説明

単数または複数の弁装置を有する抄紙機

本発明は抄紙機内での圧電ノズルシステムの使用に関する。圧電ノズルシステムは、予期に反して、抄紙機内の極端な周囲条件に特別適していると実証された。特に、高い水分にもかかわらず圧電ノズルシステムの利用によって、制御もしくは調節された弁装置を抄紙機内で利用するとき、きわめて高い調節精度および動力学を達成することができる。圧電ノズルシステムを利用することによってさらに、相応する弁装置をきわめて頑丈かつごくコンパクトに設計して高い利用可能性と安定性が保証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単数または複数の弁装置を有する抄紙機に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙機では紙、厚紙および/または板紙が製造される。抄紙機にはさまざまな個所で弁装置を利用することができる。
【0003】
独国特許発明第3126460号明細書により例えば抄紙機用フローボックス装置が公知であり、そこではノズルシステムとして形成される複数の弁装置が使用され、紙料懸濁液から形成される液体噴流が弁装置から外に流出する。
【0004】
独国特許発明第3144066号明細書は抄紙機用フローボックスを述べており、吐出しノズルに注ぐ複数の乱流管を有する1つの弁装置が設けられている。
【0005】
独国特許発明第2917765号明細書により例えば浮動乾燥機用ノズルが公知であり、このノズルは抄紙機において紙ウェブを非接触式に乾燥させるのに使用される。
【0006】
特開平2‐80689要約により公知のフェルト洗浄装置は洗浄ノズルを備えた1つの弁装置を有する。このようなフェルトおよび相応する洗浄装置は例えば抄紙機のプレスパートで利用される。
【0007】
独国特許発明第2917765号明細書により浮動乾燥機用ノズルが公知である。浮動乾燥機は抄紙機において紙ウェブを非接触式に乾燥させるのに使用することができる。独国特許発明第2917765号明細書により公知の、ノズルとして形成された弁装置は、乾燥させかつ支持する気体流を被乾燥紙ウェブに向けるのに役立つ。
【0008】
欧州特許第0051654号明細書により公知の抄紙機用シリンダ乾燥機は空気噴射要素として形成される単数または複数の弁装置を有する。
【0009】
独国特許発明第3218306号明細書により、紙ウェブを引き渡すために紙ウェブ末端から分離された導入条片用の切断兼案内装置が公知であり、切断兼案内装置が弁装置を有し、逸れた紙ウェブはこれらの弁装置によって互いに逆向きの空気流に曝され、紙ウェブに作用する引張応力の結果として紙ウェブは裂ける。
【0010】
例えば上記諸明細書から公知の弁装置の抄紙機内での取付場所は、高い水分、一部できわめて高い周囲温度、化学薬品による負荷、および/または例えば紙繊維による汚れ等の比較的厳しい周囲条件を特徴としている。現在抄紙機内で利用される機械式および/または電気機械式弁装置は比較的故障し易く、そのため抄紙機の生産損失と品質低下がもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、抄紙機の操業時に生産性と品質を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、単数または複数の弁装置を有し、少なくとも1つの弁装置が少なくとも1つの圧電ノズルシステムを有する抄紙機によって解決される。
【0013】
圧電ノズルシステムは、抄紙機に利用されると、意外なことに従来利用された電気機械式弁よりもはるかに確実であると判明した。抄紙機において圧電ノズルシステムを利用することによって、さらに、抄紙機において経過するプロセスの調節の精度および動力学は高めることができる。圧電ノズルシステムとして形成された少なくとも1つの弁装置を有する抄紙機は、公知の抄紙機よりもはるかに確実に働きかつ頑丈である。本発明によれば抄紙機の利用可能性と安定性が高まる。
【0014】
有利には、圧電ノズルシステムが複数の帯域を有することができ、帯域が各帯域の流量を調節するために制御可能である。少なくとも1つの圧電ノズルシステムを利用することによって特に、可能な帯域数は本質的に高めることができる。分解能と調節品質が高まる。弁装置の調節要素の遊びが減らされる。
【0015】
すき網上にパルプを被着するための少なくとも1つの圧電ノズルシステムをフローボックスの領域に設けておけるようにすると有利である。こうして紙料載置時に繊維整列は特定の制御パターンによって調節することができ、これにより、他の例えば縦剛性、横剛性等の紙パラメータも良好に制御することができる。
【0016】
それに応じて、圧電ノズルシステムは繊維整列に影響するように形成しておけるようにすると有利である。
【0017】
紙を被覆するための少なくとも1つの圧電ノズルシステムを設けておくことが有利である。
【0018】
圧電ノズルシステムは接着剤を被着するように形成しておけるようにすると有利である。
【0019】
圧電ノズルシステムは顔料を被着するように形成しておけるようにすることも好ましい。
【0020】
本発明の有利な構成において、紙に加湿するための少なくとも1つの圧電ノズルシステムを設けておくことができる。
