印刷により有機発光ダイオードディスプレイをパターニングする方法およびそのシステム
作動すると自己点灯可能な静止画像を有する装置であって、有機発光ダイオード(OLED)装置の層上に発光インクを用いて印刷された画像の構成画素を備え、パターンの外形が画素によってのみ定められ、層の前成形を必要としないよう形成される。画素は、OLEDのPEDOT層または陰極等の層上にインクジェット技術を用いて印刷され、全ての画素を同時に作動するための単一の陽極および単一の陰極のみを必要とし、選択画素を別々にアドレス指定する必要がない。色画素は、異なる色の発光インクを用いて形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットディスプレイは、今や必需品となりつつある。大型の装置において最も一般的なのは、コンピュータのCRTの代替としてのLCDパネルや非常に大型のテレビのCRTの代替としてのプラズマディスプレイである。また、携帯電話やPDA等の、LCD型のフラットパネルを利用した小型機器もある。
【0003】
これらの装置は全て同一のパターニング原理に基づいており、列と行とに沿って配置された1mm未満の画素(「ピクセル」)の配列に画面を分割し、これらのうち列および行単位で電気的にアドレス指定を行うものが「パッシブマトリクス」ディスプレイであり、「アクティブマトリクス」ディスプレイの場合には個々にアドレス指定を行う。アドレス指定を行う場合、特殊な電子機器およびソフトウェアを用いる。
【0004】
このようなアドレス指定によって、表示される画像を変化可能つまり動画とすることが要求される。LCDの場合、画素化(pixelized)構造は、ディスプレイの設計に必須である。同じことがプラズマディスプレイにも当てはまり、ガスを充填した非常に多くのセルからなるプラズマディスプレイは、個々のセルごとにアドレス指定を行う必要がある。
【0005】
ディスプレイの分野において最近開発されたのがいわゆる有機発光ダイオード(OLED)である。OLEDディスプレイは、電流によって励起されると光を発する有機材料を基材としたものである。本出願に関して、共役ポリマーからなる有機材料を含むOLEDディスプレイ(PLEDディスプレイと称する)は、インクジェット装置において利用されるような細かいノズルを介してポリマーの溶液を排出することにより製造が可能であると述べておけば十分である。
【0006】
OLEDの放射性を用いて、動画ではなく静止表示を行うような用途にこのような材料を応用する試みがなされてきた。なお、本発明での「静止」という用語は、表示される画像が一定で変化しないことを意味する。
【0007】
2003年10月8日公開のイーストマン・コダック社による欧州特許第1351303号明細書(発明の名称「有機発光ディスプレイを用いた選択画像の表示」、特許文献1)には、それぞれが1以上の所望の色を有する複数の画像のうち選択された画像を表示する有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法が開示されている。画像は、静止画像であり、アドレス指示の必要はない。
【0008】
OLEDにより作り出されるカラーの形状を用いて、以下の方法で画像が実現される。まず、陽極か陰極かである電極を基板上に形作る。次に、電極の形状に対応した特定の色の光を発するよう設計された発光材料を電極の形状が占める領域に堆積する。異なる色の微小領域を空間的に組み合わせることにより、同時に点灯した時には、形成された電極が所望の特定の色を有することとなる。このような方法では、電極を形作ることが第1の基本的な要件である。
【0009】
このような手段により、基板上にカラーアイコン表示が作り出され、個々のアイコンは別々に点灯され、各アイコンの形状は電極のパターニングによって予め形成されたものである。
【0010】
2002年12月31日付公開の米国特許第6,501,218号明細書(デュガルら、発明の名称「屋外用エレクトロルミネセントディスプレイ装置」、特許文献2)には、OLEDディスプレイが記載されており、陽極、陰極またはその両方がパターニングされており、パターニングされた電極の領域においてのみ光が発せられる。
【0011】
1999年5月11日付公開の米国特許第5,902,688号明細書(アントニアディスら、発明の名称「エレクトロルミネセントディスプレイ装置」、特許文献3)には、陽極、陰極、絶縁体および有機エレクトロルミネセント層を有するエレクトロルミネセントディスプレイ装置が開示されている。パターニングされた絶縁層が、陽極と正孔放出層との間または陰極と電子放出発光層との間に挿入される。このような絶縁層は、フォトレジストエポキシ材料からなり、製造の際にマスクを介してUV光を照射することでパターニングが可能である。
【0012】
UV光がフォトレジストに当たった場所では、フォトレジストが「硬化」してその部分は残されるが、露光されなかったフォトレジストは洗い流される。これにより、絶縁層がパターニングされ、パターニングされた領域では発光が阻止されて、非絶縁領域に対する相補的なパターンの表示が行われることとなる。
【0013】
上述のような特許公報全てにおいて、絶縁層内の不連続領域またはパターニングされた電極領域を示す表示が結果として得られることになる。表示を見た人の視覚的印象は、絶縁材料の場合にパターニングされた画像が「ネガティブ」として実現されようがパターニングされた電極の場合に「ポジティブ」として実現されようが同じである。
【0014】
パターニングされた絶縁層またはパターニングされた電極を作成するには、マスクの使用や複数工程処理が必要となり、異なる表示において異なるパターンを使用すべき場合にはマスクを交換する必要性がある。さらに、異なる領域において複数の色を使用すべき場合には、このような方法を用いるのは非常に困難または不可能な場合さえある。
【0015】
また、米国特許第5,902,688号明細書では、実際には被覆の一部のみが使用される時にも高価な発光材料を全面に被覆する必要がある。
【0016】
発光ポリマーを基材とするOLEDディスプレイパネルは、図1に示すような比較的簡単な多層構造を有し、以下を備える。
1.透明ガラスまたはプラスチック材料のベース層1。
2.透明層上にスパッタにより堆積されたインジウム錫酸化物(ITO)からなる比較的透明な陽極2。
3.PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等の材料の超薄被膜で形成された正孔放出層3。この層は、スピンコーティング、ドクターブレードコーティングまたはインクジェット装置からの排出により作成可能である。
4.PPVまたはポリフルオレン構造の共役ポリマーまたはリン酸共役ポリマーからなる発光層である電子放出層4。簡潔にするために、図面にはPPVと示し、以降PPVと称する。
5.層4上にスパッタにより堆積された、または箔として塗布されたCa、AuまたはAlからなる陰極5。層4同様この層も透明である必要はない。
6.水分や酸素からその他の層をシールするためのシール層(図示せず)。
【0017】
全ての層を組み合わせた厚みは1mm未満とすることができ、プラスチック材料を基材として選べば、このような種類のフラットパネルディスプレイは折り曲げたり曲面に沿うよう作成可能である。
【0018】
現在入手可能なPLEDフラットパネルディスプレイの大半は、動画を表示するよう構成されており、表示を動的に変更可能なようにアドレス指定可能な多数の画素を有し、非常に美しいビデオ画像が表示可能である。
【0019】
2003年5月20日公開の米国特許第6,565,231号明細書(アール・エス・コック、発明の名称「OLED有機エリア照明装置」、特許文献4)には、基板、陽極、陰極および有機エレクトロルミネセント層およびカプセル化カバーを有するエレクトロルミネセントディスプレイ装置が開示される。2つの電極は、装置の外に延び、電源に接続される。この特許は、2Dおよび3Dの自立式の照明を様々に組み合わせて配置した複合照明パネルに関する。しかしながら、一つのパネルに一色以上を用いることまたは別の装置内にパネルを組み込むことの示唆はない。
【0020】
米国特許第6,565,231号明細書の図13は、2つ以上の光源が共通の線の端と端とに並べられ、ステンドグラスのような装飾的チャネルがもたらされた照明器具を示している。これは、動画とは対照的な静止画像を作り出すのにOLEDを使用した別の例である。さらに、米国特許第6,565,231号明細書によって教示された方法は、所望の表示パターンに予め成形された電極を使う必要が無いので、上述の欧州特許第1351303号明細書とは異なる。ただし、パターニングは、マスクを介した堆積、一体型シャドウマスキング(integral shadow masking)、レーザ除去、選択的化学気相蒸着法等の従来からのリソグラフィ技術を用いて行う。プロセス印刷技術を用いてパターンを印刷することに関する示唆はない。また、単一電極対のみを必要とし、静止画像を規定する複数のカラー画素を有する単一のOLEDパネルにおいてステンドグラスの様相を達成することについては何ら示唆がない。
【0021】
さらに、米国特許第6,565,231号明細書に開示される発光層は一般にゲスト化合物を1種類または複数種類ドープしたホスト材料からなり、発光は主にこのドーパントから得られ、任意の色であり得る。あるいは、装置上に色フィルタ、濃度フィルタまたは色温度変換フィルタを設けて異なる色を達成することも可能である。ただし、三原色に対応する3つの画素を設けて異なる色を得ることについては何ら示唆がない。
【0022】
一方、X/Yマトリクスの画素として構成され、各画素が1以上の着色サブピクセルを含むようなアクティブまたはパッシブディスプレイマトリクスの形式での多色点灯OLED装置について記載する情報は特許およびその他の技術文献において豊富に存在する。しかしながら、これらの技術においては、当然個々のアドレス指定が要求され、カラー画素の場合にはRGBに付き3本のアドレス線と3つのトランジスタが必要となる。このようなOLEDマトリクス装置は、TV、コンピュータ、PDAおよび携帯電話ディスプレイ用のフラットパネルディスプレイとして使用することを意図したものであり、非常にきれいなビデオ画像を表示可能なレベルにまで表示が時間に応じて動的に変化可能であるようにアドレス指定可能な複数の画像構成要素を有するよう構成される。
【0023】
静止した変化しない画像を、多くの場合様々な色を有するように表示することが要求される場面がある。例えば、従来からの静止画像としていくつか例を挙げると、広告板、美術館の工芸品等の展示品において表示されるようなものがある。このような場合、アドレス線やそれに伴う回路は冗長であり不必要に複雑かつ高価である。
【0024】
従って、陽極や陰極を成形する必要なく、基板の全領域を絶縁層で覆う必要なく、固定した静止パターンを表示するよう構成されたOLEDを提供することが望ましい。形や色をプロセス印刷に類似した方法により形成するとさらに良い。
【0025】
形や色をプロセス印刷と同一の方法により形成するとさらに良い。
【特許文献1】欧州特許第1351303号明細書
【特許文献2】米国特許第6,501,218号明細書
【特許文献3】米国特許第5,902,688号明細書
【特許文献4】米国特許第6,565,231号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
固定画像を表示するためにOLEDを使用することが本発明の主な目的である。
【0027】
画素がアドレス指定可能ではない画素化されたディスプレイを用いて固定画像を表示することが本発明の他の主な目的である。
【0028】
画像を印刷することによって固定画像を表示するのにOLEDを使用することが本発明のさらに他の主な目的である。
【0029】
本発明の更なる目的は、陶製タイルと同じような大きさおよび形状のタイル内部において、一表示につき1以上の色を有する固定のパターニングされた画像を表示するためにOLEDを用いることに関し、点灯された画像は好ましくは、パターンや画素が個々にアドレス指定可能ではないパターン化されたまたは画素化された表示を用いる。
【0030】
このようなタイルは、従来からのタイルが壁や床において耐えるよう設計される量の圧力を支えるのに十分な強度を有するものであり、壁、床および天井等の建築部材に簡単に組み込むことができ、さらに従来の陶製タイルによって舗装されるような構造にも含められるものであることが好ましい。
【0031】
好ましい実施態様によれば、タイルを含むOLEDの機能性は、構成要素の影響を受けうやすい構造物内や水泳用プールの壁や床において水中で埋め込まれた際にも維持される。
【0032】
本発明の更なる目的は、励起電流により点灯された際にステンドグラス窓の視覚体験を与えるようなOLED装置を提供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、平面だけではなく曲面ともなりうるような支持構造を可能とする一方、紙の上に従来の印刷と同じまたは類似の方法を用いて「自己」点灯式のグリーティングカードの機能を有し、平面的な水平面上で直立位置において保持可能なように固定画像を表示するためにOLEDを使用することである。命令を受けた時にのみ作動させることによって、このようなグリーティングカードの機能性が有効となることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0034】
