説明

印刷ジョブデータ管理処理装置および印刷装置

【課題】印刷ジョブデータの上書削除処理と印刷処理とを並行しておこなう場合であっても印刷処理速度に影響を及ぼすことなく上書削除処理を実行する。
【解決手段】印刷ジョブデータを記憶する印刷ジョブデータ記憶部と、印刷ジョブデータの上書削除要求を受け付ける削除要求受付部と、上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報をテーブルに登録して管理する印刷ジョブデータ管理部と、上書削除要求対象の印刷ジョブデータに対して上書削除処理を施す上書削除処理部とを設け、上書削除処理部が、印刷ジョブデータ管理部のテーブルに複数の印刷ジョブデータが登録された際、印刷ジョブデータに対し1つずつ逐次的に上書削除処理を施すものであるとともに、上書削除処理を施す際、所定の間隔で上書削除処理の中断と再開を行うものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ジョブデータ管理処理装置および印刷装置に関するものであり、特に、印刷ジョブデータの上書削除処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータから出力されたPDL(Page Description Language)データの印刷ジョブデータや、スキャナなどによって原稿を読み取った印刷データを含む印刷ジョブデータに基づいて印刷処理を行う印刷装置が種々提案されている。
【0003】
そして、このような印刷装置においては、印刷ジョブデータをハードディスクなどの記憶媒体に一旦記憶した後に印刷処理を行い、印刷処理が終了するなど印刷ジョブデータが不要になったタイミングでその印刷ジョブデータをハードディスクから削除する処理が行われている。
【0004】
印刷ジョブデータを削除する方法としては、たとえば、印刷ジョブデータに含まれる管理データのみを消去し、印刷データ部分については変更しない方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−107866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように管理データのみを消去した場合には、印刷データは消去されずに残ったままであり、ハードディスクから読取可能な状態であるので、たとえば悪意をもって印刷データを読み出そうとする者がいたり、ハードディスクを破棄するような場合には、セキュリティ上、非常に問題がある。
【0007】
そこで、印刷データに対して上書き処理を施すことによって削除を行う上書削除処理が用いられているが、この上書削除処理を行った場合、印刷データの全ての画素データに上書きを行うためシステム負荷が重くなってしまう。したがって、たとえば、印刷装置において複数の印刷ジョブデータが順次受け付けられ、上書削除処理と印刷処理とが並行して行われる場合には印刷処理速度に影響を与える問題がある。
【0008】
なお、特許文献1においては、上書削除要求をテーブルで管理し、テーブル上の上書削除要求の有無に応じて省電力モードへの遷移を制御する方法が提案されているが、上書削除処理が印刷処理速度に及ぼす影響については何の対策も提案されていない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、印刷ジョブデータの上書削除処理と印刷処理とを並行しておこなう場合であっても印刷処理速度に影響を及ぼすことなく上書削除処理を実行することができる印刷ジョブデータ管理処理装置および印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置は、印刷ジョブデータを記憶する印刷ジョブデータ記憶部と、印刷ジョブデータ記憶部に記憶された印刷ジョブデータの上書削除要求を受け付ける削除要求受付部と、削除要求受付部によって受け付けられた上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報をテーブルに登録して管理する印刷ジョブデータ管理部と、削除要求受付部によって受け付けられた上書削除要求対象の印刷ジョブデータに対して上書削除処理を施す上書削除処理部とを備え、上書削除処理部が、印刷ジョブデータ管理部のテーブルに複数の印刷ジョブデータが登録された際、印刷ジョブデータに対し1つずつ逐次的に上書削除処理を施すものであるとともに、上書削除処理を施す際、所定の間隔で上書削除処理の中断と再開を行うものであることを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置においては、上書削除処理部を、印刷ジョブデータ記憶部に記憶されている全ての印刷ジョブデータを削除する際には、上書削除処理の中断と再開を行うことなく連続して上書削除処理を行うものとできる。
【0012】
また、上書削除処理部を、所望の印刷処理速度に基づいて、上書削除処理の中断を行う所定の間隔または中断から再開までの時間を設定するものとできる。
【0013】
また、上書削除処理部を、上書削除処理を行う演算処理装置の処理能力に基づいて、上書削除処理の中断を行う所定の間隔または中断から再開までの時間を設定するものとできる。
【0014】
