説明

単筒型液圧緩衝器

【課題】ブラケットの曲げ強度の確保が容易で放熱性も向上させることができるとともに円滑な伸縮を実現しつつ充分な減衰力を発揮できる単筒型液圧緩衝器を提供することである。
【解決手段】本発明の課題解決手段は、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を二つの作動室R1,R2に区画するピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるロッド3と、伸縮時にシリンダ1内に出入りするロッド3の体積を補償する気室Gを備えた単筒型液圧緩衝器Dにおいて、シリンダ1内に収容される筒5と、当該筒5内に補償室Rを区画する仕切部材6と、当該筒5内に摺動自在に挿入されて補償室R内に液室Lと気室Gを区画するフリーピストン7とを設け、仕切部材6が上記作動室のうち一方R2と液室Lとを連通する通路6a,6bと、少なくとも一方の作動室R2から液室へ向かう液体の流れに抵抗を与える弁要素8とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単筒型液圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体と車軸との間に介装されて使用される単筒型液圧緩衝器にあっては、ブレーキホースやセンサ等を支持するブラケットを外周に備えているものがあり、単筒型液圧緩衝器でブレーキホース等を支持することによって、ブレーキホース等が他部材と干渉することを防止して、これらを保護するようになっている。
【0003】
そして、このようなブラケットは単筒型液圧緩衝器に溶接によって固定され、シリンダの側方にてブレーキホース等を支持するようになっているが、ブラケットを単純に単筒型液圧緩衝器におけるシリンダの側部に溶接することはできない。
【0004】
なぜならば、内部でピストンやフリーピストンが摺動するシリンダの側部にブラケットを溶接すると、シリンダに溶接歪が生じて歪んでしまい、シリンダ内でのピストンやフリーピストンの円滑な移動が妨げられるばかりでなく、ピストンやフリーピストンの外周とシリンダの内周との間に無用な隙間が生じてシリンダ内にフリーピストンで区画した気室から気体が作動室へ漏れ出したり、シリンダ内にピストンで区画した二つの作動室同士が上記隙間を介して連通されてしまったりして、緩衝器に設定どおりの減衰力を発揮させることができない等といった種々の弊害を引き起こすからである。
【0005】
それゆえ、従来の単筒型液圧緩衝器に適用されるブラケットを軸方向に長く設定しておき、当該ブラケットを溶接歪が生じても上記した不具合を生じないシリンダ端部に溶接するようにするといった工夫がなされている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−155773号公報(第4頁第28行目から第42行目まで、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の単筒型液圧緩衝器の場合、ブラケットをシリンダの端部に溶接する方法を採用しているため、どうしてもブラケットの軸方向長さが長くなり、形状に工夫を凝らして曲げ強度の向上を図ってはいるものの、曲げ強度の点での課題が残ることになる。
【0007】
また、単筒型液圧緩衝器は、振動エネルギを吸収して熱エネルギに変換することで、振動を減衰させるので、伸縮を繰り返し行うことで発熱することになり、シリンダ内に充填される液体の粘度は、一般的に温度が上昇すると低下するため、単筒型液圧緩衝器の発生減衰力は温度上昇とともに低下することになるので、放熱性がよいほうが好ましい。しかしながら、ブラケットは、上記曲げ強度確保の観点から断面C型に設定されてシリンダの外周を把持しており、シリンダの下端から中間部まで広範囲に亘って覆っているため、放熱性が悪く熱がシリンダ内に籠ってしまう傾向にある。
【0008】