このような目的のために、本発明は、簡便かつコストを抑えた固定パターンの表示を可能とするOLEDおよびその製造方法を開示する。その製造方法は、紙の上にインクジェットで印刷するのと同じぐらい簡単であるので、表示される画像のパターニングは、個々の表示ごとに別々に行うことが可能である。本発明によれば、列および行によるアドレス指定や個々の画素のアドレス指定を必要とせず、非常に少ない僅か2つの電極を必要とするパターニングの方法が提案される。
【0035】
したがって、本発明の第1の側面によれば、自己点灯可能な静止画像を作成する方法であって、
有機発光ダイオード装置(OLED device)の層上に、発光インクを用いて前記画像の構成画素を印刷する工程と、
前記有機発光ダイオードに電圧を印加するための陰極および陽極を設ける工程とを含み、
前記印刷する工程において、前記層の前成形することなく、パターンの外形が前記構成画素によってのみ定められるように、パターン形成することを特徴とする方法が提供される。
【0036】
本発明の第2の側面によれば、作動すると自己点灯可能な静止画像を有し、
有機発光ダイオード装置の層上に発光インクを用いて印刷された前記画像の構成画素を含み、パターンの外形が前記画素によってのみ定められ、前記層の前成形を必要としないよう形成された装置が提供される。
【0037】
このようなディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ(LCD)が必要とするような電力を消費するバックライトを必要とせず、プラズマ放電パネルが必要とするような大電力とは対照的に電池駆動が可能である。さらに、製造方法はインクジェット印刷のように非常に簡単であり、印刷の結果は、印刷インクが反射性ではなく放射性である所が非常に異なる。本発明が提案する原理を利用することにより、反射インク印刷において使用されるのと同様の方法で放射印刷のドットサイズ、色濃度および色合い濃度等の非常に細かい細部を制御可能となり、電極の複雑なパターニングやパターン化された絶縁層の挿入を行う必要はない。したがって、本発明に係るディスプレイのようなフレキシブルなパターニングにより、新たな用途への利用が容易となり、そのうちの幾つかの用途を以下に説明する。
【0038】
本発明によれば、静止画像を作成するために有機発光溶液のプロセス印刷が提供される。好ましい実施態様において、このような印刷は、インクジェット印刷装置にあるような細かいノズルからポリフルオレンやPPVを含む溶液を噴射することにより行う。先に述べたように、OLED溶液を用いたインクジェット装置はこれまでにも使用されていたが異なる目的、すなわち、アドレス指定可能な画素を作成するために規則的な順序で赤、緑、青の液滴を噴射するものであった。本発明は、同様のインクジェット排出技術を利用するものの、複雑な静止画像を作成するよう設計されるものであり、従来のプロセス印刷に類似しており、インクジェット装置によっても行えるものである。
【0039】
図2Aおよび2Bは、その特徴および従来のプロセス印刷と本発明が提案するものとの違いの概略をまとめた図であり、これについて以下にもっと詳しく概略する。
【0040】
本発明によれば、静止画像の作成は、1以上の色を有する発光ポリフルオレンまたはPPVの溶液を直接インクジェット印刷することによりなされる。フルカラー画像を得るために、赤、緑および青があればほぼ十分であるが、色域(color gamut)を増やすことが望ましい場合には、さらに色を追加してもよい。
【0041】
米国のエイチ・ダブリュ・サンズ社は、動画表示に使用する赤、緑および青のエミッタだけではなく、黄、橙および青/緑エミッタも供給している。他にカナダのアメリカンダイズソーシーズ社も、赤、緑および青のエミッタに加えて、橙、黄および紫のエミッタも供給している。このようなエミッタを単独または組み合わせて使い、従来のプロセス印刷と同様の方法で印刷すれば、インクジェット印刷で使用されるような細かいノズルを介してエミッタのカラー溶液を噴出することにより任意の色のパターンの印刷が容易に行える。
【0042】
一般的に入手可能なインクジェットプリンタは、いわゆるプロセスカラーによって印刷を行っている。4つのインクの組合せを用いて目に見える色の大半を再現している。これらのインクは透明で、薄膜に印刷するとフィルタとして機能する。白色光はインクを通過し、白色背景で反射されてインクの色を示す。このようなインクは、白色光のスペクトルの一部を減じることより、減法インク(subtractive ink)とよばれる。印刷において一般的に使用される組合せは、シアン、マゼンタ、黄および黒である。黒インクは、暗い部分を強調するために使用される。
【0043】
減法インクの動作原理により、印刷画像を準備するために使用される前印刷工程が決まる。従来のインクジェット印刷用の画像は通常、スキャナー、デジタルカメラまたはグラフィックソフトウェアからのRGB画像から生じたものである。このような画像は、それぞれが一定の色値を有する画素からなる。第一段階は、これらの画像を4つのデジタル層を有するCMYKファイルに変換することであり、CMYKインクで同時に印刷すると元の画像が再現されることになる。昨今、このような作業は完全にコンピュータ処理されており、複雑な数学的変換を含む。
【0044】
このCMYKデータは、印刷の質を微調整するために処理を加えてもよい。印刷の質を改善し、CMYKインクや特定のインクジェットヘッドの限界のいくつかを克服するために、各種参照表を利用する。ほとんどのインクジェットヘッドは、極小さい液滴で印刷を行い、これにより基板上に固定色強度(color intensity)が得られる。所望の色を異なる濃さにするためには、その色を構成する液滴を周波数を変えて印刷すると、平方mm当たりのドット数が変化して濃さを変化させることができる。あるいは、液滴をそれぞれ面積が異なる小さいグループで印刷してもよい。フルカラー画像を周波数や大きさを変えたドットからなる画像に変換する処理は、階調表現(half-toning)またはスクリーニング(screening)と呼ばれる。
【0045】
中間調(halftone)ファイルは、プロセスカラーを分離したもの(セパレーション)からなり、それぞれがビットマップ(黒および白)画像である。このビットマップ画像をさらに処理して特定のインクジェットヘッドを用いた印刷に適したものとする。従来の印刷において行われるようなスクリーニングやディザリングによって画像を前処理してもよい。さらに、画像の補正および修正を行うために公知の印刷技術を用いて画像を調整してもよい。このような修正としては、カラーバランス、色の濃さ、カラーリニアライゼーション、オーバーラッピング等が含まれる。これらの技術はそれ自体は公知であるが、OLEDの分野でこれらの応用が提案されたことはない。
【0046】
本発明において提案するようなOLED材料による印刷は、類似してはいるが同一ではない。
【0047】
従って、本発明が従来のインクを用いたプロセス印刷とは異なる点は、
1.OLED「インク」は透明でも反射性でもなく、エミッタである。
2.OLEDの基本カラーは、CMYではなくRGBである。
3.色調は、ドットを横に並べて印刷するか、ドットを重ねるかのいずれかにより作り出す。いずれの場合も、CMYKインクとは異なって、色の組合せは、光学的原理と共に電気的相互作用により得られる。
4.従来のRGBからOLEDカラーへの色変換も各OLEDカラーの「セパレーション」に関する色変換もCMYK変換とは全く異なる。
5.OLED材料の性質により、スクリーニング処理が画像の最終的な色に強く影響する。この現象はCMYK印刷にはほとんど存在しない。
6.印刷される液滴間の相互作用により、ノズルの配置(nozzle-mapping)もCMYKのノズル配置とは異なる。
7.パターンに対応しない領域をパターンが目立つような背景として機能する任意の無彩色(neutral color)で「埋め」、完成した層を簡単に印刷可能である。例えば、背景領域は、カラーインクと導電性が類似しているが発光性を持たない材料で形成されたインクを用いて印刷することができ、ゆえに見た目は黒となる。ただし、その他の任意の無彩色を同様に使用することも可能である。この構成がない場合には起こり得るかもしれないPEDOT層とOLEDの陰極との間のショートがこれにより防止される。ただし、背景領域を避けるように電極を予め成形すればこれは必要ない。
【0048】
本発明は、上述したOLEDエミッタの特異な特性に対処するソフトウェアを組み込むことによりこのような違いに対処している。画像デザインをRGBスキャンしたものから得られる特定の静止画像に関するソフトウェアが一旦準備できれば、ソフトウェア制御の下でカラーOLEDエミッタの溶液を排出することにより画像が簡単に作成されるので、本発明が提案する印刷処理は、従来のカラー静止画像を作成する方法より簡単である。
【0049】
各溶液は専用ノズルからかあるいは専用のマルチノズル装置から排出されるので、ソフトウェアは、液滴の大きさやPEDOT層上の位置等の工程に関する全ての所望属性に対する命令を与えることになる。この工程によりOLEDエミッタの全色の溶液の全ての噴射機構動作が処理され、所望される基本デザインに沿ったカラーOLED静止画像が最終結果として得られる。
【0050】
上述したように、反射性の色を用いた従来のインクジェット印刷工程と放射性の色を用いた本発明に係る印刷工程との間には根本的な差異がある。ただし、本発明はこのような技術的差異にではなく、PPV発光インクを用いて画像を形成する画素をインクジェット等のプロセス印刷を用いて直接印刷することにより、静止画像がPEDOT層やOLEDの陰極上に直接パターニング可能であるという認識に帰するものであることを強調しておく。静止パターンなので、このような方法であれば、別々のアドレス線や各画素の電子部品を活性化する必要はなく、画素を予め形成した電子部品に整列させる必要もない。さらに、このような方法であれば、画像が形成されないパターン層の領域(すなわち、パターニングされない背景に相当)は、所望の任意の無彩色で印刷することが可能である。これによって全パターンが非導電性材料で形成されたインクで覆われるので、電極を予め成形する必要がない。一方このような構成でない場合には、パターンのない空の領域がOLEDの隣接層とショートしないようにする必要がある。
【0051】
本発明を理解し、実際にどのように実施するか分かるように、好ましい実施態様を添付図面を参照して以下に示す。ただし、これらの記述は、例示にすぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は本質的に、従来の画素化されたディスプレイと比べて非常に簡単なアドレス方式を可能とする固定画像の表示用にPLEDを使用することを提案するものである。
【0053】
その結果、本発明により以下に示す利点が得られる。
1.ソフトウェアによる制御の下、異なるディスプレイ要素上に異なるパターンを作成可能である。
2.視認されるパターンがディスプレイ領域全てを占めるわけではない場合、機能しない領域における発光材料を節約できる。
3.画像が固定である限り、複数の電極や電子アドレス指定素子を用いる必要なく多色の複雑な画像を作成および表示可能である。
本発明は、鮮明なアクティブ光画像を描写するのに望ましいエレクトロルミネセント材料(上述の「層4」)のパターンを印刷するのにインクジェット技術を利用している。ディスプレイの全領域をカバーする1つの陽極および1つの陰極だけが必要となる。さらに、正孔放出層で連続的に被覆され、単に発光OLED材料を選択的に被覆するだけでパターニングが可能である。
【0054】
これは、インクジェット装置を用いて発光材料(PPV)を噴射することにより行われる。PPVは、インクジェット装置で噴出可能なように十分低い粘度の溶液に溶解しておく。ふさわしい溶剤は例えば、アニソールやベンゼン系溶剤である。ただし、アグレッシブな溶剤に溶解するので、ほとんどのインクジェット装置はこの用途にはふさわしくない。発明者らは、ガラスとシリコンとだけでできたインクジェット装置であって、接着剤の代わりに電子的に部品を接合したものを採用すればふさわしいことを発見した。本発明を実施するために採用するインクジェット装置は、PPV溶液でダメージを受けるまたは汚染されるようなものであってはならない。このような要件は、電子的に接合したシリコンおよびガラスでできた、イスラエルのインダストリアルインクジェットテクノロジーのPL−128等のインクジェット装置により満たされる。
【0055】
ふさわしいインクジェット装置を用いれば、エレクトロルミネセント層で構成されたパターンが迅速に得られる。単一のディスプレイをそれぞれ印刷していくので、異なるディスプレイ上のパターンはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、これは印刷をソフトウェアで制御することにより達成される。ディスプレイの連続的な陰極および連続的な陽極間に電流を流すことによりディスプレイが電気的に活性となる。
【0056】
図3は、発光材料の印刷により得られた文字「A」の形状のパターンを示した図である。
【0057】
