説明

単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法

【課題】光子放出後に単一物質系の状態を戻すプロセスを必要とせず、かつ励起光と異なる周波数(波長)の光子を発生させる。
【解決手段】共鳴角周波数ωの共振器モードを有する光共振器101と、光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωを有する物質102と、物質に、ωと異なる角周波数ωの光を照射する光源103と、物質に外場を印加しωを変化させて、ωをωと共鳴させたりωと共鳴さたりする外場発生部104と、光源により物質に角周波数ωの光を照射させ、外場発生部により遷移角周波数ωをωと共鳴させて物質を状態|e>にし、次に遷移角周波数ωをωと共鳴させて物質を状態|g>に戻す制御部107と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の光子を発生する簡便な単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一光子源は、光子を利用した量子コンピュータや量子暗号などの量子情報処理技術にとって重要な位置を占める装置であり、所望のタイミングで特定の空間モードに対して単一光子を放出する必要がある。
【0003】
単純かつ最も確実にこの要請を満たす方法の1つは、原理的には、共振器モードと結合した単一の原子、イオン、分子、量子ドット等の単一の2状態系をπパルス(π:円周率)のレーザーで励起し、その後、共振器モードとの結合(結合定数g)で共振器モードに放出された光子が、さらに共振器外の特定の空間モードに共振器の減衰定数κ(>g)で放出されることを利用する方法である。この方法では、励起にπ/Ω、光子放出にπ/g時間がかかるが、光子放出直後に2状態系は初期状態に戻り、次の光子放出サイクルを始められる。Ω=2πE・μ/h(E:レーザー電場、μ:遷移双極子モーメント)なので、強いレーザーを用いれば、単一光子発生の周期(間隔)π/Ω+π/gはπ/gとなり、共振器モード利用の単一光子源としては最高の動作速度となる。しかしこの方法では、強い励起光の角周波数(波長)が、共振器モードの角周波数(波長)と一致し、迷光(ノイズ)となって利用しようとする単一光子に混入しやすい。
【0004】
この問題を避けるためには、単一の3状態系を利用し、励起する遷移と、共振器モードと結合して光子を放出する遷移とを異なる遷移とする方法が考えられる。また、単一の3状態系を用いるが、上の状態への励起を利用しないアディアバティック・パッセージを用いた方法も提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、初期状態(例えば状態|1>)から光子発生までに最短でも1/g程度の時間がかかり、さらに光子発生直後は初期状態に戻っておらず(例えば状態|2>にある)、一般に他の2つの遷移よりも寿命の長い|2>−|1>間遷移の自然放出により初期状態(|1>)に戻るのを待つか、2波長の光照射によるアディアバティック・パッセージにより戻すかする必要がある。したがって、両者とも戻りの分だけ繰り返し周波数が遅くなり、さらに後者では2波長光の光照射とその強度制御が必要で、しかも共振器モードの周波数と一致する光を照射することになり上記2状態の場合と同様の問題が生じてしまう。
【0006】
|2>−|1>間遷移に共鳴するモードを持ち、かつ共振器の減衰定数がそのモードと|2>−|1>間遷移との結合定数よりも大きな共振器中に2状態系を入れ、その共振器モードと|2>−|1>間遷移との結合で、|2>−|1>間遷移を促進し、元の状態に早く戻す方法もある(例えば、特許文献1参照)。この方法では、戻りのプロセスに要する時間を短縮することができるが、新たに共振器を設ける必要がある。また、理想的にはエネルギー状態間での戻りのプロセスが必要ない方が望ましい。
【0007】
また、最近では、マイクロ波領域の単一光子の発生方法として、クーパーペアー・ボックスと呼ばれる超伝導状態の2状態系と見なせる物理系の遷移周波数を、共振器モードを横切るように変化させ、共振器モードにマイクロ波光子を放出させる方法が研究されているが(例えば、非特許文献1参照)、マイクロ波領域の光子の放出過程の研究である。
【0008】
さらに、2状態系をレーザー照射によるアディアバティック・パセージで励起し、単一光子光源として利用する方法もあるが、光子は様々なモード(方向)に放出され、特定のモードに放出する方法は明らかにされていない。
【特許文献1】特許第3682266号公報
【非特許文献1】American Physical Society March Meeting 2007 発表番号H33-5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような時間がかかる、あるいは複雑で場合によっては迷光を増やす戻りのプロセスを必要とする従来の方法とは異なる方法で、g/π程度の繰り返し周波数が実現でき、かつ励起光と共振器モードすなわち放出する光子の周波数(波長)が異なる簡便な単一光子の発生方法は知られていない。
