説明

印刷制御装置および印刷制御方法

【課題】印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間を短縮する。
【解決手段】画像処理部は、印刷実行指示に従って画像処理が指示された際に、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理が、先行処理実行部で実行されている途中である場合において、先行処理部で実行途中の前処理の処理量が所定量に達しているときには、先行処理部で実行されている前処理の終了を待ち、先行処理部で実行された前処理の処理結果を活用して、補正処理を実行し、先行処理部で実行途中の前処理の処理量が前記所定量に達していないときには、先行処理部で実行されている前処理を中止させて、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、先行処理部における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、補正処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタルカメラ等の撮像装置によって撮像された画像を印刷するための画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタルカメラ等の撮像装置によって撮像されてメモリカード等の記憶媒体に格納されている画像データを、パーソナルコンピュータを介さずに直接プリンタに読み込んで、読み込んだ画像データの表す画像の印刷を行うことができるプリンタや、ディジタルカメラ等の撮像装置から画像データを直接プリンタに読み込んで、読み込んだ画像データの表す画像の印刷を行うことができるプリンタが普及しつつある。なお、以下では、このような撮像装置によって撮像された画像を「フォト画像」とも呼び、このフォト画像を表す画像データを「フォト画像データ」とも呼ぶ。また、上記のようなフォト画像を印刷することができるプリンタを、「フォトプリンタ」とも呼ぶ。さらに、また、記憶媒体に格納されている画像データを、パーソナルコンピュータを介さずに直接プリンタに読み込んで、読み込んだ画像データの表す画像を印刷するモードを「カード印刷」とも呼ぶ。
【0003】
上記のようなフォトプリンタでは、フォト画像を印刷するために実行する画像処理の一つとして、適切な印刷結果が得られるように、あらかじめ、読み込んだフォト画像データに対して種々の補正処理を行っている。このようなフォト画像データに対する補正技術としては、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−165647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなフォトプリンタでは、補正処理を行うための前処理として、まず、フォト画像データを読み込んで、読み込んだフォト画像データから所定の割合で画素データのサンプリングを行ってヒストグラムを作成し、作成したヒストグラムに基づいて統計処理を行って、画像の特徴を示す特徴量を求めることにより、補正パラメータを決定している。そして、フォト画像を印刷するために実行する画像処理において、決定した補正パラメータに基づいてフォト画像データに対する補正処理を行っている。また、顔認識処理を行って、フォト画像中に人物の顔の存在を認識し、これに応じた補正パラメータを決定して補正処理を行う場合もある。さらに、また、フォト画像中の人物の目が赤目になっている場合において、赤目解析処理を行って、これに応じた補正パラメータを決定して補正処理を行う場合もある。
【0006】
従って、1枚のフォト画像を印刷する場合において、上記補正処理を含む画像処理の前に、補正パラメータを求めるための前処理を実行する必要がある。このため、印刷を希望するフォト画像を指定した後、印刷の実行を指示してから、実際に、その指定したフォト画像データに対する画像処理が開始されるまでに、前処理を開始してから前処理が終了するまでの待ち時間が発生し、結果として、実際の印刷処理が開始されるまでの待ち時間が長くなるという問題がある。
【0007】
また、フォト画像データは、通常は、所定の圧縮形式、例えば、JPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)形式により圧縮されている。このため、上記画像処理や前処理を実行する前に、JPEG形式で圧縮されているフォト画像データを展開処理する必要があり、これにより、さらに、いっそう待ち時間が長くなる。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、印刷を希望する画像として指定された印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間を短縮し、結果として実際の印刷処理が開始されるまでの待ち時間を短縮することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の態様は、
印刷の開始が指示された印刷対象画像について、前記印刷対象画像の画質を補正するための補正パラメータを決定するための前処理と、前記前処理で決定された補正パラメータに基づく前記印刷対象画像を表す印刷対象画像データの補正処理を含み、前記印刷対象画像の印刷を実行するための画像処理と、を行う印刷制御装置であって、
