説明

単粒子膜被覆ロールの製造方法、凹凸形成ロールの製造方法、凹凸形成フィルムの製造方法および単粒子膜被覆装置

【課題】継ぎ目のない単粒子膜がロールを被覆した単粒子膜被覆ロールを簡便に製造できる単粒子膜被覆ロールの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の単粒子膜被覆ロールの製造方法は、ロール11を水中に浸漬させる浸漬工程と、水面Aに単粒子膜12を形成する単粒子膜形成工程と、ロール11を、その中心軸が鉛直方向に向いた状態で水面A上に引き上げて、単粒子膜12をロール11の周面11aに移行させる移行工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールの周面に単粒子膜を被覆するための単粒子膜被覆ロールおよび単粒子膜被覆装置に関する。また、該単粒子膜被覆ロールを用いた凹凸形成ロールの製造方法に関する。さらには、該凹凸形成ロールの製造方法により得た凹凸形成ロールを用いて凹凸形成フィルムを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円錐状微細突起が表面に形成されたシート(以下、「凹凸形成フィルム」という。)は、突起の形状や配列に応じて、反射防止性、光拡散性、撥水性などの機能を発揮することが知られている。
表面に円錐状微細突起が形成された凹凸形成フィルムを作製する方法としては、樹脂フィルムに、凹凸形成用の微細構造原版を押し当てる方法が広く知られている。その際に使用する凹凸形成用の原版の作製方法としては、例えば特許文献1,2に、樹脂、金属などの粒子からなる単粒子膜をエッチングマスクとして基板上に配置し、基板表面をエッチングして円錐状微細突起を作製する方法が開示されている。この方法によれば、単粒子膜はエッチングマスクとして作用しつつそれ自身もエッチングされて最終的には削り取られる。その結果、各粒子に対応する位置に円錐状微細突起が形成された原版を得ることができる。
上記凹凸形成用原版の作製において単粒子膜を基板上に配置する方法としては、特許文献1では、水槽に基板を浸漬させた後に水面に単粒子膜を形成し、水中から基板を引き上げながら、単粒子膜を基板に向けて押すことにより、基板に単粒子膜を移行させる方法が採られている。特許文献2では、粒子を含む分散液に基板を浸漬させた後、ゆっくりと引き上げる方法が採られている。
【0003】
ところで、凹凸形成フィルムを作製する際に、凹凸形成用原版としてロール状のものを用いると、ロール・トゥ・ロールで製造できるという利点を有する。従来、ロール状の原版は、円筒状の支持体の周面に、表面に凹凸が形成された凹凸形成薄板を巻き付けて得ていたが、この場合、ロール状の凹凸形成用原版に凹凸形成薄板の継ぎ目が形成された。凹凸形成薄板の材質としては樹脂や金属が使用され、とりわけニッケル電鋳品の薄板が多く使用されていた。
ロール状の凹凸形成用原版に継ぎ目が形成されていると、得られる凹凸形成フィルムに継ぎ目が転写されてしまうが、凹凸形成フィルムの継ぎ目が転写された部分は製品として使用できない。そのため、継ぎ目のないロール状の凹凸形成用原版が求められていた。
ところが、特許文献1における単粒子膜の移行方法は、平板の基板にしか適用できず、ロールの周面に単粒子膜を形成し、その単粒子膜をエッチングマスクとして使用することはできなかった。また、特許文献2に記載の方法では、単粒子膜を形成するための条件設定が難しく、特にロールの周面に単粒子膜を形成するのは困難であった。したがって、特許文献1,2に記載の方法では、継ぎ目のないロール状の凹凸形成用原版は得られなかった。
【0004】
ロールの周面に継ぎ目のない凹凸を形成する方法としては、ロールの周面にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜にレーザ光を照射して潜像し、さらに現像してレジストパターンを形成し、そのレジストパターンをエッチングマスクとしてエッチングする方法が知られている(特許文献3)。
【0005】
ロールの周面に継ぎ目のない凹凸を形成する別の方法としては、アルミニウム製のロールを用意して、陽極酸化法により周面に無数の窪みを形成し、ロール状の凹凸形成用原版を得る方法が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表2008−001670号公報
【特許文献2】特開2009−128538号公報
【特許文献3】特開2009−199086号公報
【特許文献4】再公表2006−059686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の方法は、レーザ光の照射に特別な装置を必要とするため、簡便ではなかった。また、露光により十分な分解能が得られず、作製できる微細構造体のピッチをあまり小さくできないという欠点もあった。
また、特許文献4に記載の方法は作製に長時間を要するため簡便ではなかった。
本発明は、継ぎ目のない単粒子膜がロールを被覆した単粒子膜被覆ロールを簡便に製造できる単粒子膜被覆ロールの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。また、継ぎ目のない凹凸が周面に形成された凹凸形成ロールを容易に製造できる凹凸形成ロールの製造方法を提供することを目的とする。また、継ぎ目のない凹凸が表面に形成された凹凸形成フィルムを容易に製造できる凹凸形成フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]ロールを水中に浸漬させる浸漬工程と、水面に単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、前記ロールを、その中心軸が鉛直方向に向いた状態で水面上に引き上げて、前記単粒子膜をロールの周面に移行させる移行工程とを有することを特徴とする単粒子膜被覆ロールの製造方法。
[2]前記移行工程では、ロールを引き上げると共に、単粒子膜を構成する粒子を含む展開液を水面に補給して新たに単粒子膜を形成する[1]に記載の単粒子膜被覆ロールの製造方法。
[3]前記単粒子膜形成工程では、略円環状のバリアを水面に配置し、バリアの内側の水面に単粒子膜を形成し、前記移行工程では、前記バリアの内側を通るように前記ロールを引き上げると共に、前記バリアの直径を、その中心を動かさずに次第に小さくする[1]に記載の単粒子膜被覆ロールの製造方法。
[4][1]〜[3]のいずれか1項に記載の単粒子膜被覆ロールの製造方法により製造された単粒子膜被覆ロールを気相エッチングするエッチング工程を有して、周面に凹凸を形成した凹凸形成ロールを得ることを特徴とする凹凸形成ロールの製造方法。
[5]凹凸形成ロールの凹凸を樹脂フィルムに転写する転写工程を有する凹凸形成フィルムの製造方法であって、凹凸形成ロールとして、[4]に記載の凹凸形成ロールの製造方法により得たものを用いることを特徴とする凹凸形成フィルムの製造方法。
[6]ロールの周面に単粒子膜を被覆させるための単粒子膜被覆装置であって、前記ロール全体をその中心軸が鉛直方向を向いた状態で浸漬可能な深さを有する水槽と、同一の円周上に略等間隔で配置され、粒子を含む展開液を水槽内の水面に供給する2個以上の展開液供給ノズルと、該2個以上の展開液供給ノズルが配置される円周の内側を通るように、水槽からロールを引き上げる引き上げ装置とを具備することを特徴とする単粒子膜被覆装置。