また、上書削除処理部を、印刷ジョブデータ管理処理装置を起動した際に、処理能力に応じた所定の間隔および時間を設定するものとできる。
【0015】
また、上書削除処理部を、印刷ジョブデータのデータ量に基づいて、上書削除処理の中断を行う所定の間隔または中断から再開までの時間を設定するものとできる。
【0016】
また、印刷部において印刷処理中か否かを認識する印刷処理認識部を設け、上書削除処理部を、印刷処理認識部において印刷処理中でないと認識された場合には、上書削除処理の中断を行わないものとできる。
【0017】
本発明の印刷装置は、上記本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置と、印刷ジョブデータに基づいて印刷処理を行う印刷部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置および印刷装置によれば、印刷ジョブデータ管理部のテーブルに複数の印刷ジョブデータが登録された際、印刷ジョブデータに対し1つずつ逐次的に上書削除処理を施すものであるとともに、上書削除処理を施す際、所定の間隔で上書削除処理の中断と再開を行うようにしたので、上書削除処理を中断している間は、印刷部の印刷処理に対するシステム負荷の割合を大きくすることができるので、印刷処理速度に影響を及ぼすことなく上書削除処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置の一実施形態を用いたプリンタシステムの概略構成を示すブロック図
【図2】印刷ジョブデータ管理部における上書削除管理テーブルを説明するための図
【図3】上書削除処理を説明するための図
【図4】上書削除処理の中断タイミングの一例を示す図
【図5】本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置の一実施形態を用いたプリンタシステムの作用を説明するためのフローチャート
【図6】本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置のその他の実施形態を用いたプリンタシステムの概略構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の印刷ジョブデータ管理処理装置の一実施形態を用いたプリンタシステムについて詳細に説明する。図1は、本実施形態のプリンタシステムの全体概略構成図である。
【0021】
本実施形態のプリンタシステムは、図1に示すように、コンピュータ10と、コンピュータ10に有線または無線LANなどのネットワークを介して接続された印刷装置20とを備えている。
【0022】
コンピュータ10は、図1に示すように、アプリケーション11とプリンタドライバ12とを備えている。なお、アプリケーション11およびプリンタドライバ12は、コンピュータ10にインストールされたプログラムによって構成されるものである。
【0023】
アプリケーション11は、メモ帳やWord(登録商標)などのような原稿画像を表す画像データを編集することができるプログラムであり、アプリケーション11において編集された画像データはプリンタドライバ12に出力される。
【0024】
プリンタドライバ12は、印刷枚数や印刷部数、面付けなどの種々の印刷条件および出力方法などの操作者による入力を受け付けるユーザーインターフェースを有し、その印刷条件や出力方法などに応じて、印刷装置20において認識可能な印刷ジョブデータを生成して出力するものである。本実施形態におけるプリンタドライバ12は、印刷ジョブデータとして、PDL(Page Description Language)データを生成するものである。
【0025】
印刷装置20は、図1に示すように、印刷ジョブデータ受付部21と、展開処理部22と、印刷ジョブデータ記憶部23と、印刷エンジン24と、制御部25と、上書削除処理部28と、入力部29とを備えている。
【0026】
印刷ジョブデータ受付部21は、コンピュータ10のプリンタドライバ12から出力された印刷データを有する印刷ジョブデータを受け付けるものである。
【0027】
展開処理部22は、印刷ジョブデータ受付部21によって受け付けられた印刷ジョブデータに対して展開処理を施してビットマップ形式のページ毎のページデータを生成し、そのページデータを印刷ジョブデータ記憶部23に出力するものである。
【0028】
印刷ジョブデータ記憶部23は、展開処理部22において展開処理の施された印刷ジョブデータ(ページデータ)を記憶するものであり、ハードディスクや不揮発性の半導体メモリから構成されるものである。
【0029】
印刷エンジン24は、印刷ジョブデータ記憶部23から出力されたページデータに基づいて印刷用紙に印刷処理を施すものであり、たとえば、孔版印刷プリンタエンジンやインクジェットプリンタエンジンやレーザープリンタエンジンなどを用いることができる。
【0030】