解像度が300または600dpiで数十またはわずか数ピコリットルの液滴を用いたマイクロジェット装置であれば、単にPPV溶液を噴出するだけでなく、均一なPPV層を形成することも可能となり、これによって必要があれば均一な色および輝度が得られる。各ポイントでの液滴の数と大きさを制御すればこのようになる。
【0058】
ディスプレイの全面積を占めないパターン状にPPV材料を印刷すると、PEDOT層が陰極と直接接触する領域が得られる。したがって、このような領域では、陰極と陽極とが薄い部分的な導電性のPEDOT層によってのみ分離されている。先に述べたように、本発明は、絶縁体として機能する非共役ポリマーを含む発光インクで覆われないこのような領域を印刷することにより結果として生じる「ショート」を避けている。
【0059】
図4に示すように、PPV発光層の厚みを正確に制御することができれば、固定印刷パターン内で点灯のサブパターンを作成することが可能となる。層が薄い所では、厚い所よりも点灯が弱く(すなわち、色が薄く)なる。このようなサブパターニングは、英国特許第2,384,115号明細書に記載のように輝度(luminance)を落とすのではなく増すことにより行われる。英国特許第2,384,115号明細書によれば、マスクを介して照射されるパターニングしたUV光を用いて、ディスプレイの一部の輝度を下げている。本発明では反対のことが起こっており、インクジェットパターニングを用いて発光PPV材料をより多く含むパターンを作成することにより輝度を上げている。
【0060】
段階的な点灯を可能とする他の方法として、従来からの印刷において使用されるものに類似したスクリーニングやディザリングを用いても可能である。離散したドットの形状に材料を噴出し、ドットの濃度が増えれば点灯のレベルが増加する。したがって、図5に示すように、ドット同士が近いほど(密集スクリーン)、照度が高くなる。
【0061】
<本発明により可能となった新規な実施態様>
本発明によれば、前述の米国特許第5,902,688号明細書および米国特許第6,501,218号明細書により示唆されるような一定の色の点灯記号やマーカーを作成するだけでなく、一色以上でできた記号やマーカーを作成することが可能となる。これにより、いろいろな色のPPVが市販されているので、異なるノズルからの異なる色を用いて所望のパターンの作成が可能となる。インクジェット装置は、幾つかのインクジェットヘッドで構成され、それぞれが異なる色のPPV溶液を排出する。
【0062】
基本的に、それぞれR、B、Gの色を有する3つの別々のインクジェットヘッドを用いて、従来行われていたような紙の上に印刷されたC、M、YおよびKのインクジェット印刷により得られたものと同様の解像度およびデテールを有するカラー画像の形式でパターンを印刷することも可能となる。その違いは、OLEDの印刷画像は、各印刷されたドットがカラー背面光を反射せず、ディスプレイに共通の陰極と共通の陽極との間に電流が流れていればいつでも光を発することである。
【0063】
このような画像は、「固定」画像であり、マトリクスディスプレイのように動的に変化可能ではない。この違いは、アクティブマトリクスディスプレイに要求される複数の列および行の電極とは対照的に、本発明ではアドレス指定できない電極が2本だけ必要であるという事実による。また、アクティブマトリクスのような画素ごとの各トランジスタの必要もない。さらに、マトリクスタイプのOLEDディスプレイに必要な複雑なソフトウェアや複数のドライバとは対照的に、本発明のディスプレイを動作させるためのソフトウェアやドライバは必要ない。
【0064】
かくして、ディスプレイ上に描写される画像がもともと静止および固定画像である場合には、簡単かつコストが安いために従来のマトリクス駆動型OLEDディスプレイよりも本発明の装置の方が好ましい。
【0065】
本発明のこのような側面は、個別にまたは大量に製造される、額入りもしくは額に入っていない自己点灯式の静止画像および自己点灯式のグリーティングカード等の新規製品において利用可能である。これらは全て、画素を選択的にアドレス指定する必要なく、デジタル制御された発光「インク」印刷方法によって可能となる。このような用途の例について、図6〜14を特に参照しながら以下に説明する。
【0066】
インクジェット技術を用いてOLEDディスプレイ上に固定画像を製造することに特に関連して本発明を説明してきたが、複合陽極および陰極間に電圧を印加した際に、各画素が所望の色の光を発するよう結果として得られる画像の各画素が正確にカラー合成される、即ちR、G、Bのバランスが正確であるよう制御可能であれば、その他の印刷技術を用いてもよいことを理解されたい。したがって、適切な印刷技術としては、カラーオフセット印刷等も含まれる。
【0067】
また、PEDOT層上またはOLEDの陰極上にパターンを印刷することに特に関連して本発明を説明してきたが、これは、これらの層上にパターンを印刷することが、特に有効であることを見出したからである。ただし、本発明は、パターンがOLEDの他の層上に印刷されたOLED装置も包含する。
【0068】
OLED装置をカラー画素のインクジェット印刷を用いて構成するという原理について説明してきたが、2つの電極のみを備えたOLEDのパターニングされた絶縁PPV層を形成する発光インクを用いた固定静止パターンを表示する製品を形成するこのような技術の商業的用途に関して以下に幾つか説明する。以下に説明する用途の商業的価値は、光伝送性インクを用いていること、単一の陰極および陽極を用いて動作し、個々のアドレス指定の必要がない画素を用いていることにあり、これにより、動的表示を行う従来のOLEDに必要な別々のトランジスタの必要がなくなる。さらに、三原色であるR、GおよびBのカラー画素で形成される色をパターンが含む場合であっても、必要なのは2つの電極だけである。つまり、各三原色の3つ全ての画素に独自のトランジスタとアドレス線が必要な従来の技術に比べて、複雑さやコストにおいて大きな節約となる。
【0069】
なお、以下に説明する用途において、他の技術を用いてパターンを実現することも可能であり、したがって、インクジェット印刷の使用に関連してその構造を説明するが、従来の技術を用いてパターンを構成することも可能であることを理解されたい。
【0070】
図2A〜5を用いて上述した本発明に従って準備したOLEDディスプレイの固定画像を、図6〜9に示すように、タイルに加わる圧力に耐える十分な厚さを有するガラス板A上で実現した。これは主にタイルの位置に関係するもので、すなわち、タイルが壁に取り付けられるか床に取り付けられるかに関係する。OLEDディスプレイを封止したならば、タイルの外部圧力許容値に応じた十分な厚さのガラス、セメント、コンクリート、金属またはABSやポリカーボネート等のプラスチックでできた別の板Bにガラス板Aをガラスフリットにより接着または接合する。陶器製タイルの標準的な厚さが9mmなので、タイルによって覆われる壁だけでなく床においても設置が可能な十分な強度のタイルを作成可能であることは、これまでの記載から当業者ならば理解されるであろう。
【0071】
本発明は、通常の陶器製タイルの代替として改良されたタイルや同様の厚さのものに限定されず、厚さが9mmより小さいまたは大きい自立式の装置にも適用可能である。
【0072】
図6は、基本的な実施態様におけるタイル装置の断面図であり、ガラス板AおよびBとその間に挟まれたOLEDとを示している。OLEDの陽極および陰極にそれぞれ接続される2本の配線は示されていない。
【0073】
ガラス板Aは、ガラス板AのOLED印刷面が背板Bの表面の1つに対向して位置するように背板Bと組み立てる。このように、画像を形成するOLEDは、2枚の板に挟まれ、透明ガラス板Aを介して見ることができる。
【0074】
接着剤を使用する場合は、アクリル系接着剤等の接着剤と相溶性を有するガラス板A上のOLEDの外部絶縁層上に塗布可能である。次に、第2の板Bを接着剤と接合させる。このように、2枚の板がOLEDをその間に挟むような構成とする。OLEDの陰極と陽極とは、それぞれ配線に接続され、電源との接続のために接着の前に装置の外側に配線の一部を残しておく。
【0075】
図7は、第2の実施態様の断面図であり、板Bの周辺部に沿って幅の細い端部が盛り上がっている。ガラス板Aの全面上でOLEDが組み立てられてはおらず、周辺部に沿ってガラス板Aの端部上に何もない領域が残されている。2枚の板を互いに接着剤で接合するか、ガラスフリットを溶融させて互いに接合する。本実施態様において、2枚の板の間に空間が形成される。この何もない空間は、平坦な薄型電池形式のOLEDの電源をタイル内に内蔵するのに利用される。このような場合、陽極および陰極に半田付けされた配線は装置内部にとどめておく。
【0076】
図8は、第3の実施態様の断面図であり、第2の実施態様に類似している。ガラス板Bは1つ以上の窪みを内蔵しており、これはバッテリーを収納するための窪みである。
【0077】
図9に示すように、図6〜8において説明および図示した点灯タイルは、現存の舗装部品にすっきりと埋め込むことが可能である。例えば、従来のタイルや本発明に係るその他のタイルで覆われた床、壁または天井への挿入を可能とするような手段をさらに含んでもよい。このために、1つの実施態様によれば、OLEDを備えるタイルの側面だけでなく背面にRTV等の弾性材料の平坦な薄膜を備え、装置の大きさは、陶器、大理石、ガラスやモザイクまたは任意のその他の種類の装飾タイルでできた周りのタイルの大きさと非常に近い。このように製造すると、本発明のタイルは、割り当てられた場所に適度の力で挿入可能となり、セメントを用いなくても保持可能である。
【0078】
陶器、石またはガラスでできたその他のタイルで囲まれた枠組みに本発明のタイルを嵌め込む方法は、RTVを用いた方法に限定されない。例えば、金属やプラスチック等のその他の各種材料を用いて嵌め込めばよく、嵌め込むための材料の選択は、工学的および建築的ニーズによって決定すればよい。
【0079】
平坦なタイルに関して本発明をこれまで説明したが、このようなタイルにのみ限定されない。本発明は、曲面タイルも包含し、例えば型で成形してガラス板AおよびBを適度な曲率を有する曲がった板として製造すれば、同じ幾何学的性質の装置と合わせることが可能となる。
【0080】
本発明のタイル内に密閉されたOLED装置の作動は、装置が外部の電源から動力を受ける場合には、任意のスイッチング素子で行うことができる。OLED装置とその電源、例えば、電池がタイル内部に密閉されている場合は、OLEDの作動、すなわち、電源への接続のスイッチを入れることは、電磁式またはRF回路等の様々な手段、または光センサや圧力センサにより行うことができる。スイッチング回路の種類の選択については、タイルの特定の用途やアクセス可能性に応じて決めればよい。
【0081】
使用中、図6〜9を用いて上述したようなOLED自己点灯タイルは、従来のタイルで覆われた表面に埋め込まれた光源パネルとしての役目を果たす。床の上でも機能する十分な強度を有する。専用の密閉された電源をさらに備え、従って、本発明のタイルの弾性(resilience)も専用電源も持たない従来提案されてきた点灯パネルに比べて改良されている。
【0082】
さらに重要なこととして、本発明のタイルは、たった2つの電極を有するパターニングされたまたは画素化されたOLEDの装飾的な特徴という利点を有する。これにより、本発明のタイルは、大半が装飾的機能を有する、タイルで覆われた表面により適したものとなる。
【0083】
このような種類のタイル内に密閉されパターニングされたOLED装置は、非常用または警告用点灯標識の作成において非常に有用に用いられる。このような標識は十分に保護され、専用の埋め込み電源を有し、日中でも暗い条件でもよく見えるからである。
【0084】
次に、図10〜12を参照して、OLEDに適用可能な静止カラーパターンの第2の用途について説明する。これはインクジェット技術等のプロセス印刷を用いたものであり、例えば従来のステンドグラス窓の視覚的効果に似ている。十分な量の日光が利用可能な際は、装置に電流は流さず、その場合には、1つの実施態様によれば、装置が略透明となるように着色された発光層が作用する。このような実施態様を使用すると、OLEDパターンが従来のステンドグラス窓の視覚効果に似たものとなり、OLEDのパターンが輪郭および色に関して正確に対応する。この装置を従来のステンドグラス窓の前に両者のパターンが正しい位置関係となるように配置する。
【0085】
OLED装置に電圧を印加していない時には、略透明のままであり、したがって従来のステンドグラス窓がOLED装置を介して見える。OLED装置に電圧を印加すると、ステンドグラス窓に似せたパターンから光が発せられ見えるようになる。この操作を夜間や周囲の日光条件が悪い時に行えば、従来のステンドグラス窓は暗いだろうが、従来のステンドグラス窓のいずれの側にOLED装置が置かれようとも、パターンが点灯し、従来のステンドグラスを介した背面照明の効果がもたらされる。日中と夜間との見え方をできるだけ同じようにするために、装置に印加する電圧を制御すればよい。
【0086】
別の実施態様によれば、OLED装置は透明ではない。この場合、OLEDパターンは、OLED装置に電圧が印加された時のみに見ることができる。電圧が印加されていない時には、不透明で従来のステンドグラス窓と位置を合わせて搭載されても、この従来のステンドグラス窓のパターンは見えない。したがって、このような実施態様は、従来のステンドグラス窓の代用として使用可能であり、この場合従来のステンドグラス窓とOLED装置との正確なパターンの位置合わせの必要がない。
