説明

印刷機及び印刷方法

【課題】印刷機において、異なる種類の印刷物を同時に印刷可能とすることで作業効率の向上を図ると共に、印刷作業の安全性を確保し、且つ、印刷品質の向上を可能とする。
【解決手段】複数の給紙ユニットR1〜R4を有する給紙装置Rと、ウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットU1〜U3を有する印刷装置Uと、複数のウェブから折帖を形成する複数の折ユニットF1,F2を有する折機Fと、印刷ユニットU1〜U3から折ユニットF1,F2への搬送経路を変更可能なウェブパス装置Dと、複数組の組合せユニットを設定して駆動制御可能な運転管理制御装置35とにより構成し、所定の組合せユニットにより搬送されるウェブと他の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材41〜44と、安全カバー74,75を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の給紙ユニット、複数の印刷ユニット、複数の折ユニットを有する印刷機及び印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般的な新聞用オフセット輪転印刷機は、複数の給紙ユニットを有する給紙装置と、複数の印刷ユニットを有する印刷装置と、ウェブパス装置と、複数の折ユニットを有する折機とから構成されている。従って、給紙装置から各印刷ユニットにウェブが供給されると、各ウェブに対して各印刷ユニットにより印刷が施され、ウェブパス装置で多数のウェブの走行ルートが変更されてから所定の順番に重ね合わされた後、折機にて、ウェブが縦折りされてから所定の長さで横裁断され、横折されることで折帖が形成され、印刷物としての新聞が排紙される。
【0003】
このような新聞用オフセット輪転印刷機にて、1台の印刷機により複数種類の印刷物、つまり、複数種類の新聞、広告などを印刷したいという要望がある。従来の新聞用オフセット輪転印刷機では、複数の印刷ユニットに加え、2つの折ユニットを有していることから、複数の印刷ユニットを2つのグループに分け、この2グループの印刷ユニットと、2つの折ユニットを用いて2種類の新聞を同時に印刷することが可能となっている。
【0004】
なお、このような従来の新聞用オフセット輪転印刷機としては、下記特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−201049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の新聞用オフセット輪転印刷機にて、複数種類の新聞を印刷するとき、異なる種類の新聞は、その印刷部数、印刷時間、印刷速度などが相違する。そのため、ウェブが印刷ユニットから折機で処理されて排紙される搬送過程にて、一方のウェブと他方のウェブが干渉することがある。この場合、印刷作業の安全性や印刷品質に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、異なる種類の印刷物を同時に印刷可能とすることで作業効率の向上を図ると共に、印刷作業の安全性を確保し、且つ、印刷品質の向上を可能とする印刷機及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の印刷機は、巻取紙からウェブを供給する複数の給紙ユニットを有する給紙装置と、前記給紙装置から繰り出されたウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットを有する印刷装置と、前記印刷装置により印刷が施された複数のウェブを重ねて断裁すると共に折り畳むことで折帖を形成する複数の折ユニットを有する折機と、前記複数の印刷ユニットから前記複数の折ユニットへの搬送経路を変更可能なウェブパス装置と、前記複数の給紙ユニットと前記複数の印刷ユニットと前記複数の折ユニットから複数組の組合せユニットを設定して駆動制御可能な制御装置と、を備える印刷機において、所定の組合せユニットにより搬送されるウェブと他の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材が設けられる、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の印刷機では、前記折機を収容する部屋が設けられ、該部屋内に前記複数の折ユニットを区画するように前記仕切部材が配置されることを特徴としている。
【0010】
本発明の印刷機では、前記仕切部材により区画された各部屋に開閉自在な安全カバーがそれぞれ設けられることを特徴としている。
【0011】
本発明の印刷機では、前記複数の安全カバーの開放状態を検出する検出器がそれぞれ設けられ、前記制御装置は、複数組の組合せユニットを設定してそれぞれ駆動制御することで複数種類の印刷物を印刷するとき、前記検出器のいずれかが前記安全カバーの開放状態を検出すると、検出した前記安全カバーが設けられる前記部屋内の前記折ユニットに対応する前記組合せユニットの駆動を停止可能であることを特徴としている。
【0012】
本発明の印刷機では、前記複数の安全カバーの開放状態を検出する検出器がそれぞれ設けられ、前記制御装置は、1組の組合せユニットを設定して駆動制御することで1種類の印刷物を印刷するとき、前記検出器のいずれかが前記安全カバーの開放状態を検出すると、作動状態にある前記給紙ユニットと前記印刷ユニットと前記折ユニットの全ての駆動を停止可能であることを特徴としている。
【0013】
本発明の印刷機では、前記部屋に隣接する前記折ユニットの間に前記仕切部材が2つ配置され、該2つの仕切部材に前記安全カバーが設けられることを特徴としている。
【0014】
本発明の印刷機では、前記安全カバーは、前記折ユニットにおける折畳部に対向する上部着脱カバーと、前記折ユニットにおける排紙部に対向する下部スライドカバーを有することを特徴としている。
【0015】
本発明の印刷機では、前記2つの仕切部材に区画される空間に出入り可能な開閉扉が設けられることを特徴としている。
【0016】
本発明の印刷機では、前記複数の印刷ユニットで印刷されたウェブが前記複数の折ユニットまで搬送されるウェブ搬送経路であって、対向して搬送される複数のウェブの間に前記仕切部材が配置されることを特徴としている。
【0017】
本発明の印刷機では、前記仕切部材は、前記印刷ユニットから前記折ユニットまでウェブを挿通させるとき、ウェブ弛み部に配置されることを特徴としている。
【0018】
本発明の印刷機では、ガイドローラにウェブが所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路であって、前記仕切部材は、前記ガイドローラに巻き付けられるウェブの外側に配置されることを特徴としている。
【0019】
本発明の印刷機では、ウェブの搬送方向の前後に配置される一対のガイドローラの下側にウェブに巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路であって、前記仕切部材は、前記ガイドローラに巻き付けられるウェブの下側に配置されることを特徴としている。
【0020】
本発明の印刷機では、一対のウェブの距離が20mm以内で搬送されるウェブ搬送経路であって、前記仕切部材は、一対のウェブの間に配置されることを特徴としている。
【0021】
本発明の印刷機では、前記仕切部材は、スリッタまたはコンペンセータに設けられることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の印刷方法は、巻取紙からウェブを供給する複数の給紙ユニットを有する給紙装置と、前記給紙装置から繰り出されたウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットを有する印刷装置と、前記印刷装置により印刷が施された複数のウェブを重ねて断裁すると共に折り畳むことで折帖を形成する複数の折ユニットを有する折機と、前記複数の印刷ユニットから前記複数の折ユニットへの搬送経路を変更可能なウェブパス装置と、前記折機を収容する部屋内に前記複数の折ユニットを区画するように配置されてウェブの干渉を防止する仕切部材と、前記仕切部材により区画された各部屋を開閉自在な複数の安全カバーと、を備える印刷機において、前記複数の給紙ユニットと前記複数の印刷ユニットと前記複数の折ユニットから複数組の組合せユニットを設定して複数種類の印刷物を印刷するとき、前記安全カバーのいずれかが開放されると、開放された安全カバーに対応する前記組合せユニットの駆動を停止する一方、前記複数の給紙ユニットと前記複数の印刷ユニットと前記複数の折ユニットから1組の組合せユニットを設定して1種類の印刷物を印刷するとき、前記安全カバーのいずれかが開放されると、作動状態にある前記給紙ユニットと前記印刷ユニットと前記折ユニットの全ての駆動を停止する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の印刷機によれば、複数の給紙ユニットを有する給紙装置と、ウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットを有する印刷装置と、複数のウェブを重ねて断裁すると共に折り畳むことで折帖を形成する複数の折ユニットを有する折機と、印刷ユニットから折ユニットへの搬送経路を変更可能なウェブパス装置と、複数組の組合せユニットを設定して駆動制御可能な制御装置とにより構成し、所定の組合せユニットにより搬送されるウェブと他の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材を設けている。従って、仕切部材により異なる複数組の組合せユニット間を搬送されるウェブの干渉が防止され、異なる種類の印刷物を同時に印刷可能とすることで作業効率の向上を図ることができると共に、印刷作業の安全性を確保することができ、また、印刷品質を向上することができる。