加えて、単筒型液圧緩衝器にあっては、圧縮作動時には、気室に面する圧縮側の作動室内の圧力は気室内の圧力以上には増圧されないので、大きな減衰力を得るためには、気室内の圧力を高めてシリンダ内の液体を常時加圧状態に維持する必要があるが、気室の圧力を大きくすると、今度は、単筒型液圧緩衝器のシリンダ内の液室内圧力が高くなり、ロッド周りをシールするシール部材にもこの圧力が作用してシール部材のロッドを締付ける緊迫力が大きくなって、ロッドの摺動抵抗が過大となって単筒型液圧緩衝器の円滑な伸縮が妨げられて、特に、車両用途で使用する場合、車両搭乗者にゴツゴツ感を知覚させ車両における乗り心地を阻害してしまいかねない。
【0009】
そこで、本発明は上記した点を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、ブラケットの曲げ強度の確保が容易で放熱性も向上させることができるとともに円滑な伸縮を実現しつつ充分な減衰力を発揮できる単筒型液圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題解決手段は、シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を二つの作動室に区画するピストンと、シリンダ内に移動自在に挿入されてピストンに連結されるロッドと、伸縮時のシリンダ内に出入りするロッド体積を補償する気室を備えた単筒型液圧緩衝器において、シリンダ内に収容される筒と、当該筒内に補償室を区画する仕切部材と、当該筒内に摺動自在に挿入されて補償室内に液室と気室を区画するフリーピストンとを設け、仕切部材が上記作動室のうち一方と液室とを連通する通路と、少なくとも一方の作動室から液室へ向かう液体の流れに抵抗を与える弁要素とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の単筒型液圧緩衝器によれば、フリーピストンはシリンダの内周に摺接して変位するのではなく、シリンダ内に収容された筒内に摺動自在に挿入されて気室を筒内に形成しているので、ピストンの摺動範囲に歪を及ぼさない範囲であれば望む位置にセンサやブレーキホースを支持するブラケットを溶接することが可能となり、ブラケットを長尺に設定してシリンダの端部に溶接する必要はなく、ブラケットを小型化でき、ブラケットの曲げ強度の確保が容易となるとともに、シリンダの外周を広範に亘ってブラケットで覆うことがないので、放熱性も向上させることができる。
【0012】
また、本発明の単筒型液圧緩衝器にあっては、圧縮時に気室に面する作動室内の圧力を気室の圧力以上には増圧できなかった従来の単筒型液圧緩衝器に比較して、圧縮時に気室の圧力に依存せずに補償室に連通される作動室の圧力を気室の圧力以上に増圧することができるため、圧縮作動時の減衰力を大きくすることができる。
【0013】
換言すれば、気室の圧力を高くしておかずとも圧縮作動時の減衰力を大きくすることができるので、気室の圧力を従来の単筒型液圧緩衝器に比較して小さくしておくことができ、気室の圧力によって附勢されてシール部材に圧力を作用させる作動室の圧力を低くすることができる。すると、ロッドを緊迫するシール部材の緊迫力を低くでき、ロッドとシール部材との間に生じる摩擦抵抗が小さくなって単筒型液圧緩衝器の円滑な伸縮を実現でき、車両に適用する場合、車両搭乗者にゴツゴツ感を抱かせることがなくなり乗り心地を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図に示した一実施の形態に基づいて本発明について説明する。図1は、本発明の一実施の形態における単筒型液圧緩衝器の縦断面図である。図2は、本発明の一実施の形態における単筒型液圧緩衝器の一部拡大斜視図である。
【0015】
一実施の形態における単筒型液圧緩衝器Dは、図1および図2に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内に図1中上方と下方の作動室R1,R2を区画するピストン2と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるとともにピストン2に連結されるロッド3と、シリンダ1の図1中下端を閉塞するキャップ4と、キャップ4に保持されてシリンダ1内に収容される筒5と、当該筒5内に補償室Rを区画する仕切部材6と、当該筒5内に摺動自在に挿入されて補償室R内に液室Lと気室Gを区画するフリーピストン7と、仕切部材6に設けられた一方の作動室R2と液室Lとを連通する通路6a,6bと、一方の作動室R2から液室Lへ向かう液体の流れに抵抗を与える弁要素たるリーフバルブ8とを備えて構成され、シリンダ1の側部にはブラケットBが溶接されて固定されている。