印刷の開始を示す印刷実行指示が発生する前に、前記前処理を先行して実行するための先行処理部と、
前記印刷実行指示に従って、前記画像処理を実行するための画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部は、
前記印刷実行指示に従って前記画像処理が指示された際に、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理が、前記先行処理部で実行されている途中である場合において、
前記先行処理部で実行途中の前処理の処理量が所定量に達しているときには、前記先行処理部で実行されている前処理の終了を待ち、前記先行処理部で実行された前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行し、
前記先行処理部で実行途中の前処理の処理量が前記所定量に達していないときには、前記先行処理部で実行されている前処理を中止させて、前記指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、前記先行処理部における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行する、
ことを特徴とする。
【0010】
上記印刷制御装置によれば、先行処理部で実行途中の前処理の処理量が所定量に達しているときには、先行処理部で実行されている前処理の終了を待ち、先行処理部で実行された前処理の処理結果を活用して、画像処理に含まれる補正処理を実行することができ、先行処理部で実行途中の前処理の処理量が前記所定量に達していないときには、先行処理部で実行されている前処理を中止させて、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、先行処理部における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、画像処理に含まれる補正処理を実行することができるので、前処理の先行処理の結果を効果的に活用し、前処理の先行処理の実施によって、印刷対象画像についての画像処理の開始までの時間が長くなって、実際の印刷処理が開始されるまでの時間が長くなってしまうのを抑制することが可能である。従って、従来のように印刷実行指示後に、所定の前処理が実行される場合に比べて、指定した印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間を短縮し、結果として実際の印刷処理が開始されるまでの待ち時間を短縮することが可能となる。
【0011】
上記印刷制御装置において、前記画像処理部は、
前記印刷実行指示に従って前記画像処理が指示された際に、指示された画像処理の対象でない画像についての前処理が、前記先行処理部で実行されている途中である場合においては、
前記先行処理部で実行されている前処理を中止させて、前記指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、前記先行処理部における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行する、
ことも好ましい。
【0012】
上記印刷制御装置によれば、指示された画像処理の対象でない画像についての前処理の終了を待たずに、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を開始することができるので、無駄な先行処理が終了するのを待つ時間を省くことができ、印刷対象画像についての画像処理の開始までの時間が長くなって、実際の印刷処理が開始されるまでの時間が長くなってしまうのを抑制することが可能である。
【0013】
本発明は、上記印刷制御装置としての構成のほか、画像処理装置として構成することもできる。また、これら装置発明の態様に限ることなく、印刷制御方法、画像処理方法といった方法発明の態様で実現することも可能である。なお、方法発明の態様においても、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。さらには、それら方法や装置を実現するコンピュータプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体、そのプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号など種々の態様で実現することが可能である。なお、それぞれの態様において、先に示した種々の付加的要素を適用することが可能である。
【0014】
本発明をコンピュータプログラムまたはそのプログラムを記録した記録媒体等として構成する場合には、印刷制御装置や画像処理装置の動作を制御するプログラム全体として構成するものとしてもよいし、本発明の機能を果たす部分のみを構成するものとしてもよい。また、記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置などコンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき以下の順序で説明する。