【0024】
本発明の印刷機によれば、折機を収容する部屋を設け、この部屋内に複数の折ユニットを区画するように仕切部材を配置するので、異なる印刷が施された複数のウェブが干渉せずに対応する折ユニットに適正に搬送されることとなり、印刷作業の安全性を確保することができると共に、印刷品質を向上することができる。
【0025】
本発明の印刷機によれば、仕切部材により区画された各部屋に開閉自在な安全カバーを設けるので、各折ユニットが配置された部屋を区画することができると共に、メンテナンスのためのオペレータの出入りを可能とすることができ、安全性と作業性の両立を可能とすることができる。
【0026】
本発明の印刷機によれば、複数の安全カバーの開放状態を検出する検出器がそれぞれ設けられ、制御装置は、複数組の組合せユニットを設定してそれぞれ駆動制御することで複数種類の印刷物を印刷するとき、検出器のいずれかが安全カバーの開放状態を検出すると、検出した安全カバーが設けられる部屋内の折ユニットに対応する組合せユニットの駆動を停止するので、各組合せユニットごとに作業の継続と停止を切替えることができ、作業の安全性を確保することができると共に、メンテナンス性を向上することができる。
【0027】
本発明の印刷機によれば、複数の安全カバーの開放状態を検出する検出器がそれぞれ設けられ、制御装置は、1組の組合せユニットを設定して駆動制御することで1種類の印刷物を印刷するとき、検出器のいずれかが安全カバーの開放状態を検出すると、作動状態にある給紙ユニットと印刷ユニットと折ユニットの全ての駆動を停止するので、組合せユニットが1つのときには、全てのユニットの作業の継続と停止を同期させることができ、通常印刷を行う場合であっても、作業の安全性を確保することができると共に、メンテナンス性を向上することができる。
【0028】
本発明の印刷機によれば、部屋に隣接する折ユニットの間に仕切部材を2つ配置し、この2つの仕切部材に安全カバーを設けるので、仕切部材を安全カバーとすることで、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0029】
本発明の印刷機によれば、安全カバーを、折ユニットにおける折畳部に対向する上部着脱カバーと、折ユニットにおける排紙部に対向する下部スライドカバーとで構成するので、下部スライドカバーのみを移動可能とすることで、メンテナンス作業の安全性及び作業性を向上することができる。
【0030】
本発明の印刷機によれば、2つの仕切部材に区画される空間に出入り可能な開閉扉を設けるので、折機に対する安全性を向上することができると共に、遮音性を向上することができる。
【0031】
本発明の印刷機によれば、複数の印刷ユニットで印刷されたウェブを複数の折ユニットまで搬送するウェブ搬送経路にて、対向して搬送される複数のウェブの間に仕切部材を配置するので、異なる印刷が施された複数のウェブが干渉せずに搬送されることとなり、印刷作業の安全性を確保することができると共に、印刷品質を向上することができる。
【0032】
本発明の印刷機によれば、仕切部材を、印刷ユニットから折ユニットまでウェブを挿通させるときにそのウェブ弛み部に配置するので、ウェブ挿通時に、ウェブが垂れ下がっても、仕切部材により受け止められることとなり、ウェブ同士の接触を防止することができる。
【0033】
本発明の印刷機によれば、ガイドローラにウェブが所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、仕切部材をガイドローラに巻き付けられるウェブの外側に配置するので、弛みやすい箇所でのウェブ同士の接触を適正に防止することができる。
【0034】
本発明の印刷機によれば、ウェブの搬送方向の前後に配置される一対のガイドローラの下側にウェブに巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、仕切部材をガイドローラに巻き付けられるウェブの下側に配置するので、弛みやすい箇所でのウェブ同士の接触を適正に防止することができる。
【0035】
本発明の印刷機によれば、一対のウェブの距離が20mm以内で搬送されるウェブ搬送経路にて、仕切部材を一対のウェブの間に配置するので、弛みやすい箇所でのウェブ同士の接触を適正に防止することができる。
【0036】
本発明の印刷機によれば、仕切部材を、スリッタまたはコンペンセータに設けるので、ウェブが縦裁断されるとき、また、ウェブの搬送方向における位置が調整されるとき、ウェブ同士の接触を適正に防止することができる。
【0037】
また、本発明の印刷方法によれば、折機を収容する部屋内に複数の折ユニットを区画するように配置されてウェブの干渉を防止する仕切部材と、仕切部材により区画された各部屋を開閉自在な複数の安全カバーとを設け、複数の給紙ユニットと複数の印刷ユニットと複数の折ユニットから複数組の組合せユニットを設定して複数種類の印刷物を印刷するとき、安全カバーのいずれかが開放されると、開放された安全カバーに対応する組合せユニットの駆動を停止する一方、複数の給紙ユニットと複数の印刷ユニットと複数の折ユニットから1組の組合せユニットを設定して1種類の印刷物を印刷するとき、安全カバーのいずれかが開放されると、作動状態にある給紙ユニットと印刷ユニットと折ユニットの全ての駆動を停止する。従って、仕切部材により異なる複数組の組合せユニット間を搬送されるウェブの干渉が防止され、異なる種類の印刷物を同時に印刷可能とすることで作業効率の向上を図ることができると共に、印刷作業の安全性を確保することができ、また、印刷品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図である。
【図2】図2は、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機の概略図である。
【図3】図3は、スリッタに配置された仕切部材を表す概略図である。
【図4】図4は、スリッタに配置された仕切部材を表す概略図である。
【図5】図5は、コンペンセータに配置された仕切部材を表す概略図である。
【図6】図6は、折機の概略正面図である。
【図7】図7は、折機の概略平面図である。
【図8】図8は、安全カバーの正面図である。
【図9】図9は、図8のIX−IX断面図である。
【図10】図10は、図8のX−X断面図である。
【図11】図11は、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機によるウェブ搬送経路を表す概略図である。
【図12】図12は、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機によるウェブ搬送経路を表す概略図である。
【図13】図13は、本実施例の折機により2種類の新聞を処理する経路を表す概略図である。
【図14】図14は、本実施例の折機により1種類の新聞を処理する経路を表す概略図である。
【図15】図15は、本実施例の折機により1種類の新聞を処理する経路を表す概略図である。
【図16】図16は、本実施例の折機により1種類の新聞を処理する経路を表す概略図である。
【図17】図17は、本実施例の折機により1種類の新聞を処理する経路を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る印刷機及び印刷方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
図1は、本発明の一実施例に係る新聞用オフセット輪転印刷機を表す概略構成図、図2は、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機の概略図、図3及び図4は、スリッタに配置された仕切部材を表す概略図、図5は、コンペンセータに配置された仕切部材を表す概略図、図6は、折機の概略正面図、図7は、折機の概略平面図、図8は、安全カバーの正面図、図9は、図8のIX−IX断面図、図10は、図8のX−X断面図、図11及び図12は、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機によるウェブ搬送経路を表す概略図、図13は、本実施例の折機により2種類の新聞を処理する経路を表す概略図、図14乃至図17は、本実施例の折機により1種類の新聞を処理する経路を表す概略図である。
【0041】
本実施例の印刷機は、図1に示すように、新聞用オフセット輪転印刷機であって、複数(本実施例では、4台)の給紙ユニットR1〜R4を有する給紙装置Rと、複数(本実施例では、3台)の印刷ユニットU1〜U3を有する印刷装置Uと、複数(本実施例では、2台)のウェブパスユニットD1,D2を有するウェブパス装置Dと、複数(本実施例では、2台)の折ユニットF1,F2を有する折機Fとから構成されている。
【0042】
この場合、印刷ユニットU1〜U3を3台として説明したが、各印刷ユニットU1〜U3は、4色刷りが可能であると共に、上下に分割することで6台の印刷ユニットU11,U12,U21,U22,U31,U32として用いることができる。
【0043】
また、図1にて、2つの折ユニットF1,F2を左右に並べて記載したが、実際には、紙面に直行する方向に並んで配置される操作側折ユニットF1と駆動側折ユニットF2となっている。更に、印刷装置Uを上下に2つの部分から記載したが、機能上2つに分けて記載しただけであり、実際には、1つの装置となっている。
【0044】
