単環式芳香族化合物およびその他の汚染物質のナノ多孔質検出器
以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシラン(TMOS)から選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシランの単位、ならびに、以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシランの単位から本質的に構成され、第1のポリアルコキシシラン/第2のポリアルコキシシランのモル比は、1/0.01から1/1である、任意選択でプローブ分子を含む多孔質ゾル−ゲル材料、調製方法、ならびに単環式芳香族炭化水素およびその他の汚染物質の捕捉、またはその検出における適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単環式芳香族化合物および他の化合物(アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトン)のナノ多孔質検出器、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
単環式芳香族化合物の大部分は、毒性大気汚染物質であり、ベンゼンについては発癌性でさえもある。それらは、化学産業における石油化学工業等のような環境(溶媒の使用)、工場付近の環境、専門的な環境(研究実験室、分析実験室等)、自動車燃料および周囲空気(燃料の気化、化石エネルギーの不完全燃焼、喫煙、家庭用メンテナンス製品または日曜大工製品の使用)において見られる。
【0003】
汚染された大気中の大気汚染の監視する問題のため、または、これらの化合物に直接暴露される作業員を調査する問題のために、一般にBTEXM(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(オルト、メタおよびパラ)、トリメチル(1,2,3;1,2,4および1,3,5)−ベンゼン)として知られる、最も揮発性の芳香族生成物を検出および定量することが必要である。
【0004】
単環式芳香族炭化水素(MAH)の測定は、通常、周囲空気および屋内空気中で行われる。
【0005】
これらの測定は、サンプリング、次いで分析という2つの異なるステップで行われる。作業構内においては、作業員の個人暴露量、または固定作業点周辺での空気測定の2種類の測定が行われる。サンプリングは、能動的(空気を固定相で覆われたシリカのカートリッジに通じさせるポンピング)、または受動的(ポンピングを伴わず、拡散によって同じカートリッジに通じさせるもの)のいずれかであってよい。いずれの場合においても、分析は、後の段階で実験室において行われる。
【0006】
サンプリングに続いてインサイチュ分析を行うために、連続分析計が存在する。自律的に動作する(サンプリング、濃縮、分析)携帯型マイクロクロマトグラフを挙げることができる。しかしながら、それらはかさばる上に様々なガスの使用を必要とし、FID検出器(水素炎イオン化検出器)の場合は窒素、空気および水素、またはPID検出器(光イオン化検出器)の場合は窒素の使用を必要とするが、後者は300ppbv(体積比10億分の1)未満の濃度に限られる。
【0007】
直接的な測定検出器に対する要求を満たすために、良好な選択性を有するBTEXM用化学センサの開発を多くの研究者が目指している。
【0008】
これらの化合物が実質的に非極性(双極子モーメントが0デバイから0.3デバイの範囲)であることから、これらの化合物に対し特異的なプローブ分子を探し当てるのは困難である。したがって、BTEXMは近距離静電力、または分散力により他の分子と弱く相互作用し得るのみである。文献に報告されている検出原理は、本質的にこれらの非選択的な弱い相互作用およびサイズに基づいた選択性試験である。芳香族大員環、ナイルレッド等の微視的環境に対し感受性を持つフルオロフォア、ならびに半導体および混合酸化物に基づくセンサが、この目的において使用される。サイズに基づく選択性のために、空洞が標的汚染物質を受けるようなサイズであるかご型分子(例:パラシクロファン、カリックスアレーンまたはシクロデキストリン)が提案されているが、これらの系は選択的ではない。
【0009】
ケイ素アルコキシド(Si(OR)nR4−n(式中R=CH3である))を基礎とする有機−無機ハイブリッドポリマーを含む多孔質マトリックスをベースとしたベンゼン検出器もまた知られている。500μmから2mmの範囲となり得る厚さ、および3.5Åから9Åの半径を有するナノ細孔を有するマトリックスを使用することにより、Calvo−Munozら(「Chemical sensors of monocyclic aromatic hydrocarbons based on sol−gel materials:kinetics of trapping of the pollutants and sensitivity of the sensor」、Sensors and Actuators B、2002年、第87巻、173〜183頁、)は、ベンゼンおよびトルエンを実質的に不可逆的に捕捉し、それらの吸収スペクトルによってそれらを区別することが可能であることを示した。厚さ2mmのモノリス状ブロックを用いて、ベンゼンおよびトルエンに対して実験室において得られた感度は、20mL/minの処理量、2時間の暴露において10ppbvである。250mL/minというより高い暴露処理量の場合、14分の暴露時間で、60ppbvを測定することができる。これらのマトリックスにおけるベンゼンおよびトルエンの捕捉収率は、低濃度(10ppbv未満)および低処理量(20mL/min)では100%であるが、濃度が1ppmv(体積比100万分の1)を超える場合、および処理量が50mL/minを超える場合、大きく減少する(5%から6%)。すべての場合において、捕捉は実質的に不可逆的である。オルト−キシレンおよびメタ−キシレン、さらにトリメチルベンゼンは、細孔が極めて小さい(直径20Å未満)これらの材料中に拡散することができず、これにより、これらの材料は、ベンゼン、トルエンおよびパラ−キシレンのみの選択的検出器となる。捕捉および測定が単一ステップで行われるとしても、汚染物質の捕捉は不可逆的である。
【0010】
2001年以来、NTT社(日本電信電話株式会社)は、BTEMX捕捉に役立ち、制御された孔サイズを持つ、約2μmの直径を有するシリカ立方体の形態を伴った様々な多孔質吸着剤を研究してきた。例えば、Ueno Y.、A.Tate、およびO.Niwa「Benzene sensor and method for manufacturing same」、欧州特許出願公開第EP1712889A1号、2006年10月18日を参照されたい。汚染物質の熱脱着に役立つ加熱システム(後面上にエッチングされた電気抵抗)を備えたマイクロ流体フローチャンバに前述立方体を充填する。事前濃縮ステップの間、汚染物質を含有する空気が、汚染物質の含有量に従って数十分から1時間30分の間、フローチャンバを通してポンピングされる。これらの汚染物質は、多孔質材料中に部分的に捕捉される。次いで、チャンバは、汚染物質を脱着させるために200℃で10秒間加熱される。第2のポンプを介して光学チャンバ(2cm石英セルまたは12cm光ファイバ)内にガスを移動させ、UV分光光度計(相馬光学株式会社製、Fastevert S−2400)を用いてその吸光度によって検出する。選択性は、様々なBTEMXのスペクトルデータバンクからのスペクトル解析により得られる。組み合わされた捕捉および検出デバイスは、サイズ37.5×20×16cm、重さ6.7kg(コンピュータは含まれない)の通気筐体内に含められる。検出器の感度は、90分の暴露で1ppbv、または50分の暴露で50ppbvである。検出器は、相対湿度40%から80%の空気の相対湿度に対し感度がやや低い。
【0011】
NTT社による装置は、感度および速度の点で必要とされる基準を満たしているが、このデバイスはさらに2ステップ、すなわち事前濃縮および分析を必要とする。この場合、これらのマトリックス内に捕捉された汚染物質を脱離させ、それらを分析チャンバ内に移動させるために、急速な温度勾配を伴う加熱システムが必要である。
【0012】
市販の、または文献において提案されている分析計を考証すると、工程の可逆的性質を維持しながら、単一ステップで単環式芳香族炭化水素(MAH)の捕捉および測定を可能にするデバイスが必要とされているようである。MAHに対する暴露およびそれらの測定のために単一チャンバが使用されることが好ましい。また、加熱デバイスを必要とせずにガスを脱着させることができることが望ましい。
【0013】
センサ生成ステップは、可能な限り短時間、例えば24時間未満であるべきである。
【0014】
センサのサイズおよび製造コストは、可能な限り小さくすべきである。
【0015】
センサの材料は、汚染物質の急速な拡散を可能にし、良好なMAH捕捉収率を示すべきである。
【0016】
捕捉は、可逆的であるべきである。
【0017】
そのようなセンサを使用した検出システムは、良好なS/N比を維持しながら小型化が可能であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
作業構内での測定では、検出システムが、例えば1日作業時間に対応する少なくとも8時間、良好な自律性を有すること、および、検出システムが堅牢であり、余りかさばらず、個人により容易に移動可能であり、したがって軽量であることもまた望ましい。
【0019】
ここで、鋭意研究の結果、本出願人は、満足し得る新規な多孔質材料の使用に基づくBTEMXの多価検出器およびそれらの一般的溶媒を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本特許出願の主題は、
―以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシラン、から選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)であって、有利には1種のみのポリアルコキシシラン、より具体的にはテトラメトキシシラン(TMOS)の単位、ならびに、
―以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシラン(複数可)であって、有利には3−アミノプロピルトリエトキシシランの単位から本質的に形成される多孔質ゾル−ゲル材料で、第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比は、1/0.01から1/1、好ましくは1/0.01から1/0.50、特に1/0.01から1/0.30、具体的には1/0.01から1/0.15、最も具体的には1/0.02から1/0.06であり;好ましくは第1のポリアルコキシシランがTMOSである、多孔質ゾル−ゲル材料である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランは、少なくとも1種の第1級アミン官能基を含むことに留意されたい。
【0022】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)は、特に、以下の化合物:メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびテトラメトキシシラン(TMOS)から選択される。
【0023】
多孔質ゾル−ゲル材料は、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)単位、および単一種の第2のポリアルコキシシラン単位から形成されることが好ましく、具体的には、単一種の第1のポリアルコキシシラン単位、および単一種の第2のポリアルコキシシラン単位から本質的に形成される。
【0024】
本出願の主題はまた、以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランから選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)、有利には単一種のポリアルコキシシラン、より具体的にはテトラメトキシシラン(TMOS)、ならびに以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシラン(複数可)であって、有利には3−アミノプロピルトリエトキシシランの単位、から本質的に調製することができ、第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比は、1/0.01から1/1、好ましくは1/0.01から1/0.50、特に1/0.01から1/0.30、具体的には1/0.01から1/0.15、最も具体的には1/0.02から1/0.06であり;好ましくは第1のポリアルコキシシランはTMOSである、ゾル−ゲル材料である。
【0025】
1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)、および単一種の第2のポリアルコキシシランから、具体的には単一種の第1のポリアルコキシシランおよび単一種の第2のポリアルコキシシランから本質的に調製することができる多孔質ゾル−ゲル材料が好ましい。
【0026】
調製方法は本明細書において以下に概説される。
【0027】
本発明のゾル−ゲル材料は多孔質であり、10オングストロームから60オングストローム、特に20オングストロームから60オングストロームの範囲の細孔径分布、および200m2/gから800m2/gの比表面積を有する。好ましくは、比表面積は650±70m2/gである。
【0028】
材料の組成に含まれる第2のポリアルコキシシランのうち、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)が好ましい。
【0029】
特に好ましいゾル−ゲル材料は、テトラメトキシシラン(TMOS)および3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)から本質的に調製され、TMOS/APTESモル比は、1/0.01から1/0.30、好ましくは1/0.01から1/0.15、有利には1/0.01から1/0.10、特に1/0.02から1/0.06、最も具体的には1/0.03であり、したがって、一方および他方の単位をそのような割合で含む。
【0030】
ゾル−ゲル材料は、式M(OR)n(式中、Mは金属、特にケイ素であり、Rはアルキル基である)のアルコキシドを前駆体として使用し、それらを加水分解することからなるゾル−ゲル化方法によって得られる材料であることに留意されたい。水の存在下ではアルコキシ基(OR)の加水分解が生じ、一般に1ナノメートル未満のサイズの微小粒子を形成する。これらの粒子は凝集し、沈降せずに懸濁状態を保つ凝集体を形成し、ゾルを形成する。凝集体を増加させると、媒質の粘度が増加し、媒質がゲル化する。ゾル−ゲル材料は、ゲルを乾燥させ、形成されたポリマーネットワークから溶媒を除去することにより得られる。
【0031】
本発明のゾル−ゲル材料は単位を含み、2種から4種のポリアルコキシシラン、特に2種から3種、具体的には2種のポリアルコキシシランから本質的に調製される。最終材料は、50%から95%のポリアルコキシシラン誘導体を含有することができる。
【0032】
規則的な多孔質構造および/または特定の空洞形状の生成を可能にする構造化化合物(有機ポリマー、中性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等)は、それらがマトリックスの光学的および構造的特性を低下させることなく洗浄または焼成により除去可能であるならば、出発ゾルに添加することができる。
【0033】
本特許出願の主題はまた、本明細書で上記のプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料である。
【0034】
本明細書の以下の文章において明記されているかどうかに関わらず、用語「ゾル−ゲル材料」は、ゾル−ゲル材料そのもの、およびプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料の両方を指すが、ただし、ゾル−ゲル材料がそれらの一方であり、他方ではないことが文脈において示されている場合を除く。
【0035】