【0087】
図10に、前述の1つ目の実施態様に記載の透明ステンドグラスOLEDパネルの多層構造を模式的に示す。このOLEDは、図1を参照して先に説明したように構成されており、透明ガラスまたはプラスチック材料のベース層11と、透明な層11上にスパッタにより堆積されたインジウム錫酸化物(ITO)からなる比較的透明な陽極12とを備える。正孔放出層13は、「PEDOT」(ポリエチレンジオキシチオフェン)またはそれに類似の材料の超薄被膜を用いて、スピンコーティング、ドクターブレードコーティングまたはインクジェット装置からの排出により形成される。電子放出層14は、発光層であり、PPVからなる。Ca、AuまたはAlからなる陰極15は、PPV層14上にスパッタにより堆積されるか、または箔として塗布される。PPV層14同様この層も透明である必要はない。最後に、ガラス等の透明シール層16が、水分や酸素からその他の層をシールするために設けられる。
【0088】
図11は、インクジェット技術等を用いてPPV層14上に発光インクを用いて印刷された連続的なカラー領域を示す図であり、陽極11と陰極15との間に電圧を印加すると、カラー領域が点灯した画素の色に応じた光を発する。輝度のレベルは、陽極と陰極との間に印加する電圧と非線形な関係にある。輝度は、手動により制御してもよく、または2つの電極を電圧レベルコントローラ(図示せず)を介して電源に接続することによりプログラム可能なサーボ機構によって制御してもよい。コントローラは、周辺光のレベルを計測する光センサからの入力を受け、この入力を用いてコントローラに含まれるファームウェアによって電圧を所望のレベルに上げ下げする。
【0089】
図12に別の実施態様を示す。これは銅の細片で色付きグラス片をまとめて保持した古くからのステンドグラスデザインを真似たものである。本発明において、銅の接合部は、連続したカラー領域間の各共通する境界に重なるようにインクジェットまたはリソグラフィ工程を用いて黒い樹脂で印刷された太い黒線で擬似的に形成される。
【0090】
このように、本発明によれば、励起電流により点灯すると、ステンドグラス窓のような視覚体験を与えるOLED装置が提供される。カラーパターンは、図2B〜5を用いて上述したようにインクジェット印刷技術を用いて実現可能である。しかしながら、他の技術を用いてカラー領域を堆積することも可能である。図10〜12に示したような本発明に係るステンドグラスOLED装置およびパターンは、先に参照した米国特許第6,565,231号明細書に記載されるような従来提案されてきた効果と比べて、パターン印刷が簡単であることだけでなく、単一のパネル上にカラー領域を堆積すればよいので複数のパネルを端と端に並べる必要がなくなることでも区別される。
【0091】
このような方法で窓枠に嵌めるガラス基板上にパターニングされたOLEDを作成することで、2つの電極11と15との間に電圧を印加すれば、ステンドグラス窓の視覚認識が得られる。
【0092】
本発明に係るOLED装置の更なる用途は、発光による装飾を有するグリーティングカードに関する。現在多くの装飾されたグリーティングカードは、魅力的で人目を引くように光沢のある箔や明るい色で浮き上がらせた厚い紙の上に印刷されていることがある。オランダのルマックス社等の何社かの企業は、半透明の紙にグリーティングカードを印刷し、ティーライトキャンドルや電球ホルダ(bulb lamp holder)と共にそれらを供給している。カードをホルダに載せ、背面から照らす。これらのカードは、従来の印刷技術を用いて製造される。
【0093】
図13に本発明に係る開いた状態のグリーティングカードを模式的に示す。上述のようなOLEDのPPV層上に印刷により形成された装飾パターンは、カードの一方の側に添付され、もう一方の側に搭載された平坦な電池に接続される。1本の配線がOLEDの陽極から電池のプラス端子に接続されており、OLEDの陰極は、T字形状片等に形成されたスイッチを介して電池のマイナス端子に接続される。このT字形状片が伸びて、電池に接続されたループ状のワイヤに押し付けられると、電気的な接点が形成される。
【0094】
図14は、そのカードを閉じた状態を示しており、T字形状片は後退しているので、電池の回路が不完全でOLEDは作動していない。カードを開くと、T字形状片が伸びてループと接触し、回路が完成してOLEDが点灯する。OLEDの陽極と電池の+端子との間には、事実上スイッチが接続されている。
【0095】
基板として作用する透明薄膜上に固定画像が表示される。このような基板の厚さは、用紙の厚さと同じでよい。ただし、実用上および外見上、200gm以上の厚みの用紙を使用するのが望ましい。OLEDのその他全ての層の厚みは、1mm未満である。あるいは、OLEDをもっと薄い基板上に印刷して、それを厚い用紙に載せてもよい。
【0096】
この結果、「カード」にOLED画像パターンが搭載され、それを封筒に入れて郵送することができる。OLEDに電力を供給しない限り、単調で明るくないカラーのはっきりしない画像が見えるだけである。電力が供給されると、鮮明な色と高いコントラストを有するCRTやLCD画面に近い輝度を有する点灯パターンとして画像がはっきりと現れる。このOLED装置は、受取人が封筒から取り出した時に自動的に電力が供給されるようにできている。これは、光を感知する作動回路等を用いて行うことができ、このような技術は当業界で公知である。
【0097】
図6〜14を参照して上述した用途は、例示的なものであり、本発明の原理を商品化して本発明の通りに構成されたOLEDを用いて形成される静止画像を有する豊富な製品を製造することが容易であることを単に示すためのものである。他の用途についても関連する分野の当業者にとって役立つものとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、比較的単純な多層構造を有する発光ポリマーに基づく従来例のOLEDディスプレイパネルを図式的に示す。
【図2A】図2Aは、従来例の光反射インクを用いたインクジェット印刷に必要な主な各処理を示すフローチャートである。
【図2B】図2Bは、本発明の発光インクを用いたインクジェット印刷に必要な主な各処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、発光材料を印刷することにより得られた文字「A」形状のパターンを示す。
【図4】図4は、任意の点でPPV層の厚さを制御することにより固定印刷パターン内にさらにサブ点灯パターンを作成する様子を図式的に示す。
【図5】図5は、スクリーニングを用いた段階的な点灯の様子を図示的に示す。
【図6】図6は、実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図7】図7は、他の実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図8】図8は、他の実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図9】図9は、他の実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図10】図10は、本発明に係る半透明OLED装置の構造を拡大して図式的に示す。
【図11】図11は、ステンドグラス効果をもたらす図10に示したOLED装置のパターニングを模式的に示す。
【図12】図12は、異なる色領域の境界が太い黒線で示された、図11に示したOLED装置のパターニングを模式的に示す。
【図13】図13は、本発明に係るOLED技術を用いてインクジェット印刷により形成された点灯パターンを有するグリーティングカードを模式的に示す。
【図14】図14は、図13に示したカードを閉じた状態で詳細に示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットディスプレイは、今や必需品となりつつある。大型の装置において最も一般的なのは、コンピュータのCRTの代替としてのLCDパネルや非常に大型のテレビのCRTの代替としてのプラズマディスプレイである。また、携帯電話やPDA等の、LCD型のフラットパネルを利用した小型機器もある。
【0003】
これらの装置は全て同一のパターニング原理に基づいており、列と行とに沿って配置された1mm未満の画素(「ピクセル」)の配列に画面を分割し、これらのうち列および行単位で電気的にアドレス指定を行うものが「パッシブマトリクス」ディスプレイであり、「アクティブマトリクス」ディスプレイの場合には個々にアドレス指定を行う。アドレス指定を行う場合、特殊な電子機器およびソフトウェアを用いる。
【0004】
このようなアドレス指定によって、表示される画像を変化可能つまり動画とすることが要求される。LCDの場合、画素化(pixelized)構造は、ディスプレイの設計に必須である。同じことがプラズマディスプレイにも当てはまり、ガスを充填した非常に多くのセルからなるプラズマディスプレイは、個々のセルごとにアドレス指定を行う必要がある。
【0005】
ディスプレイの分野において最近開発されたのがいわゆる有機発光ダイオード(OLED)である。OLEDディスプレイは、電流によって励起されると光を発する有機材料を基材としたものである。本出願に関して、共役ポリマーからなる有機材料を含むOLEDディスプレイ(PLEDディスプレイと称する)は、インクジェット装置において利用されるような細かいノズルを介してポリマーの溶液を排出することにより製造が可能であると述べておけば十分である。
【0006】
OLEDの放射性を用いて、動画ではなく静止表示を行うような用途にこのような材料を応用する試みがなされてきた。なお、本発明での「静止」という用語は、表示される画像が一定で変化しないことを意味する。
【0007】
2003年10月8日公開のイーストマン・コダック社による欧州特許第1351303号明細書(発明の名称「有機発光ディスプレイを用いた選択画像の表示」、特許文献1)には、それぞれが1以上の所望の色を有する複数の画像のうち選択された画像を表示する有機発光ディスプレイ装置及びその製造方法が開示されている。画像は、静止画像であり、アドレス指示の必要はない。
【0008】
OLEDにより作り出されるカラーの形状を用いて、以下の方法で画像が実現される。まず、陽極か陰極かである電極を基板上に形作る。次に、電極の形状に対応した特定の色の光を発するよう設計された発光材料を電極の形状が占める領域に堆積する。異なる色の微小領域を空間的に組み合わせることにより、同時に点灯した時には、形成された電極が所望の特定の色を有することとなる。このような方法では、電極を形作ることが第1の基本的な要件である。
【0009】
このような手段により、基板上にカラーアイコン表示が作り出され、個々のアイコンは別々に点灯され、各アイコンの形状は電極のパターニングによって予め形成されたものである。
【0010】
2002年12月31日付公開の米国特許第6,501,218号明細書(デュガルら、発明の名称「屋外用エレクトロルミネセントディスプレイ装置」、特許文献2)には、OLEDディスプレイが記載されており、陽極、陰極またはその両方がパターニングされており、パターニングされた電極の領域においてのみ光が発せられる。
【0011】
1999年5月11日付公開の米国特許第5,902,688号明細書(アントニアディスら、発明の名称「エレクトロルミネセントディスプレイ装置」、特許文献3)には、陽極、陰極、絶縁体および有機エレクトロルミネセント層を有するエレクトロルミネセントディスプレイ装置が開示されている。パターニングされた絶縁層が、陽極と正孔放出層との間または陰極と電子放出発光層との間に挿入される。このような絶縁層は、フォトレジストエポキシ材料からなり、製造の際にマスクを介してUV光を照射することでパターニングが可能である。
【0012】
UV光がフォトレジストに当たった場所では、フォトレジストが「硬化」してその部分は残されるが、露光されなかったフォトレジストは洗い流される。これにより、絶縁層がパターニングされ、パターニングされた領域では発光が阻止されて、非絶縁領域に対する相補的なパターンの表示が行われることとなる。
【0013】
上述のような特許公報全てにおいて、絶縁層内の不連続領域またはパターニングされた電極領域を示す表示が結果として得られることになる。表示を見た人の視覚的印象は、絶縁材料の場合にパターニングされた画像が「ネガティブ」として実現されようがパターニングされた電極の場合に「ポジティブ」として実現されようが同じである。
【0014】
パターニングされた絶縁層またはパターニングされた電極を作成するには、マスクの使用や複数工程処理が必要となり、異なる表示において異なるパターンを使用すべき場合にはマスクを交換する必要性がある。さらに、異なる領域において複数の色を使用すべき場合には、このような方法を用いるのは非常に困難または不可能な場合さえある。
【0015】
また、米国特許第5,902,688号明細書では、実際には被覆の一部のみが使用される時にも高価な発光材料を全面に被覆する必要がある。
【0016】
発光ポリマーを基材とするOLEDディスプレイパネルは、図1に示すような比較的簡単な多層構造を有し、以下を備える。