[7]ロールの周面に単粒子膜を被覆させるための単粒子膜被覆装置であって、前記ロール全体をその中心軸が鉛直方向を向いた状態で浸漬可能な深さを有する水槽と、該水槽内の水面に略円環状に配置された線状体からなるバリアと、該バリアの内側の水面に、単粒子膜を構成する粒子を含む展開液を供給する展開液供給ノズルと、水面上のバリアの直径を、略円環状を維持し且つバリアの中心を動かさずに調整するバリア直径調整装置と、水槽からロールを引き上げる引き上げ装置とを具備することを特徴とする単粒子膜被覆装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の単粒子膜被覆ロールの製造方法および製造装置によれば、継ぎ目のない単粒子膜がロールを被覆した単粒子膜被覆ロールを簡便に製造できる。
本発明の凹凸形成ロールの製造方法によれば、継ぎ目のない凹凸が周面に形成された凹凸形成ロールを容易に製造できる。
本発明の凹凸形成フィルムの製造方法によれば、継ぎ目のない凹凸が表面に形成された凹凸形成フィルムを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第1の実施形態および第2の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法で製造される単粒子膜被覆ロールを示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法で使用される単粒子膜被覆装置を示す概略図である。
【図3】図2に示す単粒子膜被覆装置を構成する展開液供給ノズルの配置を示す上面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法における単粒子膜形成工程を説明する説明図である。
【図5】本発明に係る第1の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法における移行工程を説明する説明図である。
【図6】本発明に係る第2の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法で使用される単粒子膜被覆装置を示す概略図である。
【図7】第2の実施形態における第1のガイドを示す断面図である。
【図8】第2の実施形態における第2〜第4のガイドを示す断面図である。
【図9】図6に示す単粒子膜被覆装置を構成するバリアの周辺を示す上面図である。
【図10】本発明に係る第2の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法における単粒子膜形成工程を説明する説明図である。
【図11】本発明に係る第2の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法における移行工程を説明する説明図である。
【図12】本発明の凹凸形成ロールの製造方法の一実施形態のエッチング工程について説明する説明図である。
【図13】エッチング工程を行うためのエッチング装置の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の凹凸形成フィルムの製造方法の一実施形態の転写工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
「単粒子膜被覆ロールの製造方法」
<第1の実施形態>
本発明の単粒子膜被覆ロールの製造方法の第1の実施形態について説明する。
(単粒子膜被覆ロール)
図1に、本実施形態で製造される単粒子膜被覆ロールの断面図を示す。この単粒子膜被覆ロール10は、円筒状のロール11と、ロール11の周面を被覆する単粒子膜12とを備えている。なお、図1では、単粒子膜12を構成する粒子の大きさを実際の大きさよりも拡大して示している。
【0012】
ロール11は、内部が中実であってもよいし、中空であってもよい。本実施形態で使用されるロール11の一方の端面11bには、ロール11を引き上げる際に使用するロール把持部で把持される掴み代11cが設けられている。
ロール11の材質としては特に制限されないが、後述するように単粒子膜12をエッチングマスクとしてエッチングする場合には、エッチング適性が高いことから、少なくとも表面がSi、Al、Mo、Ta、W、Ti、Cuからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、合金、または半導体で構成されていることが好ましい。また、エッチングに適するという点では、ロール11の材質は、SiOも好ましい。
エッチングしない場合には、ロール11の材質として、Fe、樹脂、ガラスなどを使用することもできる。
【0013】
単粒子膜12は、粒子Pが2次元的に最密充填した膜である。
単粒子膜12を構成する粒子Pの材質としては、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Niなどの金属、Siなどの半金属、SiO、Al、TiO、MgO、CaOなどの酸化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子などが挙げられる。
粒子Pは、表面が疎水性であるものが好ましい。粒子Pの表面が疎水性であれば、後述する単粒子膜被覆ロール10の製造の際に、水面に容易に単粒子膜12を形成できる上に単粒子膜12をロール11に容易に移行させることができる。
上記例示のうち、ポリスチレンなどの有機高分子の粒子は表面が疎水性であるため、そのまま使用できるが、金属粒子や金属酸化物粒子においては表面を疎水化剤により疎水性にすることにより使用できる。疎水化剤としては、例えば、界面活性剤、金属アルコキシシランなどが挙げられる。
【0014】
界面活性剤を疎水化剤として使用する方法は、幅広い材料の疎水化に有効であり、粒子が金属、金属酸化物などからなる場合に好適である。
界面活性剤としては、臭素化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭素化デシルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム、4−オクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤が好適に使用できる。また、アルカンチオール、ジスルフィド化合物、テトラデカン酸、オクタデカン酸なども使用できる。
【0015】
このような界面活性剤を用いた疎水化処理は、有機溶剤や水などの液体に粒子を分散させて液中で行ってもよいし、乾燥状態にある粒子に対して行ってもよい。
液中で行う場合には、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの1種以上からなる有機溶剤中に、疎水化対象の粒子を加えて分散させ、その後、界面活性剤を混合してさらに分散を続ければよい。このようにあらかじめ粒子を分散させておき、それから界面活性剤を加えると、表面をより均一に疎水化することができる。
【0016】
金属アルコキシシランを疎水化剤として使用する方法は、Si、Fe、Alなどの粒子や、AlO、SiO、TiOなどの酸化物粒子を疎水化する際に有効であるが、これら粒子に限らず、基本的には表面に水酸基を有する粒子に対して適用することができる。
金属アルコキシシランとしては、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0017】