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、光子放出後に単一物質系の状態を戻すプロセスを必要とせず、かつ励起光と異なる周波数(波長)の光子を発生させる単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明の単一光子発生装置は、共鳴角周波数ωの共振器モードを有する光共振器と、前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωを有する物質と、前記物質に、ωと異なる角周波数ωの光を照射する光源と、前記物質に外場を印加しωを変化させて、ωをωと共鳴させたりωと共鳴さたりする外場発生部と、前記光源により前記物質に角周波数ωの光を照射させ、前記外場発生部により遷移角周波数ωをωと共鳴させて前記物質を状態|e>にし、次に遷移角周波数ωをωと共鳴させて前記物質を状態|g>に戻す制御部と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法によれば、光子放出後に単一物質系の状態を戻すプロセスを必要とせず、かつ励起光と異なる周波数(波長)の光子を発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法について詳細に説明する。なお、以下の実施形態中では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0014】
実施形態に係る単一光子発生装置、量子ビット読出装置および方法について説明する前に、本実施形態の単一光子を発生する機構を簡単に説明する。
本実施形態では、強度、角周波数(ω)とも一定の励起光と、励起光の角周波数と異なる共振器モードの共鳴角周波数(ω)を持つ光共振器を用意し、共振器の空間モードと空間的に重なる位置に置いた2状態系に対して励起光を照射する。この2状態系に対しては、外場(例えば、電場、磁場)が印加できるようになっており、外場により2状態系の遷移角周波数(ω)を変化させることができる。このωの変化のみで2状態系の励起と2状態系から共振器モードへの光子放出を行うことで、光子放出後に単一物質系の状態を戻すプロセスを必要とせず、かつ励起光と異なる角周波数(波長)の光子を発生させることができる。
【0015】
次に、本実施形態の単一光子発生装置について図1を参照して説明する。
本実施形態の単一光子発生装置は、光共振器101、物質102、レーザー発生装置103、電場発生装置104、電極105、光子検出器106、制御部107、ミラー108を含む。
【0016】
光共振器101は、角周波数ωの共振器モードを有し、物質102を含んでいる。光共振器101は、片側のミラーの反射率はほぼ100%、もう片方は99.9%程度の片側共振器である。光共振器101は、例えば、ファブリペロー型の片側共振器である。
【0017】
物質102は、2状態系の物質を含み、2状態系は遷移角周波数(ω)を有する。遷移角周波数(ω)は、電場発生装置104が発生する電場に応じて変更しうる。
【0018】
レーザー発生装置103は、角周波数(ω)の光子からなるレーザーを発生させる。ここで、ωはωと異なる値に設定する。レーザーはミラー108を介して物質102に照射される。なお、ミラー108は必須ではなく、レーザー発生装置103が直接物質102にレーザーを照射してもよい。
【0019】
電場発生装置104は、電極105に接続し2つの電極105の間に電圧を印加し、2つの電極105の間に電場を発生させる。この電場は光共振器101内の物質102に印加される。
【0020】
光子検出器106は、光共振器101から到来する光子を検出する。
【0021】
制御部107は、レーザー発生装置103を制御し、レーザーを発生させたりレーザの発生を停止する。制御部107は、光子検出器106が光子を検出したかどうかの情報を受け取る。制御部107は、電場発生装置104を制御し、光共振器101内に印加される電場の強さを制御することによって、2状態系の遷移角周波数(ω)を所定の値に変化させる。制御部107が2状態系の遷移角周波数(ω)を変化させることについては後に図2を参照して説明する。
【0022】
なお、図1では、物質102に電場を印加することによって遷移角周波数(ω)を変化させることについて説明したが、外場の他の例である磁場を物質102に印加することによって遷移角周波数(ω)を変化させることもできる。磁場を物質102に印加する場合については後に図5を参照して説明する。以下、「電場」と記載してある箇所を「磁場」に変更しても変更前と同様に正しい場合には、これらの場を総称して「外場」と記載する。
【0023】
次に、光子発生の方法および機構の詳細について図2、図3を参照して説明する。
図2に2状態系の遷移角周波数(ω)とレーザーの光子角周波数(ω)と光共振器の共振器モードの角周波数(ω)との関係を示す。ωとωは異なる値に設定され、ωは外場の印加により可変となっている。
【0024】