1.透明ガラスまたはプラスチック材料のベース層1。
2.透明層上にスパッタにより堆積されたインジウム錫酸化物(ITO)からなる比較的透明な陽極2。
3.PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等の材料の超薄被膜で形成された正孔放出層3。この層は、スピンコーティング、ドクターブレードコーティングまたはインクジェット装置からの排出により作成可能である。
4.PPVまたはポリフルオレン構造の共役ポリマーまたはリン酸共役ポリマーからなる発光層である電子放出層4。簡潔にするために、図面にはPPVと示し、以降PPVと称する。
5.層4上にスパッタにより堆積された、または箔として塗布されたCa、AuまたはAlからなる陰極5。層4同様この層も透明である必要はない。
6.水分や酸素からその他の層をシールするためのシール層(図示せず)。
【0017】
全ての層を組み合わせた厚みは1mm未満とすることができ、プラスチック材料を基材として選べば、このような種類のフラットパネルディスプレイは折り曲げたり曲面に沿うよう作成可能である。
【0018】
現在入手可能なPLEDフラットパネルディスプレイの大半は、動画を表示するよう構成されており、表示を動的に変更可能なようにアドレス指定可能な多数の画素を有し、非常に美しいビデオ画像が表示可能である。
【0019】
2003年5月20日公開の米国特許第6,565,231号明細書(アール・エス・コック、発明の名称「OLED有機エリア照明装置」、特許文献4)には、基板、陽極、陰極および有機エレクトロルミネセント層およびカプセル化カバーを有するエレクトロルミネセントディスプレイ装置が開示される。2つの電極は、装置の外に延び、電源に接続される。この特許は、2Dおよび3Dの自立式の照明を様々に組み合わせて配置した複合照明パネルに関する。しかしながら、一つのパネルに一色以上を用いることまたは別の装置内にパネルを組み込むことの示唆はない。
【0020】
米国特許第6,565,231号明細書の図13は、2つ以上の光源が共通の線の端と端とに並べられ、ステンドグラスのような装飾的チャネルがもたらされた照明器具を示している。これは、動画とは対照的な静止画像を作り出すのにOLEDを使用した別の例である。さらに、米国特許第6,565,231号明細書によって教示された方法は、所望の表示パターンに予め成形された電極を使う必要が無いので、上述の欧州特許第1351303号明細書とは異なる。ただし、パターニングは、マスクを介した堆積、一体型シャドウマスキング(integral shadow masking)、レーザ除去、選択的化学気相蒸着法等の従来からのリソグラフィ技術を用いて行う。プロセス印刷技術を用いてパターンを印刷することに関する示唆はない。また、単一電極対のみを必要とし、静止画像を規定する複数のカラー画素を有する単一のOLEDパネルにおいてステンドグラスの様相を達成することについては何ら示唆がない。
【0021】
さらに、米国特許第6,565,231号明細書に開示される発光層は一般にゲスト化合物を1種類または複数種類ドープしたホスト材料からなり、発光は主にこのドーパントから得られ、任意の色であり得る。あるいは、装置上に色フィルタ、濃度フィルタまたは色温度変換フィルタを設けて異なる色を達成することも可能である。ただし、三原色に対応する3つの画素を設けて異なる色を得ることについては何ら示唆がない。
【0022】
一方、X/Yマトリクスの画素として構成され、各画素が1以上の着色サブピクセルを含むようなアクティブまたはパッシブディスプレイマトリクスの形式での多色点灯OLED装置について記載する情報は特許およびその他の技術文献において豊富に存在する。しかしながら、これらの技術においては、当然個々のアドレス指定が要求され、カラー画素の場合にはRGBに付き3本のアドレス線と3つのトランジスタが必要となる。このようなOLEDマトリクス装置は、TV、コンピュータ、PDAおよび携帯電話ディスプレイ用のフラットパネルディスプレイとして使用することを意図したものであり、非常にきれいなビデオ画像を表示可能なレベルにまで表示が時間に応じて動的に変化可能であるようにアドレス指定可能な複数の画像構成要素を有するよう構成される。
【0023】
静止した変化しない画像を、多くの場合様々な色を有するように表示することが要求される場面がある。例えば、従来からの静止画像としていくつか例を挙げると、広告板、美術館の工芸品等の展示品において表示されるようなものがある。このような場合、アドレス線やそれに伴う回路は冗長であり不必要に複雑かつ高価である。
【0024】
従って、陽極や陰極を成形する必要なく、基板の全領域を絶縁層で覆う必要なく、固定した静止パターンを表示するよう構成されたOLEDを提供することが望ましい。形や色をプロセス印刷に類似した方法により形成するとさらに良い。
【0025】
形や色をプロセス印刷と同一の方法により形成するとさらに良い。
【特許文献1】欧州特許第1351303号明細書
【特許文献2】米国特許第6,501,218号明細書
【特許文献3】米国特許第5,902,688号明細書
【特許文献4】米国特許第6,565,231号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
固定画像を表示するためにOLEDを使用することが本発明の主な目的である。
【0027】
画素がアドレス指定可能ではない画素化されたディスプレイを用いて固定画像を表示することが本発明の他の主な目的である。
【0028】
画像を印刷することによって固定画像を表示するのにOLEDを使用することが本発明のさらに他の主な目的である。
【0029】
本発明の更なる目的は、陶製タイルと同じような大きさおよび形状のタイル内部において、一表示につき1以上の色を有する固定のパターニングされた画像を表示するためにOLEDを用いることに関し、点灯された画像は好ましくは、パターンや画素が個々にアドレス指定可能ではないパターン化されたまたは画素化された表示を用いる。
【0030】
このようなタイルは、従来からのタイルが壁や床において耐えるよう設計される量の圧力を支えるのに十分な強度を有するものであり、壁、床および天井等の建築部材に簡単に組み込むことができ、さらに従来の陶製タイルによって舗装されるような構造にも含められるものであることが好ましい。
【0031】
好ましい実施態様によれば、タイルを含むOLEDの機能性は、構成要素の影響を受けうやすい構造物内や水泳用プールの壁や床において水中で埋め込まれた際にも維持される。
【0032】
本発明の更なる目的は、励起電流により点灯された際にステンドグラス窓の視覚体験を与えるようなOLED装置を提供することである。
【0033】
本発明の他の目的は、平面だけではなく曲面ともなりうるような支持構造を可能とする一方、紙の上に従来の印刷と同じまたは類似の方法を用いて「自己」点灯式のグリーティングカードの機能を有し、平面的な水平面上で直立位置において保持可能なように固定画像を表示するためにOLEDを使用することである。命令を受けた時にのみ作動させることによって、このようなグリーティングカードの機能性が有効となることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0034】
このような目的のために、本発明は、簡便かつコストを抑えた固定パターンの表示を可能とするOLEDおよびその製造方法を開示する。その製造方法は、紙の上にインクジェットで印刷するのと同じぐらい簡単であるので、表示される画像のパターニングは、個々の表示ごとに別々に行うことが可能である。本発明によれば、列および行によるアドレス指定や個々の画素のアドレス指定を必要とせず、非常に少ない僅か2つの電極を必要とするパターニングの方法が提案される。
【0035】
したがって、本発明の第1の側面によれば、自己点灯可能な静止画像を作成する方法であって、
有機発光ダイオード装置(OLED device)の層上に、発光インクを用いて前記画像の構成画素を印刷する工程と、
前記有機発光ダイオードに電圧を印加するための陰極および陽極を設ける工程とを含み、
前記印刷する工程において、前記層の前成形することなく、パターンの外形が前記構成画素によってのみ定められるように、パターン形成することを特徴とする方法が提供される。
【0036】
本発明の第2の側面によれば、作動すると自己点灯可能な静止画像を有し、
有機発光ダイオード装置の層上に発光インクを用いて印刷された前記画像の構成画素を含み、パターンの外形が前記画素によってのみ定められ、前記層の前成形を必要としないよう形成された装置が提供される。
【0037】
このようなディスプレイ装置は、液晶ディスプレイ(LCD)が必要とするような電力を消費するバックライトを必要とせず、プラズマ放電パネルが必要とするような大電力とは対照的に電池駆動が可能である。さらに、製造方法はインクジェット印刷のように非常に簡単であり、印刷の結果は、印刷インクが反射性ではなく放射性である所が非常に異なる。本発明が提案する原理を利用することにより、反射インク印刷において使用されるのと同様の方法で放射印刷のドットサイズ、色濃度および色合い濃度等の非常に細かい細部を制御可能となり、電極の複雑なパターニングやパターン化された絶縁層の挿入を行う必要はない。したがって、本発明に係るディスプレイのようなフレキシブルなパターニングにより、新たな用途への利用が容易となり、そのうちの幾つかの用途を以下に説明する。
【0038】
本発明によれば、静止画像を作成するために有機発光溶液のプロセス印刷が提供される。好ましい実施態様において、このような印刷は、インクジェット印刷装置にあるような細かいノズルからポリフルオレンやPPVを含む溶液を噴射することにより行う。先に述べたように、OLED溶液を用いたインクジェット装置はこれまでにも使用されていたが異なる目的、すなわち、アドレス指定可能な画素を作成するために規則的な順序で赤、緑、青の液滴を噴射するものであった。本発明は、同様のインクジェット排出技術を利用するものの、複雑な静止画像を作成するよう設計されるものであり、従来のプロセス印刷に類似しており、インクジェット装置によっても行えるものである。
【0039】
図2Aおよび2Bは、その特徴および従来のプロセス印刷と本発明が提案するものとの違いの概略をまとめた図であり、これについて以下にもっと詳しく概略する。
【0040】
本発明によれば、静止画像の作成は、1以上の色を有する発光ポリフルオレンまたはPPVの溶液を直接インクジェット印刷することによりなされる。フルカラー画像を得るために、赤、緑および青があればほぼ十分であるが、色域(color gamut)を増やすことが望ましい場合には、さらに色を追加してもよい。
【0041】
米国のエイチ・ダブリュ・サンズ社は、動画表示に使用する赤、緑および青のエミッタだけではなく、黄、橙および青/緑エミッタも供給している。他にカナダのアメリカンダイズソーシーズ社も、赤、緑および青のエミッタに加えて、橙、黄および紫のエミッタも供給している。このようなエミッタを単独または組み合わせて使い、従来のプロセス印刷と同様の方法で印刷すれば、インクジェット印刷で使用されるような細かいノズルを介してエミッタのカラー溶液を噴出することにより任意の色のパターンの印刷が容易に行える。
【0042】
一般的に入手可能なインクジェットプリンタは、いわゆるプロセスカラーによって印刷を行っている。4つのインクの組合せを用いて目に見える色の大半を再現している。これらのインクは透明で、薄膜に印刷するとフィルタとして機能する。白色光はインクを通過し、白色背景で反射されてインクの色を示す。このようなインクは、白色光のスペクトルの一部を減じることより、減法インク(subtractive ink)とよばれる。印刷において一般的に使用される組合せは、シアン、マゼンタ、黄および黒である。黒インクは、暗い部分を強調するために使用される。
【0043】
減法インクの動作原理により、印刷画像を準備するために使用される前印刷工程が決まる。従来のインクジェット印刷用の画像は通常、スキャナー、デジタルカメラまたはグラフィックソフトウェアからのRGB画像から生じたものである。このような画像は、それぞれが一定の色値を有する画素からなる。第一段階は、これらの画像を4つのデジタル層を有するCMYKファイルに変換することであり、CMYKインクで同時に印刷すると元の画像が再現されることになる。昨今、このような作業は完全にコンピュータ処理されており、複雑な数学的変換を含む。
【0044】
このCMYKデータは、印刷の質を微調整するために処理を加えてもよい。印刷の質を改善し、CMYKインクや特定のインクジェットヘッドの限界のいくつかを克服するために、各種参照表を利用する。ほとんどのインクジェットヘッドは、極小さい液滴で印刷を行い、これにより基板上に固定色強度(color intensity)が得られる。所望の色を異なる濃さにするためには、その色を構成する液滴を周波数を変えて印刷すると、平方mm当たりのドット数が変化して濃さを変化させることができる。あるいは、液滴をそれぞれ面積が異なる小さいグループで印刷してもよい。フルカラー画像を周波数や大きさを変えたドットからなる画像に変換する処理は、階調表現(half-toning)またはスクリーニング(screening)と呼ばれる。
【0045】