疎水化剤として金属アルコキシシランを用いる場合には、金属アルコキシシラン中のアルコキシシリル基がシラノール基に加水分解し、このシラノール基が粒子表面の水酸基に脱水縮合することで疎水化が行われる。よって、金属アルコキシシランを用いた疎水化は、水中で行うことが好ましい。このように水中で疎水化を行う場合には、例えば界面活性剤などの分散剤を併用して、疎水化前の粒子の分散状態を安定化するのが好ましい。ただし、分散剤の種類によっては金属アルコキシシランの疎水化効果が低減することもあるため、分散剤と金属アルコキシシランとの組み合わせは適切に選択する。
【0018】
単粒子膜12の粒子Pの平均粒子径は、得られるロールにより製造されるシートに持たせる機能によって適宜選択される。
例えば、反射防止体作製用原版を作製する場合には、粒子Pの平均粒子径が3〜380nmであることが好ましい。本明細書において、粒子Pの平均粒子径は動的光散乱法により測定した値である。粒子Pの平均粒子径が前記下限値以上であれば、反射防止体において、入射光が通過する屈折率の傾斜した空間の距離を充分に確保でき、いわゆるサブ波長格子による消光効果を良好に得ることができ、前記上限値以下であれば、得られる反射防止体において、光学的な散乱を抑制できる。
また、光拡散体作製用原版を作製する場合には、粒子Pの平均粒子径が1μm〜75μmであることが好ましい。粒子Pの平均粒子径が前記下限値以上かつ前記上限値以下であれば、得られる光拡散体において、充分な光拡散が生じる。
また、粒子Pは、粒子径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下のことがさらに好ましい。このように粒子径の変動係数が小さく、粒子径のばらつきが小さい粒子を使用すると、単粒子膜12において、粒子Pが存在しない欠陥箇所が生じにくくなるため、単粒子膜12をエッチングマスクとして用いた場合には、凹凸の欠陥が少ない凹凸形成ロールを作製できる。
【0019】
(単粒子膜被覆装置)
上記単粒子膜被覆ロール10を製造するための本実施形態の単粒子膜被覆装置について説明する。
図2に、本実施形態の単粒子膜被覆装置を示す。本実施形態の単粒子膜被覆装置20は、ロール11全体をその中心軸が鉛直方向を向いた状態で浸漬できる深さを有する水槽21と、水槽21内の水面Aに、粒子を含む展開液を供給する展開液供給ノズル23と、水槽21からロール11を引き上げる引き上げ装置25とを備える。
【0020】
本実施形態においては、展開液供給ノズル23は、水面Aの上方に設けられ、その先端23aが水面Aに向けられている。展開液供給ノズル23の先端23aと水面Aとの距離は、展開液滴下時に水面Aの乱れを防止できることから、できるだけ近いことが好ましい。
また、展開液供給ノズル23の数はロール11の直径によって適宜選択されるが、図3に示すように、例えば本実施形態では、展開液供給ノズル23は6個であり、各展開液供給ノズル23は同一の円周C上に等間隔で配置されている。このような配置であると、均一な単粒子膜12が得られやすい。
また、円周C上で隣の展開液供給ノズル23,23同士の間隔は、ロール11の大きさにもよるが、30〜300mmであることが好ましい。
【0021】
本実施形態で使用される引き上げ装置25は、ロール11を把持するロール把持部25aと、ロール把持部25aが取り付けられた上下動可能なアーム部25bとを備える電動スライダである。電動スライダからなる引き上げ装置25では、アーム部25bを下降させ、ロール把持部25aでロール11を把持した後、アーム部25bを上昇させて、6個の展開液供給ノズル23の内側を通るようにロール11を引き上げるようになっている。このような引き上げ装置25では、上昇中のロール11の揺れを防止できるため、ロール11の周面11aに単粒子膜を均一に付着させることができる。
【0022】
(単粒子膜被覆ロールの製造方法)
上記単粒子膜被覆装置20を用いた単粒子膜被覆ロール10の製造方法は、ロール11全体を水槽21内の水W(以下、「水槽21内の水W」のことを「下層水W」という。)の中に浸漬させる浸漬工程と、水面Aに単粒子膜12を形成する単粒子膜形成工程と、ロール11を引き上げて水面Aに形成させた単粒子膜12をロール11の周面11aに移行させる移行工程を有する。
【0023】
[浸漬工程]
浸漬工程では、図2に示すように、ロール11を、ロール11の中心軸が鉛直方向に向いた状態で、下層水Wの中に浸漬させる。浸漬方法は、あらかじめ水槽21に下層水Wを入れておき、その中にロール11を浸漬する方法であってもよいし、下層水Wが入れられていない水槽21にロール11を配置してから、水槽21に下層水Wを入れる方法であってもよい。
いずれの方法においても、引き上げ装置25のロール把持部25aにより、ロール11の一方の端面に設けられた掴み代11cをあらかじめ把持し、ロール11を引き上げ可能な状態にしておく。
【0024】
[単粒子膜形成工程]
単粒子膜形成工程では、図4に示すように、展開液供給ノズル23から水面Aに展開液Dを供給することにより、水面A上に単粒子膜12を形成する。ここで、展開液Dは、水および/または有機溶剤に粒子が分散した液である。有機溶剤としては、例えば、クロロホルム、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどが使用される。
単粒子膜の形成は、安定な単粒子膜12を形成できる点で、浸漬工程後、水面Aが安定してから、開始することが好ましい。
また、単粒子膜形成工程では、形成される単粒子膜12を観察しながら、単粒子膜12に欠陥が生じないように展開液供給ノズル23から展開液Dを供給することが好ましい。
【0025】
単粒子膜形成工程は、下層水Wに超音波を照射しながら行うことが好ましい。下層水Wに超音波を照射しながら単粒子膜形成工程を行うと、粒子の最密充填が促進され、各粒子がより高精度で2次元に最密充填した単粒子膜12が得られやすい。
この際、超音波の出力は1〜50Wが好ましく、1〜15Wがより好ましい。このような範囲であると、形成されつつある単粒子膜12を破壊することなく、効果的に粒子の最密充填を促進することができる。
また、超音波の周波数には特に制限はないが、例えば28〜100kHzが好ましい。超音波の照射時間は、10秒間〜60分間が好ましく、より好ましくは3分間〜30分間である。
【0026】
[移行工程]
本実施形態における移行工程では、図5に示すように、引き上げ装置25のアーム部25bを上昇させて、6個の展開液供給ノズル23の内側を通るように、中心軸を鉛直方向に向けた状態でロール11を引き上げる。これと同時に、展開液供給ノズル23を用いて、水面Aに展開液Dを補給して、新たに単粒子膜12を形成する。展開液Dの補給は、ロール11の引き上げが終了するまで継続する。
【0027】
展開液Dの補給量は、ロール11の周面11aに単粒子膜12を欠陥なく付着させる点で、ロール11の周面11aに付着した単粒子膜12の量と同量以上にすることが好ましい。
ロール11の周面11aに付着した単粒子膜12の量と同量にする場合、ロール11を距離Lだけ引き上げた際の展開液Dの補給量x(g)は、ロール11をLだけ引き上げた際に水面Aの上に露出したロール11の周面11aの面積S1と、展開液Dをx(g)補給することによって新たに形成された単粒子膜12が被覆する水面の面積S2とから求められる。以下、「ロール11をLだけ引き上げた際に水面Aの上に露出したロール11の周面11aの面積S1」のことを「ロール引き上げ面積S1」という。また、「展開液Dをx(g)補給することによって新たに形成された単粒子膜12が被覆する水面の面積S2」のことを「新たな単粒子膜の水面被覆面積S2」という。