制御部25は、印刷装置20全体を制御するものであり、演算処理装置(CPU(Central Processing Unit))や半導体メモリなどから構成されるものである。そして、本実施形態の印刷装置20の制御部25は、図1に示すように、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された印刷ジョブデータの上書削除要求を受け付ける削除要求受付部26と、削除要求受付部26によって受け付けられた上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報をテーブルに登録して管理する印刷ジョブデータ管理部27とを備えている。
【0031】
削除要求受付部26は、本実施形態においては、印刷エンジン24において印刷処理が終了したことを認識することによって、その印刷処理対象の印刷ジョブデータの上書削除要求を受け付けるものである。
【0032】
さらに、削除要求受付部26は、入力部29においてユーザーによって入力された印刷ジョブデータの削除指示を認識することによっても、その印刷ジョブデータの上書削除要求を受け付けるものである。ユーザーが印刷ジョブデータの削除指示を入力する状況としては、たとえば、印刷ジョブデータが印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された後、ユーザーによって印刷処理の中止が指示入力された際、まだ上書削除処理の施されていない印刷ジョブデータが印刷ジョブデータ記憶部23に残っている場合や、印刷装置20自体を破棄する際に、上書削除処理の施されていない印刷ジョブデータが印刷ジョブデータ記憶部23に残っている場合である。
【0033】
印刷ジョブデータ管理部27は、削除要求受付部26によって受け付けられた上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報を取得し、その情報を図2に示すようなテーブルとして登録して管理するものである。そして、上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報がテーブルに複数登録されている場合には、その登録されている印刷ジョブデータに対して1つずつ逐次的に上書削除処理が施されるように上書削除処理部28に対して印刷ジョブデータの情報を出力するものである。なお、印刷ジョブデータの情報としては、たとえば印刷ジョブデータのファイル名を使用することができる。
【0034】
上書削除処理部28は、印刷ジョブデータ管理部27から出力された上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報に基づいて、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された展開処理済の印刷ジョブデータに対して上書削除処理を施すものである。本実施形態の上書削除処理は、図3に示すように、印刷ジョブデータの各行の各画素データを走査して、まず、その各画素データに対してゼロのデータを順次上書きして書き込む処理を行い、次に、再び印刷ジョブデータの各行の各画素データを走査して、その各画素データに対して16進数のfの値を順次上書きして書き込む処理を行い、さらに再び印刷ジョブデータの各行の各画素データを走査して、その各画素データに対して乱数を上書きして書き込む処理を行う処理である。このように複数回繰り返して上書き処理を行うのは、一度の書き込みだけであると、印刷ジョブデータ記憶部を取り外して残留磁気読取装置にかけるとデータを復元できるおそれがあり、これを防止するためである。
【0035】
そして、上書削除処理部28は、印刷ジョブデータに上述した上書削除処理を施す際、所定の間隔で上書削除処理の中断と再開を行うものである。具体的には、本実施形態においては、上書削除処理部28は、予め設定された画素データの数nだけ走査してその画素データの上書きを行う毎に、所定時間mだけ走査および上書きを中断し、そして、その所定時間mを経過した時点から再びデータの走査および上書きを再開するものである。図4は、たとえば、画素データの数n=13とした場合における上書削除処理を中断するタイミングを矢印で示したものである。なお、本実施形態においては、上述した画素データの数nと所定時間mは、所望の印刷処理速度を維持しつつ上書削除処理を行えるように実験などで予め取得された値を用いるものとする。
【0036】
入力部29は、ユーザーによる所定の指示入力や印刷条件入力などを受け付けるものであり、本実施形態においては、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された印刷ジョブデータを上書削除する指示入力を受け付けるものである。入力部29としては、たとえば、液晶タッチパネルやキーパネルなどを用いることができる。
【0037】
次に、本実施形態のプリンタシステムの作用について、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、印刷ジョブデータの生成〜印刷処理〜印刷ジョブデータの上書削除処理までの一連の流れを説明する。
【0038】
まず、アプリケーション11が起動され、このアプリケーション11を用いて文書、イラスト、写真画像などが編集されて画像データが生成される。
【0039】