中間調(halftone)ファイルは、プロセスカラーを分離したもの(セパレーション)からなり、それぞれがビットマップ(黒および白)画像である。このビットマップ画像をさらに処理して特定のインクジェットヘッドを用いた印刷に適したものとする。従来の印刷において行われるようなスクリーニングやディザリングによって画像を前処理してもよい。さらに、画像の補正および修正を行うために公知の印刷技術を用いて画像を調整してもよい。このような修正としては、カラーバランス、色の濃さ、カラーリニアライゼーション、オーバーラッピング等が含まれる。これらの技術はそれ自体は公知であるが、OLEDの分野でこれらの応用が提案されたことはない。
【0046】
本発明において提案するようなOLED材料による印刷は、類似してはいるが同一ではない。
【0047】
従って、本発明が従来のインクを用いたプロセス印刷とは異なる点は、
1.OLED「インク」は透明でも反射性でもなく、エミッタである。
2.OLEDの基本カラーは、CMYではなくRGBである。
3.色調は、ドットを横に並べて印刷するか、ドットを重ねるかのいずれかにより作り出す。いずれの場合も、CMYKインクとは異なって、色の組合せは、光学的原理と共に電気的相互作用により得られる。
4.従来のRGBからOLEDカラーへの色変換も各OLEDカラーの「セパレーション」に関する色変換もCMYK変換とは全く異なる。
5.OLED材料の性質により、スクリーニング処理が画像の最終的な色に強く影響する。この現象はCMYK印刷にはほとんど存在しない。
6.印刷される液滴間の相互作用により、ノズルの配置(nozzle-mapping)もCMYKのノズル配置とは異なる。
7.パターンに対応しない領域をパターンが目立つような背景として機能する任意の無彩色(neutral color)で「埋め」、完成した層を簡単に印刷可能である。例えば、背景領域は、カラーインクと導電性が類似しているが発光性を持たない材料で形成されたインクを用いて印刷することができ、ゆえに見た目は黒となる。ただし、その他の任意の無彩色を同様に使用することも可能である。この構成がない場合には起こり得るかもしれないPEDOT層とOLEDの陰極との間のショートがこれにより防止される。ただし、背景領域を避けるように電極を予め成形すればこれは必要ない。
【0048】
本発明は、上述したOLEDエミッタの特異な特性に対処するソフトウェアを組み込むことによりこのような違いに対処している。画像デザインをRGBスキャンしたものから得られる特定の静止画像に関するソフトウェアが一旦準備できれば、ソフトウェア制御の下でカラーOLEDエミッタの溶液を排出することにより画像が簡単に作成されるので、本発明が提案する印刷処理は、従来のカラー静止画像を作成する方法より簡単である。
【0049】
各溶液は専用ノズルからかあるいは専用のマルチノズル装置から排出されるので、ソフトウェアは、液滴の大きさやPEDOT層上の位置等の工程に関する全ての所望属性に対する命令を与えることになる。この工程によりOLEDエミッタの全色の溶液の全ての噴射機構動作が処理され、所望される基本デザインに沿ったカラーOLED静止画像が最終結果として得られる。
【0050】
上述したように、反射性の色を用いた従来のインクジェット印刷工程と放射性の色を用いた本発明に係る印刷工程との間には根本的な差異がある。ただし、本発明はこのような技術的差異にではなく、PPV発光インクを用いて画像を形成する画素をインクジェット等のプロセス印刷を用いて直接印刷することにより、静止画像がPEDOT層やOLEDの陰極上に直接パターニング可能であるという認識に帰するものであることを強調しておく。静止パターンなので、このような方法であれば、別々のアドレス線や各画素の電子部品を活性化する必要はなく、画素を予め形成した電子部品に整列させる必要もない。さらに、このような方法であれば、画像が形成されないパターン層の領域(すなわち、パターニングされない背景に相当)は、所望の任意の無彩色で印刷することが可能である。これによって全パターンが非導電性材料で形成されたインクで覆われるので、電極を予め成形する必要がない。一方このような構成でない場合には、パターンのない空の領域がOLEDの隣接層とショートしないようにする必要がある。
【0051】
本発明を理解し、実際にどのように実施するか分かるように、好ましい実施態様を添付図面を参照して以下に示す。ただし、これらの記述は、例示にすぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は本質的に、従来の画素化されたディスプレイと比べて非常に簡単なアドレス方式を可能とする固定画像の表示用にPLEDを使用することを提案するものである。
【0053】
その結果、本発明により以下に示す利点が得られる。
1.ソフトウェアによる制御の下、異なるディスプレイ要素上に異なるパターンを作成可能である。
2.視認されるパターンがディスプレイ領域全てを占めるわけではない場合、機能しない領域における発光材料を節約できる。
3.画像が固定である限り、複数の電極や電子アドレス指定素子を用いる必要なく多色の複雑な画像を作成および表示可能である。
本発明は、鮮明なアクティブ光画像を描写するのに望ましいエレクトロルミネセント材料(上述の「層4」)のパターンを印刷するのにインクジェット技術を利用している。ディスプレイの全領域をカバーする1つの陽極および1つの陰極だけが必要となる。さらに、正孔放出層で連続的に被覆され、単に発光OLED材料を選択的に被覆するだけでパターニングが可能である。
【0054】
これは、インクジェット装置を用いて発光材料(PPV)を噴射することにより行われる。PPVは、インクジェット装置で噴出可能なように十分低い粘度の溶液に溶解しておく。ふさわしい溶剤は例えば、アニソールやベンゼン系溶剤である。ただし、アグレッシブな溶剤に溶解するので、ほとんどのインクジェット装置はこの用途にはふさわしくない。発明者らは、ガラスとシリコンとだけでできたインクジェット装置であって、接着剤の代わりに電子的に部品を接合したものを採用すればふさわしいことを発見した。本発明を実施するために採用するインクジェット装置は、PPV溶液でダメージを受けるまたは汚染されるようなものであってはならない。このような要件は、電子的に接合したシリコンおよびガラスでできた、イスラエルのインダストリアルインクジェットテクノロジーのPL−128等のインクジェット装置により満たされる。
【0055】
ふさわしいインクジェット装置を用いれば、エレクトロルミネセント層で構成されたパターンが迅速に得られる。単一のディスプレイをそれぞれ印刷していくので、異なるディスプレイ上のパターンはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、これは印刷をソフトウェアで制御することにより達成される。ディスプレイの連続的な陰極および連続的な陽極間に電流を流すことによりディスプレイが電気的に活性となる。
【0056】
図3は、発光材料の印刷により得られた文字「A」の形状のパターンを示した図である。
【0057】
解像度が300または600dpiで数十またはわずか数ピコリットルの液滴を用いたマイクロジェット装置であれば、単にPPV溶液を噴出するだけでなく、均一なPPV層を形成することも可能となり、これによって必要があれば均一な色および輝度が得られる。各ポイントでの液滴の数と大きさを制御すればこのようになる。
【0058】
ディスプレイの全面積を占めないパターン状にPPV材料を印刷すると、PEDOT層が陰極と直接接触する領域が得られる。したがって、このような領域では、陰極と陽極とが薄い部分的な導電性のPEDOT層によってのみ分離されている。先に述べたように、本発明は、絶縁体として機能する非共役ポリマーを含む発光インクで覆われないこのような領域を印刷することにより結果として生じる「ショート」を避けている。
【0059】
図4に示すように、PPV発光層の厚みを正確に制御することができれば、固定印刷パターン内で点灯のサブパターンを作成することが可能となる。層が薄い所では、厚い所よりも点灯が弱く(すなわち、色が薄く)なる。このようなサブパターニングは、英国特許第2,384,115号明細書に記載のように輝度(luminance)を落とすのではなく増すことにより行われる。英国特許第2,384,115号明細書によれば、マスクを介して照射されるパターニングしたUV光を用いて、ディスプレイの一部の輝度を下げている。本発明では反対のことが起こっており、インクジェットパターニングを用いて発光PPV材料をより多く含むパターンを作成することにより輝度を上げている。
【0060】
段階的な点灯を可能とする他の方法として、従来からの印刷において使用されるものに類似したスクリーニングやディザリングを用いても可能である。離散したドットの形状に材料を噴出し、ドットの濃度が増えれば点灯のレベルが増加する。したがって、図5に示すように、ドット同士が近いほど(密集スクリーン)、照度が高くなる。
【0061】
<本発明により可能となった新規な実施態様>
本発明によれば、前述の米国特許第5,902,688号明細書および米国特許第6,501,218号明細書により示唆されるような一定の色の点灯記号やマーカーを作成するだけでなく、一色以上でできた記号やマーカーを作成することが可能となる。これにより、いろいろな色のPPVが市販されているので、異なるノズルからの異なる色を用いて所望のパターンの作成が可能となる。インクジェット装置は、幾つかのインクジェットヘッドで構成され、それぞれが異なる色のPPV溶液を排出する。
【0062】
基本的に、それぞれR、B、Gの色を有する3つの別々のインクジェットヘッドを用いて、従来行われていたような紙の上に印刷されたC、M、YおよびKのインクジェット印刷により得られたものと同様の解像度およびデテールを有するカラー画像の形式でパターンを印刷することも可能となる。その違いは、OLEDの印刷画像は、各印刷されたドットがカラー背面光を反射せず、ディスプレイに共通の陰極と共通の陽極との間に電流が流れていればいつでも光を発することである。
【0063】
このような画像は、「固定」画像であり、マトリクスディスプレイのように動的に変化可能ではない。この違いは、アクティブマトリクスディスプレイに要求される複数の列および行の電極とは対照的に、本発明ではアドレス指定できない電極が2本だけ必要であるという事実による。また、アクティブマトリクスのような画素ごとの各トランジスタの必要もない。さらに、マトリクスタイプのOLEDディスプレイに必要な複雑なソフトウェアや複数のドライバとは対照的に、本発明のディスプレイを動作させるためのソフトウェアやドライバは必要ない。
【0064】
かくして、ディスプレイ上に描写される画像がもともと静止および固定画像である場合には、簡単かつコストが安いために従来のマトリクス駆動型OLEDディスプレイよりも本発明の装置の方が好ましい。
【0065】
本発明のこのような側面は、個別にまたは大量に製造される、額入りもしくは額に入っていない自己点灯式の静止画像および自己点灯式のグリーティングカード等の新規製品において利用可能である。これらは全て、画素を選択的にアドレス指定する必要なく、デジタル制御された発光「インク」印刷方法によって可能となる。このような用途の例について、図6〜14を特に参照しながら以下に説明する。
【0066】
インクジェット技術を用いてOLEDディスプレイ上に固定画像を製造することに特に関連して本発明を説明してきたが、複合陽極および陰極間に電圧を印加した際に、各画素が所望の色の光を発するよう結果として得られる画像の各画素が正確にカラー合成される、即ちR、G、Bのバランスが正確であるよう制御可能であれば、その他の印刷技術を用いてもよいことを理解されたい。したがって、適切な印刷技術としては、カラーオフセット印刷等も含まれる。
【0067】
また、PEDOT層上またはOLEDの陰極上にパターンを印刷することに特に関連して本発明を説明してきたが、これは、これらの層上にパターンを印刷することが、特に有効であることを見出したからである。ただし、本発明は、パターンがOLEDの他の層上に印刷されたOLED装置も包含する。
【0068】
OLED装置をカラー画素のインクジェット印刷を用いて構成するという原理について説明してきたが、2つの電極のみを備えたOLEDのパターニングされた絶縁PPV層を形成する発光インクを用いた固定静止パターンを表示する製品を形成するこのような技術の商業的用途に関して以下に幾つか説明する。以下に説明する用途の商業的価値は、光伝送性インクを用いていること、単一の陰極および陽極を用いて動作し、個々のアドレス指定の必要がない画素を用いていることにあり、これにより、動的表示を行う従来のOLEDに必要な別々のトランジスタの必要がなくなる。さらに、三原色であるR、GおよびBのカラー画素で形成される色をパターンが含む場合であっても、必要なのは2つの電極だけである。つまり、各三原色の3つ全ての画素に独自のトランジスタとアドレス線が必要な従来の技術に比べて、複雑さやコストにおいて大きな節約となる。
【0069】
なお、以下に説明する用途において、他の技術を用いてパターンを実現することも可能であり、したがって、インクジェット印刷の使用に関連してその構造を説明するが、従来の技術を用いてパターンを構成することも可能であることを理解されたい。
【0070】
