説明

単相3線式電圧適正化装置

【課題】 単相3線式回路に連系された分散形電源の逆潮流に起因する電圧上昇を抑制する。
【解決手段】 単相3線式による正相が供給される第1線路L1と負相が供給される第2線路L2と中性相が供給される第3線路Nとをもつ単相3線式線路L1,L2,Nと、第1巻線2aと、第1巻線に対向して設けられる第2巻線3aとをもつ第1変圧器1aと、第3巻線2bと、第3巻線に対向して設けられる第4巻線3bとをもつ第2変圧器1bと、第1線路と第2線路と第3線路と、第1変圧器の第2巻線と第2変圧器の第4巻線との間の接続を制御する切換部4a,4bと、第1線路及び第2線路の電圧値を測定して所定範囲を超えている場合、切換部を制御することで、単相交流電流の正相電流を第2巻線に供給するか単相交流電流の負相電流を第4巻線に供給することにより、第1線路及び第2線路の電圧値を適正化するべく制御する制御部10をもつ単相3線式電圧適正化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相3線式電圧適正化装置に関し、特に、分散形電源を接続することによる電圧変動を適正化する単相3線式電圧適正化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分散形電源が連系された低圧配電線では、配電用変圧器のタップ整定に対応した電圧値の電力が需要家に供給されていた。例えば、特許文献1においては、配電用自動電圧調整器の電力逆潮流原因判定方法及び装置、ならびに電力逆潮流時配電用自動電圧調整制御方法を示している。この従来技術では、低圧配電線で必要に応じて設置されている線路用電圧調整装置は、順方向潮流下で運用される配電線の負荷変動による電圧変動や1次側入力電圧の変動を抑制することができる。
【特許文献1】特開2000−295774
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の従来技術である電力逆潮流原因判定装置においては、連系された分散形電源に起因する逆潮流下での配電線の電圧変動を抑制することができないという問題がある。これは、すなわち、低圧の単相3線式回路において需要家へ供給される電力は、配電用変圧器のタップ整定に対応した電圧で供給されているが、線路長の比較的長い単相3線式回路に分散形電源が連系される場合は、線路インピーダンスが大きいため、分散形電源の発電出力による逆潮流によって当該回路の電圧が上昇してしまうという現象が生じる。
【0004】
その電圧上昇値が電気事業法で規定された範囲を超える場合には、分散形電源のもつ機能により、電圧値が上昇し過ぎないようにその出力パワーを抑制する制御がなされるため、該分散形電源は定格出力(フルパワー)を出せなくなるという問題がある。
このことは、低圧単相3線式回路の末端近傍の住宅に設置された小規模分散形電源である太陽光発電システムの近くの系統(回路)で上記と同様の電圧超過現象が起こった場合を例にとると、その住宅の太陽光発電システムは定格容量の出力を出せず、それをかなり下回った出力状態での運転となることが避けられなくなってしまうことを意味する。換言すれば、たとえ夏場の太陽光が最も入射される時間帯下であっても、需要家が折角導入した該太陽光発電システムのメリットを享受できないという問題がある。
【0005】
又、単相3線式回路の場合は、各回路の負荷の違いにより、+相電圧と−相電圧が同電圧値とならない,いわゆる電圧不平衡を生じる問題もある。
【0006】
本発明は、上記のような事情を考慮してなされたもので、単相3線式回路に連系された分散形電源の逆潮流に起因する電圧上昇を抑制し、これにより単相3線式線路の電圧値を適正化する電圧適正化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る多種情報記録装置は、単相3線式による単相交流電流の正相が供給される第1線路(L1)と負相が供給される第2線路(L2)と中性相が供給される第3線路(N)とをもつ単相3線式線路(L1,L2,N)と、前記単相3線式線路の第1線路に挿入される第1巻線(2a)と、前記第1巻線に対向して設けられる第2巻線(3a)とをもつ第1変圧器(1a)と、前記単相3線式線路の第2線路に挿入される第3巻線(2b)と、前記第3巻線に対向して設けられる第4巻線(3b)とをもつ第2変圧器(1b)と、前記第1線路と前記第2線路と前記第3線路と、前記第1変圧器の第2巻線と前記第2変圧器の第4巻線との間の接続を制御する切換部(4a,4b)と、前記第1線路及び前記