そして、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機では、図示しない建屋の1階に給紙装置Rが設置され、2階及び3階に印刷装置Uが設置され、3階から5階にウェブパス装置Dが設置され、また、2階、3階に折機Fが設置されている。
【0045】
ここで、上述した給紙装置R、印刷装置U、ウェブパス装置D、折機Fについて詳細に説明する。
【0046】
給紙装置Rにおいて、給紙ユニットR1〜R4は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWがロール状に巻かれた3つの巻取紙を保持する保持アーム11が設けられ、この保持アーム11を回動することで、巻取紙を給紙位置に回動することができる。また、この各給紙ユニットR1〜R4には、図示しない紙継装置が設けられており、給紙位置で繰り出されている巻取紙が残り少なくなると、この紙継装置により給紙位置にある巻取紙に対して、待機位置にある巻取紙を紙継することができる。
【0047】
印刷装置Uにおいて、図1及び図2に示すように、印刷ユニットU1〜U3は、両面4色印刷を行うことができる多色刷印刷ユニットである。但し、各印刷ユニットU1〜U3は、上下に分割することで、両面2色印刷を行うことができる印刷ユニットU11〜U32とすることができる。また、各印刷ユニットU1〜U3は、版胴12の周長(直径)に対して、ブランケット胴13の周長(直径)が2倍に設定されている。即ち、版胴12の周面には、周方向(ウェブWの天地長さ方向)に沿って1つ、軸方向(ウェブWの幅方向)に沿って4つの刷版(図示略)が着脱自在となっている。
【0048】
なお、本実施例では、印刷ユニットU1〜U3を、全て多色刷印刷ユニットにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、両面2色刷印刷ユニット、両面単色刷印刷ユニット、一面4色または単色刷印刷ユニットなど、印刷物に応じて適宜各種ユニットを組み合わせて使用すればよい。
【0049】
ウェブパス装置Dにおいて、ウェブパスユニットD1は、印刷ユニットU1,U2に対して設けられ、ウェブパスユニットD2は、印刷ユニットU3に対して設けられている。各ウェブパスユニットD1,D2は、ほぼ同様の構成をなし、ウェブWを縦(ウェブWの天地長手方向、ウェブWの搬送方向)に沿ってその幅方向の中央部で裁断するスリッタS1,S2、縦裁断したウェブWの搬送経路を設定するターンバーT1,T2、ウェブWにおける天地長手方向における搬送位置を調整するコンペンセータC1,C2などを有している。
【0050】
従って、各印刷ユニットU1,U2で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、スリッタS1により縦裁断され、ターンバーT1により搬送経路が変更され、コンペンセータC1により搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。また、印刷ユニットU3で印刷が施された各ウェブWは、ウェブパスユニットD2にて、スリッタS2により縦裁断され、ターンバーT2により搬送経路が変更され、コンペンセータC2により搬送位置が調整されてから所定の順番に重ね合わされる。
【0051】
折機Fにて、2つの折ユニットF1,F2は、操作側と駆動側に配設されている。従って、各ウェブパスユニットD1,D2から導入される複数のウェブWを重ねたままで縦折りし、所定の長さで横裁断し、横折りして折帖を形成し、新聞として排紙することができる。
【0052】
折ユニットF1,F2を具体的に説明すると、図2及び図6に示すように、最上部には、上述したウェブパス装置Dで所定の順番に重ねられたウェブWを、縦折りする左右一対の三角板(フォーマ)101a,101bが設けられ、この三角板101a,101bの下方には、ウェブWを縦折りする左右一対の三角板(フォーマ)201a,201bが設けられている。そして、三角板101bの下方には、リードインローラ102a,102bが設けられると共に、ガイドローラ103,104が設けられている。
【0053】
三角板201aの下方には、リードインローラ105a,105b、ニッピングローラ106a,106bが設けられている。そして、ニッピングローラ106a,106bの下方には、第1折畳機構107が配置され、この第1折畳機構107の下方には、第1羽根車108及び第1排紙コンベア109が配置されている。
【0054】
また、三角板201bの下方には、リードインローラ202a,202b、ニッピングローラ203a,203bが設けられている。そして、ニッピングローラ203a,203bの下方には、第2折畳機構204が配置され、この第2折畳機構204の下方には、第2羽根車205及び第2排紙コンベア206が配置されている。
【0055】
更に、三角板201a,201bの下方であって、リードインローラ105a,105bとリードインローラ202a,202bとの間には、リードインローラ301a,301bと、ウェブWの搬送先を変更するガイドローラ302が配置されている。
【0056】
各折ユニットF1,F2における各折畳機構107,204は、ロータリフォルダタイプとなっている。即ち、折畳機構107にて、折胴111と鋸胴112とは、外周面が対向した状態で、左右に並んで回転自在に配置されている。折胴111は、外周部に180度対向して針装置が設けられている。また、鋸胴112は、外周部に180度対向して鋸刃が設けられる一方、折胴111は、外周部に180度対向して鋸刃受が設けられている。更に、折胴111は、その周面に180度対向して折ブレードが設けられており、各折ブレードは、針装置及び鋸刃受とほぼ90度位相がずれた位置に設けられている。
【0057】
折胴111の下方には、一対の折込ローラ113a,113bが折胴111と同期回転可能に設けられている。この一対の折込ローラ113a,113bは、折ブレードにより折胴111の周面から突出したシートの中間部を挟持することで、折帖を形成することができる。
【0058】
また、折畳機構204にて、折胴211と鋸胴212とは、外周面が対向した状態で、左右に並んで回転自在に配置されている。折胴211は、外周部に180度対向して針装置が設けられている。また、鋸胴212は、外周部に180度対向して鋸刃が設けられる一方、折胴211は、外周部に180度対向して鋸刃受が設けられている。更に、折胴211は、その周面に180度対向して折ブレードが設けられており、各折ブレードは、針装置及び鋸刃受とほぼ90度位相がずれた位置に設けられている。
【0059】
折胴211の下方には、一対の折込ローラ213a,213bが折胴211と同期回転可能に設けられている。この一対の折込ローラ213a,213bは、折ブレードにより折胴211の周面から突出したシートの中間部を挟持することで、折帖を形成することができる。
【0060】
このように構成された本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機では、図1に示すように、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2をそれぞれ独立して駆動制御可能となっている。
【0061】
そして、給紙ユニットR1〜R4は、給紙コントローラ21〜24により駆動制御可能であり、印刷ユニットU1〜U3は、印刷コントローラ25〜30により駆動制御可能であり、ウェブパスユニットD1,D2は、ウェブパスコントローラ31,32により駆動制御可能であり、折ユニットF1,F2は折コントローラ33,34により駆動制御可能である。そして、全てのコントローラ21〜34は、運転管理制御装置(制御装置)35により制御可能であり、オペレータは、運転管理システム用操作パネル(操作装置)36を用いて運転管理制御装置35に対して操作指令を入力することで、新聞用オフセット輪転印刷機による印刷作業を制御可能となっている。
【0062】
即ち、オペレータは、運転管理システム用操作パネル36を用いて、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2における組合せや印刷速度(駆動速度)を操作指令として運転管理制御装置35に対して入力可能である。運転管理制御装置35は、この操作指令に基づいて、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2の組合せ、つまり、ウェブパスユニットD1,D2による各印刷ユニットU1〜U3から各折ユニットF1,F2への搬送経路を設定すると共に、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2の駆動速度を設定する。
【0063】
この場合、運転管理制御装置35は、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2における組合せ、その組合せに対する駆動速度V1,V2を複数の印刷パターンIDとして記憶しており、オペレータは、運転管理システム用操作パネル36を用いて所定の印刷パターンIDを選択することで、その印刷パターンIDに基づいて給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2を自動的に制御することができる。
【0064】
例えば、印刷パターンID101として(R1+R4+U11+U12+U31+U32+D1+D2+F1:V1)を記憶することで、この印刷パターンID101を新聞A印刷用パターンIDとして使用することができる。また、印刷パターンID102として(R2+R3+U21+U22+D1+F2:V2)を記憶することで、この印刷パターンID102を新聞B印刷用パターンIDとして使用することができる。なお、V1,V2は、印刷速度(ウェブの搬送速度)である。