そして、アプリケーション11において印刷指示が選択されると、プリンタドライバ12のユーザーインターフェースが起動されて種々の印刷条件および出力方法などの入力を受け付ける印刷条件受付画面が表示され、その印刷条件受付画面において種々の印刷条件および出力方法などが操作者によって所定の入力手段を用いて設定された後、印刷指示が選択されると、プリンタドライバ12はその印刷条件や出力方法と画像データとに基づいて、印刷ジョブデータを生成する(S10)。
【0040】
そして、プリンタドライバ12において生成された印刷ジョブデータは印刷装置20に出力され、印刷ジョブデータ受付部21によって受け付けられる(S12)。印刷ジョブデータ受付部21によって受け付けられた印刷ジョブデータは展開処理部22に出力され、展開処理部22は、入力された印刷ジョブデータに対して展開処理を施してビットマップデータからなるページ毎のページデータを生成し、そのページデータを印刷ジョブデータ記憶部23に出力する(S14)。
【0041】
そして、展開処理部22から出力されたページデータは、印刷ジョブデータ記憶部23に順次記憶される(S16)。
【0042】
次に、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶されたページデータが順次読み出されて印刷エンジン24に出力され、入力されたページデータに基づいて印刷用紙に印刷処理が施される(S18)。
【0043】
そして、1つの印刷ジョブデータの印刷処理が終了するとそのことが制御部25によって認識され(S20)、削除要求受付部26によって、印刷処理の終了した印刷ジョブデータの上書削除要求が受け付けられる(S22)。
【0044】
削除要求受付部26は、上書削除要求を受け付けるとその上書削除要求の対象となっている印刷ジョブデータの情報を印刷ジョブデータ管理部27に出力し、印刷ジョブデータ管理部27は、入力された印刷ジョブデータの情報をテーブルに登録する(S24)。
【0045】
そして、印刷ジョブデータ管理部27は、テーブルに登録された印刷ジョブデータの情報を上書削除処理部28に出力し、上書削除処理部28は、入力された印刷ジョブデータの情報に基づいて、その印刷ジョブデータの情報に属する印刷ジョブデータ記憶部23に記憶されたページデータにアクセスし、そのページデータに対して上述したような上書削除処理を施す(S26)。
【0046】
以上が、印刷ジョブデータの生成〜印刷処理〜印刷ジョブデータの上書削除処理までの一連の流れの説明である。
【0047】
ここで、印刷ジョブデータ受付部21によって複数の印刷ジョブデータが順次受け付けられた場合には、その受け付けられた順番で上述したような展開処理、印刷処理および上書削除処理などが施されることになるが、このとき印刷ジョブデータ管理部27は、印刷処理の終了した印刷ジョブデータの情報をテーブルに順次登録していく。そして、印刷ジョブデータ管理部27は、複数の印刷ジョブデータの情報がテーブルに登録された場合、上述したように、その登録されている印刷ジョブデータに対して1つずつ逐次的に上書削除処理が施されるように上書削除処理部28に対して印刷ジョブデータの情報を出力する。
【0048】
そして、上書削除処理部28において上書削除処理が順次施されることになるが、このとき、たとえば、最初に受け付けられた第1の印刷ジョブデータの上書削除処理の最中に、それ以降に受け付けられた印刷ジョブデータの印刷処理が並行して行われることになる。そして、このとき制御部25のCPUの処理能力は上書削除処理と印刷処理との両方に使用されることになるが、上書削除処理のCPUの処理能力を多く割り当てると印刷処理の速度が遅くなってしまい、所望の印刷処理速度を得られない場合がある。
【0049】
そこで、本実施形態においては、上述したように、上書削除処理部28が、上書削除処理の中断と再開を所定の間隔毎に行うことによって、その上書削除処理を中断している間は印刷処理に全てのCPUの処理能力を割り当てるようにし、所望の印刷処理速度が維持できるようにしている。
【0050】
なお、上書削除処理の中断タイミングに応じた画素データの数nと上書削除処理を中断している時間mとは、印刷処理中における上書削除処理全体としてのCPUの占有率が、2%〜5%程度になるように設定することが望ましい。このような値に設定することにより、印刷処理速度を予め一般的に決められた許容範囲内に維持することができる。
【0051】
また、上記説明においては、上書削除処理と印刷処理が並行して行われる場合の上書削除処理の方法について説明したが、たとえば、印刷装置20において、複数の印刷ジョブデータが受け付けられ、それらの印刷ジョブデータが印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された後、ユーザーによって印刷処理の中止が指示入力されるとともに、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された印刷ジョブデータのうち上書削除処理が未だ施されていない全ての印刷ジョブデータに対して上書削除処理を施す指示入力された場合には、上述したような上書削除処理の中断および再開は行わず、印刷ジョブデータの最初のデータから最後のデータまで連続して走査および上書きを行うようにしてもよい。また、印刷装置20を破棄する際、印刷ジョブデータ記憶部23に残っている全ての印刷ジョブデータを削除する場合にも、上書削除処理の中断および再開は行わず、印刷ジョブデータの最初のデータから最後のデータまで連続して走査および上書きを行うようにすればよい。
