説明

印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム、プリンタ及びディジタルカメラ

【課題】一括印刷の際に印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷を可能とする。
【解決手段】ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットであって、いずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける印刷指示ユニットと、印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を印刷ユニットに所定部数印刷させる印刷制御ユニットと、を備える印刷制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム、プリンタ及びディジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどによる制御を必要とせず、リムーバブルメモリからディジタル画像を読み込んで単独で印刷可能な所謂スタンドアロンプリンタが知られている。スタンドアロンプリンタではリムーバブルメモリに記憶されているディジタル画像をスタンドアロンプリンタが備える表示ユニットに順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付け、印刷が指示されると印刷部数が設定されているディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ一括して印刷する一括印刷が公知である。
【0003】
ところで、上述した一括印刷の場合はディジタル画像の印刷部数に1以上の初期値が設定されていると都合が悪い。なぜなら、印刷したくない画像にまで初期値が設定されてしまうので、ユーザは印刷したくないディジタル画像の印刷部数を0に戻す操作を行わなければならないからである。
【0004】
しかしながら、ユーザはディジタル画像を順に表示させている際に、表示中のディジタル画像だけを印刷したいと考えることもある。この場合、印刷部数に初期値が設定されていないと、ユーザは表示中のディジタル画像だけを印刷したい場合であっても印刷部数を設定する操作を行わなければならない。従って、表示中のディジタル画像だけを個別に印刷する個別印刷の場合の操作が煩雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みて創作されたものであって、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷が可能な印刷制御装置、印刷制御方法、印刷制御プログラム、プリンタ及びディジタルカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための印刷制御装置は、ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットであって、印刷部数の初期値を設定せずに、又は印刷部数の初期値に零を設定して印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットと、前記印刷部数設定ユニットでいずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける印刷指示ユニットと、前記印刷指示ユニットで印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を前記印刷ユニットに所定部数印刷させる印刷制御ユニットと、を備える。
本発明によると、印刷部数に初期値を設定しないか又は零を設定するので、一括印刷するディジタル画像に印刷部数を設定する際に印刷したくないディジタル画像の印刷部数に1以上の初期値が設定されることを防止できる。また、現在表示されている識別情報に対応するディジタル画像を所定部数だけ個別印刷する場合は、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数を設定していない状態で印刷を指示することにより、現在表示されている識別情報に対応するディジタル画像を所定部数個別印刷できる。すなわち本発明によると、ユーザはディジタル画像を個別印刷する場合については印刷部数を設定する操作を省略できる。よって本発明によると、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷できる。
【0007】
(2)前記印刷部数設定ユニットは、前記識別情報とともに前記識別情報に対応するディジタル画像に設定されている印刷部数を表示し、印刷部数が設定されていないディジタル画像については印刷部数として零を表示してもよい。
設定されている印刷部数を表示すると、ユーザは設定した印刷部数を容易に確認できる。また、印刷部数が設定されていないディジタル画像については印刷部数として零を表示することにより、ユーザは表示中のディジタル画像に印刷部数が設定されていないことを容易に把握できる。
【0008】
(3)前記印刷部数設定ユニットは、所定の記憶媒体に記憶されているディジタル画像の前記識別情報を順に表示してもよい。
本発明によると、予め設定されている又はユーザにより選択された所定の記憶媒体に記録されているディジタル画像にそれぞれ個別に印刷部数を設定して一括印刷できる。