【0065】
ここで、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機における印刷制御について具体的に説明する。
【0066】
本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機において、オペレータは、運転管理システム用操作パネル36を用いて、印刷パターンID101(R1+R4+U11+U12+U31+U32+D1+D2+F1:V1)を選択して入力する。この印刷パターンID101とは、給紙ユニットR1,R4と印刷ユニットU11,U12,U31,U32とウェブパスユニットD1,D2と折ユニットF1を組合せた組合せユニットを設定し、印刷速度V1で印刷を行う指令を出力するものである。すると、運転管理制御装置35は、この印刷パターンID101を制御リンクに出力すると、該当する給紙コントローラ21,24と印刷コントローラ25,26,29,30とウェブパスコントローラ31,32と折コントローラ33がこの印刷パターンID101を取り込む。そして、各コントローラ21,24,25,26,29,30,31,32,33は、給紙ユニットR1,R4と印刷ユニットU11,U12,U31,U32とウェブパスユニットD1,D2と折ユニットF1の駆動速度をV1に制御し、ウェブWの搬送経路を折ユニットF1に変更する。
【0067】
従って、図11に示すように、各給紙装置R1,R4から各印刷ユニットU1,U3(U11,U12,U31,U32)にウェブWが供給されると、各印刷ユニットU11,U12,U31,U32では、各ウェブWに対して4色刷が行われる。各印刷ユニットU11,U12,U31,U32で印刷が施された2枚のウェブWは、ウェブパスユニットD1,D2にて、縦裁断が行われた後に、搬送経路が変更されると共に所定の順番に重ね合わせることで、4枚のウェブWとなる。そして、折ユニットF1では、図6に示すように、ウェブWは、三角板101bにより縦折りが施された後、リードインローラ102a,102b、ガイドローラ103,104、リードインローラ301a,301b、ガイドローラ302により第1折畳機構107に送られる。
【0068】
第1折畳機構107では、縦折りされたウェブWが折胴111に至ると、所定の位置で、鋸胴112により横裁断され、折胴111の周面から折ブレードが突出することで、ウェブWを折胴111から一対の折込ローラ113a,113bに引き渡し、この折込ローラ113a,113bに挟持されることで折帖が形成される。そして、この折込ローラ113a,113bにより形成された折帖は、第1羽根車108の各羽根により順次受取られ、排紙コンベア109上に受け渡す。このようにして4枚16頁の新聞Aを印刷することができる。
【0069】
一方、オペレータは、運転管理システム用操作パネル36を用いて、前述した印刷パターンID101を入力すると共に、印刷パターンID102(R2+R3+U21+U22+D1+F2:V2)を選択して入力する。この印刷パターンID102とは、給紙ユニットR2,R3と印刷ユニットU21,U22とウェブパスユニットD1と折ユニットF2を組合せた組合せユニットを設定し、印刷速度V2で印刷を行う指令を出力するものである。すると、運転管理制御装置35は、この印刷パターンID102を制御リンクに出力すると、該当する給紙コントローラ22,23と印刷コントローラ27,28とウェブパスコントローラ31と折コントローラ34がこの印刷パターンID102を取り込む。そして、各コントローラ22,23,27,28,31,34は、給紙ユニットR2,R3と印刷ユニットU21,U22とウェブパスユニットD1と折ユニットF2の駆動速度をV2に制御し、ウェブWの搬送経路を折ユニットF2に変更する。
【0070】
従って、図11に示すように、各給紙装置R2,R3から各印刷ユニットU2(U21,U22)にウェブWが供給されると、各印刷ユニットU21,U22では、各ウェブWに対して2色刷が行われる。各印刷ユニットU21,U22で印刷が施された2枚のウェブWは、ウェブパスユニットD1にて、縦裁断が行われた後に、搬送経路が変更されると共に所定の順番に重ね合わせることで、4枚のウェブWとなる。そして、折ユニットF2では、図6に示すように、ウェブWは、三角板201bにより縦折りが施された後、リードインローラ202a,202b、ニッピングローラ203a,203bにより第2折畳機構204に送られる。
【0071】
第2折畳機構204では、縦折りされたウェブWが折胴211に至ると、所定の位置で、鋸胴212により横裁断され、折胴211の周面から折ブレードが突出することで、ウェブWを折胴211から一対の折込ローラ213a,213bに引き渡し、この折込ローラ213a,213bに挟持されることで折帖が形成される。そして、この折込ローラ213a,213bにより形成された折帖は、第2羽根車205の各羽根により順次受取られ、排紙コンベア206上に受け渡す。このようにして4枚16頁の新聞Bを印刷することができる。
【0072】
この場合、オペレータは、運転管理システム用操作パネル36を用いて、印刷する新聞のページ数などによりユニットの組合せは多数考えられるものであり、実施例に記載したものに限定されない。例えば、図12に示すように、オペレータは、この運転管理システム用操作パネル36を用いて、印刷パターンID201(R1+R3+U11+U12+U21+D1+F2:V1)を選択して入力する。この印刷パターンID201とは、給紙ユニットR1,R3と印刷ユニットU11,U12,U21とウェブパスユニットD1と折ユニットF2を組合せた組合せユニットを設定し、印刷速度V1で印刷を行う指令を出力するものである。オペレータは、この運転管理システム用操作パネル36を用いて、印刷パターンID202(R2+R4+U22+U31+U32+D1+D2+F1:V2)を選択して入力する。この印刷パターンID202とは、給紙ユニットR2,R4と印刷ユニットU22,U31,U32とウェブパスユニットD1,D2と折ユニットF1を組合せた組合せユニットを設定し、印刷速度V2で印刷を行う指令を出力するものである。
【0073】
なお、上述の説明では、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機により、同時に2種類の新聞A,Bを印刷する形態について説明したが、従来と同様に、多ページを有する1種類の新聞だけを印刷することもできる。
【0074】
即ち、オペレータは、運転管理システム用操作パネル36を用いて、例えば、印刷パターンID100を入力する。この印刷パターンID100は、(R1+R2+R3+R4+U11+U12+U21,U22+U31+U32+D1+D2+F1+F2:V1)であり、新聞C印刷用パターンIDである。この印刷パターンID100とは、給紙ユニットR1〜R4と印刷ユニットU11〜U32とウェブパスユニットD1,D2と折ユニットF1,F2を組合せた組合せユニットを設定し、印刷速度V1で印刷を行う指令を出力するものである。すると、運転管理制御装置35は、この印刷パターンID100を制御リンクに出力すると、該当する給紙コントローラ21〜24と印刷コントローラ25〜30とウェブパスコントローラ31,32と折コントローラ33,34がこの印刷パターンID100を取り込む。そして、各コントローラ21〜34は、給紙ユニットR1〜R4と印刷ユニットU11〜U32とウェブパスユニットD1,D2と折ユニットF1,F2の駆動速度をV1に制御し、ウェブWの搬送経路を折ユニットF1,F2の両方に変更する。
【0075】
従って、図11に示すように、各給紙装置R1〜R4から各印刷ユニットU11〜U32にウェブWが供給されると、各印刷ユニットU11〜U32では、各ウェブWに対して2色刷及び4色刷が行われる。各印刷ユニットU11〜U32で印刷が施された4枚のウェブWは、ウェブパスユニットD1,D2にて、縦裁断が行われた後に、搬送経路が変更されると共に所定の順番に重ね合わせることで、8枚のウェブWとなる。そして、折ユニットF1,F2にて、縦折りが施された後、横裁断され、横折されて折帖が形成されてから排出される。このようにして8枚32頁の新聞Cを印刷することができる。
【0076】
この場合、新聞の枚数により折ユニットF1,F2の使い方を選択することができる。例えば、三角板201a,201b及び第1、第2折畳機構107,204を用いた両出し処理、三角板201a(または、三角板201b)及び第1折畳機構107(または、第2折畳機構204)を用いた片出し処理、三角板201a(または、三角板201b)及び第1、第2折畳機構107,204を用いた転送処理、三角板201a,201b及び第1折畳機構107(または、第2折畳機構204)を用いたセクション出し処理がある。いずれの処理も、新聞Cのページ数や形態、印刷速度に応じて選択することができる。
【0077】
また、各印刷ユニットU1〜U3の使い方、つまり、一体と使用して4色刷を行うか、分割して使用して2色刷を行うかにより、新聞A,Bの枚数、2色刷(単色刷)または4色刷を設定することができる。なお、本実施例では、4色刷が可能な3つの印刷ユニットを配置したが、この構成に限定されるものではなく、4色刷が可能な印刷ユニットを4つ以上配置したり、2色刷の印刷ユニットと4色刷の印刷ユニットを組み合わせて配置してもよい。
【0078】