A.印刷制御装置の構成および動作概要:
B.前処理の先行処理動作:
C.画像処理実行時における先行処理待ち判断動作:
D.変形例:
【0016】
A.印刷制御装置の構成および動作概要:
図1は、本発明の一実施例としての印刷制御装置10の構成例を示す機能ブロック図である。この印刷制御装置10は、複数のプロセッサを備えるマルチプロセッサシステムを、1つの半導体基板上に集積化したマイクロプロセッサである。各プロセッサは、それぞれ、CPUや、メモリ、バスコントローラ等の周辺回路を含むユニットを意味している。なお、本実施例では、図1に示すように、1つのメインプロセッサ100と、4つのサブプロセッサ200A〜200D(図中、「サブプロセッサ1」〜「サブプロセッサ4」と表記されている。)と、を備える場合を例に示している。また、印刷制御装置10は、複数のプロセッサの他、印刷機構部20の動作を制御する回路である機構制御部300や、操作部30による入力動作を制御する回路である入力I/F部400、表示装置である液晶パネル(LCD)40による表示動作を制御するLCDコントローラ500、カードスロット50に装着されるメモリカード52からのデータの読み取り動作を制御する回路であるカードI/F部600、専用メモリ60に対するメインプロセッサ100からのアクセスを制御する専用メモリコントローラ700、共有メモリ70に対する各プロセッサ100,200A〜200Dからのアクセスを制御する共有メモリコントローラ800等の種々の周辺回路を備えている。なお、本発明に特に関係のない周辺回路については図示を省略している。
【0017】
印刷制御装置10を構成する各プロセッサは、専用メモリ60に格納されている各プロセッサ用の所定のプログラムを読み出して実行することにより、それぞれ対応する各機能ブロックとして動作する。具体的には、メインプロセッサ100は、専用メモリ60に格納されているメインプロセッサ100のためのプログラムを読み出して実行することにより、以下で説明する機能ブロックとして動作する。また、各サブプロセッサ200A〜200Dは、メインプロセッサ100のためのプログラムが読み出される際に、専用メモリ60から読み出されて共有メモリ70に格納されているプログラムを、共有メモリ70から読み出して実行することにより、それぞれ、以下で説明する機能ブロックとして動作する。
【0018】
メインプロセッサ100は、印刷処理動作を全体として制御する機能ブロック(以下、「印刷制御部」と呼ぶ。)として動作する。なお、以下では、メインプロセッサ100を、「印刷制御部100」とも呼ぶ。
【0019】
印刷制御部100は、具体的には、ファイルアクセス部110、ユーザインタフェース部(「UI部」とも呼ぶ。)120、先行処理管理部130、先行処理実行部140、カード印刷制御部150、画像処理管理部160、画像処理部170、印刷イメージ処理部180、および、印刷処理部190の各機能ブロックに区分される。
【0020】
ファイルアクセス部110は、メモリカード52に格納されているフォト画像データの読み出しを制御する。
【0021】
UI部120は、印刷を希望するフォト画像を印刷対象画像として選択するための選択画面をLCD40に表示する。
【0022】
図2は、LCD40に表示される選択画面の一例を示す説明図である。図2に示すように、LCD40には、印刷対象となるフォト画像(写真)を選択するための選択画面500Mが表示されており、この選択画面500M中のプレビュー表示欄502に、プレビュー処理された印刷候補画像データの表す印刷候補画像がプレビュー表示される。なお、プレビュー表示される印刷候補画像の変更は、図2に示す選択ボタン506P,506N(操作部30の所定のボタンに対応する。また、選択ボタン506Pは前側の選択に対応し、選択ボタン506Nは後側の選択に対応する。)が操作されて、現在表示されている印刷候補画像としてのフォト画像よりも前あるいは後のフォト画像の選択がなされることにより、実行される。このとき、UI部120は、印刷候補画像として選択したフォト画像に対する前処理を先行して実行するための依頼(以下、「前処理先行処理依頼」あるいは「先行処理依頼」とも呼ぶ。)を先行処理管理部130に指示する。また、UI部120は、フォト画像データとしてメモリカード52に格納されているフォト画像を印刷候補画像としてLCD40の選択画面中に表示するための画像処理の依頼を画像処理管理部160に指示し、LCD40の選択画面中に表示する。
【0023】
次に、UI部120は、ユーザが操作部30を操作して、選択画面中に表示したフォト画像の印刷枚数を設定することにより、印刷対象画像として指定し、印刷候補画像が印刷対象画像として設定されたことを先行処理管理部130に通知する。なお、印刷対象画像としての指定は、具体的には、図2に示す枚数指定ボタン508U,508D(操作部30の所定のボタンに対応し、枚数指定ボタン508Uが枚数増加指定ボタンであり、枚数指定ボタン508Dが枚数減少指定ボタンである。)のうち、枚数指定ボタン508Dを操作して、印刷枚数が0枚から1枚以上に設定されることにより、実行される。
【0024】