次に図3を参照して説明する。最初、2状態系はエネルギーの低い状態|g>にあり、励起光と共鳴していないとする(図3の第0の状態)。励起光と共鳴していなければ、ωは最初どのような値をとってもかまわない。また、この2状態系を含む光共振器の減衰定数(κ)は2状態系と共振器モードとの結合定数(gとする)よりも大きいとする(κ>g)。この2状態系に対し、次の2段階の操作を続けて行う。
【0025】
第1段階:この2状体系に外場を印加し、遷移角周波数ωを励起光の角周波数ωに一致させた上でπ/Ωの間だけ外場変化を止める。これは、2状態系にπパルスを照射したことに相当する。したがって、2状態系はエネルギーの高い状態|e>に励起される(図3の第1の状態)。
【0026】
第2段階:2状態系に印加する外場を変化させ、遷移角周波数ωを共振器モードの共鳴角周波数ωに一致させた上でπ/gの間だけ外場変化を止める。π/gは共振器モードと2状態系との結合による真空ラビ振動の半周期なので、2状態系は状態|e>から状態|g>へ変化し、共振器モードに光子を放出する。共振器モードに放出された光子は、1/κ程度の時間で速やかに共振器外へ放出される(図3の第2の状態)。
【0027】
第1段階では2状態系の励起、第2段階では2状態系から共振器モードへの光子放出と2状態系の脱励起が起きる。
【0028】
この第1段階と第2段階の2つの操作の組を続けて繰り返すことにより、単一光子をπ/Ω+π/gの間隔で発生させることができる。「背景技術」で説明した2状態系を利用した単一光子源と同様、Ω=2πE・μ/h(E:励起光の電場、μ:遷移双極子モーメント、h:プランク定数)なので、強い励起光を用いれば、単一光子発生の間隔をπ/gに近づけることが可能で、共振器モードを利用する場合の最も速い繰り返し周波数を実現できる。
【0029】
この方法では、第1段階と第2段階の2つの操作の組の繰り返しの2回目以降、第2段階終了後、2状態系はωの値も含めてもとの状態に戻っており、「背景技術」で説明した3状態系を利用した場合のように、特別に戻りの過程を必要としない。また、ωとωが異なるため、励起光と放出光子の角周波数は異なる。したがって、強い励起光の角周波数(波長)が、迷光(ノイズ)となって利用しようとする単一光子に混入することはない。
【0030】
図3を参照して説明した方法と機構は、第1段階には励起光と2状態系との結合によるラビ振動を、第2段階には共振器モードと2状態系との真空ラビ振動をそれぞれ利用する方法である。この第1段階と第2段階には、2状態系と励起光あるいは共振器モードとの相互作用によるアディアバティック・パッセージを用いることも可能である。
【0031】
次に、アディアバティック・パッセージを使用する方法について図4を参照して説明する。
アディアバティック・パッセージを第1段階に用いる場合、2状態系のエネルギーの高い状態|e>の寿命(|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間)をTとし、励起光のスペクトル幅(角周波数)が1/Tより小さい場合、印加する外場の変化によりスペクトル幅1/Tを持つ2状態系の遷移角周波数ωを連続的に変化させ、励起光の角周波数ωを1/Ωより長く、Tより短い時間をかけて横切らせる。こうすることで、2状態系と1つの光によるアディアバティック・パッセージにより、2状態系の状態は|g>から状態|e>に励起される(図4の第1の状態)。より詳細には、均一幅をΔとした場合、ωaを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にする。
【0032】
アディアバティック・パッセージを第2段階に用いる場合、印加する外場の変化により状態|e>にある2状態系のωを連続的に変化させ、共振器モードの共鳴周波数ωを1/gより長く、Tより短い時間をかけて横切らせる。こうすることで、2状態系と共振器モードによるアディアバティック・パッセージにより、2状態系から共振器モードに光子が1つ放出され、2状態系は状態|e>から状態|g>へ変化する(図4の第2の状態)。より詳細には、1/gより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻す。
【0033】
第1段階、第2段階の両方にアディアバティク・パッセージを利用する場合、第1段階でアディアバティック・パッセージを始める時点でのωの値をω(1)、アディアバティック・パッセージを終える時点での値をω(2)、第2段階でアディアバティック・パッセージを始める時点でのωの値をω(3)、アディアバティック・パッセージを終える時点での値をω(4)とすると、ω(1)、ω(2)、ω(3)、ω(4)はω、ωに応じてどのような値をとってもよいが、ω(2)からω(3)への移行の際にωあるいはωを横切る場合、あるいはω(4)からω(1)への移行の際にωを横切る場合には、ωに関しては1/Ωより十分短い時間で、ωに関しては1/gより十分短い時間で横切らせ、2状態系の状態(|g>であるか|e>であるか)が変わらないようにする。
【0034】
第1段階はラビ振動、第2段階はアディアバティック・パッセージを用いる場合も同様、第1段階から第2段階に移行する際にωあるいはωを横切る場合、あるいは第2段階から第1段階に移行する際に、ωを横切る場合には、ωに関しては1/Ωより十分短い時間で、ωに関しては1/gより十分短い時間で横切らせ、2状態系の状態(|g>であるか|e>であるか)が変わらないようにする。