そして、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機にて、印刷ユニットU1〜U3では、各版胴12及び各ブランケット胴13がそれぞれ独立して駆動可能な駆動モータを有している。また、ウェブパスユニットD1,D2では、搬送される各ウェブWに対応したスリッタS1とターンバーT1とコンペンセータC1は、それぞれ個別に駆動可能な駆動モータを有している。そのため、印刷ユニットU1〜U3は、上部の印刷ユニットU11,U21,U31と下部の印刷ユニットU12,U22,U32をそれぞれ独立して駆動可能であり、各印刷ユニットU11〜U32における上下の版胴12及びブランケット胴13をそれぞれ独立して駆動可能である。また、ウェブパスユニットD1,D2のスリッタS1とターンバーT1とコンペンセータC1は、上下に積層された各機構をそれぞれ独立して駆動可能である。
【0079】
ところで、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機は、上述したように、1種類の新聞を印刷することができると共に、同時に2種類の新聞を印刷することができるが、同時に2種類の新聞を印刷する場合に、下記の課題がある。即ち、同時に2種類の新聞を印刷するとき、各新聞は、その印刷部数、印刷時間、印刷速度などが相違することが多い。そのため、ウェブが印刷ユニットから折機で処理されて排紙される搬送過程にて、一方のウェブと他方のウェブが干渉することがあり、印刷作業の安全性や印刷品質に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0080】
例えば、一方の新聞の印刷作業中に、他方の新聞の印刷準備、つまり、ウェブを搬送経路に通す紙通し作業を行う必要があり、このとき、紙通したウェブが印刷中であって高速で搬送されるウェブに接触する可能性がある。また、2種類の新聞を同時に印刷するとき、各新聞の搬送速度が異なるため、両者の間に不測な空気の流れが発生し、ウェブの搬送に悪影響を与えるおそれがある。更に、新聞用オフセット輪転印刷機には、安全装置が設けられており、印刷作業中におけるオペレータの安全区域への侵入などにより印刷機が停止するようになっている。この場合、一方の新聞を印刷するユニット側のメンテナンスを行うとき、全てのユニットが停止してしまい、また、安全装置を無効とする場合にはオペレータの安全性を確保できない。
【0081】
そこで、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機では、この課題を解決するため、同時に2種類の新聞を印刷するとき、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2から所定の2つの組合せユニットを設定したとき、一方の組合せユニットにより搬送されるウェブと他方の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材を設けている。
【0082】
具体的には、複数の印刷ユニットU1〜U3で印刷されたウェブが複数の折ユニットF1,F2まで搬送されるウェブ搬送経路にて、対向して搬送される複数のウェブの間に仕切部材を配置している。この仕切部材は、印刷ユニットU1〜U3から折ユニットF1,F2までウェブを挿通させる紙通し作業時に、ウェブ弛み部に配置されている。特に、この仕切部材は、スリッタS1とコンペンセータC1に設けられている。
【0083】
即ち、図2に示すように、スリッタS1にて、ガイドローラにウェブWが所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、ガイドローラに巻き付けられるウェブWの外側に仕切部材41を配置している。ガイドローラにウェブWが所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、ガイドローラに巻き付けられるウェブWの外側に仕切部材42を配置している。
【0084】
また、スリッタS1にて、ウェブWの搬送方向の前後に配置される一対のガイドローラの下側にウェブWに巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、ガイドローラに巻き付けられるウェブWの下側に仕切部材43を配置している。コンペンセータC1にて、一対のウェブWの距離が20mm以内で搬送されるウェブ搬送経路にて、一対のウェブWの間に仕切部材44を配置している。
【0085】
具体的に説明すると、図3に示すように、スリッタS1にて、ウェブW1がガイドローラ51a,51b,51c,51d,51eにガイドされるウェブ搬送経路が設定されると共に、ウェブW2がガイドローラ52a,52bにガイドされるウェブ搬送経路が設定されている。また、ガイドローラ51bに対して、カッタを有するスリッタドラグローラ(駆動ローラ)51fが対接する一方、ガイドローラ52aに対して、カッタを有するスリッタドラグローラ(駆動ローラ)52cが対接している。
【0086】
このとき、ガイドローラ51aに所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブW1の外側、つまり、ガイドローラ51aによりガイドされるウェブW1と、ガイドローラ52a,52bにガイドされるウェブW2との間に、仕切部材41が配置されている。この仕切部材41は、ガイドローラ51aにガイドされるウェブW1に沿った湾曲形状をなし、多数の貫通孔が形成されたパンチングメタルにより形成され、ウェブW1の搬送方向における前後の端部がブラケット53a,53bにより印刷機フレーム(図示略)に設けられた支持軸54a,54bに固定されている。
【0087】
また、ウェブW1の搬送方向の前後に配置される一対のガイドローラ51d,51eの下側、つまり、ガイドローラ51d,51eによりガイドされるウェブW1と、ガイドローラ52bにガイドされるウェブW2との間に、仕切部材42が配置されている。この仕切部材42は、ガイドローラ51d,51eにガイドされるウェブW1に沿った水平(直線)形状をなし、多数の貫通孔が形成されたパンチングメタルにより形成され、ウェブW1の搬送方向における前後の端部がブラケット55a,55bにより印刷機フレーム(図示略)に設けられた支持軸56a,56bに固定されている。
【0088】
また、図4に示すように、スリッタS1にて、ウェブW1がガイドローラ57a,57bにガイドされるウェブ搬送経路が設定されると共に、ウェブW2がガイドローラ58a,58bにガイドされるウェブ搬送経路が設定されている。また、ガイドローラ57aに対して、カッタを有するスリッタドラグローラ(駆動ローラ)57cが対接している。このとき、ガイドローラ57bに所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブW1の外側、つまり、ガイドローラ57bによりガイドされるウェブW1と、ガイドローラ58bにガイドされるウェブW2との間に、仕切部材43が配置されている。この仕切部材43は、ガイドローラ57bにガイドされるウェブW1に沿った屈曲(または、湾曲)形状をなし、多数の貫通孔が形成されたパンチングメタルにより形成され、ウェブW1の搬送方向における前後の端部がブラケット59a,59bにより印刷機フレーム(図示略)に設けられた支持軸60a,60bに固定されている。
【0089】
更に、図5に示すように、コンペンセータC1にて、ウェブW1がガイドローラ61a,61b,61cにガイドされるウェブ搬送経路が設定されると共に、ウェブW2がガイドローラ62a,62b,62cにガイドされるウェブ搬送経路が設定されている。また、各ガイドローラ61c,62cがウェブW1,W2の搬送方向に沿って位置調整可能な調整ローラとして機能する。このとき、ガイドローラ61cによりガイドされるウェブW1と、ガイドローラ62a,62bにガイドされるウェブW2との間に、仕切部材44が配置されている。この場合、搬送される上下一対のウェブW1,W2の離間する距離は、20mm以内である。この仕切部材44は、搬送される各ウェブW1,W2に沿った水平(直線)形状をなし、多数の貫通孔が形成されたパンチングメタルにより形成され、ウェブW1の搬送方向における前後の端部がブラケット63a,63bにより印刷機フレーム(図示略)に設けられた支持軸64a,64bに固定されている。
【0090】
従って、図3に示すように、ウェブW2がガイドローラ52a,52bにガイドされながら所定の速度で搬送されているとき、ウェブW1をガイドローラ51a,51b,51c,51d,51eに挿通させる場合、ウェブW1は、張力が十分に作用していないことから、ガイドローラ51aでの巻き付け部やガイドローラ51d,51eによる支持部で弛みやすい。しかし、本実施例では、その弛み部に仕切部材41,42が配置されていることから、ウェブW1がその弛み部で下方に垂れ下がっても、仕切部材41,42により保持されることとなり、下方を搬送されるウェブW2に接触することはなく、ウェブW2の印刷部が擦れることはない。
【0091】
また、図4に示すように、ウェブW2がガイドローラ58a,58bにガイドされながら所定の速度で搬送されているとき、ウェブW1をガイドローラ57a,57bに挿通させる場合、ウェブW1は、張力が十分に作用していないことから、ガイドローラ57bでの巻き付け部で弛みやすい。しかし、本実施例では、その弛み部に仕切部材43が配置されていることから、ウェブW1がその弛み部で下方に垂れ下がっても、仕切部材43により保持されることとなり、下方を搬送されるウェブW2に接触することはなく、ウェブW2の印刷部が擦れることはない。
【0092】
更に、図5に示すように、ウェブW2がガイドローラ62a,62bにガイドされながら所定の速度で搬送されているとき、ウェブW1をガイドローラ61a,61b,61cに挿通させる場合、ウェブW1は、張力が十分に作用していないことから、ガイドローラ61cによる支持部で弛みやすい。しかし、本実施例では、その弛み部に仕切部材44が配置されていることから、ウェブW1がその弛み部で下方に垂れ下がっても、仕切部材44により保持されることとなり、下方を搬送されるウェブW2に接触することはなく、ウェブW2の印刷部が擦れることはない。