【0016】
そして、作動室R1,R2および液室L内には、作動油等の液体が充填され、気室G内には、たとえば、窒素等といった不活性ガスが所定圧で充填されている。
【0017】
また、ロッド3は、シリンダ1の上端に設けられてシリンダ1内を封止する環状のロッドガイド9に軸支されて、シリンダ1外へ突出させてあり、このロッド3の上端とシリンダ1の下端に設けられる図示しない取付部を介して単筒型液圧緩衝器Dを車両における車体と車軸との間に介装することができるようになっている。なお、ロッドガイド9の図1中上方には、ロッド3の外周およびシリンダ1の内周をシールするシール部材14が設けられており、このシール部材14は、環状とされてロッド3の外周に摺接する内周リップ14aと、シリンダ1の内周に密着する外周リップ14bとを備えている。また、内周リップ14aには、シール部材14とロッドガイド9との間の空隙の蓄圧を防止するロッドガイド9に設けた貫通孔9aを通じて作動室R1内の圧力が作用しており、内周リップ14aは作動室R1の圧力を加味してロッド3を締め付け、ロッド3周りを密にシールするようになっている。
【0018】
ピストン2には、上記圧力室R1と圧力室R2とを連通する流路2aが設けられており、該流路2aの途中には、減衰力発生要素2bが設けられている。減衰力発生要素2bは、上記流路2aを液体が通過する際に液体の流れに抵抗を与え、所定の圧力損失を生じさせるものであればよく、具体的にはたとえば、オリフィスやリーフバルブといった減衰バルブを採用することができる。なお、流路2aは、図示したところでは、一つのみ設けられるようになっているが、複数設けるようにしてもよく、さらに、作動室R1から作動室R2へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の流路と作動室R2から作動室R1へ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の流路を並列させて設けるようにしてもよい。
【0019】
また、筒5は、図1中下端がシリンダ1の図1中下端を閉塞するキャップ4に固定されてシリンダ1内に収容されており、その長さは、単筒型液圧緩衝器Dに要求されるピストン2のストローク範囲に干渉しないように設定されている。さらに、筒5は、シリンダ1の外周に図1および図2に示すようにブラケットBを溶接しても溶接による熱が伝達されて歪まないように、シリンダ1にある程度の隙間を介して臨んでいる。なお、上記隙間を設ける配慮は、シリンダ1に筒5を収容した後にブラケットBを溶接する場合を考慮したものであるが、筒5をシリンダ1へ収容する前にブラケットBを溶接する場合は、シリンダ1の内径と筒5の外径の寸法は、シリンダ1の溶接歪やビードの形成を考慮して、シリンダ1内に筒5を挿入できなくならない程度に設定すればよい。
【0020】
なお、ブラケットBは、図2に示すように、シリンダ1の外周に溶接固定される円弧帯状の基部10と、基部10の一端からシリンダ1の径方向へ立ち上がりセンサ等を固定する孔11aを備えた取付部11とを備えて構成されている。
【0021】
そして、この筒5の図1中上端となる開口端には、筒5内に一方の作動室から補償室Rを区画する仕切部材6が嵌め込まれて固定されている。この仕切部材6は、円盤状に形成されて筒5の開口端に嵌合して当該開口端を閉塞している。
【0022】
さらに、筒5内には、摺動自在にフリーピストン7が挿入されており、このフリーピストン7によって筒5内に設けられた補償室Rが、仕切部材6とフリーピストン7との間に形成される液室Lとフリーピストン7とキャップ4との間に形成される気室Gとに区画され、気室Gの容積はフリーピストン7の筒5に対する変位によって変化するようになっている。
【0023】
フリーピストン7は、具体的には、円盤状のフリーピストン本体7aと、フリーピストン本体7aの外周に装着したシールリング7bとを備えて構成され、筒5との間が気密に保たれ、気室G内に充填される気体の液室Lへの漏れを防止している。
【0024】