【0035】
さらに、第1段階はアディアバティック・パッセージ、第2段階は真空ラビ振動を用いる場合も、第1段階から第2段階に移行する際にωあるいはωを横切る場合、あるいは第2段階から第1段階に移行する際に、ωを横切る場合には、ωに関しては1/Ωより十分速く、ωに関しては1/gより十分速く横切らせ、2状態系の状態(|g>であるか|e>であるか)が変わらないようにする。
【0036】
以上のように第1段階および第2段階の操作を行うことで、第1段階にラビ振動あるいはアディアバティック・パッセージを用い、第2段階に真空ラビ振動あるいはアディアバティック・パッセージを用いる4通りの組み合わせのいずれでも、光子間隔π/gあるいは1/g程度での、励起光と周波数の異なる単一光子の発生が可能になる。
【0037】
次に、本実施形態の単一光子発生装置で外場として磁場を使用する場合について図5を参照して説明する。
外場に磁場を使用する場合の単一光子発生装置は、光共振器101、物質102、レーザー発生装置103、磁場発生装置501、コイル502、光子検出器106、制御部503、ミラー108を含んでいる。
磁場発生装置501は、2つのコイル502に電流を流し特定の向きの磁場を発生させる。この磁場は光共振器101内の物質102に印加される。
制御部503は、磁場発生装置501を制御して2つのコイル502に流す電流の大きさを調整して磁場の大きさを制御する。制御部503は、光共振器101内に印加される磁場の強さを制御することによって、2状態系の遷移角周波数(ω)を所定の値に変化させる。制御部503は、制御部107と同様に、レーザー発生装置103を制御し、レーザーを発生させたりレーザの発生を停止する。制御部503は、制御部107と同様に、光子検出器106が光子を検出したかどうかの情報を受け取る。
【0038】
次に、物質102に記録された量子ビットを読み出す場合について図6を参照して説明する。
本実施形態の量子ビット読出装置は、図6にしめすように、光共振器101、レーザー発生装置103、電場発生装置104、電極105、光子検出器106、ミラー108、強度変調用音響光学効果素子601、周波数設定用音響光学効果素子602、レーザー周波数狭窄化システム603、制御部604、物質605を含む。
【0039】
物質605は、上述した2状態系の状態(エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>)以外に、さらに2つの状態(|0>、|1>)を有する。これら状態|0>、状態|1>の2つの状態で量子ビットを表す。
【0040】
強度変調用音響光学効果素子601は、入力した光の強度を設定し設定した強度の光を出力する。周波数設定用音響光学効果素子602は、入力した光の周波数を設定し設定した周波数の光を出力する。レーザー周波数狭窄化システム603は、入力した光を狭窄化して狭窄化した光を出力する。
【0041】
レーザー周波数狭窄化システム603で作成したレーザーを、ビームスプリッター、ミラー(いずれも図示せず)で3つに分け、周波数設定用音響光学効果素子602がそれぞれのレーザーを入力し周波数を設定し、強度変調用音響光学効果素子601が3つのレーザーのうちのレーザー2(|g>−|e>間遷移に共鳴する光)およびレーザー3(|1>−|e>間遷移に共鳴する光)を入力し強度を設定する。
【0042】
制御部604は、レーザー2の強度がレーザー3の強度よりも大きい状態から、レーザー3の強度がレーザー2の強度よりも大きい状態に移行するようにレーザー2とレーザー3とが時間的に重なるように強度変調用音響光学効果素子601を制御する。この制御によって、アディアバティック・パッセージにより、状態|1>の確率振幅を状態|g>の確率振幅に変化させることができ、|0>の状態にある場合には|0>の状態に留まる。その後、制御部604が、電場発生装置104によって電場を変化させωを励起光の角周波数ωに一致させる(第1操作)。この制御によって、物質605が元々|1>の状態にあり、アディアバティック・パッセージにより|g>の状態に移っている場合には、物質605を状態|g>から状態|e>へ励起することになり、元々状態|0>にある場合には|0>の状態に留まる。その後、制御部604が、電場発生装置104によって電場を変化させωを励起光の角周波数ωに一致させる(第2操作)。この制御によって、物質605が状態|e>の場合には物質605が共振器モードに単一光子を放出し、その単一光子が光共振器101から光共振器101の外部に放出されることになり、元々状態|0>にある場合には|0>の状態に留まる。
物質605が元々|0>の状態にあり、制御部604の制御によるアディアバティック・パッセージ後も状態|0>に留まっている場合には、制御部604が電場発生装置104によって電場を変化させ光共振器のωにωを励起光の角周波数ωに一致させても物質605から光子が放出されず、光共振器101から光共振器101の外部にも光子が放出されない。
【0043】