プローブ分子は反応できる化合物または汚染物質を捕捉、または検出、または捕捉および検出するが、プローブ分子はその様な化合物または汚染物質に適した分子であり、例えば、ホルムアルデヒドの検出には4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(Fluoral−P(登録商標))であってもよい。プローブ分子を組み込むことにより、本発明が標的とする化合物または汚染物質の範囲を広げることができる。
【0036】
好ましいプローブ分子は、アセトアルデヒド、ヘキサアルデヒドおよびクロトンアルデヒドの検出にはヒドララジン;アルデヒドおよびケトンの全体としての検出には2,4−ジニトロフェニルヒドラジン;ホルムアルデヒドの検出には4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(Fluoral−P(登録商標))、芳香族化合物またはアルカンには酸化ヨウ素(KIO4、I2O4およびI2O5)、カルボン酸の検出にはトリフェニルメタン誘導体(ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、マラカイトグリーン等)、またはアゾベンゼン誘導体(ヘリアンチン、コンゴーレッド、メチルレッド、メチルイエロー、アリザリンイエローR等)である。
【0037】
プローブ分子の重量パーセントは、材料の総重量に対して、有利には0.1%から40%、好ましくは10%から40%、最も具体的には10%から30%である。
【0038】
本特許出願の主題はまた上述のゾル−ゲルを調製するための方法であり、第1のポリアルコキシシラン(複数可)、好ましくはテトラメトキシシランが、このポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒と混合され、次いで第2のポリアルコキシシラン(複数可)が添加され、所望により触媒もしくは構造化剤、またはその両方が追加された水が添加され、撹拌が継続されてゾルを、次いでゲルを得ることを特徴とする。所望により、ゾルは型に入れられ、ゲルのブロックを得る。組み合わされた形態で、テトラメトキシシランおよび第2のポリアルコキシシラン分子は、「単位」と呼ばれる。
【0039】
有利には、第1のポリアルコキシシラン(複数可)が、−45℃から+30℃の範囲の温度でこのポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒と混合され、次いで第2のポリアルコキシシラン(複数可)が添加され、所望により触媒もしくは構造化剤、またはその両方、好ましくは構造化剤のみが追加された水が添加され、撹拌が継続されてゾルを、次いで期待されるゾル−ゲルを得、有利な態様によれば、ゾルは型に入れられて期待されるゾル−ゲルのブロックを得る。
【0040】
本特許出願において、不定冠詞「a」は、文脈により別の意味(1または「単一(single)」)が示されない限り、慣習的に総称複数(「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する)としてみなされるべきであることに留意されたい。したがって、例えば上記において、構造化剤(a structuring agent)が添加されることが述べられているときは、それは1種または複数の構造化剤を添加する場合であり、あるいは、プローブ分子(a probe molecule)が組み込まれることが述べられている時は、それは1種または複数のプローブ分子を添加する場合である。
【0041】
上述の方法の実践にあたって好ましい条件下では、第1のポリアルコキシシラン(複数可)、好ましくはテトラメトキシシラン(TMOS)は、このポリアルコキシシラン用の有機溶媒と混合されるが、この有機溶媒は、特にアセトン、ホルムアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはヘキサノールであり、好ましくはアルコール、特にC1〜C5、有利にはC1〜C3アルカノール、具体的にはメタノールである。
【0042】
混合は、−45℃から+30℃、好ましくは−25℃から−15℃の温度で、1分間から10分間、好ましくは2分間から3分間行われてもよい。有利には、−25℃から−15℃の温度で、2分間から3分間、混合が行われる。
【0043】
次いで、第2のポリアルコキシシラン(複数可)、最も具体的には3−(アミノプロピル)トリエトキシシランが、好ましくは第1のポリアルコキシシランより少ない、またはそれと同等の割合で添加される。撹拌は、一般に1分間から10分間、好ましくは2分間から3分間継続される。最後に、添加される水は超純水が好ましく、そこには必要に応じて触媒および/または構造化剤、好ましくは構造化剤のみが追加することができる。次いで、さらに10秒間から120秒間、より具体的にはさらに40秒間から60秒間、撹拌が継続される。
【0044】
上記合成ステップはすべて、低温で行われることが好ましい。
【0045】
ポリアルコキシシラン/溶媒/水のモル比は、有利には1/4/1から1/100/30、具体的には1/4/4、最も具体的には1/5/4である。
【0046】
期待されるゲルブロックを得るために、ポリスチレンまたはポリプロピレンが、型の構成材料として有利に使用される。
【0047】
上述の方法を行うための他の好ましい条件下では、ゾル−ゲルブロックはまた、残留溶媒を蒸発除去するように乾燥される。ゾル−ゲルマトリックスの乾燥は、有利には、制御された温度および乾燥不活性ガス雰囲気下(窒素、アルゴン、空気等)で進行する。ゾル−ゲルブロックの乾燥は、特にガス透過性カバー、より具体的には多孔質フィルムを型の表面に設置し、続いてこれらの型を25℃から60℃、より具体的にはいかなるプローブ分子も組み込んでいない材料の場合は45℃、またその逆の場合は25℃の温度のサーモスタット制御チャンバ内に設置することにより、行うことができる。乾燥雰囲気は、好ましくは、乾燥した純粋不活性ガス(Uグレード窒素、FIDグレード工業用空気等)である。完全乾燥の継続時間は、2時間から10日間の間で変化させてもよく、好ましい場合においては、約2×10−3cm3、または特に5×10−3cm3の体積のブロックに対して約2時間である。
【0048】
材料が1種または複数の界面活性剤を含有する場合、これらの界面活性剤は、ゲル化の後、水溶液または有機溶液中で洗浄またはそれに浸漬することにより、あるいは焼成により除去される。
【0049】
本出願の主題はまた、標的化合物と選択的に反応することができるプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法である。このプローブ分子(単数または複数)の組み込みは、いくつかの方法に従い行うことができる:
−ゾルの調製中にプローブ分子を直接添加する方法であり、好ましい方法である「ワンポット」法。この場合、プローブ分子は、シリカネットワーク中に直接収められる。ゾルの調製に役立つ前述の溶媒中または前述の水中で、プローブ分子の希釈または溶解を生じることができる。好ましい選択は、プローブ分子が最も溶解する、または最も混和する媒体中に、プローブ分子を希釈または溶解することである。
−気相または液相拡散法は、ゾル−ゲル材料が乾燥した後に、その材料の空孔にプローブ分子を含める方法である。この場合、プローブ分子は、材料の表面上に吸着するか、または非共有結合(水素結合またはイオン結合)によりこの表面に結合する。気相拡散法は、(不完全真空下またはガスの流通下で)プローブ分子をガス形態で材料と直接接触した状態に置く方法である。液相拡散法は、溶解または希釈されたプローブ分子を含有する溶液(水溶液または溶媒)中にゾル−ゲル材料を直接入れる方法である。
−ゾル−ゲル材料とプローブ分子との間の共有結合を形成する方法である、官能化またはポストドーピング法。これを行うには、プローブ分子との適合性を改善するためにゾル−ゲル材料の表面を官能化すること、または前記分子を官能化することが有利である。
【0050】
これまでで明らかであるように、2種以上のプローブ分子が組み込まれてもよい。
【0051】
本発明の主題であるゾル−ゲル材料は、非常に有利な特性および品質を有する。それらの材料は特に、あらゆる種類の一般的溶媒、ならびに単環式芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンおよびスチレンを捕捉する特筆すべき特性を備えている。
【0052】
ゾル−ゲル材料はまたUV透過性であり、これにより、捕捉された単環式芳香族炭化水素の吸光度を直接測定することが可能となり、これらの炭化水素は一般に、そのUV吸光度により区別される。
【0053】
本発明の主題であるゾル−ゲル材料は、特にガス形態の単環式芳香族炭化水素とともに使用することができる。
【0054】
より一般的には、本発明のゾル−ゲル材料は、UV−可視光範囲において、250M−1cm−1を超えるモル吸光係数で吸収する化合物を捕捉することができる。感度は、1ppmv以上の濃度で好適であり、またスチレン等の高い吸光係数を有するガスに対しては約10ppbvでも好適である。
【0055】
ゾル−ゲル材料により、直接吸光度測定をすることによってBTEMXを検出することができる。ある場合、例えばスチレンの場合等において、汚染物質の計測はまた、蛍光測定を用いて行うことができる。
【0056】
薄い厚さ、例えば100μmから800μm、有利には100μmから500μmで使用される場合、ゾル−ゲル材料により、MAHおよびそれらの通常の溶媒を可逆的に捕捉することが可能となる。
【0057】
有利には分光光度計の使用により、優れた性能および高感度な吸光度または蛍光測定による検出が可能となる。
【0058】
シリカ立方体の形態での多孔質吸収剤と比較すると、具体的には以下の利点を認めることができる:
−捕捉および計測が単一ステップで可能である。
−単一のチャンバで暴露および測定を行うことができる。
−センサに適合するミリ流体システムを使用することにより、加熱せずにガスの脱着を行うことができる。
【0059】
特に2つの異なる群のポリアルコキシシラン、すなわち上で定義されたような第1および第2のポリアルコキシシランの使用によって、ケイ素アルコキシド(Si(OR)nR4−n(式中R=CH3である))を基礎とした有機−無機ハイブリッドポリマーの多孔質マトリックスをベースとしたベンゼン吸収剤に対し、具体的には以下の利点を認めることができる:
−多孔質センサの合成および乾燥ステップが、2ヶ月から4時間に短縮される。
−センサのサイズおよびその製造コストが低減される。
−新たな多孔質材料により、標的化合物のより速い拡散が可能となる。
−ミリ流体システムにより、捕捉収率の増加が可能となる。
−捕捉は可逆的であり、標的化合物は加熱せずに脱着される。
−検出システムを小型化することができ、S/N比が改善される。
【0060】
さらに、本発明の主題であるゾル−ゲル材料により、300〜400回の測定の長期自律性が可能となり、これは1測定が15分毎に行われた場合、3日から4日に対応する。測定頻度が30分毎になった場合、この自律性は6日から8日に増加することができ、測定頻度が減少した場合は、さらにより長くなることができ;加えて、捕捉デバイスおよび/またはそれを使用した検出システムは堅牢であり、かさばらず、携帯性があり、軽量である。
【0061】
本発明の主題であるゾル−ゲル材料は、7に近い固有pHを有するという特性を有する。様々な上述のアミノポリアルコキシドの使用により、塩基(OH−)を添加する必要なく、材料の固有pHを変化させることができる。pH値は、7から8.2である。上述の好ましい場合において、pHは7.5±0.3に等しい。
【0062】
ゾル−ゲル材料がプローブ分子を組み込む場合、マトリックスは、プローブ分子と標的化合物との間の特定の反応を用いて、あらゆる種類の化合物を選択的に捕捉することができる。この場合、分析物(標的化合物)の捕捉は不可逆的である。次いで、プローブ分子との相互作用によって、または反応から得られた生成物を検出することによって、捕捉された標的化合物を定量的に測定することができる。この場合、分析時に媒体中に存在する他の標的化合物もまた捕捉され得るが、特定の反応がない場合は検出されない。他の場合において、プローブ分子と弱い結合を介して相互作用する酸性標的化合物が捕捉されるために、プローブ分子は僅かなpH変動に敏感である。この場合、反応は可逆的である。
【0063】
これらの特性は、以下の実験の項において例示される。これらの特性は、単環式芳香族炭化水素およびその他の標的化合物の捕捉、ならびに/またはそれらの検出における、上述のゾル−ゲル材料およびプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を使用することを正当化するものである。
【0064】
したがって、本特許出願の主題はまた、上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素またはその他の関心のある化合物を捕捉するための方法であって、単環式芳香族炭化水素またはその他の標的分子を含有かもしれないストリームが、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる方法である。
【0065】
単環式芳香族炭化水素を含有し得るストリームは、汚染した大気から生じ得る。このストリームは、10mL/minから1.1L/minの処理量で流通することができる。
【0066】
本特許出願の主題はまた、プローブ分子が、ゾル−ゲル材料のゾルの調製中に直接、またはこのプローブ分子の気相もしくは液相による前記材料中への拡散により、ゾル−ゲル材料に添加されることを特徴とする、上記プローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法である。
【0067】
本特許出願の主題はまた、プローブ分子(複数可)が1種または複数の上記プローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法であり、−45℃から+15℃の低温で、ゾル−ゲル材料のゾルの調製中に直接、またはこのプローブ分子(単数または複数)の気相もしくは液相による前記材料中の拡散により、ゾル−ゲル材料に添加されることを特徴とする。ゾル−ゲル材料はpH7に近い固有pHを示すが、例えば、第1のアルコキシシラン単位がTMOSであり、第2のポリアルコキシシラン単位がAPTESである場合、TMOSに対するAPTESの割合を増加させることにより、7から8.2のpH範囲内で変動し得る。
【0068】
単環式芳香族炭化水素の捕捉に加え、それらの検出および/または分析評価も可能である。この目的のために、これらの分子の捕捉もまた行うことができる。
【0069】
したがって、本特許出願の主題はまた、さらに、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料中に捕捉された、単環式芳香族炭化水素およびこの炭化水素用の一般的溶媒が検出される、上記方法である。
【0070】
検出は、特に光学的測定、質量測定または音響測定により行うことができる。
【0071】
検出が光学的測定により行われる場合、好ましくは、標的化合物の吸光度が最大となる波長が選択される。また、標的化合物の蛍光が最大となる波長を選択することもできる。
【0072】
任意選択でプローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料上に捕捉される単環式芳香族炭化水素を分析評価するために、特に、標的化合物(複数可)を含有するストリームに暴露されるときのモノリスの吸光度、蛍光、ルミネッセンス、質量または共振周波数変動の測定を行うことができる。得られた測定値は、標的化合物の較正したストリームから得られた測定値と比較して、暴露ストリーム中に含有する標的化合物の量および/または性質に関する情報を直接的に提供する。
【0073】
上記において明らかであるように、上記ゾル−ゲル材料がプローブ分子を組み込んでいる場合、あらゆる種類の標的化合物、例えば単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸、ケトンおよび塩素、特に単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトンを捕捉することができる。
【0074】
