばウリカーゼ、及び4-電子オキシゲナーゼ、例えばラッカーゼを挙げることができる。
好ましくは、1種又はそれ以上のジスルフィド結合を開裂し得る、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、スルフィット、特に亜硫酸塩、とりわけアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウム、及びチオグリコール酸から選択される。
上記態様の第三の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚表面にイオン性の基、例えばアニオン性、カチオン性又は両性イオン性の基を形成することにより、あるいは疎水性の基を生成することにより、皮膚のイオン的特性を変更し得る1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0022】
好ましくは、該化粧料組成物Aは、皮膚表面にアニオン性又はカチオン性の基を形成することにより、皮膚のイオン的特性を変更し得る1種又はそれ以上の化合物を含む。
特に、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、皮膚の表面にアニオン性の基を形成することにより、皮膚のイオン的特性を変更するシステインの塩から選択することができる。好ましくは、該システインの塩は、システインハライド、例えばシステイン塩酸塩である。
また、カチオン性の基を形成することにより、皮膚のイオン的特性を変更し得る、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、一級アミン官能基を含む置換基を含有する、アルコキシシランから選択することができ、これらは、以下の一般式(I)で表される化合物から選択される:
【0023】
【化2】

(I)
【0024】
ここで、複数存在する基Rは同一又は異なっていてもよく、C1-C6アルキル基から選択され、またnは、1〜6なる範囲及び好ましくは2〜4なる範囲の整数である。
本発明のこの態様によれば、特に好ましいアルコキシシランは、γ-アミノプロピルトリエトキシシランである。このような化合物は、例えば、ダウコーニング(Dow Corning)社により、Z-6011シラン(Silane)なる名称の下に市販されている。
該化粧料組成物Aは、またカチオン性ポリマーから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。
好ましくは、該カチオン性ポリマーは、以下の一般式(IX)に相当する繰返し単位から形成されるポリマーから選択することができる:
【0025】
【化3】

【0026】
ここで、R10、R11、R12及びR13は、同一でも異なっていてもよく、約1〜4個の炭素原子を含むアルキル又はヒドロキシアルキル基を表し、n及びpは、夫々約2〜20なる範囲の整数であり、またXは、無機又は有機酸から誘導されるアニオンである。
(11) 以下の一般式(X)で表される単位からなるポリ(四級アンモニウム)ポリマー:
【0027】
【化4】