【0093】
なお、本実施例では、各印刷ユニットU1〜U3で印刷されたウェブWが各折ユニットF1,F2まで搬送されるウェブ搬送経路にて、そのウェブパスユニットD1における所定の位置にウェブW1,W2の間に位置して仕切部材41,42,43,44を設けている。但し、印刷する新聞の形態等により、ウェブWの搬送経路が異なることから、全ての仕切部材41,42,43,44を使用しない場合もあり、適正なものだけを使用することとなる。
【0094】
また、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機では、上述した課題を解決するため、同時に2種類の新聞を印刷するとき、給紙ユニットR1〜R4、印刷ユニットU1〜U3、ウェブパスユニットD1,D2、折ユニットF1,F2から所定の2つの組合せユニットを設定したとき、折機Fにて、この折機Fを収容する部屋を設け、この部屋内に2つの折ユニットF1,F2を区画するように仕切部材を配置している。そして、仕切部材により区画された複数の部屋に対して、開閉自在な安全カバーがそれぞれ設けられている。この場合、部屋に隣接する折ユニットF1,F2の間に2つの仕切部材を配置し、この2つの仕切部材に安全カバーを設けている。
【0095】
そして、各安全カバーの開放状態を検出する検出器をそれぞれが設け、運転管理制御装置35は、複数組の組合せユニットを設定してそれぞれ駆動制御するとき、検出器のいずれかが安全カバーの開放状態を検出すると、検出した安全カバーが設けられる部屋内の折ユニットに対応する組合せユニットの駆動を停止可能としている。また、運転管理制御装置35は、1組の組合せユニットを設定して駆動制御するとき、検出器のいずれかが安全カバーの開放状態を検出すると、少なくとも作動状態にある給紙ユニットと印刷ユニットと折ユニットの全ての駆動を停止可能としている。
【0096】
即ち、図6及び図7に示すように、折機Fにて、印刷ユニットU2側に仕切壁71が立設されると共に、操作側及び駆動側に仕切壁72a,72bが立設されている。また、印刷ユニットU2側に折ユニットF1,F2に対応して仕切壁73a,73bが立設されている。この各仕切壁71,72a,72b,73a,73bにより折機F(折ユニットF1,F2)を収容する部屋が設けられる。
【0097】
折ユニットF1,F2との間には、仕切壁71と仕切壁73a,73bとを連結する仕切部材としての安全カバー74,75が設けられており、この安全カバー74,75の間にオペレータの作業空間が確保されている。また、仕切壁72a,72bを連結すると共に、この作業空間に対してオペレータの出入りを可能とする開閉扉76が設けられている。そして、この安全カバー74,75は、折ユニットF1,F2における各折畳機構(折畳部)107,204に対向する上部着脱カバー77,78と、折ユニットF1,F2における排紙コンベア(排紙部)109,206に対向する下部スライドカバー79,80とを有している。
【0098】
以下、この安全カバー74,75について説明するが、両者はほぼ同様の構成であることから、一方の安全カバー74についてのみ説明する。
【0099】
安全カバー74において、図8に示すように、両側部(仕切壁71,73a)には、取付ブラケット81a,81bが固定され、この取付ブラケット81a,81bにおける上部には、上部着脱カバー77が配置され、図示しない複数の固定ボルトにより固定されている。また、取付ブラケット81a,81bにおける下部には、上下方向に沿うガイドレール82a,82bが固定されており、このガイドレール82a,82bに沿って下部スライドカバー79が昇降自在に支持されている。この場合、上部着脱カバー77に対して、下部スライドカバー79がその厚さ方向にずれて配置されており、下部スライドカバー79が上昇したときには、上部着脱カバー77と厚さ方向に重なることで、下部を解放することができる。また、下部スライドカバー79が上部着脱カバー77と重なった位置で、両方のカバー77,79を取外すことができる。
【0100】
即ち、図8及び図9に示すように、下部スライドカバー79は、左右の端部における上下の位置にガイドローラ83a,83bが回動自在に装着されており、各ガイドローラ83a,83bは、ガイドレール82a,82bに嵌合し、転動自在となっている。また、図8及び図10に示すように、取付ブラケット81a,81bには、各ガイドレール82a,82b内に係止孔84a,84bが形成されている。一方、下部スライドカバー79は、左右の端部に係止爪85a,85bが水平方向に沿って移動自在に装着され、各係止爪85a,85bは連結ロッド86a,86bを介して操作ハンドル87に連結されている。更に、下部スライドカバー79は、左右一対の連結チェーン88a,88bを介して巻取ドラム89a,89bに連結されている。この巻取ドラム89a,89b内には図示しない巻ばねが設けられており、連結チェーン88a,88bを介して下部スライドカバー79を上方に付勢支持している。
【0101】
また、各安全カバー74,75にて、下部スライドカバー79,80の開閉状態(開放状態)を検出する検出スイッチ(検出器)91,92が設けられており、その検出結果が運転管理制御装置35に入力可能となっている。そして、この運転管理制御装置35は、2つの組合せユニットを設定してそれぞれ駆動制御するとき、検出スイッチ91,92の検出結果に応じて、給紙ユニットR1〜R4と印刷ユニットU1〜U3(U11〜U32)と折ユニットF1,F2のうちの対応するユニットの駆動を停止可能としている。この場合、検出スイッチ91は、折ユニットF1の下部スライドカバー79に対応し、検出スイッチ92は、折ユニットF2の下部スライドカバー80に対応している。
【0102】
即ち、運転管理制御装置35は、例えば、上述したように、印刷パターンID101として(R1+R4+U11+U12+U31+U32+D1+D2+F1:V1)を記憶すると共に、印刷パターンID102として(R2+R3+U21+U22+D1+F2:V2)を記憶する。このとき、検出スイッチ91が下部スライドカバー79の開放状態を検出(ON)したときには、運転管理制御装置35は、印刷パターンID101で選択されている給紙ユニットR1,R4と、印刷ユニットU11,U12,U31,U32と、ウェブパスユニットD1,D2と、折ユニットF1の駆動を停止する。一方、検出スイッチ92が下部スライドカバー80の開放状態を検出(ON)したときには、運転管理制御装置35は、印刷パターンID102で選択されている給紙ユニットR2,R3と、印刷ユニットU21,U22と、ウェブパスユニットD1と、折ユニットF2の駆動を停止する。
【0103】
具体的には、オペレータが、運転管理システム用操作パネル36を用いて、印刷パターンID101と印刷パターンID102を選択して入力することで、2つの組合せユニットが設定される。そして、運転管理制御装置35は、この印刷パターンID101,ID102を制御リンクに出力し、各給紙コントローラ21〜24、各印刷コントローラ25〜30、各ウェブパスコントローラ31,32、各折コントローラ33,34がこの印刷パターンID101を取り込み、各給紙ユニットR1〜R4、各印刷ユニットU11〜U32、各ウェブパスユニットD1,D2、各折ユニットF1,F2を駆動制御し、2種類の新聞を印刷する。
【0104】
このとき、検出スイッチ91が下部スライドカバー79の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、検出スイッチ91からの開放信号に基づいて、印刷パターンID101として(R1+R4+U11+U12+U31+U32+D1+D2+F1:V0)を制御リンクに出力し、選択されている給紙ユニットR1,R4と、印刷ユニットU11,U12,U31,U32と、ウェブパスユニットD1(一部),D2と、折ユニットF1の駆動を停止する。この場合、V0が停止信号となる。一方、検出スイッチ92が下部スライドカバー80の開放を検出した場合でも、同様に、運転管理制御装置35は、検出スイッチ92からの開放信号に基づいて、印刷パターンID102に停止信号V0を加えて制御リンクに出力し、選択されている各ユニットの駆動を停止する。
【0105】
なお、運転管理制御装置35が各ユニットの駆動を停止するということは、各ユニットへの電源の供給を停止することである。また、検出スイッチ91が下部スライドカバー79の開放を検出したとき、運転管理制御装置35は、ウェブパスユニットD1,D2の駆動を停止するが、この場合、印刷パターンID101で設定されているウェブパスユニットD1の一部の駆動を停止する。
【0106】
また、本実施例の新聞用オフセット輪転印刷機では、同時に2種類の新聞を印刷することもできるが、多ページの1種類の新聞だけを印刷することもできる。即ち、オペレータから運転管理制御装置35に対して、印刷パターンID100として(R1+R2+R3+R4+U11+U12+U21,U22+U31+U32+D1+D2+F1+F2:V1)が入力される。すると、この運転管理制御装置35は、この印刷パターンID100を制御リンクに出力し、該当する給紙コントローラ21〜24と印刷コントローラ25〜30とウェブパスコントローラ31,32と折コントローラ33,34は、印刷パターンID100に応じて、給紙ユニットR1〜R4と印刷ユニットU11〜U32とウェブパスユニットD1,D2と折ユニットF1,F2を駆動制御し、1種類の新聞を印刷する。