【0052】
また、たとえば、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された印刷ジョブデータのうちの1つの印刷ジョブデータの上書削除処理の操作者による指示入力を受け付けるようにしてもよい。たとえば、1つの印刷ジョブデータが印刷ジョブデータ記憶部23に記憶され、その印刷ジョブデータの印刷中に印刷中止の指示が行われたような場合、その印刷ジョブデータの上書削除処理の指示入力を受け付けて上書削除処理を行うようにしてもよい。この場合においても印刷中ではないので、上書削除処理の中断および再開は行わず、印刷ジョブデータの最初のデータから最後のデータまで連続して走査および上書きを行うようにすればよい。
【0053】
または、複数の印刷ジョブデータが記憶された状態において、その中の1つの印刷ジョブデータの印刷中に、その印刷中の印刷ジョブデータとは異なる所定の印刷ジョブデータに対する上書削除処理の指示入力を受け付けるようにしてもよく、この場合は、印刷中であるので印刷処理速度に影響を及ぼさないように、上記実施形態と同様に、上書削除処理の中断および再開を行うようにすればよい。
【0054】
また、所定の印刷ジョブデータを印刷中に、その印刷ジョブデータとは異なる印刷ジョブデータを印刷装置20が受信しているときに、その受信中の印刷ジョブデータをキャンセルした場合や受信エラーになった場合にも、その印刷ジョブデータに対する上書削除処理の指示入力を受け付けるようにしてもよく、この場合も、印刷中であるので印刷処理速度に影響を及ぼさないように、上記実施形態と同様に、上書削除処理の中断および再開を行うようにすればよい。
【0055】
また、上述したように全ての印刷ジョブデータに対して上書削除処理の指示入力がされた場合に限らず、ユーザーからの所定の印刷ジョブデータの上書削除処理の指示入力が印刷処理中でないときに行われた場合には、その印刷ジョブデータの上書削除処理の際には、上書削除処理の中断および再開は行わないようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、たとえば、印刷エンジン24の印刷処理速度が複数設定可能な場合には、その印刷処理速度に対応する中断タイミングに応じた画素データの数nおよび中断時間mを予め設定しておくようにしてもよい。具体的には、たとえば、上書削除処理部28に上記複数の印刷処理速度のそれぞれに対応する画素データの数nと中断時間mとを予めテーブルとして設定しておくようにすればよい。
【0057】
そして、入力部29において、ユーザーが上記複数の印刷処理速度の中から所望の印刷処理速度を選択して入力し、上書削除処理部28が、その入力された印刷処理速度に対応する画素データの数nと中断時間mと上記テーブルを参照して取得し、その画素データの数nと中断時間mとに基づいて上書削除処理を行うようにすればよい。なお、このとき印刷エンジン24は、ユーザーによって選択入力された印刷処理速度で印刷処理を行うように制御部25によって制御されるものとする。また、このようにする場合においても、画素データの数nと上書削除処理を中断している時間mとは、印刷処理中における上書削除処理全体としてのCPUの占有率が、2%〜5%程度になるように設定することが望ましい。
【0058】
また、上記実施形態において、たとえば、制御部25のCPUが交換可能な場合には、そのCPUの処理能力に対応する中断タイミングに応じた画素データの数nおよび中断時間mを予め設定しておくようにしてもよい。具体的には、たとえば、上書削除処理部28に上記複数のCPUの処理能力のそれぞれに対応する画素データの数nと中断時間mとを予めテーブルとして設定しておくようにすればよい。
【0059】
そして、入力部29において、ユーザーが上記複数のCPUの処理能力の中から交換後のCPUを処理能力を選択して入力し、上書削除処理部28が、その入力されたCPUの処理能力に対応する画素データの数nと中断時間mと上記テーブルを参照して取得し、その画素データの数nと中断時間mとに基づいて上書削除処理を行うようにすればよい。なお、このようにする場合においても、画素データの数nと上書削除処理を中断している時間mとは、印刷処理中における上書削除処理全体としてのCPUの占有率が、2%〜5%程度になるように設定することが望ましい。また、上述したように所望の印刷処理速度もさらに考慮して画素データの数nと中断時間mとを設定するようにしてもよい。
【0060】
また、画素データの数nと中断時間mとを決定するタイミングとしては、CPUを交換した後に、印刷装置20を起動したときであることが望ましい。
【0061】
また、上記実施形態において、たとえば、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された印刷ジョブデータのデータ量に対応する中断タイミングに応じた画素データの数nおよび中断時間mを予め設定しておくようにしてもよい。具体的には、たとえば、上書削除処理部28に上記データ量とのそのデータ量に対応する画素データの数nと中断時間mとを予めテーブルとして設定しておくようにすればよい。
【0062】