この単筒型液圧緩衝器Dにあっては、伸縮に伴ってロッド4のシリンダ1に出入りする体積がシリンダ1内で作動室R1,R2の容積変化を生じさせて作動室R1,R2内で液体の過不足が生じるが、気室Gを収縮あるいは膨張させて液室Lの容積を変化させ、液体を液室Lから給排することによって、上記のロッド4が出入りする体積を補償しており、気室Gの容積は、上記体積補償を充分に行うことができる程度に確保される。
【0025】
また、筒5の長さは、単筒型液圧緩衝器Dが最伸長してシリンダ1に対してピストン2が最上方へ移動しても、フリーピストン7が筒5の開口端に取り付けた仕切部材6に干渉しないように設定されている。
【0026】
さらに、キャップ4は、これを貫いて筒5内に通じる気体注入孔4aを備えており、外部から筒5内に気体を注入することができるようになっており、気体注入後は、当該気体注入孔4aは栓4bによって塞がれ、気室Gの気密が保たれるようになっている。
【0027】
戻って、仕切部材6は、下方の作動室R2と液室Lとを連通する通路6aと、下方の作動室R2と液室Lとを連通する通路6bとを備えている。この実施の形態にあっては、具体的には、通路6aは、仕切部材6の同一円周上に複数設けられており、通路6bは、通路6aが設けられる円周上より大径の円周上に複数設けられているが、通路6a,6bの設置数は任意である。
【0028】
そして、この実施の形態の場合、通路6aの下端は、仕切部材6を上下に貫通する軸部材12に内周側が固定されて仕切部材6の図1中下端となる液室L側に積層される環状のリーフバルブ8によって開閉されるようになっており、他方の通路6bの上端は、仕切部材6を上下に貫通する軸部材12に内周側が固定されて仕切部材6の図1中上端となる作動室R2側に積層される環状のチェックバルブ13によって開閉されるようになっている。なお、チェックバルブ13で通路6aの上端を閉塞しないように、チェックバルブ13には、通路6aと作動室R2との連通を確保する孔13aが設けられている。
【0029】
上記したリーフバルブ8は、作動室R2内の圧力が液室Lより高くなって両室の差圧が開弁圧に達すると外周が撓んで通路6aを開放し、液体が通路6aを通過して作動室R2から液室Lへ移動する流れに抵抗を与えるようになっており、その逆の流れに対しては通路6aを閉塞してこれを阻止するようになっている。また、チェックバルブ13は、反対に、作動室R2内の圧力が減圧されて液室Lより低くなると液室Lの圧力を受けて外周が撓んで通路6bを開放し、液体が通路6bを通過して液室Lから作動室R2へ移動する流れにほとんど抵抗を与えないようになっているが、その逆の流れに対しては通路6bを閉塞してこれを阻止するようになっている。
【0030】
なお、リーフバルブ8は、図示したところでは、環状板を複数枚積層して構成されているが、積層枚数は任意であり、液体の流れに与える抵抗の大きさによって一枚の環状板で構成されてもよい。チェックバルブ13は、通過液体の流れに抵抗を与えないようになっているが、抵抗を与えるように設定されてもよい。
【0031】
また、仕切部材6を筒5への取り付けにあたっては、単筒型液圧緩衝器Dの使用中において筒5からの脱落を阻止できれば、圧入、溶接の他、螺子結合といった種々の固定手段を用いることができる。
【0032】
そして、上述のように構成された単筒型液圧緩衝器Dの場合、フリーピストン7はシリンダ1の内周に摺接して変位するのではなく、シリンダ1内に収容された筒5内に摺動自在に挿入されて気室Gを筒5内に形成しており、ピストン2の摺動範囲に歪を及ぼさない範囲であれば望む位置にブラケットBを溶接することが可能であるので、ブラケットBを長尺に設定してシリンダ1の端部に溶接する必要はなく、ブラケットBを小型化でき、ブラケットBの曲げ強度の確保が容易となるとともに、シリンダ1の外周を広範に亘ってブラケットBで覆うことがないので、放熱性も向上させることができる。
【0033】
さらに、放熱性を向上させることができるので、単筒型液圧緩衝器が発揮する減衰力の温度上昇による落ち込みを抑制することができ、車両における乗り心地を向上させることができる。
【0034】