第2線路の電圧値を測定して所定範囲を超えている場合、前記切換部を制御することで、前記単相交流電流の正相電流を前記第2巻線に供給するか、前記単相交流電流の負相電流を前記第4巻線に供給することにより、前記第1線路及び前記第2線路の電圧値を適正化するべく制御する制御部(10)とを具備することを特徴とする単相3線式電圧適正化装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記した単相3線式電圧適正化装置においては、外部に接続された太陽光発電等の分散型電源装置による影響により変動した第1線路(L1)の電圧や第2線路(L2)の電圧が制御部により検出される。そして、この値が、例えば、101Vとなるところが、108V等の抑制すべき値であると制御部10が判断した場合、その電圧を適正化するものである。
【0009】
すわなち、電圧の値を制するべく、第1線路L1の電流を直列変圧器1a等の直列巻線2aに供給すると共に、例えば切換器4aを制御することにより、この直列変圧器1a等の第1直列巻線2aに対向して設けた第2直列巻線3aの他端に、第1直列巻線2aとは逆方向に第1線路L1の電流を供給するものである。これにより、直列変圧器1aの働きによって、第1線路L1の電圧値を、予め適宜設定された直列変圧器1aの巻数比に応じて適正に抑制するものである。このような制御部及び切換器の制御動作により、分散形電源の連系によって低圧3線式回路に生じる電圧変動を、潮流方向に関わらず規定電圧範囲に抑制できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態である電圧適正化装置について、図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置の構成の一例を示すブロック図、図2は、同じく電圧適正化装置が有する制御部の機能構成の一例を示す図、図3は、同じく電圧適正化装置と配線用変圧器との接続を示す説明図、図4は、同じく電圧適正化装置の周辺の接続と電圧の変動とを説明する説明図である。
【0011】
<本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置>
(構成)
本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100の一例は、図1に示すように、単相3線式による単相交流電流の正相が供給される+線路L1と負相が供給される−線路L2と中性相が供給される線路Nとをもつ単相3線式線路と、2つの直列変圧器1a、1bと、各線路L1,L2,Nと、各変圧器1a,1bの励磁巻線3bとの間の接続を制御する切換部4a,4bと、これらに接続して動作を制御する制御回路10とを少なくとも有している。
【0012】
ここで、2つの直列変圧器1a、1bは、それぞれの1次巻線に相当する励磁巻線3a、3b及び2次巻線に相当する直列巻線2a、2bを備えている。図1に示すよう、直列巻線2aは、単相3線式回路の+電圧線路L1に、直列巻線2は−電圧線路L2に、直列に挿入して接続されている。一方、励磁巻線3aは、その端子3aA及び3aBを介して切換器4aに、励磁巻線3bは、その端子3bA及び3bBを介して切換器4bに接続するよう構成する。
【0013】
又、制御回路10は、図2に示すように、内部に入力部10−1と、計測検出部10−2と、指令部10−3と、及び出力部10−4とを備えている。入力部10−1と単相3線式回路の+線路L1、−線路L2及び中性線路Nとの間は、それぞれ接続線10X、10Y、及び10Zで接続する。出力部10−4と2つの切換器4a、4bとの間は、それぞれに対応する接続線群10A、10Bで接続する。制御回路10内部の入力部10−1と、計測部10−2と、計測部10−2と、指令部10−3及び指令部10−3と出力部10−4との間も相互に結合している。
【0014】
2つの切換器4a、4bは、上記したそれぞれに対応する当の励磁巻線3a、4bとの接続及び制御回路10との図1に示した接続のほかに、低圧3線式回路の+線路L1、−線路L2、及び中性線路Nとも接続されている。
【0015】
2つの切換器4a、4bの内部は、それぞれ同様の接点論理を備えている。この接点論理を、一例として、複数の電磁リレーで構成する場合、電磁リレー群のコイル側の図示を省略し接点の接続関係のみで示すと、接点5a、6a−1、6a−2、7a−1、7a−2、8a、9a(それぞれ、図示を省略した電磁リレー5A、6A、6A、7A、7A、8A、及び9Aの接点を意味する)のグループ、及び 接点5b、6b−1、6b−2、7b−1、7b−2、8b、9b(それぞれ、図示を省略した電磁リレー5B、6B、6B、7B、7B、8B、及び9Bの接点を意味する)のグループの双方とも、図1の当部に示す接続構成としている。