【0009】
(4)前記所定の記憶媒体は、リムーバブルメモリであってもよい。
【0010】
(5)前記印刷部数設定ユニットは、前記所定の記憶媒体に記憶されている全てのディジタル画像に同一印刷部数を一括設定する一括設定モードを選択する手段を有し、前記一括設定モードが選択されているときは、前記所定の記憶領域に記憶されている全てのディジタル画像に同一印刷部数を設定してもよい。
一括設定モードを選択すると、ユーザは全てのディジタル画像に同一印刷部数を一括設定できるので、全てのディジタル画像を同一部数ずつ印刷する場合のユーザの手間を低減できる。
【0011】
(6)前記識別情報は、ディジタル画像の縮小画像であってもよい。
識別情報として縮小画像を表示すると、ディジタル画像の内容をより容易に把握できる。
【0012】
(7)上記目的を達成するためのプリンタは、印刷ユニットと、前記印刷ユニットにディジタル画像を印刷させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、を備える。
本発明によると、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷できる。
【0013】
(8)上記目的を達成するためのディジタルカメラは、被写体を撮像してディジタル画像を生成する撮像手段と、前記ディジタル画像を印刷ユニットに印刷させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、を備える。
本発明によると、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷できる。
【0014】
(9)上記目的を達成するための印刷制御方法は、ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットが、印刷部数の初期値を設定せずに、又は印刷部数の初期値に零を設定して印刷部数の設定を受け付ける段階と、印刷指示ユニットが、前記印刷部数設定ユニットでいずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける段階と、印刷制御ユニットが、前記印刷指示ユニットで印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を前記印刷ユニットに所定部数印刷させる段階と、を含む。
本発明によると、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷できる。
【0015】
(10)上記目的を達成するための印刷制御プログラムは、ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットであって、印刷部数の初期値を設定せずに、又は印刷部数の初期値に零を設定して印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットと、前記印刷部数設定ユニットでいずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける印刷指示ユニットと、前記印刷指示ユニットで印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を前記印刷ユニットに所定部数印刷させる印刷制御ユニットとしてコンピュータを機能させる。
本発明によると、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷できる。
【0016】
尚、本発明に備わる複数のユニットの各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、又はそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数のユニットの各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)及び(B)は本発明の一実施例に係る一括印刷の模式図、(C)は本発明の一実施例に係る個別印刷の模式図。
【図2】本発明の一実施例に係るプリンタの斜視図。
【図3】本発明の一実施例に係るプリンタのブロック図。
【図4】本発明の一実施例に係る印刷制御プログラムのブロック図。
【図5】本発明の一実施例に係るフローチャート。
【図6】本発明の一実施例に係るリムーバブルメモリの模式図。
【図7】本発明の一実施例に係るテーブルの模式図。
【図8】本発明の一実施例に係る印刷部数設定ユニットの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施例に係るプリンタとしての複合機10の外観を示す斜視図である。図3は、複合機10のハードウェア構成を示すブロック図である。複合機10は、表示部57、操作部50、[開始]ボタン56および制御部65からなる印刷制御装置と、原稿を読み取ってディジタル画像を生成し、生成したディジタル画像をリムーバブルメモリ11や図示しないPC(Personal Computer)に出力するスキャンユニット20と、リムーバブルメモリ11やPCから入力されるディジタル画像を印刷する印刷ユニット30とを有している。
【0019】