したがって、本特許出願の主題はまた、プローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトンから選択される標的化合物、特に単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトンを捕捉するための方法であって、前述の物質の中からの標的化合物を含有し得るストリームが、プローブ分子を組み込んだ上述の前記ゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる方法である。
【0075】
ストリームは、汚染された大気から生じ得るこれらの標的化合物を含有することができるガスに対応してもよい。ガスストリームは、10mL/minから1.1L/minの範囲の処理量で流通し得る。
【0076】
これらの標的化合物の捕捉に加え、また、これらの化合物を検出および/または分析評価することができる。この目的のために、これらの分子の捕捉もまた行うことができる。
【0077】
したがって、本特許出願の主題はまた、さらに、プローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料上に捕捉された標的化合物の検出を行う、上記方法である。
【0078】
検出は、特に、光学的測定、質量測定または音響測定により行うことができる。
【0079】
検出が光学的測定により行われる場合、プローブ分子、またはプローブ分子と標的化合物との間の相互作用もしくは反応により形成された生成物の吸光度、蛍光またはルミネッセンスが最大となる波長が選択されることが好ましい。
【0080】
プローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料上に捕捉された標的化合物を分析評価するために、特に、プローブ分子の吸光度、蛍光もしくはルミネッセンスの経時的変動、またはプローブ分子と標的汚染物質との間の反応生成物の吸光度、蛍光もしくはルミネッセンスの経時的変動を測定することができる。いずれの場合においても、その結果は、標的化合物で較正したストリームと同じ暴露条件下で得られた結果と比較することができる。
【0081】
本特許出願の主題はまた、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素または上記標的化合物を捕捉するためのシステムである。そのようなセンサは、一般的には再現性のある形状、例えば、平行六面体、円筒、立方体、台形等の形状の、150mm2以下、好ましくは100mm2以下の表面積を有し、2mm以下の厚さを有する上述のゾル−ゲル材料のブロックを含む。このセンサは、通常、
―上述のゾル−ゲル材料が挿入されるガス流用のミリ流体システムと、
―光学窓およびミリ流体システム用の開口(ガス入口および出口)を備える暴露用チャンバと
を本質的に備えるセルにおいて使用される。
【0082】
本明細書において、用語「ミリ流体システム」は、捕捉ステップのために、10mL/minから1.1L/min、好ましくは100mL/minの処理量でガスストリームを通過させるためのシステムを指す。
【0083】
本特許出願の主題はまた、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素およびこの単環式芳香族炭化水素用の一般的な溶媒を検出するためのシステムである。そのような検出システムは一般的に:
―上記暴露用チャンバと、
―上記ミリ流体システムと、
―分析光を平行化および集束するための光学システムと、
―光を伝達するための光ファイバと、
―所望の処理量に適合する(マイクロ)ポンプと、
―分光光度計または別の検出デバイスと
を含む。
【0084】
検出システムは、特に、以下のように使用され得る。
【0085】
ゾル−ゲル材料のブロックを、ミリ流体システムに挿入する。このシステムを、暴露用チャンバ内に設置する。ガス状標的化合物の混合物を、短時間(15秒から2分)、ミリ流体システム内に流通させる。暴露時間中、本明細書の以下で説明されるように、センサの吸収スペクトルを毎秒収集する。光ファイバを使用して、UVランプ(重水素)から発生する分析光を伝達し、チャンバの入射窓に連続的に照射する。入射窓上に設置されたレンズ(焦点距離=10mm)およびSMAコネクタを使用して平行化された光線は、小さい表面積、例えば1mm2にわたりセンサを照射する。チャンバの出口窓上に設置された第2のレンズおよび第2のSMAコネクタにより、同軸内で透過光を収集する。光ファイバを使用して、任意選択で小型である分光光度計に透過光線を伝達する。センサの吸収スペクトルを毎秒収集するが、各取得は8msecから1000msec(好ましくは20msec)継続する。
【0086】
取得が完了したら、捕捉された標的化合物を放出し、センサをパージすることができる。この目的のために、センサを約5分間、4L/minの空気ストリームに暴露することができる。
【0087】
各標的化合物に暴露されたセンサの吸光度シグナルは、標的化合物の広い濃度範囲、およびガス状混合物の広い相対湿度範囲にわたり取得される。これらのデータから、その濃度およびガス状混合物の湿度の関数として、各標的化合物に対する較正曲線が確立される。これらの較正曲線は、ガス形態の標的化合物の未知混合物に暴露されたセンサのスペクトルのスペクトル解析に役立つデータバンク内に保存される。
【0088】
吸光度シグナルは、前述のようにマトリックスにおいて事前に決定された、標的化合物のそれぞれの吸収スペクトルについてのデータバンクを使用して解析される。
【0089】
放出ステップのために、ガスストリームの処理量は、2L/minから5L/minの範囲にでき、好ましくは4L/minに設定される。
【0090】
標的化合物と反応することができるプローブ分子がドープされたマトリックスの場合、プローブ分子と標的化合物との間の反応は、大部分の場合において不可逆的である。パージステップは放出を達成するためではなく、プローブ分子と反応しなかったガス状混合物中に存在する化合物の流体回路をパージするために行われる。この場合、パージストリームの処理量は、有利には、10mL/minから1.1L/minの値に設定される。
【0091】
トリフェニルメタンまたはアゾベンゼンから得られる1種または複数のプローブ分子を含有するゾル−ゲル材料の場合、パージは、有利には、最初の光学的測定条件への復帰が観察されるまで、ストリームまたはゾル−ゲル材料のpH条件を変更することにより行われる。
【0092】
さらに、流通ポンプを用いて十分に長い時間(数秒から1時間)流体回路が連続的に(またはループ状に)機能する場合(その間、標的化合物はマトリックスに進入しプローブ分子と反応する)、光学的測定は、この時間中、好ましくは定期的な間隔(1秒から300秒)で行われる(吸収または蛍光スペクトルの収集)。
【0093】
以下の実施例は本特許出願を例示し、本発明は、添付の図面を参照してより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】全体としての測定デバイス(測定セル、分光光度計、重水素放電管、ポンプ)の概略図である。
【図2】ミリ流体システムを構成する銅板の1つの斜視図である。
【図3】暴露用チャンバの断面図である。
【図4】波長の関数としての、p−キシレンに対する吸光度の結果であり、センサは11.86ppmvのp−キシレンを含有する窒素のストリームに暴露され、図4aは、捕捉中における標的化合物の吸収スペクトルの変化を示し、図4bは、放出(物理的吸着による標的化合物の単純な捕捉の場合におけるマトリックスのパージ)中のマトリックスの吸収スペクトルについての変化を示す。
【図5】ガス状混合物に対するゾル−ゲルブロックの一連の暴露、続くゾル−ゲルブロックのパージを示す図である。各「パルス」は、標的化合物に対する1分間の暴露にわたる吸光度の線形増加、続くパージ中における5分間の吸光度の指数関数的減少に対応する。吸光度の増大シグナルの傾き値は、暴露ストリーム中における標的化合物の濃度についての特徴を示している。
【図6】標的化合物(ベンゼン、パラ−キシレンおよびメシチレン)の混合物に対する暴露中に記録されたスペクトルである。スペクトルは、同じ条件下で個々に測定された標的化合物のスペクトルの合計に対応する。
【図7a】プローブ分子(この場合Fluoral−P(登録商標))でドープしたゾル−ゲルブロックの、10ppbvのホルムアルデヒドを含有する200mL/minのガスストリームに対する暴露中に記録された蛍光スペクトルである。経時的なスペクトルの変動は、Fluoral−P(登録商標)とホルムアルデヒドとの間の反応から得られる生成物の蛍光の増加に対応する(励起波長=405nm−励起時間=2秒)。
【図7b】Fluoral−P(登録商標)でドープされたマトリックスの、10ppbvのホルムアルデヒドを含有する200mL/minのストリームに対する暴露中の、一方では蛍光領域(470nmから750nm)の変化(実線曲線)を、他方では520nmでの最大蛍光の変化(点線曲線)を示すグラフである。これら2つの曲線の原点における傾きは、暴露ストリーム中のホルムアルデヒド濃度の特徴を示している。
【図8a】プローブ分子(この場合はブロモフェノールブルー)でドープされたゾル−ゲルブロックの、飽和蒸気圧の酢酸を含有する雰囲気に対する暴露中に測定された吸収スペクトルを示す。スペクトルの変動は、一方は試薬の消失(ブロモフェノールブルー、592nmでの吸収帯の強度が減少)に、他方は反応生成物の形成(431nmでの吸収バンドの出現)に対応する。
【図8b】ブロモフェノールブルーでドープされたブロックの、飽和蒸気圧の酢酸を含有する雰囲気に対する暴露中での光学密度の変化を示し、一方は試薬であるブロモフェノールブルーの消失(実線曲線)に、他方は反応生成物(プロトン化ブロモチモールブルー)の出現に対応する。これら2つの曲線の原点における傾きは、暴露ストリーム中の酢酸濃度の特徴を示している。この反応は、モノリスの洗浄および酢酸の脱着により、可逆的である。
【実施例】
【0095】
実施例1
APTES−TMOSゾル−ゲルブロックの調製
【0096】
段階1:
96ウェルポリスチレンマルチウェルプレート(Greiner Bio−one社製Elisaマイクロプレート平底、参照番号655001)を、炉内で50℃、24時間加熱しながら、この間、炉を3回脱ガスする。このステップは、ポリスチレン型を脱ガスし、ゲルの乾燥ステップの間にゾル−ゲル材料に後に捕捉され得るスチレンモノマーの放出を最小化する。
【0097】
テトラメトキシシラン(TMOS、Fluka社製、参照番号87680)3.4mlおよびメタノール(Fluka社製、参照番号65540)4.8mLを、−25℃の浴内に設置されたPyrexビーカー内で、磁気撹拌器を使用して2分間混合する。次いで、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、Fluka社製、参照番号09324)0.2mLを、マイクロピペットを使用して混合物に添加する。さらに2分間撹拌した後、Millipore社製超純水1.7mLを添加する。混合物をさらに30秒間撹拌する。ゾルが得られるが、これを得られた状態のまま以下のステップにおいて使用する。
【0098】
段階2:
ゾルを−25±5℃に維持し、可能な限り迅速に作業しながら、マイクロピペットを使用して、参照Greiner Bio−one社製Elisaマイクロプレート平底プレート(655101)のそれぞれのウェルにゾル38μLを入れる。
【0099】
段階3:
ゾルがゲル化したら、マイクロウェルプレートを、ガス透過性フィルム(ガス透過性接着シール、ABGene社製、参照番号AB−0718)で覆う。プレートを炉内で40℃、2時間静置する。次いでプレートを炉から取り出し、マトリックスを型から剥がし、密封ポリプロピレン皿の中に入れる。乾燥を完了するために、皿を炉に戻し40℃で4時間静置する。
【0100】
乾燥後、モノリス状ディスク形態のゾル−ゲルブロックが得られる。得られたゾル−ゲルブロックの平均直径は3.6mmであり、その厚さは約200±25μmである。その平均比表面積は、750m2/gである。これは、液体窒素温度での窒素に対する吸着および脱着等温線を確立することにより、および文献中に提案されている様々な分析モデル、例えばBET(Brunauer、EmmetおよびTaylor)モデルを使用して等温線を分析することにより評価した。
【0101】
その平均細孔容積は、0.67cm3/gである。これは、液体窒素温度での窒素に対する吸着および脱着等温線を確立することにより、およびDFT(密度汎関数理論)分析モデルを使用して等温線を分析することにより評価した。
【0102】
細孔径分布は、吸着質の分子間、および該分子と細孔表面との間の相互作用ポテンシャルを計算する方法に基づき、DFT(密度汎関数理論)法により評価し、これにより、相互作用ポテンシャル等の微視的データから吸着等温線等の巨視的データを再構築することが可能となる。細孔形状モデル(「球状および円筒状の混合」)を計算に使用した。
【0103】
ミクロ孔は、20Å以下の直径を有する細孔として定義される。
【0104】
メソ孔は、20Å≦d≦500Åの直径を有する細孔として定義される。
【0105】
実施例1の材料に対して得られた結果は、以下の通りである。
−ミクロ孔/メソ孔分布(表面)=35/65%
−ミクロ孔/メソ孔分布(バルク内)=15/85%
【0106】
実施例2
APTES−TMOSゾル−ゲルブロックの調製
【0107】
様々な形態およびサイズのマトリックスを調製した。
−平行六面体(Star−Pack社製、参照番号47304および参照番号271512および参照番号303−Evergreen社製、参照番号201−3111−010)
−円筒(Spex industries Inc.製、参照番号3111−Greiner Bio−one社製Elisaマイクロプレート平底、参照番号655001)
−台形(Agar scientific社製、参照番号G3533)
【0108】
APTES−TMOSゾル−ゲルブロックは、Greiner Bio−one社製Elisaマクロプレート平底円筒形型(参照番号:655101)を使用して、実施例1と同様に調製したが、この型は、直径3.6mmおよび80μmから1000μmの様々な厚さ(出発ゾルの体積の関数として)のブロックを提供した。
【0109】
上記で参照された他の型のそれぞれに対して、および実施例1で用いられた材料等の場合において、最終的な(すなわち乾燥後の)ゾル−ゲルブロックは、型の形状を維持するが、その体積は、開始時の体積の約1/8である。乾燥ステップ中に残留溶媒が排除されるため、3次元において2に等しい収縮率がある。
【0110】
実施例3
プローブ分子を組み込んだAPTES−TMOSゾル−ゲルブロックの調製
【0111】
様々なプローブ分子:4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(TCI社製、参照番号A5350);ブロモフェノールブルー(Sigma−Aldrich社製、参照番号114391);メチルレッド(Sigma−Aldrich社製、参照番号250198);ヘリアンチン(Sigma−Aldrich社製、参照番号114510);コンゴーレッド(Aldrich社製、参照番号860956);ブロモクレゾールグリーン(Sigma−Aldrich社製、参照番号114359)およびブロモクレゾールパープル(Sigma−Aldrich社製、参照番号114375)を組み込んだAPTES−TMOSゾル−ゲルブロックを調製した。
【0112】
4−アミノ−3−ペンテン−2−オンの組み込みは、以下に記載の3つの異なるプロセスに従って行った。
【0113】
−「ワンポット」ドーピング:このプロセスは実施例1と同様に行うが、メタノールをメタノール+4−アミノ−3−ペンテン−2−オンに置き換える。様々な濃度(メタノール4.8mL中4−アミノ−3−ペンテン−2−オン100mg、300mg、500mgおよび750mg)を使用した。プロトコルの残りは、実施例1と全く同様に行うが、ただしこの場合、ゾル−ゲルブロックの乾燥は25℃で行う。
【0114】
−「液体ポストドーピング」:実施例2において得られるゾル−ゲルブロック等のゾル−ゲルブロックを、濃度2×10−3mol/Lの4−アミノ−3−ペンテン−2−オン水溶液中に2時間浸漬し、次いで不活性ガス下で乾燥させる。
【0115】
