説明

単色X線生成用X線源

本発明は、電子(E)を放出する電子源(1)、電子(E)の入射に応答して実質的に単色のX線である特性X線(C)を放射する対陰極(4)及びX線をアウトカップリングするアウトカップリング手段(11)を有するX線源に関する。高いパワーローダビリティを伴う実質的に単色のX線である特性X線を実現するために、厚さ10μm未満の金属箔(5)に電子が入射する。基材(7、12)は、当該金属箔(5)の金属がX線(C)を生成できる大きい原子番号を有し、実質的に基材(7、12)に含まれる物質がX線(C)を生成させない小さい原子番号を持つよう用意される。アウトカップリング手段は、電子(E)が入射する側で、基材(7、12)とは反対側の金属箔(5)側でのX線(C)だけをアウトカップリングするよう構成される。当該側では、ほとんど制動放射線が生成されないからである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子を放出する電子源、電子入射に応えてX線を放射する対陰極及びX線をアウトカップリングするアウトカップリング手段を有するX線源に関する。さらに、本発明はそのようなX線源で使用される対陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
液体金属の乱流中で制動放射線を生成するこの種のX線源はLIMAX(液体金属陽極X線源)とも呼ばれ、米国特許第6185277号明細書で説明されている。電子は、例えばモリブデン若しくはタングステンから成る金属箔又はダイヤモンド膜の電子ウィンドウを通して、流れる液体に入射する。電子ウィンドウは有意に薄く、特に数μmであり、そのため電子ビームのウィンドウでの損失は、初期エネルギーのほんの一部分だけである。
【特許文献1】米国特許第6185277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、実質的に単色のX線の生成を可能とするX線源及びそのようなX線源を使用するための対陰極を提供することであり、これにより有意な線量低減を実現し、既知のX線源に比べより高いパワーローダビリティを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該目的は本発明に従った請求項1に記載のX線源により実現される。請求項1に記載のX線源は以下の要素から構成される。
●電子を放出する電子源。
●電子の入射に応答して実質的に単色のX線である特性X線を放射する対陰極であって、当該対陰極は10μm未満の厚みを持つ金属箔及び当該金属箔を支える基材を持ち、当該金属箔の金属はX線生成可能な大きい原子番号の金属であり、実質的に基材に含まれる物質はX線を生成させない小さい原子番号の物質である対陰極。
●電子が入射する側であり基材の反対側である金属箔側でX線をアウトカップリングするアウトカップリング手段。
【0005】
かかるX線源の使用に対応する対陰極は請求項14に規定される。
【0006】
本発明は、基材に支えられた薄い金属箔での電子衝突に基づき、離散的線スペクトルを発生させるX線源を提供する考えに基づいている。基本的な考えは、電子が入射した側の対陰極側で放射される放射線すなわち、初期電子ビーム方向とは原則的に反対方向に放射される放射線を観察することで、その放射線を制動放射線から区別することである。電子ウィンドウを構成する金属箔は、金属箔に入射する電子ビームの角度視準をある程度まで保つため有意に薄く生成される。金属箔の厚さは電子拡散深度より薄く、従って、電子ビームのかなりの部分は直接基材に向かう。特定の状況でこれが有効な条件であるか否かは、電子−光子移送のシミュレーション例えばモンテカルロシミュレーションによってのみ確かめられる。提供されるX線源のパワーローダビリティはこのように、既知の固定陽極X線源のパワーローダビリティより大幅に大きいものである。
【0007】
本発明の好適な実施例が従属項に規定される。本発明は一般的に厚さ10μm未満の金属箔を用いることでもたらされるが、最適な結果は、厚さ5μm未満、好適には厚さ1乃至3μmの金属箔で得られる。
【0008】
さらに金属箔は一般的に、電子の入射に応答したX線生成を可能とする金属で生成される。金属箔用物質の選択は、放射されるX線で要求される光子エネルギーにより決定付けられる。原子番号Zが20以上90以下のすべての金属が有力候補となるが、高い機械的強度、高い融点及び基材への接合の容易さを有する金属が好適となる。好適な物質は原子番号が40と80との間の物質である。好適な候補物質は例えばタングステン、モリブデン又は金である。
【0009】
好適な実施例に従った基材は、当該金属箔の電子の入射する側の反対側に沿ってクーラントが流れるよう準備される冷却回路を有し、すなわち、金属箔は流水ビームダンプにより冷却される。既知のLIMAX装置の設計パラメータ最適化支援のため、電子飛程、その拡散率、流速及び乱流度合いのような液体金属パラメータに基づいた最大焦点温度の決定に単純アプローチが採用された。拡散モデルは有限要素プログラムによるモデルと比較的一致するという結果を得ている。