【0016】
切換器4a内部の接点5aは、コイルの図示を省略した電磁リレー5Aの接点であり、その両端は、図示したように励磁巻線3aの両端に、並列に接続する。コイルの図示を省略した電磁リレー6Aの接点である接点6a−1は、一方端を励磁巻3aの3aB端子側に、他方端を+線路L1と接続する。電磁リレー6Aのもう一つの接点である接点6a−2は、一方端を励磁巻線3aの端子3aA側に、他方端を接点8a、及び接点9aの両者が接続されている端子側に接続する。この端子は、接点7a−2の一方端にも接続する。
【0017】
コイルの図示を省略した電磁リレー7Aの接点である接点7a−1は、一方端を+線路L1に、他方端を励磁巻線3aの端子3aA側に接続する。電磁リレー7Aのもう一つの接点である接点7a−2は、一方端を励磁巻線3aの端子3aB側に、他方端を接点8a、及び接点9aの両者が接続されている端子側に接続する。この端子は、接点6a−2の一方端にも接続する。
【0018】
コイルの図示を省略した電磁リレー8Aの接点である接点8aは、一方端を中性線路Nに、他方端を接点6a−2、7a−2、及び9aが接続されている端子側に接続する。コイルの図示を省略した電磁リレー9Aの接点である接点9aは、一方端を−線路L2に、他方端を接点6a−2、7a−2、及び8aが接続されている端子側に接続する。
【0019】
全く同様に、切換器4b内部の接点5bは、コイルの図示を省略した電磁リレー5Bの接点であり、その両端は、図示したように励磁巻線3bの両端に、並列に接続する。コイルの図示を省略した電磁リレー6Bの接点である接点6b−1は、一方端を励磁巻3bの3bB端子側に、他方端を−線路L2と接続する。電磁リレー6Bのもう一つの接点である接点6b−2は、一方端を励磁巻線3bの端子3bB側に、他方端を接点8b、及び接点9bの両者が接続されている端子側に接続する。この端子は、接点7b−2の一方端にも接続する。
【0020】
コイルの図示を省略した電磁リレー7Bの接点である接点7b−1は、一方端を−線路L2に、他方端を励磁巻線3bの端子3bA側に接続する。電磁リレー7Bのもう一つの接点である接点7b−2は、一方端を励磁巻線3bの端子3bB側に、他方端を接点8b、及び接点9bの両者が接続されている端子側に接続する。この端子は、接点6b−2の一方端にも接続する。
【0021】
コイルの図示を省略した電磁リレー8Bの接点である接点8bは、一方端を中性線路Nに、他方端を接点6b−2、7b−2、及び9bが接続されている端子側に接続する。コイルの図示を省略した電磁リレー9Bの接点である接点9bは、一方端を+線路L1に、他方端を接点6b−2、7b−2、及び8bが接続されている端子側に接続する。
【0022】
(周辺機器との接続)
更に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置は、図3及び図4に示すように、例えば屋外の電柱等に設けられた配電用変圧器21に接続されるものであり、更に、一例として、上流側に太陽光発電等の分散型電源装置22が、下流側に太陽光発電等の分散型電源装置23が接続される場合がある。これらの分散型電源装置22,23の影響により、図4に示すように、出力電圧が適正電圧範囲(一例として、95V−107V)を超えた値を示すことがある。本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置においては、以下にフローチャートを用いて説明するように、これらの電圧変動を解消するものである。
【0023】
(適正電圧範囲に応じた適正化処理)
次に、フローチャートを用いて、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置の適正電圧範囲に応じた適正化処理を詳細に説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置の適正電圧範囲に応じた適正化処理の一例を示すフローチャート、図6は、同じく電圧適正化装置の適正電圧範囲に応じた適正化処理からの復帰処理の一例を示すフローチャートである。
【0024】
本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置においては、以下の4つのフローチャートが同時に実行されることで、+電圧線路L1及び−電圧線路L2の電圧が適正化されるものである。