制御部604が上述の第1操作と第2操作を交互に行うことによって、物質605が元々|1>の状態にある場合には、光共振器101から操作2の度に光子が放出され、物質605が元々|0>の状態にある場合には、光共振器101から光子が放出されることはない。このように制御部604の制御によって光子検出器106が単一光子の検出を試みることにより、単一光子が検出されれば、物質605が元々|1>の状態にあり、検出されなければ物質605が元々|0>の状態にあることを知ることができる。すなわち、図6の装置によって量子ビットの読み出しを行うことができる。しかも、元々|1>の状態にある場合には、繰り返し放出される光子を観測することが可能なため、単一光子の検出確率が100%に満たない検出器を用いても、十分な精度で状態を読み取ることができる。
【0044】
次に、図6の量子ビット読出装置で外場として磁場を使用する場合について図7を参照して説明する。
外場として磁場を使用する場合には、図6での電場発生装置104および電極105を、それぞれ磁場発生装置501およびコイル502に取り替える。図5を参照して説明したように、光共振器101内に印加される磁場の強さを制御することによって、2状態系の遷移角周波数(ωa)を所定の値に変化させることができる。
【0045】
磁場が物質605に印加されると、状態|g>、状態|0>、状態|1>はそれぞれ縮退が解けそれぞれ複数の状態に分裂する。このとき、図7で示すように、それぞれの複数の状態から1つの状態を選択する。すなわち、分裂後の複数の状態から新たに状態|g>、状態|0>、状態|1>の準位を決める。
【0046】
この他は、制御部が磁場発生装置501を制御して光共振器101内に印加される磁場の強さを制御することによってωaを変化させること以外は、制御部の動作は図6を参照して説明した場合と同様の動作を行う。この動作により外場として磁場を使用する場合でも量子ビットを読み出すことができる。
【実施例】
【0047】
次に実施例について図8から図10を参照して説明する。
【0048】
(第1実施例)
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にラビ振動を用い、第2段階に真空ラビ振動を用いる場合である。
本実施例の単一光子発生装置および方法では、2状態系として、YSiO結晶の10−5%のY3+イオンをPr3+イオンに置換したPr3+:YSiO結晶中のPr3+イオンを利用する。Pr3+:YSiO結晶が物質102に対応する。結晶は2mm×2mm×2mm程度の大きさで、対向する表面に超高反射率のミラーが形成され、共振器構造になっている。片側のミラーの反射率はほぼ100%(99.998%以上)、もう片方は99.924%の片側共振器(光共振器101に対応)とし、またその共振器モードは、Pr3+イオンの電子基底状態の核スピンの状態±|5/2>と、電子励起状態の核スピンの状態±|5/2>との間の4f電子のf−f遷移(以降では単にPr3+イオンの光遷移と呼ぶ)の周波数ν(約494.7THz(周波数))より約4MHz高い周波数に共鳴するように作られ、モードウエスト半径が約1μmとなっている。また共振器の減衰定数(κ)(エネルギーの減衰定数)は約5MHz(周波数)とする。結晶901は、クライオスタット905の中に設置され1.5Kに保たれる。
【0049】
Pr3+イオンを含む結晶901は、共振器モードに結合するように入射した光による真空ラビ分裂の観測により、着目している単一の共振器モードの空間的な広がりの中に存在するPr3+イオンが、モードウエスト近傍に1つだけであるものを選択し利用する。
【0050】
また、アルゴンイオンレーザー励起のリング色素レーザー902を、参照用共振器と音響光学効果素子および電気光学効果素子によるフィードバック系でレーザー周波数狭窄化システム603によって、1kHzにスペクトル狭窄化し絶対周波数を安定化し、さらに音響光学効果素子で周波数可変にした光源を用意する。制御部903は、その狭窄化したレーザーの周波数を共振器モードの周波数νから2MHz低周波数側のν=ν−2MHzに設定し、結晶901の中のPr3+に照射する。
【0051】
結晶901には電場発生装置104の電極105が取り付けられており、結晶901に電場が印加できるようになっている。制御部903による電場の印加により、遷移角周波数νを、νに共鳴させたりνに共鳴させたりできるようになっている。
【0052】
片側共振器である光共振器101の反射率の低いミラーの側には光子検出器106が設置され、共振器モードから共振器外部に放出された光子を検出できるようになっている。
【0053】
本実施例おける共振器モードとPr3+イオンの光遷移との結合定数g/(2π)は約100kHz、レーザーとPr3+イオンの光遷移との結合によるラビ周波数Ω/(2π)は約500kHz、Pr3+イオンの電子励起状態の寿命Tは約200μsである。
【0054】
なお、本実施例および以下の実施例では、図8に示すように、Pr3+イオンの光遷移の1.5Kにおける均一幅(半値全幅)をΔνhomoとした場合、ν=ν−Δνhomoとなる電場をE(1)、ν=νとなる電場をE(2)、ν=ν+Δνhomoとなる電場をE(3)、ν=ν−Δνhomoとなる電場をE(4)、ν=νとなる電場をE(5)、ν=ν+Δνhomoとなる電場をE(6)とする。図8に、νとνおよびνの関係を示す。