【0010】
上記拡散モデルの入力パラメータを変更する過程で、水冷装置での熱移動が、最適液体金属候補に関する一定焦点温度で、パワーローダビリティの10倍増加に繋がるという予期しない結果が得られた。数量的にいうと、焦点面積1mmx10mmでは数10kWの電圧を、水の沸点温度を越えることなく電子ビームに掛けることができるということである。ここに提案されるX線源の実施例では、クーラント自身でのX線発生を避けるため小さい原子番号を持つクーラントを利用して金属箔対陰極での高いパワーローダビリティを得るために、この性質が生かされている。
【0011】
一般的にクーラントは電子の入射に応答するX線生成を避けるため小さい原子番号を持つこととなるが、原子番号は好適には10未満である。そのような液体には炭化水素化合物に基づくオイルばかりでなく水も含まれる。X線源の高いパワーローダビリティは、水をクーラントとして利用することで得られることになった。
【0012】
金属箔領域でのクーラントの大きい速度を達成するために、クーラントが内部を流れる冷却回路はこの領域に狭窄を有する。従って、金属箔の有効な冷却が得られ、クーラントの沸騰が回避される。
【0013】
別の好適な実施例に従って、対陰極はクーラントに面する側に金属箔を支えるキャリアを有する。金属箔の厚みが非常に薄いため、金属箔の物質によっては機械的安定性を向上させ、かつ、金属箔を支持するためのキャリアが必要となる。このような場合、適切なキャリアである例えば薄いダイヤモンド層が提供され得る。
【0014】
診断放射線医学分野の単色X線を用いるいくつかの医療応用例では、高い放射輝度のX線源が必要であり、従って高パルス電源で、短時間照射(1秒以下)のものが必要となる。本発明の好適な実施例では、回転陽極管形状が使用され、そこでの基材は原子番号10未満、特に4乃至6の物質からなる回転基準板を有する。基準板は薄い金属箔を支持する機能を提供し、それが高速で回転する場合には、基材に直接向かう電子エネルギーを対流により取り除く機能を提供する。この回転陽極管装置の短期間のパワーローダビリティは冷却回路を有する実施例のパワーローダビリティの少なくとも10倍であり、金属箔と基準板との結合が、冷却回路を有する実施例よりもかなり高いトラックスピードで、かなり高い温度で操作できるようになる。従って、この実施例は診断放射線医療における現実の単色X線源に向けた重要なステップとなる。
【0015】
制動放射線がX線ビームに含まれるのを回避するため、X線透過性のX線ウィンドウのようなアウトカップリング手段が提供される。アウトカップリング手段は一般的に金属箔の反射方向に伝播するX線のみを伝える。すなわち放射方向のX線はアウトカップリングされない。好適な実施例ではアウトカップリング手段は、請求項10で規定されるように反射方向から所定の角度範囲に伝播するX線のみを伝える。これは、制動放射線がほとんど完全に放射方向に伝播し、反射方向及び当該所定の角度範囲には伝播しないため、ほとんど特性単色X線のみしかアウトカップリングされないことを確保する。
【0016】
別の実施例に従って、アウトカップリング手段は当該電子入射方向の実質的に反対方向にあるX線をアウトカップリングするよう適用され、特に当該電子入射方向に対し150°乃至210°の角度範囲の方向に適用される。
【0017】
もうひとつ別の好適な実施例に従って電子は金属箔の表面に実質的に90°の角度、すなわち表面に垂直になるよう方向付けられる。この方向は最も高いX線生成効率を確保する。しかし、アウトカップリングされたX線ビームを電子源が遮断することを回避するため、電子源は好適には当該X線ビームの外、すなわち金属箔表面に90°の方向からは異なる角度に配置される。電子が実質的に90°の角度で確実に金属表面に入射するよう、電子ビームを方向付ける適切な手段、例えば適切な偏光コイルが提供される。
【0018】
本発明は図を参照して、より詳細をこれから説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、2mmアルミニウムフィルター及び10°の陽極角を使用する150keVの電子ビームに応答する重厚なタングステン陽極の対陰極を有する既知のX線管の光子スペクトルを示す。ほぼ離散的なK線の光子のスペクトルにある光子の合計に対する比率は、X線源の単色光性Mの指標となる。本発明のX線源との比較のため、図1に示すスペクトルのM値は約10%である。電子拡散はX線管陽極での熱移送に無視できない寄与を与えることがよく知られている。この寄与は、固体の、例えば回転陽極X線管で、熱パルスが対陰極の媒質を介して拡散するのに必要な時間が短くなるほど大きくなる。電子拡散要素は、陽極が比較的低い伝導性を有する場合、熱移送を支配できる。これは、陽極が大きい原子番号を持つ液体金属よりむしろ小さい原子番号を持つクーラントを有する液体陽極管の場合である。非常に高いローダビリティ、すなわち陽極の単位温度上昇を導く単位焦点面積あたりのパワーローダビリティ(ローダビリティはWmm−2−1の単位を持つ。)が、これにより達成される。液体の陽極水のローダビリティ50Wmm−2−1が実現可能であり、既知の液体金属の陽極で得られる最大ローダビリティよりも有意に高いものである。