スキャンユニット20は、主に上部ケース21に収容され、照明部22、イメージセンサ23、AFE(Analog Front End)部24、センサ駆動部25、センサキャリッジ駆動部26などを備える。照明部22は、主走査方向に長い蛍光管ランプ等で構成される。センサ駆動部25に駆動されるイメージセンサ23は、RGBの3チャネルの光電素子群を備えるカラーCCDリニアイメージセンサ等のリニアイメージセンサである。イメージセンサ23は、透明な原稿台27と平行に移動する図示しないセンサキャリッジに搭載されている。イメージセンサ23は、図示しないレンズ及びミラーにより受光面に結像される原稿の光学像の濃淡に相関する電気信号を出力する。センサキャリッジ駆動部26は、図示しないモータ、駆動ベルト、駆動回路等を備える。センサキャリッジ駆動部26は、主走査方向に垂直に架設された図示しないガイドロッドに沿ってセンサキャリッジを往復移動させる。イメージセンサ23が主走査方向と垂直な方向に移動することにより二次元画像を読み取り可能となる。AFE部24は、増幅、ノイズ除去等のアナログ信号処理回路、A/D変換器等を備える。
【0020】
印刷ユニット30は、主に下部ケース31に収容され、インクジェット方式で用紙に画像を形成するための印字ヘッド32、ヘッドキャリッジ駆動部33、送紙部34、これらを制御する印刷ユニット制御部35などを備える。尚、印刷ユニット30はレーザ方式等の他の印刷方式に対応する構成でもよい。印字ヘッド32は、インクカートリッジが搭載される図示しないヘッドキャリッジに設けられ、ノズル、ピエゾ素子、ピエゾ素子に印加する駆動信号を出力するピエゾ駆動回路等を備える。ピエゾ駆動回路は、印刷ユニット制御部35から出力される制御信号に応じて所定の波形の駆動信号をピエゾ素子に印加する。ヘッドキャリッジ駆動部33は、図示しないモータ、駆動ベルト、モータ駆動回路等を備える。ヘッドキャリッジ駆動部33は、用紙の搬送方向と垂直に印字ヘッド32を往復移動させる。送紙部34は、図示しない用紙搬送ローラ、モータ、モータ駆動回路等を備える。送紙部34は、用紙搬送ローラを回転させることにより用紙を印字ヘッド32の移動方向軸線と垂直な方向に搬送する。印刷ユニット制御部35は、RAM66から順次印字データが転送されるバッファメモリと、バッファメモリに格納された印字データを印字ヘッド32に出力するタイミングをヘッドキャリッジの位置に応じて制御する機能と、ヘッドキャリッジ駆動部33を制御する機能と、送紙部34を制御する機能とを備えるASICである。
【0021】
外部メモリコントローラ41は、カードスロット42から挿入されたリムーバブルメモリ11に接続される。リムーバブルメモリ11に格納されたデータは外部メモリコントローラ41によって読み出され、RAM66に転送される。リムーバブルメモリ11は電源が供給されなくても記憶内容が保持されるフラッシュメモリなどの不揮発性のメモリである。
【0022】
印刷部数設定ユニットとしての表示部57は、ディジタル画像を表示可能なLCD51、LCD51を制御する図示しないグラフィックコントローラなどを備える。表示部57は制御部65に制御され、LCD51にディジタル画像や各種のメニューを表示する。
印刷部数設定ユニットとしての操作部50は、図8に示すように左ボタン52、右ボタン53、上ボタン54、下ボタン55、[OK]ボタン71、[印刷設定]ボタン72、[戻る]ボタン73などの各種の押しボタンを備える。左ボタン52および右ボタン53はユーザがディジタル画像を選択するためボタンである。上ボタン54および下ボタン55は表示されているディジタル画像にユーザが印刷部数を設定するためのボタンである。尚、操作部50をタッチパネル、ポインティングデバイスなどで構成してもよい。また、操作部50は、個別設定モードまたは一括設定モードを選択するための図示しないモード選択ボタンも備えている。個別設定モードは、ディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付け、印刷部数が設定されているディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ一括して印刷するモードである。一括設定モードは、全てのディジタル画像に同一印刷部数を一括設定し、全てのディジタル画像を一括設定されている印刷部数づつ一括して印刷するモードである。
【0023】
印刷指示ユニットとしての[開始]ボタン56(図8参照)は、ユーザが印刷を指示するためのボタンである。
図3に示す通信部60は、制御部65がPC等の外部のシステムと通信するための通信インタフェースである。通信部60は、LAN、インターネット、USB等を通じて外部のシステムと通信する。
【0024】
制御部65は、RAM66、フラッシュメモリ67及びCPU68を備える。CPU68はフラッシュメモリ67に格納されている制御プログラムを実行して複合機10の各部を制御する。また、制御部65はフラッシュメモリ67に格納されている印刷制御プログラムを実行することにより、印刷部数設定ユニットおよび印刷制御ユニットとして機能する。フラッシュメモリ67は、印刷制御プログラムなどを格納している不揮発性メモリである。RAM66は、印刷制御プログラム、各ディジタル画像に設定されている印刷部数、スキャンユニット20で生成されたディジタル画像などの各種のデータが一時的に格納される揮発性メモリである。印刷制御プログラムは遠隔地のサーバからネットワークを経由してフラッシュメモリ67に格納してもよいし、リムーバブルメモリ11などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を経由してフラッシュメモリ67に格納してもよい。