【0028】
ここで、pは、約1〜6なる範囲の整数を表し、Dは、ゼロであり得るか、あるいは基:-(CH2)r-CO-(ここで、rは、4又は7に等しい数を表す)を表すことができ、またX-はアニオンである。
このようなポリマーは、米国特許第4,157,388号、同第4,702,906号及び同第4,719,282号に記載されている方法に従って製造することができる。これらは、特に特許出願EP-A-122 324に記載されている。
より具体的には、該式(IX)で表される好ましい化合物は、該式において、R13、R14、R15及びR16がメチル基を表し、A1が式:-(CH2)3-で表される基を表し、B1が式:(CH2)6-で表される基を表し、またX-が塩素アニオンを表す化合物(以下メキソマー(Mexomer) POと呼ぶ)及び該式(IX)において、R13及びR14がエチル基を表し、R15及びR16がメチル基を表し、A1及びB1が式:-(CH2)3-で表される基を表し、かつX-が臭素アニオンを表す化合物(以下メキソマー(Mexomer) PAKと呼ぶ)である。
従って、皮膚のイオン的特性を変更することのできる、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、好ましくはシステインの塩、上記式(IX)で表されるカチオン性ポリマー、及び上記一般式(I)で表される化合物から選択される、一級アミノ基を含む置換基を含有するアルコキシシランから選択される。
【0029】
この態様の第四の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚内に存在する分子の全て又はその一部を除去することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この場合、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、特に水と反応して、皮膚を完全に乾燥することができる。一例として、該化粧料組成物Aは、1種又はそれ以上の無水物、特に有機又は無機無水物、例えばリン酸無水物を含む。
この態様の第五の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚表面上に、1種又はそれ以上の触媒作用を持つ基を生成し得る、1種又はそれ以上の化合物を含む。
例えば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、皮膚上に接合された金属塩及び酵素から選択される化合物に相当する。
即ち、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、皮膚と結合される触媒である。
特に、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、酵素、特にラッカーゼ、オキシダーゼ、ジスムターゼ、カタラーゼ、パーオキシダーゼ及び遷移金属塩又は他の金属原子から選択することができる。
好ましくは、皮膚表面上に触媒作用を持つ基を生成し得る、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、銅塩及びマンガン塩、例えば塩化マンガンから選択される。
【0030】
本発明によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚上に接合し得る1種又はそれ以上の化合物及びケラチンのジスルフィド結合を開裂し得る1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。
一変形によれば、該化粧料組成物Aは、ケラチンのジスルフィド結合を開裂して、1種又はそれ以上の反応性の基を生成し得る1種又はそれ以上の化合物及び皮膚上に触媒作用を持つ基を生成し得る1種又はそれ以上の化合物を含むことができる。
即ち、該化粧料組成物Aは、チオグリコール酸及び銅塩及びマンガン塩、例えば塩化マンガンから選択される、1種又はそれ以上の遷移金属塩を含むことができる。
チオグリコール酸は、皮膚の表面に、反応性の基、例えばチオール基の生成を可能とし、該基は皮膚と結合した該触媒との結合を形成する。ここで、該触媒は、上記遷移金属塩から形成されたものである。得られるこの結合は、水及び様々な洗浄操作に対して耐性である。
【0031】
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚との化学反応を伴わずに、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
本発明の目的にとって、上記の「皮膚との化学反応を伴わずに」なる表現は、該化粧料組成物Aが、化学反応を起こさせることなく、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味し、即ち該化合物は、該化粧料組成物Aの適用時点あるいはその後において、皮膚との如何なる反応をも誘起しないことを意味する。換言すれば、該化粧料組成物Aは、皮膚との化学反応の不在下で、皮膚の物理的特性を変更することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この態様の第一の局面によれば、該化粧料組成物Aは、化粧料組成物Bを構成する1種又はそれ以上の化合物の、皮膚上での滞留期間を増大することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この態様のこの第一の局面によれば、該化粧料組成物Aは、オイル、ワックス、該化粧料組成物Bを構成する1種又はそれ以上の化合物との物理的な相互作用を発生し得る化合物から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
該用語「オイル」とは、室温(22℃±3℃)及び大気圧(760 mmHg)下で、液体状態にある非水性物質を意味する。
【0032】
本発明による該化粧料組成物Aは、特に炭化水素を主成分とするオイル及びフルオロオイル、又はこれらの混合物から選択することができる、1種又はそれ以上の非-シリコーン系オイルを含む。
該用語「炭化水素を主成分とするオイル」とは、主として炭素及び水素原子を含み、また酸素、窒素、硫黄又はリン原子を含んでもよいオイルを意味する。
特に挙げることのできる炭化水素を主成分とするオイルは以下の通りである:
・植物起源の炭化水素を主成分とするオイル、例えばグリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセライド、ここで、該脂肪酸としては、C4-C24なる範囲で変動する鎖長を持つことができ、これらの鎖は、直鎖又は分岐鎖、及び飽和又は不飽和であり得;これらのオイルは、とりわけ小麦胚芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ油、トウモロコシ油、アプリコット油、ヒマシ油、シア油、アボカド油、オリーブ油、大豆油、甘扁桃油、パーム油、菜種油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、ホホバ油、アルファルファ油、ポピー油、カボチャ種子油、ゴマ油、マロー油、菜種油、クロフサスグリ油、マツヨイグサ油、雑穀油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、紅花油、ククイナッツ油、パッションフラワー油、及びマスクローズ油;あるいはまたカプリル酸/カプリン酸トリグリセライド、例えばステアリネリデュボア(Stearineries Dubois)社により市販されているもの又はダイナマイトノーベル(Dynamit Nobel)社によりミグリオール(Miglyol) 810TM、812TM及び818TMなる名称の下に市販されているものである。
【0033】
・10〜40の炭素原子を含む合成エーテル;
・無機又は合成起源のヘテロ原子を含まない直鎖又は分岐鎖の炭化水素を主成分とするオイル、例えば流動パラフィン、ポリデセン、水添ポリイソブテン、例えばパーリウム(Parleam)及びスクアラン、及びこれらの混合物;
・液状合成エステル、例えば式:R1COOR2 (ここで、R1は1〜40個の炭素原子を含む直鎖又は分岐した基を表し、R2は特に1〜40個の炭素原子を含む分岐した炭化水素を主成分とする鎖を表し、但しR1及びR2の炭素原子の和は、10に等しいかあるいはそれを越えることを条件とする)、例えばパーセリン油(セトステアリルオクタノエート)、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、C12-C15アルキルベンゾエート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、イソノニルイソノナノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、イソステアリルイソステアレート、アルキル又はポリアルキルオクタノエート、デカノエート又はリシノレエート、例えばプロピレングリコールジオクタノエート;ヒドロキシル化エステル、例えばイソステアリルラクテート及びジイソステアリルマレエート;及びペンタエリスリトールエステル;
・12〜26個の炭素原子を含む、分岐した及び/又は不飽和の炭素を主成分とする鎖を含有する、室温にて液体の脂肪アルコール、例えばオクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール又は2-ウンデシルペンタデカノール;
・高級脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸又はリノレン酸;及び
・これらの混合物。
【0034】
本発明による上記組成物において使用できる上記フルオロオイルは、特にフッ素化されたポリエーテルである。