【0020】
また、制動放射線の角分布が、前方方向へのX線放射に特に好適な、相対論的電子ビームのための高い異方性を有するものであることを立証する。この状況は、タングステン自由原子の128keVの電子の制動放射強度Bの極座標を示す図2に図示される。原子はプロットの中心にあるものとされ、電子ビームは矢印Eで示すように垂直上方に伝播する。強度は中心から曲線にかけてのベクトル長さに比例する。特性X線Cの角分布もまた示されている。角分布が等方的として見られるように、特性X線の強度はすなわち、電子ビームE方向の逆方向を含み、実質的にすべての方向で等しいものである。光子生成の輪切り表示は光子エネルギー及び放射角で違いがあることを示す。
【実施例】
【0021】
これら考慮は共に、クーラントが特に水である、流れるクーラントビームダンプで冷された薄い金属箔上の電子衝突に基づく離散的線スペクトルを示すX線源のアイデアに通ずる。本発明に従ったX線源の第1実施例を図3に示す。例えば光電陰極である電子源1が、コイル2で生成される外部磁場の影響下にある電子ビームEを放出する。コイル2は電子ビームが対陰極4の電子ウィンドウ3に垂直に入射するよう回転する。電子ウィンドウ3は、必要に応じ薄い例えばダイヤモンドのキャリア6で支持される、K線が励起される物質から成る薄い金属箔5を有する。
【0022】
対陰極4はさらに、中空チューブでクーラント8がその中を矢印9の方向に流れる冷却回路7を有する。クーラント8の流速を電子ウィンドウ3領域の特に金属箔5の下で増大させるために、冷却回路7は狭窄10をその領域に有する。すなわち、冷却回路7の断面が、他の領域の断面に比べて小さくなっている。
【0023】
金属箔5の厚みは電子拡散深度より薄いか等しいものである。電子拡散深度とは、電子ビームEの入射方向に伝えられる単位長さ当たりのエネルギー損失がその最大値を持つ深度である。それは実験式から予測され、または、電子伝達のモンテカルロプログラムから導き出される。150keVの電子のタングステン箔への入射では、その値はほぼ4μmである。金属箔の厚さを電子拡散深度より薄いか等しくなるよう選択することは、電子速度ベクトルが等方的に分配される機会を確実に無くするようにする。実際、金属箔の当該薄さは、電子エネルギーの20%未満が金属箔5に、またこれに対して電子エネルギーの80%以上がクーラント8に向かうことを意味する。
【0024】
このエネルギーの電子飛程は、タングステンで約20μmであり、全電子エネルギーのかなりの割合のエネルギーが直接クーラントに向かうことが明白である。第1の概算において、電子が入射した単位秒当たりのクーラント量はVRLであり、Vは狭窄10でのクーラント8の流速を表し、Lは図3に示す平面に垂直な電子焦点距離を表し、また、Rは好適にクーラントとして選択された水における電子飛程を表す。従って、この水量が温度上昇ΔTとして単位秒当たりに受けるエネルギー量はVRLΔTCであり、最後の係数Cは水の熱容量(4.2MJm−3−1)である。電子ビームEの入射方向に伝えられる単位長さ当たりのエネルギー損失は電子飛程にわたって一定であるものと仮定し、V=50ms−1、R=250μm、L=10−2m、ΔT=25°の値を当てはめると、約10kWの電力が導き出される。
【0025】
上述の条件に基づき、5μm未満の金属箔厚、好適には1乃至3μmの金属箔厚、例えば2μmを想定する。全電力の約5%(約1kW)は金属箔5に向かう。ΔT=50°の温度上昇であるこの熱負荷は上記所与の水流速で十分取り除かれることができる。
【0026】
想定されるクーラントは小さい平均原子数Zを持ち、制動放射線生成の輪切り表示は原子番号Zに比例するので、クーラントにおけるX線生成はほとんどない。
【0027】
金属箔5に浸透する電子は、衝突励起により金属箔物質をイオン化するよう反応し、あるいは時折制動放射線の生成を介して反応する。前者は入射電子が十分なエネルギーを有する場合にはK殻電子を含む。励起された原子は特定X線を放出しその基底状態に戻る。特定X線は例えば、57keVのエネルギー(Kα1線)である。特定X線は等方的に放射される。後者の効果は制動放射であり、ほぼ完全に伝播方向すなわち図3でいう下方に向かい放射される一方、反射方向すなわち図3でいう上方、特に金属箔5の平面に垂直な方向への制動放射線の強度は非常に弱いものである。
【0028】