【0025】
ディジタル画像処理部69は、JPEG形式のディジタル画像のデコード、解像度変換、アンシャープ処理、階調補正、二値化、分版処理等の画像処理をCPU68と協働して実行するDSP等の専用回路である。
【0026】
次に、印刷制御プログラムについて説明する。
図4は、印刷制御プログラムの論理的な構成を示すブロック図である。印刷部数設定モジュール81は、制御部65を印刷部数設定ユニットとして機能させるモジュールである。印刷制御モジュール82は、制御部65を印刷制御ユニットとして機能させるモジュールである。
【0027】
次に、印刷制御プログラムを実行する制御部65の作動について説明する。
図5は、個別設定モードが選択されたときの制御部65の処理の流れを示すフローチャートである。この処理はユーザが操作部50を操作して個別設定モードを選択すると開始される。
S105では、制御部65はリムーバブルメモリ11内を検索し、リムーバブルメモリ11に所定のファイル形式で記憶されている全てのディジタル画像のパスを取得する。なお、本実施例では特許請求の範囲に記載の「所定の記憶媒体」としてリムーバブルメモリを例に説明するが、「所定の記憶媒体」は例えば内蔵されているハードディスクやネットワーク接続されているサーバのハードディスクでもよい。「所定の記憶媒体」は予め固定で設定されていてもよいし、ユーザに選択させてもよい。また、制御部65は記憶媒体の特定のディレクトリに記憶されている全てのディジタル画像のパスのみを取得してもよい。この場合、記憶媒体の特定のディレクトリが特許請求の範囲に記載の「所定の記憶媒体」に相当する。
制御部65は、具体的には例えば拡張子が「.jpg」や「.exif」であるファイルのパスを取得する。次に、制御部65は取得したパスと印刷部数とを関連付けるテーブル(図7参照)をRAM66に生成する。なお、ここではテーブルを用いて各ディジタル画像の印刷部数を管理する場合を例に説明するが、各ディジタル画像の印刷部数を制御部65が内部的にどのように管理するかは適宜選択可能な設計事項である。
【0028】
図6はリムーバブルメモリ11に記憶されているデータの一例を示す模式図であり、図7は図6に示すリムーバブルメモリ11からパスを取得して生成したテーブルを示す模式図である。図7は生成直後のテーブルを示しており、制御部65は図示するように印刷部数の初期値に全て0(零)を設定する。仮に初期値に1を設定すると、印刷させたくないディジタル画像にまで初期値として1が設定されてしまう。この場合、ユーザは印刷させたくないディジタル画像の印刷部数を0に戻さなければならないので、ディジタル画像の数が多いと操作が煩雑になる。ディジタル画像を個別印刷する場合は他の全てのディジタル画像の印刷部数を0に設定し直さなければならなくなるので特に操作が煩雑になる。そこで、本実施例ではユーザがディジタル画像を個別印刷することを考慮して初期値に0を設定する。
【0029】
なお、本実施例ではリムーバブルメモリからパスを取得した段階でテーブルに初期値として0を設定する場合を例に説明するが、0を設定するタイミングはこれに限られるものではない。例えば、表示する直前の段階で0を設定してもよい。また、表示の直前にもテーブルには0を設定せず、LCD51(図8参照)上にのみ0を表示し、印刷部数が1以上に設定されたらその印刷部数をテーブルに格納してもよい。この場合はどの段階においてもテーブルには0は格納されないことになる。なお、本実施例ではユーザが印刷部数を意図的に変更する操作を行わない限りその印刷部数が適用される状態にあることをその印刷部数が設定されている状態といい、「設定」とはその状態にすることをいう。例えば上述したようにLCD51に印刷部数を表示した状態は、ユーザが意図的に変更しない限りその印刷部数が適用される状態なので、例えその印刷部数がテーブルに格納されていなくてもその印刷部数が設定されている状態であるといえる。また、ここでは初期値として0を設定する場合を例に説明するが、何も設定されていなければ0が設定されていると見なすことができるので、初期値として何も設定しないようにしてもよい。
【0030】
S110では、制御部65は印刷部数設定モジュール81を実行し、ディジタル画像の印刷部数の設定を受け付ける。具体的には、制御部65はユーザによる操作部50の操作に応じてLCD51にディジタル画像の縮小画像を1画像分ずつ順に表示することによって選択を受け付け、選択されているディジタル画像の印刷部数の設定を受け付ける。なお、9面表示のように同時に複数の縮小画像を表示可能なLCDの場合は、9画像分ずつなどのように複数画像分ずつ順に表示するようにしてもよい。以下、ユーザが印刷部数を設定する操作を図8に基づいて説明する。
【0031】