具体的には、以下の式から求めることができる(ロールの半径=R(cm)、ロールの引き上げ長さ=L(cm)、展開液の濃度=c(質量%)、粒子の半径=r(cm)、粒子の材質の密度(g/cm)=d、粒子1個の体積=(4/3)πr(cm)、粒子1個の水面の被覆面積=(√3/2)r(cm)とする。)。
【0028】
【数1】

【0029】
移行工程では、単粒子膜形成工程と同様に、水面Aに新たに形成される単粒子膜12を観察しながら、単粒子膜12に欠陥が生じないように展開液供給ノズル23から展開液Dを供給することが好ましい。
【0030】
ロール11の引き上げの際、ロール11と各展開液供給ノズル23との間隔は、ロール11の長さより長いことが好ましく、ロール11の長さの1.5倍以上であることが好ましく、2.0倍以上であることがより好ましい。なお、図面においては、ロール11と各展開液供給ノズル23との間隔がロール11の長さより短くなっているが、これは図示の便宜上の理由のためである。
ロール11と各展開液供給ノズル23との間隔を前記長さにすると、補給した展開液Dから形成された単粒子膜12はロール11の周面11aに殆ど移行せず、単粒子膜形成工程にて形成した単粒子膜12が主としてロール11に移行する。移行工程での展開液Dの滴下の際には単粒子膜12の配列の乱れが生じることがあるため、補給した展開液Dから形成された単粒子膜12をロール11の周面11aに移行させると、周面11aに付着させた単粒子膜12に欠陥が生じることがある。しかし、補給した展開液Dから形成された単粒子膜12をロール11の周面11aに移行させないのであれば、周面11aに付着させた単粒子膜12の欠陥を防止できる。
【0031】
ロール11の引き上げ速度は1〜50mm/分とすることが好ましく、5〜20mm/分とすることがより好ましい。ロール11の引き上げ速度が前記下限値以上であれば、単粒子膜被覆ロール10の生産性を向上させることができ、前記上限値以下であれば、単粒子膜移行時に発生する単粒子膜12の欠陥を抑制できる。
【0032】
[固定工程]
移行工程の後には、形成された単粒子膜12をロール11の周面11aに固定するための固定工程を行ってもよい。単粒子膜12をロール11の周面11aに固定することによって、後述のエッチング工程中に粒子がロール11の周面11a上を移動することを抑制でき、より安定かつ高精度にエッチングすることができる。特に、各粒子の直径が徐々に小さくなるエッチング工程の最終段階になると、このような可能性が大きくなる。
【0033】
固定工程における単粒子膜12の固定の方法としては、バインダを使用して固定する方法、焼結により固定する方法がある。
バインダを使用する方法において、バインダの添加は、あらかじめバインダを下層水Wに混合する方法、あらかじめロール11の周面11aに塗布する方法、単粒子膜12をロール11の周面11aに付着後、バインダを含む希薄溶液を単粒子膜12に塗布する方法が挙げられる。
バインダとしては、先に疎水化剤として例示した金属アルコキシシランや一般の有機バインダ、無機バインダなどを使用できる。
バインダを用いた固定では、バインダの種類に応じて、適宜加熱処理を行う。金属アルコキシシランをバインダとして使用する場合には、40〜80℃で3〜60分間の条件で加熱処理することが好ましい。
【0034】
焼結により固定する場合には、単粒子膜12をロール11に付着した後、加熱して、単粒子膜12を構成している各粒子をロール11に融着させればよい。加熱温度は粒子Pの材質とロール11の材質に応じて決定すればよいが、粒径が1μm以下の粒子はその物質本来の融点よりも低い温度で界面反応を開始するため、比較的低温側で焼結は完了する。加熱温度が高すぎると、粒子Pの融着面積が大きくなり、その結果、単粒子膜12としての形状が変化するおそれがある。また、加熱を空気中で行うと、ロール11や各粒子が酸化する可能性があるため、後述のエッチング工程では、このような酸化の可能性を考慮して、エッチング条件を設定することが必要となる。例えば、ロール11としてシリコン製のものを用い、これを1100℃で焼結すると、このロール11の表面には約200nmの厚さで熱酸化層が形成される。
【0035】
(作用効果)
上述した第1の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法では、ロール11を浸漬させた下層水Wの水面Aに単粒子膜12を形成した後にロール11を中心軸が鉛直方向を向いた状態で引き上げるため、ロール11の周面11aの全体にわたって均一に単粒子膜12を移行させることができる。したがって、継ぎ目を形成することなく、水面の単粒子膜12を移行させることができる。
また、ロール11を引き上げながら展開液を水面Aに供給して単粒子膜12を新たに形成するため、常に水面Aを単粒子膜12で覆った状態にすることができる。したがって、引き上げ最中のロール11の周面11aに単粒子膜12を接触させ続けて付着させることができる。
しかも、この方法は、ロール11の周面11aに単粒子膜を付着させるのに大掛かりな装置を用いる必要がないため、簡便に単粒子膜被覆ロール10を製造できる。
【0036】
<第2の実施形態>
本発明の単粒子膜被覆ロールの製造方法の第2の実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法で得られる単粒子膜被覆ロール10は第1の実施形態で製造されるものと同様である。
【0037】
(単粒子膜被覆装置)
本実施形態の単粒子膜被覆装置について説明する。
図6に、本実施形態の単粒子膜被覆装置を示す。本実施形態の単粒子膜被覆装置30は、水槽31と、水槽31内の水面Aに略円環状に配置されたバリア32と、水槽31内の水面Aに展開液を供給する展開液供給ノズル33と、バリア32の直径を調整するバリア直径調整装置34と、水槽31からロール11を引き上げる引き上げ装置35とを備える。
本実施形態で使用される水槽31は、第1の実施形態で使用される水槽21と同様のものである。また、引き上げ装置35についても、第1の実施形態における引き上げ装置25と同様に、ロール把持部35aとアーム部35bとを備える電動スライダである。
【0038】
バリア32は、線状体からなっている。ここで、線状体としては、ワイヤ、チューブなど、屈曲性を有する材料が使用される。バリア32が屈曲性を有することで、バリア32を容易に略円環状に配置でき、また、バリア直径調整装置34によって後述するようにバリア32を巻き取ることができる。
バリア32は、略円環状に配置されることで水面A上の単粒子膜12を取り囲むようになっている。また、バリア32は、後述するように直径が小さくされて、単粒子膜12をロール11に向けて押すようになっている。
ロール11の周面11aへの単粒子膜の被覆を開始する前の状態にて、バリア32が形成する円環の直径は、ロール11と移動前のバリア32との間隔がロール11の長さより長くなるように設定されることが好ましい。なお、図面においては、ロール11とバリア32との間隔がロール11の長さより短くなっているが、これは図示の便宜上の理由のためである。
【0039】
本実施形態で使用される展開液供給ノズル33は、少なくとも展開液供給時に水面Aの上方に配置され、その先端33aが水面Aに向けられている。展開液供給時以外には、展開液供給ノズル33は、水面Aの上方に配置されていなくてもよい。
【0040】