そして、上書削除処理部28が、印刷ジョブデータ記憶部23に記憶された印刷ジョブデータのデータ量を取得し、そのデータ量に対応する画素データの数nと中断時間mと上記テーブルを参照して取得し、その画素データの数nと中断時間mとに基づいて上書削除処理を行うようにすればよい。なお、データ量が大きいほど画素データの数nは大きい値に設定され、その分、全ての印刷ジョブデータに対する上書削除処理を終了するまでの中断の回数が減るので中断時間mも大きい値に設定される。たとえば、印刷ジョブデータが100バイトであるとすると、1回の上書きの画素データの数が5バイトの場合、中断回数は100/5=20回であるが、1回の上書きの画素データの数が10バイトの場合、中断回数は100/10=10回となるので、その回数が減った分だけ中断時間を長くとることによって印刷処理速度を維持するようにする。
【0063】
このようにする場合においても、画素データの数nと上書削除処理を中断している時間mとは、印刷処理中における上書削除処理全体としてのCPUの占有率が、2%〜5%程度になるように設定することが望ましい。また、上述したように所望の印刷処理速度もさらに考慮して画素データの数nと中断時間mとを設定するようにしてもよい。
【0064】
また、図6に示すように、印刷エンジン24において印刷処理中か否かを認識する印刷処理認識部31を印刷装置30の制御部25に設け、印刷処理認識部31において印刷処理中でないと認識された場合には、上述した上書削除処理の中断を行わず、印刷ジョブデータの最初のデータから最後のデータまで連続して走査および上書きを行うようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、コンピュータ10から出力された印刷ジョブデータの印刷処理および上書削除処理について説明したが、コンピュータ10に限らず、印刷装置20に設けられたスキャナもしくは印刷装置20とは別個のスキャナによって読み出された印刷データを有する印刷ジョブデータに対して、上述したような印刷処理および上書削除処理を施すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 コンピュータ
11 アプリケーション
12 プリンタドライバ
20 印刷装置
21 印刷ジョブデータ受付部
22 展開処理部
23 印刷ジョブデータ記憶部
24 印刷エンジン
25 制御部
26 削除要求受付部
27 印刷ジョブデータ管理部
28 上書削除処理部
29 入力部
31 印刷処理認識部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブデータを記憶する印刷ジョブデータ記憶部と、
該印刷ジョブデータ記憶部に記憶された印刷ジョブデータの上書削除要求を受け付ける削除要求受付部と、
該削除要求受付部によって受け付けられた上書削除要求対象の印刷ジョブデータの情報をテーブルに登録して管理する印刷ジョブデータ管理部と、
前記削除要求受付部によって受け付けられた上書削除要求対象の印刷ジョブデータに対して上書削除処理を施す上書削除処理部とを備え、
該上書削除処理部が、前記印刷ジョブデータ管理部のテーブルに複数の前記印刷ジョブデータが登録された際、該印刷ジョブデータに対し1つずつ逐次的に前記上書削除処理を施すものであるとともに、該上書削除処理を施す際、所定の間隔で前記上書削除処理の中断と再開を行うものであることを特徴とする印刷ジョブデータ管理処理装置。
【請求項2】
前記上書削除処理部が、前記印刷ジョブデータ記憶部に記憶されている全ての印刷ジョブデータを削除する際には、前記上書削除処理の中断と再開を行うことなく連続して前記上書削除処理を行うものであることを特徴とする請求項1記載の印刷ジョブデータ管理処理装置。
【請求項3】
前記上書削除処理部が、所望の印刷処理速度に基づいて、前記上書削除処理の前記中断を行う前記所定の間隔または前記中断から前記再開までの時間を設定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の印刷ジョブデータ管理処理装置。
【請求項4】
前記上書削除処理部が、前記上書削除処理を行う演算処理装置の処理能力に基づいて、前記上書削除処理の前記中断を行う前記所定の間隔または前記中断から前記再開までの時間を設定するものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の印刷ジョブデータ管理処理装置。
【請求項5】
前記上書削除処理部が、前記印刷ジョブデータのデータ量に基づいて、前記上書削除処理の前記中断を行う前記所定の間隔または前記中断から前記再開までの時間を設定するものであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の印刷ジョブデータ管理処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45899(P2012−45899A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192445(P2010−192445)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】