図8は、LCD51、操作部50、および[開始]ボタン56の模式図である。制御部65はテーブルから順にパスを一つ選択し、選択したパスで特定されるディジタル画像の縮小画像を図示するようにLCD51に表示する。縮小画像は、LCD51の表示解像度に合わせてディジタル画像から生成した表示用画像でもよいし、EXIFファイルのようにサムネイル画像を格納可能なファイル形式でディジタル画像が記憶されている場合はそのファイルに格納されているサムネイル画像でもよい。ディジタル画像の縮小画像を表示すると、ユーザは印刷させるディジタル画像の内容を確認しながら選択できるので選択が容易になる。また、LCD51に1画像ずつ表示すると複数表示する場合に比べてディジタル画像を大きく表示できるので、LCD51の表示領域が狭くてもディジタル画像を確認し易くなる。縮小画像は特許請求の範囲に記載の「識別情報」に相当する。なお、識別情報はディジタル画像を一意に識別可能な情報であれば任意の情報であってよく、例えばディジタル画像のファイル名やパス、コマ番号であってもよい。
【0032】
また、図示するように制御部65は選択したパスに関連付けられている印刷部数をLCD51の右上に表示する。印刷部数に0が設定されているか又は印刷部数に何も設定されていないディジタル画像の場合は0が表示される。0を表示すると、ユーザは表示中のディジタル画像に印刷部数が設定されていないことを容易に把握できる。なお、印刷部数が0の場合は代わりに「−」などを表示してもよいし、何も表示しなくてもよい。何も表示されなければ印刷部数が0であることが判るからである。また、図示するように制御部65はLCD51の右下にリムーバブルメモリ11に記憶されているディジタル画像の数を示す数字と、現在表示しているディジタル画像が何コマ目のディジタル画像であるかを示すコマ番号とを表示する。例えば図示する例の”1/10”は、リムーバブルメモリ11に記憶されている全ディジタル画像数が10であり、そのうち1コマ目のディジタル画像を表示していることを示している。
【0033】
ディジタル画像の選択は、左ボタン52、および右ボタン53を押下することによって行う。制御部65は、左ボタン52が1度押下されると、現在表示している縮小画像に対応するディジタル画像の1つ前のディジタル画像の縮小画像をLCD51に表示する。同様に右ボタン53が1度押下されると制御部65は次のディジタル画像の縮小画像をLCD51に表示する。
【0034】
印刷部数の設定は、目的のディジタル画像の縮小画像をLCD51に表示した状態で上ボタン54および下ボタン55を押下することによって行う。上ボタン54が1度押下されると制御部65は表示している印刷部数に1を加算し、1を加算した後の印刷部数をLCD51に表示するとともに、当該縮小画像に対応するディジタル画像のパスに関連付けられてテーブルに格納されている印刷部数を、1を加算した後の印刷部数で更新する。なお、テーブルを更新するタイミングは、左ボタン52や右ボタン53が押下されたタイミングであってもよい。同様に下ボタン55が1度押下されると制御部65は表示している印刷部数から1を減じ、1を減じた後の印刷部数をLCD51に表示するとともに、テーブルに格納されている印刷部数を、1を減じた後の印刷部数で更新する。
【0035】
なお、印刷部数が1部のときは、LCD51に印刷部数として1を表示するのではなく、例えば「レ」のように任意の形状のチェックマークを表示してもよい。チェックマークが表示されていることで、ユーザは設定されている印刷部数が1部であることが判るからである。
【0036】
ユーザは上述した左右、上下ボタンを押下することにより所望のディジタル画像に所望の印刷部数を設定し、[開始]ボタン56を押下して一括印刷を指示する。
S115では、制御部65は[開始]ボタン56が押下されると印刷制御モジュール82を実行し、現在表示している縮小画像に対応するディジタル画像を含め印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像があるか否かを判定する。制御部65は、印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像がある場合はS120に進み、ない場合はS125に進む。
【0037】
S120では、制御部65は印刷ユニット30を制御し、印刷部数に1以上が設定されている全てのディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ一括印刷させる。
S125では、制御部65は印刷ユニット30を制御し、LCD51に現在表示されている縮小画像に対応するディジタル画像を1部印刷させる。
【0038】
以下、上述したS115〜S125までの処理を図1に示す具体例に基づいて説明する。
図1(A)〜図1(C)は、S115〜S125までの処理を説明するための模式図である。
図1(A)は「001.jpg」〜「010.jpg」の10個のディジタル画像のパスがリムーバブルメモリ11から取得され、ユーザが「001.jpg」に印刷部数として2を設定し、「003.jpg」に印刷部数として4を設定したことを示している。そして、現在のLCD51には「003.jpg」の縮小画像が表示されていることを示している。図1(A)に示す例の場合、[開始]ボタン56を押下すると「001.jpg」が2部、および「003.jpg」が4部印刷される。
【0039】
図1(B)は同様に「001.jpg」〜「010.jpg」の10個のディジタル画像のパスがリムーバブルメモリ11から取得され、ユーザが「002.jpg」に印刷部数として3を設定し、「010.jpg」に印刷部数として1を設定したことを示している。そして、現在のLCD51には「003.jpg」の縮小画像が表示されており、「003.jpg」の印刷部数は0のままであることを示している。この場合、[開始]ボタン56を押下すると「002.jpg」が3部、および「010.jpg」が1部印刷される。LCD51には「003.jpg」の縮小画像が表示されているが「003.jpg」自体は印刷されない。