好ましくは、該化粧料組成物Aにおいて使用する該オイルは、炭化水素を主成分とする植物起源の油及び液状の合成エステル、好ましくはイソプロピルミリステートから選択される。
該化粧料組成物Aにおいて使用し得る上記ワックスは、特にカルナウバワックス、キャンデリラワックス、エスパルトワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、植物ワックス、例えばオリーブワックス、ライスワックス、水添ホホバワックス又は花の純粋ワックス、例えばベルタン(Bertin(仏国))社により市販されているクロフサスグリの花のエッセンシャルワックス、動物ワックス、例えば蜜蝋、又は変性蜜蝋[セラベリナ(cerabellina)]から選択され;本発明に従って使用することのできる他のワックス又はワックス状出発物質は、とりわけマリンワックス、例えば参照名M82の下で、ソフィム(Sophim)社により市販されている製品、及び一般的には、ポリエチレンワックス又はポリオレフィンワックスから選択される。
【0035】
本態様の第二の局面によれば、該化粧料組成物Aは、上記化粧料組成物Bを構成する上記化合物の作用を害する恐れのある薬剤を除去することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
即ち、該化粧料組成物Aは、皮膚の孔に存在する可能性のある要素を除去することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
本態様の第三の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚上及び/又は皮膚中における、該化粧料組成物Bを構成する1種又はそれ以上の化合物の分布及び/又は浸透性を改善することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
特に、該化粧料組成物Aは、皮膚内への又は汗腺管への、該化粧料組成物Bを構成する1種又はそれ以上の化合物の浸透性を改善することを可能とする、1種又はそれ以上の化合物を含む。
即ち、該化粧料組成物Aは、潤滑剤、皮膚の表面張力を変更する薬剤、可溶化剤、又は該化粧料組成物Bを構成する該化合物の作用に対して障害となり得る化合物を除去することのできる薬剤から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0036】
該化粧料組成物Aにおいて使用できる上記潤滑剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-14M及びPEG-23M)及びシリコーン、例えばジメチコーン、ジメチコノール、ジメチコーンコポリオール、ステアリルジメチコーン、セチルジメチコーンコポリオール又はシクロメチコーンから選択することができる。
上記の皮膚の表面張力を変更する薬剤は、界面活性剤、特にカチオン性、ノニオン性、アニオン性又は両性界面活性剤、特にカチオン性官能基を持つもの、例えばゲナミン及びベタインから選択することができる。
該化粧料組成物Aにおいて使用できる上記可溶化剤は、水、1種又はそれ以上の有機溶媒又は水と有機溶媒との混合物であり得る。
列挙可能な有機溶媒の例は、C1-C4低級アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びモノエチルエーテル、及びさらには芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール、及びこれらの混合物を含む。
本態様の第四の局面によれば、該化粧料組成物Aは、該化粧料組成物Bを構成する1種又はそれ以上の化合物の作用に対して障害となり得る化合物を、皮膚から除去することのできる薬剤から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0037】
特に、該化粧料組成物Aは、存在し得る塩、例えば鉛を皮膚から除去することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
本態様の第5の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚の多孔度を変更することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
特に、該化粧料組成物Aは、1種又はそれ以上の有機溶媒及びさらには1又はそれ以上の水素結合を破壊し得る生成物、例えばウレアを含む。
本態様の第6の局面によれば、該化粧料組成物Aは、皮膚を反応性のものとすることのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
例えば、該化粧料組成物Aは、厳密な操作条件の下で使用して、皮膚を反応性のものとすることのできる酸化剤から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
特に、「温和な酸化剤」と呼ばれる酸化剤を使用するが、これは、第三の化合物を完全に分解するであろう「強力な酸化剤」とは異なり、該第三の要素を完全に酸化することはできない。該強力な酸化剤の場合、得られる酸化生成物は、最早反応しない程にまで分解されている。
【0038】
本態様の第7の局面によれば、該化粧料組成物Aは、1種又はそれ以上の阻害性化合物を含む。
特に、該化粧料組成物Aは、1種又はそれ以上の亜鉛塩を含み、そのチオール官能基に関する阻害作用は、該官能基が還元性となるのを阻害する。
該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、また運動、伸張及び摩擦に耐えるように選択することができる。
即ち、該化粧料組成物Aを構成する該化合物は、とりわけ該化粧料組成物Bを構成する1種又はそれ以上の化合物の皮膚への浸透を容易にし、皮膚上でのその保留性を高め、しかもその官能性を改善することを可能とする。
好ましくは、該化粧料組成物Aは、化学反応を伴って、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
より好ましくは、該化粧料組成物Aは、システインの塩、特にシステイン塩酸塩、亜硫酸塩、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウム、上記式(I)で表されるアルコキシシラン、特に3-アミノプロピルトリエトキシシラン、マンガン塩、例えば塩化マンガン、チオグリコール酸、上記式(IX)で表されるカチオン性ポリマー、又はこれら化合物の混合物から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0039】
該化粧料組成物Bは、本発明による該化粧料組成物Aによって、既に化学的又は物理的に変更されている皮膚に作用し得る化合物から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、皮膚に制汗作用を与える。
本発明の目的にとって、「既に処理されている皮膚に作用する」なる表現は、該化粧料組成物Bが、該化粧料組成物Aによって既に処理されている皮膚と接触した際に、活性であり得る1種又はそれ以上の化合物を含むことを意味する。
第一の態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚と接合し得るものである場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、皮膚と接合状態にある該化粧料組成物Aを構成する該化合物と反応することのできる化合物から選択される。
第二の態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚のジスルフィド結合を開裂して、反応性の基、例えばチオール基を形成する場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、このようにして形成された反応性の基と反応して、皮膚に制汗作用を付与することのできる化合物から選択される。
この態様によれば、該化粧料組成物Bは、1種又はそれ以上の還元剤、例えばシステインを含む。
あるいはまた、この態様によれば、該化粧料組成物Bは、フッ素化されたアルコキシシランから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0040】
第三の態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、1種又はそれ以上のイオン性の基を形成することにより皮膚のイオン的特徴を変更することができる場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、イオン性の相互作用を生じて、皮膚に制汗作用を付与するように、該皮膚上に形成された該イオン性の基と逆の符号を持つ、1種又はそれ以上のイオン電荷を持つ化合物から選択される。
即ち、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、1種又はそれ以上のアニオン性の基を形成することによって皮膚のイオン的特徴を変更することができる場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、該負に帯電した皮膚とイオン性の相互作用を生じ得る、1種又はそれ以上のカチオン性の電荷を持つ化合物から選択される。
換言すれば、この場合には、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、アニオン/カチオン相互作用により、該負に帯電した皮膚と反応し得るように選択される。