バリア直径調整装置34は、水面A上でバリア32をガイドする4個のガイド(第1のガイド34a,第2のガイド34b、第3のガイド34c、第4のガイド34d)と、水面A上のバリア32の長さを調整するバリア長さ調整手段34eとを有して、水面A上のバリア32の直径を調整する装置である。
【0041】
第1のガイド34a,第2のガイド34b,第3のガイド34c,第4のガイド34dは、水面A上にてバリア32を支持すると共に、バリア長さ調整手段34eによりバリア32の長さを調整する際に、バリア32を、略円環状を維持し且つ中心が動かないようにガイドするものである。
本実施形態では、第1のガイド34aは、バリア32を支持する支持部34fと、支持部34fを移動可能に保持しつつ支持部34fの移動方向を規制する直線状のガイドレール34gとを有する。第2〜第4のガイド34b,34c,34dは、バリア32を支持する支持部34f’と、支持部34f’を移動可能に保持しつつ支持部34f’の移動方向を規制する直線状のガイドレール34gとを有する。
また、本実施形態では、支持部34f,34’には、ガイドレール34gに沿って移動する際の移動量が同一になるように調整する移動量調整機構(図示せず)が設けられている。移動量調整機構としては、電気的に移動量を調整するもの、機械的に移動量を調整するものが挙げられる。
電気的に移動量を調整する場合には、各ガイド34a,34b,34c,34dとして、直線運動する電動アクチュエータを用いることができる。
機械的に移動量を調整する場合には、バリア32の中心の上方に設けられた支柱と、該支柱に上下動可能に取り付けられた環状部材と、該環状部材にヒンジを介して取り付けられ、各支持部34f,34f’に接続された棒状連結部材とを備えるものを用いることができる。
【0042】
第1のガイド34aの支持部34fは、支持部34fを水平に切断した断面図である図7に示すように、バリア32の一端32aが固定されていると共に、バリア32を摺動可能に挿通して支持し且つバリア32を外側に導出するように屈曲した導出孔34hを有している。導出孔34hから導出されたバリア32はバリア長さ直径調整手段34eへと向けられている。
第2のガイド34b、第3のガイド34c、第4のガイド34dの支持部34f’は、支持部34f’を水平に切断した断面図である図8に示すように、バリア32を摺動可能に挿通して支持する貫通孔34iを有している。
導出孔34hおよび貫通孔34iは、バリア32の滑り性を良くするために、フッ素樹脂等の摩擦係数の小さい材料で被覆されていることが好ましい。或いは滑車を用いてバリア32の滑り性を向上させた支持部34f,34f’としてもよい。
バリア32周辺を上から見た図9に示すように、各ガイドレール34gは、バリア32の中心を基準として90°ずつずれて放射状に設置されている。また、ガイドレール34gは、引き上げ時にバリア32の内側を通過するロール11に衝突しないように配置されている。このように配置されたガイドレール34gでは、支持部34f,34f’の移動方向を、バリア32の半径方向に規制する。
バリア長さ調整手段34eは、バリア32が接続されたロータ34eが回転駆動し、バリア32を巻き取って引き取るか又は繰り出して、水面A上のバリア32の長さを調整するものである。
【0043】
上記のバリア直径調整装置34では、バリア長さ調整手段34eのロータ34eを駆動することで、水面A上のバリア32を、支持部34fの導出孔34hを介して巻き取って、バリア32の直径を小さくする。
バリア32を支持する支持部34f、34f’は、90°ずつずれて放射状に設置されたガイドレール34gに移動可能に保持されているため、バリア32を巻き取って直径を小さくした際には、バリア32の略円環形状が保たれ、また、バリア32の中心は同一の場所に維持される。
また、バリア直径調整装置34では、バリア長さ調整手段34eのロータ34eを駆動し、支持部34fの導出孔34hを介して、水面A上にバリア32を繰り出すことで、バリア32の直径を大きくする。バリア32を繰り出して直径を大きくした際にも、バリア32の直径を小さくした場合と同様に、バリア32の略円環形状が保たれ、また、バリア32の中心が同一の場所に維持される。
【0044】
バリア直径調整装置34は、引き上げ装置35に同期して駆動することが好ましい。バリア直径調整装置34が引き上げ装置35に同期して駆動すれば、バリア32の中心方向への移動速度を、ロール11の引き上げ速度に容易に対応させることでき、単粒子膜12の欠陥発生を防止しつつ単粒子膜12をロール11に付着させることが容易になる。
【0045】
(単粒子膜被覆ロールの製造方法)
上記単粒子膜被覆装置30を用いた単粒子膜被覆ロール10の製造方法は、ロール11全体を水槽21内の下層水Wの中に浸漬させる浸漬工程と、水面Aに単粒子膜12を形成する単粒子膜形成工程と、ロール11を引き上げて水面Aに形成させた単粒子膜12をロール11の周面11aに移行させる移行工程を有する。また、必要に応じて、移行工程後に、単粒子膜12をロール11の周面11aに固定する固定工程を有してもよい。
本実施形態における浸漬工程および固定工程は、第1の実施形態における浸漬工程および固定工程と同様である。
【0046】
[単粒子膜形成工程]
単粒子膜形成工程では、図10に示すように、略円環状のバリア32を水面Aに配置し、バリア32の内側の水面Aに展開液供給ノズル33から展開液Dを供給することにより、水面A上に単粒子膜12を形成する。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、水面Aが安定してから、単粒子膜12の形成を開始することが好ましい。また、下層水Wに超音波を照射しながら単粒子膜形成工程を行うことが好ましい。好ましい超音波照射条件も第1の実施形態と同様である。
【0047】
[移行工程]
本実施形態における移行工程では、引き上げ装置35のアーム部35bを上昇させて、略円環状のバリア32の内側を通るように、中心軸を鉛直方向に配置した状態でロール11を引き上げる。
これと同時に、バリア長さ調整手段34eのロータ34eを駆動させて、バリア32を、支持部34fの導出孔34hを介して巻き取り、水面A上のバリア32を短くする。バリア長さ調整手段34eによって水面A上のバリア32を巻き取って短くすると、バリア32の直径は絞られて小さくなる。バリア32の直径が小さくなると、各支持部34f,34f’はガイド32によって中心方向に移動する。これにより、水面A上の単粒子膜12はロール11に押し付けられる。
また、本実施形態では、支持部34f,34f’には移動量調整機構が設けられているため、上記バリア直径調整装置34を用いて水面A上のバリア32の直径を小さくした際には、バリア32の略円環形状が保たれ、また、バリア32の中心は同一の場所に維持される。
【0048】
バリア32の移動によって減少するバリア32内側の面積は、ロール11の周面11aに単粒子膜12を欠陥なく付着させる点で、ロール引き上げ面積S1と同等以上にすることが好ましい。ここで、「ロール引き上げ面積S1」は第1の実施形態における「ロール引き上げ面積S1」と同じ意味である。
バリア32の移動によって減少するバリア32内側の面積S3とロール引き上げ面積S1とを同等とした際のバリア32の移動量は、以下の式から求めることができる(ロールの半径=R(cm)、ロール11の引き上げ長さ=L(cm)、当初のバリアの半径=R、移動後のバリアの半径=R)。
【0049】
【数2】

【0050】
求められた移動量以上にバリア32を移動させれば、バリア32の移動によって減少するバリア32内側の面積S3がロール引き上げ面積S1と同等以上になる。