−「気体ポストドーピング」:実施例2において得られるゾル−ゲルブロック等のゾル−ゲルブロックを、粉末4−アミノ−3−ペンテン−2−オンの存在下、133.3Pa(1トル)の減圧下のチャンバ内に設置する。チャンバを40℃で15時間加熱し、この間、4−アミノ−3−ペンテン−2−オンが昇華して、ゾル−ゲルブロック内、より具体的にはゾル−ゲルブロックの細孔内に浸透する。暴露の最後に、乾燥窒素をチャンバ内に導入し、再び大気圧を確立してドープされたゾル−ゲルブロックを回収する。
【0116】
前述の他のプローブ分子(ブロモフェノールブルー;メチルレッド;ヘリアンチン;コンゴーレッド;ブロモクレゾールグリーンおよびブロモクレゾールパープル)の組み込みは、専ら「ワンポット」ドーピング法によって行った。
【0117】
プロセスは実施例1と同様に行うが、メタノールを、メタノールと前述の化合物(ブロモフェノールブルー;メチルレッド;ヘリアンチン;コンゴーレッド;ブロモクレゾールグリーンおよびブロモクレゾールパープル)の1種との混合物に置き換える。メタノール4.8mLに対して0.5mg;1mg;10mg;30mg;50mgおよび100mgから調製して、様々な濃度を使用した。プロトコルの残りは、実施例1と全く同様に行うが、ただしゾル−ゲルブロックの乾燥は、サーモスタット制御チャンバ内において25℃で行う。
【0118】
実施例4
ミリ流体システムの作製
【0119】
重ね合わせた2枚の銅平板から形成されたミリ流体システムを作製した。幅3.5mm、長さ36mmおよび深さ0.5mmのマクロ流体回路1を各銅板2に刻み、組立中に2つの刻まれた部品を重ね合わせる。ミリ流体回路1はL字型であり、そこの回路の幅が僅か1mmであるように、最も長い枝部に頸部3を含む(図2)。実施例2のゾル−ゲルブロックを取り付け、別のシステムにおいては、実施例3のゾル−ゲルブロックを4の頸部3の直前に取り付けた。回路の頸部により、ゾル−ゲルディスクの良好な保持が可能となる。分析光線の通過のために、板のゾル−ゲルブロックの中央位置に穴5が形成される。他の穴6は、板2を互いに固定するために形成された。
【0120】
また、2枚のPTFE板2、2枚の銅板2、および2枚のステンレススチール板2でミリ流体システムを作製した。
【0121】
実施例5
測定デバイスの作製
【0122】
実施例4の銅アセンブリを、2つの石英光学窓を備えたPTFE測定チャンバ(図3)内に挿入した。
【0123】
暴露用チャンバは、ミリ流体システムを含む。このシステムは、この目的で提供されるベース7および蓋8を用いて、暴露用チャンバ内に固定されて保持される。ミリ流体システムの保持に加え、蓋は、その中央部9に、ガス状混合物の通過のための穴を有する。
【0124】
センサの光学的分析のために、分析光線の光路は、ミリ流体システムに対し垂直であり、実施例2または実施例3、それぞれのゾル−ゲルブロックにより形成されたセンサの中央部を通過する。暴露用チャンバの光学的入口および出口に設置された、ファイバの標準コネクタ(SMA型)およびレンズ(焦点距離=10mm)により、暴露用チャンバの入口および出口において、光ファイバにより伝達された光線の平行化が可能となる。透過光線は暴露用チャンバから出て、分光光度計(Ocean Optics社製、QE6500)に伝達される。センサの吸収スペクトルを収集し、続いて試験生成物のストリームへの暴露が行われる。ストリームに対するミリ流体システムの暴露開始から、実施例2のブロックの場合は30秒から2分の範囲となり得る時間、および実施例3の様なブロックの場合は1分から120分の範囲となり得る時間、吸収スペクトルを毎秒収集し、データは後続の処理のためにデータを保存される。
【0125】
実施例6
標的化合物の捕捉および解放
【0126】
11.86ppmvのp−キシレンを含有する窒素のストリームに対してセンサを暴露した測定の例を、図5に示す。
【0127】
実施例2において得られたAPTES−TMOSゾル−ゲルブロックを、実施例4のミリ流体システム内に導入し、実施例4のシステムを、実施例5の測定デバイス内に設置した。
【0128】
窒素中に希釈された11.86ppmvのパラ−キシレンを含有するガス状混合物を調製した。
【0129】
このガス状混合物を、100mL/minの処理量で上記システム内に1分間送出した。次いで、周囲空気のストリームを、4L/minの処理量でミリ流体回路に5分間通過させた。
【0130】
p−キシレンを含有する窒素ストリームのミリ流体回路内への導入開始から、スペクトルを毎秒収集した。図4aは、235nmから285nmの範囲の波長にわたり測定された、捕捉されたp−キシレンの吸光度に対応するシグナルの増加を示す。図4bは、p−キシレンに対する暴露前に測定された値に対応する値に達するまでの、p−キシレンの吸光度の低下を示す。
【0131】
また、異なる濃度のガス(0ppmvから120ppmv)および異なる種類のガス(トルエン、ベンゼン、p−キシレン、メシチレン)に対して、ならびに様々な相対湿度条件下(0%から94%)で、同様の実験を行った。
【0132】
応用例1:湿度なしでの標的化合物の測定
以下のような吸光度測定により、p−キシレンの分析評価を行った。
【0133】
p−キシレンの分析評価の前に、実施例2のセンサにおけるp−キシレン吸収スペクトルのデータベースを作成した。
【0134】
窒素中に希釈された11.86ppmvのパラ−キシレンを含有するガスストリームを調製した。暴露処理量を100mL/minに設定した。
【0135】
測定値の記録は、以下の工程表に従って行った。
−実施例2のゾル−ゲルブロックを、実施例4のアセンブリ(アセンブリ自体は実施例5のデバイス内に設置されている)に挿入する。
−デバイスをパージし、ランプおよび分光光度計(Ocean Optics社製、QE65000)を10分間安定化させる。
−ゾル−ゲルブロックの吸収スペクトルを記録する。
−ガス入口弁を回してゾル−ゲルブロックをガスストリームに暴露させながら、1分間、毎秒1スペクトルを記録する。
−弁を回し、空気で5分間パージを行う。
【0136】
各測定サイクルは、平均6分間継続した。
【0137】
湿度レベルは0%であった。
【0138】
得られた結果を図5に報告する。
【0139】
センサの応答は完全に再現性があることが観察される。時間の関数としてのシグナル増加の測定(曲線の傾き)をすると、非常に小さい標準偏差で、サイクル間で反復可能な値を示す。
【0140】
応用例2:湿度の存在下での標的化合物の測定
応用例1と同様にプロセスを行うが、暴露ストリームの相対湿度レベルは80%であった。
【0141】
得られた結果を図6に報告する。
【0142】
この高湿度レベルの混合物でも、センサの応答は完全に再現性があることが観察される。時間の関数としてシグナル増加の測定(曲線の傾き)を行うと、6.3%という小さい標準偏差で、サイクル間で反復可能な値を示す。
【0143】
センサは、0%から94%で試験された相対湿度範囲において、再現性のある応答を有する。
【0144】
応用例3:湿度なしでの標的化合物の混合物の測定
応用例1と同様にプロセスを行ったが、19.9ppmvのベンゼン、7.4ppmvのメシチレンおよび18.3ppmvのp−キシレンを含有する混合物を使用した。
【0145】
得られた結果を図7に報告する。
【0146】
吸光度シグナルは、このデバイスにおける各種標的化合物の吸収スペクトルのデータバンクから解析される。
【0147】
標的化合物の混合物のスペクトルについてのスペクトル解析から抽出された標的化合物の含有量は、混合物中のそれらの含有量に非常に近いことが観察される。具体的には、解析は、19.6ppmvのベンゼン、17.3ppmvのメシチレンおよび17.2ppmvのp−キシレンを示している。
【0148】
このことから、センサは、標的化合物のそれぞれが別個に捕捉された場合と同じ効果をもって、すべての単環式炭化水素を独立して、または混合物として十分に捕捉すると結論付けられる。
【0149】
応用例4:4−アミノ−3−ペンテン−2−オンでドープされたマトリックスを用いた、蛍光測定による標的化合物の検出
以下のような蛍光測定により、ホルムアルデヒドの分析評価を行った。
【0150】
ホルムアルデヒドの分析評価の前に、「ワンポット」法(メタノール4.8mL中500mg)により4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(Fluoral−P(登録商標))でドープされた実施例3のセンサにおける蛍光スペクトルのデータベースを作成した。
【0151】
乾燥空気(FIDグレード、Messer社製、参照番号27880)中に希釈された10ppbvのホルムアルデヒドを含有するガスストリームを調製した。暴露処理量を200mL/minに設定した。
【0152】
測定値の記録は、以下の工程表に従って行った。
−実施例3のゾル−ゲルブロックを、実施例4のミリ流体システム内に導入し、このアセンブリを実施例5の測定デバイス内に挿入する。
−デバイスをパージし、励起ランプおよび分光光度計(Ocean Optics社製、参照番号QE65000)を15分間安定化させる。
−ゾル−ゲルブロックの蛍光スペクトルを記録する。
−入口弁を回してゾル−ゲルブロックをガスストリームに暴露させ、45分間、30秒毎に(事前励起を2秒間とする)蛍光スペクトルを記録する。
【0153】
結果を図7aおよび7bに報告する。
【0154】
応用例5:ブロモフェノールブルーでドープされたマトリックスを用いた、吸光度測定による標的化合物の検出
この実験は、「ワンポット」法(メタノール4.8mL中0.25mg)によりブロモフェノールブルーでドープされた実施例3のゾル−ゲルのブロックを、酢酸で飽和した雰囲気(標準温度および圧力条件下での飽和蒸気圧)に暴露する実験である。ブロモフェノールブルーは、マトリックス内に拡散した酢酸と反応し、吸収スペクトルが出発試薬の吸収スペクトルとは異なる生成物を形成する(図8aを参照)。この場合、反応中に形成された生成物の吸収(431nmにおける吸収バンド)に対応するシグナルの、暴露時間の関数として増加が測定され、および、試薬の吸収(592nmにおけるバンド)に対応するシグナルの、暴露時間の関数として減少が測定された。これらの2つの値は、酢酸の濃度に直接的に比例する。結果を図8aおよび8bに示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単環式芳香族化合物および他の化合物(アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトン)のナノ多孔質検出器、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
単環式芳香族化合物の大部分は、毒性大気汚染物質であり、ベンゼンについては発癌性でさえもある。それらは、化学産業における石油化学工業等のような環境(溶媒の使用)、工場付近の環境、専門的な環境(研究実験室、分析実験室等)、自動車燃料および周囲空気(燃料の気化、化石エネルギーの不完全燃焼、喫煙、家庭用メンテナンス製品または日曜大工製品の使用)において見られる。
【0003】
汚染された大気中の大気汚染の監視する問題のため、または、これらの化合物に直接暴露される作業員を調査する問題のために、一般にBTEXM(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン(オルト、メタおよびパラ)、トリメチル(1,2,3;1,2,4および1,3,5)−ベンゼン)として知られる、最も揮発性の芳香族生成物を検出および定量することが必要である。
【0004】
単環式芳香族炭化水素(MAH)の測定は、通常、周囲空気および屋内空気中で行われる。
【0005】
これらの測定は、サンプリング、次いで分析という2つの異なるステップで行われる。作業構内においては、作業員の個人暴露量、または固定作業点周辺での空気測定の2種類の測定が行われる。サンプリングは、能動的(空気を固定相で覆われたシリカのカートリッジに通じさせるポンピング)、または受動的(ポンピングを伴わず、拡散によって同じカートリッジに通じさせるもの)のいずれかであってよい。いずれの場合においても、分析は、後の段階で実験室において行われる。
【0006】
サンプリングに続いてインサイチュ分析を行うために、連続分析計が存在する。自律的に動作する(サンプリング、濃縮、分析)携帯型マイクロクロマトグラフを挙げることができる。しかしながら、それらはかさばる上に様々なガスの使用を必要とし、FID検出器(水素炎イオン化検出器)の場合は窒素、空気および水素、またはPID検出器(光イオン化検出器)の場合は窒素の使用を必要とするが、後者は300ppbv(体積比10億分の1)未満の濃度に限られる。
【0007】
直接的な測定検出器に対する要求を満たすために、良好な選択性を有するBTEXM用化学センサの開発を多くの研究者が目指している。
【0008】
これらの化合物が実質的に非極性(双極子モーメントが0デバイから0.3デバイの範囲)であることから、これらの化合物に対し特異的なプローブ分子を探し当てるのは困難である。したがって、BTEXMは近距離静電力、または分散力により他の分子と弱く相互作用し得るのみである。文献に報告されている検出原理は、本質的にこれらの非選択的な弱い相互作用およびサイズに基づいた選択性試験である。芳香族大員環、ナイルレッド等の微視的環境に対し感受性を持つフルオロフォア、ならびに半導体および混合酸化物に基づくセンサが、この目的において使用される。サイズに基づく選択性のために、空洞が標的汚染物質を受けるようなサイズであるかご型分子(例:パラシクロファン、カリックスアレーンまたはシクロデキストリン)が提案されているが、これらの系は選択的ではない。
【0009】
ケイ素アルコキシド(Si(OR)nR4−n(式中R=CH3である))を基礎とする有機−無機ハイブリッドポリマーを含む多孔質マトリックスをベースとしたベンゼン検出器もまた知られている。500μmから2mmの範囲となり得る厚さ、および3.5Åから9Åの半径を有するナノ細孔を有するマトリックスを使用することにより、Calvo−Munozら(「Chemical sensors of monocyclic aromatic hydrocarbons based on sol−gel materials:kinetics of trapping of the pollutants and sensitivity of the sensor」、Sensors and Actuators B、2002年、第87巻、173〜183頁、)は、ベンゼンおよびトルエンを実質的に不可逆的に捕捉し、それらの吸収スペクトルによってそれらを区別することが可能であることを示した。厚さ2mmのモノリス状ブロックを用いて、ベンゼンおよびトルエンに対して実験室において得られた感度は、20mL/minの処理量、2時間の暴露において10ppbvである。250mL/minというより高い暴露処理量の場合、14分の暴露時間で、60ppbvを測定することができる。これらのマトリックスにおけるベンゼンおよびトルエンの捕捉収率は、低濃度(10ppbv未満)および低処理量(20mL/min)では100%であるが、濃度が1ppmv(体積比100万分の1)を超える場合、および処理量が50mL/minを超える場合、大きく減少する(5%から6%)。すべての場合において、捕捉は実質的に不可逆的である。オルト−キシレンおよびメタ−キシレン、さらにトリメチルベンゼンは、細孔が極めて小さい(直径20Å未満)これらの材料中に拡散することができず、これにより、これらの材料は、ベンゼン、トルエンおよびパラ−キシレンのみの選択的検出器となる。捕捉および測定が単一ステップで行われるとしても、汚染物質の捕捉は不可逆的である。
【0010】