そして、UI部120は、ユーザが操作部30を操作することによって印刷の実行を指示すると、具体的には、図2に示す印刷開始ボタンを操作して印刷開始を指示すると、これに従って、印刷の実行をカード印刷制御部150に指示する。
【0025】
先行処理管理部130は、後述するように、UI部120からの前処理先行処理依頼を受けて、先行処理実行部140に前処理の実行を指示するとともに、前処理の先行処理結果を管理する。
【0026】
先行処理実行部140は、先行処理管理部130からの前処理の実行指示に従って、後述する画像処理における補正処理で利用される補正パラメータを求めるための前処理を実行する。なお、前処理には、印刷対象画像の特徴を示す特徴量としての最大輝度、最小輝度、平均輝度、中央輝度等を求めるための統計処理や、顔の存在を調べる顔認識処理、赤目を補正するための赤目解析処理等の少なくとも一つが含まれている。本例では、統計処理、顔認識処理、赤目解析処理の全てを行うこととする。また、通常の前処理では、統計処理や顔認識処理において、印刷対象画像データを所定の割合でサンプリングすることにより作成したヒストグラムに基づいて実行するため、本例の前処理は、このサンプリング処理も含むものとして説明する。
【0027】
カード印刷制御部150は、UI部120からの印刷実行の指示を受けると、画像処理管理部160の管理の下で実行される画像処理部170による画像処理、印刷イメージ処理部170による印刷イメージデータの生成処理、および、印刷処理部190による印刷処理を制御し、印刷を実行する。
【0028】
画像処理管理部160は、画像処理部170に画像処理の実行を指示し、画像処理部170で実行する画像処理の動作を制御する。
【0029】
画像処理部170は、先行処理の処理待ちをしない場合には、先行処理実行部140において実行中の先行処理を中止し、前処理を実行した後、実際に印刷のための画像処理(以下、「本処理」とも呼ぶ)を実行する。一方、先行処理の処理待ちをする場合には、先行処理実行部140からの先行処理終了通知を待って、本処理を実行する。
【0030】
なお、メモリカード52に格納されているフォト画像データは、例えば、JPEG形式の圧縮データである。そこで、画像処理部170は、本処理の一つとして、メモリカード52から読み出した印刷対象画像データを、RGB形式の画像データに展開処理するデコード処理を実行する。
【0031】
また、画像処理部170は、上記デコード処理のほか、印刷対象画像データを展開処理することにより得られた画像データ(「原画像データ」あるいは「展開画像データ」とも呼ぶ)に対して、前処理により求められた補正パラメータに基づいて、色補正、明るさ補正、コントラスト補正、彩度補正、ノイズ除去、平滑化、輪郭補正等の種々の補正処理うち、少なくとも一つを施す画像補正処理を実行する。さらに、また、画像処理部170は、印刷対象画像データの解像度を変換する解像度変換処理、印刷対象画像データの表す画像を印刷媒体上の実際の印刷位置に配置した画像データ(「レイアウト画像データ」とも呼ぶ。)を生成するレイアウト処理実行する。
【0032】
なお、画像処理部170は、実際には、上記画像処理を実行せず、後述するように、画像処理制御部として動作する第1のサブプロセッサ200Aに対して、具体的な処理を指示し、指示のあった処理に対応する機能ブロックとして動作する第1のサブプロセッサ200A〜第3のサブプロセッサ200Cが、その処理を実行する。
【0033】
印刷イメージ処理部180は、カード印刷制御部150の制御下で、画像処理部170において画像処理(本処理)が施された画像データに基づいて、印刷イメージデータを生成する。印刷イメージデータとは、印刷媒体上に実際に画像を印刷するために用いられるデータであり、例えば、インクジェット形式の印刷装置の場合には、印刷媒体上のドットの配置を表す2値データを意味している。ただし、印刷イメージ処理部180は、画像処理部170と同様に、自身が実際に印刷イメージデータの生成を実行するのではなく、印刷イメージ処理実行部として動作する第4のサブプロセッサ200Dに対して、印刷イメージデータの生成処理を指示することにより、第4のサブプロセッサ200Dが印刷イメージデータの生成を実行する。
【0034】
印刷処理部190は、カード印刷制御部150の制御下で、印刷イメージ処理部180で生成された印刷イメージデータに基づいて、機構制御部300を介して印刷機構部20を制御することにより、実際の印刷を実行する。
【0035】
第1のサブプロセッサ200Aは、画像処理部170からの指示に従って画像処理動作を制御する機能ブロック(画像処理制御部)として動作する。なお、以下では、第1のサブプロセッサ200Aを、「画像処理制御部200A」とも呼ぶ。
【0036】
第2のサブプロセッサ200Bは、画像処理制御部200Aからの指示に従って、JPEG形式の画像データのデコード処理(「画像展開処理」とも呼ぶ。)を実行する機能ブロック(以下、「デコード処理実行部」あるいは「画像展開部」と呼ぶ。)として動作する。なお、以下では、第2のサブプロセッサ200Bを、「デコード処理実行部200B」と呼ぶ場合もある。
【0037】
デコード処理実行部200Bは、画像処理部170から画像処理制御部200Aを介してデコード処理が指示された場合に、実際に画像デコード処理を実行する。
【0038】