【0055】
本実施例では、Pr3+イオンを含む結晶に対して、電場を印加しない状態にあったものに、E(2)の電場を印加しその状態にπ/Ωに相当する1μs留め、次いでE(5)の電場を印加しπ/gに相当する5μsその状態に留める。あとは1μsのE(2)の電場印加と5μsのE(5)の電場印加を交互に繰り返すことにより、片側共振器の反射率の低いミラーの側に光子がπ/Ω+π/gに相当する6μsごとに放出される。この様子は、光子検出器106で観測することができる。
【0056】
(第2実施例)
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にアディアバティック・パッセージを用い、第2段階にもアディアバティック・パッセージを用いる場合である。
この実施例では、制御部903が、第1実施例においてPr3+イオンを含む結晶に電場を印加する際に、電場を印加しない状態からE(1)にまず増大させ、E(1)からE(3)に一定の増加率で10μsかけて電場増大を行い、次いでE(3)からE(4)に電場増大を行い、さらにE(4)からE(6)に一定の増加率で40μsかけて電場増大を行う。次に、制御部903が、電場を印加しない状態に戻して、再び上記方法による印加電場増大を行う。この操作を繰り返すことにより、片側共振器である光共振器101の反射率の低いミラーの側に光子が約50μsごとに放出される。この様子は、光子検出器106で観測することができる。
【0057】
(第3実施例)
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にラビ振動を用い、第2段階にアディアバティック・パッセージを用いる場合である。
この実施例では、制御部903が、第1実施例においてPr3+イオンを含む結晶に電場を印加する際に、電場を印加しない状態から、E(2)の電場を印加しその状態にπ/Ωに相当する1μs留め、次いで、制御部903が、E(4)に電場を増大し、さらにE(4)からE(6)に一定の増加率で40μsかけて電場増大を行う。次に、制御部903が、電場を印加しない状態に戻して、再び上記方法による印加電場増大を行う。この操作を繰り返すことにより、片側共振器である光共振器101の反射率の低いミラーの側に光子が約40μsごとに放出される。この様子は、光子検出器106で観測することができる。
【0058】
(第4実施例)
図9に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例は、第1段階にアディアバティック・パッセージを用い、第2段階に真空ラビ振動を用いる場合である。
この実施例では、制御部903が、第1実施例においてPr3+イオンを含む結晶に電場を印加する際に、電場を印加しない状態からE(1)にまず増大させ、E(1)からE(3)に一定の増加率で10μsかけて電場増大を行い、次いでE(3)からE(5)に電場を増大し、π/gに相当する5μsその状態に留める。次に電場を印加しない状態に戻して、再び上記方法による印加電場増大を行う。この操作を繰り返すことにより、片側共振器の反射率の低いミラーの側に光子が約15μsごとに放出される。この様子は、光子検出器で観測することができる。
【0059】
(第5実施例)
図10に本実施例の単一光子発生装置を示す。本実施例では、結晶901に記録された量子ビットを読み出す場合の一例を示す。
この実施例では、第1実施例におけるPr3+イオンの電子基底状態の核スピンの状態±|3/2>を状態|0>、状態±|1/2>を状態|1>、状態±|5/2>を状態|g>とする。また、電子励起状態の核スピンの状態±|5/2>を状態|e>とする。
【0060】
光源からのレーザーをビームスプリッターで3つに分け、それぞれレーザー1、レーザー2、レーザー3とし、レーザー1を第1実施例におけるレーザーとして使う。レーザー2とレーザー3の照射を行う以外は、第1実施例と同様の装置(レーザー周波数狭窄化システム603、アルゴンイオンレーザー励起リング色素レーザー902)を利用し、同様の操作を行う。
【0061】
レーザー2とレーザー3は、それぞれ音響光学効果素子601,602で周波数シフトと強度変調ができるようになっている。制御部1001が、このレーザー2とレーザー3をそれぞれ|g>−|e>間遷移、|1>−|e>間遷移に共鳴する周波数に合わせ、それぞれを半値全幅20μsのガウス型パルスに整形し、レーザー3がレーザー2に対して20μs遅延するようにPr3+イオンを含む結晶に照射することによるアディアバティック・パッセージで状態|1>を状態|g>に移す。
【0062】
次いで、制御部1001が、第1実施例と同様に光共振器101の中に設置され、レーザー1が照射されているPr3+イオンを含む結晶901に、電場発生装置104が光子発生のための電場印加を繰り返し行う。その際、もし最初にPr3+イオンが|1>の状態にあれば、|g>の状態に移されるので、繰り返し光子が発生する。しかしもし最初にPr3+イオンが|0>の状態にあれば、|0>の状態に留まるので、光子は発生しない。したがって、光子検出器106で繰り返し光子が検出されるかどうかによって、最初にPr3+が状態|0>と状態|1>のいずれの状態にあったかがわかる。つまり量子ビットの読出しができる。