【0107】
このとき、検出スイッチ91または92のいずれか一方が下部スライドカバー79または80の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、検出スイッチ91,92からの開放信号に基づいて、印刷パターンID100として(R1+R2+R3+R4+U11+U12+U21,U22+U31+U32+U41+U42+D1+D2+F1+F2:V0)を制御リンクに出力し、選択されている給紙ユニットR1〜R4と、印刷ユニットU11〜U32と、ウェブパスユニットD1,D2と、折ユニットF1,F2の駆動を停止する。
【0108】
この場合、全てのユニットを停止状態としたが、各ユニットのうち、使用していないユニットは既に停止時様態にあることから、停止信号を出力する必要はない。
【0109】
従って、図13に示すように、ウェブW1が折ユニットF1側で処理され、ウェブW2が折ユニットF2で処理され、2種類の新聞が印刷されているとき、安全カバー74,75によりウェブW1の折ユニットF2側への侵入やウェブW2の折ユニットF1側への侵入が防止される。また、このとき、検出スイッチ91が下部スライドカバー79の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、対応するユニットの駆動を停止することで、ウェブW1の処理を停止する。一方、検出スイッチ92が下部スライドカバー80の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、対応するユニットの駆動を停止することで、ウェブW2の処理を停止する。
【0110】
また、図14に示すように、ウェブWが折ユニットF1,F2で処理され、1種類の新聞が印刷(所謂、両出し印刷)されているとき、安全カバー74,75により各ウェブWの干渉が防止される。また、このとき、検出スイッチ91が下部スライドカバー79の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、全てのユニットの駆動を停止することで、ウェブWの処理を停止する。また、検出スイッチ92が下部スライドカバー80の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、同様に、全てのユニットの駆動を停止することで、ウェブWの処理を停止する。
【0111】
更に、図15に示すように、折ユニットF1が停止し、ウェブWが折ユニットF2で処理され、1種類の新聞が印刷(所謂、片出し印刷)されているとき、検出スイッチ91が下部スライドカバー79の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、折ユニットF2に関係する全てのユニットの駆動を停止することで、ウェブWの処理を停止する。一方、検出スイッチ92が下部スライドカバー80の開放を検出しても、運転制御装置35は、F2に連結する全てのユニットの駆動を停止することなく、ウェブWの処理を継続したまま、F1のメンテナンス等の作業を可能とする。また、図16に示すように、折ユニットF2が停止し、ウェブWが折ユニットF1に転送されて処理され、1種類の新聞が印刷(所謂、転送出し印刷)されているとき、検出スイッチ91または92が下部スライドカバー79または80の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、全てのユニットの駆動を停止することで、ウェブWの処理を停止する。
【0112】
また、図17に示すように、ウェブW1が折ユニットF1側で処理され、ウェブW2が折ユニットF2で処理され、各ウェブW1,W2が集合して1種類の新聞が印刷(所謂、セクション印刷)されているとき、安全カバー74,75によりウェブW1とウェブW2の干渉が防止される。また、このとき、検出スイッチ91または92が下部スライドカバー79または80の開放を検出すると、運転管理制御装置35は、全てのユニットの駆動を停止することで、ウェブWの処理を停止する。
【0113】
このように本実施例の折機にあっては、複数の給紙ユニットR1〜R4を有する給紙装置Rと、ウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットU1〜U3を有する印刷装置Uと、複数のウェブから折帖を形成する複数の折ユニットF1,F2を有する折機Fと、印刷ユニットU1〜U3から折ユニットF1,F2への搬送経路を変更可能なウェブパス装置Dと、複数組の組合せユニットを設定して駆動制御可能な運転管理制御装置35とにより構成し、所定の組合せユニットにより搬送されるウェブと他の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材41〜44と、安全カバー74,75を設けている。
【0114】
従って、折機Fにて、仕切部材としての安全カバー74,75により2種類の組合せユニット間を搬送されるウェブW1,W2の干渉が防止され、2種類の印刷物(新聞)を同時に印刷可能とすることで、印刷作業の作業効率の向上を図ることができると共に、印刷作業の安全性を確保することができ、また、印刷品質を向上することができる。
【0115】
また、本実施例の印刷機では、折機Fを収容する部屋を設け、この部屋内に2つ折ユニットF1,F2を区画するように安全カバー74,75を配置している。従って、2種類の印刷が施された各ウェブW1,W2が干渉せずに、対応する折ユニットF1,F2に適正に搬送されることとなり、印刷作業の安全性を確保することができると共に、印刷品質を向上することができる。
【0116】
また、本実施例の印刷機では、安全カバー74,75により区画された各部屋を開閉自在としている。従って、各折ユニットF1,F2が配置された部屋を区画することができると共に、メンテナンスのためのオペレータの出入り可能となり、安全性と作業性の両立を可能とすることができる。
【0117】
また、本実施例の印刷機では、2つの安全カバー74,75の開閉状態を検出する複数の検出スイッチ91,92を設け、運転管理制御装置35は、2つの組合せユニットを設定してそれぞれ駆動制御するとき、検出スイッチ91,92の検出結果に応じて、つまり、検出スイッチ91,92のいずれかが安全カバー74,75の開放状態を検出したとき、検出した側の安全カバー74,75に対応する各ユニットの駆動を停止可能としている。従って、組合せユニットごとに作業の継続と停止を切替えることができ、一方の組合せユニットが停止しても、他方の組合せユニットが停止することはなく、作業の安全性を確保することができると共に、メンテナンス性を向上することができる。
【0118】
また、本実施例の印刷機では、運転管理制御装置35は、1つの組合せユニットを設定して駆動制御するとき、検出スイッチ91,92の検出結果に応じて、つまり、検出スイッチ91,92のいずれかが安全カバー74,75の開放状態を検出したとき、全てのユニットの駆動を停止可能としている。従って、1種類の印刷物(新聞)を印刷するとき、いずれの安全カバー74,75が開放されても全てのユニットが停止することとなり、作業の安全性を確保することができると共に、メンテナンス性を向上することができる。
【0119】
本実施例の印刷機では、部屋内で隣接する折ユニットF1,F2の間に2つの安全カバー74,75を配置している。従って、安全カバー74,75により異なるウェブW1,W2の干渉を防止することができ、構造の簡素化を可能とすることができる。
【0120】
また、本実施例の印刷機では、安全カバー74,75を、折ユニットF1,F2における折畳機構107,204に対向する上部着脱カバー77,78と、折ユニットF1,F2における排紙コンベア109,206に対向する下部スライドカバー79,80とで構成している。従って、ウェブWの詰まりが発生したときには、下部スライドカバー79,80をスライドして作業を行い、故障などが発生したときには、上部着脱カバー77,78と下部スライドカバー79,80を取外してメンテナンス作業を行うこととなり、メンテナンス作業の安全性及び作業性を向上することができる。
【0121】
また、本実施例の印刷機では、2つの安全カバー74,75に区画される空間に対して出入り可能な開閉扉76を設けている。従って、折機Fに対する安全性を向上することができると共に、遮音性を向上することができる。
【0122】
また、本実施例の印刷機では、各印刷ユニットU1〜U3で印刷されたウェブWを各折ユニットF1,F2まで搬送するウェブ搬送経路にて、対向して搬送される各ウェブW1,W2の間に仕切部材41,42,43,44を配置している。従って、異なる印刷が施された2種類のウェブW1,W2が干渉せずに搬送されることとなり、印刷作業の安全性を確保することができると共に、印刷面の接触による損傷を防止して印刷品質を向上することができる。
【0123】
また、実施例の印刷機では、仕切部材41,42,43,44を、印刷ユニットU1〜U3から折ユニットF1,F2までウェブW1,W2を挿通させるときに、そのウェブ弛み部に配置している。従って、ウェブW1,W2の一方を搬送経路に挿通するとき、このウェブW1,W2が垂れ下がっても、仕切部材41,42,43,44により受け止められることとなり、ウェブW1,W2同士の接触を防止することができる。
【0124】
また、本実施例の印刷機では、ガイドローラにウェブWが所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、仕切部材41,42,43をガイドローラに巻き付けられるウェブの外側に配置している。従って、弛みやすい箇所でのウェブW1,W2同士の接触を適正に防止することができる。
【0125】