第3のサブプロセッサ200Cは、後述するように、画像処理制御部200Aからの指示に従って、画像補正処理を実行する機能ブロック(以下、「補正処理実行部」と呼ぶ。)として動作する。なお、以下では、第3のサブプロセッサ200Cを、「補正処理実行部200C」とも呼ぶ。
【0039】
第4のサブプロセッサ200Dは、上述したように、画像処理部170において画像処理が施された画像データに基づいて、印刷イメージデータを生成する処理を実行する機能ブロック(印刷イメージ処理実行部)として動作する。なお、以下では、第4のサブプロセッサ200Dを、「印刷イメージ処理実行部200D」とも呼ぶ。
【0040】
ところで、本発明の特徴は、印刷の実行が指示されたときに、先行処理実行部140において前処理の先行処理が実行されている場合において、その実行中の前処理が、画像処理部170に対して指示がなされた印刷対象画像についての前処理である場合には、その実行中の前処理が終了するのを待つか、あるいは、その先行処理を中止して、画像処理部170で新たに前処理を実行するか、先行処理の処理済量に応じて判断し、その判断結果に応じた処理を実行する点にある。そこで、以下では、先行処理の処理待ち判断動作に関係する、先行処理実行部140における前処理の先行処理動作、および、画像処理部170における先行処理待ち判断動作について説明する。
【0041】
B.前処理の先行処理動作:
図3は、先行処理実行部140で実行される前処理の先行処理動作について示す説明図である。先行処理管理部130から前処理の先行処理依頼がなされると、先行処理実行部140では、以下の処理が実行される。
【0042】
まず、専用メモリ60に前処理のためのワーク用メモリ領域を確保する(ステップS110)。
【0043】
次に、画像処理部170から先行処理の中止指示が有ったか否か判断する(ステップS120)。先行処理の中止指示がない場合には(ステップS120:NO)、後述するステップS170における判断処理によって、次のステップS180の処理が開始される(ステップS170:YES)のではなく、ステップS120の処理へ戻ってステップS10〜ステップS160の処理が場合(ステップS170:NO)には、ステップS130〜ステップS160の処理を繰り返し実行する。一方、先行処理の中止指示が有った場合には(ステップS120:YES)、この先行処理動作を終了する。
【0044】
ステップS130では、先行処理の指示があった印刷候補画像について画像デコード処理を実行し、ステップS140では、画像デコード処理により得られた印刷候補画像データを所定の割合でサンプリングし、ヒストグラムを作成する。
【0045】
そして、ステップS150では、印刷候補画像データの全体のうちの1/2以上についてサンプリング処理が終了しているか否か判断する。1/2以上についてサンプリング処理が終了している場合には(ステップS150:YES)、ステップS160において、先行処理の終了を待つべきと判断し、処理待ちフラグをセットし、ステップS170の処理を実行する。一方、1/2以上についてのサンプリング処理が終了していない場合には(ステップS150:NO)、そのまま、ステップS170の処理を実行する。
【0046】
ステップS170では、印刷候補画像データの全体についてデコード処理およびサンプリング処理が終了したか否か判断する。印刷候補画像データの全体についてデコード処理およびサンプリング処理が終了していない場合には(ステップS170:NO)、ステップS120に戻って、印刷候補画像データの全体についてデコード処理およびサンプリング処理が終了する(ステップS170:YES)まで、ステップS120〜ステップS160の処理を繰り返す。一方、印刷候補画像データの全体についてデコード処理およびサンプリング処理が終了した場合には(ステップS170:YES)、ステップS180の処理を実行する。
【0047】
ステップS180では補正パラメータ決定処理を実行する。なお、補正パラメータ決定処理としては、上記したように、作成したヒストグラムに基づいて印刷対象画像の特徴を示す特徴量としての最大輝度、最小輝度、平均輝度、中央輝度等を求めるための統計処理や、顔の存在を調べる顔認識処理、赤目を補正するための赤目解析処理等が実行される。
【0048】
そして、補正パラメータ決定処理の実行後、ステップS190において、印刷候補画像の先行処理終了を先行処理管理部130に通知するとともに、印刷候補画像が印刷対象画像である場合には、画像処理部170にも、先行処理の終了を通知する。そして、ステップS200において、確保していたワーク用メモリ領域を開放して、この先行処理を終了する。
【0049】
C.画像処理実行時における先行処理待ち判断動作:
図4は、画像処理部170で実行される画像処理動作について示す説明図である。画像処理管理部160から印刷対象画像について画像処理の実行が指示されると、画像処理部170では、以下の処理が実行される。
【0050】
まず、ステップS310では、実行が指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理実行部140によって先行処理中であるか否か判断し、ステップS320では、実行が指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理済であるか否か判断する。