2001年以来、NTT社(日本電信電話株式会社)は、BTEMX捕捉に役立ち、制御された孔サイズを持つ、約2μmの直径を有するシリカ立方体の形態を伴った様々な多孔質吸着剤を研究してきた。例えば、Ueno Y.、A.Tate、およびO.Niwa「Benzene sensor and method for manufacturing same」、欧州特許出願公開第EP1712889A1号、2006年10月18日を参照されたい。汚染物質の熱脱着に役立つ加熱システム(後面上にエッチングされた電気抵抗)を備えたマイクロ流体フローチャンバに前述立方体を充填する。事前濃縮ステップの間、汚染物質を含有する空気が、汚染物質の含有量に従って数十分から1時間30分の間、フローチャンバを通してポンピングされる。これらの汚染物質は、多孔質材料中に部分的に捕捉される。次いで、チャンバは、汚染物質を脱着させるために200℃で10秒間加熱される。第2のポンプを介して光学チャンバ(2cm石英セルまたは12cm光ファイバ)内にガスを移動させ、UV分光光度計(相馬光学株式会社製、Fastevert S−2400)を用いてその吸光度によって検出する。選択性は、様々なBTEMXのスペクトルデータバンクからのスペクトル解析により得られる。組み合わされた捕捉および検出デバイスは、サイズ37.5×20×16cm、重さ6.7kg(コンピュータは含まれない)の通気筐体内に含められる。検出器の感度は、90分の暴露で1ppbv、または50分の暴露で50ppbvである。検出器は、相対湿度40%から80%の空気の相対湿度に対し感度がやや低い。
【0011】
NTT社による装置は、感度および速度の点で必要とされる基準を満たしているが、このデバイスはさらに2ステップ、すなわち事前濃縮および分析を必要とする。この場合、これらのマトリックス内に捕捉された汚染物質を脱離させ、それらを分析チャンバ内に移動させるために、急速な温度勾配を伴う加熱システムが必要である。
【0012】
市販の、または文献において提案されている分析計を考証すると、工程の可逆的性質を維持しながら、単一ステップで単環式芳香族炭化水素(MAH)の捕捉および測定を可能にするデバイスが必要とされているようである。MAHに対する暴露およびそれらの測定のために単一チャンバが使用されることが好ましい。また、加熱デバイスを必要とせずにガスを脱着させることができることが望ましい。
【0013】
センサ生成ステップは、可能な限り短時間、例えば24時間未満であるべきである。
【0014】
センサのサイズおよび製造コストは、可能な限り小さくすべきである。
【0015】
センサの材料は、汚染物質の急速な拡散を可能にし、良好なMAH捕捉収率を示すべきである。
【0016】
捕捉は、可逆的であるべきである。
【0017】
そのようなセンサを使用した検出システムは、良好なS/N比を維持しながら小型化が可能であるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
作業構内での測定では、検出システムが、例えば1日作業時間に対応する少なくとも8時間、良好な自律性を有すること、および、検出システムが堅牢であり、余りかさばらず、個人により容易に移動可能であり、したがって軽量であることもまた望ましい。
【0019】
ここで、鋭意研究の結果、本出願人は、満足し得る新規な多孔質材料の使用に基づくBTEMXの多価検出器およびそれらの一般的溶媒を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本特許出願の主題は、
―以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシラン、から選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)であって、有利には1種のみのポリアルコキシシラン、より具体的にはテトラメトキシシラン(TMOS)の単位、ならびに、
―以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシラン(複数可)であって、有利には3−アミノプロピルトリエトキシシランの単位から本質的に形成される多孔質ゾル−ゲル材料で、第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比は、1/0.01から1/1、好ましくは1/0.01から1/0.50、特に1/0.01から1/0.30、具体的には1/0.01から1/0.15、最も具体的には1/0.02から1/0.06であり;好ましくは第1のポリアルコキシシランがTMOSである、多孔質ゾル−ゲル材料である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランは、少なくとも1種の第1級アミン官能基を含むことに留意されたい。
【0022】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)は、特に、以下の化合物:メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびテトラメトキシシラン(TMOS)から選択される。
【0023】
多孔質ゾル−ゲル材料は、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)単位、および単一種の第2のポリアルコキシシラン単位から形成されることが好ましく、具体的には、単一種の第1のポリアルコキシシラン単位、および単一種の第2のポリアルコキシシラン単位から本質的に形成される。
【0024】
本出願の主題はまた、以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシランから選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)、有利には単一種のポリアルコキシシラン、より具体的にはテトラメトキシシラン(TMOS)、ならびに以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシラン(複数可)であって、有利には3−アミノプロピルトリエトキシシランの単位、から本質的に調製することができ、第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比は、1/0.01から1/1、好ましくは1/0.01から1/0.50、特に1/0.01から1/0.30、具体的には1/0.01から1/0.15、最も具体的には1/0.02から1/0.06であり;好ましくは第1のポリアルコキシシランはTMOSである、ゾル−ゲル材料である。
【0025】
1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)、および単一種の第2のポリアルコキシシランから、具体的には単一種の第1のポリアルコキシシランおよび単一種の第2のポリアルコキシシランから本質的に調製することができる多孔質ゾル−ゲル材料が好ましい。
【0026】
調製方法は本明細書において以下に概説される。
【0027】
本発明のゾル−ゲル材料は多孔質であり、10オングストロームから60オングストローム、特に20オングストロームから60オングストロームの範囲の細孔径分布、および200m2/gから800m2/gの比表面積を有する。好ましくは、比表面積は650±70m2/gである。
【0028】
材料の組成に含まれる第2のポリアルコキシシランのうち、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)が好ましい。
【0029】
特に好ましいゾル−ゲル材料は、テトラメトキシシラン(TMOS)および3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)から本質的に調製され、TMOS/APTESモル比は、1/0.01から1/0.30、好ましくは1/0.01から1/0.15、有利には1/0.01から1/0.10、特に1/0.02から1/0.06、最も具体的には1/0.03であり、したがって、一方および他方の単位をそのような割合で含む。
【0030】
ゾル−ゲル材料は、式M(OR)n(式中、Mは金属、特にケイ素であり、Rはアルキル基である)のアルコキシドを前駆体として使用し、それらを加水分解することからなるゾル−ゲル化方法によって得られる材料であることに留意されたい。水の存在下ではアルコキシ基(OR)の加水分解が生じ、一般に1ナノメートル未満のサイズの微小粒子を形成する。これらの粒子は凝集し、沈降せずに懸濁状態を保つ凝集体を形成し、ゾルを形成する。凝集体を増加させると、媒質の粘度が増加し、媒質がゲル化する。ゾル−ゲル材料は、ゲルを乾燥させ、形成されたポリマーネットワークから溶媒を除去することにより得られる。
【0031】
本発明のゾル−ゲル材料は単位を含み、2種から4種のポリアルコキシシラン、特に2種から3種、具体的には2種のポリアルコキシシランから本質的に調製される。最終材料は、50%から95%のポリアルコキシシラン誘導体を含有することができる。
【0032】
規則的な多孔質構造および/または特定の空洞形状の生成を可能にする構造化化合物(有機ポリマー、中性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等)は、それらがマトリックスの光学的および構造的特性を低下させることなく洗浄または焼成により除去可能であるならば、出発ゾルに添加することができる。
【0033】
本特許出願の主題はまた、本明細書で上記のプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料である。
【0034】
本明細書の以下の文章において明記されているかどうかに関わらず、用語「ゾル−ゲル材料」は、ゾル−ゲル材料そのもの、およびプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料の両方を指すが、ただし、ゾル−ゲル材料がそれらの一方であり、他方ではないことが文脈において示されている場合を除く。
【0035】
プローブ分子は反応できる化合物または汚染物質を捕捉、または検出、または捕捉および検出するが、プローブ分子はその様な化合物または汚染物質に適した分子であり、例えば、ホルムアルデヒドの検出には4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(Fluoral−P(登録商標))であってもよい。プローブ分子を組み込むことにより、本発明が標的とする化合物または汚染物質の範囲を広げることができる。
【0036】
好ましいプローブ分子は、アセトアルデヒド、ヘキサアルデヒドおよびクロトンアルデヒドの検出にはヒドララジン;アルデヒドおよびケトンの全体としての検出には2,4−ジニトロフェニルヒドラジン;ホルムアルデヒドの検出には4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(Fluoral−P(登録商標))、芳香族化合物またはアルカンには酸化ヨウ素(KIO4、I2O4およびI2O5)、カルボン酸の検出にはトリフェニルメタン誘導体(ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、マラカイトグリーン等)、またはアゾベンゼン誘導体(ヘリアンチン、コンゴーレッド、メチルレッド、メチルイエロー、アリザリンイエローR等)である。
【0037】
プローブ分子の重量パーセントは、材料の総重量に対して、有利には0.1%から40%、好ましくは10%から40%、最も具体的には10%から30%である。
【0038】
本特許出願の主題はまた上述のゾル−ゲルを調製するための方法であり、第1のポリアルコキシシラン(複数可)、好ましくはテトラメトキシシランが、このポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒と混合され、次いで第2のポリアルコキシシラン(複数可)が添加され、所望により触媒もしくは構造化剤、またはその両方が追加された水が添加され、撹拌が継続されてゾルを、次いでゲルを得ることを特徴とする。所望により、ゾルは型に入れられ、ゲルのブロックを得る。組み合わされた形態で、テトラメトキシシランおよび第2のポリアルコキシシラン分子は、「単位」と呼ばれる。
【0039】
有利には、第1のポリアルコキシシラン(複数可)が、−45℃から+30℃の範囲の温度でこのポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒と混合され、次いで第2のポリアルコキシシラン(複数可)が添加され、所望により触媒もしくは構造化剤、またはその両方、好ましくは構造化剤のみが追加された水が添加され、撹拌が継続されてゾルを、次いで期待されるゾル−ゲルを得、有利な態様によれば、ゾルは型に入れられて期待されるゾル−ゲルのブロックを得る。
【0040】
本特許出願において、不定冠詞「a」は、文脈により別の意味(1または「単一(single)」)が示されない限り、慣習的に総称複数(「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する)としてみなされるべきであることに留意されたい。したがって、例えば上記において、構造化剤(a structuring agent)が添加されることが述べられているときは、それは1種または複数の構造化剤を添加する場合であり、あるいは、プローブ分子(a probe molecule)が組み込まれることが述べられている時は、それは1種または複数のプローブ分子を添加する場合である。
【0041】
上述の方法の実践にあたって好ましい条件下では、第1のポリアルコキシシラン(複数可)、好ましくはテトラメトキシシラン(TMOS)は、このポリアルコキシシラン用の有機溶媒と混合されるが、この有機溶媒は、特にアセトン、ホルムアミド、メチルエチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはヘキサノールであり、好ましくはアルコール、特にC1〜C5、有利にはC1〜C3アルカノール、具体的にはメタノールである。
【0042】
混合は、−45℃から+30℃、好ましくは−25℃から−15℃の温度で、1分間から10分間、好ましくは2分間から3分間行われてもよい。有利には、−25℃から−15℃の温度で、2分間から3分間、混合が行われる。
【0043】
次いで、第2のポリアルコキシシラン(複数可)、最も具体的には3−(アミノプロピル)トリエトキシシランが、好ましくは第1のポリアルコキシシランより少ない、またはそれと同等の割合で添加される。撹拌は、一般に1分間から10分間、好ましくは2分間から3分間継続される。最後に、添加される水は超純水が好ましく、そこには必要に応じて触媒および/または構造化剤、好ましくは構造化剤のみが追加することができる。次いで、さらに10秒間から120秒間、より具体的にはさらに40秒間から60秒間、撹拌が継続される。
【0044】
上記合成ステップはすべて、低温で行われることが好ましい。
【0045】
ポリアルコキシシラン/溶媒/水のモル比は、有利には1/4/1から1/100/30、具体的には1/4/4、最も具体的には1/5/4である。
【0046】
期待されるゲルブロックを得るために、ポリスチレンまたはポリプロピレンが、型の構成材料として有利に使用される。
【0047】
上述の方法を行うための他の好ましい条件下では、ゾル−ゲルブロックはまた、残留溶媒を蒸発除去するように乾燥される。ゾル−ゲルマトリックスの乾燥は、有利には、制御された温度および乾燥不活性ガス雰囲気下(窒素、アルゴン、空気等)で進行する。ゾル−ゲルブロックの乾燥は、特にガス透過性カバー、より具体的には多孔質フィルムを型の表面に設置し、続いてこれらの型を25℃から60℃、より具体的にはいかなるプローブ分子も組み込んでいない材料の場合は45℃、またその逆の場合は25℃の温度のサーモスタット制御チャンバ内に設置することにより、行うことができる。乾燥雰囲気は、好ましくは、乾燥した純粋不活性ガス(Uグレード窒素、FIDグレード工業用空気等)である。完全乾燥の継続時間は、2時間から10日間の間で変化させてもよく、好ましい場合においては、約2×10−3cm3、または特に5×10−3cm3の体積のブロックに対して約2時間である。
【0048】
材料が1種または複数の界面活性剤を含有する場合、これらの界面活性剤は、ゲル化の後、水溶液または有機溶液中で洗浄またはそれに浸漬することにより、あるいは焼成により除去される。
【0049】
本出願の主題はまた、標的化合物と選択的に反応することができるプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法である。このプローブ分子(単数または複数)の組み込みは、いくつかの方法に従い行うことができる:
−ゾルの調製中にプローブ分子を直接添加する方法であり、好ましい方法である「ワンポット」法。この場合、プローブ分子は、シリカネットワーク中に直接収められる。ゾルの調製に役立つ前述の溶媒中または前述の水中で、プローブ分子の希釈または溶解を生じることができる。好ましい選択は、プローブ分子が最も溶解する、または最も混和する媒体中に、プローブ分子を希釈または溶解することである。