【0025】
本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図5の(a)のフローチャートにおいて、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L1,Nの二次側端子電圧10X,10Zを入力部10−1により取り込み(S11)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S12)。そして、指令部10−3においてこの計測値が適正電圧範囲(例えば、95V乃至107V)(S13)であるかどうかを判断し(S14)、ここで、この計測値が適正電圧範囲を上回れば、その程度に応じて、例えば、「指令値 差電圧1V」や(S15)、「指令値 差電圧2V」(S17)として指令を出す。これに応じて出力部10−4では、例えば、「指令値 差電圧1V」に対しては、接点5aをオフ、接点6a,接点6a−2をオン、接点7a,接点7a−2をオフ、接点8aをオンする(S16)。これにより、+電圧線路L1が励磁巻線3aの下流端に接続され、励磁巻線3aの上流端が中性相線路Nに接続されることとなり、これにより直列変圧器1aの働きによって+電圧線路L1の電圧が適正化されるものである。
【0026】
又、例えば、「指令値 差電圧2V」に対しては、制御部10の出力部10−4は、接点5aをオフ、接点6a,接点6a−2をオン、接点7a,接点7a−2をオフ、接点9aをオンするべく制御する(S18)。これにより、+電圧線路L1が励磁巻線3aの下流端に接続され、励磁巻線3aの上流端が−電圧線路L2に接続されることとなり、同様に、直列変圧器1aの働きによって+電圧線路L1の電圧が適正化されるものである。
【0027】
更に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図5の(b)のフローチャートにおいて、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L2,Nの二次側端子電圧10Z,10Yを入力部10−1により取り込み(S21)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S22)。そして、指令部10−3においてこの計測値が適正電圧範囲(例えば、95V乃至107V)(S23)であるかどうかを判断し(S24)、ここで、この計測値が適正電圧範囲を上回れば、その程度に応じて、例えば、「指令値 差電圧1V」や(S25)、「指令値 差電圧2V」(S27)として指令を出す。これに応じて出力部10−4では、例えば、「指令値 差電圧1V」に対しては、接点5bをオフ、接点6b,接点6b−2をオン、接点7b,接点7b−2をオフ、接点8bをオンする(S16)。これにより、−電圧線路L2が励磁巻線3aの下流端に接続され、励磁巻線3aの上流端が中性相線路Nに接続されることとなり、−電圧線路L2の電圧が適正化されるものである。
【0028】
又、例えば、「指令値 差電圧2V」に対しては、制御部10の出力部10−4は、接点5bをオフ、接点6b,接点6b−2をオン、接点7b,接点7b−2をオフ、接点9bをオンするべく制御する(S28)。これにより、+電圧線路L1が励磁巻線3bの下流端に接続され、励磁巻線3bの上流端が−電圧線路L2に接続されることとなり、同様に、−電圧線路L2の電圧が適正化されるものである。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図6の(a)のフローチャートにおいて、復帰処理がなされる。すなわち、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L1,Nの二次側端子電圧10X,10Yを入力部10−1により取り込み(S31)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S32)。そして、指令部10−3においてこの計測値が復帰判定値(例えば、101V±1V)(S33)であるかどうかを判断し(S34)、ここで、この計測値が適正電圧範囲以内であれば、「指令値 差電圧0V」として指令を出す(S35)。これに応じて出力部10−4では、接点6a−1,6a−2をオフ、接点8a,接点9aをオフ、接点5aをオンする(S36)。これにより、励磁巻線3aの下流端と励磁巻線3aの上流端が接続されることとなり、+電圧線路L1の電圧が適正値に安定化されるものである。