【0021】
すき網を清浄にするための少なくとも1つの圧電ノズルシステムを設けておくことも好ましい。
【0022】
紙を切断するための噴流、例えば水噴流または空気噴流を形成もしくは成形する少なくとも1つの圧電ノズルシステムを設けておくことも有利である。
【0023】
本発明のその他の利点、詳細は以下で図面を基に実施例の態様で説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、例えば紙、厚紙または板紙を製造することのできる抄紙機を概略示す。抄紙機は、故紙、ケミカルパルプおよび/またはメカニカルパルプ等の原料2の供給を受ける紙料槽3を有することができる。場合によっては、紙に疎遠な成分は例えば選別器4において選別される。
【0025】
抄紙機のフローボックス5は、水を添加しながら、また場合によっては填料および/または補助材を添加しながら原料2から形成された繊維質‐水‐懸濁液7を抄紙機ワイヤパート6の少なくとも1つのすき網10の幅にわたって均一に分配する。図示実施例ではすき網10がごく細かなエンドレスすき網として形成されており、絶えず前進し、有利には横方向でも揺り動かされる。フローボックス5から流出するパルプ、すなわち繊維質‐水‐懸濁液7は99%超までの水を有することができる。ワイヤパート6において繊維は絡み合って統一的紙ウェブ1となる。過剰の水はすき網10を通して流れ落ちる。ワイヤパート6内で流れ落ちる水は白水9と称される。ワイヤパート6の末端で紙ウェブ1の含水量は代表的には約80%とすることができる。その場合、紙ウェブ1は、すき網10から取り外し、フェルト帯を用いて引き続くプレスパート11内に誘導するのに既に十分な強さである。
【0026】
プレスパート11において紙ウェブ1はさらに脱水される。紙ウェブ1の含水量は例えば50%に減らすことができる。プレスパート11において流れ落ちる水はプレス水12とも称される。白水9とプレス水12は紙料調成部、すなわち紙料槽3、選別器4および/またはフローボックス5に直接、またはいわゆる紙料回収装置14を介して、循環水16として供給することができる。廃水15は有利には処理設備に供給される。
【0027】
プレスパート11において紙ウェブ1は有利には吸収性エンドレスフェルト布によって鋼、花崗岩および/または硬質ゴム製のロールの間に通され、これにより脱水される。プレス過程が紙組織を圧縮し、剛性が高まり、表面品質が決定的に影響を受ける。
【0028】
一般にプレスパート11に続くドライヤパート13はしばしば抄紙機のうちで最も長い部分である。ドライヤパート13において紙ウェブ1から水が気化される。ドライヤパート13において紙ウェブは、蒸気加熱式の複数の乾燥シリンダを通過するのがよい。ドライヤパート13において原紙は均一に乾燥させることができ、ドライヤパート13の末端では一般に数パーセントの残留水分を有する。発生した水蒸気は、詳しくは図示しない密閉乾燥フードから吸引され、熱回収設備内に送られるのが好ましい。ドライヤパート13が100以上までの蒸気加熱式乾燥シリンダを有することも例外ではない。紙ウェブ1は一般に抄紙機の末端でリール8に巻き取られる。抄紙機は図面に詳しく図示しないカレンダを有することができ、このカレンダは一般にドライヤパート13の下流側、リール8の上流側に設けられている。カレンダは一般に、図面に詳しく図示しない上下に配置される複数のロールから成り、ロールは紙ウェブに平滑な表面と均一な板厚とを与える。
【0029】
上で述べたように、抄紙機とは直列に接続された複数の組立体のことである。1つの抄紙機は下記組立体の少なくとも2つを有する:フローボックス5、ワイヤパート6、プレスパート11、ドライヤパート13、カレンダ、そしてリール8を有する巻取り部。
【0030】
本発明の有利な構成において抄紙機の異なる組立体においてさまざまな個所に、圧電ノズルシステムを備えた弁装置を利用することができる。
【0031】
フローボックス5内で繊維質‐水‐懸濁液7もしくはパルプはノズルとして形成される弁装置から流出する。この弁装置は詳しくは図示しない単数または複数の圧電ノズルを有することができる。有利には複数の圧電ノズルが、例えば紙ウェブ1を横切っておよび/またはそれに垂直に配置しておくことのできる帯域を形成することができる。フローボックス5の弁装置は有利には、図面においてフローボックス5の上側部分、特に「鼻状」に形成された部分に実質一致したいわゆるヘッドボックスに配置されている。
【0032】
圧電ノズルシステムは、ワイヤパート6のすき網10および/またはプレスパート11のプレスフェルトおよび/またはドライヤパート13の乾燥スクリーンの清浄および清潔保持にも利用することができる。圧電ノズルシステムは例えばすき網10を特別効果的に清浄にするのに使用される。例えば、すき網10を清浄にするために紙ウェブ1を横切って複数の圧電ノズルを配置しておくことができる。その際走行するすき網の幅にわたって連続的に空気が吹き出され、これにより、すき網内にある水および汚れ粒子が除去されるのが有利である。圧電ノズルシステムはロール、例えばワイヤパート6および/またはプレスパート11内の吸引ロールの清浄にも利用することができる。