逆に、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、カチオン性の基を形成することにより、皮膚のイオン的特性を変更できるものである場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、該正に帯電した皮膚とイオン性の相互作用を生じ得る、1種又はそれ以上のアニオン正電荷を持つ化合物から選択される。
換言すれば、この場合には、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、カチオン/アニオン相互作用によって、該正に帯電した皮膚と反応し得るように選択される。
【0041】
この態様によれば、該化粧料組成物Bは、アニオン性のポリマー、金属塩、遷移金属塩及び/又はセルロースエステルから選択することができる、1種又はそれ以上の化合物を含む。
好ましくは、本発明による該化粧料組成物Bにおいて使用できる該アニオン性ポリマーは、モノマーとして、少なくとも酢酸ビニル、ビニルネオデカノエート及びクロトン酸を含む。
本発明による好ましいポリマーは、酢酸ビニル、ビニルtert-ブチルベンゾエート及びクロトン酸のターポリマーである。
このようなアニオン性のポリマーは、塩基性化剤により完全に又は部分的に中和されていてもよい。
好ましくは、該塩基性化剤は、アルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン又はトリエタノールアミン、及びこれらの誘導体から選択される。
【0042】
特に使用することのできる該アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、ハライド、水酸化物、ホウ酸塩又は硝酸塩、及びより特定的にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属ハライド及びホウ酸塩、例えば塩化ナトリウム又は四ホウ酸ナトリウムである。
特に使用することのできる該遷移金属塩は、遷移金属ハライド、例えば塩化亜鉛又は塩化マンガンである。
上記セルロースエステルとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを使用することが特に好ましい。
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚上に触媒作用を持つ基を形成し得るものである場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、触媒作用を持つ基の存在下で反応して、皮膚に制汗作用を付与することのできる化合物から選択される。
【0043】
即ち、該化粧料組成物Aを構成する該化合物がマンガン塩から選択される場合、これらの化合物は、皮膚に結合して、酸化を促進する触媒活性を該皮膚に与え、またそのため該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、酸化され得る化合物、例えばインドール、インドール誘導体又はチオール化合物から選択され、結果として制汗作用を皮膚に付与する。
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚の多孔度を変更し得る化合物である場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、皮膚内で作用して、皮膚に制汗作用を付与することのできる化合物から選択される。
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚の表面張力を高め得る化合物である場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、該表面張力が高められた該皮膚上に展開して、皮膚に制汗作用を付与することができる化合物から選択される。
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、可溶化剤である場合、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、該化粧料組成物Aに溶解して、皮膚に制汗作用を付与することのできる化合物から選択される。
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚の疎水性特性を変更しる薬剤である場合、該化粧料組成物Bは、揮発性の疎水性溶媒を含み、また該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、皮膚の孔内部に入り込んで、皮膚に制汗作用を付与することのできる化合物から選択される。
【0044】
もう一つの態様によれば、該化粧料組成物Aを構成する該化合物が、皮膚の表面張力を低下し得る化合物である場合、該化粧料組成物Bは、高い表面張力を持つ液体を含み、また該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、皮膚の孔内部に入り込んで、皮膚に制汗作用を付与することのできる化合物から選択される。特に、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、該化粧料組成物Bを構成する該化合物の持つ表面張力未満の表面張力を持つ。
該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、また1種又はそれ以上の制汗性化合物から選択することができる。即ち、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、アルミニウム塩、例えば塩化アルミニウム及びアルミニウムヒドロキシハライド、又はアルミニウムとジルコニウムとの錯体から選択することができる。
該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、また1種又はそれ以上の、アルミニウム塩を与えることのできる、アルミニウムを主成分とするプリカーサから選択することができる。
即ち、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、オリゴマー化された又はオリゴマー化されていない水和物形態にある、1種又はそれ以上のアルミニウム塩、特にアルミニウムクロロハイドレートから選択することができる。
【0045】
該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、運動、伸張及び摩擦に対して耐性であるように選択することができる。
例えば、該化粧料組成物Bを構成する該化合物は、摩擦に対して耐性であり得る化合物、例えば窒化ホウ素から選択することができる。
好ましくは、該化粧料組成物Bは、1種又はそれ以上のフッ素化アルコキシシラン、1種又はそれ以上の、モノマーとして、少なくとも酢酸ビニル、ビニルネオデカノエート及びクロトン酸を含むアニオン性ポリマー、セルロースエステル、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、金属塩、特に遷移金属ハライド、還元剤、例えばシステイン、インドール又はその誘導体、アルミニウムクロロハイドレート及び四ホウ酸ナトリウムから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
好ましくは、該化粧料組成物Aは、カチオン性の基を生成することにより、皮膚のイオン的特徴を変更することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、また該化粧料組成物Bは、皮膚表面における該カチオン性の基と反応し得る、1種又はそれ以上のアニオン性の電荷をもつ、1種又はそれ以上の化合物を含む。
一態様によれば、該化粧料組成物A及びBは、皮膚に制汗作用を付与しない。
【0046】
本発明の目的にとって、「制汗作用を持たない組成物」なる表現は、皮膚表面に適用した場合に、汗の流れを大幅に減じ又は制限する作用を持たない組成物を意味する。換言すれば、本発明の目的にとって、このような組成物は、汗の流れに対して殆ど影響を示さない。
本発明の目的にとって、「汗の流れを大幅に減じ又は制限する作用を持たない組成物」なる表現は、皮膚に適用した際に、百分率で表した汗の流れの減少率(以下、Rで表す)が10%未満である組成物を意味する。Rで表された汗の流れのこの減少率は、インビボバイオスキン(Bioskin)重量測定テストに従って確認される。
指標として、該インビボバイオスキン重量測定テストは、以下のような評価基準を与えている:
− 減少率(%) R < 10% 効力なし
− 減少率(%) 10 < R < 15% 低効力
− 減少率(%) 15 < R < 25% 中程度の効力
− 減少率(%) 25 < R < 35% 良好な効力
− 減少率(%) 35 < R < 50% 高い効力
− 減少率(%) R > 50% 極めて高い効力
【0047】
従って、このインビボバイオスキン重量測定テストによれば、汗の流れの減少率R(%)が10%未満である場合には、該組成物は、制汗作用を全く持たない。
この場合、本発明による該化粧料組成物A及びBの組合せは、制汗作用を導くことができる。即ち、該化粧料組成物A及びBを構成する該化合物は、組合せにより皮膚に制汗作用を付与するように選択される。
この態様の一局面によれば、該化粧料組成物Aは、システインの塩、特にシステイン塩酸塩から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、金属塩、特に遷移金属塩、例えば塩化亜鉛から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この態様の一局面によれば、該化粧料組成物Aは、システインの塩、特にシステイン塩酸塩から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、フッ素化アルコキシシランから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、亜硫酸塩、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウムから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、フッ素化アルコキシシランから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