【0051】
ロール11の引き上げ速度は、第1の実施形態での移行工程と同様に、1〜50mm/分とすることが好ましく、5〜20mm/分とすることがより好ましい。
【0052】
(作用効果)
上記のように、第2の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法においても、第1の実施形態と同様に、ロール11を浸漬させた下層水Wの水面Aに単粒子膜12を形成した後にロール11をその中心軸が鉛直方向を向いた状態で引き上げるため、ロール11の周面11aの全体にわたって均一に単粒子膜12を移行させることができる。したがって、継ぎ目を形成することなく、水面の単粒子膜12を移行させることができる。
また、第2の実施形態の単粒子膜被覆ロールの製造方法では、略円環状のバリア32内側の水面Aに単粒子膜12を形成した後に、図11に示すように、バリア32の内側を通るようにロール11を引き上げながら、略円環状のバリア32の直径を、その中心を動かさずに次第に小さくするため、単粒子膜12をロール11の周面11aの方向に押し続けることができる。したがって、水面A上の単粒子膜12の量が減っても、常に、引き上げ最中のロール11の周面11aに単粒子膜12を接触させ続けて付着させることができる。
この方法も、ロール11の周面11aに単粒子膜を付着させるのに大掛かりな装置を用いる必要がないため、簡便に単粒子膜被覆ロール10を製造できる。
【0053】
「凹凸形成ロールの製造方法」
次に、本発明の凹凸形成ロールの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法で得られる凹凸形成ロールは、周面に凹凸が形成されたロールである。凹凸形成ロールは、反射防止体を得るための原版として用いられる場合には、得られる反射防止体の反射防止性が高くなることから、周面に、円形底面の直径が3〜380nmの円錐状微細突起が形成されていることが好ましい。
このような円形底面の直径が3〜380nmの円錐状微細突起を形成するためには、上述したように、単粒子膜を構成する粒子として、平均粒子径3〜380nmのものを使用すればよい。
光拡散体を得るための原版として用いられる場合には、得られる光拡散体の光拡散性が高くなることから、周面に、円形底面の直径が1〜75μmの円柱状ないし円錐状微細突起が形成されていることが好ましい。
このような円形底面の直径が1〜75μmの円柱状ないし円錐状微細突起を形成するためには、上述したように、単粒子膜を構成する粒子として、平均粒子径1〜75μmのものを使用すればよい。
【0054】
また、各円錐状微細突起の高さは好ましくは100nm以上であり、アスペクト比(高さ/円形底面の直径)は好ましくは0.5以上である。このような高さ、アスペクト比であれば、円錐状微細突起が形成された部分において充分な屈折率傾斜効果が得られ、円錐状微細突起側から入射しようとする入射光のフレネル反射を効果的に抑制できる。
より好ましいアスペクト比は1.0以上、さらに好ましくは1.5以上である。一方、好ましいアスペクト比の上限は4.0である。
【0055】
本実施形態の凹凸形成ロールの製造方法は、上記単粒子膜被覆ロールの製造方法により得られた単粒子膜被覆ロール10をエッチングするエッチング工程を有する。すなわち、エッチング工程では、ロール11の周面に被覆した単粒子膜12をエッチングマスクとして使用して、ロール11を気相エッチングする。
このようにロール11を気相エッチングすることにより、ロール11の周面11aに円錐状微細突起を多数形成することができる。すなわち、気相エッチングを開始すると、まず図12(a)に示すように、単粒子膜12を構成している各粒子Pの隙間をエッチングガスが通り抜けてロール11の周面に到達し、その部分に溝が形成され、各粒子Pに対応する位置にそれぞれ円柱11’が現れる。引き続き気相エッチングを続けると、各円柱11’上の粒子Pも徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、ロール11の溝もさらに深くなっていく(図12(b))。そして、最終的には各粒子Pはエッチングにより消失し、それとともにロール11の周面に多数の円錐状微細突起11dが形成される(図12(c))。
【0056】
気相エッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、Ar、SF、F、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、Cl、CCl、SiCl、BCl、BCl、BC、Br、Br、HBr、CBrF、HCl、CH、NH、O、H、N、CO、COなどが挙げられ、単粒子膜12を構成する粒子やロール11の材質などに応じて、これらのうちの1種以上を使用できる。
エッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などが使用される。また、エッチング装置は、最小で20W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバの構造、高周波電源の周波数等の仕様には特に制限ない。
気相エッチングの際には、通常、図13に示すように、エッチング装置40のチャンバ41内にて、単粒子膜被覆ロール10を、その中心軸が鉛直方向に沿うように、電極42上に配置する。
【0057】
実際のエッチング工程においては、図12に示したように突起の形状が円柱状から円錐状に変化していく過程で、円錐の側面(側壁)がエッチングされてしまい、その結果、形成される円錐状微細突起11dは、側壁の傾斜が大きく、かつ、隣り合う円錐間の溝の縦断面形状がV字ではなくU字となってしまう傾向がある。このような形状になると、充分な屈折率傾斜効果を発揮できず、入射光のフレネル反射の抑制が不充分となる可能性がある。よって、本エッチング工程においては、いわゆるボッシュ法を採用するなどして、エッチングによって形成した側壁を保護しながらアスペクト比を向上させ、突起の形状を理想的な円錐状に近づけることが好ましい。
【0058】
すなわち、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、Cをはじめとするフロン系のエッチングガスは、プラズマ状態で分解された後、分解物同士が結合することで高分子化し、テフロン(登録商標)のような物質からなる堆積膜をエッチング対象物の表面に形成することが知られている。このような堆積膜はエッチング耐性があるため、エッチング保護膜として作用する。
よって、このようにエッチングガスの種類を適宜選択するなどして、エッチング保護膜を形成しながらエッチング工程を行うことが、より理想的な形状の円錐状微細突起11dを形成できる点で好ましい。
【0059】
上記凹凸形成ロールの製造方法では、上記単粒子膜被覆ロール10を気相エッチングすることで、単粒子膜12をエッチングマスクとして利用して、周面11aに凹凸を形成することができる。しかも、ロール11の周面11aに付着した単粒子膜12は継ぎ目がないから、気相エッチングにより、継ぎ目のない凹凸が周面に形成された凹凸形成ロールを製造することができる。
【0060】
「凹凸形成フィルムの製造方法」
次に、本発明の凹凸形成フィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の凹凸形成フィルムの製造方法は、凹凸形成ロールの凹凸を樹脂フィルムに転写する転写工程を有する。具体的には、転写工程は、下記(a)(b)の方法で行われる。