−気相または液相拡散法は、ゾル−ゲル材料が乾燥した後に、その材料の空孔にプローブ分子を含める方法である。この場合、プローブ分子は、材料の表面上に吸着するか、または非共有結合(水素結合またはイオン結合)によりこの表面に結合する。気相拡散法は、(不完全真空下またはガスの流通下で)プローブ分子をガス形態で材料と直接接触した状態に置く方法である。液相拡散法は、溶解または希釈されたプローブ分子を含有する溶液(水溶液または溶媒)中にゾル−ゲル材料を直接入れる方法である。
−ゾル−ゲル材料とプローブ分子との間の共有結合を形成する方法である、官能化またはポストドーピング法。これを行うには、プローブ分子との適合性を改善するためにゾル−ゲル材料の表面を官能化すること、または前記分子を官能化することが有利である。
【0050】
これまでで明らかであるように、2種以上のプローブ分子が組み込まれてもよい。
【0051】
本発明の主題であるゾル−ゲル材料は、非常に有利な特性および品質を有する。それらの材料は特に、あらゆる種類の一般的溶媒、ならびに単環式芳香族炭化水素、特にベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンおよびスチレンを捕捉する特筆すべき特性を備えている。
【0052】
ゾル−ゲル材料はまたUV透過性であり、これにより、捕捉された単環式芳香族炭化水素の吸光度を直接測定することが可能となり、これらの炭化水素は一般に、そのUV吸光度により区別される。
【0053】
本発明の主題であるゾル−ゲル材料は、特にガス形態の単環式芳香族炭化水素とともに使用することができる。
【0054】
より一般的には、本発明のゾル−ゲル材料は、UV−可視光範囲において、250M−1cm−1を超えるモル吸光係数で吸収する化合物を捕捉することができる。感度は、1ppmv以上の濃度で好適であり、またスチレン等の高い吸光係数を有するガスに対しては約10ppbvでも好適である。
【0055】
ゾル−ゲル材料により、直接吸光度測定をすることによってBTEMXを検出することができる。ある場合、例えばスチレンの場合等において、汚染物質の計測はまた、蛍光測定を用いて行うことができる。
【0056】
薄い厚さ、例えば100μmから800μm、有利には100μmから500μmで使用される場合、ゾル−ゲル材料により、MAHおよびそれらの通常の溶媒を可逆的に捕捉することが可能となる。
【0057】
有利には分光光度計の使用により、優れた性能および高感度な吸光度または蛍光測定による検出が可能となる。
【0058】
シリカ立方体の形態での多孔質吸収剤と比較すると、具体的には以下の利点を認めることができる:
−捕捉および計測が単一ステップで可能である。
−単一のチャンバで暴露および測定を行うことができる。
−センサに適合するミリ流体システムを使用することにより、加熱せずにガスの脱着を行うことができる。
【0059】
特に2つの異なる群のポリアルコキシシラン、すなわち上で定義されたような第1および第2のポリアルコキシシランの使用によって、ケイ素アルコキシド(Si(OR)nR4−n(式中R=CH3である))を基礎とした有機−無機ハイブリッドポリマーの多孔質マトリックスをベースとしたベンゼン吸収剤に対し、具体的には以下の利点を認めることができる:
−多孔質センサの合成および乾燥ステップが、2ヶ月から4時間に短縮される。
−センサのサイズおよびその製造コストが低減される。
−新たな多孔質材料により、標的化合物のより速い拡散が可能となる。
−ミリ流体システムにより、捕捉収率の増加が可能となる。
−捕捉は可逆的であり、標的化合物は加熱せずに脱着される。
−検出システムを小型化することができ、S/N比が改善される。
【0060】
さらに、本発明の主題であるゾル−ゲル材料により、300〜400回の測定の長期自律性が可能となり、これは1測定が15分毎に行われた場合、3日から4日に対応する。測定頻度が30分毎になった場合、この自律性は6日から8日に増加することができ、測定頻度が減少した場合は、さらにより長くなることができ;加えて、捕捉デバイスおよび/またはそれを使用した検出システムは堅牢であり、かさばらず、携帯性があり、軽量である。
【0061】
本発明の主題であるゾル−ゲル材料は、7に近い固有pHを有するという特性を有する。様々な上述のアミノポリアルコキシドの使用により、塩基(OH−)を添加する必要なく、材料の固有pHを変化させることができる。pH値は、7から8.2である。上述の好ましい場合において、pHは7.5±0.3に等しい。
【0062】
ゾル−ゲル材料がプローブ分子を組み込む場合、マトリックスは、プローブ分子と標的化合物との間の特定の反応を用いて、あらゆる種類の化合物を選択的に捕捉することができる。この場合、分析物(標的化合物)の捕捉は不可逆的である。次いで、プローブ分子との相互作用によって、または反応から得られた生成物を検出することによって、捕捉された標的化合物を定量的に測定することができる。この場合、分析時に媒体中に存在する他の標的化合物もまた捕捉され得るが、特定の反応がない場合は検出されない。他の場合において、プローブ分子と弱い結合を介して相互作用する酸性標的化合物が捕捉されるために、プローブ分子は僅かなpH変動に敏感である。この場合、反応は可逆的である。
【0063】
これらの特性は、以下の実験の項において例示される。これらの特性は、単環式芳香族炭化水素およびその他の標的化合物の捕捉、ならびに/またはそれらの検出における、上述のゾル−ゲル材料およびプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を使用することを正当化するものである。
【0064】
したがって、本特許出願の主題はまた、上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素またはその他の関心のある化合物を捕捉するための方法であって、単環式芳香族炭化水素またはその他の標的分子を含有かもしれないストリームが、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる方法である。
【0065】
単環式芳香族炭化水素を含有し得るストリームは、汚染した大気から生じ得る。このストリームは、10mL/minから1.1L/minの処理量で流通することができる。
【0066】
本特許出願の主題はまた、プローブ分子が、ゾル−ゲル材料のゾルの調製中に直接、またはこのプローブ分子の気相もしくは液相による前記材料中への拡散により、ゾル−ゲル材料に添加されることを特徴とする、上記プローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法である。
【0067】
本特許出願の主題はまた、プローブ分子(複数可)が1種または複数の上記プローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法であり、−45℃から+15℃の低温で、ゾル−ゲル材料のゾルの調製中に直接、またはこのプローブ分子(単数または複数)の気相もしくは液相による前記材料中の拡散により、ゾル−ゲル材料に添加されることを特徴とする。ゾル−ゲル材料はpH7に近い固有pHを示すが、例えば、第1のアルコキシシラン単位がTMOSであり、第2のポリアルコキシシラン単位がAPTESである場合、TMOSに対するAPTESの割合を増加させることにより、7から8.2のpH範囲内で変動し得る。
【0068】
単環式芳香族炭化水素の捕捉に加え、それらの検出および/または分析評価も可能である。この目的のために、これらの分子の捕捉もまた行うことができる。
【0069】
したがって、本特許出願の主題はまた、さらに、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料中に捕捉された、単環式芳香族炭化水素およびこの炭化水素用の一般的溶媒が検出される、上記方法である。
【0070】
検出は、特に光学的測定、質量測定または音響測定により行うことができる。
【0071】
検出が光学的測定により行われる場合、好ましくは、標的化合物の吸光度が最大となる波長が選択される。また、標的化合物の蛍光が最大となる波長を選択することもできる。
【0072】
任意選択でプローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料上に捕捉される単環式芳香族炭化水素を分析評価するために、特に、標的化合物(複数可)を含有するストリームに暴露されるときのモノリスの吸光度、蛍光、ルミネッセンス、質量または共振周波数変動の測定を行うことができる。得られた測定値は、標的化合物の較正したストリームから得られた測定値と比較して、暴露ストリーム中に含有する標的化合物の量および/または性質に関する情報を直接的に提供する。
【0073】
上記において明らかであるように、上記ゾル−ゲル材料がプローブ分子を組み込んでいる場合、あらゆる種類の標的化合物、例えば単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸、ケトンおよび塩素、特に単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトンを捕捉することができる。
【0074】
したがって、本特許出願の主題はまた、プローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトンから選択される標的化合物、特に単環式芳香族化合物、アルデヒド、アルカン、カルボン酸およびケトンを捕捉するための方法であって、前述の物質の中からの標的化合物を含有し得るストリームが、プローブ分子を組み込んだ上述の前記ゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる方法である。
【0075】
ストリームは、汚染された大気から生じ得るこれらの標的化合物を含有することができるガスに対応してもよい。ガスストリームは、10mL/minから1.1L/minの範囲の処理量で流通し得る。
【0076】
これらの標的化合物の捕捉に加え、また、これらの化合物を検出および/または分析評価することができる。この目的のために、これらの分子の捕捉もまた行うことができる。
【0077】
したがって、本特許出願の主題はまた、さらに、プローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料上に捕捉された標的化合物の検出を行う、上記方法である。
【0078】
検出は、特に、光学的測定、質量測定または音響測定により行うことができる。
【0079】
検出が光学的測定により行われる場合、プローブ分子、またはプローブ分子と標的化合物との間の相互作用もしくは反応により形成された生成物の吸光度、蛍光またはルミネッセンスが最大となる波長が選択されることが好ましい。
【0080】
プローブ分子を組み込んだ上記ゾル−ゲル材料上に捕捉された標的化合物を分析評価するために、特に、プローブ分子の吸光度、蛍光もしくはルミネッセンスの経時的変動、またはプローブ分子と標的汚染物質との間の反応生成物の吸光度、蛍光もしくはルミネッセンスの経時的変動を測定することができる。いずれの場合においても、その結果は、標的化合物で較正したストリームと同じ暴露条件下で得られた結果と比較することができる。
【0081】
本特許出願の主題はまた、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素または上記標的化合物を捕捉するためのシステムである。そのようなセンサは、一般的には再現性のある形状、例えば、平行六面体、円筒、立方体、台形等の形状の、150mm2以下、好ましくは100mm2以下の表面積を有し、2mm以下の厚さを有する上述のゾル−ゲル材料のブロックを含む。このセンサは、通常、
―上述のゾル−ゲル材料が挿入されるガス流用のミリ流体システムと、
―光学窓およびミリ流体システム用の開口(ガス入口および出口)を備える暴露用チャンバと
を本質的に備えるセルにおいて使用される。
【0082】
本明細書において、用語「ミリ流体システム」は、捕捉ステップのために、10mL/minから1.1L/min、好ましくは100mL/minの処理量でガスストリームを通過させるためのシステムを指す。
【0083】
本特許出願の主題はまた、任意選択でプローブ分子を組み込んだ上述のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素およびこの単環式芳香族炭化水素用の一般的な溶媒を検出するためのシステムである。そのような検出システムは一般的に:
―上記暴露用チャンバと、
―上記ミリ流体システムと、
―分析光を平行化および集束するための光学システムと、
―光を伝達するための光ファイバと、
―所望の処理量に適合する(マイクロ)ポンプと、
―分光光度計または別の検出デバイスと
を含む。
【0084】
検出システムは、特に、以下のように使用され得る。
【0085】
ゾル−ゲル材料のブロックを、ミリ流体システムに挿入する。このシステムを、暴露用チャンバ内に設置する。ガス状標的化合物の混合物を、短時間(15秒から2分)、ミリ流体システム内に流通させる。暴露時間中、本明細書の以下で説明されるように、センサの吸収スペクトルを毎秒収集する。光ファイバを使用して、UVランプ(重水素)から発生する分析光を伝達し、チャンバの入射窓に連続的に照射する。入射窓上に設置されたレンズ(焦点距離=10mm)およびSMAコネクタを使用して平行化された光線は、小さい表面積、例えば1mm2にわたりセンサを照射する。チャンバの出口窓上に設置された第2のレンズおよび第2のSMAコネクタにより、同軸内で透過光を収集する。光ファイバを使用して、任意選択で小型である分光光度計に透過光線を伝達する。センサの吸収スペクトルを毎秒収集するが、各取得は8msecから1000msec(好ましくは20msec)継続する。
【0086】
取得が完了したら、捕捉された標的化合物を放出し、センサをパージすることができる。この目的のために、センサを約5分間、4L/minの空気ストリームに暴露することができる。
【0087】
各標的化合物に暴露されたセンサの吸光度シグナルは、標的化合物の広い濃度範囲、およびガス状混合物の広い相対湿度範囲にわたり取得される。これらのデータから、その濃度およびガス状混合物の湿度の関数として、各標的化合物に対する較正曲線が確立される。これらの較正曲線は、ガス形態の標的化合物の未知混合物に暴露されたセンサのスペクトルのスペクトル解析に役立つデータバンク内に保存される。
【0088】
吸光度シグナルは、前述のようにマトリックスにおいて事前に決定された、標的化合物のそれぞれの吸収スペクトルについてのデータバンクを使用して解析される。
【0089】
放出ステップのために、ガスストリームの処理量は、2L/minから5L/minの範囲にでき、好ましくは4L/minに設定される。
【0090】
標的化合物と反応することができるプローブ分子がドープされたマトリックスの場合、プローブ分子と標的化合物との間の反応は、大部分の場合において不可逆的である。パージステップは放出を達成するためではなく、プローブ分子と反応しなかったガス状混合物中に存在する化合物の流体回路をパージするために行われる。この場合、パージストリームの処理量は、有利には、10mL/minから1.1L/minの値に設定される。
【0091】
トリフェニルメタンまたはアゾベンゼンから得られる1種または複数のプローブ分子を含有するゾル−ゲル材料の場合、パージは、有利には、最初の光学的測定条件への復帰が観察されるまで、ストリームまたはゾル−ゲル材料のpH条件を変更することにより行われる。
【0092】
さらに、流通ポンプを用いて十分に長い時間(数秒から1時間)流体回路が連続的に(またはループ状に)機能する場合(その間、標的化合物はマトリックスに進入しプローブ分子と反応する)、光学的測定は、この時間中、好ましくは定期的な間隔(1秒から300秒)で行われる(吸収または蛍光スペクトルの収集)。
【0093】
以下の実施例は本特許出願を例示し、本発明は、添付の図面を参照してより明確に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】全体としての測定デバイス(測定セル、分光光度計、重水素放電管、ポンプ)の概略図である。
【図2】ミリ流体システムを構成する銅板の1つの斜視図である。