【0051】
まず、指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理中である場合には(ステップS310:YES)、先行処理実行部140によって設定される処理待ちフラグを参照し(ステップS330)、フラグがセットされているか否か判断する(ステップS330)。このとき、フラグがセットされている場合には(ステップS330:YES)、先行処理の終了を待つために、先行処理実行部140から先行処理の終了の通知があるまで待機する(ステップS350:NO)。先行処理の終了通知が有った場合には(ステップS350:YES)、本処理を実行する(ステップS380)。一方、フラグがセットされていない場合には(ステップS330:NO)、先行処理実行部140に対して先行処理の中止を指示し(ステップS360)、前処理を実行(ステップS370)した後で、本処理を実行する(ステップS380)。
【0052】
図5は、ステップS370で実行される前処理を示す説明図である。前処理が開始されると、まず、専用メモリ60に前処理のためのワーク用メモリ領域を確保する(ステップS410)。
【0053】
次に、後述するステップS440における判断処理によって、ステップS450の処理が開始される(ステップS440:YES)までの間、ステップS420,S430の処理を繰り返し実行する。
【0054】
ステップS420では、印刷対象画像について画像デコード処理を実行し、ステップS430では、画像デコード処理により得られた印刷対象画像データを所定の割合でサンプリングし、ヒストグラムを作成する。なお、ステップS420における画像デコード処理は、画像処理部170が実際に実行するのではなく、画像処理制御部200Aの制御下でデコード処理実行部200Bが実行する。
【0055】
ステップS440では、デコード処理およびサンプリング処理が印刷対象画像の全体について行われて処理が終了したか否か判断する。処理が終了していない場合には(ステップS440:NO)、ステップS420に戻って、ステップS420,S430の処理を繰り返す。一方、処理が終了した場合には(ステップS440:YES)、ステップS450で補正パラメータ決定処理を実行する。そして、補正パラメータ決定処理の実行後、ステップS460では、確保していたワーク用メモリ領域を開放し、この前処理を終了する。
【0056】
なお、上記ステップS410〜ステップS460の処理は、図3のステップS110,S130,S140,S160,S180,S200と同様の処理である。
【0057】
次に、指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理ではなく(ステップS310:NO)、かつ、既に実行されて処理済でもない場合には(ステップS320:NO)、上記したステップS360において、先行処理実行部140に対して先行処理の中止を指示し、ステップS370で前処理を実行した後で、ステップS380で本処理を実行する。
【0058】
また、指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理ではなく、かつ、既に実行されて処理済である場合には(ステップS320:YES)、そのまま、上記したステップS380の0の本処理を実行する。
【0059】
以上説明したように、上記実施例の印刷制御装置10では、画像処理部170に対して印刷対象画像についての画像処理の実行が指示された際に、指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理実行部140によって先行処理中であるか否か判断し、指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理中であった場合には、その先行処理の中で実行されているサンプリング処理が全体の1/2以上終了している場合には、先行処理の終了を待ち、その先行処理結果を利用して本処理を実行することができる。また、サンプリング処理が全体の1/2未満しか終了していない場合には、実行中の先行処理を中止して、新たに画像処理部170によって、先行処理実行部140に比べて高速に前処理を実行し、本処理を実行することができる。
【0060】
また、指示された印刷対象画像についての前処理が先行処理中でなく、処理済でもなかった場合には、実行中の先行処理を中止して、画像処理部170によって、印刷対象画像についての前処理を、先行処理実行部140に比べて高速に実行し、本処理を実行することができる。
【0061】
ところで、例えば、印刷の実行が指示された際に、先行処理が実行されている途中である場合に、この先行処理を終了するまで、次ぎの処理の実行を待ち合わせるとすると、例えば、この実行途中の先行処理が、印刷対象画像とは関係ない画像についてのものである場合には、その先行処理の終了後、画像処理部170によって、印刷対対象画像についての前処理を実行することとなり、先行処理の終了を待っていた時間が無駄な待ち時間となり、印刷が指示された印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間が遅くなってしまう。
【0062】