図2A〜5を用いて上述した本発明に従って準備したOLEDディスプレイの固定画像を、図6〜9に示すように、タイルに加わる圧力に耐える十分な厚さを有するガラス板A上で実現した。これは主にタイルの位置に関係するもので、すなわち、タイルが壁に取り付けられるか床に取り付けられるかに関係する。OLEDディスプレイを封止したならば、タイルの外部圧力許容値に応じた十分な厚さのガラス、セメント、コンクリート、金属またはABSやポリカーボネート等のプラスチックでできた別の板Bにガラス板Aをガラスフリットにより接着または接合する。陶器製タイルの標準的な厚さが9mmなので、タイルによって覆われる壁だけでなく床においても設置が可能な十分な強度のタイルを作成可能であることは、これまでの記載から当業者ならば理解されるであろう。
【0071】
本発明は、通常の陶器製タイルの代替として改良されたタイルや同様の厚さのものに限定されず、厚さが9mmより小さいまたは大きい自立式の装置にも適用可能である。
【0072】
図6は、基本的な実施態様におけるタイル装置の断面図であり、ガラス板AおよびBとその間に挟まれたOLEDとを示している。OLEDの陽極および陰極にそれぞれ接続される2本の配線は示されていない。
【0073】
ガラス板Aは、ガラス板AのOLED印刷面が背板Bの表面の1つに対向して位置するように背板Bと組み立てる。このように、画像を形成するOLEDは、2枚の板に挟まれ、透明ガラス板Aを介して見ることができる。
【0074】
接着剤を使用する場合は、アクリル系接着剤等の接着剤と相溶性を有するガラス板A上のOLEDの外部絶縁層上に塗布可能である。次に、第2の板Bを接着剤と接合させる。このように、2枚の板がOLEDをその間に挟むような構成とする。OLEDの陰極と陽極とは、それぞれ配線に接続され、電源との接続のために接着の前に装置の外側に配線の一部を残しておく。
【0075】
図7は、第2の実施態様の断面図であり、板Bの周辺部に沿って幅の細い端部が盛り上がっている。ガラス板Aの全面上でOLEDが組み立てられてはおらず、周辺部に沿ってガラス板Aの端部上に何もない領域が残されている。2枚の板を互いに接着剤で接合するか、ガラスフリットを溶融させて互いに接合する。本実施態様において、2枚の板の間に空間が形成される。この何もない空間は、平坦な薄型電池形式のOLEDの電源をタイル内に内蔵するのに利用される。このような場合、陽極および陰極に半田付けされた配線は装置内部にとどめておく。
【0076】
図8は、第3の実施態様の断面図であり、第2の実施態様に類似している。ガラス板Bは1つ以上の窪みを内蔵しており、これはバッテリーを収納するための窪みである。
【0077】
図9に示すように、図6〜8において説明および図示した点灯タイルは、現存の舗装部品にすっきりと埋め込むことが可能である。例えば、従来のタイルや本発明に係るその他のタイルで覆われた床、壁または天井への挿入を可能とするような手段をさらに含んでもよい。このために、1つの実施態様によれば、OLEDを備えるタイルの側面だけでなく背面にRTV等の弾性材料の平坦な薄膜を備え、装置の大きさは、陶器、大理石、ガラスやモザイクまたは任意のその他の種類の装飾タイルでできた周りのタイルの大きさと非常に近い。このように製造すると、本発明のタイルは、割り当てられた場所に適度の力で挿入可能となり、セメントを用いなくても保持可能である。
【0078】
陶器、石またはガラスでできたその他のタイルで囲まれた枠組みに本発明のタイルを嵌め込む方法は、RTVを用いた方法に限定されない。例えば、金属やプラスチック等のその他の各種材料を用いて嵌め込めばよく、嵌め込むための材料の選択は、工学的および建築的ニーズによって決定すればよい。
【0079】
平坦なタイルに関して本発明をこれまで説明したが、このようなタイルにのみ限定されない。本発明は、曲面タイルも包含し、例えば型で成形してガラス板AおよびBを適度な曲率を有する曲がった板として製造すれば、同じ幾何学的性質の装置と合わせることが可能となる。
【0080】
本発明のタイル内に密閉されたOLED装置の作動は、装置が外部の電源から動力を受ける場合には、任意のスイッチング素子で行うことができる。OLED装置とその電源、例えば、電池がタイル内部に密閉されている場合は、OLEDの作動、すなわち、電源への接続のスイッチを入れることは、電磁式またはRF回路等の様々な手段、または光センサや圧力センサにより行うことができる。スイッチング回路の種類の選択については、タイルの特定の用途やアクセス可能性に応じて決めればよい。
【0081】
使用中、図6〜9を用いて上述したようなOLED自己点灯タイルは、従来のタイルで覆われた表面に埋め込まれた光源パネルとしての役目を果たす。床の上でも機能する十分な強度を有する。専用の密閉された電源をさらに備え、従って、本発明のタイルの弾性(resilience)も専用電源も持たない従来提案されてきた点灯パネルに比べて改良されている。
【0082】
さらに重要なこととして、本発明のタイルは、たった2つの電極を有するパターニングされたまたは画素化されたOLEDの装飾的な特徴という利点を有する。これにより、本発明のタイルは、大半が装飾的機能を有する、タイルで覆われた表面により適したものとなる。
【0083】
このような種類のタイル内に密閉されパターニングされたOLED装置は、非常用または警告用点灯標識の作成において非常に有用に用いられる。このような標識は十分に保護され、専用の埋め込み電源を有し、日中でも暗い条件でもよく見えるからである。
【0084】
次に、図10〜12を参照して、OLEDに適用可能な静止カラーパターンの第2の用途について説明する。これはインクジェット技術等のプロセス印刷を用いたものであり、例えば従来のステンドグラス窓の視覚的効果に似ている。十分な量の日光が利用可能な際は、装置に電流は流さず、その場合には、1つの実施態様によれば、装置が略透明となるように着色された発光層が作用する。このような実施態様を使用すると、OLEDパターンが従来のステンドグラス窓の視覚効果に似たものとなり、OLEDのパターンが輪郭および色に関して正確に対応する。この装置を従来のステンドグラス窓の前に両者のパターンが正しい位置関係となるように配置する。
【0085】
OLED装置に電圧を印加していない時には、略透明のままであり、したがって従来のステンドグラス窓がOLED装置を介して見える。OLED装置に電圧を印加すると、ステンドグラス窓に似せたパターンから光が発せられ見えるようになる。この操作を夜間や周囲の日光条件が悪い時に行えば、従来のステンドグラス窓は暗いだろうが、従来のステンドグラス窓のいずれの側にOLED装置が置かれようとも、パターンが点灯し、従来のステンドグラスを介した背面照明の効果がもたらされる。日中と夜間との見え方をできるだけ同じようにするために、装置に印加する電圧を制御すればよい。
【0086】
別の実施態様によれば、OLED装置は透明ではない。この場合、OLEDパターンは、OLED装置に電圧が印加された時のみに見ることができる。電圧が印加されていない時には、不透明で従来のステンドグラス窓と位置を合わせて搭載されても、この従来のステンドグラス窓のパターンは見えない。したがって、このような実施態様は、従来のステンドグラス窓の代用として使用可能であり、この場合従来のステンドグラス窓とOLED装置との正確なパターンの位置合わせの必要がない。
【0087】
図10に、前述の1つ目の実施態様に記載の透明ステンドグラスOLEDパネルの多層構造を模式的に示す。このOLEDは、図1を参照して先に説明したように構成されており、透明ガラスまたはプラスチック材料のベース層11と、透明な層11上にスパッタにより堆積されたインジウム錫酸化物(ITO)からなる比較的透明な陽極12とを備える。正孔放出層13は、「PEDOT」(ポリエチレンジオキシチオフェン)またはそれに類似の材料の超薄被膜を用いて、スピンコーティング、ドクターブレードコーティングまたはインクジェット装置からの排出により形成される。電子放出層14は、発光層であり、PPVからなる。Ca、AuまたはAlからなる陰極15は、PPV層14上にスパッタにより堆積されるか、または箔として塗布される。PPV層14同様この層も透明である必要はない。最後に、ガラス等の透明シール層16が、水分や酸素からその他の層をシールするために設けられる。
【0088】
図11は、インクジェット技術等を用いてPPV層14上に発光インクを用いて印刷された連続的なカラー領域を示す図であり、陽極11と陰極15との間に電圧を印加すると、カラー領域が点灯した画素の色に応じた光を発する。輝度のレベルは、陽極と陰極との間に印加する電圧と非線形な関係にある。輝度は、手動により制御してもよく、または2つの電極を電圧レベルコントローラ(図示せず)を介して電源に接続することによりプログラム可能なサーボ機構によって制御してもよい。コントローラは、周辺光のレベルを計測する光センサからの入力を受け、この入力を用いてコントローラに含まれるファームウェアによって電圧を所望のレベルに上げ下げする。
【0089】
図12に別の実施態様を示す。これは銅の細片で色付きグラス片をまとめて保持した古くからのステンドグラスデザインを真似たものである。本発明において、銅の接合部は、連続したカラー領域間の各共通する境界に重なるようにインクジェットまたはリソグラフィ工程を用いて黒い樹脂で印刷された太い黒線で擬似的に形成される。
【0090】
このように、本発明によれば、励起電流により点灯すると、ステンドグラス窓のような視覚体験を与えるOLED装置が提供される。カラーパターンは、図2B〜5を用いて上述したようにインクジェット印刷技術を用いて実現可能である。しかしながら、他の技術を用いてカラー領域を堆積することも可能である。図10〜12に示したような本発明に係るステンドグラスOLED装置およびパターンは、先に参照した米国特許第6,565,231号明細書に記載されるような従来提案されてきた効果と比べて、パターン印刷が簡単であることだけでなく、単一のパネル上にカラー領域を堆積すればよいので複数のパネルを端と端に並べる必要がなくなることでも区別される。
【0091】
このような方法で窓枠に嵌めるガラス基板上にパターニングされたOLEDを作成することで、2つの電極11と15との間に電圧を印加すれば、ステンドグラス窓の視覚認識が得られる。
【0092】
本発明に係るOLED装置の更なる用途は、発光による装飾を有するグリーティングカードに関する。現在多くの装飾されたグリーティングカードは、魅力的で人目を引くように光沢のある箔や明るい色で浮き上がらせた厚い紙の上に印刷されていることがある。オランダのルマックス社等の何社かの企業は、半透明の紙にグリーティングカードを印刷し、ティーライトキャンドルや電球ホルダ(bulb lamp holder)と共にそれらを供給している。カードをホルダに載せ、背面から照らす。これらのカードは、従来の印刷技術を用いて製造される。
【0093】
図13に本発明に係る開いた状態のグリーティングカードを模式的に示す。上述のようなOLEDのPPV層上に印刷により形成された装飾パターンは、カードの一方の側に添付され、もう一方の側に搭載された平坦な電池に接続される。1本の配線がOLEDの陽極から電池のプラス端子に接続されており、OLEDの陰極は、T字形状片等に形成されたスイッチを介して電池のマイナス端子に接続される。このT字形状片が伸びて、電池に接続されたループ状のワイヤに押し付けられると、電気的な接点が形成される。
【0094】
図14は、そのカードを閉じた状態を示しており、T字形状片は後退しているので、電池の回路が不完全でOLEDは作動していない。カードを開くと、T字形状片が伸びてループと接触し、回路が完成してOLEDが点灯する。OLEDの陽極と電池の+端子との間には、事実上スイッチが接続されている。
【0095】
基板として作用する透明薄膜上に固定画像が表示される。このような基板の厚さは、用紙の厚さと同じでよい。ただし、実用上および外見上、200gm以上の厚みの用紙を使用するのが望ましい。OLEDのその他全ての層の厚みは、1mm未満である。あるいは、OLEDをもっと薄い基板上に印刷して、それを厚い用紙に載せてもよい。
【0096】
この結果、「カード」にOLED画像パターンが搭載され、それを封筒に入れて郵送することができる。OLEDに電力を供給しない限り、単調で明るくないカラーのはっきりしない画像が見えるだけである。電力が供給されると、鮮明な色と高いコントラストを有するCRTやLCD画面に近い輝度を有する点灯パターンとして画像がはっきりと現れる。このOLED装置は、受取人が封筒から取り出した時に自動的に電力が供給されるようにできている。これは、光を感知する作動回路等を用いて行うことができ、このような技術は当業界で公知である。
【0097】
図6〜14を参照して上述した用途は、例示的なものであり、本発明の原理を商品化して本発明の通りに構成されたOLEDを用いて形成される静止画像を有する豊富な製品を製造することが容易であることを単に示すためのものである。他の用途についても関連する分野の当業者にとって役立つものとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、比較的単純な多層構造を有する発光ポリマーに基づく従来例のOLEDディスプレイパネルを図式的に示す。
【図2A】図2Aは、従来例の光反射インクを用いたインクジェット印刷に必要な主な各処理を示すフローチャートである。