また、構成上長尺のブラケットしか使用することができなかった従来の単筒型液圧緩衝器に比較して、本発明の単筒型液圧緩衝器Dにあっては、ブラケットBを軽量小型化でき、かつ、シリンダ1の外周に強固に溶接することができるので、車両走行中絶えず振動が入力されるブラケットBの疲労を抑制することができるという利点もある。加えて、ブラケットBを小型化することで、センサやブレーキホースをブラケットBの孔11aに捩じ込みなどによって組み付ける際に、ブラケットBに作用するモーメント荷重を小さくすることができる。
【0035】
さらに、軽量小型なブラケットBを使用することができるので、車両走行中に振動が入力された際にブラケットBがビビリ振動を呈してしまうことも防止されるから、ブラケットBで支持する精密機器であるセンサやブレーキホースの振動による劣化が抑制されるとともに、ブレーキホースの他部材への干渉機会を減少させることもできることになる。
【0036】
つづいて、この単筒型液圧緩衝器Dの動作について説明する。シリンダ1に対してピストン2が図1中上方向へ移動する伸長作動を呈すると、ピストン2の移動に伴って容積が減少する作動室R1から容積が増大する作動室R2へ流路2aを介して移動する液体の流れに抵抗を与えて圧力損失を生じせしめ、作動室R1と作動室R2に差圧を生じせしめて減衰力を発揮するようになっている。また、容積拡大によって減圧される作動室R2内では、ロッド3がシリンダ1内から退出することによってロッド3の退出体積分の液体が不足するが、この不足分の液体は液室Lから通路6bを介して抵抗なく供給される。そして、補償室R内では液室Lの液体の排出分だけ気室Gが膨張し、フリーピストン7を筒5に対して上方へ押し上げ上記シリンダ1から退出するロッド3の体積が補償される。
【0037】
反対に、シリンダ1に対してピストン2が図1中下方向へ移動する圧縮作動を呈すると、ピストン2の移動に伴って容積が減少する作動室R2から容積が増大する作動室R1へ流路2aを介して移動する液体の流れに抵抗を与えて圧力損失を生じせしめる。また、この単筒型液圧緩衝器Dにあっては、補償室Rと作動室R2とを仕切部材6で仕切るとともに通路6aを通過する液体の流れに対して弁要素としてのリーフバルブ8で抵抗を与えるようになっているので、作動室R2内の圧力は気室G内の圧力以上に増圧させることができ、圧縮作動時にあっても作動室R1と作動室R2に大きな差圧を生じせしめて従来の単筒型液圧緩衝器に比較して大きな減衰力を発揮することができるようになっている。また、容積減少によって増圧される作動室R2内では、ロッド3がシリンダ1内へ進入することによってロッド3の侵入体積分の液体が過剰となるが、この過剰分の液体は液室Lへ通路6aを介して排出される。そして、補償室R内では液室Lへの液体流入分だけ気室Gが収縮し、フリーピストン7が筒5に対して下方へ押し下げられ上記シリンダ1へ侵入するロッド3の体積が補償される。
【0038】
このように本発明の単筒型液圧緩衝器Dにあっては、圧縮時に気室に面する作動室内の圧力を気室の圧力以上には増圧できなかった従来の単筒型液圧緩衝器に比較して、圧縮時に気室Gの圧力に依存せずに補償室Rに連通される作動室R2の圧力を気室Gの圧力以上に増圧することができるため、圧縮作動時の減衰力を大きくすることができる。
【0039】
換言すれば、気室Gの圧力を高くしておかずとも圧縮作動時の減衰力を大きくすることができるので、気室Gの圧力を従来の単筒型液圧緩衝器に比較して非常に小さくしておくことができ、気室Gの圧力によって附勢される上方側の作動室R1の圧力を低くすることができる。すると、ロッド3の外周をシールするシール部材14の内周リップ14aに作用する作動室R1の圧力を低くできるので、ロッド3を緊迫する内周リップ14aの緊迫力を低くでき、ロッド3と内周リップ14aとの間に生じる摩擦抵抗が小さくなって単筒型液圧緩衝器Dの円滑な伸縮を実現でき、車両に適用する場合、車両搭乗者にゴツゴツ感を抱かせることがなくなり乗り心地を向上することができる。
【0040】
さらに、作動室R1の圧力を低くすることができるので、シール部材14の内周リップ14aの圧力負担が軽減されるので、高い耐圧性能を備えた高価なシール部材を用いずに済むことになって、この点で単筒型液圧緩衝器Dのコストを低減することができる。
【0041】