【0048】
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、上記一般式(I)で表されるアルコキシシランから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、塩化マグネシウム、及びモノマーとして、少なくとも酢酸ビニル、ビニルネオデカノエート及びクロトン酸を含むアニオン性ポリマーから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、マンガン塩、例えば塩化マンガン、及びチオグリコール酸から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、システインを含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、マンガン塩、例えば塩化マンガン、及びチオグリコール酸から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、ジヒドロキシインドールを含む。
あるいはまた、別の態様によれば、該化粧料組成物A及び/又はBは、制汗作用を持つことができる。
この場合、本発明による該化粧料組成物A及びBの組み合わせは、夫々単独の該化粧料組成物A及びBにより付与されるよりも優れた制汗作用へと導くことができる。
【0049】
この態様の一局面によれば、該化粧料組成物Aは、システインの塩、特にシステイン塩酸塩から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、アルミニウムクロロハイドレートを含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、上記一般式(I)で表されるアルコキシシラン、特に3-アミノプロピルトリエトキシシランから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、テトラメチルヘキサメチレンジアミン重縮合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、四ホウ酸ナトリウムを含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、テトラメチルヘキサメチレンジアミン重縮合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、アルミニウムクロロハイドレートを含む。
この態様のもう一つの局面によれば、該化粧料組成物Aは、システインの塩、例えばシステイン塩酸塩、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硫酸塩、例えば亜硫酸ナトリウムから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、アルミニウムクロロハイドレートを含む。
【0050】
該化粧料組成物A及び/又はBは、とりわけ粉末、懸濁液、分散液、溶液、ゲル、エマルション、特に水中油型(O/W)又は油中水型(W/O)又は複エマルション(W/O/W又はポリオール/O/W又はO/W/O)の形態、又はクリーム、ムース、スティック、特にイオン性又はノニオン性液体状の小胞分散液、2-相又は多相ローション、スプレー、粉末、ペースト又は接着性又は非-接着性のフィルム等の形態であり得る。
該化粧料組成物A及び/又はBが、エアゾールデバイス内に仕込まれる場合、該デバイスは、1種又はそれ以上の噴射剤を含み、該噴射剤は、揮発性炭化水素、例えばn-ブタン、プロパン、イソブタン、ペンタン及びハロゲン化炭化水素、及びこれらの混合物から選択することができる。
二酸化炭素、亜酸化窒素、ジメチルエーテル(DME)、窒素又は圧縮空気も、噴射剤として使用することができる。噴射剤の混合物も、使用可能である。ジメチルエーテルの使用が好ましい。
有利には、該噴射剤は、該エーロゾルデバイス中の該組成物の全質量を基準として、5〜90質量%なる範囲の濃度、及びより特定的には10〜60質量%なる範囲の濃度で存在し得る。
当業者は、その一般的な知識に基いて、第一に使用する成分の特性、特にその担体に対する溶解度、及び第二に該組成物の意図した用途を斟酌して、適切な製剤形態及びその製法を選択することができる。
【0051】
好ましくは、該化粧料組成物A及び/又はBは、溶液、水中油型(O/W)又は油中水型(W/O)エマルションの形態にあり、あるいはクリーム又はゲルの形態にある。
あるいはまた、該化粧料組成物A及び/又はBは、エアゾールデバイス内に仕込まれ、該デバイスは、1種又はそれ以上の噴射剤及び特に窒素ガス及び/又はジメチルエーテル(DME)を含む。
該化粧料組成物A及びBは、化粧学的に許容される媒体を含む。
本発明の該化粧料組成物A及びBにとって適した該媒体は、化粧学的に許容される媒体であって、一般的に水及び水と少なくとも1種の有機溶媒との混合物を含む。列挙可能な該有機溶媒の例は、C1-C4低級アルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、グリセロール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びモノエチルエーテル、及び芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール、及びこれらの混合物を含む。
該溶媒は、該化粧料組成物の全質量を基準として、好ましくは約1質量%〜40質量%なる範囲、及びより好ましくは約5質量%〜30質量%なる範囲の割合で該組成物中に存在する。
【0052】
該化粧料組成物A及び/又はBは、また1種又はそれ以上の化粧学的添加剤をも含み、これは例えば触媒、デオドラント活性薬剤、脂肪物質、柔軟剤、消泡剤、モイスチャライザー、UV-遮断剤、無機コロイド、解こう剤、着色剤、例えばニンヒドリン、可溶化剤、香料、ノニオン性又は両性界面活性剤、タンパク質、ビタミン、噴射剤、オキシエチレン化又は非-オキシエチレン化ワックス、パラフィン、C10-C30脂肪酸、例えばステアリン酸又はラウリン酸、及びC10-C30脂肪アミド、例えばラウリン酸ジエタノールアミドから選択される。
上記添加剤は、一般に、その各々につき、該化粧料組成物の全質量を基準として、0.01〜20質量%なる範囲の量で存在する。
さらに、本発明は、またヒトの発汗を処置するための化粧学的方法にも係り、該方法は、皮膚に対して同時に、別々に又は時間的に順次、該皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む化粧料組成物A、及び既に処置されている該皮膚上に作用を及ぼすことができる1種又はそれ以上の化合物を含む、該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bを適用する工程からなり、結果としてこれらの組合せが、皮膚に制汗作用を付与するものである。
該化粧料組成物A及びBは、該皮膚に対して数回に渡り適用することができる。
【0053】
該化粧料組成物A及び/又はBが、時間的に順次適用される場合、該化粧料組成物Aの適用と該化粧料組成物Bの適用との間の時間間隔は、1秒〜1時間なる範囲、好ましくは10秒〜20分なる範囲及びさらに一層好ましくは2〜6分なる範囲内であり得る。
さらに、該化粧料組成物Aは、場合により数回に渡り、朝に適用することができ、また該化粧料組成物Bは、夕刻に適用することができる。
一態様によれば、皮膚は、該化粧料組成物Aの適用と該化粧料組成物Bの適用との間に濯ぐことができる。
好ましくは、皮膚は、該化粧料組成物Aの適用と該化粧料組成物Bの適用との間に濯がれることはない。
該化粧料組成物A及びBが、別々に適用される場合、これらの化粧料組成物は、同一の製剤形態又は異なる製剤形態であり得ることに注意すべきである。
一態様によれば、該多成分制汗剤の適用は、前処理又は後処理組成物の適用前後に、皮膚に対して行うことができる。
【0054】
本発明のもう一つの課題は、多-区画デバイス又はキットに係り、これは、化粧料組成物Aを含む第一の区画及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bを含む第二の区画を備え、該化粧料組成物Aは、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、また該化粧料組成物Aとは異なる該化粧料組成物Bは、既に処置されている皮膚に作用を及ぼすことができる、1種又はそれ以上の化合物を含み、結果としてこれら組成物の組合せが、皮膚に対して制汗作用を付与することを可能とする。
該多-区画デバイス又はキットは、2つのアプリケータを備えた、ポンプ式ボトル、チューブ又はスティックであり得る。
該化粧料組成物A及びBを別々に適用する場合には、これら化粧料組成物は、同一の製剤形態又は異なる製剤形態であり得ることに注意すべきである。
本発明は、また上記の如き多成分薬剤の、ヒトの発汗を処置するための使用にも係る。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、本発明を例示するのに役立つものである。
I. 該化粧料組成物A及びBが、制汗作用を持たない場合:
実施例1
以下の2種の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%で表されている):
【0056】
【表1】