【図3】暴露用チャンバの断面図である。
【図4】波長の関数としての、p−キシレンに対する吸光度の結果であり、センサは11.86ppmvのp−キシレンを含有する窒素のストリームに暴露され、図4aは、捕捉中における標的化合物の吸収スペクトルの変化を示し、図4bは、放出(物理的吸着による標的化合物の単純な捕捉の場合におけるマトリックスのパージ)中のマトリックスの吸収スペクトルについての変化を示す。
【図5】ガス状混合物に対するゾル−ゲルブロックの一連の暴露、続くゾル−ゲルブロックのパージを示す図である。各「パルス」は、標的化合物に対する1分間の暴露にわたる吸光度の線形増加、続くパージ中における5分間の吸光度の指数関数的減少に対応する。吸光度の増大シグナルの傾き値は、暴露ストリーム中における標的化合物の濃度についての特徴を示している。
【図6】標的化合物(ベンゼン、パラ−キシレンおよびメシチレン)の混合物に対する暴露中に記録されたスペクトルである。スペクトルは、同じ条件下で個々に測定された標的化合物のスペクトルの合計に対応する。
【図7a】プローブ分子(この場合Fluoral−P(登録商標))でドープしたゾル−ゲルブロックの、10ppbvのホルムアルデヒドを含有する200mL/minのガスストリームに対する暴露中に記録された蛍光スペクトルである。経時的なスペクトルの変動は、Fluoral−P(登録商標)とホルムアルデヒドとの間の反応から得られる生成物の蛍光の増加に対応する(励起波長=405nm−励起時間=2秒)。
【図7b】Fluoral−P(登録商標)でドープされたマトリックスの、10ppbvのホルムアルデヒドを含有する200mL/minのストリームに対する暴露中の、一方では蛍光領域(470nmから750nm)の変化(実線曲線)を、他方では520nmでの最大蛍光の変化(点線曲線)を示すグラフである。これら2つの曲線の原点における傾きは、暴露ストリーム中のホルムアルデヒド濃度の特徴を示している。
【図8a】プローブ分子(この場合はブロモフェノールブルー)でドープされたゾル−ゲルブロックの、飽和蒸気圧の酢酸を含有する雰囲気に対する暴露中に測定された吸収スペクトルを示す。スペクトルの変動は、一方は試薬の消失(ブロモフェノールブルー、592nmでの吸収帯の強度が減少)に、他方は反応生成物の形成(431nmでの吸収バンドの出現)に対応する。
【図8b】ブロモフェノールブルーでドープされたブロックの、飽和蒸気圧の酢酸を含有する雰囲気に対する暴露中での光学密度の変化を示し、一方は試薬であるブロモフェノールブルーの消失(実線曲線)に、他方は反応生成物(プロトン化ブロモチモールブルー)の出現に対応する。これら2つの曲線の原点における傾きは、暴露ストリーム中の酢酸濃度の特徴を示している。この反応は、モノリスの洗浄および酢酸の脱着により、可逆的である。
【実施例】
【0095】
実施例1
APTES−TMOSゾル−ゲルブロックの調製
【0096】
段階1:
96ウェルポリスチレンマルチウェルプレート(Greiner Bio−one社製Elisaマイクロプレート平底、参照番号655001)を、炉内で50℃、24時間加熱しながら、この間、炉を3回脱ガスする。このステップは、ポリスチレン型を脱ガスし、ゲルの乾燥ステップの間にゾル−ゲル材料に後に捕捉され得るスチレンモノマーの放出を最小化する。
【0097】
テトラメトキシシラン(TMOS、Fluka社製、参照番号87680)3.4mlおよびメタノール(Fluka社製、参照番号65540)4.8mLを、−25℃の浴内に設置されたPyrexビーカー内で、磁気撹拌器を使用して2分間混合する。次いで、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES、Fluka社製、参照番号09324)0.2mLを、マイクロピペットを使用して混合物に添加する。さらに2分間撹拌した後、Millipore社製超純水1.7mLを添加する。混合物をさらに30秒間撹拌する。ゾルが得られるが、これを得られた状態のまま以下のステップにおいて使用する。
【0098】
段階2:
ゾルを−25±5℃に維持し、可能な限り迅速に作業しながら、マイクロピペットを使用して、参照Greiner Bio−one社製Elisaマイクロプレート平底プレート(655101)のそれぞれのウェルにゾル38μLを入れる。
【0099】
段階3:
ゾルがゲル化したら、マイクロウェルプレートを、ガス透過性フィルム(ガス透過性接着シール、ABGene社製、参照番号AB−0718)で覆う。プレートを炉内で40℃、2時間静置する。次いでプレートを炉から取り出し、マトリックスを型から剥がし、密封ポリプロピレン皿の中に入れる。乾燥を完了するために、皿を炉に戻し40℃で4時間静置する。
【0100】
乾燥後、モノリス状ディスク形態のゾル−ゲルブロックが得られる。得られたゾル−ゲルブロックの平均直径は3.6mmであり、その厚さは約200±25μmである。その平均比表面積は、750m2/gである。これは、液体窒素温度での窒素に対する吸着および脱着等温線を確立することにより、および文献中に提案されている様々な分析モデル、例えばBET(Brunauer、EmmetおよびTaylor)モデルを使用して等温線を分析することにより評価した。
【0101】
その平均細孔容積は、0.67cm3/gである。これは、液体窒素温度での窒素に対する吸着および脱着等温線を確立することにより、およびDFT(密度汎関数理論)分析モデルを使用して等温線を分析することにより評価した。
【0102】
細孔径分布は、吸着質の分子間、および該分子と細孔表面との間の相互作用ポテンシャルを計算する方法に基づき、DFT(密度汎関数理論)法により評価し、これにより、相互作用ポテンシャル等の微視的データから吸着等温線等の巨視的データを再構築することが可能となる。細孔形状モデル(「球状および円筒状の混合」)を計算に使用した。
【0103】
ミクロ孔は、20Å以下の直径を有する細孔として定義される。
【0104】
メソ孔は、20Å≦d≦500Åの直径を有する細孔として定義される。
【0105】
実施例1の材料に対して得られた結果は、以下の通りである。
−ミクロ孔/メソ孔分布(表面)=35/65%
−ミクロ孔/メソ孔分布(バルク内)=15/85%
【0106】
実施例2
APTES−TMOSゾル−ゲルブロックの調製
【0107】
様々な形態およびサイズのマトリックスを調製した。
−平行六面体(Star−Pack社製、参照番号47304および参照番号271512および参照番号303−Evergreen社製、参照番号201−3111−010)
−円筒(Spex industries Inc.製、参照番号3111−Greiner Bio−one社製Elisaマイクロプレート平底、参照番号655001)
−台形(Agar scientific社製、参照番号G3533)
【0108】
APTES−TMOSゾル−ゲルブロックは、Greiner Bio−one社製Elisaマクロプレート平底円筒形型(参照番号:655101)を使用して、実施例1と同様に調製したが、この型は、直径3.6mmおよび80μmから1000μmの様々な厚さ(出発ゾルの体積の関数として)のブロックを提供した。
【0109】
上記で参照された他の型のそれぞれに対して、および実施例1で用いられた材料等の場合において、最終的な(すなわち乾燥後の)ゾル−ゲルブロックは、型の形状を維持するが、その体積は、開始時の体積の約1/8である。乾燥ステップ中に残留溶媒が排除されるため、3次元において2に等しい収縮率がある。
【0110】
実施例3
プローブ分子を組み込んだAPTES−TMOSゾル−ゲルブロックの調製
【0111】
様々なプローブ分子:4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(TCI社製、参照番号A5350);ブロモフェノールブルー(Sigma−Aldrich社製、参照番号114391);メチルレッド(Sigma−Aldrich社製、参照番号250198);ヘリアンチン(Sigma−Aldrich社製、参照番号114510);コンゴーレッド(Aldrich社製、参照番号860956);ブロモクレゾールグリーン(Sigma−Aldrich社製、参照番号114359)およびブロモクレゾールパープル(Sigma−Aldrich社製、参照番号114375)を組み込んだAPTES−TMOSゾル−ゲルブロックを調製した。
【0112】
4−アミノ−3−ペンテン−2−オンの組み込みは、以下に記載の3つの異なるプロセスに従って行った。
【0113】
−「ワンポット」ドーピング:このプロセスは実施例1と同様に行うが、メタノールをメタノール+4−アミノ−3−ペンテン−2−オンに置き換える。様々な濃度(メタノール4.8mL中4−アミノ−3−ペンテン−2−オン100mg、300mg、500mgおよび750mg)を使用した。プロトコルの残りは、実施例1と全く同様に行うが、ただしこの場合、ゾル−ゲルブロックの乾燥は25℃で行う。
【0114】
−「液体ポストドーピング」:実施例2において得られるゾル−ゲルブロック等のゾル−ゲルブロックを、濃度2×10−3mol/Lの4−アミノ−3−ペンテン−2−オン水溶液中に2時間浸漬し、次いで不活性ガス下で乾燥させる。
【0115】
−「気体ポストドーピング」:実施例2において得られるゾル−ゲルブロック等のゾル−ゲルブロックを、粉末4−アミノ−3−ペンテン−2−オンの存在下、133.3Pa(1トル)の減圧下のチャンバ内に設置する。チャンバを40℃で15時間加熱し、この間、4−アミノ−3−ペンテン−2−オンが昇華して、ゾル−ゲルブロック内、より具体的にはゾル−ゲルブロックの細孔内に浸透する。暴露の最後に、乾燥窒素をチャンバ内に導入し、再び大気圧を確立してドープされたゾル−ゲルブロックを回収する。
【0116】
前述の他のプローブ分子(ブロモフェノールブルー;メチルレッド;ヘリアンチン;コンゴーレッド;ブロモクレゾールグリーンおよびブロモクレゾールパープル)の組み込みは、専ら「ワンポット」ドーピング法によって行った。
【0117】
プロセスは実施例1と同様に行うが、メタノールを、メタノールと前述の化合物(ブロモフェノールブルー;メチルレッド;ヘリアンチン;コンゴーレッド;ブロモクレゾールグリーンおよびブロモクレゾールパープル)の1種との混合物に置き換える。メタノール4.8mLに対して0.5mg;1mg;10mg;30mg;50mgおよび100mgから調製して、様々な濃度を使用した。プロトコルの残りは、実施例1と全く同様に行うが、ただしゾル−ゲルブロックの乾燥は、サーモスタット制御チャンバ内において25℃で行う。
【0118】
実施例4
ミリ流体システムの作製
【0119】
重ね合わせた2枚の銅平板から形成されたミリ流体システムを作製した。幅3.5mm、長さ36mmおよび深さ0.5mmのマクロ流体回路1を各銅板2に刻み、組立中に2つの刻まれた部品を重ね合わせる。ミリ流体回路1はL字型であり、そこの回路の幅が僅か1mmであるように、最も長い枝部に頸部3を含む(図2)。実施例2のゾル−ゲルブロックを取り付け、別のシステムにおいては、実施例3のゾル−ゲルブロックを4の頸部3の直前に取り付けた。回路の頸部により、ゾル−ゲルディスクの良好な保持が可能となる。分析光線の通過のために、板のゾル−ゲルブロックの中央位置に穴5が形成される。他の穴6は、板2を互いに固定するために形成された。
【0120】
また、2枚のPTFE板2、2枚の銅板2、および2枚のステンレススチール板2でミリ流体システムを作製した。
【0121】
実施例5
測定デバイスの作製
【0122】
実施例4の銅アセンブリを、2つの石英光学窓を備えたPTFE測定チャンバ(図3)内に挿入した。
【0123】
暴露用チャンバは、ミリ流体システムを含む。このシステムは、この目的で提供されるベース7および蓋8を用いて、暴露用チャンバ内に固定されて保持される。ミリ流体システムの保持に加え、蓋は、その中央部9に、ガス状混合物の通過のための穴を有する。
【0124】
センサの光学的分析のために、分析光線の光路は、ミリ流体システムに対し垂直であり、実施例2または実施例3、それぞれのゾル−ゲルブロックにより形成されたセンサの中央部を通過する。暴露用チャンバの光学的入口および出口に設置された、ファイバの標準コネクタ(SMA型)およびレンズ(焦点距離=10mm)により、暴露用チャンバの入口および出口において、光ファイバにより伝達された光線の平行化が可能となる。透過光線は暴露用チャンバから出て、分光光度計(Ocean Optics社製、QE6500)に伝達される。センサの吸収スペクトルを収集し、続いて試験生成物のストリームへの暴露が行われる。ストリームに対するミリ流体システムの暴露開始から、実施例2のブロックの場合は30秒から2分の範囲となり得る時間、および実施例3の様なブロックの場合は1分から120分の範囲となり得る時間、吸収スペクトルを毎秒収集し、データは後続の処理のためにデータを保存される。
【0125】
実施例6
標的化合物の捕捉および解放
【0126】
11.86ppmvのp−キシレンを含有する窒素のストリームに対してセンサを暴露した測定の例を、図5に示す。
【0127】
実施例2において得られたAPTES−TMOSゾル−ゲルブロックを、実施例4のミリ流体システム内に導入し、実施例4のシステムを、実施例5の測定デバイス内に設置した。
【0128】
窒素中に希釈された11.86ppmvのパラ−キシレンを含有するガス状混合物を調製した。
【0129】
このガス状混合物を、100mL/minの処理量で上記システム内に1分間送出した。次いで、周囲空気のストリームを、4L/minの処理量でミリ流体回路に5分間通過させた。
【0130】
p−キシレンを含有する窒素ストリームのミリ流体回路内への導入開始から、スペクトルを毎秒収集した。図4aは、235nmから285nmの範囲の波長にわたり測定された、捕捉されたp−キシレンの吸光度に対応するシグナルの増加を示す。図4bは、p−キシレンに対する暴露前に測定された値に対応する値に達するまでの、p−キシレンの吸光度の低下を示す。
【0131】
また、異なる濃度のガス(0ppmvから120ppmv)および異なる種類のガス(トルエン、ベンゼン、p−キシレン、メシチレン)に対して、ならびに様々な相対湿度条件下(0%から94%)で、同様の実験を行った。
【0132】
応用例1:湿度なしでの標的化合物の測定
以下のような吸光度測定により、p−キシレンの分析評価を行った。
【0133】
p−キシレンの分析評価の前に、実施例2のセンサにおけるp−キシレン吸収スペクトルのデータベースを作成した。
【0134】
窒素中に希釈された11.86ppmvのパラ−キシレンを含有するガスストリームを調製した。暴露処理量を100mL/minに設定した。
【0135】
測定値の記録は、以下の工程表に従って行った。
−実施例2のゾル−ゲルブロックを、実施例4のアセンブリ(アセンブリ自体は実施例5のデバイス内に設置されている)に挿入する。
−デバイスをパージし、ランプおよび分光光度計(Ocean Optics社製、QE65000)を10分間安定化させる。
−ゾル−ゲルブロックの吸収スペクトルを記録する。
−ガス入口弁を回してゾル−ゲルブロックをガスストリームに暴露させながら、1分間、毎秒1スペクトルを記録する。
−弁を回し、空気で5分間パージを行う。
【0136】
各測定サイクルは、平均6分間継続した。
【0137】
湿度レベルは0%であった。
【0138】
得られた結果を図5に報告する。
【0139】
センサの応答は完全に再現性があることが観察される。時間の関数としてのシグナル増加の測定(曲線の傾き)をすると、非常に小さい標準偏差で、サイクル間で反復可能な値を示す。
【0140】
応用例2:湿度の存在下での標的化合物の測定
応用例1と同様にプロセスを行うが、暴露ストリームの相対湿度レベルは80%であった。
【0141】
得られた結果を図6に報告する。
【0142】
この高湿度レベルの混合物でも、センサの応答は完全に再現性があることが観察される。時間の関数としてシグナル増加の測定(曲線の傾き)を行うと、6.3%という小さい標準偏差で、サイクル間で反復可能な値を示す。
【0143】
センサは、0%から94%で試験された相対湿度範囲において、再現性のある応答を有する。
【0144】
応用例3:湿度なしでの標的化合物の混合物の測定
応用例1と同様にプロセスを行ったが、19.9ppmvのベンゼン、7.4ppmvのメシチレンおよび18.3ppmvのp−キシレンを含有する混合物を使用した。