従って、金属箔からの放射が反射方向、特に電子ビームと逆方向で角度範囲α、好適には±20°に、適切なアウトカップリング手段11、例えばX線透過のウィンドウを利用して観察されると、その放射は、クーラント8からの低い制動放射強度のノイズ上に金属箔5の金属の特性線が重ねられて構成される。これは高発光の準単色光スペクトルCをもたらす。単色光は数多くの医療及び科学の放射線学領域で有用であり、患者への線量を低減させた検査、検知器の較正及び新しい診断様式を含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
金属箔における電子ビームEの平均エネルギー損失は、Bethe−Blochのエネルギー損失の関係から導き出されるThomson−Whiddington法により近似的に得られる。Thomson−Whiddington法はE=E−xbρで表される。Eは初期電子エネルギー、xは平均電子エネルギーをEまで低下させるのに必要な電子ビームの初期方向における金属箔厚である。他の符号はそれらの相手に対し意味を持つ。
【0030】
Thomson−Whiddington定数bはタングステンの値として150kevで8・10keVkg−1の値を持つ。これは電子飛程に比べ薄い厚さで、金属箔厚の1μm当たりのエネルギー損失5keVをもたらす。電子飛程はEをゼロまで低下させるのに必要な金属箔厚xの値であり、この方程式から約20μmとなる。
【0031】
2μm厚のタングステン箔を有し、150keVの電子で照射する図3のX線源の実施例で、後方に向かうX線のシミュレーション結果が図4に表される。スペクトルは、初期電子ビームの逆方向に15°の半角を開くコーン形状方向に放射される放射線を示す。上述の単色光性パラメータMはこの装置の値として0.45を有し、幾何学的な最適化、高電圧化及びフィルター手段により、さらに改善され得る。
【0032】
図5は、陽極4(すなわち対陰極)が回転する回転陽極管形状を有する本発明の別の実施例を示す。この実施例の設計は二極管すなわち、チューブハウジング13が陰極及び陽極の両HTからインシュレータ14を介して断絶された二極管形状を採用し、この設計は短パルス照射の医療X線管で最も普及している。設計は、チューブハウジング及び陽極の相対的なバイアスと無関係であり、また一方、単極X線管でも容易に実現できる。
【0033】
図5を参照すると、高電圧電極は光電陰極1に必要な負バイアス及び電流を電子放出器(例えば熱電子放出)のために供給する。静電気又は電磁気によるビーム偏光器(図示せず)の動きを介し、電子ビームEは従来の方法で、正バイアスされた陽極4に垂直上方に向け入射する。陽極4の形状及び他のX線管設計の詳細(インシュレータ、光電陰極、ベアリング等)は電子衝撃X線管技術に通じている者にはよく知られており、従ってここではより詳細には触れないこととする。
【0034】
陽極4での電子ビームEの衝突領域は、より詳細が図5の拡大差込み図に示される。K特性X線が励起される薄い金属箔5の物質(例えばタングステン、モリブデン等)は陽極基材12上に蒸着される。金属箔5は厚みTを有し、電子拡散深度Dとの関係で、TはD以下である。
【0035】
チューブハウジング13で陽極4に相対するのは、X線管の出口ウィンドウ11である。出口ウィンドウ11は、電子ビームの入射方向の反対方向(160°≦θ≦180°)に陽極4から放射される放射線だけを選択するよう配置される。第1実施例で説明したように、この選択は金属箔厚Tの条件と共になされ、金属箔5の準単色K特性線が支配的にX線ビームを構成することを確実にする。
【0036】
陽極基準板12の物質は小さい原子番号Zを有する必要がある。制動放射X線生成なしに電子エネルギーを吸収するためである。高い融点、高い熱伝導率及び高い熱容量を持つ物質が有利である。陽極基準板12のための2つの明確な候補はベリリウム(Be)及びグラファイト(C)である。後者は高い蓄熱容量を有するX線管のどのような事例にも広く使用されている。熱伝導率が良く(150Wm−1−1)、高い比熱(700Jkg−1−1)を持つためである。
【0037】
グラファイト上のタングステン箔の組み合わせは詳細に調べられ、1000℃より高い温度でも安定することが明らかになっている。金属箔はまた、ベリリウム上に蒸着(例えば電気メッキ)されてもよいが、高温になるとベリリウム内に拡散する問題があるようである。金属箔5と陽極基準板12との間にある厚さ0.1μmの白金(Pt)緩衝層が必要な場合もある。
【0038】
図5の装置のパワーローダビリティは、クーラントの熱物理パラメータが陽極基準板のものに置き換えられると、図3記載の上記実施例に類似する。V=50ms−1、R=100μm、L=10−2m、ΔT=1000℃の値を、Cp=700Jkg−1−1及びρ=2500kgm−3で使用すると、1mm焦点当たり100kWになるまでの低温陽極上の瞬間電力を導き出す。グラファイト基材が温まるにつれて、ローダビリティは明瞭に減少する。この関係が現れる範囲は、グラファイト基材の詳細設計例えば、(陽極の回転軸に平行な)厚み及び陽極の直径によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】既知のX線管の厚い対陰極の光子スペクトルを示す図である。