【0057】
0.7gの該化粧料組成物Aを、予め剃毛した腋窩に適用し、また1分間放置する。0.4gの該化粧料組成物Bを、次に同一の領域に適用する。該腋窩をマッサージし、1分後に濯ぐ。
実施例2
以下の2種の組成物を、調製する(特に述べない限り、量は質量%で表されている):
【0058】
【表2】



【0059】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部の皮膚の4×4cmなる範囲を定めた領域に適用する。この組成物を1分間放置し、次いで濯ぎ落とす。次に、1gの実施例2の化粧料組成物Bを同一の領域に適用する。この組成物を、ヘアドライヤーで3分間乾燥する。
実施例3
以下の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%で表されている)。
【0060】
【表3】



【0061】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部皮膚の4×4cmなる範囲を定めた領域に適用する。この組成物を1分間放置し、軽くたたいて、その過剰分を除去する。次に、0.4gの該化粧料組成物Bを同一の領域に適用する。該前腕部をマッサージし、ヘアドライヤーで5分間乾燥する。
実施例4:
以下の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%で表されている)。
【0062】
【表4】



【0063】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を1分間放置し、軽くたたいて、その過剰分を除去する。次に、0.4gの該化粧料組成物Bを同一の領域に適用する。該前腕部をマッサージし、ヘアドライヤーで2分間乾燥する。
実施例5
以下の組成物を、空気のない条件下で調製し、また窒素ガス雰囲気下に維持する。特に述べない限り、量は質量%で表されている。
【0064】
【表5】