【0030】
次に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図6の(b)のフローチャートにおいて、復帰処理がなされる。すなわち、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L2,Nの二次側端子電圧10Y,10Zを入力部10−1により取り込み(S41)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S42)。そして、指令部10−3においてこの計測値が復帰判定値(例えば、101V±1V)(S43)であるかどうかを判断し(S44)、ここで、この計測値が適正電圧範囲以内であれば、「指令値 差電圧0V」として指令を出す(S45)。これに応じて出力部10−4では、接点6b−1,6b−2をオフ、接点8b,接点9bをオフ、接点5bをオンする(S46)。これにより、励磁巻線3bの下流端と励磁巻線3bの上流端が接続されることとなり、−電圧線路L2の電圧が適正値に安定化されるものである。
【0031】
(不平衡電圧範囲に応じた適正化処理)
次に、フローチャートを用いて、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置の不平衡電圧範囲に応じた適正化処理を詳細に説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置の不平衡電圧範囲に応じた適正化処理の一例を示すフローチャート、図8は、同じく電圧適正化装置の不平衡電圧範囲に応じた適正化処理からの復帰処理の一例を示すフローチャートである。
【0032】
本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図7の(a)のフローチャートにおいて、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L1,L2,Nの二次側端子電圧10X,10Y,10Zを入力部10−1により取り込み(S51)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S52)。そして、+電圧線路L1の電圧と−電圧線路L2の電圧とが比較され計測される(S53)。そして、指令部10−3においてこの計測値が不平衡電圧範囲(例えば、相手相の電位を基準に95V乃至107V)(S50)であるかどうかを判断し(S54)、ここで、この計測値が適正電圧範囲を上回れば、その程度に応じて、例えば、「指令値 差電圧1V」や(S55)、「指令値 差電圧2V」(S57)として指令を出す。これに応じて出力部10−4では、例えば、「指令値 差電圧1V」に対しては、接点5aをオフ、接点6a,接点6a−2をオフ、接点7a,接点7a−2をオン、接点8aをオンする(S56)。これにより、+電圧線路L1が励磁巻線3aの下流端に接続され、励磁巻線3aの上流端が中性相線路Nに接続されることとなり、これにより直列変圧器1aの働きによって、+電圧線路L1の電圧の不平衡が解消されるものである。
【0033】
又、例えば、「指令値 差電圧2V」に対しては、制御部10の出力部10−4は、接点5aをオフ、接点6a,接点6a−2をオン、接点7a,接点7a−2をオフ、接点9aをオンするべく制御する(S57)。これにより、+電圧線路L1が励磁巻線3aの下流端に接続され、励磁巻線3aの上流端が−電圧線路L2に接続されることとなり、同様に、直列変圧器1aの働きによって、+電圧線路L1の電圧の不平衡が解消されるものである。
【0034】
更に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図7の(b)のフローチャートにおいて、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L2,Nの二次側端子電圧10Z,10Yを入力部10−1により取り込み(S61)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S62)。そして、+電圧線路L1の電圧と−電圧線路L2の電圧とが比較され計測される(S63)。そして、指令部10−3においてこの計測値が不平衡電圧範囲(例えば、相手相の電位を基準に95V乃至107V) (S60)であるかどうかを判断し(S64)、ここで、この計測値が適正電圧範囲を上回れば、その程度に応じて、例えば、「指令値 差電圧1V」や(S65)、「指令値 差電圧2V」(S67)として指令を出す。これに応じて出力部10−4では、例えば、「指令値 差電圧1V」に対しては、接点5bをオフ、接点6b,接点6b−2をオフ、接点7b,接点7b−2をオン、接点8bをオンする(S66)。これにより、−電圧線路L2が励磁巻線3aの下流端に接続され、励磁巻線3aの上流端が中性相線路Nに接続されることとなり、これにより直列変圧器1bの働きによって、−電圧線路L2の電圧の不平衡が解消されるものである。