また、印刷の実行が指示された際に、実行途中の先行処理を中止して、画像処理部170によって、印刷対象画像についての前処理を実行することとすると、終了直前の先行処理であっても、その先行処理が中止されてしまうため、先行処理の時間が無駄となってしまい、結果として、印刷が指示された印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間が遅くなってしまう。
【0063】
しかしながら、上記したように、実施例の印刷制御装置10では、印刷の実行が指示された際に、実行途中の先行処理が、印刷対象画像とは関係ない画像についての前処理である場合には、その先行処理を中止して、画像処理部170によって、印刷対象画像についての前処理を高速に実行することができるので、実行が指示された印刷対象画像とは関係のない画像についての先行処理の処理待ちによる無駄な時間を省ことが可能である。これにより、印刷を希望する画像として指定された印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間を短縮し、結果として実際の印刷処理が開始されるまでの待ち時間を短縮することが可能となる。
【0064】
また、実施例の印刷制御装置10では、印刷の実行が指示された際に実行途中の先行処理が、印刷対象画像についての前処理の先行処理であった場合に、その前処理中のサンプリング処理が全体の1/2以上終了している場合には、その先行処理の終了を待ち、1/2以上終了していない場合には、その先行処理を中止して、画像処理部170によって、高速に新たに前処理を実行することができるので、先行処理の時間が無駄となってしまうことを抑制することが可能である。すなわち、画像処理部170によって新たに前処理を実行するよりも、先行処理の終了を待ったほうが効果的な場合には、先行処理の終了を待ち、先行処理の終了を待つよりも、画像処理部170によって前処理を高速に実行したほうが効果的な場合には、先行処理を中止して、画像処理部170によって前処理を実行することができる。この結果、印刷を希望する画像として指定された印刷対象画像を印刷するための画像処理が開始されるまでの時間を短縮し、結果として実際の印刷処理が開始されるまでの待ち時間を短縮することが可能となる。
【0065】
以上説明したように、実施例の印刷制御装置10では、前処理の先行処理の結果を効果的に活用し、前処理の先行処理の実施によって、印刷対象画像についての画像処理(本処理)の開始までの時間が長くなって、実際の印刷処理が開始されるまでの時間が長くなってしまうのを抑制することが可能である。
【0066】
D.変形例:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様にて実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0067】
上記実施例では、サンプリング処理の処理量(サンプリング処理量)が、全体の1/2以上終了したか否かで処理待ちフラグをセットするか否か判断する場合を例に説明しているが、このサンプリング処理量は、これに限定されるものではなく、以下の観点から決定することができる。すなわち、先行処理実行部140において実行される先行処理の終了を待つほうが、先行処理を中止して、画像処理部170によって新たに前処理を実行するよりも、本処理を開始するまでの時間が短縮可能な値を、画像処理部170による前処理に要する時間と、先行処理実行部140による前処理に要する時間とから、決定すればよい。
【0068】
また、サンプリング処理量ではなく、デコード処理の処理量、パラメータ決定処理に含まれる統計処理、顔認識処理、赤目解析処理等の処理量や処理時間等に基づいて判断するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施例では、印刷制御装置10は、画像処理制御部200A、デコード処理実行部200B,補正処理実行部200C、および、印刷イメージ処理実行部200Dを、それぞれ、CPUや、メモリ、バスコントローラ等の周辺回路を含むプロセッサユニットにより構成し、それぞれ、対応するプロセッサ用のプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することにより実現する場合を例に説明したが、それぞれを、ハードウェアにより構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施例としての印刷制御装置10の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】LCD40に表示される選択画面の一例を示す説明図である。
【図3】先行処理実行部140で実行される前処理の先行処理動作について示す説明図である。
【図4】画像処理部170で実行される画像処理動作について示す説明図である。
【図5】ステップS370で実行される前処理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
10…印刷制御装置
20…印刷機構部
30…操作部
40…液晶パネル(LCD)
50…カードスロット
52…メモリカード
60…専用メモリ
70…共有メモリ
100…メインプロセッサ(印刷制御部)
110…ファイルアクセス部