またさらに、気室Gの圧力を低くすることができるので、気室Gの容積変化に対する圧力変化も小さくすることができ、気室Gの容積を従来の単筒型液圧緩衝器に比較して小さくすることができる。よって、気室Gの容積を従来に比較して小さくしておくことで、単筒型液圧緩衝器Dのストロークの確保が容易となる。
【0042】
加えて、シリンダの外側に外筒を設けてシリンダと外筒との間に補償室を設ける複筒型液圧緩衝器に比較しても、外径を同じに設定する場合、ピストン2の外径を大きくして受圧面積を大きく確保することができ、より大きな減衰力を発揮することができる点で有利となる。換言すれば、単筒型液圧緩衝器Dによれば、同程度の大きさの減衰力を発揮する複筒型液圧緩衝器より小径に設定することができ、車両への搭載性の点で非常に有利となる。
【0043】
なお、通路6aに設けた弁要素としては、リーフバルブ8以外にもポペット弁や絞り弁等の種々の弁を用いることができ、少なくとも、作動室R2から液室Lへ向かう液体の流れに抵抗を与えることができれば、上述の作動および作用を呈することができるが、反対に液室Lから作動室R2へ向かう流れを阻止するのではなくこれを許容して反対の流れに抵抗を与えるものであっても上記作動および作用を損なうことはない。
【0044】
また、通路6bをチェック弁13にて開閉して、通路6bを通過する液体の流れに抵抗をほとんど与えないようにしているが、これに代えてリーフバルブや他の抵抗を与える弁を設けて単筒型液圧緩衝器Dの伸長作動時に作動室R2の減圧を促進するようにすることもできる。さらに、このように通路6bにも抵抗を与える弁要素を設ける場合には、通路6aと通路6bとを統合して単一の双方向流れを許容して通過液体の流れに抵抗を与える弁要素を設けるようにしてもよい。
【0045】
さらに、本実施の形態の単筒型液圧緩衝器にあっては、液室Lを図1中下方に配置される作動室R2に連通するようにしているが、バイパス路等を設けて液室Lを作動室R1へ連通するようにしてもよい。
【0046】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態における単筒型液圧緩衝器の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における単筒型液圧緩衝器の一部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 シリンダ
2 ピストン
2a 流路
2b 減衰力発生要素
3 ロッド
4 キャップ
4a キャップにおける気体注入孔
4b キャップにおける栓
5 筒
6 仕切部材
6a,6b 通路
7 フリーピストン
7a フリーピストン本体
7b シールリング
8 弁要素としてリーフバルブ
9 ロッドガイド
9a ロッドガイドにおける貫通孔
10 ブラケットにおける基部
11 ブラケットにおける取付部
11a ブラケットにおける孔
12 軸部材
13 チェックバルブ
13 チェックバルブにおける孔
14 シール部材
14a シール部材における内周リップ
14b シール部材における外周リップ
B ブラケット
D 単筒型液圧緩衝器
G 気室
L 液室
R1,R2 作動室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、シリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を二つの作動室に区画するピストンと、シリンダ内に移動自在に挿入されてピストンに連結されるロッドと、伸縮時のシリンダ内に出入りするロッド体積を補償する気室を備えた単筒型液圧緩衝器において、シリンダ内に収容される筒と、当該筒内に補償室を区画する仕切部材と、当該筒内に摺動自在に挿入されて補償室内に液室と気室を区画するフリーピストンとを設け、仕切部材が上記作動室のうち一方と液室とを連通する通路と、少なくとも一方の作動室から液室へ向かう液体の流れに抵抗を与える弁要素とを備えたことを特徴とする単筒型液圧緩衝器。
【請求項2】
筒の一端がシリンダの端部を密閉するキャップに保持されることを特徴とする請求項1に記載の単筒型液圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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