【0063】
以上に示した実施形態によれば、強度、周波数共に一定の励起光と、励起光の周波数と異なる周波数に設定した共振器モードとを利用し、電場印加または磁場印加によって単一の2状態系の遷移エネルギーを変化させるだけで2状態系の励起と共振器モードへの光子放出を行うことで、光子放出後に単一物質系の状態を戻すプロセスを必要とせず、かつ励起光と異なる周波数(波長)の光子を発生させることができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の単一光子発生装置のブロック図。
【図2】2状態系の遷移角周波数、レーザーの光子角周波数、光共振器のモードの角周波数の関係を示す図。
【図3】πパルス照射による光子発生を説明するための2状態系の時間変化を示す図。
【図4】アディアバティック・パッセージを利用することによる光子発生を説明するための2状態系の時間変化を示す図。
【図5】本実施形態の単一光子発生装置で外場として磁場を使用する場合のブロック図。
【図6】本実施形態の量子ビット読出装置のブロック図。
【図7】図6の量子ビット読出装置で外場として磁場を使用する場合を説明するための図。
【図8】YSiO結晶中のPr3+イオンの遷移周波数と、レーザー光子周波数と光共振器のモード周波数の関係を示す図。
【図9】第1実施例から第4実施例の単一光子発生装置のブロック図。
【図10】第5実施例の量子ビット読出装置のブロック図。
【符号の説明】
【0066】
101・・・光共振器、102、605・・・物質、103・・・レーザー発生装置、104・・・電場発生装置、105・・・電極、106・・・光子検出器、107、503、604、903、1001・・・制御部、108、904・・・ミラー、501・・・磁場発生装置、502・・・コイル、601・・・強度変調用音響光学効果素子、602・・・周波数設定用音響光学効果素子、603・・・レーザー周波数狭窄化システム、901・・・Pr3+:YSiO結晶、902・・・アルゴンイオンレーザー励起リング色素レーザー、905・・・クライオスタット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共鳴角周波数ωの共振器モードを有する光共振器を用意し、
前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωを有する物質を用意し、
前記物質に、ωと異なる角周波数ωの光を照射し、
前記光源により前記物質に角周波数ωの光を照射させ、前記物質に外場を印加しωを変化させ、遷移角周波数ωをωと共鳴させて前記物質を状態|e>にし、次に前記物質に外場を印加しωを変化させ、遷移角周波数ωをωと共鳴させて前記物質を状態|g>に戻すことを特徴とする単一光子発生方法。
【請求項2】
前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をgとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωをωに一致させて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωをωに一致させることで物質を|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
【請求項3】
前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
【請求項4】
前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωをωに一致させて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
【請求項5】
前記物質を状態|e>にし次に状態|g>に戻すことは、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωをωに一致させることで物質を状態|g>に戻すことであることを特徴とする請求項1に記載の単一光子発生方法。
【請求項6】
前記光共振器は、ファブリペロー型の片側共振器であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の単一光子発生方法。
【請求項7】
前記物質は結晶中の希土類イオンであり、前記状態|g>と前記状態|e>が希土類イオンのf−f遷移で結ばれていて、前記外場は、電場または磁場であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の単一光子発生方法。
【請求項8】
共鳴角周波数ωの共振器モードを有する光共振器を用意し、
前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>および状態|g>と状態|e>以外に2つの状態|0>と状態|1>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωを有する物質を用意し、