【図2B】図2Bは、本発明の発光インクを用いたインクジェット印刷に必要な主な各処理を示すフローチャートである。
【図3】図3は、発光材料を印刷することにより得られた文字「A」形状のパターンを示す。
【図4】図4は、任意の点でPPV層の厚さを制御することにより固定印刷パターン内にさらにサブ点灯パターンを作成する様子を図式的に示す。
【図5】図5は、スクリーニングを用いた段階的な点灯の様子を図示的に示す。
【図6】図6は、実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図7】図7は、他の実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図8】図8は、他の実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図9】図9は、他の実施態様に係る、OLED技術を用いてインクジェット印刷により形成されたパターンを有するタイルの断面図である。
【図10】図10は、本発明に係る半透明OLED装置の構造を拡大して図式的に示す。
【図11】図11は、ステンドグラス効果をもたらす図10に示したOLED装置のパターニングを模式的に示す。
【図12】図12は、異なる色領域の境界が太い黒線で示された、図11に示したOLED装置のパターニングを模式的に示す。
【図13】図13は、本発明に係るOLED技術を用いてインクジェット印刷により形成された点灯パターンを有するグリーティングカードを模式的に示す。
【図14】図14は、図13に示したカードを閉じた状態で詳細に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己点灯可能な静止画像を作成する方法であって、
有機発光ダイオード装置の層上に、発光インクを用いて前記画像の構成画素を印刷する工程と、
前記有機発光ダイオードに電圧を印加するための陰極および陽極を設ける工程とを含み、
前記印刷する工程において、前記層の前成形することなく、パターンの外形が前記構成画素によってのみ定められるように、パターン形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記画素の各色成分および無彩色の背景色に対応する中間調カラーセパレーションマスクをそれぞれ生成する工程と、
各発光インクを用いて前記色成分に対応する前記画素を印刷する工程と、
非発光性および非導電性のインクを用いて前記無彩色の背景色に対応する前記画素を印刷する工程とを含む方法。
【請求項3】
前記色成分を別々に印刷するようプロセス印刷機を作動させる工程をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記全ての画素を同時に作動させるよう単一の陽極および単一の陰極が設けられ、選択された画素を別々にアドレス指定する必要がない請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記画素が前記有機発光ダイオードのPEDOT層上または陰極上に印刷される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記画素が異なる発光インクを用いて形成される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
より高い色濃度が要求される場所では、発光インクを厚く堆積することにより選択画素の光の色濃度を変化させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記画素がインクジェット技術を用いて印刷される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、従来の印刷のように前記画像を処理し、前記画像の補正およびまたは調整を行う工程をさらに含む方法。
【請求項10】
前記処理が、スクリーニングとディザリングとによる前記画像の前処理を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記パターンが印刷された前記層を装置内に密閉する工程をさらに含む方法。
【請求項12】
作動すると自己点灯可能な静止画像を有し、
有機発光ダイオード装置の層上に発光インクを用いて印刷された前記画像の構成画素を含み、パターンの外形が前記画素によってのみ定められ、前記層の前成形を必要としないよう形成された装置。
【請求項13】
無彩色の背景色に対応する画素が発光もせず導電性でもないインクで形成された請求項12に記載の装置。
【請求項14】
選択画素を別々にアドレス指定する必要がなく、前記全ての画素を同時に作動するための単一の陽極および単一の陰極を備える請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記画素が前記有機発光ダイオードのPEDOT層上または前記有機発光ダイオードの陰極上に印刷された請求項12または13に記載の装置。
【請求項16】
前記画素が異なる色の発光インクを含む請求項12〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記画素のうち選択された画素の厚さが前記選択された画素に関連する所定の光の色濃度に従って変化する請求項12〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記画素がインクジェット技術を用いて印刷される請求項12〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
装飾タイルである請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
発光色が連続的な領域として印刷された単一パネルを有するステンドグラス窓である請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
連続したカラー領域間の各共通する境界に重なるように印刷された黒線をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
グリーティングカードである請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
有機発光ダイオードの層上に形成されたパターンを有する装飾タイル。
【請求項24】
有機発光ダイオードの層上に、発光色が連続的な領域として堆積されたステンドグラスパネル。
【請求項25】
連続したカラー領域間の各共通する境界に重なるように堆積された黒線をさらに備えた請求項24に記載のステンドグラスパネル。
【請求項26】
有機発光ダイオードの層上に形成されたパターンを有するグリーティングカード。
【請求項1】
自己点灯可能な静止画像を作成する方法であって、
有機発光ダイオード装置の層上に、発光インクを用いて前記画像の構成画素を印刷する工程と、
前記有機発光ダイオードに電圧を印加するための陰極および陽極を設ける工程とを含み、
前記印刷する工程において、前記層の前成形することなく、パターンの外形が前記構成画素によってのみ定められるように、パターン形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記画素の各色成分および無彩色の背景色に対応する中間調カラーセパレーションマスクをそれぞれ生成する工程と、
各発光インクを用いて前記色成分に対応する前記画素を印刷する工程と、
非発光性および非導電性のインクを用いて前記無彩色の背景色に対応する前記画素を印刷する工程とを含む方法。
【請求項3】
前記色成分を別々に印刷するようプロセス印刷機を作動させる工程をさらに含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記全ての画素を同時に作動させるよう単一の陽極および単一の陰極が設けられ、選択された画素を別々にアドレス指定する必要がない請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記画素が前記有機発光ダイオードのPEDOT層上または陰極上に印刷される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記画素が異なる発光インクを用いて形成される請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
より高い色濃度が要求される場所では、発光インクを厚く堆積することにより選択画素の光の色濃度を変化させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記画素がインクジェット技術を用いて印刷される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法であって、従来の印刷のように前記画像を処理し、前記画像の補正およびまたは調整を行う工程をさらに含む方法。
【請求項10】
前記処理が、スクリーニングとディザリングとによる前記画像の前処理を含む請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法であって、前記パターンが印刷された前記層を装置内に密閉する工程をさらに含む方法。
【請求項12】
作動すると自己点灯可能な静止画像を有し、
有機発光ダイオード装置の層上に発光インクを用いて印刷された前記画像の構成画素を含み、パターンの外形が前記画素によってのみ定められ、前記層の前成形を必要としないよう形成された装置。
【請求項13】
無彩色の背景色に対応する画素が発光もせず導電性でもないインクで形成された請求項12に記載の装置。
【請求項14】
選択画素を別々にアドレス指定する必要がなく、前記全ての画素を同時に作動するための単一の陽極および単一の陰極を備える請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記画素が前記有機発光ダイオードのPEDOT層上または前記有機発光ダイオードの陰極上に印刷された請求項12または13に記載の装置。
【請求項16】
前記画素が異なる色の発光インクを含む請求項12〜15のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記画素のうち選択された画素の厚さが前記選択された画素に関連する所定の光の色濃度に従って変化する請求項12〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記画素がインクジェット技術を用いて印刷される請求項12〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
装飾タイルである請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
発光色が連続的な領域として印刷された単一パネルを有するステンドグラス窓である請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
連続したカラー領域間の各共通する境界に重なるように印刷された黒線をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項22】
グリーティングカードである請求項12〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
有機発光ダイオードの層上に形成されたパターンを有する装飾タイル。
【請求項24】
有機発光ダイオードの層上に、発光色が連続的な領域として堆積されたステンドグラスパネル。
【請求項25】
連続したカラー領域間の各共通する境界に重なるように堆積された黒線をさらに備えた請求項24に記載のステンドグラスパネル。
【請求項26】
有機発光ダイオードの層上に形成されたパターンを有するグリーティングカード。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−512667(P2007−512667A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540776(P2006−540776)
【出願日】平成16年11月28日(2004.11.28)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001090
【国際公開番号】WO2005/053057
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506072907)ピクスドロ エルティーディー. (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月28日(2004.11.28)
【国際出願番号】PCT/IL2004/001090
【国際公開番号】WO2005/053057
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506072907)ピクスドロ エルティーディー. (2)
【Fターム(参考)】
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