また、本実施例の印刷機では、ウェブW1の搬送方向の前後に配置される一対のガイドローラの下側にウェブW2が巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路にて、仕切部材42をガイドローラに巻き付けられるウェブの下側に配置している。従って、弛みやすい箇所でのウェブW1,W2同士の接触を適正に防止することができる。
【0126】
また、本実施例の印刷機では、一対のウェブの距離が20mm以内で搬送されるウェブ搬送経路にて、仕切部材44を一対のウェブW1,W2の間に配置している。従って、弛みやすい箇所でのウェブW1,W2同士の接触を適正に防止することができる。
【0127】
また、本実施例の印刷機では、仕切部材41,42,43,44を、スリッタS1またはコンペンセータC1に設けている。従って、ウェブW1,W2が縦裁断されるとき、また、ウェブW1,W2の搬送方向における位置が調整されるとき、ウェブW1,W2同士の接触を適正に防止することができる。
【0128】
なお、上述した実施例では、検出スイッチ91,92の検出結果に応じて、対応するユニットの駆動だけを停止する場合と、全てのユニットの駆動を停止する場合の切換を、印刷パターンIDを用いて行ったが、この構成に限定されるものではない。例えば、電源部から各ユニットへの電源供給ラインに断接スイッチを設け、この断接スイッチを選択的にON/OFFするように構成してもよい。具体的には、1種類の新聞を印刷する作業と、複数の新聞を印刷する作業とで、断接スイッチの組合せを設定変更する切換スイッチを設け、検出スイッチ91,92がONされたとき、設定された断接スイッチのみ切断するように構成すればよい。
【0129】
なお、上述した実施例では、新聞用オフセット輪転印刷機により同時に2枚の印刷物としての新聞を印刷可能としたが、折機の数を増加させたり、1つの折ユニットにより複数種類のウェブを折り畳み可能とすることで、同時に3種類以上の印刷物を印刷することも可能である。
【0130】
また、上述した実施例では、本発明の印刷機を新聞用オフセット輪転印刷機としたが、この印刷機に限定されるものではなく、商業用オフセット輪転印刷機などに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明に係る印刷機及び印刷方法は、所定の組合せユニットにより搬送されるウェブと他の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材を設けることで、異なる種類の印刷物を同時に印刷可能とすることで作業効率の向上を図ると共に、印刷作業の安全性を確保し、且つ、印刷品質の向上を可能とするものであり、いずれの印刷機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0132】
R 給紙装置
R1〜R4 給紙ユニット
U 印刷装置
U1〜U3,U11〜U32 印刷ユニット
D ウェブパス装置
D1,D2 ウェブパスユニット
F 折機
F1,F2 折ユニット
W ウェブ
21〜34 コントローラ
35 運転管理制御装置(制御装置)
36 運転管理システム用操作パネル(操作装置)
41,42,43,44 仕切部材
51a〜51e,52a,52b ガイドローラ
71,72a,72b,73a,73b 仕切壁
74,75 安全カバー(仕切部材)
76 開閉扉
77,78 上部着脱カバー
79,80 下部スライドカバー
91,92 検出スイッチ(検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取紙からウェブを供給する複数の給紙ユニットを有する給紙装置と、
前記給紙装置から繰り出されたウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットを有する印刷装置と、
前記印刷装置により印刷が施された複数のウェブを重ねて断裁すると共に折り畳むことで折帖を形成する複数の折ユニットを有する折機と、
前記複数の印刷ユニットから前記複数の折ユニットへの搬送経路を変更可能なウェブパス装置と、
前記複数の給紙ユニットと前記複数の印刷ユニットと前記複数の折ユニットから複数組の組合せユニットを設定して駆動制御可能な制御装置と、
を備える印刷機において、
所定の組合せユニットにより搬送されるウェブと他の組合せユニットにより搬送されるウェブとの干渉を防止する仕切部材が設けられる、
ことを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記折機を収容する部屋が設けられ、該部屋内に前記複数の折ユニットを区画するように前記仕切部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記仕切部材により区画された各部屋に開閉自在な安全カバーがそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記複数の安全カバーの開放状態を検出する検出器がそれぞれ設けられ、前記制御装置は、複数組の組合せユニットを設定してそれぞれ駆動制御することで複数種類の印刷物を印刷するとき、前記検出器のいずれかが前記安全カバーの開放状態を検出すると、検出した前記安全カバーが設けられる前記部屋内の前記折ユニットに対応する前記組合せユニットの駆動を停止可能であることを特徴とする請求項3に記載の印刷機。
【請求項5】
前記複数の安全カバーの開放状態を検出する検出器がそれぞれ設けられ、前記制御装置は、1組の組合せユニットを設定して駆動制御することで1種類の印刷物を印刷するとき、前記検出器のいずれかが前記安全カバーの開放状態を検出すると、作動状態にある前記給紙ユニットと前記印刷ユニットと前記折ユニットの全ての駆動を停止可能であることを特徴とする請求項3に記載の印刷機。
【請求項6】
前記部屋に隣接する前記折ユニットの間に前記仕切部材が2つ配置され、該2つの仕切部材に前記安全カバーが設けられることを特徴とする請求項3から5のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項7】
前記安全カバーは、前記折ユニットにおける折畳部に対向する上部着脱カバーと、前記折ユニットにおける排紙部に対向する下部スライドカバーを有することを特徴とする請求項6に記載の印刷機。
【請求項8】
前記2つの仕切部材に区画される空間に出入り可能な開閉扉が設けられることを特徴とする請求項6または7に記載の印刷機。
【請求項9】
前記複数の印刷ユニットで印刷されたウェブが前記複数の折ユニットまで搬送されるウェブ搬送経路であって、対向して搬送される複数のウェブの間に前記仕切部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項10】
前記仕切部材は、前記印刷ユニットから前記折ユニットまでウェブを挿通させるとき、ウェブ弛み部に配置されることを特徴とする請求項9に記載の印刷機。
【請求項11】
ガイドローラにウェブが所定角度だけ巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路であって、前記仕切部材は、前記ガイドローラに巻き付けられるウェブの外側に配置されることを特徴とする請求項9または10に記載の印刷機。
【請求項12】
ウェブの搬送方向の前後に配置される一対のガイドローラの下側にウェブに巻き付けられて搬送されるウェブ搬送経路であって、前記仕切部材は、前記ガイドローラに巻き付けられるウェブの下側に配置されることを特徴とする請求項9または10に記載の印刷機。
【請求項13】
一対のウェブの距離が20mm以内で搬送されるウェブ搬送経路であって、前記仕切部材は、一対のウェブの間に配置されることを特徴とする請求項9または10に記載の印刷機。
【請求項14】
前記仕切部材は、スリッタまたはコンペンセータに設けられることを特徴とする請求項9から13のいずれか一つに記載の印刷機。
【請求項15】
巻取紙からウェブを供給する複数の給紙ユニットを有する給紙装置と、
前記給紙装置から繰り出されたウェブに印刷を行う複数の印刷ユニットを有する印刷装置と、
前記印刷装置により印刷が施された複数のウェブを重ねて断裁すると共に折り畳むことで折帖を形成する複数の折ユニットを有する折機と、
前記複数の印刷ユニットから前記複数の折ユニットへの搬送経路を変更可能なウェブパス装置と、
前記折機を収容する部屋内に前記複数の折ユニットを区画するように配置されてウェブの干渉を防止する仕切部材と、
前記仕切部材により区画された各部屋を開閉自在な複数の安全カバーと、
を備える印刷機において、
前記複数の給紙ユニットと前記複数の印刷ユニットと前記複数の折ユニットから複数組の組合せユニットを設定して複数種類の印刷物を印刷するとき、前記安全カバーのいずれかが開放されると、開放された安全カバーに対応する前記組合せユニットの駆動を停止する一方、
前記複数の給紙ユニットと前記複数の印刷ユニットと前記複数の折ユニットから1組の組合せユニットを設定して1種類の印刷物を印刷するとき、前記安全カバーのいずれかが開放されると、作動状態にある前記給紙ユニットと前記印刷ユニットと前記折ユニットの全ての駆動を停止する、
ことを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−274604(P2010−274604A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131301(P2009−131301)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(310016522)三菱重工印刷紙工機械株式会社 (75)
【Fターム(参考)】