【0145】
得られた結果を図7に報告する。
【0146】
吸光度シグナルは、このデバイスにおける各種標的化合物の吸収スペクトルのデータバンクから解析される。
【0147】
標的化合物の混合物のスペクトルについてのスペクトル解析から抽出された標的化合物の含有量は、混合物中のそれらの含有量に非常に近いことが観察される。具体的には、解析は、19.6ppmvのベンゼン、17.3ppmvのメシチレンおよび17.2ppmvのp−キシレンを示している。
【0148】
このことから、センサは、標的化合物のそれぞれが別個に捕捉された場合と同じ効果をもって、すべての単環式炭化水素を独立して、または混合物として十分に捕捉すると結論付けられる。
【0149】
応用例4:4−アミノ−3−ペンテン−2−オンでドープされたマトリックスを用いた、蛍光測定による標的化合物の検出
以下のような蛍光測定により、ホルムアルデヒドの分析評価を行った。
【0150】
ホルムアルデヒドの分析評価の前に、「ワンポット」法(メタノール4.8mL中500mg)により4−アミノ−3−ペンテン−2−オン(Fluoral−P(登録商標))でドープされた実施例3のセンサにおける蛍光スペクトルのデータベースを作成した。
【0151】
乾燥空気(FIDグレード、Messer社製、参照番号27880)中に希釈された10ppbvのホルムアルデヒドを含有するガスストリームを調製した。暴露処理量を200mL/minに設定した。
【0152】
測定値の記録は、以下の工程表に従って行った。
−実施例3のゾル−ゲルブロックを、実施例4のミリ流体システム内に導入し、このアセンブリを実施例5の測定デバイス内に挿入する。
−デバイスをパージし、励起ランプおよび分光光度計(Ocean Optics社製、参照番号QE65000)を15分間安定化させる。
−ゾル−ゲルブロックの蛍光スペクトルを記録する。
−入口弁を回してゾル−ゲルブロックをガスストリームに暴露させ、45分間、30秒毎に(事前励起を2秒間とする)蛍光スペクトルを記録する。
【0153】
結果を図7aおよび7bに報告する。
【0154】
応用例5:ブロモフェノールブルーでドープされたマトリックスを用いた、吸光度測定による標的化合物の検出
この実験は、「ワンポット」法(メタノール4.8mL中0.25mg)によりブロモフェノールブルーでドープされた実施例3のゾル−ゲルのブロックを、酢酸で飽和した雰囲気(標準温度および圧力条件下での飽和蒸気圧)に暴露する実験である。ブロモフェノールブルーは、マトリックス内に拡散した酢酸と反応し、吸収スペクトルが出発試薬の吸収スペクトルとは異なる生成物を形成する(図8aを参照)。この場合、反応中に形成された生成物の吸収(431nmにおける吸収バンド)に対応するシグナルの、暴露時間の関数として増加が測定され、および、試薬の吸収(592nmにおけるバンド)に対応するシグナルの、暴露時間の関数として減少が測定された。これらの2つの値は、酢酸の濃度に直接的に比例する。結果を図8aおよび8bに示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
―以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシラン(TMOS)から選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)の単位、ならびに
―以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシラン(複数可)の単位から本質的に形成され、第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比は、1/0.01から1/1である、多孔質ゾル−ゲル材料。
【請求項2】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比が、1/0.01から1/0.30であることを特徴とする、請求項1に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項3】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)が、以下の化合物:メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびテトラメトキシシラン(TMOS)から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項4】
−単一の第1のポリアルコキシシラン、または
−単一の第1のポリアルコキシシランおよび単一の第2のポリアルコキシシラン
を含むことを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項5】
第2のポリアルコキシシランが、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項6】
プローブ分子を含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項7】
プローブ分子が、ヒドララジン、4−アミノ−3−ペンテン−2−オン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、酸化ヨウ素、トリフェニルメタン誘導体、アゾベンゼン誘導体およびハロゲン化アルキルから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項8】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)が、このポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒と−45℃から+30℃の温度で混合され、次いで第2のポリアルコキシシランが添加され、所望により触媒もしくは構造化剤、またはその両方が追加された水が添加され、撹拌が継続されてゾルを、次いで期待されるゾル−ゲルを得、このゾル−ゲルは、所望により、ゾル形態で型に入れられて期待されるゾル−ゲルブロックを得ることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料を調製するための方法。
【請求項9】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)と、このポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒との混合が、1分から10分間行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリアルコキシシラン/溶媒/水のモル比が、1/4/1から1/100/30であることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
プローブ分子が、ゾル−ゲル材料のゾルの調製中に直接、またはこのプローブ分子の気相もしくは液相による材料中への拡散により添加されることを特徴とする、請求項6または7に記載のプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法。
【請求項12】
単環式芳香族炭化水素およびその他の汚染物質の捕捉、またはその検出における、請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料の使用。
【請求項13】
請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素を捕捉するための方法であって、単環式芳香族炭化水素を含有し得るストリームが、任意選択でプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる、方法。
【請求項14】
任意選択でプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料上に、捕捉された単環式芳香族炭化水素の検出もまた行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プローブ分子を組み込んだ請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、アルデヒド、芳香族化合物、アルカン、カルボン酸、ケトンおよび塩素から選択される汚染物質を捕捉するための方法であって、上述の物質の中からの汚染物質を含有し得るストリームが、プローブ分子を組み込んだ前記ゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる、方法。
【請求項16】
任意選択でプローブ分子を組み込んだ請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料をセンサとして使用した、単環式芳香族炭化水素または汚染物質を捕捉または検出するためのシステム。
【請求項1】
―以下の化合物:(クロロメチル)トリエトキシシラン;1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン;エチルトリメトキシシラン;トリエトキシ(エチル)シラン;トリエトキシメチルシラン;トリエトキシ(ビニル)シラン;トリメトキシメチルシラン;トリメトキシ(ビニル)シラン;テトラエトキシシランまたはテトラメトキシシラン(TMOS)から選択される、1種または複数の第1のポリアルコキシシラン(複数可)の単位、ならびに
―以下の化合物:(N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)および3−アミノプロピルトリメトキシシランから選択される、1種または複数の第2のポリアルコキシシラン(複数可)の単位から本質的に形成され、第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比は、1/0.01から1/1である、多孔質ゾル−ゲル材料。
【請求項2】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)/第2のポリアルコキシシラン(複数可)のモル比が、1/0.01から1/0.30であることを特徴とする、請求項1に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項3】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)が、以下の化合物:メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびテトラメトキシシラン(TMOS)から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項4】
−単一の第1のポリアルコキシシラン、または
−単一の第1のポリアルコキシシランおよび単一の第2のポリアルコキシシラン
を含むことを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項5】
第2のポリアルコキシシランが、3−アミノプロピルトリエトキシシランであることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項6】
プローブ分子を含むことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項7】
プローブ分子が、ヒドララジン、4−アミノ−3−ペンテン−2−オン、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン、酸化ヨウ素、トリフェニルメタン誘導体、アゾベンゼン誘導体およびハロゲン化アルキルから選択されることを特徴とする、請求項6に記載のゾル−ゲル材料。
【請求項8】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)が、このポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒と−45℃から+30℃の温度で混合され、次いで第2のポリアルコキシシランが添加され、所望により触媒もしくは構造化剤、またはその両方が追加された水が添加され、撹拌が継続されてゾルを、次いで期待されるゾル−ゲルを得、このゾル−ゲルは、所望により、ゾル形態で型に入れられて期待されるゾル−ゲルブロックを得ることを特徴とする、請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料を調製するための方法。
【請求項9】
第1のポリアルコキシシラン(複数可)と、このポリアルコキシシラン用の水混和性有機溶媒との混合が、1分から10分間行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリアルコキシシラン/溶媒/水のモル比が、1/4/1から1/100/30であることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
プローブ分子が、ゾル−ゲル材料のゾルの調製中に直接、またはこのプローブ分子の気相もしくは液相による材料中への拡散により添加されることを特徴とする、請求項6または7に記載のプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料を調製するための方法。
【請求項12】
単環式芳香族炭化水素およびその他の汚染物質の捕捉、またはその検出における、請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料の使用。
【請求項13】
請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、単環式芳香族炭化水素を捕捉するための方法であって、単環式芳香族炭化水素を含有し得るストリームが、任意選択でプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる、方法。
【請求項14】
任意選択でプローブ分子を組み込んだゾル−ゲル材料上に、捕捉された単環式芳香族炭化水素の検出もまた行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
プローブ分子を組み込んだ請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料をセンサとして使用して、アルデヒド、芳香族化合物、アルカン、カルボン酸、ケトンおよび塩素から選択される汚染物質を捕捉するための方法であって、上述の物質の中からの汚染物質を含有し得るストリームが、プローブ分子を組み込んだ前記ゾル−ゲル材料と接触状態に置かれるか、またはそのようなストリームを、そのゾル−ゲル材料上に流通させる、方法。
【請求項16】
任意選択でプローブ分子を組み込んだ請求項1から7の一項に記載のゾル−ゲル材料をセンサとして使用した、単環式芳香族炭化水素または汚染物質を捕捉または検出するためのシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【図2】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8a】
【図8b】
【公表番号】特表2011−527327(P2011−527327A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517217(P2011−517217)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051376
【国際公開番号】WO2010/004225
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【出願人】(508192256)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051376
【国際公開番号】WO2010/004225
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【出願人】(508192256)
【Fターム(参考)】
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