【0035】
又、例えば、「指令値 差電圧2V」に対しては、制御部10の出力部10−4は、接点5bをオフ、接点6b,接点6b−2をオフ、接点7b,接点7b−2をオン、接点9bをオンするべく制御する(S68)。これにより、−電圧線路L2が励磁巻線3bの下流端に接続され、励磁巻線3bの上流端が−電圧線路L2に接続されることとなり、同様に、直列変圧器1bの働きによって、−電圧線路L2の電圧の不平衡が解消されるものである。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図8の(a)のフローチャートにおいて、復帰処理がなされる。すなわち、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L1,L2,Nの二次側端子電圧10X,10Yを入力部10−1により取り込み(S71)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S72)。そして、指令部10−3においてこの計測値が不平衡復帰判定値(例えば、101V±1V)(S73)であるかどうかを判断し(S74)、ここで、この計測値が不平衡復帰範囲以内であれば、「指令値 差電圧0V」として指令を出す(S75)。これに応じて出力部10−4では、接点6a−1,6a−2をオフ、接点8a,接点9aをオフ、接点5aをオンする(S76)。これにより、励磁巻線3aの下流端と励磁巻線3aの上流端が接続されることとなり、+電圧線路L1の電圧が適正値に安定化されるものである。
【0037】
次に、本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置100は、図8の(b)のフローチャートにおいて、復帰処理がなされる。すなわち、例えば、配電用変圧器21から配電線を介して、単相交流電流を各線路L1,L2,Nに供給されている状態で、制御部10は、各線路L1,L2,Nの二次側端子電圧10X,10Y,10Zを入力部10−1により取り込み(S81)、計測部10−2において実行値に変換した上で計測する(S82)。そして、指令部10−3においてこの計測値が不平衡復帰判定値(例えば、101V±1V)(S83)であるかどうかを判断し(S84)、ここで、この計測値が不平衡復帰範囲以内であれば、「指令値 差電圧0V」として指令を出す(S85)。これに応じて出力部10−4では、接点6b−1,6b−2をオフ、接点8b,接点9bをオフ、接点5bをオンする(S86)。これにより、励磁巻線3bの下流端と励磁巻線3bの上流端が接続されることとなり、−電圧線路L2の電圧が適正値に安定化されるものである。
【0038】
(タップ)
更に、先の直列変圧器1a,1bにおいて、各励磁巻線3a,3bは、開始端から終了端までの単調な巻き方となっているが、所望の電圧値に応じて予め適正な巻数を定めこの巻数に応じた複数のタップを設けることが好適である。切換器4a、4bをこれらのタップに任意に接続することで、所望の電圧制御を自由に行なうことが可能となり、本発明の一実施形態が目的としている各線路の電圧制御を高い信頼性において行なうことが可能となるものである。
【0039】
以上に述べたように本実施形態で述べた電圧適正化装置100は、常に、そのときどきの低圧3線式回路の二つの回路の電圧瞬時値を極めて短い周期の一定間隔Tで取り込み、これを、予め定め内部に記憶した基準値と大小関係を比較し、その結果に従って、単相3線式回路の当回路電圧を適正化するように制御する構成としているので、これにより、従来装置の課題である本明細書のはじめの所で述べた事項を解決することができる。
【0040】
上記の実施形態では、制御回路10を、マイクロプロセッサを中心に構成し、必要な一連の処理をプログラムを具備してこれを処理することで実現する場合を示したが、その実現する構成は、通常のワイアドロジックで用意しても本発明の目的を達成できることは言うまでもない。
【0041】