【図2】薄いタングステン対陰極からのX線放射の極座標を示す図である。
【図3】本発明に従った冷却回路を有するX線源の第1実施例を示す図である。
【図4】本発明に従った薄い対陰極の光子スペクトルを示す図である。
【図5】本発明に従った回転陽極管形状を有するX線源の第2実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を発する電子源;
前記電子の入射に応答して実質的に単色の特性X線を発する対陰極であり、
厚さ10μm未満の金属箔及び当該金属箔を支持する基材を有し、前記金属箔の金属はX線を生成できる大きい原子番号を有し、前記基材に実質的に含まれる物質はX線を実質的に生成しない小さい原子番号を有する、ところの対陰極;及び、
前記電子が入射する側であり、前記基材側の反対である前記金属箔側にX線をアウトカップリングするアウトカップリング手段;
を有することを特徴とするX線源。
【請求項2】
前記基材が、10未満、特に4乃至6の原子番号を有する物質の回転可能な基準板を有することを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記基材は冷却回路を有し、
当該冷却回路は、前記電子の入射する側の反対である前記金属箔側に沿ってクーラントが流れるよう配置されることを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項4】
前記クーラントが10未満の平均原子番号を有することを特徴とする請求項3に記載のX線源。
【請求項5】
前記クーラントが水であることを特徴とする請求項3に記載のX線源。
【請求項6】
前記冷却回路が前記金属箔の領域に狭窄を有することを特徴とする請求項3に記載のX線源。
【請求項7】
前記対陰極がさらにキャリアを有し、
当該キャリアは平均原子番号が小さい、特に10未満の小さい原子番号の物質で、前記クーラントに面する側で前記金属箔を支持することを特徴とする請求項3に記載のX線源。
【請求項8】
前記金属箔が厚さ5μm未満、好適には1μm乃至3μmであることを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項9】
前記金属箔の金属が40乃至80の原子番号を有することを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項10】
前記アウトカップリング手段が、前記金属箔の表面に対し、実質的に45°乃至135°の角度範囲の角度で、特に70°乃至110°でX線をアウトカップリングするよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項11】
前記アウトカップリング手段が、前記電子の入射方向に実質的に反対である方向で、特に前記電子の入射方向に対して150°乃至210°の角度範囲の方向でX線をアウトカップリングするよう構成されることを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項12】
前記電子が実質的に90°の角度で前記金属箔の表面に方向付けられることを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項13】
前記電子源が、アウトカップリングされるX線ビームの外に位置され、
前記X線源が、さらに前記電子ビームを前記金属箔に向けて方向付ける手段を有することを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項14】
特性X線、実質的には電子の入射に応答して単色X線を生成するX線源に使用される対陰極であって、
当該対陰極は、厚さ10μm未満の金属箔と当該金属箔を支持する基材とを有し、
前記金属箔の金属は、X線を生成できる大きい原子番号を有するものであり、
実質的に前記基材に含まれる物質は、X線を生成させない小さい原子番号を有するものである、
ことを特徴とするX線源に使用される対陰極。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−510192(P2006−510192A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502341(P2005−502341)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005649
【国際公開番号】WO2004/053919
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】