120…ユーザインタフェース部(UI部)
130…先行処理管理部
140…先行処理実行部
150…カード印刷制御部
160…画像処理管理部
170…画像処理部
180…印刷イメージ処理部
190…印刷処理部
200A…第1のサブプロセッサ(画像処理制御部)
200B…第2のサブプロセッサ(デコード処理実行部)
200C…第3のサブプロセッサ(補正処理実行部)
200D…第4のサブプロセッサ(印刷イメージ処理実行部)
300…機構制御部
500M…選択画面
502…プレビュー表示欄
504…印刷枚数表示部
506N…選択ボタン
506P…選択ボタン
508D…枚数指定ボタン
508U…枚数指定ボタン
510…印刷開始ボタン
400…入力I/F部
600…カードI/F部
700…専用メモリコントローラ
800…共有メモリコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷の開始が指示された印刷対象画像について、前記印刷対象画像の画質を補正するための補正パラメータを決定するための前処理と、前記前処理で決定された補正パラメータに基づく前記印刷対象画像を表す印刷対象画像データの補正処理を含み、前記印刷対象画像の印刷を実行するための画像処理と、を行う印刷制御装置であって、
印刷の開始を示す印刷実行指示が発生する前に、前記前処理を先行して実行するための先行処理実行部と、
前記印刷実行指示に従って、前記画像処理を実行するための画像処理部と、
を備え、
前記画像処理部は、
前記印刷実行指示に従って前記画像処理が指示された際に、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理が、前記先行処理実行部で実行されている途中である場合において、
前記先行処理部で実行途中の前処理の処理量が所定量に達しているときには、前記先行処理部で実行されている前処理の終了を待ち、前記先行処理部で実行された前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行し、
前記先行処理部で実行途中の前処理の処理量が前記所定量に達していないときには、前記先行処理部で実行されている前処理を中止させて、前記指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、前記先行処理部における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行する、
ことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷制御装置であって、
前記画像処理部は、
前記印刷実行指示に従って前記画像処理が指示された際に、指示された画像処理の対象でない画像についての前処理が、前記先行処理部で実行されている途中である場合においては、
前記先行処理部で実行されている前処理を中止させて、前記指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、前記先行処理部における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行する、
ことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項3】
印刷の開始が指示された印刷対象画像について、前記印刷対象画像の画質を補正するための補正パラメータを決定するための前処理と、前記前処理で決定された補正パラメータに基づく前記印刷対象画像を表す印刷対象画像データの補正処理を含み、前記印刷対象画像の印刷を実行するための画像処理と、を行う印刷制御方法であって、
印刷の開始を示す印刷実行指示が発生する前に、前記前処理を先行して実行するための先行処理工程と、
前記印刷実行指示に従って、前記画像処理を実行するための画像処理工程と、
を備え、
前記画像処理工程は、
前記印刷実行指示に従って前記画像処理が指示された際に、指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理が、前記先行処理工程で実行されている途中である場合において、
前記先行処理工程で実行途中の前処理の処理量が所定量に達しているときには、前記先行処理部で実行されている前処理の終了を待ち、前記先行処理工程で実行された前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行し、
前記先行処理工程で実行途中の前処理の処理量が前記所定量に達していないときには、前記先行処理工程で実行されている前処理を中止させて、前記指示された画像処理の対象である印刷対象画像についての前処理を、前記先行処理工程における処理よりも高速に実行し、実行した前処理の処理結果を活用して、前記補正処理を実行する、
ことを特徴とする印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−67126(P2008−67126A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243616(P2006−243616)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】