同様に、上記の実施形態では、電磁リレーを用いて示した接点論理は、例えば、サイリスタなどのパワーエレクトロニクス素子や、電磁接触器等を用いることでも、同等の実施を行なえることは言うまでもない。
【0042】
以上記載した様々な実施形態により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る電圧適正化装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】同じく電圧適正化装置が有する制御部の機能構成の一例を示す図。
【図3】同じく電圧適正化装置と配線用変圧器との接続を示す説明図。
【図4】同じく電圧適正化装置の周辺の接続と電圧の変動とを説明する説明図。
【図5】同じく電圧適正化装置の適正電圧範囲に応じた適正化処理の一例を示すフローチャート。
【図6】同じく電圧適正化装置の適正電圧範囲に応じた適正化処理からの復帰処理の一例を示すフローチャート。
【図7】同じく電圧適正化装置の不平衡電圧範囲に応じた適正化処理の一例を示すフローチャート。
【図8】同じく電圧適正化装置の不平衡電圧範囲に応じた適正化処理からの復帰処理の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
100…電圧適正化装置、10…制御部、1a…直列変圧器、1b…直列変圧器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相3線式による単相交流電流の正相が供給される第1線路と負相が供給される第2線路と中性相が供給される第3線路とをもつ単相3線式線路と、
前記単相3線式線路の第1線路に挿入される第1巻線と、前記第1巻線に対向して設けられる第2巻線とをもつ第1変圧器と、
前記単相3線式線路の第2線路に挿入される第3巻線と、前記第3巻線に対向して設けられる第4巻線とをもつ第2変圧器と、
前記第1線路と前記第2線路と前記第3線路と、前記第1変圧器の第2巻線と前記第2変圧器の第4巻線との間の接続を制御する切換部と、
前記第1線路及び前記第2線路の電圧値を測定して所定範囲を超えている場合、前記切換部を制御することで、前記単相交流電流の正相電流を前記第2巻線に供給するか、前記単相交流電流の負相電流を前記第4巻線に供給することにより、前記第1線路及び前記第2線路の電圧値を適正化するべく制御する制御部と、
を具備することを特徴とする単相3線式電圧適正化装置。
【請求項2】
前記第1変圧器の第2巻線又は前記第2変圧器の第4巻線は、その開始端から終了端の間に単数又は複数のタップ端をそれぞれ設けており、前記切換部はこのタップ端に接続されていることを特徴とする請求項1記載の単相3線式電圧適正化装置。
【請求項3】
単相3線式による単相交流電流の正相が供給される第1線路と負相が供給される第2線路と中性相が供給される第3線路とをもつ単相3線式線路と、
前記単相3線式線路の第1線路に挿入される第1巻線と、前記第1巻線に対向して設けられる第2巻線とをもつ第1変圧器と、
前記単相3線式線路の第2線路に挿入される第3巻線と、前記第3巻線に対向して設けられる第4巻線とをもつ第2変圧器と、
前記第1線路と前記第2線路と前記第3線路と、前記第1変圧器の第2巻線と前記第2変圧器の第4巻線との間の接続を制御する切換部と、
前記第1線路と前記第2線路との電位差を測定してこれが所定範囲を超えている場合、前記切換部を制御することで、前記単相交流電流の正相電流を前記第2巻線に供給するか、前記単相交流電流の負相電流を前記第4巻線に供給することにより、前記第1線路及び前記第2線路の電位差を適正化するべく制御する制御部と、
を具備することを特徴とする単相3線式電圧適正化装置。
【請求項4】
前記第1変圧器の第2巻線又は前記第2変圧器の第4巻線は、その開始端から終了端の間に単数又は複数のタップ端をそれぞれ設けており、前記切換部はこのタップ端に接続されていることを特徴とする請求項3記載の単相3線式電圧適正化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−262609(P2006−262609A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75915(P2005−75915)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(391004920)東北電機製造株式会社 (7)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】