【0065】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を3分間放置する。その過剰分を軽くたたいて除去し、次に該前腕部を濯ぐ。次に、10-容量の水性過酸化水素ミストから形成したスプレーを、該処置された領域に適用し、放置して乾燥させる。
次いで、朝に数回に渡り、シャワーを浴びる前に、0.4gの該化粧料組成物Bを同一の領域に適用する。該組成物を、各適用に対して、シャワーの下で濯ぎ落とす。
実施例6
以下の組成物を、空気のない条件下で調製し、また窒素ガス雰囲気下に維持する。特に述べない限り、量は質量%で表されている。
【0066】
【表6】



【0067】
実施例5で行ったものと同一のテストを行う。
II. 該化粧料組成物A及び/又はBが、制汗作用を持つ場合:
実施例1
以下の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%単位で表されている)。
【0068】
【表7】



【0069】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を1分間放置し、軽くたたいて、その過剰分を除去する。次に、1gの該化粧料組成物Bを同一の領域に適用する。該前腕部をマッサージし、ヘアドライヤーで5分間乾燥する。
実施例2
以下の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%単位で表されている)。
【0070】
【表8】



【0071】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を1分間放置し、次に軽くたたいて、その過剰分を除去する。次いで、0.4gの該化粧料組成物Bを同一の領域に適用する。該前腕部をマッサージし、ヘアドライヤーで2分間乾燥する。
実施例3
以下の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%単位で表されている)。
【0072】
【表9】



【0073】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を3分間放置する。その過剰分を軽くたたいて除去し、次に該前腕部を濯ぐ。次いで、2gの該化粧料組成物Bを、朝にシャワーを浴びる30分前に、同一の領域に適用する。該組成物をシャワーの下で濯ぎ落とす。
実施例4
以下の組成物を調製する(特に述べない限り、量は質量%単位で表されている)。
【0074】
【表10】



【0075】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を3分間放置する。その過剰分を軽くたたいて除去し、次いで該前腕部をシャワーで濯ぐ。
実施例5
【0076】
【表11】



【0077】
1gの該化粧料組成物Aを、第一のモデルの前腕部に適用する(4cm×4cmなる、範囲を定めた領域)。この組成物を3分間放置する。その過剰分を軽くたたいて除去し、次いで該前腕部をシャワーで濯ぐ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料組成物Aから形成された第一の成分、及び該組成物Aとは異なる化粧料組成物Bから形成された第二の成分を含み、該第一及び第二成分は、別々に又は時間的に順次皮膚に適用することにより組合されるものであり、該化粧料組成物Aは、皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Bは、既に処置されている、該皮膚に作用を及ぼすことのできる1種又はそれ以上の化合物を含み、該組合せが、制汗作用を付与することができるものであることを特徴とする、多成分制汗剤。
【請求項2】
前記化粧料組成物Aが、化学反応を伴うことにより皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含む、請求項1記載の制汗剤。
【請求項3】
前記化粧料組成物Aが、皮膚と接合することのできる化合物、1又はそれ以上の皮膚の結合を開裂することのできる化合物、皮膚のイオン的特性を変更することのできる化合物、皮膚中に存在する分子の全て又はその一部を除去することのできる化合物、皮膚上に触媒作用を持つ基を生成することのできる化合物、又はこれら化合物の混合物から選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む、請求項1又は2記載の制汗剤。
【請求項4】
前記化粧料組成物Aが、以下に列挙するものから選択される1種又はそれ以上の化合物を含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の制汗剤:
・システインの塩;
・亜硫酸塩、特に亜硫酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩;
・マンガン塩;
・チオグリコール酸;
・一級アミン官能基を持つ置換基を含み、以下の一般式(I)で表される化合物から選択される、式(I)のアルコキシシラン:
【化1】