【0040】
図1(C)は同様に「001.jpg」〜「010.jpg」の10個のディジタル画像のパスがリムーバブルメモリ11から取得され、いずれのディジタル画像にも印刷部数が設定されていないことを示している。そして、現在のLCD51には「003.jpg」の縮小画像が表示されていることを示している。図1(C)に示す例の場合、[開始]ボタン56を押下すると、表示されている印刷部数が0であるにもかかわらず「003.jpg」が1部印刷される。なお、LCD51に縮小画像を例えば9画像分ずつ順に表示する場合は、いずれのディジタル画像にも印刷部数が設定されていなければ、表示中の縮小画像に対応する9画像がそれぞれ1部ずつ印刷されることになる。
【0041】
次に、一括設定モードが選択されたときの制御部65の処理について説明する。
一括設定モードが選択されたときの処理は、全てのディジタル画像に同一印刷部数が一括設定されることを除いて個別設定モードと実質的に同一である。一括設定モードでは、上ボタン54が1度押下されると制御部65は全てのディジタル画像の印刷部数に1を加算する。同様に下ボタン55が1度押下されると制御部65は全てのディジタル画像の印刷部数から1を減じる。
【0042】
本実施例ではディジタル画像に初期値を設定せずに、又は初期値として零を設定して印刷部数の設定を受け付けるので、全てのディジタル画像を所定部数、例えば1部印刷したいときは、全てのディジタル画像に印刷部数として1を設定しなければならない。この場合、各ディジタル画像に個別に印刷部数を設定すると設定に時間がかかり、ユーザにとって手間である。一括設定モードを選択すると、ユーザは全てのディジタル画像に同一印刷部数を一括設定できるので、全てのディジタル画像を1部ずつ印刷する場合のユーザの手間を低減できる。
【0043】
以上説明した本発明の一実施例に係る複合機10によると、1つ以上のディジタル画像に1以上の印刷部数を設定した場合は、[開始]ボタン56を押下することにより図1(A)や図1(B)に示すように1つ以上のディジタル画像をそれぞれ設定した印刷部数ずつ一括して印刷できる。一方、現在表示されているディジタル画像も含めていずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数を設定していない場合は、[開始]ボタン56を押下することにより図1(C)に示すように現在表示されているディジタル画像を1部印刷できる。図1(C)は現在表示されているディジタル画像を個別に印刷する個別印刷であり、複合機10によるとユーザはディジタル画像を1部個別印刷する場合については印刷部数を設定する操作を省略できる。よって複合機10によると、一括印刷の際に無用なディジタル画像に印刷部数が設定されないよう印刷部数に初期値が設定されないか又は初期値に0が設定される場合において、簡素な操作で個別印刷できる。
【0044】
なお、本実施例ではプリンタとして印刷制御装置、印刷ユニット30およびスキャンユニット20が一体化された複合機10を例に説明したが、プリンタは印刷制御装置と印刷ユニット30とが一体化された所謂スタンドアロンプリンタであってもよい。ここでいうスタンドアロンプリンタとは、パーソナルコンピュータなどによる制御を必要とすることなく単独でディジタル画像を印刷可能なプリンタのことをいう。
【0045】
また、本実施例では印刷制御装置と印刷ユニット30とが一体化されている場合を例に説明したが、印刷制御装置と印刷ユニット30とは別体であってもよい。例えば印刷制御装置をパーソナルコンピュータで構成し、そのパーソナルコンピュータに印刷ユニット30としてのプリンタを接続し、パーソナルコンピュータがプリンタを制御して印刷するようにしてもよい。
【0046】
また、本実施例では印刷制御装置を印刷ユニット30に一体化した場合を例に説明したが、被写体を撮像してディジタル画像を生成する撮像手段を備えるディジタルカメラに印刷制御装置を一体化してもよい。
例えば、一般にディジタルカメラではDPOFファイルを生成できる。DPOF(Digital Print Order Format)は印刷部数や各種の印刷設定をディジタル画像単位に記録するための標準フォーマットであり、ディジタル画像とともにDPOFファイルをリムーバブルメモリに記録し、リムーバブルメモリを取り外してDPOF対応のプリンタにセットすると、プリンタ側で印刷設定操作を行うことなくディジタル画像がDPOFファイルに記録されている印刷部数や各種の印刷設定に従って印刷される。印刷制御装置をディジタルカメラに一体に設けると、DPOFファイルを生成するためにディジタルカメラで印刷部数を設定する際に、簡素な操作で個別印刷を設定できる。
【0047】
また例えば、ディジタルカメラとスタンドアロンプリンタとを直に接続してディジタル画像を印刷する所謂ダイレクト印刷が知られている。この場合、ディジタルカメラでディジタル画像に印刷部数を設定する。印刷制御装置をディジタルカメラに一体に設けると、ダイレクト印刷する際に簡素な操作で個別印刷できる。
【符号の説明】
【0048】