(a)図14に示すように、回転する凹凸形成ロール51に熱可塑性の樹脂フィルムFを供給し、樹脂フィルムFに凹凸形成ロール51を、補助ロール52を用いて押圧し、凹凸51aを転写した後、樹脂フィルムFを凹凸形成ロール51から剥離する方法。
(b)回転する凹凸形成ロールに熱硬化性あるいは活性エネルギー線の樹脂フィルムを供給し、樹脂フィルムに凹凸形成ロールに押圧して凹凸51aを転写した後、加熱あるいは活性エネルギー線(紫外線または電子線)の照射により樹脂を硬化させ、樹脂フィルムを凹凸形成ロールから剥離する方法。
【0061】
(a)の方法において、樹脂フィルムFの材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、セルロースエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドなどが挙げられる。
具体的には、ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等が挙げられる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
セルロースエステルとしては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられる。
アクリル樹脂としては、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
ポリカーボネートとしては、ビスフェノールAポリカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
ポリスチレンとしては、各種立体規則、あるいは不規則性を有するポリスチレン等が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドや2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン等で加硫したポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
上記樹脂は単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよいし、共重合体であってもよい。
【0062】
樹脂フィルムFに凹凸形成シート51を押圧する前または最中には樹脂フィルムFを加熱することが好ましい。
樹脂フィルムFの加熱温度は、樹脂フィルムFを構成する樹脂のガラス転移温度以上とされる。加熱温度の上限は、融点以下であってもよいし、融点より高い温度であってもよく、実用的に凹凸を転写可能な範囲で適宜設定される。
樹脂フィルムFの加熱温度が、樹脂フィルムFを構成する樹脂のガラス転移温度以上であれば、樹脂フィルムFを構成する樹脂がガラス状態からゴム状態に転移し、分子運動性が高くなるため、凹凸形成ロール51の凹凸51aを転写させやすくなる。
なお、加熱温度の上限値が融点を超える場合には、樹脂フィルムFの下に基材を設けて樹脂フィルムFが溶融した際の移送手段とすることが好ましい。樹脂フィルムFの下に設ける基材としては、金属箔、前記樹脂フィルムよりも融点が高い他の樹脂フィルムが挙げられる。加熱温度の上限値が融点以下である場合には、樹脂フィルムFの下に基材がなくても供給可能である。
樹脂フィルムFを構成する樹脂の種類にもよるが、加熱温度は、より好ましくは、樹脂フィルムFを構成する樹脂のガラス転移温度より0〜40℃高い温度である。
【0063】
樹脂フィルムFに凹凸形成シート51を押圧する前に加熱する場合には、樹脂フィルムFの加熱方法として、樹脂フィルムFに熱風を吹きつける方法または赤外線を照射する方法が挙げられる。
樹脂フィルムFに凹凸形成シート51を押圧する最中に加熱する場合には、樹脂フィルムFの加熱方法として、ロール51内部から電気、温水または蒸気等で加熱する方法、赤外線の照射による加熱方法等が挙げられる。温度精度を考慮すると、電気による加熱が好ましい。
樹脂フィルムFに押圧する際の圧力は1〜100MPaであることが好ましい。押圧時の圧力が前記下限値以上であれば、凹凸51aを高い精度で転写させることができ、前記上限値以下であれば、過剰な加圧を防ぐことができる。
押圧後には、凹凸形状を保持するために樹脂フィルムFを冷却することが好ましい。冷却方法としては、樹脂フィルムFに凹凸形成ロール51を押圧する最中に加熱した場合、押圧する前に加熱した場合とも、凹凸形成ロール51から樹脂フィルムFを剥離する直前に凹凸形成ロール51の内部または外側に冷却用空気や冷却水を流して冷却する方法が適用される。そのため、凹凸形成ロール51表面の離型箇所を局所的に冷却する機構が必要である。冷却後、樹脂フィルムFを凹凸形成ロール51から剥離する。
【0064】
(b)の方法における樹脂フィルムは、剥離性基材の上に、熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂の層を有するものである。
熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いた場合の硬化温度は、使用する樹脂に応じて適宜選択される。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニル/アクリレート、ポリエン/アクリレート、シリコンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルメチルメタクリレート等のプレポリマー、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、芳香族アクリレート、水酸基含有アクリレート、アリル基含有アクリレート、グリシジル基含有アクリレート、カルボキシ基含有アクリレート、ハロゲン含有アクリレート等のモノマーの中から選ばれる1種類以上の成分を含有するものが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂を紫外線により硬化する場合には、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂にアセトフェノン類、ベンゾフェノン類等の光重合開始剤を添加することが好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂には、硬化後の硬度を上昇させる目的で、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一方を使用してもよい。また、反応性無機酸化物粒子および/または反応性有機粒子を含有してもよい。
【0065】
上述した凹凸形成フィルムの製造方法では、上記凹凸形成ロール51の凹凸51aを樹脂フィルムFに転写するため、継ぎ目のない凹凸が表面に形成された凹凸形成フィルムを容易に製造できる。
【0066】
得られた凹凸形成フィルム60は、凹凸によって反射防止機能を持たせた場合には、そのまま、パソコン、携帯電話、デジタルカメラなどにおける各種ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、リアプロジェクター、FED、OLEDなどのFPD)、ショーウィンドゥなどの窓ガラス、展示額縁、各種表示窓、光学レンズ、太陽電池、道路・交通標識や看板を構成する光学材料などの表面に適用する反射防止体として使用できる。