(I)
ここで、置換基Rは、同一又は異なっていてもよく、C1-C6アルキル基から選択され、nは1〜6なる範囲及び好ましくは2〜4なる範囲の整数を表す。
【請求項5】
前記化粧料組成物Aが、皮膚との化学反応を伴うことなしに、皮膚を処置することのできる1種又はそれ以上の化合物を含む、請求項1記載の制汗剤。
【請求項6】
前記化粧料組成物Aが、以下に列挙するものから選択される1種又はそれ以上の化合物を含む、請求項5記載の制汗剤:
・前記化粧料組成物Bの1種又はそれ以上の化合物の、皮膚上での保留性を高めることのできる化合物;
・該化粧料組成物Bの該化合物の作用を害する傾向のある薬剤を除去することができる、1種又はそれ以上の化合物;
・皮膚上及び/又は皮膚内で、該化粧料組成物Bの1種又はそれ以上の化合物の、分布及び/又は浸透性を改善することのできる化合物。
【請求項7】
前記化粧料組成物Aの前記化合物が、皮膚のジスルフィド結合を開裂し、結果として反応性の基を生成することができ、また前記化粧料組成物Bの前記化合物が、皮膚の表面上に存在する、このようにして生成された該反応性の基と反応することのできる化合物から選択される、請求項1〜6の何れか1項に記載の制汗剤。
【請求項8】
前記化粧料組成物Aの前記化合物が、皮膚上に1種又はそれ以上の触媒作用を持つ基を形成することのできる化合物である場合に、前記化粧料組成物Bの前記化合物が、該触媒作用を持つ基の存在下で反応して、制汗作用を付与することのできる化合物から選択される、請求項1〜6の何れか1項に記載の制汗剤。
【請求項9】
前記化粧料組成物Aの前記化合物が、カチオン性の基を生成することにより、皮膚のイオン的特性を変更することのできる化合物である場合に、前記化粧料組成物Bの前記化合物が、該皮膚とイオン性の相互作用を引起すことのできる、1種又はそれ以上のアニオン性の電荷をもつ化合物から選択される、請求項1〜6の何れか1項に記載の制汗剤。
【請求項10】
前記化粧料組成物Bが、1種又はそれ以上のフッ素化アルコキシシラン、モノマーとして、少なくとも酢酸ビニル、ビニルネオデカノエート及びクロトン酸を含む、1種又はそれ以上のアニオン性ポリマー、セルロースエステル、金属塩、還元剤、例えばシステイン、インドール又はその誘導体、アルミニウムクロロハイドレート及び四ホウ酸ナトリウムから選択される、1種又はそれ以上の化合物を含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の制汗剤。
【請求項11】
前記化粧料組成物A及び化粧料組成物Bの各々が、制汗作用を持つか、あるいは該作用を持たない、請求項1〜10の何れか1項に記載の制汗剤。
【請求項12】
ヒトの発汗を処置するための方法であって、該方法が、化粧料組成物A及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bを、同時に、別々に又は時間的に順次皮膚に適用して両者を組み合わせる工程からなり、該化粧料組成物Aが、該皮膚を処置することのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、また該化粧料組成物Bが、既に処置されている該皮膚に作用を及ぼすことのできる、1種又はそれ以上の化合物を含み、該組成物A及びBの組合せにより、制汗作用を付与することができることを特徴とする前記方法。
【請求項13】
前記方法が、前記化粧料組成物Aの適用と、前記化粧料組成物Bの適用との間に、一定の時間間隔を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜11の何れか1項に記載の多成分薬剤の、ヒトの発汗を処置するための使用。
【請求項15】
化粧料組成物Aを含む第一の区画及び該化粧料組成物Aとは異なる化粧料組成物Bを含む第二の区画を備え、該組成物A及びBは、同時に、別々に又は時間的に順次皮膚に適用することにより組合されるものであり、該化粧料組成物Aは、該皮膚を処置することのできる1種又はそれ以上の化合物を含み、かつ該化粧料組成物Aとは異なる該化粧料組成物Bは、既に処置されている該皮膚に作用を及ぼすことのできる1種又はそれ以上の化合物を含み、該組成物A及びBの組合せが、制汗作用を付与することを可能とする、ことを特徴とする、多-区画デバイス又はキット。

【公表番号】特表2012−512847(P2012−512847A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541502(P2011−541502)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067670
【国際公開番号】WO2010/070143
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】