【0033】
紙ウェブ1は抄紙機内で全体として見て乾燥されるのではあるが、紙品質を高めるためにさまざまな個所で紙ウェブ1に加湿するのが望ましい。特に、図面に詳しく図示していないいわゆる再乾燥群において紙ウェブ1はしばしば加湿される。紙ウェブ1に加湿するために圧電ノズルシステムは、取付場所に応じて横方向水分分布、カール低減および/または再加湿のために利用される。圧電ノズルシステムの利用によって、特に、好適な制御機構と合せて最適な噴霧角度とごく細かな水滴形成を達成することができ、これにより紙ウェブ1全体にわたってきわめて均一な吸水量を達成することができる。こうして高い紙品質が達成され、これにより例えば紙ウェブ1の巻取りが改善され、亀裂が減少する。
【0034】
圧電ノズルシステムは紙ウェブ1を切断するのにも使用することができる。紙ウェブ1は圧電ノズルから流出する水および/または空気で切断される。圧電ノズルシステムによって、適切に向けられた細かな水噴流を形成することができ、この水噴流は最適な水圧のとき紙ウェブを清潔で厳密に、また粉塵なしに切断する。単数または複数の圧電ノズルシステムを頼りにしたこのような紙ウェブ切断システムは特に紙ウェブ1の縁を切断するのに適している。
【0035】
単数または複数の圧電ノズルシステムを用いて紙ウェブ1の質的価値の高いカラー被覆および/または接着剤被覆も行うことができる。このため有利には塗工装置もしくは接着剤プレスが抄紙機内に設けられている。紙ウェブの接着剤塗布および/またはカラー被覆は、有利には乾燥プロセス後または乾燥プロセス中に行われる。圧電ノズルシステムを用いて紙ウェブ1は特別均一に、正確に制御可能な層厚で被覆することができる。
【0036】
抄紙機内の圧電ノズルシステムは一般に、例えば車両産業において利用される圧電ノズルシステムよりもはるかに大きな流量用に設計されている。圧電ノズルシステムを抄紙機内で利用することによって、抄紙機の弁装置は従来可能であったよりもはるかにコンパクトに形成することもできる。
【0037】
本発明にとって重要な考えを以下にまとめる。
【0038】
本発明は、抄紙機内での圧電ノズルシステムの使用に関する。圧電ノズルシステムは、予期に反して、抄紙機内の極端な周囲条件に特別適していると実証された。特に、高い水分にもかかわらず圧電ノズルシステムの利用によって、制御もしくは調節された弁装置を抄紙機内で利用するとき、きわめて高い調節精度および動力学を達成することができる。圧電ノズルシステムを利用することによってさらに、相応する弁装置をきわめて頑丈かつごくコンパクトに設計して高い利用可能性と安定性が保証される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による抄紙機の略図である。
【符号の説明】
【0040】
1 紙ウェブ
2 原料
3 紙料槽
4 選別器
5 フローボックス
6 ワイヤパート
7 繊維質‐水‐懸濁液
10 すき網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数または複数の弁装置を有する抄紙機において、少なくとも1つの弁装置が少なくとも1つの圧電ノズルシステムを有する抄紙機。
【請求項2】
圧電ノズルシステムが複数の帯域を有し、帯域が各帯域の流量を調節するために制御可能である請求項1記載の抄紙機。
【請求項3】
すき網(10)上にパルプを被着するための少なくとも1つの圧電ノズルシステムがフローボックス(5)の領域に設けられている請求項1または2記載の抄紙機。
【請求項4】
圧電ノズルシステムが繊維整列に影響するように形成されている請求項3記載の抄紙機。
【請求項5】
紙を被覆するための少なくとも1つの圧電ノズルシステムが設けられている先行請求項のいずれか1つに記載の抄紙機。
【請求項6】
圧電ノズルシステムが接着剤を被着するように形成されている請求項5記載の抄紙機。
【請求項7】
圧電ノズルシステムが顔料を被着するように形成されている請求項5または6記載の抄紙機。
【請求項8】
紙に加湿するための少なくとも1つの圧電ノズルシステムが設けられている先行請求項のいずれか1つに記載の抄紙機。
【請求項9】
すき網(10)用清浄装置が設けられており、この清浄装置が少なくとも1つの圧電ノズルシステムを有する先行請求項のいずれか1つに記載の抄紙機。
【請求項10】
紙用切断装置が設けられており、この切断装置が少なくとも1つの圧電ノズルシステムを有し、紙を切断する噴流がこの圧電ノズルシステムで成形される先行請求項のいずれか1つに記載の抄紙機。

【図1】
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【公表番号】特表2009−520114(P2009−520114A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545003(P2008−545003)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/069701
【国際公開番号】WO2007/071612
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】