|g>−|e>間遷移、|1>−|e>間遷移にそれぞれ共鳴する第1パルス光、第2パルス光を生成し、
前記第1パルス光の強度が前記第2パルス光に対して強い状態から前記第2パルス光の強度が前記第1パルス光に対して強い状態に移行するように前記第1パルス光と前記第2パルス光とが時間的に重なるように制御して第3の光を生成し、
前記第3の光を前記物質に照射し、
前記第3の光を照射した後に、前記物質に外場を印加しωを変化させ、遷移角周波数ωをωと共鳴させて、次に前記物質に外場を印加しωを変化させ、遷移角周波数ωをωと共鳴させた場合に、前記光共振器から放出される光子を検出するか否かにより量子ビットを読み取ることを特徴とする量子ビット読出方法。
【請求項9】
共鳴角周波数ωの共振器モードを有する光共振器と、
前記光共振器の中に含まれ、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>を有し、外場によって変化する|g>−|e>間の遷移角周波数ωを有する物質と、
前記物質に、ωと異なる角周波数ωの光を照射する光源と、
前記物質に外場を印加しωを変化させて、ωをωと共鳴させたりωと共鳴さたりする外場発生部と、
前記光源により前記物質に角周波数ωの光を照射させ、前記外場発生部により遷移角周波数ωをωと共鳴させて前記物質を状態|e>にし、次に遷移角周波数ωをωと共鳴させて前記物質を状態|g>に戻す制御部と、を具備することを特徴とする単一光子発生装置。
【請求項10】
前記制御部は、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をgとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωをωに一致させて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωをωに一致させることで物質を|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
【請求項11】
前記制御部は、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
【請求項12】
前記制御部は、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりπ/Ωの時間だけωをωに一致させて物質を状態|e>にし、次に1/gより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
【請求項13】
前記制御部は、角周波数ωの光と物質の2状態との結合の大きさを表すラビ角周波数をΩ、共振器モードと物質の2状態との結合の大きさを表す結合定数をg、|g>−|e>間の遷移の縦緩和時間をT、均一幅をΔとした場合に、前記外場発生部によりωを変化させ、1/Ωより長くTより短い時間でω−Δ/2とω+Δ/2とで挟まれる角周波数領域を横切らせて物質を状態|e>にし、次に前記外場発生部によりπ/gの時間だけωをωに一致させることで物質を状態|g>に戻すことを特徴とする請求項9に記載の単一光子発生装置。
【請求項14】
前記光共振器は、ファブリペロー型の片側共振器であることを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の単一光子発生装置。
【請求項15】
前記物質は結晶中の希土類イオンであり、前記状態|g>と前記状態|e>が希土類イオンのf−f遷移で結ばれていて、
前記外場発生部は、前記物質に外場として電場または磁場を印加することを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の単一光子発生装置。
【請求項16】
物質は、エネルギーの低い状態|g>とエネルギーの高い状態|e>以外に2つの状態|0>と状態|1>を有している請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の単一光子発生装置と、
|g>−|e>間遷移、|1>−|e>間遷移にそれぞれ共鳴する第1パルス光、第2パルス光を生成する生成手段と、
前記第1パルス光の強度が前記第2パルス光に対して強い状態から前記第2パルス光の強度が前記第1パルス光に対して強い状態に移行するように前記第1パルス光と前記第2パルス光とが時間的に重なるように制御して第3の光を生成する制御手段と、
前記第3の光を前記物質に照射する照射手段と、
前記照射手段が前記第3の光を照射した後に、前記制御部が前記外場発生部により遷移角周波数ωをωと共鳴させて、次に遷移角周波数ωをωと共鳴させた場合に、前記光共振器から放出される光子を検出するか否かにより量子ビットを読み取る読取手段と、を具備することを特徴とする量子ビット読出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−81322(P2009−81322A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250457(P2007−250457)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】