また、凹凸形成フィルム60は、凹凸によって光拡散機能を持たせた場合には、そのまま、ディスプレイ、照明器具などに適用する光拡散体として使用できる。
また、凹凸形成フィルムは、円錐状微細突起によって撥水性が発揮されるため、撥水フィルムとして使用することもできる。
【0067】
また、凹凸形成フィルム60を凹凸形成用の原版フィルムとして使用してもよい。凹凸形成フィルム60の凹凸を樹脂に転写させることにより、凹凸転写フィルムを得ることができる。
凹凸形成フィルム60を凹凸形成用の原版フィルムとして使用した場合の凹凸の転写方法としては、下記の(a)〜(c)の方法が挙げられる。
(a)原版フィルムの凹凸が形成された面に、未硬化の活性エネルギー線硬化性樹脂を塗工する工程と、活性エネルギー線を照射して前記硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を原版フィルムから剥離する工程とを有する方法。
(b)原版フィルムの凹凸が形成された面に、未硬化の液状熱硬化性樹脂を塗工する工程と、加熱して前記液状熱硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した塗膜を原版フィルムから剥離する工程とを有する方法。
(c)原版フィルムの凹凸が形成された面に、シート状の熱可塑性樹脂を接触させる工程と、該シート状の熱可塑性樹脂を原版フィルムに押圧しながら加熱して軟化させた後、冷却する工程と、その冷却したシート状の熱可塑性樹脂を原版フィルムから剥離する工程とを有する方法。
上記(a)〜(c)で使用される樹脂としては、凹凸形成フィルム60の製造で使用する樹脂と同様ものが挙げられる。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、上記単粒子膜被覆ロールの製造方法の第1の実施形態では、展開液供給ノズル23の数が6個であったが、本発明の単粒子膜被覆ロールの製造方法では、展開液供給ノズル23の数は6個でなくてもよい。ただし、展開液供給ノズル23の数が少なすぎると、補給した展開液Dによって形成される単粒子膜12が不均一になるおそれがあるため、展開液供給ノズル23の数は4個以上であることが好ましい。ただし、展開液供給ノズル23の間隔が近すぎると、良好な単粒子膜が作製できなくなる傾向にあるため、ノズル間距離が30mm以下にならないことが好ましい。
また、上記単粒子膜被覆ロールの製造方法の第2の実施形態では、ガイドが4個であったが、本発明の単粒子膜被覆ロールの製造方法では、ガイドの数は4個に限定されない。しかし、バリアを略円環状に維持するためには、ガイドの数は3個以上であることが好ましい。ただし、ガイドは多数設置する必要もないから、16個以下であることが好ましい。
また、第1の実施形態および第2の実施形態の製造装置を構成する引き上げ装置として、フックと、フックに取り付けられたワイヤと、ワイヤが周面の一部に巻かれた滑車と、ワイヤの巻き取りまたは繰り出しが可能な引き上げ高さ調節器とを備えるホイストを用いることができる。ホイストでは、引き上げ高さ調節器によりワイヤを巻き取ることにより、フックを上昇させ、また、引き上げ高さ調節器によりワイヤを繰り出すことにより、フックを下降させるようになっている。
【0069】
本発明の凹凸形成フィルムの製造方法では、単粒子膜被覆ロールをエッチングして得た凹凸形成ロールを原版ロールとして用いて凹凸形成フィルムを得たが、凹凸形成ロールに代えて単粒子膜被覆ロールをそのまま原版ロールとして用いて凹凸形成フィルムを得ることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 単粒子膜被覆ロール
11 ロール
11a 周面
11b 端面
11c 掴み代
11d 円錐状微細突起
12 単粒子膜
20,30 単粒子膜被覆装置
21,31 水槽
23,33 展開液供給ノズル
25,35 引き上げ装置
25a,35a ロール把持部
25b,35b アーム部
32 バリア
34 バリア直径調整装置
34a 第1のガイド
34b 第2のガイド
34c 第3のガイド
34d 第4のガイド
34e バリア長さ調整手段
34f,34f’ 支持部
34g ガイドレール
34h 導出孔
34i 貫通孔
40 エッチング装置
41 チャンバ
42 電極
51 凹凸形成ロール
51a 凹凸
52 補助ロール
60 凹凸形成フィルム
A 水面
F 樹脂フィルム
P 粒子
W 下層水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールを水中に浸漬させる浸漬工程と、水面に単粒子膜を形成する単粒子膜形成工程と、前記ロールを、その中心軸が鉛直方向に向いた状態で水面上に引き上げて、前記単粒子膜をロールの周面に移行させる移行工程とを有することを特徴とする単粒子膜被覆ロールの製造方法。
【請求項2】
前記移行工程では、ロールを引き上げると共に、単粒子膜を構成する粒子を含む展開液を水面に補給して新たに単粒子膜を形成する請求項1に記載の単粒子膜被覆ロールの製造方法。
【請求項3】
前記単粒子膜形成工程では、略円環状のバリアを水面に配置し、バリアの内側の水面に単粒子膜を形成し、
前記移行工程では、前記バリアの内側を通るように前記ロールを引き上げると共に、前記バリアの直径を、その中心を動かさずに次第に小さくする請求項1に記載の単粒子膜被覆ロールの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の単粒子膜被覆ロールの製造方法により製造された単粒子膜被覆ロールを気相エッチングするエッチング工程を有して、周面に凹凸を形成した凹凸形成ロールを得ることを特徴とする凹凸形成ロールの製造方法。
【請求項5】
凹凸形成ロールの凹凸を樹脂フィルムに転写する転写工程を有する凹凸形成フィルムの製造方法であって、
凹凸形成ロールとして、請求項4に記載の凹凸形成ロールの製造方法により得たものを用いることを特徴とする凹凸形成フィルムの製造方法。
【請求項6】
ロールの周面に単粒子膜を被覆させるための単粒子膜被覆装置であって、
前記ロール全体をその中心軸が鉛直方向を向いた状態で浸漬可能な深さを有する水槽と、
同一の円周上に略等間隔で配置され、粒子を含む展開液を水槽内の水面に供給する2個以上の展開液供給ノズルと、
該2個以上の展開液供給ノズルが配置される円周の内側を通るように、水槽からロールを引き上げる引き上げ装置とを具備することを特徴とする単粒子膜被覆装置。
【請求項7】
ロールの周面に単粒子膜を被覆させるための単粒子膜被覆装置であって、
前記ロール全体をその中心軸が鉛直方向を向いた状態で浸漬可能な深さを有する水槽と、
該水槽内の水面に略円環状に配置された線状体からなるバリアと、
該バリアの内側の水面に、単粒子膜を構成する粒子を含む展開液を供給する展開液供給ノズルと、
水面上のバリアの直径を、略円環状を維持し且つバリアの中心を動かさずに調整するバリア直径調整装置と、
水槽からロールを引き上げる引き上げ装置とを具備することを特徴とする単粒子膜被覆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−20389(P2012−20389A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161755(P2010−161755)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】