10 複合機(プリンタ)、11 リムーバブルメモリ、30 印刷ユニット、50 操作部(印刷部数設定ユニット、印刷制御装置)、56 [開始]ボタン(印刷指示ユニット、印刷制御装置)、57 表示部(印刷部数設定ユニット、印刷制御装置)、65 制御部(印刷部数設定ユニット、印刷制御ユニット、印刷制御装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットであって、印刷部数の初期値を設定せずに、又は印刷部数の初期値に零を設定して印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットと、
前記印刷部数設定ユニットでいずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける印刷指示ユニットと、
前記印刷指示ユニットで印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されているディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を前記印刷ユニットに所定部数印刷させる印刷制御ユニットと、を備える印刷制御装置。
【請求項2】
前記印刷部数設定ユニットは、前記識別情報とともに前記識別情報に対応するディジタル画像に設定されている印刷部数を表示し、印刷部数が設定されていないディジタル画像については印刷部数として零を表示する請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記印刷部数設定ユニットは、所定の記憶媒体に記憶されているディジタル画像の前記識別情報を順に表示する請求項1又は2に記載の印刷制御装置。
【請求項4】
前記所定の記憶媒体は、リムーバブルメモリである請求項3に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記印刷部数設定ユニットは、前記所定の記憶媒体に記憶されている全てのディジタル画像に同一印刷部数を一括設定する一括設定モードを選択する手段を有し、前記一括設定モードが選択されているときは、前記所定の記憶領域に記憶されている全てのディジタル画像に同一印刷部数を設定する請求項3又は4に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記識別情報は、ディジタル画像の縮小画像である請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項7】
印刷ユニットと、
前記印刷ユニットにディジタル画像を印刷させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、を備えるプリンタ。
【請求項8】
被写体を撮像してディジタル画像を生成する撮像手段と、
前記ディジタル画像を印刷ユニットに印刷させる請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、を備えるディジタルカメラ。
【請求項9】
ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットが、印刷部数の初期値を設定せずに、又は印刷部数の初期値に零を設定して印刷部数の設定を受け付ける段階と、
印刷指示ユニットが、前記印刷部数設定ユニットでいずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける段階と、
印刷制御ユニットが、前記印刷指示ユニットで印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を前記印刷ユニットに所定部数印刷させる段階と、を含む印刷制御方法。
【請求項10】
ディジタル画像の識別情報を順に表示してディジタル画像毎に個別に印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットであって、印刷部数の初期値を設定せずに、又は印刷部数の初期値に零を設定して印刷部数の設定を受け付ける印刷部数設定ユニットと、
前記印刷部数設定ユニットでいずれかのディジタル画像の前記識別情報が表示されている状態で印刷の指示を受け付ける印刷指示ユニットと、
前記印刷指示ユニットで印刷の指示を受け付けると、印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像が1つ以上存在する場合はそれら印刷部数に1以上が設定されている前記ディジタル画像をそれぞれ設定されている印刷部数ずつ印刷ユニットに一括して印刷させ、いずれのディジタル画像にも1以上の印刷部数が設定されていない場合は前記印刷部数設定ユニットで現在表示されている前記識別情報に対応するディジタル画像を前記印刷ユニットに所定部数印刷させる印刷制御ユニットとしてコンピュータを機能させる印刷制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−45937(P2012−45937A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201502(P2011−201502)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【分割の表示】特願2006−171441(P2006−171441)の分割
【原出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】